銀ダラは実は「鱈」ではない?『孤独のグルメ』“名無しの権兵衛さん”は生で食べたら危険な海藻……

 金曜深夜のバーチャル食事ショー『孤独のグルメSeason7』(テレビ東京系)。今回は、ディスニーランドなどのあるエリアを埋め立てるまで漁師町として栄えた浦安。今もその名残が強く息づく街で、クセの強い魚料理が登場。「第六話 千葉県浦安市の真っ黒な銀だらの煮付定食」。

(前回までのレビューはこちらから)

■まるで石炭のよう

 雨の浦安。三番瀬に注ぐ細い川沿いを行く井之頭五郎(松重豊)は「都会の川でも、川は川」と、今日も街歩きしながら商談へ。

 目的地のペットホテルに着くが誰も出てこないので、ケージの中に入り犬をあやすも、悪いタイミングで店長(ふかわりょう)が戻ってきてしまい、子犬をあやすひょっとこ顔→驚きの形相と顔芸二連打。松重の顔芸は、いつだって楽しい。

 商談中から、すでにランチに向かう従業員の様子を観察していたぬかりのない五郎は終了後、すぐに飲食店探し。浦安では、『Season1』の4話で静岡おでんを食べているのだが、特に言及することはなし。五郎は過去の店を再訪しないのかが気になる(おでんを食べたカフェは今は閉店している)。

 猫実川沿いに、一見スナックっぽい外観の店を発見。「お食事所 魚や 羅甸」とあるが「らしゅん?」読めないまま入店。

 大きな短冊に書かれたメニューが壁にずらり。

「鯵の南蛮漬 お刺みを付けて 1250」
「いかの生姜焼き お刺みを付けて 1350」
「鰆(さわら)の西京焼き 1200 お刺み付けて 1350」などなど。

「お刺身付き」ではなく「お刺みを付けて」という言い回しに血の通ったものを感じる。「色っぽいじゃないか」と五郎もお気に入り。「み」が平仮名なのもいい。

 煮魚気分の五郎は「鯖の味噌煮」か「銀ダラの煮付け」の二択で悩み、「すみません『銀ダラの煮付け お刺み付けて』をお願いします」と律儀にメニュー通り注文。1,450円。「沖縄産生もずく」も追加。

 ご飯おかわり「三杯目から有料」という張り紙を見て「客のご飯おかわり率が尋常じゃなく高いと読み取れる。これは期待大」とボルテージを上げる名探偵・井の頭。

 隣の席の鯖味噌があまりに美味そうなので判断を誤ったかと後悔しかけるも、出てきた銀ダラのインパクトで全てが吹き飛ぶ。吸い込まれそうなほどに黒いのだ。

 思わず「これ銀ダラですか?」と尋ねちゃう五郎。

「ええ。見た目は黒いですけど、正真正銘、銀ダラです。ふふふ」おかみさんが意味ありげに微笑む。みな驚くのだろう。

 普通の煮付けは茶色だし、形も切り身だが、この煮付けは全て違う。異様なほど照りを伴って黒光りし、形も無骨で、黙って出されたら銀ダラどころか魚であることすら見破れない自信がある。見れば見るほど石炭の如し。

 

■「銀ダラ」は鱈とは違う魚

 しかし一口食べて五郎はすぐさま病みつきに。

「確かに銀ダラだ。だが俺の知ってる銀ダラとは全然違う。ふわふわ。こんなの初めて」
「中は真っ白。巨大な岩山を採掘してるみたいだ」

 砂糖と醤油で味付けしているらしいのだが(本物の店主談)、素材が違うのか調理法に秘密があるのか、煮付けというより巨大な佃煮のようにも見える。

 とにかくこれが大当たりであると確信した五郎は「鯖味噌が美味いと知りながら、あえて銀ダラを選んだ自分を褒めたい」とアトランタ五輪の有森裕子のように勝ち誇る。実は客の8割が銀ダラ目当てらしく、見事な五郎の嗅覚。

「銀ダラ銀シャリ銀ダラ銀シャリ……銀のラリーが止まらない」『銀』に侵された五郎は「箸が止まらない。アイキャンストップラビングユー、銀ダラに首ったけ」と、ついに煮魚に告白。レイ・チャールズもびっくり。銀シャリもお代わり。

 ちなみに「銀ダラ」というのは真鱈(まだら)やスケトウダラとは全く違う魚で、どちらかというとアイナメに近く、いわば鱈の代用魚。脂が強くて嫌われていたが、むしろ最近はその脂のおかげで人気になった例のパターン。「ムツ」に対しての「銀ムツ=メロ(マジェランアイナメ)やメルルーサ」などと同じ構図だが、この銀ダラはムツの代用品であったこともあるからややこしい。

■刺身のツマ・オゴノリは生で食べたら危険

 そして「お刺み」。マグロ赤身3切れと、細長く切った短冊のイカ刺し。煮付け(1,300円)に+150円で付いてくるとは思えないクオリティ。

 刺身のツマの緑の細長い海藻を好いている五郎は「やるじゃないの、名無しの権兵衛さん」と改めて評価。この海藻はおそらくオゴノリで、実は東京湾でも潮干狩りの際に普通に採れたりするのだが、生のものをそのまま食べると嘔吐や意識低下の末、亡くなることのあるので要注意。もちろん市販のものは湯でたり、石灰処理を行っているので安全だ。

 小鉢も手を抜かず、マグロをあっさり煮たフレーク状のもので、「マグロの連打」。

 豆腐の味噌汁。「魚が上手い店は100パーセント、味噌汁も美味い」とすすっていたが、やはり出汁がちゃんとしてるのだろう。

 たくわん付いて、味噌汁付いて、小鉢付いて、あげくコーヒーまで付いてくる。五郎いわく「つきまくり」。

 別注の沖縄産生もずくは酢の物ではなくしゃきしゃきした歯ごたえで、「アシストを超えた戦力」。これでも白米をわしわし食べる。

 

■3杯目はタレだけで

 とにかくこの漆黒の煮付けに骨抜きにされた五郎は「まだ美味い。うまさが衰えない。この店、リピート確実」「これのためだけに浦安に来る価値がある」と大絶賛。年間パスポートがあれば買う勢い。

「大将が毎日河岸に足を運び、長い歳月をかけて出来上がった煮付け。この銀ダラは大将が掘り当て、磨き上げた黒い宝石だ」

 最大の賛辞を贈り、大団円かと思いきや、残った黒光りするタレに目に止まる……。禁断のご飯有料おかわりに突入!

 タレの残る平皿に飯を落とし、混ぜこねる。前々回の群馬・下仁田で豚すき焼きの残り汁を使い卵かけご飯を食したのに通じる、最低にして最高の禁じ手。

「ご飯が美味しさの黒いマントを羽織っていく」こういう作業をしてる時の五郎、いや全ての大人は実に悪い笑顔になる。一口食って「ほーら来ちゃったよ! 文句なしの美味さだ!」と賭けに勝った喜びを噛み締める五郎。もはや箸でなくスプーンで掻き込む「銀ダラ残り汁絡め飯」(命名・五郎)。見た目はイカスミのリゾットのよう。

「たっぷりの旨味とコクとちょい苦味が混ざったこの味は完璧な美味さの黄金比」

 こんな感想を聞けば聞くほど、おかわりに制限あることに納得してしまう。それくらい「食わせて」しまう味なのだろう。

 

■謎の友人・滝山

 コーヒーを飲み店を出た五郎は「今度、滝山にも教えてやろう」と満足げ。

 滝山とは原作1巻・6話「ひかり55号のシュウマイ弁当」で2コマだけ登場した五郎の友人。この時は新刊線のお供にシュウマイ弁当の購入を勧めるも、五郎は瞬間で温まるタイプ(ジェット)を購入してしまい、車内で匂いが充満し顰蹙を買ってしまうという事件が起きた。

 ドラマ化されてからも滝山は『Season2』の9話で声だけ登場(声=テレ東の植草朋樹アナ・ふらっとQUSUMIナレーターも担当)したが、『Season4』の9話でついに実写化。待ち合わせに遅刻してきながらも五郎に上客を紹介し、それも自らがバカンスへ旅立つためという憎めない悪友ぶりを村田雄浩が演じた。

『Season5』の8話でも、登場しないが手紙で五郎にどっきりを仕掛けるなど、ほとんど顔を見せないのに名物キャラとして認知されている。

 この「滝山」のモデルは、原作者・久住昌之の盟友・滝本淳助(ヒカシューのジャケット写真撮った人)であるとの説がある。共著『タキモトの世界』(太田出版)や『タモリ倶楽部 東京トワイライトゾーン』(日之出出版)での共闘ぶりを見ていると、あり得なくもないと思うが、身近な仲間の名前をもじっただけのような気もするし、真相が気になる。

 そして、久住が同店を訪ねる「ふらっとQUSUMI」のコーナー。鯖の塩焼きも美味そうだったが、主人の持って来た銀ダラ煮付けを食べるなり「うわ! うんまい! これはみんな食べるのわかるわ! 参った」と久住も脱帽。鯖塩の時と久住のリアクションが違いすぎて笑ってしまった。

 最後に明かされたのが「羅甸」の読み方。「らてん」と読み、ラテンアメリカの「ラテン」の当て字で、店主ご夫妻がラテンダンスをやっていたのがその由来だという。次回は「墨田区東向島の納豆のピザと辛いパスタ」。
(文=柿田太郎)

亀梨和也は“日テレにどっぷり”じゃなかったの!? テレ東ドラマ主演の怪

 KAT-TUN・亀梨和也がテレビ東京系のスペシャルドラマ『手紙』(放送日未定)に主演することがわかった。周知の通り、亀梨は“日テレどっぷり”で、主演どころか、同局のドラマに出演すること自体が初となるが、いったい何が起きたのか?

 同ドラマの原作は、直木賞作家・東野圭吾氏の同名小説(毎日新聞社)で、2006年に映画化、08、16、17年に舞台化されているが、ドラマ化は初めて。強盗殺人犯の兄を持つ青年・武島直貴(亀梨)が、周囲の差別や偏見に苦しみながらも、やがて自分の家族を持つまでの軌跡を、兄弟の手紙を通して描いた作品。今回のドラマでは、原作発表時(03年)とは時代背景が違うため、情報の拡散力が上がったデジタル社会の現代との対比を描くという。

 亀梨といえば、『野ブタ。をプロデュース』『金田一少年の事件簿』『妖怪人間ベム』『東京バンドワゴン~下町大家族物語』『怪盗 山猫』など、過去に主演したドラマのほとんどが日本テレビで、他局のドラマで主演を務めるのは極めてレアなケースとなるが、今回はどういう風の吹き回しなのか?

「亀梨は『ボク、運命の人です。』(17年/同)、今年1月期の『FINAL CUT』(フジテレビ系)と、主演した連ドラの平均視聴率が2作続けて1ケタ台に終わっています。特に、草なぎ剛の“身代わり”とも揶揄された『FINAL CUT』は全話平均6.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と散々でした。さすがに、3作連続で、2ケタに乗せられないと、『亀梨では数字が取れない』とのレッテルが貼られてしまいかねません。ですので、ジャニーズ事務所も、亀梨の次の連ドラ主演については、その時期、枠、作品などに慎重にならざるを得ないでしょう。その点、今回はスペシャルドラマという気楽さもありますし、誰が主演しても、なかなか数字が取れないテレ東ドラマですから、視聴率が悪くても、あまりバッシングされないという面があるのです。ジャニーズがオファーを受けたのは、そんなワケがありそうです」(テレビ誌関係者)

 亀梨がテレ東ドラマに主演するのは、違和感ありありだが、さすがにゴールデン・プライム帯で5%割れなどといった事態になれば、言い訳もきかなくなる。原作は発行部数240万部を超える大ヒット作だけに、亀梨は赤っ恥をかかなければいいのだが……。
(文=田中七男)

亀梨和也は“日テレにどっぷり”じゃなかったの!? テレ東ドラマ主演の怪

 KAT-TUN・亀梨和也がテレビ東京系のスペシャルドラマ『手紙』(放送日未定)に主演することがわかった。周知の通り、亀梨は“日テレどっぷり”で、主演どころか、同局のドラマに出演すること自体が初となるが、いったい何が起きたのか?

 同ドラマの原作は、直木賞作家・東野圭吾氏の同名小説(毎日新聞社)で、2006年に映画化、08、16、17年に舞台化されているが、ドラマ化は初めて。強盗殺人犯の兄を持つ青年・武島直貴(亀梨)が、周囲の差別や偏見に苦しみながらも、やがて自分の家族を持つまでの軌跡を、兄弟の手紙を通して描いた作品。今回のドラマでは、原作発表時(03年)とは時代背景が違うため、情報の拡散力が上がったデジタル社会の現代との対比を描くという。

 亀梨といえば、『野ブタ。をプロデュース』『金田一少年の事件簿』『妖怪人間ベム』『東京バンドワゴン~下町大家族物語』『怪盗 山猫』など、過去に主演したドラマのほとんどが日本テレビで、他局のドラマで主演を務めるのは極めてレアなケースとなるが、今回はどういう風の吹き回しなのか?

「亀梨は『ボク、運命の人です。』(17年/同)、今年1月期の『FINAL CUT』(フジテレビ系)と、主演した連ドラの平均視聴率が2作続けて1ケタ台に終わっています。特に、草なぎ剛の“身代わり”とも揶揄された『FINAL CUT』は全話平均6.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と散々でした。さすがに、3作連続で、2ケタに乗せられないと、『亀梨では数字が取れない』とのレッテルが貼られてしまいかねません。ですので、ジャニーズ事務所も、亀梨の次の連ドラ主演については、その時期、枠、作品などに慎重にならざるを得ないでしょう。その点、今回はスペシャルドラマという気楽さもありますし、誰が主演しても、なかなか数字が取れないテレ東ドラマですから、視聴率が悪くても、あまりバッシングされないという面があるのです。ジャニーズがオファーを受けたのは、そんなワケがありそうです」(テレビ誌関係者)

 亀梨がテレ東ドラマに主演するのは、違和感ありありだが、さすがにゴールデン・プライム帯で5%割れなどといった事態になれば、言い訳もきかなくなる。原作は発行部数240万部を超える大ヒット作だけに、亀梨は赤っ恥をかかなければいいのだが……。
(文=田中七男)

松ケン、蒼井優の投入は映画化への布石なのか!? リーマン地獄門編に突入『宮本から君へ』第5話

 世界卓球の中継延長のため、深夜2時すぎからのオンエアとなった池松壮亮主演ドラマ『宮本から君へ』(テレビ東京系)の第5話。ド深夜にもかかわらず、キャスティングがすごいことに。先輩営業マンの神保役として松山ケンイチが登場。劇場版『デスノート』の新旧Lの共演ですよ! 宮本のライバルとなる大手文具メーカーの営業マンに売り出し中の浅香航大、すっかり味のある俳優となった元「男闘呼組」の高橋和也、「チンポとポンチ」と楽しげに口ずさむ配送部のおっちゃんにボクシングアニメ『あしたのジョー』の主題歌を歌った尾藤イサオ……。次回からは蒼井優もレギュラー出演します。テレビ東京は『宮本から君へ』の映画化を狙っているのかなと思ってしまうほど、贅沢な配役です。いよいよ池松演じる宮本が営業マンとは何であるかを味わい尽くす、サラリーマン地獄門編に突入した第5話を振り返りましょう。

(前回までのレビューはこちらから)

 前回、大手自動車メーカーの受付け嬢・甲田美沙子(華村あすか)と初SEXしたものの、あっさり棄てられた弱小文具メーカーの新入社員・宮本浩(池松壮亮)。美沙子の職場にまで押し掛けて自分が棄てられたことをしっかりと確認した宮本ですが、帰り道の足取りは重く、なかなか会社に戻ることができずにいました。個人的な所用で帰社が遅くなった宮本を、会社で待ってくれていたのは小田課長(星田英利)です。大雨と失恋で身も心もズブ濡れ状態の宮本を、小田課長は半ば強引に自宅アパートへと誘うのでした。ほっしゃんの笑顔は、落ち込んだ人間のハートに優しく染み込みます。朝ドラ女優がほっしゃんに惚れたのも、何となくわかるような気がします。

 仕事で一人前になるまでは美沙子を抱かないと同僚たちに宣言していた宮本ですが、美沙子に押し切られた形でSEXし、その挙げ句に美沙子は元彼のもとへと走っていきました。モテない人間は「美女と1回でもエッチできてよかったね!」と思うのですが、宮本は美沙子ともうSEXできないことを悔しがっているわけではありません。本気で好きになったはずの美沙子に棄てられたのに、意外と悲しくない自分がいることに気づいたのです。じゃあ、美沙子のことは本気で愛していなかったのかと、宮本はウジウジと自問自答中です。宮本は本当に面倒くさい性格です。

 その点、妻帯者であり、一児の父でもある小田課長は大人でした。部下である宮本の一本気な性格を理解しています。妻の友子さん(ぼくもとさきこ)に用意させた温かい手料理を宮本に食べさせた上で、いつになく厳しい言葉をぶつけます。

「自分しか愛せへん、究極のエゴイスト。それがお前や。お前がそのクソ意地とかクソこだわりを捨てへん限りは、人も愛せへん、仕事もできへん。この先、ずっと同じことの繰り返しや」

 交際相手と別れても自分のことしか考えられない宮本の偏屈さを、ズバリと指摘する小田課長でした。ほっしゃんは、アメとムチの使い方が抜群にうまいです。朝ドラ女優が惚れたのも、何となくわかる気がします。

 ところがまぁ、宮本も意地っぱりです。友子さんが止めるのを振り切って、わざわざ駐車場に置いてある小田課長の車の中で寝ようとするのでした。ついてないときは、とことんついてないもの。小田課長から渡された車のキーを溝の中に落としてしまいます。小田課長夫妻が眠っているアパートに戻ることを良しとせず、寒い駐車場で震えながら夜明けを待つ宮本でした。宮本の長い長い夜は、もうしばらく続きます。

 

■名刺への異常なこだわり。それこそがプロの道!

 

 正月を迎え、宮本は心機一転のために横浜の自宅を出て、ひとり暮らしを始めることにしました。長年暮らした自宅で過ごす最後の夜、ここで『宮本から君へ』の“生みの親”である漫画家・新井英樹が宮本の父親役で登場です。演技経験まったくなしの原作者を口説き落としたのは、青春暴走ロードムービー『ディストラクション・ベイビーズ』(16)で知られる真利子哲也監督です。27年前に誕生した漫画キャラクターの父親役を、原作者に演じさせるという真利子監督のこだわりが感じられます。芝居経験のあるなしや、演技がうまい下手は関係ありません。過剰なまでのこだわりを貫き、現代社会が見失ったものを見つけることがドラマ版『宮本から君へ』のメインテーマなのです。

 好々爺っぽい雰囲気の昭和の父を演じる新井英樹ですが、高校ラグビー部を舞台にした暑苦しい青春漫画『8月の光』(講談社)でデビューした後、文具メーカーに勤めた実体験をベースにした初長編作『宮本から君へ』(同)は若者向け雑誌で「嫌いなマンガ」第1位に選ばれました。さらに『ザ・ワールド・イズ・マイン』(小学館)では漫画史上かつてない大暴走ストーリーを展開させることになります。世間に迎合することなく、己の道を突き進む孤高の漫画家です。そんな暴走漫画家と難役を好んで演じる日本映画界の逸材が小さな呑み屋で肩を並べて日本酒を傾け合うシーンには、形容しがたいムードが溢れています。原作者から力水を授かり、池松演じる宮本の暴走劇はこれから本格化していきます。

 宮本がひとり暮らしを始めたのは、ドラマ『山田孝之の東京都北区赤羽』(テレビ東京系)や人気グルメ漫画『孤独のグルメ』(扶桑社)ですっかり有名になった赤羽にある木造アパートでした。山田孝之が役者バカ人生を見つめ直したように、宮本も赤羽から人生を再起動させるのでした。会社でも新しい仕事が待っていました。先輩営業マンの神保(松山ケンイチ)が1カ月後に退職することになり、神保が担当していた老舗の問屋を引き継ぐことになったのです。神保はかなり仕事ができる男です。取り引き担当の安達(高橋和也)に名前を呼んでもらえるようになるまで、何度も何種類も名刺を渡し続けたという伝説の持ち主です。安達の名刺入れは、名前を覚えてもらうために工夫されたさまざまな神保の名刺が収まっていました。両者ともに名刺交換にただならぬこだわりを持っていることがうかがえます。

 問屋の休憩室にて、神保が宮本に営業スマイルのダメ出しをしていると、そこに現われたのは大手文具メーカーに勤務する益戸(浅香航大)でした。あいさつ代わりに、宮本へ接待ゴルフ先で購入したお土産のお菓子を差し出します。せっかくのご好意だからと手を伸ばす宮本に、神保は「宮本、考えろよ~」と笑顔で熟考を促すのでした。好きでもないのに接待目的でゴルフを始めた男が、会社の経費で購入したお菓子(梅ケーキ)を安易に口にしていいのかと。たかが梅ケーキ、されど梅ケーキです。休憩室にサァ~ッと緊張感が走ります。

 大手メーカーの名前を使って要領よく仕事をする営業マンを見習うのか、それとも一人ひとりと地道にコミュニケーションしながら信頼関係を築いて仕事を取る営業マンになるのか。梅ケーキを前にして、宮本は今後の人生の大きな選択を迫られるのでした。

 夭折した天才棋士の生涯を描いた『聖の青春』(16年)など、徹底した役づくりで知られる松山ケンイチですが、今回のような飄々とした、でも胸の奥に熱いものを秘めたリーマン役もいいじゃないですか。主演の池松を立てて一歩引いた芝居が、先輩俳優らしい風格さえ感じさせます。一方の益戸役の浅香航大は元ジャニーズですが、NHK朝ドラ『ひよっこ』の売れない漫画家役などでキャリアを積んできた若手実力派です。自分が何者であるかに悩んでいた宮本は、仕事のできる先輩やライバルの登場によって、自分の立ち位置を客観的に知ることになるわけです。ここからようやく『宮本から君へ』のメインストーリーが始まるのです。

 次回からは宮本にとって“運命の女”となる中野靖子(蒼井優)がついに登場。第6話にして、ようやくメインキャストが揃います。失恋の後、長い長い夜を過ごしていた宮本ですが、もうすぐ新しい夜明けが訪れそうです。
(文=長野辰次)

松ケン、蒼井優の投入は映画化への布石なのか!? リーマン地獄門編に突入『宮本から君へ』第5話

 世界卓球の中継延長のため、深夜2時すぎからのオンエアとなった池松壮亮主演ドラマ『宮本から君へ』(テレビ東京系)の第5話。ド深夜にもかかわらず、キャスティングがすごいことに。先輩営業マンの神保役として松山ケンイチが登場。劇場版『デスノート』の新旧Lの共演ですよ! 宮本のライバルとなる大手文具メーカーの営業マンに売り出し中の浅香航大、すっかり味のある俳優となった元「男闘呼組」の高橋和也、「チンポとポンチ」と楽しげに口ずさむ配送部のおっちゃんにボクシングアニメ『あしたのジョー』の主題歌を歌った尾藤イサオ……。次回からは蒼井優もレギュラー出演します。テレビ東京は『宮本から君へ』の映画化を狙っているのかなと思ってしまうほど、贅沢な配役です。いよいよ池松演じる宮本が営業マンとは何であるかを味わい尽くす、サラリーマン地獄門編に突入した第5話を振り返りましょう。

(前回までのレビューはこちらから)

 前回、大手自動車メーカーの受付け嬢・甲田美沙子(華村あすか)と初SEXしたものの、あっさり棄てられた弱小文具メーカーの新入社員・宮本浩(池松壮亮)。美沙子の職場にまで押し掛けて自分が棄てられたことをしっかりと確認した宮本ですが、帰り道の足取りは重く、なかなか会社に戻ることができずにいました。個人的な所用で帰社が遅くなった宮本を、会社で待ってくれていたのは小田課長(星田英利)です。大雨と失恋で身も心もズブ濡れ状態の宮本を、小田課長は半ば強引に自宅アパートへと誘うのでした。ほっしゃんの笑顔は、落ち込んだ人間のハートに優しく染み込みます。朝ドラ女優がほっしゃんに惚れたのも、何となくわかるような気がします。

 仕事で一人前になるまでは美沙子を抱かないと同僚たちに宣言していた宮本ですが、美沙子に押し切られた形でSEXし、その挙げ句に美沙子は元彼のもとへと走っていきました。モテない人間は「美女と1回でもエッチできてよかったね!」と思うのですが、宮本は美沙子ともうSEXできないことを悔しがっているわけではありません。本気で好きになったはずの美沙子に棄てられたのに、意外と悲しくない自分がいることに気づいたのです。じゃあ、美沙子のことは本気で愛していなかったのかと、宮本はウジウジと自問自答中です。宮本は本当に面倒くさい性格です。

 その点、妻帯者であり、一児の父でもある小田課長は大人でした。部下である宮本の一本気な性格を理解しています。妻の友子さん(ぼくもとさきこ)に用意させた温かい手料理を宮本に食べさせた上で、いつになく厳しい言葉をぶつけます。

「自分しか愛せへん、究極のエゴイスト。それがお前や。お前がそのクソ意地とかクソこだわりを捨てへん限りは、人も愛せへん、仕事もできへん。この先、ずっと同じことの繰り返しや」

 交際相手と別れても自分のことしか考えられない宮本の偏屈さを、ズバリと指摘する小田課長でした。ほっしゃんは、アメとムチの使い方が抜群にうまいです。朝ドラ女優が惚れたのも、何となくわかる気がします。

 ところがまぁ、宮本も意地っぱりです。友子さんが止めるのを振り切って、わざわざ駐車場に置いてある小田課長の車の中で寝ようとするのでした。ついてないときは、とことんついてないもの。小田課長から渡された車のキーを溝の中に落としてしまいます。小田課長夫妻が眠っているアパートに戻ることを良しとせず、寒い駐車場で震えながら夜明けを待つ宮本でした。宮本の長い長い夜は、もうしばらく続きます。

 

■名刺への異常なこだわり。それこそがプロの道!

 

 正月を迎え、宮本は心機一転のために横浜の自宅を出て、ひとり暮らしを始めることにしました。長年暮らした自宅で過ごす最後の夜、ここで『宮本から君へ』の“生みの親”である漫画家・新井英樹が宮本の父親役で登場です。演技経験まったくなしの原作者を口説き落としたのは、青春暴走ロードムービー『ディストラクション・ベイビーズ』(16)で知られる真利子哲也監督です。27年前に誕生した漫画キャラクターの父親役を、原作者に演じさせるという真利子監督のこだわりが感じられます。芝居経験のあるなしや、演技がうまい下手は関係ありません。過剰なまでのこだわりを貫き、現代社会が見失ったものを見つけることがドラマ版『宮本から君へ』のメインテーマなのです。

 好々爺っぽい雰囲気の昭和の父を演じる新井英樹ですが、高校ラグビー部を舞台にした暑苦しい青春漫画『8月の光』(講談社)でデビューした後、文具メーカーに勤めた実体験をベースにした初長編作『宮本から君へ』(同)は若者向け雑誌で「嫌いなマンガ」第1位に選ばれました。さらに『ザ・ワールド・イズ・マイン』(小学館)では漫画史上かつてない大暴走ストーリーを展開させることになります。世間に迎合することなく、己の道を突き進む孤高の漫画家です。そんな暴走漫画家と難役を好んで演じる日本映画界の逸材が小さな呑み屋で肩を並べて日本酒を傾け合うシーンには、形容しがたいムードが溢れています。原作者から力水を授かり、池松演じる宮本の暴走劇はこれから本格化していきます。

 宮本がひとり暮らしを始めたのは、ドラマ『山田孝之の東京都北区赤羽』(テレビ東京系)や人気グルメ漫画『孤独のグルメ』(扶桑社)ですっかり有名になった赤羽にある木造アパートでした。山田孝之が役者バカ人生を見つめ直したように、宮本も赤羽から人生を再起動させるのでした。会社でも新しい仕事が待っていました。先輩営業マンの神保(松山ケンイチ)が1カ月後に退職することになり、神保が担当していた老舗の問屋を引き継ぐことになったのです。神保はかなり仕事ができる男です。取り引き担当の安達(高橋和也)に名前を呼んでもらえるようになるまで、何度も何種類も名刺を渡し続けたという伝説の持ち主です。安達の名刺入れは、名前を覚えてもらうために工夫されたさまざまな神保の名刺が収まっていました。両者ともに名刺交換にただならぬこだわりを持っていることがうかがえます。

 問屋の休憩室にて、神保が宮本に営業スマイルのダメ出しをしていると、そこに現われたのは大手文具メーカーに勤務する益戸(浅香航大)でした。あいさつ代わりに、宮本へ接待ゴルフ先で購入したお土産のお菓子を差し出します。せっかくのご好意だからと手を伸ばす宮本に、神保は「宮本、考えろよ~」と笑顔で熟考を促すのでした。好きでもないのに接待目的でゴルフを始めた男が、会社の経費で購入したお菓子(梅ケーキ)を安易に口にしていいのかと。たかが梅ケーキ、されど梅ケーキです。休憩室にサァ~ッと緊張感が走ります。

 大手メーカーの名前を使って要領よく仕事をする営業マンを見習うのか、それとも一人ひとりと地道にコミュニケーションしながら信頼関係を築いて仕事を取る営業マンになるのか。梅ケーキを前にして、宮本は今後の人生の大きな選択を迫られるのでした。

 夭折した天才棋士の生涯を描いた『聖の青春』(16年)など、徹底した役づくりで知られる松山ケンイチですが、今回のような飄々とした、でも胸の奥に熱いものを秘めたリーマン役もいいじゃないですか。主演の池松を立てて一歩引いた芝居が、先輩俳優らしい風格さえ感じさせます。一方の益戸役の浅香航大は元ジャニーズですが、NHK朝ドラ『ひよっこ』の売れない漫画家役などでキャリアを積んできた若手実力派です。自分が何者であるかに悩んでいた宮本は、仕事のできる先輩やライバルの登場によって、自分の立ち位置を客観的に知ることになるわけです。ここからようやく『宮本から君へ』のメインストーリーが始まるのです。

 次回からは宮本にとって“運命の女”となる中野靖子(蒼井優)がついに登場。第6話にして、ようやくメインキャストが揃います。失恋の後、長い長い夜を過ごしていた宮本ですが、もうすぐ新しい夜明けが訪れそうです。
(文=長野辰次)

『孤独のグルメ』意外にも麻婆豆腐は初登場! 原作には、あの宇佐美圭司の東大の絵も登場していた!

 今回の『孤独のグルメSeason7』(テレビ東京系)は、東京・三河島。常磐線を使っていないと馴染みのない駅名かもしれないが、もともと荒川区の多くは「三河島」という地名で、ある大規模な鉄道事故のイメージを払拭するため、ちょうど50年前に「荒川」に置き換えられた(一部他の地名に組み込まれた)という。「第5話 東京都荒川区三河島の緑と赤の麻婆豆腐」。

(前回までのレビューはこちらから)

■路上で子どもに焼き鳥を差し出される域に達した五郎の食いしん坊ぶり

 昔の街並みの残る三河島の惣菜店を眺めつつ、「商店街っていえば、昔はどこもこんなふうだった」と郷愁に浸る井之頭五郎(松重豊)は、今日もマイペース。

 途中、路上で男子児童が頬張る焼き鳥に見とれすぎ、気づいたその男児に無言で焼き鳥を差し出されてしまうほど。いい大人なのに、一瞬「え? いいの?」と手を伸ばしかけるも、ふと我に返ったため、さすがに食べはせず。しかし、坊主頭の児童との微笑ましいアイコンタクトが実にいい塩梅でした。

 菓子店を開店予定の杉山(中山忍)との商談帰りに、三河島近辺に多い韓国食材店を訪ねると、すでに杉山に土産としてキムチをもらっているのに、同じ店(丸満商店)でまたキムチを購入しちゃう欲しがり五郎。あげく、そのキムチでご飯を食べることを想像しながらの帰り道、「このキムチで飯をばくばくと……いかん……家までもたない。ここで店を探そう!」と、食物連鎖ならぬ食欲連鎖でスイッチオン、街を彷徨いだす。キムチの役目はここで終わり。

 見つけた店は「麻婆豆腐専門・真実一路」。漫画『3年(ハイスクール)奇面組』(集英社)に真実一郎というキャラクターがいたのを思い出す。

「その麻婆一筋、わき目も振らぬ心意気、痺れるじゃないか」と、山椒にかけた上手いことを言いつつ五郎、入店。手に2つのキムチを抱えて。

 

■色とりどりの麻婆

 ここの麻婆豆腐は「五味一体」にこだわっており、店内の黒板にいろいろが記されている。

・「麻」…四川花山椒の痺れ
・「辣」…四川朝天辣椒で作る自家製辣油の辛味
・「香」…ニンニクや秘伝配合の豆板醤、四川永川豆チの香り
・「熱」…鍋フチを焦がすほどの熱さ
・「色」…豆腐、辣油、ニンニクの芽の3色のコントラスト

 ということらしい。店の壁にうんちくが書かれている店は、どこか説教臭く感じてしまうが(すみません)、中国のフィルターを通しているせいか、特に気にならない。ちなみに「三位一体」はキリスト教の教え。

メインの麻婆豆腐には4色があるようで、

・王道の「赤」
・青唐辛子と山椒で爽やかな「白」
・中国たまりと黒胡椒を使った「黒」
・野菜ペーストを使った「緑」

 とどれも気になるラインナップ。

 注文しようと声をかけるも、一人でカウンター内で作業している店員にあまり声が届いていないようで、何度か呼び直すことになる五郎。これ、実際にあると気を使うやつだ。さらに大きな声で呼び直すパターンと、作業を凝視し、その隙間を縫って自然に聞こえるように声をかけるパターンとに分かれるが、ドラマでの五郎は躊躇なく前者。しかし、以前、回転寿司を食べていた時の五郎は後者(見かねた隣のおばさんが店員に伝えてくれた)だった。ちなみに筆者も後者だ。前者になりたい。

 そして、この店「麻婆専門」と看板に掲げながらも麻婆以外のメニューが実に多い。いつものようにガシガシと頼んでいく五郎。

・ザーサイのネギ生姜和え
・ワンタン入り滋養スープ
・海老と大葉の春巻き
・豚ヒレと野菜の五目春巻き
・緑の麻婆豆腐
・ライス
・白茶

「給料日だから」とか「今日は奮発しちゃえ」とかいう理由も葛藤も一切なく、当たり前のようにこの品数を頼める五郎の懐具合に毎回驚く。今日もしっかり数千円コース。「頼みすぎじゃない?」とか「そんなにお腹空いてたの?」とか「1,000円超えちゃうよ?」とか勝手にハラハラしてしまっていたが、一応個人の貿易商だし、何より大食漢ということで、今は「どれだけ頼んでも大丈夫な人」として慣れた。

■緑色の麻婆には何が?

 まず出てきた白茶の茶葉が開く間、隣の席で頼まれていた「麻婆(豆腐専用)ハイボール」が気になる五郎。調べると山椒が振りかけられているものらしいが、下戸の五郎は当然スルー。

 白茶を美味しそうに味わいつつも、本音は「よく分からない」と素直な感想。しかし、甘さもあるこのお茶は、辛い麻婆から何度も五郎を救ってくれる。いいチョイス。

 そして「ワンタン入り滋養スープ」は「滋養という言葉が胃袋に沁みて」「体にいい。心にもいい。魂が癒やされていく」と、五郎の胃袋がほだされていくのがわかる。

「ザーサイのネギ生姜和え」でつないでいるところに、揚げたての春巻きが到着。

「海老と大葉の春巻き」からかじり付くが、まずかじる音がいい。衣の砕ける音が食欲をそそる。味も「味付けが程よくて、程よい」という五郎らしい感想。「豚ヒレと野菜の五目春巻き」は「濃いめのオカズ味」と感想を言いながら、米も来てないのに食い進む。

 そして、「緑麻婆豆腐」が登場。エメラルドグリーンに輝くその色は、福島の名所・五色沼の湖面のような色合い。野菜のペーストが使われており、野菜の甘みがありつつ、それが辛味と絡む。

「でも確かに麻婆豆腐だ。これは驚いた……。しかし驚きながらもスプーンは進んでいく!」と活弁士のような気合の入った五郎の心の声が響きわたる。甘みのある白茶で流し込む五郎の表情は幸せそのもの。

 

■さらに真紅の麻婆を追加

 隣の席に「燻製焼き飯」が到着。五郎は身を乗り出して食いつきつつ、「なるほどの燻製臭。謎の中国人・クン・セイシュウ」と不気味な独り言(妄想)。

 その勲星周(当て字は適当)に刺激された五郎は「五味一体麻婆豆腐・赤」を追加。鍋ごと焼かれ、グツグツと沸き立つ赤麻婆。「これ、もしかして100度超えてるんじゃないの?」と五郎は恐れていたが、脂が表面にある分、そうかもしれない。

 フハフハしながら一口すすった五郎の感想→「熱くて味がわからない!」に爆笑。

 しかし慣れてくるにつれ、「熱いけど美味い。俺の舌は痺れと辛さで悲鳴を上げ続けているのに、脳がスプーンの動きを止めるのを拒絶している」。

 あー、美味い四川風の麻婆って確かにこんな感じ。舌が痺れてるのに手が止まらなくなるあの感じ。

 一緒に出てきた白米にぶっかけて赤麻婆を掻き込む。

 ちなみに食べた人の感想を調べると、この「赤」が一番辛くて、次いで「白」そして「緑」、意外にも「黒」が一番辛くないらしい。五郎というか、松重おじさんの額に天然の汗が玉のように滴る。

 ここで五郎は「助け舟を呼ぼう」と「正式杏仁豆腐」を召喚。余計なものやシロップなどのかかってない、ただただ濃厚そうな杏仁がたっぷり到着。

「ねっとりとしてすっきりしてる。ネトスキで品良い甘み」を味わいながら、辛さからの落差を楽しむ五郎。あーどっちの「豆腐」も食べたい。辛いから甘いへの豆腐のハシゴ。この流れで見ていると、むしろ美味しく杏仁を食べるために麻婆を食べたくなってくるほど。それほどこの流れでの杏仁豆腐が美味しそうに感じた。最後に白茶で全て洗い流す感じもいい。

 店内のメニューには「鱈と白子の麻婆豆腐」や「とろけるチーズの麻婆豆腐」など、他にも気になるものが多かったのだが、今回筆者が一番気になったのは、「燻製麻婆豆腐」で、白麻婆豆腐に桜の燻香をプラスしたものらしい。燻製チャーハンもそうだが、一度は体験してみたい。

 原作者・久住昌幸が同店を訪れる「ふらっとQUSUMI」では

・胡瓜の四川唐辛子和え
・ピータンとピーマンの香り和え

 など酒に合いそうなツマミをつまみつつ、久住が「カメ出し生紹興酒」を「カメ出し烏龍茶」だと言い張るという昼酒時恒例の和尚様のような秘技・飲酒隠しを披露、こちらも幸せそうだった。

 

■宇佐美圭司の、あの東大の絵が原作に登場していた

 意外だったのは、麻婆豆腐が、原作やドラマの全シリーズ通して初登場だったこと。シーズン2(第6話・京成小岩の四川家庭料理 珍々)にて「豆腐のニンニクタレかけ」なるものは食べているが、これは丸のままの豆腐にしゃばしゃばしたタレをかけたものだし、やはり違う。

 他にも四川っぽいものが登場していないかと調べていると、原作コミック2巻(扶桑社)で東大学食を訪れ「赤門ラーメン」なる担々麺(風)のものを食べている。これは言わずもがな汁の色をかの赤門に寄せたメニューで、四川云々といったものではないのだが、それとは関係なくコマをよく見てみると壁に見覚えのある壁画が…。

 そう。生協側が廃棄してしまったことが発覚し、先日話題になった画家・宇佐美圭司のあの絵だ。2巻が発売されたのは2015年。原作者の久住は13年に取材で訪れたとTwitterで発言しており、当然だが当時はあそこに行ったら否応無しに目に入ってくるものだったのだろう。

 ちなみに五郎は絵については特に触れていないのだが、地下に広がるこの学食の構造について「学食サンダーバード基地!」と興奮している。

 話が脇道にそれたが、次回は千葉県浦安市の真っ黒な銀ダラの煮付け定食。

 最近は予告で店を調べて放送日前に行くのが流行ってしまい、すでにこの麻婆の店も放送日前から行列ができていたらしい。行く方はお気をつけて。
(文=柿田太郎)

テレビ東京の快進撃が止まらない! コスパ最強番組を続々生み出す、フジテレビと明暗が分かれる

 フジテレビが凋落してから数年経つが、いまだに復活の兆しが見えない。一方でテレビ東京が快進撃を続け、名物番組を続々と生み出している。

 フジテレビが『めちゃ×2イケてるッ!』『とんねるずのみなさんのおかげでした』『森田一義アワー 笑っていいとも!』『HEY! HEY! HEY!』など長寿番組を終わらせている中、テレビ東京では『Youは何しに日本へ?』『THEカラオケバトル』『家、ついて行ってイイですか?』『池の水ぜんぶ抜く』などの放送がスタート。テレビ東京の番組は大好評を博して瞬く間に人気番組として世間に定着することに。フジテレビのみならず、日本テレビ、テレビ朝日、TBSなどとも、テレビ東京は視聴率で対抗できるようになってきた。

「テレビ東京の番組は、司会進行などは芸能人が行うもののメインは素人。番組スタッフが自分の足を使い、時間をかけて丁寧にVTRを制作しています。『Youは何しに日本へ?』『家、ついて行ってイイですか?』は素人を取材する番組ですが、1日かけても取材対象すら見つけられないことがあったり、取材の途中で連絡が取れなくなったりすることも多く、スタッフの頑張りが画面越しにもヒシヒシと感じるほどです」(芸能ライター)

 15年11月の「NEWSポストセブン」では、『Youは何しに日本へ?』の総合演出・野村正人へのインタビューを掲載。野村は「これまでおおよそ4万人以上の“You”に声がけして250人以上に密着しています」「だいたい3班が平日はほぼ毎日、空港でインタビュー取材をしています」と番組の制作裏話を語っていた。

「テレビ東京の新番組とフジテレビの終了した番組の大きな違いは制作費です。『いいとも』のタモリのギャラは、『女性自身』(光文社)によると1本当たり約200万円で、『みなさん』はとんねるずのギャラが1本あたり800万円~1,000万円ほどだと言われていました。テレビ東京の番組は時間こそかけていますが、1人のスタッフを丸々1カ月拘束しても、人件費としては20万円から50万円ほどでしょう。テレビ東京の番組は丁寧に時間をかける上に低予算で、フジテレビの番組と違って圧倒的にコストパフォーマンスが高いのです」(同)

 タレントがメインの番組でも、テレビ東京の番組は少数精鋭。『モヤモヤさまぁ~ず2』はさまぁ~ずと局のアナウンサーという3人構成、『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』も出川哲朗と数人のゲストのみが登場している。しかしそれでも高視聴率を記録し、『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』は裏番組の『めちゃ×2イケてるッ!』に何度も視聴率で勝利していた。

 企画力でのし上がってきたテレビ東京。視聴者からの好感度も高く、今後もますます民放主要4局との差を縮めていきそうだ。

ラブホで人生哲学する俳優・池松壮亮の真骨頂! 理不尽さに満ちた世界『宮本から君へ』第4話

 若手演技派男優として、真っ先に名前が挙がるのが池松壮亮です。R指定映画『愛の渦』『海を感じる時』(ともに13年)では門脇麦、市川由衣を相手に過激な濡れ場を演じて話題を呼びました。演技面できっちりリードするので、共演女優たちからは信頼されています。官能系映画で汗を流す一方、時代の流れに迎合できずにいる現代の若者像をナイーブに描いた石井裕也監督の『夜空はいつでも最高密度の青色だ』(17年)でも主演しています。ベッドで腰を振りながら、自分が生きている意味を模索し続ける俳優、それが池松壮亮です。社会人1年生の宮本浩が恋に仕事に全力で悩む『宮本から君へ』(テレビ東京系)はそんな彼にぴったりの深夜ドラマです。ヒロインとのベッドシーンが用意された第4話を振り返ってみましょう。

(前回までのレビューはこちらから)

 宮本浩(池松壮亮)は都内の小さな文具メーカーに勤める新人営業マンです。通勤電車で顔を合わせる大手自動車メーカーの受付嬢・甲田美沙子(華村あすか)と仲良くなり、職場近くのカフェで早朝デートするようになりました。初キスは済ませましたが、初SEXはまだ。友達以上恋人未満という微妙な距離感を、宮本は悶々としながらも楽しんでいるようです。

 出社前から宮本と美沙子がイチャイチャしている光景を見かけた宮本の同僚・田島(柄本時生)は、「お前はええのう。おもろない生活から逃げ道ができて」とついつい嫌味のひとつも言いたくなります。営業マンとしてはまだ半人前であるのは宮本も一緒です。美沙子と過ごす時間を心の支えにしながらも、「美沙子=逃げ道」という田島の指摘が気になってしまいます。美沙子とエッチしたい。でも美沙子への欲望は純粋な愛情ではなく、仕事にやりがいを見出せない現実からの逃避なのかと宮本は思い悩むのでした。

 第1話に続き、昭和感漂う居酒屋「酔の助」での呑み会。職場の仲間たちと呑んでいても、やっぱり宮本の顔は浮かないままです。美沙子との交際がスタートしたのに、美沙子を抱くのは自分が営業マンとして一人前になってからと宮本は決めています。妙にストイックな宮本に対し、「何べんでもSEXすればいい。人間のすることに完全なんかない。気持ちは後から付いてくるよ」と上司の小田課長(星田英利)は優しく諭します。でも、意地っ張りな宮本はついつい反論してしまうのでした。「人間なら完全になれると信じたいです。やってみなくちゃ、分からないでしょ!?」と酒の席でシャウトするのでした。

 美沙子とのデートの日が訪れました。渋谷のバーで、2人っきりの時間を過ごす宮本と美沙子。この日の美沙子はいつになく積極的でした。「宮本さんは紳士なの? けだもの?」「私は淑女なの? それとも……」。何度も何度も思わせぶりな「今夜はOKだよ」サインを発する美沙子でした。でも、美沙子とのSEXをつまらない仕事の逃げ道にしたくない宮本は、美沙子の甘い誘いになかなか乗ってきません。ついに業を煮やした美沙子は「今夜は帰らないって、家族には言ってきたから」と男が断れない最後の決め台詞を吐くのでした。

 美沙子は分かりやすい女です。学生時代から付き合ってきた彼に振られて間もない美沙子は「私を捕まえて。私、宮本さんを逃げ道にするから」と堂々と言い放ちます。元彼のことを忘れるくらい強く激しく愛してほしいと、宮本のハートと股間に剛速球を投げ込みます。ここまで女に言わせたら、もう宮本も帰るわけにはいきません。「行くぞッ!」と取って付けたような男らしさでラブホに向かうのでした。

■未練がましい? 最初で最後となる美沙子のいる職場への訪問

 

 ラブホではバスローブ姿になった美沙子が、ベッドで待っていた宮本の横に座り、しなだれ掛かります。自身の男性器が勃起していることを確認した宮本は、美沙子のバスローブを剥ぎ取りました。美沙子の巧妙なマインドコントロールによって、宮本はあっさり「一人前になるまで美沙子は抱かない」という自分への誓いを破ってしまいます。宮本との初SEXを済ませ、満足したのか美沙子は大きな鼻息を立てながら、ぐっすりと眠っています。美沙子の寝顔を見つめながら「……けだもの」と呟く宮本でしたが、ようやく美沙子と身も心も繋がったという充足感も感じているのでした。

 美沙子と一線を越える仲になったも束の間、宮本は天国から地獄へと突き落とされます。宮本を地獄送りにしたのは、誰であろう美沙子に他なりません。毎朝、一緒に電車通勤していたのに、いきなり美沙子は姿を見せなくなったのです。考えられる理由はひとつです。日曜日に短大時代のサークルの集まりに参加すると話していた美沙子は、元彼も来るかもしれないけど……と宮本にお伺いを立てていました。美沙子と初SEXしたばかりの宮本は、「行けばいいよ」と男の寛容さを誇示したのですが、これが命取りでした。「私を捕まえて」と美沙子が言っていた言葉の重みを反芻する宮本ですが、今さらもう手遅れです。

 元彼はそんなにいい男なのでしょうか? 宮本とは比べものにならないくらの高給取りなのでしょうか? 宮本よりも抜群にSEXがうまいのでしょうか? 宮本は美沙子に棄てられたという現実を直視することができず、美沙子に電話をかけることすらできません。美沙子と音信不通になって数日後、駅で美沙子を宮本は見かけますが、美沙子は無言のまま目を合わせようとしません。美沙子の乗った電車を宮本はみっともなく追いかけるものの、無情にも扉が閉まった電車は遥か遠くへと去っていきます。

 翌日の朝方、美沙子からメッセージが届きました。元彼から「やり直したい」と言われたそうです。「自分勝手で本当にごめんなさい」と綴られたメッセージだけでは、どうにも宮本の心は落ち着きません。土砂降りの雨の中、美沙子の勤める大手自動車メーカーの本社を訪ねる宮本でした。もちろんアポなしです。エントランスで大きく深呼吸した宮本は、美沙子のいる受付けへと進んでいきます。「僕の名前は宮本浩です!」「用はありません!」「さようなら!」。短い3つのフレーズに、自分の思いの丈を存分に込めて叫ぶ宮本でした。この奇妙で愚直な宮本の行動を、受付嬢である美沙子は「はい」「ありがとうございました」と懸命に泣くのをこらえながら対応するのでした。

 最後にお辞儀しながら、宮本は美沙子に見送られます。このお辞儀は、真っすぐに生きることを何よりも尊んだ青春時代との別れの挨拶でもありました。宮本は元彼のもとに走った美沙子への怒りよりも、美沙子の逃げ道にすらなれなかった自分の器の小ささに対する不甲斐なさでいっぱいです。美沙子を大切に思うあまりSEXを控えていた宮本は、美沙子に押し切られてSEXしますが、その直後に棄てられてしまいました。何という不条理でしょう。この世界は理不尽さに溢れています。でも、そんな理不尽さのひとつひとつを、社会人1年生の宮本はこれからも噛み砕きながら前へ進んでいくしかありません。

 これにて『宮本から君へ』の序章は終了。次回からはカリスマ営業マンの神保(松山ケンイチ)が登場し、宮本にサラリーマン稼業の真髄を叩き込むことになります。原作者である漫画家・新井英樹も宮本の父親役で出演するようです。いよいよ本章が幕を開ける『宮本から君へ』第5話は要チェックです。
(文=長野辰次)

 

『孤独のグルメ』今シーズン初の地方遠征は群馬! 『ガキ使』のあの人気キャラも登場で……

 おじさんがぶつぶつ言いながら一人で飯を食ってるのを、どこかシンクロしながら鑑賞するドラマ『孤独のグルメ Season7』(テレビ東京系)。第4話はSeason7初の地方遠征、しかもダブルヘッダー。「第4話・群馬県甘楽郡 下仁田町のタンメンと豚すき焼き」。

(前回までのレビューはこちらから)

■仕事前にいきなり食事

「ずいぶん早く着いちゃったな」

 旅情たっぷりな台詞とともに井之頭五郎(松重豊)が降り立ったのは、上信電鉄・上信線の下仁田駅。2両ほどのローカルな車両から降り立つ導入は映画のよう。

 商談で来たはずだが、駅を出るなり渋い路地を見つけ散策し出す。

「うわー、よく『残ってる』なあ」という台詞から、根っからの街歩き好きぶりがうかがえる。撞球場と書かれた木造丸出しのビリヤード場に感激したり、「食亭エイト」という趣があるんだかないんだかなリアルな店名を見て「味のある店名だ」と感心したり、仕事する前から自分なりに地方を満喫しちゃう幸せそうな五郎。

 そんな中遭遇したのが、地元に愛されていそうなこれまた渋い中華食堂。

「一目惚れしちゃう面構え」に惹かれた五郎は「餃子・タンメン 一番」と掲げられた看板を見るなり「こんな店にタンメンとか言われると、腹が、減ってきた……!」と、まだドラマのオープニング前なのに空腹宣言シーンと同時に入店、すぐさま食事シーン。今回は忙しそう。

 餃子とタンメンを注文し、老齢の主人が1個ずつ小麦粉の団子を皮に伸ばしていく様に感嘆する五郎。

「注文の都度、この作業をやってるのか……!」

 横では奥さんらしきお婆さんが、年季の入った中華鍋を振っている。この無駄のなさすぎる所作が、あまりに堂にいっていたので気になり調べてみたら、どうやらこのご夫婦、ご本人らしい。

 主人の朴訥とした台詞回しは、まるで往年の笠智衆のよう。

「作るとこ見ながら料理待ってるの大好き」とカウンターから無邪気に覗き込む五郎。今日も楽しそう。

 まずはタンメン到着。五郎は「一目で美味いのがわかる」というエスパーのような発言をしていたが、確かに間違いなさそう。変な言い方だが、美味いタンメンって絶対に美味い。

 一口食うなり、しみじみと「あー、これはいいタンメンだ……」と幸せを噛み締める。

 見ているだけで口に噛みごたえが伝わってくるような、むちむちの太麺。

「肉は少し、野菜はもやしとキャベツと人参。それだけ。具材を削ぎ落とした『引き算のタンメン』」モノは言いようだが、とにかく美味そうだから説得力が半端ない。

 途中、美味さに感激しながら五郎がタンメンをすするシーンがワンカット長回しで1分40秒に渡って繰り広げられ、最後は「久しぶりにスープ全飲み」、まさに「うますぎて止められん!」のが伝わってくる渾身の食べっぷりを見せてくれた。

 ここで餃子到着。正直カタチはさほど綺麗ではない。潰れ気味で、ごてごてとくっつき合い、ボテッと塊になった餃子。しかし、その皮の焦げ具合や、もちもちした輝きっぷりが絶対美味いやつだと予感させる。今まで幾度となく餃子は登場しているが、そのどれとも違う存在感。店員の沼田(戸塚純貴)に言われた通り、酢多めに醤油とラー油でかぶりつく。

「焦げがジャスト」という、いい表現。焦げを噛んだ時に出る音が、感触を想起させまくる。具材に何が入っているとかはわからないままだが「これはいい店に当たったあ」という五郎の感想が全てだろう。そして、あの名言まで飛び出した。

「こういうのでいいんだよ、こういうので」

 余計なことをせず、それでいて必要最低限の要素がしっかりしている品が出てきた時、五郎が口にする言葉。原作では板橋でのシンプルなハンバーグランチが出てきた時に言っているのだが、結局その際は、外国人店員にきつくあたりすぎる不遜な店主に五郎が憤慨し、完食せずに店を出たあげく、路上で逆上し襲いかかってきた店主にアームロックを決め懲らしめるという、ドラマではあり得ない原作屈指のシーンが展開された。松重は柔道2段なので、かのシーンを踏まえてのキャスティングかと思われたが、Season7現在、そういった展開はどうやらなさそうだ。

■『ガキ使』のピカデリー梅田も登場

 商談を終え、駅で帰りの電車を30分待つつもりが2時間以上ベンチで居眠りして、3本も電車を乗り過ごしてしまう五郎。長い時間見てたのに、起こしてくれずニタニタしてる駅員(正名僕造)もいい味を出していたが、ベンチで「秘湯中の秘湯だよ」と温泉を勧めてきたお年寄り(菅登未男)が、『ガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系)の入れ歯怪談師や入れ歯考古学者としてお馴染みの「ピカデリー梅田」だったことにびっくりした。孫役らしき女性に手を引かれていたもののお元気そうで何より。御年87歳。

■2件目のすき焼きは豚肉と下仁田ネギで

 結局この日、2回目の「腹が減った」コールで店探し。実は下仁田は醤油だれにさっとくぐらせただけの「下仁田かつ丼」も有名なのだが、そののぼりには目もくれず五郎が目指したのは、先ほどの店の真隣にあった「すきやき・鍋物料理 コロムビア」という店。タンメン食った直後から気になってた五郎だったが、「失敗はご馳走で取り返せ」と、都合のいい名言を吐きながら直行する。

「コロンビア共和国」のコロンビアではなく、「コロムビアレコード」とか「コロムビア・トップ・ライト」(漫才師)とかのコロムビア。すき焼き屋なのにコロムビア。前述の「食亭エイト」もそうだが、この決して狙って付けてない、あざとさゼロのちぐはぐ感がいい。

 奥へ通されると、カラオケステージまである広間はまるで旅館の宴会場。なんちゃらプロデューサーとかなんとかコーディネーターとかが絶対関わってないこの感じ、いい。

 メニューはなく、すき焼きの肉を牛肉か豚肉か選ぶだけ。下仁田では豚すき焼きが一般的だと聞きもちろん豚で注文する。

 登場したすき焼きは、立派な豚ロースに下仁田ネギなど各種野菜。割り下を入れる前にネギだけ素焼きで食べてみろと勧められ、太くて立派な下仁田ネギをこんがり焼いて頬張る。

「むちゃくちゃ甘くて美味しい」とのこと。

 さらに、豚肉と割り下を投入、生卵で焼けた肉を頬張る。

「なるほど、こうなるか。豚すき、イケる。」どうやら五郎は豚すき焼きを食べるのが初めてらしく、筆者は東京だが、子どもの頃、すき焼きといえば豚の時代があったので、五郎が初めてとは少し意外。

 さらに下仁田ネギを豚で巻いて食うのだが、これも美味そう。しっかりした豚ロースならではの食べ方かもしれない。口に入れた五郎から「完にして璧」とのお墨付き。卵をじゅるじゅるとすする音も最高の効果音だ。

 白滝、しいたけ、エノキ、さらに冷奴として付いてきた小さな豆腐まで投入、「昼のタンメンとは逆の足し算のすき焼き」だと分析する哲学者・五郎。

 グツグツと具が小躍りしてるのを眺めながら「鍋の中は今、宴たけなわだ」と五郎の気分もマックス。アコースティックギターから始まるBGM「店を探そう」をバックにギアを上げる。

「少年たちよ、君達にも、いつかすき焼きの椎茸の意味を知る日が来るんだ」と椎茸を頬張ったかと思うと、「くったくたになったネギを卵につけて食べるのもまた趣のある美味さ」とネギをちゅるりと流し込む。

「なぜこれが都内で普通に食べられないのだろう、豚すき最高だな」と、すっかり豚すきがお気に入りの様子。残った具を全て卵にくぐらせ、それらを白米の上に蓋をするように並べ、すき焼き丼にして「いざ!」とシフトチェンジ。同時にBGMも「喰らいマックス」にチェンジしてテンションアップ。

「下仁田流すき焼き、最高のフィニッシュだ」と言った瞬間、豚の脂の溶け出し煮詰まった割りを見て固まる五郎。

「この残り汁を見ちまったら終われんだろう」と白米と生卵を追加、「(生)卵&すき焼きの汁かけご飯」を製造、口に含むなり「うわ、マジで美味い! やったあ!」と感激。「俺は最高の仕上げ方を見つけてしまった」と自画自賛、予想より美味かった発見に驚く五郎がかわいい。

 最後のBGMは新曲「アイリッシュ・スプーン」で後半3段階で駆け上がる畳み掛けがすごかった。

 結局満腹の五郎は帰るのがめんどくさくなったらしく温泉にで行こうかと壁にもたれ掛かかって、今回は終了。おそらく泊まって帰ったのでしょう。

 原作者・久住昌之が同店を訪れる「ふらっとQUSUMI」では最初の店・一番を訪問。タンメンで使う太麺を使った、常連が頼む裏メニュー・焼きそばなどを紹介。

 見習い店員の沼田さんは、街がこの味を残すために行った募集に応募してしてきた若者で、ドラマでの役者(戸塚純貴)があまりに沼田氏本人にそっくりだったため、ネットでは「店員なのに芝居が上手い」と情報が錯綜したほど。

 今回は、地方ならではの2店ハシゴながら無駄のない構成で、小旅行気分を味あわせてくれた良回。特に一番のご夫婦の存在感がよく、役者でなくご本人に出ていただいたのが好采配だったと思います。ご馳走様でした。
(文=柿田太郎)

『孤独のグルメ』今シーズン初の地方遠征は群馬! 『ガキ使』のあの人気キャラも登場で……

 おじさんがぶつぶつ言いながら一人で飯を食ってるのを、どこかシンクロしながら鑑賞するドラマ『孤独のグルメ Season7』(テレビ東京系)。第4話はSeason7初の地方遠征、しかもダブルヘッダー。「第4話・群馬県甘楽郡 下仁田町のタンメンと豚すき焼き」。

(前回までのレビューはこちらから)

■仕事前にいきなり食事

「ずいぶん早く着いちゃったな」

 旅情たっぷりな台詞とともに井之頭五郎(松重豊)が降り立ったのは、上信電鉄・上信線の下仁田駅。2両ほどのローカルな車両から降り立つ導入は映画のよう。

 商談で来たはずだが、駅を出るなり渋い路地を見つけ散策し出す。

「うわー、よく『残ってる』なあ」という台詞から、根っからの街歩き好きぶりがうかがえる。撞球場と書かれた木造丸出しのビリヤード場に感激したり、「食亭エイト」という趣があるんだかないんだかなリアルな店名を見て「味のある店名だ」と感心したり、仕事する前から自分なりに地方を満喫しちゃう幸せそうな五郎。

 そんな中遭遇したのが、地元に愛されていそうなこれまた渋い中華食堂。

「一目惚れしちゃう面構え」に惹かれた五郎は「餃子・タンメン 一番」と掲げられた看板を見るなり「こんな店にタンメンとか言われると、腹が、減ってきた……!」と、まだドラマのオープニング前なのに空腹宣言シーンと同時に入店、すぐさま食事シーン。今回は忙しそう。

 餃子とタンメンを注文し、老齢の主人が1個ずつ小麦粉の団子を皮に伸ばしていく様に感嘆する五郎。

「注文の都度、この作業をやってるのか……!」

 横では奥さんらしきお婆さんが、年季の入った中華鍋を振っている。この無駄のなさすぎる所作が、あまりに堂にいっていたので気になり調べてみたら、どうやらこのご夫婦、ご本人らしい。

 主人の朴訥とした台詞回しは、まるで往年の笠智衆のよう。

「作るとこ見ながら料理待ってるの大好き」とカウンターから無邪気に覗き込む五郎。今日も楽しそう。

 まずはタンメン到着。五郎は「一目で美味いのがわかる」というエスパーのような発言をしていたが、確かに間違いなさそう。変な言い方だが、美味いタンメンって絶対に美味い。

 一口食うなり、しみじみと「あー、これはいいタンメンだ……」と幸せを噛み締める。

 見ているだけで口に噛みごたえが伝わってくるような、むちむちの太麺。

「肉は少し、野菜はもやしとキャベツと人参。それだけ。具材を削ぎ落とした『引き算のタンメン』」モノは言いようだが、とにかく美味そうだから説得力が半端ない。

 途中、美味さに感激しながら五郎がタンメンをすするシーンがワンカット長回しで1分40秒に渡って繰り広げられ、最後は「久しぶりにスープ全飲み」、まさに「うますぎて止められん!」のが伝わってくる渾身の食べっぷりを見せてくれた。

 ここで餃子到着。正直カタチはさほど綺麗ではない。潰れ気味で、ごてごてとくっつき合い、ボテッと塊になった餃子。しかし、その皮の焦げ具合や、もちもちした輝きっぷりが絶対美味いやつだと予感させる。今まで幾度となく餃子は登場しているが、そのどれとも違う存在感。店員の沼田(戸塚純貴)に言われた通り、酢多めに醤油とラー油でかぶりつく。

「焦げがジャスト」という、いい表現。焦げを噛んだ時に出る音が、感触を想起させまくる。具材に何が入っているとかはわからないままだが「これはいい店に当たったあ」という五郎の感想が全てだろう。そして、あの名言まで飛び出した。

「こういうのでいいんだよ、こういうので」

 余計なことをせず、それでいて必要最低限の要素がしっかりしている品が出てきた時、五郎が口にする言葉。原作では板橋でのシンプルなハンバーグランチが出てきた時に言っているのだが、結局その際は、外国人店員にきつくあたりすぎる不遜な店主に五郎が憤慨し、完食せずに店を出たあげく、路上で逆上し襲いかかってきた店主にアームロックを決め懲らしめるという、ドラマではあり得ない原作屈指のシーンが展開された。松重は柔道2段なので、かのシーンを踏まえてのキャスティングかと思われたが、Season7現在、そういった展開はどうやらなさそうだ。

■『ガキ使』のピカデリー梅田も登場

 商談を終え、駅で帰りの電車を30分待つつもりが2時間以上ベンチで居眠りして、3本も電車を乗り過ごしてしまう五郎。長い時間見てたのに、起こしてくれずニタニタしてる駅員(正名僕造)もいい味を出していたが、ベンチで「秘湯中の秘湯だよ」と温泉を勧めてきたお年寄り(菅登未男)が、『ガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系)の入れ歯怪談師や入れ歯考古学者としてお馴染みの「ピカデリー梅田」だったことにびっくりした。孫役らしき女性に手を引かれていたもののお元気そうで何より。御年87歳。

■2件目のすき焼きは豚肉と下仁田ネギで

 結局この日、2回目の「腹が減った」コールで店探し。実は下仁田は醤油だれにさっとくぐらせただけの「下仁田かつ丼」も有名なのだが、そののぼりには目もくれず五郎が目指したのは、先ほどの店の真隣にあった「すきやき・鍋物料理 コロムビア」という店。タンメン食った直後から気になってた五郎だったが、「失敗はご馳走で取り返せ」と、都合のいい名言を吐きながら直行する。

「コロンビア共和国」のコロンビアではなく、「コロムビアレコード」とか「コロムビア・トップ・ライト」(漫才師)とかのコロムビア。すき焼き屋なのにコロムビア。前述の「食亭エイト」もそうだが、この決して狙って付けてない、あざとさゼロのちぐはぐ感がいい。

 奥へ通されると、カラオケステージまである広間はまるで旅館の宴会場。なんちゃらプロデューサーとかなんとかコーディネーターとかが絶対関わってないこの感じ、いい。

 メニューはなく、すき焼きの肉を牛肉か豚肉か選ぶだけ。下仁田では豚すき焼きが一般的だと聞きもちろん豚で注文する。

 登場したすき焼きは、立派な豚ロースに下仁田ネギなど各種野菜。割り下を入れる前にネギだけ素焼きで食べてみろと勧められ、太くて立派な下仁田ネギをこんがり焼いて頬張る。

「むちゃくちゃ甘くて美味しい」とのこと。

 さらに、豚肉と割り下を投入、生卵で焼けた肉を頬張る。

「なるほど、こうなるか。豚すき、イケる。」どうやら五郎は豚すき焼きを食べるのが初めてらしく、筆者は東京だが、子どもの頃、すき焼きといえば豚の時代があったので、五郎が初めてとは少し意外。

 さらに下仁田ネギを豚で巻いて食うのだが、これも美味そう。しっかりした豚ロースならではの食べ方かもしれない。口に入れた五郎から「完にして璧」とのお墨付き。卵をじゅるじゅるとすする音も最高の効果音だ。

 白滝、しいたけ、エノキ、さらに冷奴として付いてきた小さな豆腐まで投入、「昼のタンメンとは逆の足し算のすき焼き」だと分析する哲学者・五郎。

 グツグツと具が小躍りしてるのを眺めながら「鍋の中は今、宴たけなわだ」と五郎の気分もマックス。アコースティックギターから始まるBGM「店を探そう」をバックにギアを上げる。

「少年たちよ、君達にも、いつかすき焼きの椎茸の意味を知る日が来るんだ」と椎茸を頬張ったかと思うと、「くったくたになったネギを卵につけて食べるのもまた趣のある美味さ」とネギをちゅるりと流し込む。

「なぜこれが都内で普通に食べられないのだろう、豚すき最高だな」と、すっかり豚すきがお気に入りの様子。残った具を全て卵にくぐらせ、それらを白米の上に蓋をするように並べ、すき焼き丼にして「いざ!」とシフトチェンジ。同時にBGMも「喰らいマックス」にチェンジしてテンションアップ。

「下仁田流すき焼き、最高のフィニッシュだ」と言った瞬間、豚の脂の溶け出し煮詰まった割りを見て固まる五郎。

「この残り汁を見ちまったら終われんだろう」と白米と生卵を追加、「(生)卵&すき焼きの汁かけご飯」を製造、口に含むなり「うわ、マジで美味い! やったあ!」と感激。「俺は最高の仕上げ方を見つけてしまった」と自画自賛、予想より美味かった発見に驚く五郎がかわいい。

 最後のBGMは新曲「アイリッシュ・スプーン」で後半3段階で駆け上がる畳み掛けがすごかった。

 結局満腹の五郎は帰るのがめんどくさくなったらしく温泉にで行こうかと壁にもたれ掛かかって、今回は終了。おそらく泊まって帰ったのでしょう。

 原作者・久住昌之が同店を訪れる「ふらっとQUSUMI」では最初の店・一番を訪問。タンメンで使う太麺を使った、常連が頼む裏メニュー・焼きそばなどを紹介。

 見習い店員の沼田さんは、街がこの味を残すために行った募集に応募してしてきた若者で、ドラマでの役者(戸塚純貴)があまりに沼田氏本人にそっくりだったため、ネットでは「店員なのに芝居が上手い」と情報が錯綜したほど。

 今回は、地方ならではの2店ハシゴながら無駄のない構成で、小旅行気分を味あわせてくれた良回。特に一番のご夫婦の存在感がよく、役者でなくご本人に出ていただいたのが好采配だったと思います。ご馳走様でした。
(文=柿田太郎)