SNSで集客し、カウンセリングやコンサルタントビジネスを行う「キラキラ起業女子」。この1、2年で一気に増えている印象だが、内容に見合わない高額な情報商材を売りつける起業家が増えた結果、「キラキラ起業女子に騙された」と被害を訴える声が続出しているのだ。ずさんなビジネスの被害に遭ったという告発者の1人に話を聞いた。
■1,000万円かけた勉強内容を、たった50万円で学べるという錯覚
ブロガーのしおからさんは、自身が体験した返金トラブルを世に周知させるために、ブログ「キラキラ起業女子研究所」を立ち上げた。すると、しおからさんのもとには、キラキラ起業女子とのトラブルを経験したと訴える女性たちから、次々にメッセージが送られてくるようになったという。
「詐欺まがいのサービスに気付いても、ほとんどの人が誰にも言えずにいる状況です。私自身、返金してもらうまでに、ものすごく葛藤しました」
しおからさんが、“A”という起業支援コンサルタントに出会ったのは2017年のこと。
「当時の私は、ビジネスを始めたばかりでした。独学だったので『本当にこれでいいのか?』という不安は常にあり、正しい方法を学ぶため、いろいろな起業家の情報を集めていたんです。そのとき憧れを持った起業家が2人いました。するとほぼ同じタイミングで、その2人がすごくオススメする起業家として名前を挙げたのがAです」
「憧れの人たちが絶賛する存在なのだから、この人はスゴイ!」と思い込んでしまったという。
自身を起業支援コンサルタントと名乗るAは、6カ月50万円の継続講座の生徒を募集していた。起業したい女性に向けた講座で、商品設計からブランディングの方法までを教えるというもの。具体的には、月に2度、1回1時間オンラインでのコンサルのほか、24時間いつでもAにチャットで質問し放題、コミュニティへの所属権利など、魅力的な内容だった。
Aのセールスページには、「5,000人との面談実績」「子持ちの主婦から2カ月で月商7ケタの起業家に」「トータル1,000万円を学びに投資してきた」など、大きな数字が並んでいた。悩んだ末、しおからさんは、継続講座に申し込んだ。
「その人が1,000万円かけて勉強したことを、たった50万円で学べるなんて、すごくおトクだと思ってしまったんです」
Aの「ビジネスの構築をイチから教えます!」という言葉に惹かれたしおからさんだったが、講座開始直後に送られてきたのは1枚のシートだけ。そこには、「あなたの商品は?」「たった1人の理想のお客様は?」など、本屋に置いてあるビジネス書籍から引っ張ってきたかのような質問項目がズラリと並んでいた。
「こういう質問を、話しながら深掘りしてもらえるのがコンサルタントだと思っていたので、最初の時点でかなり期待はずれでしたね。講座料金の決済までのやりとりが非常に丁寧だった分、お金を払った途端にシートを1枚ぽんと送られてきただけだったことにも違和感を覚えました」
その違和感はさらに続いた。事前の案内では「生徒たちのための専用コミュニティがあるので、切磋琢磨しながら夢を目指せる」という触れ込みだったのが、ふたを開けてみると、活気ある生徒同士のやりとりは、ほぼなし。コミュニティのベースが出来上がっていないのは一目瞭然だった。それもそのはず、しおからさんは、Aにとって初めてのお客様といっても間違いではなかったからだ。
「Aが『しおからさんたちが、初期メンバーです!』と言っていてあぜんとしました。セールスページでは、さも何人もの生徒を輩出してきたかのように書いていたのに、実際はまるで違ったんです」
その後も、Aのずさんなコンサルタントは続いた。月初めにビジネスの目標を提出するのだが、いざコンサルの日になると「目標はなんでしたっけ?」と悪気なく聞いてくる。商品の価格を一緒に決めたのに、次のコンサルのときには忘れていることもあった。「お客様を増やすために、Facebookで片っ端からお友達申請してください!」という指導も疑問だった。自分の商品に興味を持ってくれる客層も考えずにSNSでただつながるだけでは、なんの成果もないと思った。
さらには、月に2回のコンサルタントが消化できない月には「もう2回やったことにしてもいいですか?」と、耳を疑うような発言がAから飛び出したりもしたが、しおからさんは「想像と多少の違いがあるのは仕方ない」と自分を納得させていた。しかし、ついに我慢できない事件が起きる。
「オンラインコンサルの日、10分通話したところで、私がいったん通話を切らなければいけないことがあったんですが、それを一方的にコンサル1回分にカウントされてしまったんです。かすかにつながっていた信頼の糸がプツンと切れた瞬間でした」
その後、しおからさんはAに、ずさんな継続講座に対するクレームとともに、返金要求のメールを送った。Aは全額返金に応じたという。
トラブルを振り返り、しおからさんは「どうしてあんなものに引っかかってしまったのだろう」と後悔することになった。
「大げさな数字をすっかり信じ込んでしまいました。コンサルが始まってすぐに、おかしいなと思うことがいくつもあったのですが、同じ講座を受けている仲間たちはまったく疑う様子がなく『Aさん、すごい!』という空気でした。ところが、後々話を聞くと、みんな本当はAのやり方はおかしいと思っていたんです。集団で洗脳されていたんだと思います」
もちろん、すべてのキラキラ起業女子のビジネスが、ずさんというわけではない。トラブルを経験したしおからさんに、近づいてはいけないキラキラ起業女子の特徴を聞いた。
「まず、自分を大きく見せたがる人はやっぱり危険です。特に、宣伝文にある数字は真に受けてはいけません。また、考える時間を与えない人も要注意だと思います。私がAの継続講座に申し込む際も、『今日中に契約すれば50万円、明日以降だと55万円』と言われ、即決を促されました。時間を与えないことは、すなわち、周りの人に相談する機会を奪うということです。高額の支払いが発生する講座に参加する場合は、冷静な第三者の目で確認してもらうべきだと思います」
「夢を現実にして稼ぎたい」などと思っている人は、キラキラ起業女子のカモになる可能性が高いとしおからさん。少しでも冷静な自覚があるなら最初から近づかないほうがいいと忠告する。また、しおからさんが返金してもらえたのは稀なケース。現在Aは、ほかの生徒からも返金請求を受けているが、数が増えすぎたためか一切返金に応じない姿勢を見せており、依然としてトラブルは続いているのだという。君子危うきに近寄らずなのだ。
(島野美穂/清談社)
●取材協力
しおからさん
・キラキラ起業女子研究所