池松壮亮が魅せる“土下座”エンターテイメント!! 大暴走は最終局面へ『宮本から君へ』第11話

 世界でもっとも暑苦しいサラリーマン・宮本浩が大暴走する、池松壮亮主演ドラマ『宮本から君へ』(テレビ東京系)。先日、原作者・新井英樹のもうひとつの代表作『愛しのアイリーン』が吉田恵輔監督によって映画化され、9月14日(金)から劇場公開されることが発表されました。『宮本から君へ』全話の脚本・演出を受け持つ真利子哲也監督、今回カメオ出演したミュージシャンの峯田和伸を含め、多くのクリエイターたちが新井英樹ワールドを愛してやみません。『宮本から君へ』も『愛しのアイリーン』も、20年以上前に発表されたコミックなのに、何がそんなに読者の心を揺さぶり続けるのでしょうか。宮本の暑苦しさがマックスに達した第11話と共に振り返ってみましょう。

(前回までのレビューはこちらから)

 宮本浩(池松壮亮)は都内の弱小文具メーカーに勤める新米営業マンです。なかなか仕事に興味を持てなかった宮本ですが、大手文具メーカーに所属する益戸(浅香航大)とクリアファイルの納品を争ううちに、営業魂に火が点いてしまいました。取り引き先となる大手製薬会社の峰岸課長(村杉蝉之介)が正式決定を下す直前のタイミングで、宮本が発注した新デザインのサンプルが完成。宮本と先輩の神保(松山ケンイチ)は会社に泊まり、ほんとんど寝ていませんが、気力だけは充実しています。サンプルが間に合ったことを素直に喜べと神保にツッコまれる宮本ですが、天の邪鬼な性格の宮本はうまく笑えません。「俺は幸せ貧乏だから。大きな幸せで喜んだら、きっと大きな不幸がやってくる気がして……」。この捻くれた性格こそが、宮本らしさです。

 新サンプルは完成したものの、峰岸課長に手渡す前に大きな難問が待っていました。仲卸業者「ワカムラ文具」の島貫部長(酒井敏也)に新サンプルの見積書を書いてもらう必要があったのです。島貫は宮本がこっそり新サンプルを準備し、自分の顔に泥を塗ったと思い込んでいるので、見積書を書く気はまったくありません。どうやって島貫を懐柔するのかと問う岡崎部長(古舘寛治)に対し、宮本は不敵にも「力ずくでも、書いてもらいまひゅよ」と断言するのです。かくして、宮本の狂気じみた大々暴走劇の幕が開くのでした。

 島貫と和解させたい文具問屋の安達(高橋和也)に付き添われ、宮本と神保は「ワカムラ文具」を訪ねますが、ちょうど益戸に誘われて島貫はお茶に出掛けるところでした。島貫にのんびりお茶をされていては峰岸課長とのアポイント時間に間に合いません。無視して進もうとする島貫と益戸の前に、宮本&神保が立ち塞がります。こんなケンカ腰状態で、見積書を書いてもらうことができるのでしょうか。

■池松壮亮の身体能力がハンパなくすごい!!

 長年の確執から、神保と益戸が口論の末につかみ合いを始め、乱闘寸前になります。すぐ横にいた宮本は流れ弾ならぬ流れパンチを浴び、鼻先から流血してしまいます。流れる赤い血が、宮本の闘争心を掻き立ててしまいました。宮本の獲物を狙う野獣のような瞳がメラメラと燃え始め、島貫たちのいる道路一帯の温度・湿度がぐんと上がります。

 ここからは、ひたすら宮本の“世紀の大土下座ショー”が繰り広げられることになります。宮本はアスファルトの匂いを嗅ぐように顔面を道路に擦り付けて、島貫に新サンプルを勝手に作った非礼を詫び、その上で見積書を書いてほしいと懇願します。この光景を益戸は黙って見ていられません。クールな営業を標榜する益戸にとって、土下座はいちばんありえない姿です。もし島貫がこの土下座を受け入れたら、益戸のこれまでの営業スタイルは全否定されたことになってしまいます。宮本が短気な性格であることを知る益戸は、道路と宮本の顔の隙き間に自分の靴のつま先を押し込み、「プライドはないのか。足でも舐めてろよ」と挑発します。でも、採用されるかどうか分からない1個のサンプルが、大勢の人々の想いや生活の上で生み出されたことを身を持って知った宮本は、顔を地面から離そうとしません。いや、益戸の靴のつま先に犬のように噛み付き、さらに「島貫部長! お願いします!」と詰め寄るのでした。

 もはや宮本は尋常な人間ではありません。恐怖を感じた島貫はその場から駆け出しますが、四つん這いの姿勢で宮本は追い掛けます。宙を舞う前方回転からの「ローリング土下座」が鮮やかに決まります。9点! 続いては頭を下げたままの姿勢で扇形にムーブして島貫の前に出る「土下座円月殺法」。9.5点! それすらも振り切って逃げようとする島貫に追いすがり、横断歩道で繰り出した命懸けの「グランド・アポロジー・デンジャラス・スペシャル」。10点! 土下座界の歴史を次々と更新する画期的な土下座プレイの数々を我々は目撃するのでした。タヌキ親父の島貫も、ついに「やめろって。見積書は書くから」と白旗を揚げる結果に。

 原作者の新井英樹は漫画家には珍しく、高校卒業までラグビー部に所属していたそうです。『宮本から君へ』の異様な熱さは体育会系ならではのものです。池松壮亮もラグビー経験者で、抜群の身体能力の高さを見せてくれました。宮本の見事な土下座ぶりは、瞬く間にちまたで噂になったようです。「ワカムラ文具」でいつも島貫にお茶汲みを命じられていた女子社員の富永ちゃん(桜まゆみ)がにっこり笑顔で、宮本たちを見送ります。ちなみに、この桜まゆみという女優さんは、安田顕主演映画『愛しのアイリーン』にも重要な役で出演しているので、新井英樹ファンは要チェックです。

 約束の時間ギリギリでしたが、宮本は何とか峰岸課長に新サンプルを手渡すことができました。サンプルは途中で車に轢かれて一部破損しており、そのことを指摘された宮本は大手製薬会社の受付けロビーいっぱいに響き渡るデカい声で「僕の落ち度で、そんな目に遭わせてしまいました!」と詫びるのでした。宮本の一点の曇りもない率直な謝罪に、峰岸も苦笑いでサンプルを受け取るしかありません。帰り際、「宮本さん、ごくろうさまでした」と峰岸課長はひと言掛けるのでした。これまで、ずっと営業先では名前で呼ばれることのなかった宮本の本懐が成就した瞬間でもありました。

 かつて有吉弘行はベッキーのことを「元気の押し売り」とネーミングしましたが、宮本の場合は「情熱の押し売り」です。宮本の強引すぎる営業方法は、新人だから辛うじて許されるものでしょう。入社5年、もうすぐ30歳を迎える神保には、宮本のような捨て身の土下座営業はもうできません。言ってみれば、宮本の営業スタイルは、初期衝動だけで突っ走るパンクロックのようなものです。才能やテクニックがなくとも、自分の胸の中に溜め込んだ感情をブチまけるのがパンクロックの魅力です。それは芝居も同じです。キャリアを積めば、表現力はそこそこ身に付きますが、ただ演技がうまいだけでは観客の心は動きません。パンクも芝居も営業も一緒です。目の前にいる人間の心を動かすことができるかどうかが、いちばんのポイントなのです。初期衝動に身を任せ、突っ走るだけ突っ走る宮本のことを、先輩の神保も上司である小田課長(星田英利)も、どこか懐かしい気持ちで見ています。社会人になってすぐの頃の自分の姿を、宮本の中に見ているようです。

 本作を撮った真利子監督も、『愛しのアイリーン』の吉田監督も、タクシードライバー役で一瞬だけ映った峯田和伸も、同じ気持ちではないかと思います。物づくりにいちばん大切なもの、初期衝動は、お前の胸の中で今も熱く燃えたぎっているのかどうかを、新井英樹のコミックは問い掛けてくるのです。いよいよ次回は最終回。大手製薬会社からの結果報告を宮本はどう噛み締めるのか。宮本の前に再び現われた小悪魔・美沙子(華村あすか)に、宮本はどう対応するのか。そして『宮本から君へ』のドラマ版が最終回を迎えることに、真利子監督はどうオトシマエをつけるのか。宮本最後の大暴走も見逃せません!
(文=長野辰次)

今年で5回目の『テレ東音楽祭』、ローアングルの連続で「エロ過ぎる」と話題に

 6月27日に『テレ東音楽祭2018』(テレビ東京系)が放送された。今年も同音楽祭には様々なアイドルが登場したのだが、視聴者からは「ローアングルが多くて最高」「エロ過ぎる音楽祭」と絶賛の声が上がっている。

 2014年から始まり、今年で5回目となる『テレ東音楽祭』。今回は「AKB48」「SKE48」「HKT48」「乃木坂46」といった、AKBグループのアイドルユニットが名を連ねた。「AKB48 53rdシングル 世界選抜総選挙」第3位の宮脇咲良と、指原莉乃を擁する「HKT48」は「早送りカレンダー」を披露。カントリー風の衣装も魅力的で、ファンの視線を釘付けにしている。

 松井珠理奈と須田亜香里が「世界選抜総選挙」1位・2位を独占した「SKE48」は、「いきなりパンチライン」をテレビで初披露。彼女たちは赤いセクシーなドレスに身を包んで登場した。「乃木坂46」は、フリルが特徴的な白と黒の衣装でパフォーマンス。「インフルエンサー」や「裸足でSummer」などの“スーパーヒット曲メドレー”で会場を沸かしている。そして「AKB48」は、際どいミニスカートで最新曲「Teacher Teacher」を歌唱。それぞれのグループが独自のステージを見せたのだが、一部の視聴者は歌やダンスどころではなかったという。

「AKBグループがスタジオライブを披露している場面は、下からあおる形でのローアングルが多い印象でした。スカートの丈が短かった『AKB48』『SKE48』『HKT48』だけでなく、膝丈あたりの衣装だった『乃木坂46』も中が見えそうになるほど。さすがにアンダースコートなどを履いているものと思われますが、視聴者からは『完全にパンチラショーじゃないか!』『全然パフォーマンスに集中できない』といった声が上がっています」(芸能ライター)

 際どいアングルに興奮するファンが続出したようだが、一方で「テレ東にしては“守り”に入ってる気がする」「テレ東ならもっと際どいところを攻められるはずだ!」という意見も少なくない。

「テレビ東京は以前から、“エロに寛容な局”として視聴者の期待を集めてきました。今年は『SKE48がひとっ風呂浴びさせて頂きます!』という番組も放送されたのですが、アイドルの入浴シーンが見れるとあって話題に。出演した大場美奈も『テレビ東京さんは何でもありの自由なイメージで、私たちSKE48も何でもやるので相性ピッタリだと思ってます』とコメントしています」(同)

 テレビ東京には、今後も攻めた企画とアングルで人々の期待に応えてもらいたい。

田代まさしと酒井法子が夢の共演!? テレ東のVTRに「絶対にねらってるだろ」の声

 6月27日に『テレ東音楽祭2018』(テレビ東京系)が放送された。アーティストたちがデビューした頃の貴重映像を流していたのだが、「これを今流すか?www」と爆笑する声が上がっている。

 話題の映像は酒井法子のデビューVTR。「14歳の時に落選したオーディションの様子を、のりピー本人が鑑賞するという謎の映像を発見!」と前振りをして、映像に突入していく。酒井というチョイスの時点で、ネット上では「なんでのりピーwww」「これ流して良いのか?www」「なぜのりピーを推すんだ」とツッコミが続出。しかしこの盛り上がりを遙かに凌ぐお祭り騒ぎが起こってしまった。

 このVTRは「酒井法子、昭和46年2月14日、福岡市に生まれる」という男性のナレーションで始まったのだが、なんと声を吹き込んでいたのは田代まさし。画面上に「ナレーション 田代まさし」というテロップが映し出されると、「マーシーwwwwwwww」「ここで田代www」「すごい組み合わせのVTRだな」「テレ東攻めすぎだろ」「これは夢のコラボレーション」「なんという悪意」とネット上が最高潮に盛り上がることに。

「このVTRが凄かったのは、酒井と田代の共演だけではありません。ナレーションでは『“正しい道を歩む子になってほしい”そんな願いを込めてこの名前はつけられた』と、法子という名前の由来を紹介。これにも『正しい道からそれまくりましたwww』『もうお腹痛い。このVTR面白すぎるだろ』『突っ込みどころ満載じゃねーか! 色々詰まりすぎててキャパオーバーしそう』『テレビ東京絶対にねらってるだろwww』と大反響が起こっています」(芸能ライター)

 今ではほとんどテレビで見ることのなくなった2人。しかし現在2人は復活して、地道に活動を続けているようだ。

「18年4月の『ORICON NEWS』によると、15年に亡くなった電撃ネットワークの三五十五さんを偲ぶライブに田代は出席。芸能の仕事を断っていると明かしながら、『薬物番長のまーしーです』と自虐ネタをかましていたようです。酒井は既にライブなどを行い、日本のみならず台湾、中国、香港などでも大好評を博していました」(同)

 果たして2人が再びテレビの世界で活躍することはあるのだろうか。

テレ東深夜の「お宅紹介×プール×グラドル」番組で思い出される、『電波少年』伝説のアノ企画

 かつて、『進め!電波少年』(日本テレビ系)に「豪邸のトイレでウンコがしたい!」という企画があった。松村邦洋がロケ弁を食べた上に下剤を服用、便意を催した状態で有名人宅へ訪問し、トイレを借りるという趣旨である。

 思えば、90年代は「どれだけエグいことができるか」を競い合うチキンレースのような時代だった。その風潮は、上記の企画内容に色濃く表れていると思う。

 そして、2018年。時代は変わった。今はコンプライアンスを意識しなければならない。『電波少年』とはなんの関係もないだろうが、妙に関連付けたくなる番組を見つけてしまった。6月18日深夜に放送された『いきなりスイマーズ!~プール付きの豪邸で泳がせてもらおう!~』(テレビ東京系)が、どうにも変わり種である。

 番組ホームページでは、「新しい切り口のお宅紹介」をうたっている。確かに、切り口は新しかった。ずんの飯尾和樹とシドニー五輪銅メダリストスイマーの田中雅美、グラビアアイドルの岸明日香が一般の豪邸へ訪問。そして、いきなり「お宅にプールはありますか?」「泳がせてもらえませんか?」と家主に直談判するのだ。

「スイマー」「グラドル」と「プール」の親和性が高いのは言うまでもない。『電波少年』における「下剤」と「トイレ」の関係性に当てはまるだろう。

 そして、お願いされた家主たちが一様に快諾するのが不思議だ。もしかしたら、彼らは率先して家の中を見せたいのかもしれない。なぜなら、みんな成功者だから。

■メダリストの華麗な泳ぎとグラドルの犬かき

 一行が向かった一軒目の豪邸は、あからさまにゴージャスだった。家の中にはサウナ室(約200万円)やカラオケルーム(約1,000万円)等を設置。庭へ行くと、三段跳び用の陸上レーンと砂場(約750万円)がある。そして、その隣にはお目当てのプール(約1,200万円)が!

 なぜ、こんなに潤ってるのだろうか? 実はここの家主、16年に西日本と東日本で最優秀メーカーに輝いた、釣り具会社の経営者である。仕事柄、プールはルアーの動きを確認するために使用しているそうだ。ここまでの情報は、さながら『渡辺篤史の建もの探訪』(テレビ朝日系)を彷彿とさせる。家の設備を楽しむだけでなく、それぞれが設置されるまでのプロセスも律義に追っているから。

 ここまで掘り下げたならば、あとは泳ぐしかない。第一泳者は田中である。競泳水着を着た彼女はプールに勢いよく飛び込み、平泳ぎで伸び伸びとプールを何往復もした。伸び伸びと泳げるほどのサイズ(縦17メートル、横2.3メートル、深さ1.4メートル)を、このプールは誇っているのだ。

「長さがしっかりあって、『すごい立派なプール!』って思いながら泳いでました」(田中)

 メダリストがお墨付きを与える、プールの実用性!

 続いては岸である。彼女が担う役目については、言うまでもないだろう。不自然に極小のビキニをまとい、グラドルの矜持を見せつける。

岸「これはもう、本業なんで。一番万全に戦える格好で来ました」

飯尾「(岸の胸を指して)水の抵抗だらけじゃないか!」

田中「持って生まれた才能ですね」

 彼女からすると、プールの実用性など眼中にない。何しろ、カナヅチである。それってミスキャストじゃないの……? いや、そんなことない。犬かきで前へ進もうとする彼女の体を下から見上げて撮るカメラアングルは、いかにもテレ東深夜である。この時点で、岸は仕事を全うしている。

■豪邸の中身とグラドルのボディを同時に紹介

 次に訪れた家もすごい。ガレージにはディアブロ(約5,000万円)やフェラーリ、カウンタックなど数台の愛車がズラリ! 敷地面積も半端なく、3,500坪を誇っているとのこと。

家主「ここは僕の“趣味の家”なんで。車を保管するために、この家を建てたんです」

飯尾「……何をおっしゃってるんですか?」

 ここの家主は酵素ドリンクの販売で大ヒットを飛ばし、そのほかの事業も加えると年商40億円を誇る成功者である。豪邸の浴室からは芝が敷かれた広々とした庭が一望できるし、2階にある書斎と直結の階段でガレージへ下りられるという、こだわりの造りだ。

 そこから外に出るとテラスがあり、らせん階段を下りると目当てのプール(約700万円)へ到着した。サイズは縦10メートル、横4メートル、深さ1.3メートル。学校のプールのおよそ半分の大きさだ。

 早速、泳ぐ出演者たち。例えば、飯尾は眼鏡をかけたままバサロで泳ぎ切るという芸達者ぶりを発揮する。田中に関しては、バタフライ→背泳ぎ→平泳ぎ→クロールのメドレーリレーを人の家で披露するという破天荒さだ。

 でも、やっぱりおいしいところはグラドルが持っていく模様。空気を入れて膨らませる大きくて透明なボールが岸には用意された。この中へ入り、不安定な状態で七転び八起きするグラドル。その姿を、例によって下からのアングルで撮る不埒なカメラマン。すべて、狙い通りである。

 いい家と、いいプールと、グラドルのいい体。ぶっちゃけ、焦点が定まり切っていない。「新しい切り口のお宅紹介」とうたっているだけに、豪邸を紹介する側面は欠かせない。『いきなりスイマーズ!』という番組名から、プールが主役であることもうかがえる。しかし、結局はグラドルの際どいカットがすべてを持っていってしまう。これらすべて込みで、実は狙い通りな気がする。

 冒頭でも述べたが、昨今はコンプライアンスの厳しい時代。グラドルの水着姿を映すにも、それなりの“正義”が必要だろう。そういう意味で、「お宅紹介」という切り口は、いろいろな意味で有効。正義として機能するし、富豪の家も興味として純粋に見てみたい。

 なるほど、アイデア勝負のテレビ東京らしい新機軸だ。この番組は2週連続の放送が予定されており、次回(25日深夜)放送分にはグラドルの都丸紗也華が出演するらしい。

(文=寺西ジャジューカ)

韓国編後半で意外なゲスト登場!『孤独のグルメ』肉の食べごろはいつなのか問題

『孤独のグルメ Season7』(テレビ東京系)は、引き続き韓国編。前回はセルフビビンパを楽しんだ井之頭五郎(松重豊)だったが、今回は待ってましたの焼肉。Season1から各シリーズごとに必ず1回は登場する(ホルモン焼き含む)ド定番人気メニューだが、本場はもちろん初。

 今回は韓国らしく、でかい肉をハサミで切り分けられつつも「おあずけ」に苦しむ五郎の姿が。第10話「韓国ソウル特別市の骨付き豚カルビとおかずの群れ」。

(前回までのレビューはこちらから)

■朝から「立ち食いそば」感覚でトッポギ

 韓国滞在2日目の朝。朝からやってるトッポギ屋台を発見。

 仕事前のサラリーマンやOLがさっと食べてさっと出て行く様子は、五郎の言う通り「日本の立ち食いそばみたいな感覚」のよう。

 トック(うるち米でできた長細い餅)をコチュジャン(唐辛子味噌)や砂糖で甘辛に炒めたものを熱々でいただく。

 どちらかというと甘めな印象だが、五郎が食べたものはなかなか辛いようで、魚のすり身らしき具も入っている。

 続いて揚げたてのティギム(天ぷら)も追加。イカやさつまいもに混じってキムマリ(春雨海苔巻き)の天ぷらもあり、五郎も気に入った様子。

 水を飲もうと迷っていると、隣で食べていた若者が「おでんのスープと一緒に召し上がるといいですよ」と紙コップにオデンの汁だけよそって手渡してくれた。原作のハードボイルドと違い、ドラマの五郎はかまってあげたくなる。

 あちらのおでんの具は波打つように串に刺された練り物がメインで、スープを紙コップで飲むのも定番のよう。

 どうやら練り物自体を「オデン」と呼ぶようで、前回のビビンパの回も、甘辛いタレにまみれた小粒の「オデン」がおかずの一品に混ざっていた。

 ちなみに、ベースとなる料理は以前からあったとの説があるが、「おでん」という名前は戦時中の日本統治下で広まったものらしい。釜山では以前は「カントウ」と言い、これも関西の「関東炊き」からきているという。

 

■襲い来る「おかずの群れ」

 無事、午前中で仕事も終え、ソウルで昼飯の店探し。

「朝、屋台飯だったからガッツリしたものを(腹に)入れたい」と五郎は力んでいたが、朝からトッポギと天ぷらは、なかなかに「がっつり」だと思う。

 そんな筆者の気持ちなど伝わるわけもなく、「がっつり系 ガツンと響く ソウル飯」と街角で一句詠みつつ店を探す俳人・五郎。

 そして見つけた庶民的な焼肉店。さっそく入店し、隣席で食べている肉を指差したりジェスチャーを交え「デジカルビ」と「白米」を無事注文。独自の愛想を振りまいたからか「面白い日本人だな」と客に笑われるが、気にしない。

 注文後すぐ、前回の全州の店と同じく、オーダーしてないキムチやナムルなどのおかず(パンチャン)が何皿も運ばれてくる。五郎も驚いていたが、これは韓国では普通のことで、さらに基本おかわりもできて無料(というかメインの料理に「込み」)。今回も11皿がずらりと並ぶ、まさに「群れ」。『修羅の群れ』の主演は松方弘樹だが、「おかずの群れ」の主演は松重豊。

 さっそくテンジャンチゲ(味噌チゲ)から「群れ」退治。

「ご飯と汁があれば、あとの全てはおかずとして向こうに回し、定食が完成する」

 いつものように哲学しながら汁をすする。「毎日飲みたい」ほどちょうどいいらしいチョイ辛味噌汁。

 続いてニラ・ネギ・白菜の三種キムチ。一皿ずつしっかり量がある。

 白菜キムチは(前回もそうだが)一枚のまま切っておらず、こういう本場感がうれしい。

「キムチって漬物ではなくて一つの『道』、『教え』のような気がする」と悟りを開き、わしわしと音を立て「教え」を味わう賢者・五郎。

 続くケジャン(ワタリガニの辛い漬物)もうまそうだったが、マヨネーズで和えたリンゴのサラダに妙に惹かれた。給食で食べた淡いマヨネーズ味の和え物に野菜のほかリンゴやパイナップルが入っていた記憶があるが、これと関係があるのだろうか。

 昔は韓国で「サラダ」というと、とにかくマヨネーズで和えたものだったらしく、定番の味らしい。

 

■原作でも食べていたチャプチェ

 そして、主役のデジカルビが登場。骨が付いたままの豚のあばら肉をでかいまま1枚、網全面に広げ焼けるのを待つ。デジモンの「デジ」はデジタルだが、デジカルビの「デジ」は豚だ。

 焼いてる間に、「群れ」のチャプチェ(春雨炒め)やワラビナムルでつなぐのだが、目の前に鎮座する肉塊が気になって仕方ない。

 ナムルなどを楽しみつつも「それにしてもこの肉の焼ける匂い、拷問だよ。理性がグラグラしてきた」と、これから食べる肉の匂いに苦しむ五郎。

「このお預け感はハンパない、ああ、犬のように店の中を駆けずり回りたい」

「いや、俺は犬ではない、人として静かに待とう……」

 もはや満月の夜の人狼。チャプチェを食べる時も「小皿で肉食欲を散らすんだ」と自分の中の「野性」を必死に抑え込んでいた。チャプチェに失礼だぞ、五郎。

 ちなみに今回チャプチェに対し「スキヤキの残り物みたいな哀愁があって結構好きなんだ」とも言っていたが、原作漫画では、川崎を訪れた際に初めてチャプチェを食べており、その時は「なんだか翌日あっためなおしたスキヤキのようだ」と発言している。

 

■食べごろ感のズレが気になる

 ようやく店員が肉をハサミで切り分けたので、「(食べて)オーケー?」と聞くも、「もう少し」とお預けをくらう。

「まだなの?」「あーもう自分で焼きたい」爆発寸前の五郎。

 仕方なく、焼ける間に今度は海苔の和え物を食べて気を紛らわす五郎だが、美味しく味わいながらも正直「肉が気になって味がようわからん」と、もうノイローゼ状態。

 ちなみに筆者も、店員が焼いてくれるタイプのサムギョプサルの有名チェーンに行った時、よくこの感情を抱く。

 個人的な食べごろ時に箸を伸ばすと、もう少し焼いてと静止されてしまうのだ。そうしているうちにジューシー感はピークを越え、水分が減った感じ(ウエルダン)になって初めて「許可」が降りる。あちらではカリカリ感が大切なようで、余分な油をしっかり落とす意味合いもあると思われるが、「食べごろ」感のズレを感じる。

 

■豚肉だけでなく牛肉も

 そして、ようやく店員から念願の肉解禁サインが。

「うまいなあ……」

「おあずけ」を経た胃袋に染み渡る肉の美味さに溺れつつも、付けダレをひと舐めし「ん? ちょっと酸っぱいんだ」と分析する冷静さも持ち合わせているのはさすが。

 あとはただ力一杯味わうだけ。ご飯とともにグイグイ流し込む。

「力強い肉だ。待ちに待った俺をドーンと受け止める、ガッツリ系の最高峰」

「最高! 口がはしゃぎ、喉が喜び、胃袋が踊り狂っている」

「幸せだ。幸せ者とは、まさに今の俺のことなんだろう」

 一番うまいとされる骨の周りの肉も幸せそうに噛み剥がす。

「俺は今、ソウルの黒豹だ」

 勇ましい発言をした直後に勢い余って肉を落としてしまい「俺は黒豹失格だ」と即野獣引退。とにかく楽しそう。

 これで終わりかと思いきや、となりの席に運ばれてきたチャドルバギ(牛カルビの薄切り)を見て、またしても「同じやつください」戦法で追加注文。同時に半ライスも。

 ここでもやしナムルの小皿を完食するも、すぐさまおかわりが勝手に出てくる。五郎いわく「ナムルのわんこそば」。幸せなシステム。

 チャドルバギはデジカルビと違って軽く焼くだけでいいという。厚みの違いもあるが、やはり牛だからだろうか。

 脂身多めのスライス肉を次々と成敗。ごま油と塩を付けて「日本の焼肉屋の今は亡きレバ刺しの食べ方」と故人を偲ぶ。

 次は肉に味噌と白米を巻いて。牛肉と味噌と米。合わないわけがない。

「味噌、酸っぱいタレ、ごま塩。俺の胃袋に肉を放り込ませ続ける最強のトライアングル」

 原作の川崎焼肉回の名文句「うおォン、俺は人間火力発電所だ」を思い起こす食べっぷり。完食するとおかわりが来ちゃうからと「おかずの群れ」は残しつつ、完食。

 終わり際、肉でなく焼き魚定食を食べる酒好きの常連客が登場したのだが、クレジットを見たら『デュエリスト』(2005)や『M』(07)の監督イ・ミョンセ。韓国映画ファンにはうれしいサプライズ。

 そして前回はなかった原作者・久住昌之が同店を訪ねるコーナー「ふらっとQUESUMI」で、ついに久住がソウルへ。

 久住は五郎の頼んでいないサムギョプサルを食べていたが、こちらはあまりカリカリに焼いていなかった。焼く人次第で違うのだろうか?

 得意の、お酒を違うものに例えるくだりでは、マッコリを「牛乳」「コリアンミルク」と表現。このくだりは、ウザがられてもしつこく毎回やってほしい。

 今頃日本人観光客で賑わっているのだろうその店名は「チョンチョムスップルカルビ」。行ける方が羨ましい。

 次回は、千葉市の特製ニンニクスープと生鮭のバター焼き。一瞬何のお店かわからなかったが、いわゆる洋食店。Season7も残りわずか!
(文=柿田太郎)

「男にしてください」の台詞にキュン死しちゃう!? 中小企業の弱さと醍醐味『宮本から君へ』第10話

 クライマックスに向け、新米サラリーマンの大暴走が続く池松壮亮主演ドラマ『宮本から君へ』(テレビ東京系)。情熱だけで人間は、果たしてどこまで突っ走ることができるのでしょうか。宮本の若さに任せた暴走を苦々しく感じている大人たちが、次々とその前に立ちはだかることになります。もう後には戻れない“爆弾小僧”宮本が、真正面から障害へとぶつかっていく第10話を振り返りましょう。

(前回までのレビューはこちらから)

 弱小文具メーカーに勤める宮本浩(池松壮亮)は仕事に興味が持てず、付き合い始めた大手自動車メーカーの受付嬢・美沙子(華村あすか)とはエッチした直後に振られ、人生のドン底にいました。さらには大手文具メーカーに勤めるイケメン営業マンの益戸(浅香航大)と営業先でケンカ騒ぎを起こし、反省の意味を込めて頭を丸めたところです。「社会人になって、あまりいいことがない」とこぼしていた宮本ですが、大手製薬会社に納品するクリアファイルの件だけは、まだ諦め切れずにいます。大手製薬会社が正式決定を下すまで、残り1週間。ライバル益戸の勝利が確定している中、奇跡の逆転を目指して宮本は今回も鼻息が荒いです。

 宮本の情熱に感染してしまった先輩の神保(松山ケンイチ)、小田課長(星田英利)の協力を得て、宮本は極秘に新しいサンプルの発注を進めていました。1週間以内にサンプルを完成させなくてはいけないので、綱渡り状態です。ところが、宮本がクリアファイル納品の件をまだ諦めていないことが、仲介業務を請け負っている「ワカムラ文具」の島貫部長(酒井敏也)の耳に入ります。宮本が勝手に新しいサンプルを提出することは、大手製薬会社との間に入っている島貫部長や文具問屋の安達(高橋和也)のメンツを潰すことになります。激怒した島貫は、宮本の上司である岡崎部長(古舘寛治)を電話で叱責。坊主頭の宮本のことをヤクザ呼ばわりするのでした。

 元はと言えば、タヌキ親父の島貫がクリアファイルの入札価格を事前に益戸に漏らしたために端を発した問題ですが、既得権益の上にあぐらをかく島貫は自分の非を認めるわけがありません。さまざまな利害関係で成り立つビジネスの世界には、ろくに仕事をしていないのに威張っている島貫のような理不尽な輩は大勢います。会社に戻ってきた宮本は、さっそく岡崎部長から会議室に呼び出され、大目玉を喰らうはめに。でも、島貫の悪行にはこれまでも神保や小田課長も散々手を焼いてきたのでしょう。2人して、宮本を庇うのでした。中でもほっしゃん演じる小田課長のこの言葉が泣かせます。

小田「上に立つ人間が、部下の可能性の間口を狭めてどないするんすか。取り引き停止のひとつやふたつ、どないでも穴埋めできますから」

 会社勤めを経験している人間なら、仕事ができる先輩に一度は言われてみたい台詞ですね。会社って、いくら大企業に就職できても、配属先の先輩や上司がサイアクな場合はどうにもなりません。むしろ地獄です。その点、宮本は本当に上司や先輩に恵まれています。思わず目頭が熱くなった宮本は、「……続けさせてください」と岡崎部長に声を震わせながらお願いするのが精一杯でした。実はこの台詞、新井英樹の原作コミックにはないひと言です。架空の人物であるはずの宮本浩が憑依した池松壮亮の口が、自然に動いたものではないでしょうか。

 会議室での熱いやりとりを、同僚の田島(柄本時生)は耳をそばだてて聴いています。採算の目処が立たない仕事に夢中になっている宮本は大バカ者ですが、そんな大バカ者を小田課長と先輩の神保は懸命にフォローしています。田島は羨ましくて仕方ありません。つまらないはずの仕事を面白い状況に転がし、周囲をどんどん巻き込んでいく宮本は、とても特殊な才能の持ち主のようです。

■宮本の強引すぎる営業スタイルは是か非か?

 結局、岡崎部長はサンプルの件について「OK」とは言いませんでしたが、「絶対に許さん」とも言わずに会議室から去っていきました。小田課長いわく「沈黙は了承や」とのことです。かくして、タヌキ親父の島貫のメンツを潰すことを前提にした新サンプル作成ゲリラチック情熱作戦は続行することになったのです。ところが、ここでトラブル発生。新しいクリアファイルのデザイン版下は用意できていた宮本ですが、すでに押さえていた印刷工場が仕事のキャンセルを言い出したのです。

 親会社から急ぎの大量発注が回ってきたので、イレギュラーでしかも少量のサンプルを仕上げるだけの宮本の注文は後回しにされてしまったのです。印刷工場の社長も申し訳なさそうです。印刷工場の多くは零細企業で、社長が営業と現場の責任者を兼ねていることがほとんどなのですが、そんなカツカツの予算とスケジュールで動いている町工場のリアルさがまざまざと描かれる第10話でした。『宮本から君へ』の原作世界をリスペクトする真利子哲也監督の場合、柳楽優弥&菅田将暉主演作『ディストラクション・ベイビーズ』(2016)のスマッシュヒット以前はインディーズ映画でずっと地道に撮り続けてきたわけです。予算も人材も限られているインディーズ映画の製作現場も、似たようなものです。いくら監督だけが熱くなっても、どうにもなりません。みんなを熱くできなければ、現場は回らないのです。

 宮本が窮地に陥っている一方、ライバルの益戸はいっさい手綱を緩めようとしません。島貫を遠隔操作してクリアファイルの件を宮本に諦めさせようとしていた益戸ですが、さらに念には念をと、クリアファイルの納品を1日早めます。もはや絶体絶命のピンチに追い込まれた宮本。ですが、ここで救いの手を差し伸べる人物が現われるのでした。高橋和也演じる文具問屋の安達です。本来なら島貫同様に仲介を無視した宮本の暴走に怒っていいはずの安達ですが、彼も益戸と島貫のアンフェアなやり口にはカチンときていたのです。そして何よりも、宮本の「僕を男にしてください!」という実直な言葉を粋に感じたのです。ソープランドの店内ならいざしらず、取引先の相手にはなかなか言えない台詞です。「よくぞ、言った。宮本!」とばかりに安達は以前から懇意にしている印刷所を個人経営する飯島(篠原篤)のところへ宮本を連れていくのでした。これぞ、男が男に惚れる瞬間ですね。さすが元「男闘呼組」高橋和也!

 宮本の強引な仕事ぶりに反感を覚える視聴者もいることでしょう。仲介人も印刷工場もそれぞれの立場と事情を抱えて毎日黙々と働いているわけです。そこへ宮本はふいに割り込み、ひたすら頭を下げ続けることでイレギュラーな仕事を押し付けているのです。宮本は自分の思いどおりに仕事ができて満足かもしれませんが、相手は目先の仕事だけでなく職場全体と家族を守らなくてはいけないのです。

 でもですよ。常識ある人間は、常識の範囲内でしか物事を考えることができません。常識の中だけで生きていればリスクを生じる可能性は低いわけですが、新しいものは何も生まれてはきません。縮小再生産を繰り返し、ゆっくりとパワーダウンしていくのを待つだけです。宮本の強引なお願いは、非常識ですが、何か訴えかけるものがあるのです。クリアファイルのサンプルを印刷するだけですから、大した儲けにはなりません。しかし、宮本のギラギラした目を見ていると、「こいつと一緒にいると、何か面白いことが起きるかも」という気にさせてくれるのです。親戚や学生時代にはいなかったような、途方もなく面白そうなヤツに出会える。それが仕事の醍醐味であり、そんな人間関係のネットワークを名刺一枚で築くことが、営業マンの面白さなのかもしれません。

 宮本の面白い人間を呼び寄せ、巻き込んでいく特殊能力は、原作後半ではとんでもない事件を招くことにもなりますが、それはまだしばらく先の出来事です。次回・第11話はサラリーマン・宮本浩としての最大の見せ場が待っています。宮本の熱さに感染した人は、もう見逃すことができません。
(文=長野辰次)

韓国初上陸!『孤独のグルメ』雷波少年に出てた“あの人”がゲスト同行するも、やはり五郎は独り飯……

「来ちゃいました、初韓国」

 旅ロケっぽい独り言で始まった今回の『孤独のグルメ』(テレビ東京系)は、韓国編。ドラマでは過去に一度、台湾を訪れているが、それ以来の海外。原作では、かつていたパリを再訪し、元カノ(小雪)を思い出しながらアルジェリア料理を食す回があるが、それともまた違うドラマならではのコミカルな雰囲気。地元ゲスト登場も、どこにいようと井之頭五郎(松重豊)はマイペースに一人で飯を食う。第9話「韓国チョンジュ市の納豆チゲとセルフビビンパ」。

(前回までのレビューはこちらから)

■ゲストは『ハングル講座』に出演中の彼と『雷波少年』にも出てた彼女

 

 空港から登場かと思いきや、いきなりタクシーでソウルの住宅街に乗り付ける五郎。

「アイウォントゥーゴーヒヤー」

 片言の英語で道行くおばさまに道を尋ねるも、韓国語で答えられて、いきなり撃沈。貿易商という仕事柄、もう少し海外慣れしててもよさそうだが、この頼りない柔らかさがいい。

 なんとか商談先にたどり着くも、その社長(ソン・シギョン)に、すぐ全州に行き、ヨーロッパ向けのアンティーク商品をチョイスしてほしいと頼まれる。

 公式Twitterによると、ソン・シギョンは番組冒頭のナレーションを暗記していたり、過去に登場した店を訪れたりしている番組の大ファン。そのためか五郎と対面するシーンから喜びが溢れてるように見える。ちなみに現在、Eテレでハングル講座にも出演中。

 結局、彼の部下のパク・スヨン(パク・チョンア)に通訳などアシストしてもらいながら、全州市で伝統工芸品(傘や古家具など)を選ぶ五郎。しかし、飯屋の看板を見るなり仕事中なのに腹減りタイム。パクが事務所で資料をまとめている隙に、すぐさま一人で店探し。普通こういう時は同行してる人と飯を食いそうなものだが、ミスター孤食・五郎はおかまいなし。

 座敷タイプの「俺好み」の店を見つけると「言葉わからなくて追い出されたらそれまでだ」と、前向きに覚悟を決め入店。

 ちなみに、パク・チョンアは元ジュエリーという女性グループで、14年ほど前に日本デビューもしており、それ以前にも『雷波少年』(日本テレビ系)でのシンガポールからソウルまで歌を歌いながら旅する企画に参加していたので、そっちの記憶で覚えている方も多いかもしれない。

■とめどなく運ばれる膨大な皿数

 しかし、かつての台湾編では中国語が読めないなりに「海鮮」だとか「排骨」だとか漢字で手がかりをつかめたが、ここでは値段の数字表記以外、メニューのハングルが一切読めない。

 仕方ないので、一番安いのを頼み、出てきたものを見て、その後を考えるという作戦を決行。

 なんとか6,000ウォンの「チョングッチャン」を注文したはいいが「一体俺は何を頼んだんだ」と自問する五郎がおかしい。

 すぐさま、肉や野菜の皿が並べられ、「へーこんな感じかあ」と、ひとまず安心しかけるも、店のおばさんはとめどなく皿を運び続ける。

 すでに7皿。薬味や白米の茶碗入れたら10皿だ。そこに、ぐつぐつ煮えたぎる石鍋まで到着。約600円でフルコースのような品揃え。まさに「おかずのテーマパーク」。品数におののきながらも、ひとまず白米があることに安堵する五郎。

「もう大丈夫。鬼に金棒、俺に白飯だ」

 まずはチェユックポックム(豚肉の唐辛子炒め)で白米を食べ、「美味い!」と喜ぶやいなや、すかさず「違う違う」とおばさんがカットイン。いきなり出鼻をくじかれる。ステンレス製のボウルにおかずを少しずつ入れて、ハサミで切り刻んで白飯と混ぜて食えという。ここでようやく、これがセルフビピンパだと気づいた五郎。

 ナムルを各種(モヤシ、大根、白山菊)に、キムチ、目玉焼き、豚肉唐辛子炒めを入れて、さらに小粒なさつま揚げを甘辛く似たようなものも入れかけると、それは入れずに食べろと、またカットイン。ちょっとしたトラップだ。

 とりあえず、さつま揚げ以外全てハサミで切り刻み、白米と、コチュジャンを入れて、さらにぐつぐつの石鍋のスープの底に沈んでいる納豆も入れろと言われ、驚きながらも従う五郎。

 この石鍋の料理が「チャングッチョン」(納豆チゲ)で、実はメインはこれだ。

 豆腐や野菜も入って煮立つ汁をひとすすり、日本の納豆汁とはまた違う旨さらしい。

 ようやく完成したビピンパに、海苔をたっぷりかけ、かぶりつく。

「これだけいろんなものを適当に混ぜてこんなにおいしくまとまるって、どうなってるんだ?」と驚きながら、スプーンで次々と胃へ投入。

「まさにビビンパマジック」

 五郎の食べっぷりを見て、今度ビピンパを食べる機会があったら是非納豆も加えてみようと強く思った。

 そして、ビピンパには混ぜるなと言われたさつま揚げ。これはオデンという料理で、甘辛味。別にこれも混ぜてもよさそうに思ってしまうが、五郎も「美味いけど、これはビピンパに入れるもんじゃない、危ないとこだった」と言っているので、馴染まない味なのかも知れない。

 さらにサンチュに味噌を塗り、ビピンパを乗せて、巻き巻きしてかぶり付く。さらに大きな白菜キムチの葉でも巻き巻きアレンジ。絶妙な酸っぱさがうまいらしい。こういう作業をしている時の五郎の顔は、いつ見ても楽しそう。

■ようやく食べ終わったと思ったら、さらにもう一品……

 ペロリと1セット目を平らげると、おもむろに上着を脱ぎ、落語家が噺に入るかのごとく、新ビピンパ製造に取り掛かる井之頭亭。

 先ほどは入れなかった「新たな武器」ごま油も投入。

「全てを放り込んで、切るべし切るべし切るべし」

 さらに青唐辛子も入れて、

「肩の力を抜き、腕全体の力がしなやかに器に伝わるように混ぜるべし、混ぜるべし」

 前回の『あしたのジョー』パロディがよほど気に入っているのか、今週も引きずりまくる。

 気になるお味は「誰がなんと言おうと絶対に美味い」というくらい一杯目を凌駕する出来。

「初めて来た全州の街で最高の飯に出会えたことに、心からカムサハムニダ」

「もしも、またこの店を訪れることがあれば、この納豆汁ビビンパに再挑戦しよう。そしてさらなる高みを目指そう。そして見るんだ、誰も見たことのない納豆汁ビビンパの頂点を……! ごちそうさ……」

 いかにも締めっぽい五郎渾身の独り言の終わり間際、当たり前のように運ばれてくる一品。

「え? まだなんかあるの??」

 食いしん坊な五郎が驚くほど、終わらない宴。

 運ばれてきたのは「ヌルンジ」という、おこげを煮たシンプルなおかゆスープ。韓国では定番の締めの一品。

「それにしても600円でこの品数ってどうなってるんだ? いいのか? こっちが心配になるほどのサービスだ」と、改めて驚きを噛みしめる五郎。

 基本、アジアの国は、残すくらい食べさせるのが美徳のような考え方があるので食事の量は多めなのだが、韓国もご多分にもれず、多い。

 教えてもらったばかりの韓国語で「マシーソッソヨー」(美味しかったです)と店の外から声をかけるほど充実した韓国初日。次回は本場で焼肉!「骨付き豚カルビとおかずの群れ」。
(文=柿田太郎)

よくがんばった自分に満足なんかしてらんねぇ!! 情熱が連鎖反応を呼ぶ『宮本から君へ』第9話

 才能もなく、お金もなく、コネもない人間は、立場の強い人間の言いなりになるしかないのでしょうか。才能も、お金も、コネもない人間が立ち向かう武器は、ひとつしかありません。それは情熱です。効率至上主義で回る現代社会において、はたして情熱だけで物事は動くのか、常識ぶった大人たちに一矢を報いることができるのか。社会人になって1年足らず、勤務先は無名の中小企業、大手企業に勤める彼女にも棄てられ、自慢できるものが何ひとつない営業マンの宮本が、世間の常識に呑み込まれることを拒み続ける熱血サラリーマンドラマ『宮本から君へ』(テレビ東京系)。新井英樹の原作コミックの中でも、共感度の高いエピソードをほぼ忠実に再現した第9話を振り返りましょう。

(前回までのレビューはこちらから)

 坊主頭になった宮本浩(池松壮亮)は走り続けます。宮本は都内の弱小文具メーカーに勤める新米営業マンで、大手製薬会社に納品するクリアファイルの入札をめぐってライバル社の益戸(浅香航大)としのぎを削り合っているところです。不当な手段で入札価格を事前に知った益戸が直前になって価格を下げたことで、益戸側の勝利はもう確定していました。ですが、不正がまかり通る現実社会に我慢できない宮本は、益戸が用意したクリアファイルよりもいい物を見つけようとデザイン会社を次々と訪ねて回っているのでした。大手製薬会社が正式決定を下すのは1週間後。先輩営業マンの神保(松山ケンイチ)が作成したリストを片手に、宮本はひたすら走り回ります。

 宮本がいくら焦っていても、どのデザイン会社ものんびりとした対応で、宮本がイメージしているようなオシャレなクリアファイルはそうそう見つかりません。「地軸はいつだって、僕から遠く離れた所にあって、世の中は回っていた」と諦め掛けていた宮本ですが、夕方に駆け込んだデザイン会社でようやく宮本の熱さに反応してくれる人物に出逢います。デザイン会社のお局っぽい女性社員の徳間さん(片岡礼子)に「ショールームの見学は原則的に夕方の5時まで……」と追い返されそうになった宮本ですが、何度も頭を下げ、「お願いします」と連呼する坊主頭の宮本のしつこさにほだされます。「原則的に好きですよ、そういうの」と徳間さんはショールームへ案内します。ショールームといっても、オフィスの片隅にあるちっぽけな展示スペースでしたが。

 小さなショールームでも、そこには徳間さんがこの会社に勤めてからの歴史でいっぱいです。徳間さんが手にしたクリアファイルを、宮本はひとめで気に入ります。飛び込みで現われた初対面の宮本に対し、徳間さんは丁寧に対応し、版下を管理している広告会社にまで連絡を入れてくれました。「どうやって、お礼したらいいですか……」と素直に感謝の気持ちを伝える宮本に対し、徳間さんは照れながら答えます。「選んでくれたのは、あたしの初仕事。だから、褒められた分でチャラ!」。職場では男性社員をアゴで使っている徳間さんが、ひどく可愛い女性に思えます。朝からずっと走り回ってオーバーヒート気味だった宮本の心に、さぁ~と涼しげな風が流れた瞬間でした。

 情熱は連鎖します。宮本が版下を受け取るために訪ねた広告会社では、見るからに小物そうな平社員の小菅(岩瀬亮)が応対しますが、退社時刻に現われた来客に迷惑顔しか見せません。「世の中ね、あなたを中心に回っちゃいませんよ」とブツブツ愚痴をこぼす小菅ですが、上司の梶井(鶴見辰吾)の命令で宮本と一緒に資料室のどこかに眠っているはずの20年前の版下を探し出すことになるのでした。宮本が他人の迷惑を顧みずに仕事に没頭していることが、自分の枠の中だけで生きている小菅にはまるで理解できません。梶井の前で土下座までした宮本のことを「あんた、けっこう計算高いよね」と見下していた小菅ですが、「社会人になって、ほとんどいいことありません」「彼女はいません。僕が女でも、今の僕には惚れませんから」と版下を探しながら心情を吐露する宮本に、斜に構えていた小菅の心もついに動かされます。

 小菅も思いどおりに進まない恋愛や面白くない仕事内容で悶々とした日々を過ごしているようです。最初はまるでやる気のなかった小菅ですが、資料棚の後ろに落ちていた版下をひょっこりと見つけます。小菅がいなければ、この版下はその日のうちには見つからなかったはずです。徳間さんも、小菅も原作コミックでは一回きりの登場です。『宮本から君へ』では脇役にしかすぎません。でも、そんな一期一会の出逢いに支えられて、宮本は夜になっても走り続けるのでした。

■情熱はやがてひとつの形になる

 池井戸潤の企業小説を原作にしたTBSの大ヒットドラマ『半沢直樹』はエリート銀行マンが倒産寸前のホテルを見事に立て直し、『下町ロケット』では町工場の二代目社長が国産ロケットの打ち上げに成功します。池井戸作品の主人公たちは頭脳明晰なエリートであり、また会社や家族を守るヒーローとして大活躍します。それに比べ、宮本は出来合いの版下を手に入れるために、走り回り、汗を流し、土下座までします。しかも、それは宮本自身が満足するためのエゴであって、全然かっこよくありません。美沙子(華村あすか)や靖子(蒼井優)といったヒロインたちも登場しない非常に地味な第9話ですが、でも観る者の心にじんわりと染み込むものがあります。

 負け犬の烙印を押されたままじゃ、終われねぇ。宮本のそんなガムシャラさは、自分自身が傷つかないよう諦めがよく、TPOに合わせて感情をセーブできる大人になった我々に、大切なことを思い出させてくれるのでした。そして、おのれのエゴむきだしで突っ走ってきた宮本も、たまたま出逢ったいろんな人たちのさまざまな価値観を受け止めていくうちに、溢れ出る情熱はやがてひとつの形になっていくのです。頭でっかちだった宮本がようやく手に入れた信念、お金では手に入らない本当の意味での誠意と言っていいかもしれません。宮本はわずか1日でぐんと大人になったのです。

 夜10時をすぎ、神保たちが待つ会社に宮本はようやく帰社します。朝からずっと全力で走ってきた宮本の心は、まだ止まることができません。「製薬会社の件は、もう終わったんや」と宮本を諦めさせようとする小田課長(星田英利)に懸命に喰らいつきます。サウナに移動した小田課長と神保を前にして、素っ裸の宮本は主張します。「このままで終わったら俺、きっとがんばったことで満足しちゃいます。俺は結果を噛み締めたいんです、勝ちでも負けでも」。サウナの熱気よりも熱い宮本に、ついに小田課長も根負け。課長決裁で新サンプル作成にGOサインを出すのでした。

 ビジネスの世界では、結果のみが求められますが、その結果の元になるものを生み出すのは一人の人間が持っている情熱ではないでしょうか。誰だって、情熱はないがしろにはできません。後はもう、結果を残すだけです。退職が決まっている先輩の神保も、課長決裁したことで上から叱られることを覚悟している小田課長も、デザイン会社で人知れず新しい文具を考えている徳間さんも、広告会社で燻っている小菅も、そして視聴者全員が、池松壮亮演じる宮本が最後に奇跡を起こしてくれることを願っています。いよいよ物語が佳境に入る次回・第10話も見逃せません。
(文=長野辰次)

「一番置きにいってた」マツコ・デラックスがテレ東・名物プロデューサーに苦言のワケ

 一度は栄華を極めた一発屋タレントが「あの人は今」的な番組に出演。全盛時の収入を告白するや、司会者やパネラー陣が「すごーい!」とリアクション。よくある光景だが、正味の話、「すごーい!」と驚いているタレントたちのほうが、それ以上の収入をコンスタントに稼いでそうなのは明らか。

 番組を成立させる意味合いもあるだろうが、自分の立ち位置を落とし、庶民派として振る舞う中で享受できるメリットは少なくない。嫉妬の対象にならないし、主役に弓を引く座席を獲得できるし、判官びいきを受けることさえ許される。そして、何より異端の立ち位置を確保できる。狙われるより狙う側のほうが、絶対に強い。パブリックイメージは弱者だけども、実態はひそかに強者。この二段構造がクセものなのだ。

■マツコ・デラックスの感性を育んでいたテレ東

『無理矢理、マツコ。テレ東に無理矢理やらされちゃったのよ~』(テレビ東京系)の第5弾が6月10日に放送された。事前に企画内容を伝えず、無理矢理4つの企画をマツコ・デラックスにやってもらうという「無理矢理、マツコ。」プロジェクト。これを振り返り、反省しようというのが今回の趣旨だ。

 実はマツコ、同局への出演は12年ぶりだそう。とはいえ、敬遠していたわけではない。局のスタッフも覚えていなかった『レール7』なる番組を“思い出深いテレ東”として回顧し、“ロケに強いテレ東”の原点として『いい旅・夢気分』を称賛するのだから。

「あと、キャスティングの妙ね。私が一番好きなのは小川眞由美さんと李麗仙さんっていうね。『どういうつもりで作ってるんだろ、スタッフは?』っていう。(2人は)全然、楽しそうじゃないのよ。淡々とやるわけよ。殺伐としてるわけですよ。そういう裏見をする癖みたいなのを私につけてくれたのは、やっぱりテレ東なんじゃないかな」(マツコ)

 まさに、地上波キー局の異端。企画内容とキャスティングは他局へのカウンター的な色合いが強く、好事家から判官びいきされる個性にまでなっている。

 テレ東のアナウンサー・狩野恵里は、2016年に発表した著書『半熟アナ』(KADOKAWA)で、自社について以下のように語っている。

「他局の方から言わせると、なんでこれが数字取るの!? というような番組が多くあります」

「予算も人数もいつもギリギリ」

 局に所属するアナウンサーでさえ、そんな認識なのだ。そういえばマツコ、番組内で“テレ東の女性アナウンサー像”に対する持論を語っている。

「テレ東の女子アナの採用って、一番上手よね。割り切ってるもんね。『ここはキャバクラだ』って思って採ってるから。他局は中途半端に賢い奴採ろうとか思ってさあ。それこそ、大橋(未歩)さんくらいから変わった。急にキャピキャピしだして、今となっては民放で一番女子アナ採るのがうまい局よ。典型的に水商売の顔してる子が多い。『女子アナに知性なんていらないんだ!』『顔だけ良ければいい!』っていうね。いいのよ、それで。テレ東の女子アナが一番かわいい」(マツコ)

 異端どころか、いまや民放トップの陣容を誇るアナウンサー勢。これ、決してマツコだけの考えではないはずだ。実話誌でもインターネット上でも、テレ東女子アナへの評価は一様に高い。

■もう、テレ東は判官びいきされるテレビ局ではない

 女子アナだけではない。特に、そのニッチな企画力は、好事家だけでなく一般層にも浸透中。今では、視聴率で他局を凌駕することも珍しくなくなった。だからこそ、時代の寵児・マツコとテレ東の企画力の掛け合わせは魅力的だったのだ。結果、どうなった? そのへん、本人がしっかり振り返っている。

 マツコが高評価を与えたのは、老若男女にマツコを20分100円で貸し出す『レンタルマツコ!マツコ、20分100円でレンタルはじめたってよ』と、「もしもマツコが死んでしまったら……」と架空の設定のもとマツコを偲ぶ『マツコ、昨日死んだってよ。』の2本だ。

「私が日頃見ていて面白そうだなって思うテレビ東京の王道をやってくださいました。自分がテレ東に出てるんだなぁっていう実感を得られる番組」(マツコ)

 一方で、マツコを落胆させた企画も存在する。それは、出題者を務めるマツコが解答者の味方をして賞金100万円をあげようとする番組『マツコがマネーをあげたいクイズ』だ。

「一番、置きにいってたね。次のクールから特番ソフトにしようとしてんなっていうね。やっててイヤ~な感じがしました」(マツコ)

 実はこの企画のプロデューサーを務めたのは、テレ東の看板バラエティ『ゴッドタン』や『キングちゃん』等を制作し、同局の尖ったイメージを担う鬼才・佐久間宣行である。この日のスタジオには話題の佐久間Pも姿を見せており、苦言を呈すマツコと佐久間Pは対面。2人は言い合いを展開した。

佐久間「次のクールに特番ソフトでやれるような番組って、別に悪くないじゃないですか」

マツコ「でもさ、私がアンタと仕事しようと思った時に、そんな番組を作ってほしくてこんなテスト番組やりますか? だったら、もうちょっとまともな人とやりますよ!」

佐久間「そこ、ボタンの掛け違いです!」

マツコ「ボタンの掛け違いって言ってる奴、一番嫌い!」

 テレ東への思いが強かったからこそ、吐き出される思いの丈は熱い。

「これね、本当、一番の失望! 佐久間宣行が私にこんなクイズ番組をやらせたっていうね。始まる前に佐久間さんがやるって聞いた時から、一番楽しみにしていたかもしれない。ああいう、ウンコ投げつけるような番組(『ゴッドタン』のこと)作ってるわけじゃない? あんなひどい番組を作ってる人だから『私、ウンコ投げられちゃうんじゃないか?』って、そういう期待がありつつやってるから。あんな鬼畜プロデューサーが、なんとなくペロペロって書いた企画みたいな、そんなのなんで私にやらせるの?」(マツコ)

 以前より抱いていたテレ東への印象と期待値があらわになる苦言だ。そして、今回の経験は、マツコが抱くテレ東の印象を上書きしてしまった。

「メジャーになるっていうことは、どんどん丸くなるってこと。私だってテレビ出始めた頃より丸くなっちゃったからさ。権力にねじ伏せられたオカマを、もう一度ドキドキさせてくれるのはテレ東なんじゃないかっていう淡い期待があったわけですよ」

「私、テレ東のことを、どこかで判官びいきしていたんだと思うの。弱者であるがゆえに応援しようという色眼鏡で見ていたわけですよ。でもね、今回仕事をやってみて、やっとわかりました。もう、立派なテレビ局ですよ。変わらないです、ほかの局と」

 変わらないどころか、今、若者から最も支持を集めている局はテレ東という印象さえ、筆者にはある。尖った企画力を誇り、他局が拝借することも多い。独自の方向性は、もはや数字につながっている。加えて、女子アナがかわいい。制作費が少ないのも、なんだか『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』みたいでカッコいい。その上、異端のイメージから判官びいきまでされている。実態は弱者ではないとしても、だ。

 今回のマツコ・デラックスとのコラボは、市井に対し、少し種明かしをしてしまった感がある。

(文=寺西ジャジューカ)

「一番置きにいってた」マツコ・デラックスがテレ東・名物プロデューサーに苦言のワケ

 一度は栄華を極めた一発屋タレントが「あの人は今」的な番組に出演。全盛時の収入を告白するや、司会者やパネラー陣が「すごーい!」とリアクション。よくある光景だが、正味の話、「すごーい!」と驚いているタレントたちのほうが、それ以上の収入をコンスタントに稼いでそうなのは明らか。

 番組を成立させる意味合いもあるだろうが、自分の立ち位置を落とし、庶民派として振る舞う中で享受できるメリットは少なくない。嫉妬の対象にならないし、主役に弓を引く座席を獲得できるし、判官びいきを受けることさえ許される。そして、何より異端の立ち位置を確保できる。狙われるより狙う側のほうが、絶対に強い。パブリックイメージは弱者だけども、実態はひそかに強者。この二段構造がクセものなのだ。

■マツコ・デラックスの感性を育んでいたテレ東

『無理矢理、マツコ。テレ東に無理矢理やらされちゃったのよ~』(テレビ東京系)の第5弾が6月10日に放送された。事前に企画内容を伝えず、無理矢理4つの企画をマツコ・デラックスにやってもらうという「無理矢理、マツコ。」プロジェクト。これを振り返り、反省しようというのが今回の趣旨だ。

 実はマツコ、同局への出演は12年ぶりだそう。とはいえ、敬遠していたわけではない。局のスタッフも覚えていなかった『レール7』なる番組を“思い出深いテレ東”として回顧し、“ロケに強いテレ東”の原点として『いい旅・夢気分』を称賛するのだから。

「あと、キャスティングの妙ね。私が一番好きなのは小川眞由美さんと李麗仙さんっていうね。『どういうつもりで作ってるんだろ、スタッフは?』っていう。(2人は)全然、楽しそうじゃないのよ。淡々とやるわけよ。殺伐としてるわけですよ。そういう裏見をする癖みたいなのを私につけてくれたのは、やっぱりテレ東なんじゃないかな」(マツコ)

 まさに、地上波キー局の異端。企画内容とキャスティングは他局へのカウンター的な色合いが強く、好事家から判官びいきされる個性にまでなっている。

 テレ東のアナウンサー・狩野恵里は、2016年に発表した著書『半熟アナ』(KADOKAWA)で、自社について以下のように語っている。

「他局の方から言わせると、なんでこれが数字取るの!? というような番組が多くあります」

「予算も人数もいつもギリギリ」

 局に所属するアナウンサーでさえ、そんな認識なのだ。そういえばマツコ、番組内で“テレ東の女性アナウンサー像”に対する持論を語っている。

「テレ東の女子アナの採用って、一番上手よね。割り切ってるもんね。『ここはキャバクラだ』って思って採ってるから。他局は中途半端に賢い奴採ろうとか思ってさあ。それこそ、大橋(未歩)さんくらいから変わった。急にキャピキャピしだして、今となっては民放で一番女子アナ採るのがうまい局よ。典型的に水商売の顔してる子が多い。『女子アナに知性なんていらないんだ!』『顔だけ良ければいい!』っていうね。いいのよ、それで。テレ東の女子アナが一番かわいい」(マツコ)

 異端どころか、いまや民放トップの陣容を誇るアナウンサー勢。これ、決してマツコだけの考えではないはずだ。実話誌でもインターネット上でも、テレ東女子アナへの評価は一様に高い。

■もう、テレ東は判官びいきされるテレビ局ではない

 女子アナだけではない。特に、そのニッチな企画力は、好事家だけでなく一般層にも浸透中。今では、視聴率で他局を凌駕することも珍しくなくなった。だからこそ、時代の寵児・マツコとテレ東の企画力の掛け合わせは魅力的だったのだ。結果、どうなった? そのへん、本人がしっかり振り返っている。

 マツコが高評価を与えたのは、老若男女にマツコを20分100円で貸し出す『レンタルマツコ!マツコ、20分100円でレンタルはじめたってよ』と、「もしもマツコが死んでしまったら……」と架空の設定のもとマツコを偲ぶ『マツコ、昨日死んだってよ。』の2本だ。

「私が日頃見ていて面白そうだなって思うテレビ東京の王道をやってくださいました。自分がテレ東に出てるんだなぁっていう実感を得られる番組」(マツコ)

 一方で、マツコを落胆させた企画も存在する。それは、出題者を務めるマツコが解答者の味方をして賞金100万円をあげようとする番組『マツコがマネーをあげたいクイズ』だ。

「一番、置きにいってたね。次のクールから特番ソフトにしようとしてんなっていうね。やっててイヤ~な感じがしました」(マツコ)

 実はこの企画のプロデューサーを務めたのは、テレ東の看板バラエティ『ゴッドタン』や『キングちゃん』等を制作し、同局の尖ったイメージを担う鬼才・佐久間宣行である。この日のスタジオには話題の佐久間Pも姿を見せており、苦言を呈すマツコと佐久間Pは対面。2人は言い合いを展開した。

佐久間「次のクールに特番ソフトでやれるような番組って、別に悪くないじゃないですか」

マツコ「でもさ、私がアンタと仕事しようと思った時に、そんな番組を作ってほしくてこんなテスト番組やりますか? だったら、もうちょっとまともな人とやりますよ!」

佐久間「そこ、ボタンの掛け違いです!」

マツコ「ボタンの掛け違いって言ってる奴、一番嫌い!」

 テレ東への思いが強かったからこそ、吐き出される思いの丈は熱い。

「これね、本当、一番の失望! 佐久間宣行が私にこんなクイズ番組をやらせたっていうね。始まる前に佐久間さんがやるって聞いた時から、一番楽しみにしていたかもしれない。ああいう、ウンコ投げつけるような番組(『ゴッドタン』のこと)作ってるわけじゃない? あんなひどい番組を作ってる人だから『私、ウンコ投げられちゃうんじゃないか?』って、そういう期待がありつつやってるから。あんな鬼畜プロデューサーが、なんとなくペロペロって書いた企画みたいな、そんなのなんで私にやらせるの?」(マツコ)

 以前より抱いていたテレ東への印象と期待値があらわになる苦言だ。そして、今回の経験は、マツコが抱くテレ東の印象を上書きしてしまった。

「メジャーになるっていうことは、どんどん丸くなるってこと。私だってテレビ出始めた頃より丸くなっちゃったからさ。権力にねじ伏せられたオカマを、もう一度ドキドキさせてくれるのはテレ東なんじゃないかっていう淡い期待があったわけですよ」

「私、テレ東のことを、どこかで判官びいきしていたんだと思うの。弱者であるがゆえに応援しようという色眼鏡で見ていたわけですよ。でもね、今回仕事をやってみて、やっとわかりました。もう、立派なテレビ局ですよ。変わらないです、ほかの局と」

 変わらないどころか、今、若者から最も支持を集めている局はテレ東という印象さえ、筆者にはある。尖った企画力を誇り、他局が拝借することも多い。独自の方向性は、もはや数字につながっている。加えて、女子アナがかわいい。制作費が少ないのも、なんだか『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』みたいでカッコいい。その上、異端のイメージから判官びいきまでされている。実態は弱者ではないとしても、だ。

 今回のマツコ・デラックスとのコラボは、市井に対し、少し種明かしをしてしまった感がある。

(文=寺西ジャジューカ)