
毎年1月にNHKで放送されている『新春TV放談』。前年を振り返り、テレビのあり方を語り合うのがこの番組の趣旨だが、1月2日に放送された“2018年版”で話題になったのは、テレビ東京系で定期的に放送されている特番『緊急SOS! 池の水ぜんぶ抜く大作戦』であった。
内容は、番組名のとおり「池の水を全部抜く」だけ。シンプルながらも、池の水を全部抜くまで何が出てくるかわからないドキドキ、ワクワクが視聴者の心をつかみ、この特番は2017年に計5回放送されている。
同番組の“生みの親”であるテレビ東京・伊藤隆行プロデューサーは「ニュース映像で、警察が池の中を捜索している場面を観て発想した」と、立ち上げの経緯を明かしている。
結果、『池の水をぜんぶ抜く』は見事に大成功! 現在、各テレビ局では「あの番組みたいな感じの企画書出せ」というお達しが、放送作家らへの“宿題”として出されているという。
■「池の水をぜんぶ抜く」のではなく「物置の品をぜんぶ出す」
上記の“宿題”を受けて制作されたと思われるバラエティーを、民放各局で探し出すことは容易だ。その中の一つとして挙げられるのは、1月4日に放送された日本テレビ系の『物置開けてみませんか?』。
番組のコンセプトは、単純明快。長年開けていなかった物置に足を踏み入れると、そこには心躍る“何か”が眠っているのでは……? そんな、興奮の「物置宝探し」を試みるプログラムである。
事実、昨年9月に岐阜県のとある民家の物置では希少なフェラーリ「デイトナ」が40年ぶりに見つかり、オークションで2億3,000万円の値が付いたこともあった。これは、期待ができそうか!?
というわけで、番組は日本全国の物置へと赴いている。例えば、山梨の民家にある築50年以上の物置をオープンしてみると、そこには江戸時代の火縄銃や勝海舟が明治時代に書いたとされる(真偽不明)掛け軸が発見された。また、岐阜県の物置には、フレームにダイヤが散りばめられた約1,000万円の眼鏡や、およそ総額3億円の宝石箱が眠っていた。
愛知県にある蔵付き物件(母屋とは別に昔ながらの物置である『蔵』が付いている物件)に訪れた際は、大仕事だった。蔵が2階建てという大きなサイズとなるため、埋蔵品はなんと1万点を超えていたのだ。
そこで番組は引っ越し業者に依頼し、5時間をかけて蔵から物を一気に出すことを決意! まさに、『池の水ぜんぶ抜く大作戦』を彷彿とさせるやり方である。しかし、これらの膨大な品々から“お宝”を発見することは叶わなかった。山部赤人の木彫りや南部鉄瓶などが発見されたにもかかわらず、鑑定士による鑑定額は総額40万円……。
でも、メゲない。今回の作業に参加し“お宝発掘”を期待していた地元の郷土研究会会長は「お宝とは、その家にとって価値のある物。自分の気持ちの中に『お宝』があると感じました」と思いを語っており、単なる「物置宝探し」ではない次のフェーズに番組がヴァージョンアップしたことを感じさせる。
■中学時代のカミナリによる露骨な“下ネタコントビデオ”が発掘される
番組は、お笑いコンビ「カミナリ」の竹内まなぶの実家物置へも訪れている。彼の両親は茨城でスーパーマーケットを経営し、見事に成功。立派な家と、家のサイズに匹敵する物置を所有していた。
さっそく、カミナリの2人が7年ぶりに物置を開けてみると、そこには幼なじみである2人が中学時代に撮ったプリクラや、相方の石田たくみがまなぶとの出会いの感謝を綴った卒業文集が保管されていた。
しかし、彼らは芸人だ。決して、いい話だけでは終わらない。まず、まなぶが中学時代に好きだった「伊藤愛美さん」の顔やお尻を隙を見て激写した“盗撮写真”が不意に発見されてしまう。
続いて、何が撮影されたか不明の8ミリビデオテープも発見。このテープには、どんな映像が収録されているのだろう? 竹内家全員でそのテープを視聴すると、登場したのは中学時代のカミナリの2人である。
若き日のまなぶが自分の部屋に入ると、そこには若き日のたくみがいる。まなぶはたくみに「勉強やるよ」と促すのだが、なぜかたくみは勉強しながらまなぶの股間に手を持っていく。そして、たくみはまなぶに襲いかかり、お互いが上半身裸になってベッド上で強制的な性行為に至ってしまう……というコントが、そこには録画されていた。
お笑いマニアにとっては「これがカミナリの“笑いの原点”か」と感慨深くもあるが、シチュエーションが悪すぎた。家族全員が観ている前で再生される、あまりにも露骨なエロ展開。顔を赤くしながら「家族、観るなー!」と絶叫するたくみであったが、時すでに遅しだ。
■番組が一人歩きし、亜流に収まらない
松本人志はかつて、著書『松本』(朝日新聞社)にて、「テレビのバラエティー番組で、何か新しいことをやろうとしても、必ず過去の何かに似てきてしまう」「何もかもやりつくされたこのご時世で、新しいものを作るのは大変な作業」「パターンを利用して、自分たちの新しいアレンジを駆使してやっていけばいい」と綴っている。
繰り返すが、この番組は『池の水ぜんぶ抜く大作戦』にインスパイアされ、出来上がった企画のはず。池の水を全部抜く代わりに、物置にある品々を全部外に出す……という発想だと予想される。だが、ミラクルが起こったことで、着地点は想定外にスゴいことになってしまった。
加えて、ゲスト出演した六角精児によるコメントが秀逸だ。カミナリのVTRを観終わるや「物を捨てちゃうと、こうはならない。置いとくと、こういうオモロイことが色々と起こる。これが、物置の良さですよねぇ」と、感想を述べたのだ。
単なる「物置宝探し」で終わるかと思いきや、唐突に昨今の“断捨離ブーム”に異を唱えだした六角。番組は、制作陣の意図する着地点にことごとく収まらない。
番組の展開が一人歩きし、ゲストのコメントは想定外のものとなり、結果的に亜流の域を脱した『物置開けてみませんか?』。第2回放送は、果たしてあるだろうか?
(文=寺西ジャジューカ)