
8月9日に放送された『Iターン』(テレビ東京系)の第5話。今回のクライマックスは、黒猫チェルシーのヴォーカル・渡辺大知によるアカペラの熱唱と、鈴木愛理のガチ泣き、そしてムロツヨシに起こった緩やかなキャラ変だった。ストーリーに動きがなかったと思われがちだが、実はエンディングに重要なポイントが隠されていたのだ。
第5話あらすじ ムロの部下2人が初恋に破れて泣く
竜崎組の様子を探る岩切組の桜井勇一(毎熊克哉)たち。彼らは、青葉銀行支店長の瀬戸川達郎(手塚とおる)と関東のヤクザが一緒にいるところを目撃する。後からやってきた岩切猛(古田新太)は、「この街、乗っ取られるで」と危機感を抱いた。
一方、宣告社の阿修羅支店に突如、上司の高峰博之(相島一之)が訪ねてきた。高峰は狛江光雄(ムロツヨシ)に「青葉銀行に営業に行け」と厳命するのだ。
その日の夜、部下の吉村美月(鈴木愛理)に相談を持ちかけられた狛江。自分が告白されるのかと思いきや、美月は同僚・柳直樹(渡辺大知)への恋心を打ち明けてきた。すると、柳がスナック「来夢来都」のホステス・めぐみ(森田望智)との同伴で店に入ってくる。美月はめぐみに「見下すなぁーっ!」と叫び、そのまま店を飛び出した。
青葉銀行で竜崎剣司(田中圭)は瀬戸川と阿修羅駅前再開発事業の融資について打ち合わせ中。同じ時間に狛江と柳も青葉銀行に営業に来ていた。すると、タイミングよく岩切が銀行に入ってくる。言い合いになる岩切と竜崎。狛江が身を隠していると、行員が「宣告社の狛江様が面会を希望です」と瀬戸川とに話しかけ、それを機に岩切と竜崎は去っていた。
帰り道、柳はめぐみの誕生日だからと花屋に立ち寄った。狛江が会社に戻ると、美月は「柳さんはめぐみさんに遊ばれている」「めぐみさんに話付けてくる」と、勝負服である「アシュラくん」のきぐるみを着て、その格好で飛び出していった。
後を追った狛江がめぐみを呼び出そうとスナックの中に入ると、めぐみの隣には竜崎組の神野晃(般若)がいる。2人は付き合っているのだ。すると、花束を抱えた柳もやってきた。狛江は「めぐみはヤクザの女だからヤバすぎる」と制止するが、柳は神野の前でめぐみに告白し、フラれてしまう。号泣する柳は「初恋」を歌いながら歩き出し、それを見た美月はアシュラくんの着ぐるみを着たまま「胸が……苦しいよ」と嗚咽した。
今までとは打って変わり、今回の『Iターン』は若者のピュアな恋愛を描く内容だった。
森田と同伴する渡辺。それを見て、嫉妬に燃える愛理はめぐみに「見下すなぁーっ!」と言い放った。恋心が止まらない愛理は森田に話を付けると意気込み、「アシュラくん」の着ぐるみに身を包む。
「これは私の勝負服なんです!」(愛理)
刺青を入れ、頬に傷のあるアシュラくんのビジュアルが、愛理の森田への敵意と図らずもマッチしている。修羅! 修羅! 修羅!
森田を呼ぼうとムロが店に入ると、森田と般若がイチャついていた。そのタイミングで、森田に告白するべく花束を持った渡辺が店に入ろうとする。
ムロ「ヤクザの女なんだよ、めぐみさんは……」
渡辺「俺……極道の女だから好きになったわけじゃないんですよ。好きになった子が、たまたま極道の女だっただけッスよ!」
それがヤバいと言っているのに……。
般若の前で森田に告白をする渡辺。度胸あるなぁ……。当然、般若はキレた。そこに割って入ったのはムロだ。
「若さゆえの暴走です! 許してやってください。……勘弁してください、お願いします! お願いします!! 柳君は、本気なんです。許してやってください!」
初めて部下のために動いたムロ。恋に盲目な渡辺のため、迷わず土下座して見せた。胸を打つ、率直に。
そんな渡辺に、森田が答えた。
「ごめんなさい。……私なんかすぐ忘れられるから」
フリ方さえも魅力的だ。余計好きになってしまいそうないい女っぷり。ちなみに森田は、今話題沸騰の問題作『全裸監督』で黒木香役を務める注目の女優である。
森田が立ち去った後、渡辺は泣いた。片思いに浮かれるウキウキなテンションから一転しての大号泣。ここで渡辺が歌うは、村下孝蔵の「初恋」だ。実はこの曲、学生時代の恋を歌う内容である。しかも、スナックの女に真剣に惚れてしまう見境のない渡辺。「現実をよく見ろ」「チェリーボーイかよ」とツッコまれても仕方ない。まぎれもなく初恋だった。
泣きながら夜道を歩き熱唱する渡辺。まるでMVのよう。さすが、黒猫チェルシーのヴォーカルだ。毎回、このドラマは誰かが「初恋」を歌う。4話で阿佐ヶ谷姉妹が歌ったそれとまったく違って聴こえるのは、本職ならでは。ちなみに渡辺は7月開催のライブでもこの曲を熱く歌い上げており、曲への思い入れはガチだ。彼の「初恋」がこんなに沁みるのは必然。
渡辺を見て愛理も泣いている。着ぐるみ越しに聞こえてくる嗚咽。
愛理「支店長。胸が、胸が……苦しいよ」
ムロ「すぐにいいことあるよ。若いんだから」
部下を慰めようと愛理に添える右手が控えめでぎこちないのがいい。3話辺りでは下心で身悶えていたのに。
初回ではあんなにクズだったムロが、カッコ良くなってきている。彼の変化こそ、5話の最も重要なポイントだ。ドラマのタイトル「Iターン」とは「I(私)ターン」の意味だという。人生の後半に差し掛かったムロがどうやって「私」を取り戻すのか? 傷だらけになり、体を張ってその過程を見せるムロ。愛理に掛けた「いいことあるよ」は、実は自分に言い聞かせる言葉でもあったという気がしないでもない。
(文=寺西ジャジューカ)