『ザ・ノンフィクション』人力車回にも登場、「スパルタ職場」を志願する人たち

 5月7日放送の『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)、テーマは「人力車に魅せられて 3 ~浅草 女たちの迷い道~ 前編」。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 東京・浅草の風景に彩りを添える人力車。10社以上がしのぎを削る中、赤いはんてんがトレードマークの「東京力車」には53人の俥夫(しゃふ、人力車の運転手)がおり、そのうち15人が女性だ。

 東京力車の俥夫になるには、社内の卒検に合格する必要がある。それまでは研修生だ。卒検はシミュレーション形式で東京力車社長の西尾を「客役」として人力車に乗せ、浅草を案内するというものだが、人力車を安全に走行させながら、浅草の観光案内も行わねばならない試験はかなり難易度が高く、研修期間中で6割以上が辞めてしまうという。社長を乗せて走る緊張感からか、卒検中に過呼吸を起こしてしまう研修生もいた。

 研修生の指導役を務めているのが青山学院大学4年生の俥夫・ミイ。ミイ自身も卒検に苦労し、6回目でようやく合格できた。ミイは中学時代、水泳の有望な選手だったが、高校から伸び悩んでしまう。それが彼女にはかなり堪えていたようで「あの自信ないまま社会出たら、やられて終わってただろうな」と話し、その後の東京力車での成功が心の支えとなっているようだ。ミイは大学で、大学公認新聞「アオスポ」の記者としても活動しており、アナウンサーを志願している。

 愛知の小学校で教頭をしているミイの母・文恵が上京した際、ミイは文恵を人力車に乗せ、浅草を案内。その夜、母と娘は対話をする。「アナウンサーの試験結果は振るわない一方、それ以上に東京力車への思いを語る」ミイと、「東京力車は娘にとって大事な場所なのだろうけれど、それはそれとして就職してほしい」文恵の間には、すれ違いが生まれているようだった。

 そして、ミイは19歳のアキナの教育係となる。アキナも研修生生活が8カ月を超え、卒検に苦労している模様。特訓の末、アキナのリベンジ卒検を迎えるが、かじ棒(人力車を引くために俥夫が握る棒状の部分)を落とす大きなミスをしてしまい、不合格に。ただ字幕で、今回の放送直前である2023年5月1日の卒検で、アキナが無事合格したと伝えられた。

 一方のミイは就職せず、アルバイトとして東京力車に残る選択をし、報告のため愛知の実家に向かう。

『ザ・ノンフィクション』スパルタ職場で働きたい!

 アキナが東京力車に入りたいと思ったのは同番組を見たことがきっかけだったそう。なお、その放送回は以下だと思われる。

 同回は、卒検に落ち続ける30歳のアツシが、教育担当の押木と猛特訓するも、結局合格できず東京力車を去る――という内容だった。なお、アツシはその後の放送回で、軽井沢の人力車会社で俥夫として働いている姿を見せていた。

 『ザ・ノンフィクション』の「スパルタ職場シリーズ」といえば、ほかにも、横浜の「秋山木工」や京都の「泣き虫舞妓物語」があるが、どちらにも「『ザ・ノンフィクション』を見て志願した」というアキナのような人がいた。

 私は秋山木工も東京力車も京都の舞妓も「絶対自分には無理」と思ったけれど、これらを見て「私もやってみたい」と思う人もいるのだから、人の感じ方はさまざまだ。企業側からすれば、この厳しい条件を見た上で、なお「やってみたい」と思える熱意ある人材を集められるわけで、同番組は実に効率のいい人材募集方法なのかもしれない。

『ザ・ノンフィクション』アキナの「オッス」に足りないもの

 卒検に苦戦していたアキナの口癖は「オッス」。これは中学時代の運動部で身につけたもののようだ。しかし、接客のシーンでは「オッスはちょっと」と、押木に軽くたしなめられる場面も。たいていの人ならここで言うのをやめると思うが、それでも「オッス」を続けるアキナにとって、「オッス」には譲れぬ美学があるのかもしれない。ただ、アキナは自宅に帰ったときも「ただいま」の要領で「オッス」と言っており、単なる習慣になっている可能性も高い。

 一方で、19歳女子の口癖が「オッス」というのは、アキナ以外の人にしてみれば「なんで?」だろう。さらに、番組を見る限り、アキナのテンションは低めで、「オッス……」にも消極的な雰囲気が漂っているため、違和感に拍車をかけていた。

 もしアキナが、弾けるように力強く「オッス!!!」と言っているのであれば、「この人はこういうキャラなんだろう」と、納得感があったように思う。

 次回は今週の続編。就職活動をせず東京力車に残る決断をしたミイに対し、母・文恵は何を話すのか。

『ザ・ノンフィクション』一橋卒のZ世代スナックママを、“やり手”と感じた理由は?

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。4月30日の放送は「わたし、スナック継ぎます ~ママは新卒Z世代~」。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 東京の文教都市として名高い国立市。国立を文教都市たらしめているのは名門・一橋大学の存在が大きい。2022年4月、一橋大学を卒業した同級生は誰もが知っている大手企業に就職していく中で、千里はスナックのママになる道を選ぶ。

 理由は、千里が学生時代にアルバイトしていた国立市内のスナック「スナックせつこ」のせつこママから、店を継がないかと打診されたため。せつこママは76歳で体力の限界もあったようだが、千里の商才を見抜いての打診だった。

 お店を引き継いだ千里は、いかにも昭和のスナックといった趣の内装から、今風のカフェのような雰囲気に改装し、店名も「スナック水中」へと変更。改装費用は1000万円で、クラウドファンディング、銀行融資、商工会の助成金で賄っている。千里自身も少しでも費用を浮かそうと、長年の油汚れがこびりついた換気扇の清掃は自身で行っていた。

 千里の父親、宏治は開発途上国支援の仕事で海外を巡り、今はスーダンで働いている。宏治は当初、「会社入って世の中のシステム勉強しろ」と、新卒でいきなりスナックママになる進路を反対していたが、千里の決意を前に折れた形だ。スナック水中がオープンすると、宏治は店を訪ね、薬師丸ひろ子の「セーラー服と機関銃」を熱唱していた。

 せつこママから引き継いだ客もおり、オープン当初から快調なスナック水中だったが、千里には、女性がサードプレイスとして一息つける場所にしたいという夢があり、中高年男性中心の客層を変えていきたい思いもある。スナックせつこで働いていた頃、せつこママが、自分と話すために店を訪ねる女性を、優しく受け入れる姿に憧れていたようだ。

 千里は女性客や若年層の来客増のため、インスタグラムで情報発信したり、若年層限定のイベントなども開催する。しかし、若い男女が酒を飲み隣り合って座る店内はおのずと「街コン」状態になり、千里はそれが不満なようだった。現状と理想のギャップに悩む千里はせつこママに相談するも、「カウンターの中の人に合ったお客さんが来る」と諭される。

 番組最後は、23年4月のスナック水中の1周年の様子が伝えられており、にぎわう店内には若い女性の姿もちらほらあり、千里の理想に少し近づいているようだ。また、ここ1年の手腕が評価され、千里は国立のジャズバーのマスターからも店舗の継承を依頼されていた。

『ザ・ノンフィクション』飲食店開業が成功するレア中のレア回

 『ザ・ノンフィクション』において「飲食店を開業する」回は幾度か放送されているが、「まず失敗する」と言ってよい。番組の最後には廃業するお店も少なくないため、正直今回も……、という不安があった。

 しかし、千里は1年でスナックを軌道に乗せるだけでなく、ジャズバーの継承も依頼されなど、今回は超レア中のレアな「飲食開業大成功回」だった。経営に行き詰り、取材中に涙を流すなど、千里の不安定な様子が印象に残ったものの、普段の彼女は有能な仕事人なのだろう。

『ザ・ノンフィクション』千里が成功した理由

 千里がこの多産多死とも言われる飲食で成功を収められた理由として、“相談力”があるように思う。千里は、こだわりはかなり強そうだが、一方で他者に相談している姿もよく見られた。

 困ったらせつこママに相談するし、外部のコンサルにも入ってもらい、人の意見を積極的に取り入れている。「人から何か言われるのがとにかく癪(しゃく)に障る」「一から十まで自分の思うようにしたい」というタイプではないのだろう。また、そもそもスナック水中は、せつこママの「地盤」を引き継げたことが経営において非常に大きかったと思われるが、それもせつこママと千里のつながりがあってのことだ。

 仕事をする上で、「他者の意見を聞けて、他者と協力できる(≒独りよがりじゃない)」というのは重要な要素なのではないかと、千里を見て思った。

 次回は「人力車に魅せられて 3 ~浅草 女たちの迷い道~ 前編」。大学4年生の俥夫(人力車の運転手)・ミイは研修の指導も任される存在だ。当初アナウンサーを志望していたミイだが、このまま人力車の仕事を続けようと考え始めている。しかし母親から猛反発されて……。

『ザ・ノンフィクション』過酷な修行の終わり――頼りない丁稚が遂げた驚きの変貌とは?

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。4月16日の放送は「ボクらの丁稚物語 2023 後編 ~ふたりぼっち 夢の行方~」。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 横浜市の家具製作会社「秋山木工」では、住み込みで5年間修行する丁稚奉公制度が採用されている。この間、丁稚たちは酒もタバコも恋愛も禁止、携帯電話は私用で使えず、家族への連絡は手紙だけ。朝は近所の清掃、さらに修行期間中は男性も女性も丸刈りという非常に過酷なものだ。

 しかし秋山木工では、高級ブランドショップやホテルなどに納品される一点ものの高級家具を作る技術を丁稚生活で身につけることができる。ただ、その過酷さから丁稚のほとんどが途中で脱落してしまい、2022年春に至っては新人の丁稚すら来ない状況だ。

 現在の丁稚は、17年に秋山木工に入社した2名のみ。名門・京都大学に入ったものの学校に通えなくなり中退した、実家が家具製造会社の内藤と、京都で8代続く造園会社の跡取りの加藤だ。加藤の場合、木工は異業種なのだが、跡取りとして造園会社で職人たちをまとめるリーダーシップとマネジメント力を学びたく秋山木工入りしたという。

 2人は丁稚6年目。本来1年の見習い期間を含め5年で丁稚を修了し、そこからは2年間の秋山木工への「お礼奉公」期間になるはずなのだが、技術力がまだ足りず、それでいて積極的な姿勢がどうにも見えない2人の態度に、修了は早いと秋山社長から「待った」がかかった形だ。

 一方で、秋山社長はあまりに離脱者が多い丁稚制度の改革も進める。内藤と加藤の兄弟子にあたり、技能五輪でメダルも獲得した職人・佐藤を教育係に据え、いきなり出先で仕事をさせるのではなく、半年間の教育期間を設けることにした。

 そのような中で、内藤と加藤の「丁稚卒業」がほぼ1年遅れの23年2月に決まる。修了式当日、スーツ姿の内藤と加藤は堂々たるスピーチを行い、丁稚から職人となった証の法被に袖を通す。なお番組の最後、23年春には4名の新人丁稚があいさつする様子が伝えられており、その中には前編で中学校を卒業したら秋山木工に入る、と話していた松下の姿もあった。

前編はこちらから
https://www.cyzowoman.com/2023/04/post_428829_1.html

『ザ・ノンフィクション』どうにも頼りない6年目の2人

 丁稚修行中の内藤、加藤はともに硬い表情、低めのテンション、少ない口数で、それは「寡黙な職人気質」というよりは、コミュニケーションがとにかく苦手という雰囲気だった。

 加藤の調子の悪いカンナの刀を、年下の先輩職人が調整してくれているとき、加藤は先輩の周りをただうろうろしており、 謝罪やお礼を伝えている様子は放送されていなかった。手持ち無沙汰なら先輩がカンナを調整する手元を観察すればいいのにと、見ているこっちがやきもきしてしまう。

 過去の秋山木工シリーズから見ても2人はどうもこんな感じで、秋山社長や先輩職人たちから指導を受けても、暖簾に腕押しな様子。2人に悪意があり、ふてくされてわざと消極的な態度を取っているのではないことも見ていてわかるだけに、これは指導する側は大変だろう。

『ザ・ノンフィクション』そんな2人も、丁稚修了式では……

 そんな頼りない丁稚の2人だったが、丁稚生活最後となる22年12月に開かれた秋山木工の木工展で、内藤は訪ねてきた加藤の父に「いつもお世話になっています。加藤くんなくしては僕は生活できないんで……」と話し、「大人」な応対をしていて驚いた。そして、木工展を訪れた客にも、マスクをしていても笑顔なのがわかるくらい、にこやかに接していた。

 その後の秋山木工の修了式で、蝶ネクタイをつけた内藤は、背筋をピンと伸ばして、はつらつと晴れやかな顔でスピーチ。大学不登校と丁稚生活で暗くなっただけで、もともとは明るい性格だったのか、それとも何かブレイクスルーにつながるような大きな出来事があったのか、人が入れ替わったのではと思うほどの変貌を遂げていた。

 一方、加藤の雰囲気はそのままだったが、それまで、阪神タイガースを語るとき以外は感情を出すことがほぼなかった加藤が、修了式でこれまで支えてくれた周囲や家族への思いをまっすぐ伝えるスピーチは感動的で、寡黙な人が絞り出す言葉ならではの重みがあった。

 2人は頼りないまま修了するのだろうと思っていたので、修了式で見せた力強さにいい意味で裏切られた。おそらく今後も『ザ・ノンフィクション』で秋山木工シリーズは続いていき、その際は松下など新人丁稚がフォーカスされるのだろうが、その時にちらっとさりげなく出てくるであろう、お礼奉公をしている内藤、加藤を見るのが今からとても楽しみだ。

『ザ・ノンフィクション』丸刈りでスマホ禁止の過酷さ……丁稚志願の14歳に思うこと

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。4月9日の放送は「ボクらの丁稚物語 2023 前編 ~泣き虫同期の6年~」。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 横浜市の家具製作会社「秋山木工」では、住み込みで5年間修行する丁稚奉公制度が採用されている。この間、丁稚たちは恋愛禁止、携帯電話は私用で使えず、家族への連絡は手紙だけ。朝は近所の清掃、さらに修行期間中は男性も女性も丸刈りという非常に過酷なものだ。

 ただ、秋山木工での厳しい修行を通じ、高級ブランドショップやホテルなどに納品される一点ものの超高級家具を作る技術を身につけることができ、若手職人がその技能を競う「技能五輪」においても、秋山木工は多くの入賞者を輩出している。

 2011年の作業場風景では、10人以上の丁稚が修行に勤しむ様子が映されていた。しかし丁稚のあまりに過酷な生活は脱落者も多く、22年春に至っては、丁稚はゼロ。その後、入社直前まで進んだ丁稚もいたようだが、入社当日、その新人丁稚は現れなかった。昨年秋の時点で、秋山木工にいる丁稚は内藤、加藤、山田の3人しかいない。

 秋山利輝社長(79歳)もこの状況に危機感を覚え、ものづくり大学名誉学長の赤松明氏にコンサルティングしてもらう。赤松氏からは、秋山社長の人間性や親孝行を重視した指導など、一本筋なところは好きだと前置きした上で、丁稚制度のやり方には問題があることを指摘。

 さらに赤松氏は「『秋山木工』っていう会社に対して日本の木工会社はあまりよく思っていない。要するに奇異な感じ」とも話す。これを受け、秋山社長は従来の住み込みの丁稚スタイルに、通いのスタイルも追加することを決めるも、かつて成功していた方法を変えることへの不安ものぞかせていた。

 一方、うれしい出来事もあった。千葉で暮らす14歳の中学3年生・松下が、前回秋山木工を特集した『ザ・ノンフィクション』を見て、母親経由で秋山木工に連絡を取り、10日間の丁稚体験を行い、中学卒業後は入社したいとの意志を見せているのだ。秋山社長は千葉の松下の実家を訪ね、松下の母、伯父、叔母とも話す。松下は秋山社長の著書も読んでいるという。

 残った丁稚3人の様子はというと、加藤は丁稚生活6年目ながら「辞めたい」と実家に帰ってしまっていたが、父親に諭され秋山木工に戻る。また、入社4年目の山田は技能五輪の県予選を通過する。昨年も県予選を突破したものの、生活態度に問題があると社内で待ったがかかり、全国大会出場はかなわず、2年越しの念願の出場であったはずなのだが、日誌では技術が至らないことを気にする文面が増え、結局、大会には出ないと決断。その数日後、山田は会社を辞めてしまった。

前回の秋山木工の様子はこちらから

『ザ・ノンフィクション』秋山木工は中高年を採用してみては?

 過酷な丁稚制度を敷く秋山社長は、てっきり「俺のやりたいようにやる。嫌ならついてこなくていい。俺の代で会社が終わっても構わない」という人かと思っていたが、新人が来ないことや、定着しないことに思い悩んでいるのにはびっくりした。

 先週同番組で特集した「レストラン大宮」の大宮勝雄シェフ(72歳)もそうだが、「昭和的スパルタスタイル」を曲げたくないのであれば、若者でなく、昭和的なシゴキの洗礼を大なり小なり受けている昭和の人、中高年を雇えばいいのでは。

 中高年を一から指導するのは気を遣うし、面倒だと思う人や組織が大半だろう。しかし、高齢社会日本で「若い子」は取り合いなのだ。冗談抜きで中高年の丁稚はダメなのだろうか。

『ザ・ノンフィクション』この世界に飛び込む14歳も

 一方、この過酷な秋山木工に飛び込まんとする14歳もいる。自らこの世界に飛び込もうとする中学3年の松下は、14歳とは思えぬ行動力だ。秋山社長もバイタリティある若き丁稚候補を前にとてもうれしそうだった。過去の秋山木工シリーズを見て、「つらそう」ではなく「ここに入社したい」と思う人がいるのだから、人の感じ方はさまざまである。

 とはいえ、松下はまだ14歳。社会に数多くある“ほかの選択肢”を知らないのではないか。入りたくて入ったはずの業界を、疲れ果てて去る若者も少なくないだけに、周囲の大人が松下の決断を手放しで肯定していいのだろうかと複雑な思いもある。

 秋山社長は松下の家を訪ねた際、将来は技能五輪で金メダルを獲ることを松下と誓い合っていた。私の不安が杞憂に終わることを願う。

 次週は続編。いよいよ2人になってしまった丁稚。そして14歳の新人は、果たして本当に秋山木工へ丁稚として入ってくるのだろうか。

『ザ・ノンフィクション』老舗レストランで働く若者たちに見る、仕事のより良い辞め方とは?

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。4月2日の放送は「新・上京物語 2023新 ~二十歳の決断~」。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 若者の初就職を見つめる毎年春の人気シリーズ「新・上京物語」の後編。2021年4月、浅草に本店を構える洋食店「レストラン大宮」に3人の新人が入る。栃木県にある高校の調理科を卒業した18歳の「ちはる」と「らいち」、茨城県出身で、調理師専門学校を卒業した19歳の「あかり」だ。

 らいちとあかりは厨房配属に、ちはるも調理志望だったが、当初はホール配属に。その後、念願の厨房配属になるものの先輩に叱責されることが多く、より適性を感じたホールの仕事に活路を見いだす。

 3人が入社してから約1年半たった昨年9月末、厨房の仕事をしていたらいちは会社を辞めたいと大宮勝雄シェフに切り出す。週1休みで、プライベートの時間が欲しいと話すらいちを引き留める大宮シェフだったが、次の職場の面接を受けていると聞き観念した模様。

 らいちと同じ高校を卒業したちはるは、らいちの退職に思うところがあったようで、「しんどいよ、休みもないし」「今辞めたら『もったいないし』っていう気持ちもあるし」と複雑な胸中を話す。なお、らいちは宣言通り退職。厨房からホールスタッフへと職種を変え、ほぼ週休2日になり、プライベートの時間も増えたようだ。

 一方、明るかったちはるはどんどん元気をなくしていく。遅刻も増えていき、大宮シェフはちはるに「辞めたいんでしょ」と話しかけ、ちはる自身も辞めたいと話したようだが、最近のちはるの勤務態度を問題視していた大宮シェフは、辞めるにしろもっと仕事を頑張ってから辞めたほうがいい、と諭す。

 ちはるを心配する人もおり、レストラン大宮の元ホール担当で、現在は別の有名レストランのホールで働く先輩・きららは、ちはるを食事に誘い、悩む彼女を否定せず優しく励ましていた。

 また、23年2月にらいちが久々にレストラン大宮を訪ねた際も、ちはるを心配し声をかけていたが、彼女はひたすら疲れた様子で、きららやらいちの励ましは心に届いていないように見えた。

 そして、ちはるは勤務中に過呼吸を起こし倒れ、栃木の実家に帰ると、結局そのまま退職することに。番組の最後では、23年春から働く新人が「レストラン大宮」の寮に入る様子が伝えられていた。

『ザ・ノンフィクション』会社はいきなり辞めたほうがいい?

 退職を選んだらいちは“青天の霹靂”的な辞め方だった。一方、ちはるは22年秋頃から明らかに元気がなくなっていき、大宮シェフとも辞めることを話していたようだが、説得もあってかそこで辞めきれず。結局翌年、職場で倒れ実家に帰ることになりと、退職の予兆から実際に辞めるまで期間があった。

 どんな職場でも、いきなり辞める人もいれば、辞めそうな気配を見せつつも、退職までの期間が長い人もいる。しかし、らいちとちはるの対照的な退職の仕方を見ると、やはりらいちの「いきなり型」のほうがいいのだろう。これは周りのためというより、本人のためだ。明るかったちはるは、先延ばしにしているうちに、すっかり元気をなくしてしまっていた。

 ちはるは仕事において、何がつらかったのだろう。厨房の仕事で着実に成果を上げ、周囲の信頼を得ていく同期のあかりを見つめるちはるの姿が印象的だったが、厨房の仕事への思いが本当はまだあったのか。それとも自分が認められない切なさや悔しさがあったのだろうか。だが、最後の頃のちはるは、疲れ切っていて、彼女自身も何がつらく、悲しいのかすらわからなかったようにも見えた。

 一方、らいちは「休みが少ない」というレストラン大宮への不満が明確かつシンプルで、そこに焦点を絞り、休日の多い次の職場を見つけている。会社を辞めるなら、らいちのように、ゆとりと元気があるうちに実行したほうがいいと思った回だった。

 次週も新人の成長を見つめる恒例シリーズ「ボクらの丁稚物語 2023 前編 ~泣き虫同期の6年~」。令和においても、男女問わず丸刈りの厳しい「丁稚奉公」制度を敷く秋山木工。5年の丁稚生活を終える内藤と加藤だが、職人昇格に思わぬ「待った」がかかり……。

『ザ・ノンフィクション』令和VS昭和の労働観――老舗レストランに就職した若者の“甘さ”とは?

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。3月26日の放送は「新・上京物語 2023 前編 ~二十歳 夢の迷い道~」。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 若者の初就職を見つめる毎年春の人気シリーズ「新・上京物語」。2021年4月、浅草に本店を構える洋食店「レストラン大宮」に3人の新人が入る。栃木県にある高校の調理科を卒業した18歳の「ちはる」と「らいち」、茨城県出身で、調理師専門学校を卒業した19歳の「あかり」だ。

 昨年の『新・上京物語』。3人の入社したての日々はこちらから

 前回放送から1年。入社2年目となったちはるは浅草店でホールの仕事を、らいちは新丸ビル店、あかりは浅草店で調理の仕事を続けている。

 らいちの先輩で、新丸ビル店の厨房を任されている入社5年目、24歳の古川はレストラン大宮で提供している洋食から、より本格的なフレンチを勉強したいと新たな目標を抱くようになる。大宮勝雄シェフも古川の思いを汲み、フレンチの巨匠が集うイベントに古川を連れていく。さまざまな著名フレンチシェフと大宮シェフの親交の深さを目の当たりにし、古川は圧倒されつつも刺激を受けた模様。

 なお、自身も26歳で世界に飛び出した大宮シェフは、キャリアアップによるレストラン大宮からの従業員の「卒業」は歓迎する方針。レストラン大宮から「公邸料理人」に転身を遂げ、世界各国の日本大使館で、外交官が開くパーティーを豪華な会食でサポートしている料理人も多い。

 ステップアップの期待が膨らむ古川だが、晴れて卒業するには右腕のらいちの戦力化が求められる。しかし、らいちは大宮シェフに22年9月で会社を辞めたいと連絡する。らいちは週1の休みしかなく、プライベートの時間が少ないため転職を決意した旨を話すも、これまでこの世界で働きに働いてきたであろう大宮シェフにしてみれば、らいちの転職理由はピンとこなかったよう。2人の話し合いはしばらく平行線をたどっていたが、らいちからほかの会社の面接も受けている、と聞かされた大宮シェフは観念する。

 古川はらいちの心境の変化は察していたようで、持ち場などを変えてみるといった配慮はしていたが、(手を打つのが)遅かったようだと話す。らいちと同じ高校出身のちはるも、らいちの決断に驚きつつも、自分も辞めたいと思うことがあると明かす。番組の最後はらいちの送別会で終わった。

『ザ・ノンフィクション』令和VS昭和の価値観

 20歳のらいちの「週一休みはきつい、プライベートの時間も大切にしたい」と、71歳の大宮シェフの「目標や夢のために四の五の言わずにまず働け、働けばいろいろ見えてくる」は、令和と昭和の労働観のぶつかり合いといった趣だった。どちらの言い分もわかるし、どちらが間違っていて、どちらが正しいということでもないだろう。

 ただ、これはあくまで広い視野で見ればという話。「レストラン大宮」は有名老舗レストランなのだから、料理修行の過酷さは予想できたはず。らいちが抱いた「レストラン大宮で頑張る」という入社前の志は、結果として見積りが甘かったのだろう。

『ザ・ノンフィクション』そもそも飲食は多忙な業界

 飲食業界は多忙な印象があるが、実際、厚生労働省の「平成 30 年就労条件総合調査の概況」を見ても年間の休日数は、他業種と比べ一番少ない(※この資料上では宿泊業・飲食業で定義されている)。

 そもそもレストラン大宮に限らず、飲食業界は休みが少なくなりがち。調理科を卒業したらいち自身も、これを知らなかったはずはないと思うが、それをリアルな生活としてはとらえきれていなかったのだろう。

 これはらいちに限ったことではない。ある職業を目指しているときは、夢や希望ばかり目に入り、過酷さであったりしんどい側面は「自分ならそんな困難だって乗り越えられる」とつい甘く見てしまいがちだし、若くて就業経験がなければなおさらだ。

 なお、らいちの部屋には調理科の学生時代のコックコートが飾られており、色紙代わりに同級生からの寄せ書きが全面に書かれていた。高校卒業から1年半ほどたった番組取材時、本格的な料理の世界を離れた調理科の同級生は多いと、らいちは話していた。

 プライベートの時間が欲しいと話していたらいちだが、同業への転職を志望しているよう。「転職で大幅にプライベート時間増」となるのは難しそうにも思えるのだが、このあたりは後編で明らかになるのだろう。

 次週は今週の続編。らいちと同じ高校を卒業したちはるも、らいちの退職に思うところがあったようで……。

平成 30 年就労条件総合調査の概況(休日数はp5)

『ザ・ノンフィクション』新宿二丁目の深夜食堂、かかあ天下に見える夫婦の内情とは?

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。3月19日は「新宿二丁目の深夜食堂 後編 ~名物夫婦 53年の物語~」というテーマで放送された。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 新宿二丁目の雑居ビル2階にある、深夜0時から朝9時まで営業の深夜食堂「クイン」。調理担当の夫・孝道とホール担当の妻・りっちゃんという、ともに77歳の夫婦で切り盛りしており、1970年の開業から50年間以上も、新宿の街を見つめてきた。すでに飲んできた客も多いはずだが、「クイン」で定食や総菜を食べながら飲み直す人も多く、閉店前の朝には空になったビール瓶が並ぶ。

 「クイン」の店内は昔ながらの純喫茶とスナックを足して2で割ったような雰囲気で、日替わり定食は400円と格安だ。昨今の食材の高騰で、飲食店の価格上昇も話題になっているが、番組スタッフが「クインも値上げをしないのか」と尋ねたところ、孝道は「定食だけで(酒を飲まずに)来るお客さんを見るとさ、金がないんだなと思ってさ」と話し、経営は家賃を賄えれば良い、という方針のよう。「今はね、運動のために(店を)やっている」と笑う。

 りっちゃんはいざ店内に入れば威勢よく場を取り仕切るが、2階にある店に向かうための階段の上り下りもつらそうで、夫婦は引退も考えている。しかし、客からは続けてほしいと懇願されている。

 店を訪れる客もさまざまだ。二丁目でバーを経営する65歳のあきは40年近く店に通う常連で、「クイン」は5品おまかせ1万円のあき専用裏メニューも用意。裏メニューには大きな金目鯛一匹丸ごとの煮つけやステーキも含まれおり、豪勢だ。

 43歳のみなみも20年来の常連で、本業は六本木の老舗ショーパブ「金魚」のダンサー。新型コロナウイルスの感染拡大でショーの仕事が激減したことや、その時期に母親を自宅に呼び寄せたことなどもあり、介護の仕事に興味を持ち、今はダンサーと介護士の二足の草鞋を履く生活を送っている。

 40歳の勇輝は、母親の死後、父親との関係が悪化したことを悩んだ際、りっちゃんに相談し、ずいぶん気が楽になったようだ。社交ダンスを始めた勇輝の踊りを見たいとりっちゃんは話すが、足が悪いりっちゃんにスタジオまで来てもらうのも悪いと、勇輝は社交ダンスをスタジオで撮影。りっちゃんは「クイン」で目を細めながらその動画を眺めていた。

 孝道が78歳の誕生日を迎え、あきはイチゴのホールケーキをプレゼントする。りっちゃんはスニーカーを贈り、その後、2人は新宿の街でデートを楽しんでいた。「クイン」は来年、店舗の賃貸契約の更新があるが、店の進退はそのときの孝道、りっちゃんの体調次第とのことだ。

『ザ・ノンフィクション』一見かかあ天下に見える夫婦の絶妙なバランス

 孝道はりっちゃんのことを「りっちゃん見ててあれでしょう? 素晴らしい人間だと思うでしょ?」「なかなかいないよ、ああいう女は。いい女だなと思うよ」とベタ褒めしていた。日本の78歳でこんなに妻のことを褒める夫は稀有といっていい。あまりに褒めるので、逆に何かやましいところがあるのではと邪推してしまうほどだ。

 最初はパワフルなりっちゃんのかかあ天下っぽく見えたが、孝道は「尻に敷かれた」感じはしない。「かかあ天下な妻」は「尻に敷かれた夫」とワンセットにとらえられがちだが、孝道はマイペースで飄々としており、気弱な雰囲気はまったくない。

 そしてよくよく見ていると、りっちゃんも孝道を尻に敷いている感は不思議とない。番組の最後の新宿デートでキャベツを食べていたときには、「クイン」で孝道が出すキャベツのほうがおいしいと、可愛いことも言っていた。

 なお、「クイン」が値上げをしないのも孝明の意思のようで、りっちゃんは値上げ賛成派だったよう。りっちゃんと孝道は、絶妙なパワーバランスを保ったいい夫婦に見えた。

 次回は『新・上京物語 2023 前編 ~二十歳 夢の迷い道~』。若者の社会人デビューを見つめる春の恒例人気シリーズ。昨年春の放送で、新米時代の様子が伝えられていた浅草の洋食の老舗「レストラン大宮」で働く、らいち、あかり、ちはるの3人のその後について。

妻夫木聡、『Get Ready!』のエースは不得手な役? キャリアの裏に隠された“苦手分野”

――ドラマにはいつも時代と生きる“俳優”がいる。『キャラクタードラマの誕生』(河出書房新社)『テレビドラマクロニクル1990→2020』(PLANETS)などの著書で知られるドラマ評論家・成馬零一氏が、“俳優”にスポットを当ててドラマをレビューする。

 妻夫木聡が主演を務めた日曜劇場のドラマ『Get Ready!』(TBS系)は、仮面ドクターズと呼ばれる正体不明の闇医療チームが暗躍する姿を描いた医療ドラマだ。

 仮面ドクターズの執刀医のエース(妻夫木)は、最新の医療機器を取り揃えたオペ室で、どんな難しい手術でも成功させる天才医師。しかし、性格は冷淡で高額な報酬を要求する一方、患者に「生き延びる価値」があるかどうかで、オペをするか否かの最終決定を下す。

 多額の報酬を要求する代わりにあらゆる手術を成功させる闇医者という設定は、手塚治虫の漫画『ブラック・ジャック』(秋田書店)の令和版といった趣で、リアル志向が強い日曜劇場では異色作といえる。

 エースを演じる妻夫木は、2003年に医療ドラマ『ブラックジャックによろしく』(TBS系、以下『ブラよろ』)で主演を務めている。『ブラよろ』は妻夫木にとって連続ドラマ初主演作で、妻夫木が演じる研修医の視点から、医療現場の過酷な現実を描いた「ブラック・ジャックにはなれない医師」の現実の苦悩を描いたヒューマンドラマだった。

 あれから20年がたち、“令和のブラック・ジャック”といえるエースに妻夫木が挑んでいる姿を見ると、感慨深いものがある。

『ジョゼと虎と魚たち』で評価を得た妻夫木聡

 高校時代にファッション誌「東京ストリートニュース」(学研パブリッシング)の読者モデルとして人気を博した妻夫木は、1997年の「アホポン・プロジェクト」で第1回グランプリを獲得したことをきっかけにホリプロに所属。その後、着々とキャリアを積み重ね、映画『ウォーターボーイズ』(01年)やドラマ『ランチの女王』(フジテレビ系・02年)といった当時の話題作に出演し、注目されるようになった。

 俳優としての評価が決定的なものとなったのは、04年に出演した犬童一心監督の映画『ジョゼと虎と魚たち』だろう。

 本作は、足に障害を抱えた少女・ジョゼ(池脇千鶴)と大学生の恒夫(妻夫木)の出会いと別れを描いた物語。祖母と暮らす民家に引きこもり、社会との接触を拒んでいたジョゼと偶然知り合った恒夫は、自然と彼女の家を訪ねるようになり、仲を深めていく。

 恒夫は不思議なキャラクターで、誰とでも親しくなる人気者だが、一方で誰にも心を開いていないような冷淡さを抱えている。今風にいうと“リア充大学生”といった感じで、ほかの俳優が演じるとだいぶ嫌味な男になってしまうのだが、妻夫木が演じると、妙な愛嬌があって憎めない。

 人間的魅力と言ってしまえばそれまでだが、この他人との距離の詰め方が見ていて心地よく、そこに嘘がないのが妻夫木の魅力だろう。また本作で妻夫木は本格的なベッドシーンにも挑戦しているのだが、障害を抱えたジョゼと抱き合う場面からにじみ出る2人の初々しい色気は、これまた見ていて心地いい。

 何より評価を決定づけたのが、恒夫がジョゼと別れた後に泣き崩れる場面。2人が別れた理由は語られず、恒夫の「僕が逃げた」というナレーションで片付けられるのだが、自分から逃げたくせに失恋に傷つく彼の振る舞いが、とても身勝手なものだからこそ、とても人間味あふれるものとなっていた。この「泣き」の芝居で、俳優・妻夫木聡の評価は決定的なものとなった。

『Get Ready!』は妻夫木聡の苦手分野?

 その後も、李相日監督の『悪人』(10年)や石川慶監督の『ある男』(22年)といった映画に出演し、妻夫木は国内外の映画賞を獲得している。40代の俳優の中で、一番うまいといっても過言ではない。

 だが、『Get Ready!』を見ていると、彼のような名優でも不得手な役があるのかと、逆に驚かされた。妻夫木の演技は、ムダな要素を削ぎ落とした自然体のものとなっている。そのため、どんな役を演じても作品世界に綺麗に溶け込んでしまうのだが、唯一苦手としているのがケレン味の強いヒーロー性が求められる役。映画『どろろ』(07年)やドラマ『若者たち2014』(フジテレビ系・14年)といった主演作では、演技が空回りして、力を出しきれていないように見えた。

 今回の『Get Ready!』のエースも、仮面を付けた闇医者チームの天才執刀医で、手術の始める時に「Get Ready!」と決め台詞を口にするヒーロー性の高い役である。しかもエースは、感情を露わにしないクールな男だ。そのため台詞も少ない難役だが、おそらく妻夫木は、自分の資質と合っていないとわかった上でこの役に挑んだのだろう。残念ながらその挑戦は成功したとは言い難いものの、果敢に挑戦した妻夫木の役者魂には敬意を払いたくなる。

 今年3月7日、妻夫木は「サッポロ生ビール黒ラベル」の新CM完成披露イベントで、新たな一歩を踏み出す大人たちへのメッセージとして「抗い続けること」という言葉を選んだ。そして、夢を叶えたとしても、さらにもっと高みを目指すことが人間的な魅力につながるため、「満足せず、妥協せずに抗い続けてもらえたらうれしいです」と語っている。

 おそらく妻夫木は、今後も俳優としての高みを目指し、自分には向いていない難役に挑み続けるのだろう。“ブラック・ジャック”への道はまだまだ険しいが、妻夫木の役者魂をもってすれば、いつの日かヒーロー役をものにできるのかもしれない。

『ザ・ノンフィクション』新宿二丁目の深夜食堂、77歳名物ママの特殊な“地雷”とは?

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。3月12日は「新宿二丁目の深夜食堂 前編 ~人生を奏でるビール瓶~」というテーマで放送された。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 新宿二丁目の雑居ビル2階にある、深夜0時から朝9時まで営業の深夜食堂「クイン」。調理担当の夫・孝道とホール担当の妻・りっちゃんという、ともに77歳の夫婦で切り盛りしており、1970年の開業から50年間以上も、新宿の街を見つめてきた。

 「クイン」の店内は黒を基調とし、観葉植物や額縁に入った絵画が飾られ、昔ながらの純喫茶とスナックを足して2で割ったような雰囲気だ。メニューの定食は400円台のものからあり、焼き魚、煮魚など魚系のメニューも豊富。飲んだあと、仲間と連れだって「クイン」を訪ねた客は、ご飯とおかずと味噌汁を前に「飲んだ後に食べるご飯うまいね」と微笑む。

 孝道とりっちゃんの出勤は毎日午後11時半。孝道は自転車通勤だが、りっちゃんは自転車で転んでから、タクシー通勤だ。りっちゃんはいざ店内に入れば威勢よく場を取り仕切るが、2階にある店に向かうための階段を上るのもつらそうで、夫婦は引退も考えている。しかし、客からは続けてほしいと懇願されているという。

 「クイン」を訪れる客も個性的だ。週末に現れるケイコは普段は会社員をしているが、女装をしてクラブで踊ることにハマり、新宿に部屋まで借りる熱の入れよう。飲んで踊ったあとに「クイン」のドライカレーを食べ、一息つく。

 25歳で塾講師をしている葵は家族との間にわだかまりがあり、高校生の頃から一人暮らしをしている。父親と血がつながっていないことを小学校高学年で知り、また、母親も忙しかったようで、ご飯はお金を渡され、オリジン弁当で買うことが多かったと話す。

 名物ママであるりっちゃんの人柄や、孝道の作る魚系のおかずに惹かれ「クイン」を訪れる葵だったが、ある日、葵はお金を下ろすのを忘れ「クイン」で飲食をしてしまい、撮影していた番組スタッフにお金を借りて支払おうとしたことが、りっちゃんの逆鱗に触れる。金を貸そうとしたスタッフや、店にいた周りの客が葵の分は自分が払う、と言ったのも良くなかったようで、葵が近所のコンビニにお金を下ろしに行くまで、また行った後も、りっちゃんの怒りは冷めやらぬようだった。

『ザ・ノンフィクション』りっちゃんの“地雷”に違和感

 葵のお会計の件で、りっちゃんはずいぶん葵を叱っていたように見えた。飲食店でご飯を食べ、うっかり財布にお金がなかったときに「その場にいて、また会えそうな人から金を借りて支払う」と「近所のコンビニで下ろしに行く」のどちらも問題ないように思うのだが、りっちゃん的には前者の行いは地雷だったようだ。

 番組ナレーションはこのくだりに「今時こんなふうに若いお客を叱れる店主がいるでしょうか」とコメントを付けていたが、これにも違和感があった。店主が叱る正当性は「お客が明らかな悪事をした」という前提あってのことで、今世間で騒がれている「回転寿司店で客がふざけて醤油さしを舐める」みたいな明白な迷惑行為ならともかく、葵がしたことは悪事とされることなのだろうか。

 なお、りっちゃんはその後、この件についてスタッフに「あなたが私を理解しなくてもそれはあなたの自由です」と話しており、本人としても、これは特殊な“地雷”である、という意識はあったのかもしれない。

 叱られること自体、とても気が滅入ることだが、「相手が怒っているポイントがどうにもよくわからないまま叱られ、立場的に相手のほうが強いので反論もできない」というのはつらい。何より、食事のときは叱られたくない。

 次週は今週の後編。引き際も考え始めた夫婦だが、いったい「クイン」はどうなるのか。

『ねほりんぱほりん』羽生結弦オタクがJO1・木全翔也に推し変! その共通点とは?

NHK Eテレの人気番組『ねほりんぱほりん』のシーズン7が昨年10月7日よりスタートした。かわいらしいモグラの人形ねほりん(山里亮太)とぱほりん(YOU)が、ブタの人形に扮した“顔出しNG”の訳ありゲストに、聞きにくい話題を“ねほりはほり”聞き出す新感覚トークショーだ。

※本記事は『ねほりんぱほりん』シーズン7「あの人は今!? その後を知りたいSP」のネタバレを含みます

『ねほりんぱほりん』羽生結弦オタクのあの人は今……あのアイドルに推し変

 シーズン7最終回となる今回は、毎年恒例の「あの人は今!? その後を知りたいSP」。過去に放送された「羽生結弦選手に出会って人生変わった人」「元薬物依存症」「プロになれなかった元奨励会員」から1名ずつ出演者が登場し、それぞれが現在までに起こった変化を語った。

 まずは2019年3月に放送された「羽生結弦選手に出会って人生変わった人」から、メイさん(20代・介護士)が登場。当時、「“生命維持費”と呼んでいる羽生口座がある」「(推し活に)500万円くらいは使ってると思います、でもタダなんですよ、生命維持費だから」など、名言を残して話題になった彼女だが、羽生選手は昨年、競技界からの引退を発表した。

 引退会見は、テレビの超至近距離で正座して見たというメイさん。「引退っていうよりは(プロ転向で)次のステップに行くっていうふうな会見だったので、決断したことに対してうれしくもあったし、ちょっとさみしくもあったし」と複雑な心境に。

 会見終了後もテレビの前から7時間動けず、気づけば深夜2時に。「突然どこからともなく『海に行け』って聞こえてきて。そのまま夜中、タクシーで海に行って。砂浜に木の枝で、羽生さんが今まで滑ったプログラム名とかを書いた」「波にかき消されて」「すっごい泣きました」とキケンなほどの喪失感に見舞われたそうだ。

 しかしその後、心境に変化が。羽生選手出演予定のアイスショーのチケットが外れたとき、「前は何が何でも手に入れてやるぞ! っていう燃え上がる気持ちがあったんですけど、そうは思わなかったんですよね……」と以前のような熱を失ってしまった自分を発見。「羽生さんの推し活はこれで卒業」と心の整理がついたそうだ。

 「自分の生活で刺激がない中で、羽生さんが世界の舞台で戦ってライバルとしのぎを削って戦っていく姿がすごく好きだったので。北京オリンピックで羽生さんが『全部出し切った』と言っていて、私もやり切ったなという実感もありますし、終わりだなというふうに感じたんですよね」と振り返るメイさん。

 なんと現在は意外にも、「JO1の木全(翔也)くん」に推し変。「オーディション番組で戦ってる姿に心打たれてしまいまして」とのことで、“戦う姿から元気をもらう”という推し方針は受け継がれていた。メイさんが情熱を傾けられる新しい対象と出会えてよかった!

 一方で「でも、羽生さんが結婚しますって言ったら3日3晩寝られないですね」と、まだ複雑な思いも。「推しの彼女ってゴキブリと一緒だなって思ってて」「いるんだろうなってわかってるけど、別にこの場に現れてくれなきゃ、キャー! とも言わないじゃないですか」「でも見たら(自主規制)」と語り、新たな名言「推しの彼女はゴキブリ」を残して去っていった。メイさんのJO1熱の行方も番組でぜひ見守ってほしい。

 2人目は、16年10月放送の「元薬物依存症」で初登場したエリさん(30代)。13歳からマリファナとシンナー、20歳から覚醒剤を使用し、23歳で逮捕されたエリさんは、依存症回復施設で2年生活したあと、社会復帰。ねほりんとぱほりんに定期検査をされており、今回で11回目の出演となる。

 今も薬物は絶てているというエリさんだが、最近、過去の薬物仲間と再会してしまったそう。かつてのボス(売人)ともつながっていた人物だそうで、エリさんは会わないよう気をつけていたものの、事情を知らない人の計らいで一緒に食事をすることに。

 元薬物仲間から、小声で「今やってる?」とささやかれてしまったエリさん。すると「手先がキンキンに冷えて」「やったことある人しか経験できないと思うんですけど、手冷たくなるんですよ」とフラッシュバック。テーブルの上にあるはずのない薬物が見えてきたそうだ。

 「体は覚えているんだなって」「物理的距離というか、そのものから離れるっていうことが大事」と再確認したという。やめたいと思ってもなかなか抜け出せない――違法薬物の怖さを教え続けてくれるエリさんだった。

 3人目は、19年2月放送の「プロになれなかった元奨励会員」からケンタロウさん(30代)が登場した。5歳から将棋一筋。小学生時代も放課後は将棋道場へ直行し、夜11時頃まで将棋を指す毎日だったケンタロウさん。奨励会には入れたものの、26歳までにプロ棋士になれないと退会というルールにより、プロの道を諦めていた。

 その後、仕事を見つけて会社員として勤めていたはずだが、今回「実は(『ねほりんぱほりん』)放送後に会社を辞めまして、すぐ」と告白。「『ねほりんぱほりん』出させていただいて、人生振り返ったときにやっぱり将棋大好きだったんだなと。将棋界に戻りたいと」と思ったそうで、「指導棋士」の道へ進んだという。

 指導棋士とは、アマチュアの指導・育成など、将棋の普及活動を行う日本将棋連盟登録の棋士。ケンタロウさんは、指導棋士は「ごはんが食べられない」など、薄給だとうわさを聞いていたそうだ。番組出演がケンタロウさんの人生を変えてしまった結果に、言葉を失うねほりんとぱほりん。

 しかし心配はいらなかった。なんと運よく「藤井聡太ブーム」が到来。将棋教室に通う子どもが増え、教室の数自体も増加し、さらにイベントの仕事もたくさん入るようになったそうで、「ふたを開けて見れば大忙しで、2年目ぐらいには会社員時代の2倍の収入に」とのことだった。藤井聡太の偉大さをあらためて実感した。

 今回が最終回となるシーズン7でも「シングル里親」「友情結婚した人」などその後が気になるゲストが多くいた。シーズン8も楽しみに待っています!