『鳥人間コンテスト』事故が起きても番組が続く理由――「打ち切り」の基準を弁護士に聞く

 人力飛行機の滞空距離や飛行時間を競う『鳥人間コンテスト』が、今年3年ぶりに有観客開催された。8月31日午後7時からは、日本テレビ系でその模様が放送されている。

 「空を飛ぶ」という夢に向かい、ひたむきに努力する人々の姿が胸を打つ人気番組だが、感動の舞台裏では、悲惨な事故がたびたび起こってきた。

 特に大きな騒動となったのは、2007年の大会。ある大学のチームでパイロットを務めた女性が、機体の破損によって約10メートルの高さから湖面に落下。その衝撃によって「脳脊髄液減少症」という後遺症を患う事故が起こり、女性は大学や大会運営に関わった読売テレビなどを訴えるに至った。こうした事故が起こったにもかかわらず、『鳥人間コンテスト』は現在も続いている。

 その一方、番組収録中の事故によって打ち切りとなった番組は少なくない。例えば20年10月には、バラエティ番組『でんじろうのTHE実験』(フジテレビ系)にて、お笑い芸人のトレンディエンジェル・斎藤司がロケ中に背骨の圧迫骨折など、全治3カ月のケガを負っていたことが発覚。ネット上では、番組側に対する批判の声が噴出し、翌21年2月にレギュラー放送が打ち切られることとなった。

 このように、重大な事故が起こっても「打ち切られない番組」と「打ち切られる番組」があるのは、一体なぜなのか? サイゾーウーマンでは、17年にアディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士を取材し、「事故の起きたバラエティー番組が打ち切りになる基準」について聞いていた。『鳥人間コンテスト』の放送に合わせて、同記事を再掲する。
(編集部)


「ドラマのこのシーンってありえるの?」「バラエティーのあのやり方ってコンプライアンス的にどうなの?」……テレビを見ていて感じた疑問を弁護士に聞いてみる、テレビ好きのための法律相談所。

<今回の番組>
『衝撃のアノ人に会ってみた!』(日本テレビ系/3月23日)

<今回の疑問>
事故の起きたバラエティー番組が打ち切りになる基準は?

 3月23日に放送された『衝撃のアノ人に会ってみた!』(日本テレビ系)に、過去の『鳥人間コンテスト』(同)で話題になったパイロットたちが出演し、再び注目を浴びた。今年の夏で40回目を迎える『鳥人間コンテスト』だが、感動の舞台の裏では悲惨な事故も起きている。

 2006年大会には東京工業大学のチームの機体が崖に衝突し、パイロットが踵骨の粉砕骨折と顔面裂傷し、その後遺症が残るという大事故、翌年07年大会では、パイロットとして参加した女性が滑走中に機体が破損、約10メートルの高さから湖面に落下し、その衝撃の影響と思われる「脳脊髄液減少症」という後遺症を患うという事故が起きた。

 女性は、制作の読売テレビと事故当時在籍していた大学、人力飛行機を制作したサークル顧問や責任者相手に損害賠償を求める提訴をしている。通常、このような事故が続けば、番組は打ち切りになってもおかしくはない。なぜ「鳥人間コンテスト」は打ち切りにならないのだろうか? アディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士に話を聞いた。

「『番組で事故が発生した場合は、番組を打ち切らなければならない』と定める法律はありません。どのような場合に番組を打ち切るかは各放送局の裁量に委ねられています。もっとも、各放送局は、BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送基準や犯罪の成否などを総合的に考慮して打ち切るかどうかを検討します。

 まず、BPOは表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護するため、放送への苦情や放送倫理の問題に対応する第三者機関です。主に、視聴者などから問題があると指摘された番組・放送を検証して、局に意見や見解を伝え、放送界の自律と放送の質の向上を促す役割を担っています。

 そこで定められた放送基準には、(1)人命を軽視するような取り扱いはしない。(2)放送内容は、放送時間に応じて視聴者の生活状態を考慮し、不快な感じを与えないようにする。(3)人心に動揺や不安を与えるおそれのある内容のものは慎重に取り扱う、などがあります。これに抵触する場合は、放送局に対して、勧告、見解、意見の通知を行います。なお、放送局に命令、指示など強制力をもって義務を課す権限はありませんので、各放送局がBPOの判断をもとに検討して、自主的な判断を下します」(岩沙弁護士、カッコ内以下同)

 ただし、番組内容によっては刑事責任を追及される場合もあると、岩沙弁護士は述べる。

「番組中の事故で出演者がけがをしたような場合、放送局側に注意義務違反が認められれば、業務上過失致傷罪などが成立する可能性があります。『鳥人間コンテスト』についても、放送局は、放送基準、刑事事件との関係、世論やスポンサーの意向などを総合考慮して打ち切らないと判断したのだと思います」

 では、収録中に事故が起きた番組でも、続行された番組と打ち切りになった番組があるのはなぜなのだろうか? 15年には女性アイドルグループ「3B Junior」のメンバーがレギュラー番組の収録中に、ヘリウムガスを吸引し意識不明になる事故が起き、その後番組は打ち切りとなった。同年3月には、お笑いタレントの出川哲朗が『謎解きバトルTORE!』(日本テレビ系)の収録中にセットの崖から落下し右足を骨折する事態が生じたが、番組はその後も継続されている。

「前述の通り、放送局は、放送基準、刑事事件との関係、世論やスポンサーの意向などを総合考慮して判断しますので、何を重要視して続行か否かを判断したかは明らかではありません。もっとも、一度大きな事故を起こしてしまった以上は、被害者のため、再発防止のためにも番組をすぐに打ち切った方が、放送局のイメージを損なわずに済むのかなと個人的には考えています」

 バラエティー番組における事故はこれまでに何度も起きている。事故になるほどの企画や演出を、視聴者は本当に求めているのだろうか?

アディーレ法律事務所

※2017年4月2日初出の記事に追記、編集を加えています。

関ジャニ∞のチケット転売詐欺で「誤認逮捕」! 被害者は真犯人に数十万円請求できる

「ドラマのこのシーンってありえるの?」「バラエティーのあのやり方ってコンプライアンス的にどうなの?」……テレビを見ていて感じた疑問を弁護士に聞いてみる、テレビ好きのための法律相談所。

<今回の番組>
各局ニュース番組等

<今回の疑問>
誤認逮捕された人が、真犯人に慰謝料請求することは可能?

 9月11日、京都市に住む女子中学生が、他人の名前でインターネットの投稿サイトに、人気アイドルグループ「関ジャニ∞」のコンサートチケットを譲ると書き込み、詐欺の疑いで書類送検された。この事件をめぐっては、当初、女子中学生に名前を使われた、愛知県豊田市の専門学校生の女性が、徳島県警に誤認逮捕され、19日間拘留されたという。罪を犯していないのに19日間も拘留された女性は、肉体的にも精神的にも多大な苦痛を受けただろう。この女性が、警察や実際に詐欺を働いた女子中学生に慰謝料を請求することは可能なのだろうか? アディーレ法律事務所の俣野政紀弁護士に聞いた。

 まず、警察相手に慰謝料を請求できるかという点について、俣野弁護士は、次のように述べる。

「今回、女性を逮捕する必要性がなかったのであれば、警察の行為は違法となり、女性は徳島県に対して損害賠償請求をすることができます。勾留後、転売サイトに照会することにより女子中学生が浮上するなど、警察は逮捕するまでに十分な捜査を尽くしていなかった可能性があります。そこで、捜査をきちんと行わずに女性を逮捕したのであれば、女性を逮捕する必要性が認められず、徳島県に対し損害賠償請求をすることができます」

 誤認逮捕の事案において、損害賠償を請求した場合、県に対する裁判では50~100万円程度の損害が認められることが多いという。したがって、具体的事情によって金額は変わるものの、同程度の金額となる可能性があるそうだ。

 では一方、この女性は、なりすましていた女子中学生に対して、何かしら請求することができるのだろうか?

「女子中学生は、女性の名前を勝手に利用して架空の転売を行い、その結果として女性を逮捕に至らしめており、女性の名誉等を侵害したといえます。そこで女性は、女子中学生に対し、精神的苦痛に対する慰謝料を請求することができると考えられます。なお、女子中学生には資力がないことも考えられますが、両親が女子中学生をきちんと監督していなかった場合には、両親に対して慰謝料を請求することができる可能性もあります。その場合、裁判では、名誉権侵害について数十万円程度の金額が認められることが多いことから、おそらく今回の事案でも数十万円程度の金額が認められると思われます」

 女子中学生の詐欺行為自体が犯罪なのは間違いないが、この事件では警察の捜査の怠慢も指摘されている。徳島県警三好署の副署長と刑事課長が女性の自宅を訪れ、謝罪したというが、今後は適切な捜査を行ってもらいたいものだ。

アディーレ法律事務所

<疑問大募集>
ドラマ、バラエティーから、ニュース、CMまで、弁護士に聞いてみたい、テレビを見ていて感じた疑問を募集しています。下記フォームよりご応募ください。

ご応募はこちらから

関ジャニ∞のチケット転売詐欺で「誤認逮捕」! 被害者は真犯人に数十万円請求できる

「ドラマのこのシーンってありえるの?」「バラエティーのあのやり方ってコンプライアンス的にどうなの?」……テレビを見ていて感じた疑問を弁護士に聞いてみる、テレビ好きのための法律相談所。

<今回の番組>
各局ニュース番組等

<今回の疑問>
誤認逮捕された人が、真犯人に慰謝料請求することは可能?

 9月11日、京都市に住む女子中学生が、他人の名前でインターネットの投稿サイトに、人気アイドルグループ「関ジャニ∞」のコンサートチケットを譲ると書き込み、詐欺の疑いで書類送検された。この事件をめぐっては、当初、女子中学生に名前を使われた、愛知県豊田市の専門学校生の女性が、徳島県警に誤認逮捕され、19日間拘留されたという。罪を犯していないのに19日間も拘留された女性は、肉体的にも精神的にも多大な苦痛を受けただろう。この女性が、警察や実際に詐欺を働いた女子中学生に慰謝料を請求することは可能なのだろうか? アディーレ法律事務所の俣野政紀弁護士に聞いた。

 まず、警察相手に慰謝料を請求できるかという点について、俣野弁護士は、次のように述べる。

「今回、女性を逮捕する必要性がなかったのであれば、警察の行為は違法となり、女性は徳島県に対して損害賠償請求をすることができます。勾留後、転売サイトに照会することにより女子中学生が浮上するなど、警察は逮捕するまでに十分な捜査を尽くしていなかった可能性があります。そこで、捜査をきちんと行わずに女性を逮捕したのであれば、女性を逮捕する必要性が認められず、徳島県に対し損害賠償請求をすることができます」

 誤認逮捕の事案において、損害賠償を請求した場合、県に対する裁判では50~100万円程度の損害が認められることが多いという。したがって、具体的事情によって金額は変わるものの、同程度の金額となる可能性があるそうだ。

 では一方、この女性は、なりすましていた女子中学生に対して、何かしら請求することができるのだろうか?

「女子中学生は、女性の名前を勝手に利用して架空の転売を行い、その結果として女性を逮捕に至らしめており、女性の名誉等を侵害したといえます。そこで女性は、女子中学生に対し、精神的苦痛に対する慰謝料を請求することができると考えられます。なお、女子中学生には資力がないことも考えられますが、両親が女子中学生をきちんと監督していなかった場合には、両親に対して慰謝料を請求することができる可能性もあります。その場合、裁判では、名誉権侵害について数十万円程度の金額が認められることが多いことから、おそらく今回の事案でも数十万円程度の金額が認められると思われます」

 女子中学生の詐欺行為自体が犯罪なのは間違いないが、この事件では警察の捜査の怠慢も指摘されている。徳島県警三好署の副署長と刑事課長が女性の自宅を訪れ、謝罪したというが、今後は適切な捜査を行ってもらいたいものだ。

アディーレ法律事務所

<疑問大募集>
ドラマ、バラエティーから、ニュース、CMまで、弁護士に聞いてみたい、テレビを見ていて感じた疑問を募集しています。下記フォームよりご応募ください。

ご応募はこちらから

祖母の失念で男児死亡……認知症の高齢者が起こした事件は、罪になる? ならない?

「ドラマのこのシーンってありえるの?」「バラエティーのあのやり方ってコンプライアンス的にどうなの?」……テレビを見ていて感じた疑問を弁護士に聞いてみる、テレビ好きのための法律相談所。

<今回の番組>
各局ニュース番組等

<今回の疑問>
認知症の人や高齢者が事故や事件を起こした場合、「法的責任」の境界線とは?

 8月2日、仙台市の民家の駐車場に停められた乗用車内で、3歳の男児がぐったりした状態で見つかり、病院で死亡が確認された事件。死因は熱中症の可能性が高いとされている。

 この事件では、祖母が車内に男児がいることを忘れて、その場を離れたとみられており、ネットでは「認知症では?」などの声も上がっているが、認知症の加害者が事件や事故を起こした場合、どのような刑罰になるのだろうか? 近年、高齢者による自動車事故などが増えていることもあり、認知症者の責任能力について、アディーレ法律事務所の吉岡達弥弁護士に聞いた。

「犯罪の成立には責任能力が必要です。犯罪行為時に善悪の判断ができず、自分の行動を制御する能力が欠如している状態を『心神喪失』といい、心神喪失状態の行為を処罰することはできません。また、善悪の判断や、行動を制御する能力が著しく低い場合のことを『心神耗弱』といい、心神耗弱者の行為については刑が減刑されます。例えば、認知症の状態で自動車を運転し、傷害事故を起こした場合には、過失運転致傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)が成立します。しかし、心神喪失であれば処罰されませんし、心神耗弱であれば刑が減刑されます」

 では、過去の高齢者による事件、事故はどのように判断されているのだろうか? また、認知症で罪に問われなかった判例などはあるのだろうか?

「2016年に集団登校中の児童に軽トラックが突っ込み、7人が死傷した事故で、88歳の男性が自動車運転過失致死傷容疑で送検されましたが、不起訴処分になっています。男性はアルツハイマー型認知症で、刑事責任を問えないと判断したとみられます。また、減刑されたものとしては、(1)80代後半の男性がデパートで起こした窃盗事件。犯行当時、認知症の影響で行動制御能力が著しく減退しており、心神耗弱状態であったとして減刑。(2)30代女性の窃盗事件で、女性が認知症で心神耗弱状態にあったということで刑を軽くした。以上のような例があります」

 身内にも起こりうる高齢者や認知症の事件や事故を防ぐために、家族も然るべき対応が必要だろう。

アディーレ法律事務所

<疑問大募集>
ドラマ、バラエティーから、ニュース、CMまで、弁護士に聞いてみたい、テレビを見ていて感じた疑問を募集しています。下記フォームよりご応募ください。

ご応募はこちらから

祖母の失念で男児死亡……認知症の高齢者が起こした事件は、罪になる? ならない?

「ドラマのこのシーンってありえるの?」「バラエティーのあのやり方ってコンプライアンス的にどうなの?」……テレビを見ていて感じた疑問を弁護士に聞いてみる、テレビ好きのための法律相談所。

<今回の番組>
各局ニュース番組等

<今回の疑問>
認知症の人や高齢者が事故や事件を起こした場合、「法的責任」の境界線とは?

 8月2日、仙台市の民家の駐車場に停められた乗用車内で、3歳の男児がぐったりした状態で見つかり、病院で死亡が確認された事件。死因は熱中症の可能性が高いとされている。

 この事件では、祖母が車内に男児がいることを忘れて、その場を離れたとみられており、ネットでは「認知症では?」などの声も上がっているが、認知症の加害者が事件や事故を起こした場合、どのような刑罰になるのだろうか? 近年、高齢者による自動車事故などが増えていることもあり、認知症者の責任能力について、アディーレ法律事務所の吉岡達弥弁護士に聞いた。

「犯罪の成立には責任能力が必要です。犯罪行為時に善悪の判断ができず、自分の行動を制御する能力が欠如している状態を『心神喪失』といい、心神喪失状態の行為を処罰することはできません。また、善悪の判断や、行動を制御する能力が著しく低い場合のことを『心神耗弱』といい、心神耗弱者の行為については刑が減刑されます。例えば、認知症の状態で自動車を運転し、傷害事故を起こした場合には、過失運転致傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)が成立します。しかし、心神喪失であれば処罰されませんし、心神耗弱であれば刑が減刑されます」

 では、過去の高齢者による事件、事故はどのように判断されているのだろうか? また、認知症で罪に問われなかった判例などはあるのだろうか?

「2016年に集団登校中の児童に軽トラックが突っ込み、7人が死傷した事故で、88歳の男性が自動車運転過失致死傷容疑で送検されましたが、不起訴処分になっています。男性はアルツハイマー型認知症で、刑事責任を問えないと判断したとみられます。また、減刑されたものとしては、(1)80代後半の男性がデパートで起こした窃盗事件。犯行当時、認知症の影響で行動制御能力が著しく減退しており、心神耗弱状態であったとして減刑。(2)30代女性の窃盗事件で、女性が認知症で心神耗弱状態にあったということで刑を軽くした。以上のような例があります」

 身内にも起こりうる高齢者や認知症の事件や事故を防ぐために、家族も然るべき対応が必要だろう。

アディーレ法律事務所

<疑問大募集>
ドラマ、バラエティーから、ニュース、CMまで、弁護士に聞いてみたい、テレビを見ていて感じた疑問を募集しています。下記フォームよりご応募ください。

ご応募はこちらから

『とくダネ!』が「SNSの動画を無断使用」と炎上! 損害賠償を請求した場合の金額は?

「ドラマのこのシーンってありえるの?」「バラエティーのあのやり方ってコンプライアンス的にどうなの?」……テレビを見ていて感じた疑問を弁護士に聞いてみる、テレビ好きのための法律相談所。

<今回の番組>
『とくダネ!』(フジテレビ系/8月8日午前8時~)

<今回の疑問>
一般人がTwitterにアップした動画を無断で放送。 このユーザーは損害賠償請求できる?

 『とくダネ!』で、一般のTwitterユーザーがアップした台風被害の映像を、放送で勝手に使用したと、ネット炎上騒ぎになった。8日の深夜1時ごろ、このユーザーが氾濫した滋賀県の姉川の様子を伝える動画を投稿したところ、『とくダネ!』スタッフのTwitterアカウントが「非常に公共性の高い映像」のため、番組での使用許可を求めた。何度送信しても、投稿者からの返事がなかったようで、6時ごろ、「午前7時30分までにご連絡を取らせていただけないでしょうか?また、午前8時の放送までにご返答がない場合、上記の理由により使用させていただきたく存じます」と送信していた。

 こうしたやりとりについて、ネットでは批判が殺到。「事後報告になるものは確認とか承諾とは言わないだろ」「無断使用だ」「何様のつもり?」などとコメントが相次いだ。

 結局、フジテレビは投稿者の許可を取った上で放送したと報じられているが、もし、実際に動画を無断で使われた場合、投稿者はフジテレビを訴え、損害賠償を請求することはできるのだろうか? アディーレ法律事務所の吉岡達弥弁護士に聞いた。

 吉岡弁護士によると、災害映像の動画にも著作権が認められ、原則として、動画を勝手に使用すれば、著作権侵害で損害賠償を請求できるという。しかし、勝手に使用できる“例外”もあるそうだ。

「時事の事件については、国民の知る権利を充足するために、報道として目的上、正当な範囲で利用することができます(著作権法41条)。そして、災害という時事の事件についてであれば、災害が現に起きていることを示す必要性がありますので、動画を必要な範囲内で使用しても著作権侵害にはなりません。

 本件でも、『とくダネ!』が動画を、災害状況を示すのに必要な範囲内で使用したのであれば、著作権侵害にはなりませんので、損害賠償を請求することはできません」

 では、使用料を請求することはできるのだろうか?

「使用料の請求というと、不当利得返還請求ということになりますが、動画所有者に損失がないと請求できません。今回の場合、動画の所有者の損失というのは考えづらいので、使用料の請求は認められないと考えられます」

 また、この動画は「滋賀の姉川氾濫」を撮影したと投稿者は書いているが、ネットには「そもそも該当の動画が現場のものかどうかはっきりしないけど、違ったらどうなんだ」といったコメントもあった。報道によれば、フジテレビは確認をした上で放送したそうだが、もし確認せず放送し、動画が本当は姉川のものでなかったら誤報になってしまう。その場合には罪にならないのだろうか?

「誤報に関する犯罪としては、名誉棄損罪が考えられますが、本件の場合、名誉を毀損される被害者というのが考えづらいので、犯罪は成立しないと考えられます。しかし、災害の誤報によって、市役所等に問い合わせが殺到する等が考えられますので、無用な混乱を避けるためにも、裏付けをとってから報道することが必要だと思います」

 災害など報道に緊急性を要する場合、番組制作側は気持ちが焦ることもあるかもしれないが、人の生死に関わる情報だからこそ、冷静に正確に報じてほしいものだ。

アディーレ法律事務所

<疑問大募集>
ドラマ、バラエティーから、ニュース、CMまで、弁護士に聞いてみたい、テレビを見ていて感じた疑問を募集しています。下記フォームよりご応募ください。

ご応募はこちらから

「ナイトプールで泳がない人」への誹謗中傷、慰謝料100万円請求される可能性も!

「ドラマのこのシーンってありえるの?」「バラエティーのあのやり方ってコンプライアンス的にどうなの?」……テレビを見ていて感じた疑問を弁護士に聞いてみる、テレビ好きのための法律相談所。

<今回の番組>
『スーパーJチャンネル』(テレビ朝日系/7月19日午後4時50分~)

<今回の疑問>
ニュース番組でインタビューを受けていた人に対して、ネットで誹謗中傷の書き込みをしたら罪になる?

 ナイトプールを特集したニュース番組で、インタビューに「化粧が落ちるから泳がない」と答えた女性が、ネットで批判を受けていた。一部の書き込みは削除されているが、「なら来るな」「ナンパ目的」「泳ぐ人に迷惑」「ブス」「死ね」「男漁り」といったコメントがされていたという。ニュースで取り上げられた一般人に対する、こうした誹謗中傷ともいえるコメントは、名誉棄損罪や侮辱罪にならないのだろうか? アディーレ法律事務所の時光祥大弁護士に聞いた。

 時光弁護士によると、名誉棄損罪も侮辱罪も、「公然と」行われる必要があるという。公然とは、不特定または多数の人に対して行うことなので、ツイッターやネットの掲示板などの誰でも見ることができるところへのコメントは、「公然と行われた」といえる。

「名誉棄損罪は『事実(嘘も真実も含む)』を告げる必要があり、事実を告げない場合は侮辱罪にとどまります。たとえば、単に『バーカ』と言うだけなら侮辱罪ですが、『あなたは大学を3度も留年するくらいバカなんでしょう』と事実付きで行うと、名誉棄損罪になります。この線引きはとても微妙なところですが、『なら来るな』『ナンパ目的』『泳ぐ人に迷惑』『ブス』『死ね』『男漁り』と言った言葉は、事実付きとまではいえないでしょう。

 もちろん、その言葉が相手を侮辱するものであることも要件です。『なら来るな』『泳ぐ人に迷惑』は、単に意見を述べるもので、侮辱とまではいえないのではないでしょうか。これに対して、『ブス』『死ね』は明らかに侮辱に当たるでしょうから、侮辱罪になります。『ナンパ目的』『男漁り』も、一般的に相手を侮辱するものと考えられるのではないでしょうか」

 ただし、侮辱罪になるには、個人を特定して行う必要があるそうだ。例えば「〇〇県民はバカ」とコメントしても、侮辱罪にはならない。インタビューに答えた人が、どこの誰かわからない場合、例えば顔を映さず匿名だった場合、その人に対するコメントというよりも、一般的にナイトプールに来る女性へのコメントと考えられる。また、顔を映していたとしても、名前などほかの情報がなければ、どこの誰かわからず、その人を特定してコメントしたといえるか、難しいところがあるという。

「なお、名誉棄損罪と侮辱罪は、親告罪といって、被害者の方が警察等に告訴しなければ起訴できず、捜査されることも、ほぼありません。また、侮辱罪は刑法犯罪で最も軽い罪で、罰則は拘留(30日未満の拘束)または科料(1万円未満の罰金のようなもの)のみです。もちろん、民事の損害賠償請求ができることはありますが、匿名でのコメントだった場合、まずは掲示板の管理者などに情報開示を求め、犯人を特定する必要があります」

 今回は一般人に対する誹謗中傷のケースだが、有名人の場合と、罪になるならないの境界線に違いはあるのだろうか?

「基本的に、一般の人と芸能人などの有名人とで境界線にあまり違いはないと思います。ただ個人が特定しやすい分、有名人に対する方が罪になりやすいと言えるかもしれません」

 過去には、一般人に対するネットの書き込みが侮辱に当たると裁判所が認めた事例もあるそうだ。

「刑事事件ではなく、民事の損害賠償請求(慰謝料請求)ですが、銀座のクラブホステスに対して、客がインターネットの書き込みで『死ね』などと侮辱したもので、裁判所が侮辱に当たると認めました。侮辱罪の要件も満たしていたものと考えられます。書き込んだ客は判決で100万円の慰謝料支払いを命じられました」

 たとえ相手が一般人であっても、他人を侮辱するような書き込みをすることは避けるのが無難だろう。

アディーレ法律事務所

<疑問大募集>
ドラマ、バラエティーから、ニュース、CMまで、弁護士に聞いてみたい、テレビを見ていて感じた疑問を募集しています。下記フォームよりご応募ください。

ご応募はこちらから

「ナイトプールで泳がない人」への誹謗中傷、慰謝料100万円請求される可能性も!

「ドラマのこのシーンってありえるの?」「バラエティーのあのやり方ってコンプライアンス的にどうなの?」……テレビを見ていて感じた疑問を弁護士に聞いてみる、テレビ好きのための法律相談所。

<今回の番組>
『スーパーJチャンネル』(テレビ朝日系/7月19日午後4時50分~)

<今回の疑問>
ニュース番組でインタビューを受けていた人に対して、ネットで誹謗中傷の書き込みをしたら罪になる?

 ナイトプールを特集したニュース番組で、インタビューに「化粧が落ちるから泳がない」と答えた女性が、ネットで批判を受けていた。一部の書き込みは削除されているが、「なら来るな」「ナンパ目的」「泳ぐ人に迷惑」「ブス」「死ね」「男漁り」といったコメントがされていたという。ニュースで取り上げられた一般人に対する、こうした誹謗中傷ともいえるコメントは、名誉棄損罪や侮辱罪にならないのだろうか? アディーレ法律事務所の時光祥大弁護士に聞いた。

 時光弁護士によると、名誉棄損罪も侮辱罪も、「公然と」行われる必要があるという。公然とは、不特定または多数の人に対して行うことなので、ツイッターやネットの掲示板などの誰でも見ることができるところへのコメントは、「公然と行われた」といえる。

「名誉棄損罪は『事実(嘘も真実も含む)』を告げる必要があり、事実を告げない場合は侮辱罪にとどまります。たとえば、単に『バーカ』と言うだけなら侮辱罪ですが、『あなたは大学を3度も留年するくらいバカなんでしょう』と事実付きで行うと、名誉棄損罪になります。この線引きはとても微妙なところですが、『なら来るな』『ナンパ目的』『泳ぐ人に迷惑』『ブス』『死ね』『男漁り』と言った言葉は、事実付きとまではいえないでしょう。

 もちろん、その言葉が相手を侮辱するものであることも要件です。『なら来るな』『泳ぐ人に迷惑』は、単に意見を述べるもので、侮辱とまではいえないのではないでしょうか。これに対して、『ブス』『死ね』は明らかに侮辱に当たるでしょうから、侮辱罪になります。『ナンパ目的』『男漁り』も、一般的に相手を侮辱するものと考えられるのではないでしょうか」

 ただし、侮辱罪になるには、個人を特定して行う必要があるそうだ。例えば「〇〇県民はバカ」とコメントしても、侮辱罪にはならない。インタビューに答えた人が、どこの誰かわからない場合、例えば顔を映さず匿名だった場合、その人に対するコメントというよりも、一般的にナイトプールに来る女性へのコメントと考えられる。また、顔を映していたとしても、名前などほかの情報がなければ、どこの誰かわからず、その人を特定してコメントしたといえるか、難しいところがあるという。

「なお、名誉棄損罪と侮辱罪は、親告罪といって、被害者の方が警察等に告訴しなければ起訴できず、捜査されることも、ほぼありません。また、侮辱罪は刑法犯罪で最も軽い罪で、罰則は拘留(30日未満の拘束)または科料(1万円未満の罰金のようなもの)のみです。もちろん、民事の損害賠償請求ができることはありますが、匿名でのコメントだった場合、まずは掲示板の管理者などに情報開示を求め、犯人を特定する必要があります」

 今回は一般人に対する誹謗中傷のケースだが、有名人の場合と、罪になるならないの境界線に違いはあるのだろうか?

「基本的に、一般の人と芸能人などの有名人とで境界線にあまり違いはないと思います。ただ個人が特定しやすい分、有名人に対する方が罪になりやすいと言えるかもしれません」

 過去には、一般人に対するネットの書き込みが侮辱に当たると裁判所が認めた事例もあるそうだ。

「刑事事件ではなく、民事の損害賠償請求(慰謝料請求)ですが、銀座のクラブホステスに対して、客がインターネットの書き込みで『死ね』などと侮辱したもので、裁判所が侮辱に当たると認めました。侮辱罪の要件も満たしていたものと考えられます。書き込んだ客は判決で100万円の慰謝料支払いを命じられました」

 たとえ相手が一般人であっても、他人を侮辱するような書き込みをすることは避けるのが無難だろう。

アディーレ法律事務所

<疑問大募集>
ドラマ、バラエティーから、ニュース、CMまで、弁護士に聞いてみたい、テレビを見ていて感じた疑問を募集しています。下記フォームよりご応募ください。

ご応募はこちらから

NMB48・須藤凜々花は“詐欺罪”に当たるのか? 「異性との交際は憲法が保障する権利」と弁護士

「ドラマのこのシーンってありえるの?」「バラエティーのあのやり方ってコンプライアンス的にどうなの?」……テレビを見ていて感じた疑問を弁護士に聞いてみる、テレビ好きのための法律相談所。

<今回の番組>
『第9回AKB48選抜総選挙』(フジテレビ系/6月17日午後7時~)

<今回の疑問>
NMB48・須藤凜々花の結婚発表は詐欺罪に当たるのか?

 6月17日に行われた「第9回AKB48選抜総選挙」で、NMB48・須藤凜々花が突然の結婚を発表し話題になっている。須藤は3万1,779票を獲得、ファンが投じた金額は1,000万円以上にも上った。選挙の直前まで投票を呼び掛けていた須藤に対し、ファンからは「詐欺」、「返金対応すべき」との厳しい声も上がっている。AKBグループには恋愛禁止の掟があるが、それを破って結婚を発表したことで、「詐欺罪」として立件できる可能性はあるのだろうか? アディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士に聞いた。

 岩沙弁護士によると、このケースでは「詐欺罪が成立する可能性は低い」という。

「今回は、総選挙の前に恋愛禁止の掟を破って交際していたにもかかわらず、それをファンに伝えなかったという行為(不作為)が問題となります。不作為による詐欺とは、事実を告知しないことにより、相手方が勘違いしている状態を利用する場合に成立します。もっとも、不作為による詐欺罪が成立するためには、『法的な告知義務』が認められなければなりません。しかし、異性との交際を妨げられることのない自由は、『幸福追求権』として憲法13条で保障されている重要な権利です。いくら恋愛禁止のグループに所属していたとしても、全国のファンに対して異性と交際していることを明らかにする法的な義務はありません。よって、詐欺罪が成立する可能性は低いでしょう」

 では、ファンが民事で賠償請求することは不可能なのだろうか?

「不法行為に基づく損害賠償請求が認められるためには、行為に違法性があることが必要です。しかし、前述の通り、異性と交際していることを全国のファンに明らかにする法的な義務はないため、隠れて交際していたとしても違法性がありません。したがって、損害賠償請求は認められないでしょう」

 数々の波紋を呼んでいる今回の結婚発表。投票したファンは気の毒ともいえるが、結婚に対しては温かく見守るしかなさそうだ。

アディーレ法律事務所

<疑問大募集>
ドラマ、バラエティーから、ニュース、CMまで、弁護士に聞いてみたい、テレビを見ていて感じた疑問を募集しています。下記フォームよりご応募ください。

ご応募はこちらから

NMB48・須藤凜々花は“詐欺罪”に当たるのか? 「異性との交際は憲法が保障する権利」と弁護士

「ドラマのこのシーンってありえるの?」「バラエティーのあのやり方ってコンプライアンス的にどうなの?」……テレビを見ていて感じた疑問を弁護士に聞いてみる、テレビ好きのための法律相談所。

<今回の番組>
『第9回AKB48選抜総選挙』(フジテレビ系/6月17日午後7時~)

<今回の疑問>
NMB48・須藤凜々花の結婚発表は詐欺罪に当たるのか?

 6月17日に行われた「第9回AKB48選抜総選挙」で、NMB48・須藤凜々花が突然の結婚を発表し話題になっている。須藤は3万1,779票を獲得、ファンが投じた金額は1,000万円以上にも上った。選挙の直前まで投票を呼び掛けていた須藤に対し、ファンからは「詐欺」、「返金対応すべき」との厳しい声も上がっている。AKBグループには恋愛禁止の掟があるが、それを破って結婚を発表したことで、「詐欺罪」として立件できる可能性はあるのだろうか? アディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士に聞いた。

 岩沙弁護士によると、このケースでは「詐欺罪が成立する可能性は低い」という。

「今回は、総選挙の前に恋愛禁止の掟を破って交際していたにもかかわらず、それをファンに伝えなかったという行為(不作為)が問題となります。不作為による詐欺とは、事実を告知しないことにより、相手方が勘違いしている状態を利用する場合に成立します。もっとも、不作為による詐欺罪が成立するためには、『法的な告知義務』が認められなければなりません。しかし、異性との交際を妨げられることのない自由は、『幸福追求権』として憲法13条で保障されている重要な権利です。いくら恋愛禁止のグループに所属していたとしても、全国のファンに対して異性と交際していることを明らかにする法的な義務はありません。よって、詐欺罪が成立する可能性は低いでしょう」

 では、ファンが民事で賠償請求することは不可能なのだろうか?

「不法行為に基づく損害賠償請求が認められるためには、行為に違法性があることが必要です。しかし、前述の通り、異性と交際していることを全国のファンに明らかにする法的な義務はないため、隠れて交際していたとしても違法性がありません。したがって、損害賠償請求は認められないでしょう」

 数々の波紋を呼んでいる今回の結婚発表。投票したファンは気の毒ともいえるが、結婚に対しては温かく見守るしかなさそうだ。

アディーレ法律事務所

<疑問大募集>
ドラマ、バラエティーから、ニュース、CMまで、弁護士に聞いてみたい、テレビを見ていて感じた疑問を募集しています。下記フォームよりご応募ください。

ご応募はこちらから