
この数年、「偏見」ネタで人気を博している若手芸人・ニューヨーク。一昨年の『M-1グランプリ2017』(ABC・テレビ朝日系列)直後、“よしもと推されコンビ”といわれた彼らの本音に迫るインタビューを行ったが(参考記事:『M-1』翌日──“よしもと推されコンビ”ニューヨークの本音に迫る!)、その後なかなかブレークできないまま、年末のM-1は準々決勝敗退と、調子を落としているように見える。“ネクストブレーク”から抜け出すための、彼らの新たな挑戦を聞いた。
――ファンとしては、ニューヨークさんがいつ時代を変えてくれるのか、と何年も待っているんですよ。それが去年、調子悪かった気がしまして。
屋敷 確かに2018年は捨て年でした……。それまでは徐々に上がっていく感じだったのが、動きが何もなかったんです。ラジオ(MBS『アッパレやってまーす!』)もなくなって、賞レースは「キングオブコント」が2回戦落ちで、「M-1」は決勝行くつもりでやってたら準々決勝で落ちて。落選を知った瞬間、ソファから一歩も動けなくなって、天井見てました(笑)。
嶋佐 僕はショックというか、相当ムカつきましたね。「全然あげてくれねえじゃん」って。
屋敷 そこで考えたんですよ。今まで周りから「いける」「次はニューヨーク」と言われてきた。それにあぐらをかいて、大きなアクションを起こさず、神輿の上でじっとしてきたな、と(笑)。このままだったらフェイドアウトしていくな、と焦りだして、YouTubeチャンネル作るとか、ラジオで発信するとか、いろいろ考えました。それをマネージャーに伝えて、相方ともそういう話になっていきましたね。
嶋佐 賞レースの決勝でもいかないかぎり、仕事がドーンと舞い込むこともないでしょうし、それなら何かやったほうがいいかな、と。それでニューヨーク、デニス、マテンロウ、鬼越トマホークの同期4組で、「でへへチャンネル」も始めたんです。
屋敷 今、登録者数いくつやったっけ?
嶋佐 800(笑)。結構頑張っている4組なんですけどねえ。
――4月に行われる単独に向けて、「我々ニューヨーク、遂に本気を出します。ここ10年で一番の本気です」とコメントを出してますね。今年は何とかしようという意気込みを感じました。
屋敷 毎年ルミネで単独ライブ2回というのがルーティーンになっていて、刺激がないと停滞するから、それも変えたいなと思ったんです。そうしたらスラッシュパイルの片山さん(お笑いを中心としたライブ・興行企画会社の代表)と話す機会があって、「じゃあ一緒にやりましょう」ということになりまして。いろいろアイディア出してもらった結果、今回はルミネから飛び出して、「シブゲキ」という劇場で3公演になりました。
嶋佐 いつも1回だけというのが、もったいなかったんで。それこそ何回かやったほうが、いろんな方に見てもらえますし。
――ニューヨークさんの単独、ずっと面白いと思って見ているんですよ。でも、そこから仕事広がったり、ネタが賞レースで引っかかったり、次につながらないという感触だったんですか?
屋敷 今までは面白いネタを作って、来た人が喜んで、いいネタを賞レースに持っていけばいいなと考えていたんです。でもそれだと燃費が悪いような気がした。
嶋佐 単独しかやってないネタがたくさんありますし。
屋敷 それに、テレビに出るためだけに絞ってネタを作るのは、リスクが高い時代になったというか。今売れている人って、テレビにあまり媚びてないじゃないですか。単独やラジオ、自分の中の柱を持っている芸人のほうが、テレビに出ても映りがオモロい気がするんですよね。賞レースは運も流れもあるんで、それだったら単独自体の価値が評価されて、芸人としてええ感じになればいいな、と思ってます。
――YouTubeで毎週日曜夜に配信している「ニューラジオ」も、「このままではまずい」という気持ちから始まったんですか?
屋敷 ですね。接触してないと、お客さんは僕らのこと忘れていきますから。習慣でレギュラーのラジオを聞いているときは、週1回はその芸人のことを考えるじゃないですか。そうするとファンでもいてくれるし、ライブにも行こうとも思うし。だったらラジオをYouTubeで毎週やればええのかなと思って。
――「ニューラジオ」で聞いたところによると、ニューヨークを好きなスタッフが手弁当でやっているみたいですね。
屋敷 ありがたいことに……。ただ作家には、くしゃくしゃの1,000円札だけ握らせてますよ(笑)。
嶋佐 自腹ですよ! 昨日の生放送も、作家が終電残り3分で駅までダッシュしてました(笑)。
屋敷 泊まったら赤字になるからな。ありがたいことに足立区から新宿まで来てくれてるんですよ。そこらへんは恵まれてます。
――一方、同期4組で始めた「でへへチャンネル」の手ごたえはどうですか。
嶋佐 ないです!(即答)
屋敷 ないですけど、編集する人を募集したら、プロに近い数名から応募がきて、玄人の人はチェックしてくれてることに気づきました。ただいかんせん、普通の人は誰も見ていません(笑)。

――これからは芸人だけじゃなくて、YouTuberもライバルになりますよね。
嶋佐 そこなんですよ。それこそ昨日仕事した17歳の高校生TikTokerは、フォロワー88万人でしたよ。俺はこの世界で10年やって、1万5,000人……。なかなか難しいです。
屋敷 節目の時代に芸人になりましたねえ。僕ら、「テレビに出て売れる」というモデルケースを目指して、芸人になった最後の世代なんです。
嶋佐 「金稼ぎたい」「モテたい」が目的で、そのためにお笑いをセレクトしただけですから。
屋敷 今、芸人になるのは、ヘンなヤツが多いと思いますよ。後輩なんて、お笑いサークルで一緒にやってたヤツらがYouTubeで大金持ちになってるらしいんです。でも「あいつら面白くないんで、僕は芸人選びました」とか言っている。そういう意味では、下の世代のほうがだいぶピュアですね。
――配信を始めるにあたって、人気あるYouTuberはチェックしましたか? 芸人さんの間では「あいつらは面白くない」という評価もあると思うんですが。
屋敷 自分でちょっと編集作業するようになったら、すごいちゃんとしていることが分かりましたね。サムネイルの統一感を意識していたり、面倒くさい編集をちゃんとやってたり。「頑張ってるんだな」と見方が変わりました。

――支持される理由が分かったと。
嶋佐 やっぱり今の中高生は、ネット中心ですからね。Abemaで放送している恋愛リアリティ番組の特番でMCをやったら、それで声かけられることが多くて。
屋敷 学祭でキャーキャー言われると思ったら、それが理由だったな。
嶋佐 もっと小さい子含めて、そういう若い人たちに、僕ら芸人がやっている純度の高いお笑いに気づいてもらわないと、先がないですよ。
屋敷 でもYouTubeもすごいスピードで大きくなった分、規制もいきなり厳しくなったじゃないですか。結局、過激なことをできない媒体になって、短期間でテレビの歴史をたどっている気がするんですよ。金がかかっているぶん、クオリティはテレビのほうが高いし、いろんな人に広く知ってもらう手段はテレビがベスト。それは変わってないのかもしれません。
――配信は儲かるんですか?
屋敷 まだ全然。それこそ「オールナイトニッポン」の時よりも、もっともっとムーブメントにならないと、きびしいですね。それでYouTubeに寄せないで、生のラジオという手法を持ち込んだわけですけど、一体どこまで通用するか……。こないだ視聴者層を確認したら、18歳から24歳までの男がほとんどでした。
嶋佐 普段YouTube見ている人なのかな。
屋敷 いや、俺らのラジオを聞いてた人じゃない?
――ハネるには女子人気が必要なんでしょうね。

嶋佐 うーん。女の子はチャラついているのが好きですからね……。俺が一番いい男ということをなかなか気がついてくれない。もっとビジュアルとか評価されていいのに。(堂々と語る)
――……。
屋敷 やばっ! マジきもいわ。文字になるの分かってる?(笑) でもダイアンさんとかすごくないですか? 関西でラジオが人気になって、芸歴20年の今、絶好調じゃないですか。昨日もTikTokerの子に好きな芸人聞いたら、四千頭身や霜降り明星じゃなくて、サンドウィッチマン、千鳥、NON STYLEなんですよ。誰も若手芸人の名前出さない。おじさんが人気者になるドリームは残されてますね。
嶋佐 若い子が若手好きなのは、お笑いファンの中でだけなんでしょうね。
屋敷 それまでいぶし銀だった和牛さんが、ワーキャー言われ出したの30代後半でしょ。そんな芸人、今までいなかった。年齢に関してお笑いファンは寛容というのが分かったから、これからぶり返すこともあるかなと……。今年は仕掛けていきたいです!
――ところで肝心の稼ぎは、今どうなんですか。
屋敷 「全然稼げてないな」というのと、「バイトせんでも食べれてるのは幸せなことだな」という2つの気持ちがありますね。でもこのままでは、ずっと食っていけないという焦りもあって。僕らがもらう劇場出番は、他の芸人でも替えが利くんですよ。それこそダンビラムーチョでも魔人無骨でもいい。このまま50歳になったら、若手に声がかかって、劇場呼ばれなくるのは間違いないんです。そこでM-1優勝なり、一回旗立てておけば、「ニューヨークさんじゃないとダメなんです」となって、芸人を続けていい許可証はもらえるとは思っていて。それでもっと自立した仕事しようということで、YouTubeを狙ったというのはありますね。
嶋佐 金ねえ……。今、現金がないんですよ。
――現金?
嶋佐 こないだの給料日、4万円しかなくて。
屋敷 いやいや、もうちょいもろてたやろ。投資に金入れすぎてなくなってる。
――ああ、配信でも「仮想通貨に希望を見出してる」と語ってましたもんね。
嶋佐 仮想通貨に120万円、ロボットアドバイスの積立投資に16万円入れてるんですよ。仮想通貨はリスクを避けるため、6種類に分けてます。
屋敷 よう考えてるな……。
嶋佐 そのひとつが、知り合ったお金持ちの方が自ら作ったフィリピンの通貨なんです。そこに20万円。
屋敷 いかにも怪しいわ。円を持って、お笑いに専念しろって!(笑)
(取材・文=鈴木工/撮影=鈴木渉)
■ニューヨーク
嶋佐和也(1986年生まれ、山梨県出身)と屋敷裕政(1986年生まれ、三重県出身)のコンビ。2010年結成。THE MANZAI2014認定漫才師。『ラフターナイト』(TBSラジオ)第1回グランドチャンピオン。

■ニューヨーク単独ライブ「ありがとう」
【日時】
4月19日(金)19:00開場 19:30開演
4月20日(土)17:30開場 18:00開演
4月21日(日)16:30開場 17:00開演
【会場】CBGKシブゲキ!!
【料金】前売り4000円/当日4500円
チケットよしもと、チケットぴあ、ローソンチケットにて発売中





