2035年、日本の人口の半分は独身者に! 「超ソロ社会」でどう生き抜く?

「誰もがソロ(独身)として、生きなければいけないリスクを抱えている」

 そう語るのは、博報堂ソロ活動系男子研究プロジェクト・リーダーの荒川和久さん。2017年1月、『超ソロ社会 「独身大国・日本」の衝撃』(PHP新書)を発表し、20年後には15歳以上の全人口に占める独身者(未婚+離別・死別者)数が、男女合わせて4,800万人を突破し、全体の48%を占めるようになる、と推測している。

 未婚化や少子高齢化が叫ばれているが、結婚しても、離別や死別などによって、ソロに戻るリスクがある。世界に先駆けてソロ社会になる日本では、いったいどうすれば生き抜けるのか? 下北沢の本屋B&Bで、『さんまのスーパーからくりTV』や『中居正広の金曜日のスマたちへ』(ともにTBS)など、数々のバラエティ番組のプロデューサーとして活躍し、16年12月にTBSテレビを退社した角田陽一郎さんをゲストに迎え、ソロ社会のこれからについて語った。

■結婚したからといって、安心できない

 荒川さんは、15年に初の著書『結婚しない男たち 増え続ける未婚男性「ソロ男」のリアル』(ディスカヴァー携書)を発表し、“結婚できない”ではなく、“結婚しない”男たち「ソロ男」の生態をまとめ、大きな話題を呼んだ。

 今回の新著のテーマ “ソロ社会” について、荒川さんは「未婚化や少子高齢化より深刻なのは、このソロ社会化なんです。結婚したからといって安心できません。3組に1組が離婚する現代。結婚すると、日本人は特に配偶者や家族に依存しがちです。結婚すると、“上がり”みたいに思ってしまう人もいるんですよね」と話す。

 すると、角田さんから「結婚って、ドラマでいうと、『ロングバケーション』(フジテレビ系)の最終話だと思っている。プロポーズをしてゴール。でも、結婚は『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)の第1話ですから! これから、赤木春恵さんとのバトルが始まり、えなり君が大学生になるまで続くんです」と笑いを誘った。

■「バリバリ働く女性ほど未婚率が高い」という事実

 

 トークの序盤では、荒川さんが収集分析した“ソロ社会化”に関係する結婚や離婚に関するデータの数々が紹介された。

 その中で、ソロ社会化する上で問題視されているのが、生涯未婚率(45~49歳と50~54歳の未婚率の平均値から算出したものを50歳時の未婚率とする統計指標)。15年の国勢調査によれば、男性23.4%、女性が14.1%だったが、35年には、男性が3割、女性2割が生涯未婚になると推計されている。過去と比較するグラフでは、1950年には95%結婚していた事実にまず驚かされるが、85年には女性の生涯未婚率がグッと上がる。

「バブルの崩壊という経済的要因も入ってきたりもするんですが、男女雇用機会均等法で、女性の意識が変わった。昔は、専業主婦ばかりだったので、結婚することは死活問題だったんです」(荒川さん)

 つまり、かつての女性は、生活のために結婚せざるを得なかった。しかし、時代が進み、働いて稼げる女性であるほど、経済的に自立する。すると、無理に結婚をする必要がなくなっていく。しかも、女性は自分よりも年収の高い相手を希望する上方婚志向があり、男性も自分より低い年収の女性を求める傾向が顕著なのだ。

■結婚しても、孤独死のリスクはある

 さらに、どうにか結婚できたとしても、離婚が待ち受けているかもしれない。荒川さんが「結婚しても安心できない」と主張する理由のひとつに、「3組に1組が離婚する」という事実がある。厚生労働省の「人口動態統計」によると、「特殊離婚率」(離婚数を婚姻数で割った比率)が、2001年以降35%をキープし続けているのだ。

 離婚率が一番高かったのは、小泉内閣の時。結婚生活は、専業主婦にとっては“経済活動”であるため、景気にもっとも影響されるという。それとは別に、同居期間20年以上の“熟年離婚”も増えており、1947年はたった7%だったが、2016年は30%に上がっている。

 第一生命経済研究所が60代から70代の夫婦を対象に行った調査によれば、男性は90%が「配偶者が頼りになる」と言っているものの、女性は58%。「今と同じ人と結婚したいか?」という質問に「結婚したい」と答えているのは、男性は6割に対し、女性は半分の3割という。夫が円満だと思っていても、妻は見限っているかもしれない。

■不倫問題が待機児童問題につながっている!?

 また、話題は子どもについても及んだ。子どもを持たないと、どこか後ろめたい気持ちを持つ人も多いが、荒川さんは、こう語る。

「結婚をして、自分の子どもを生み育てる集団だけが家族ではないし、それだけが人間としての社会的役割を果たすということではないのでは? 生涯未婚であれ、生涯無子であれ、社会の一員としてしっかり働き、金銭を循環させることで、間接的に子どもをサポートしていければいいはず」

 その話に、角田さんは元水泳選手・岩崎恭子さんの父親の話を取り上げ、「本当の親と一緒に住めない子たちの里親をやっているんですって。自分の子どもを育てるだけじゃない、いろんな子どもを育てる、ということを社会に広めることは、アリなんじゃないかな」と話す。

 それには荒川さんも「アリだと思います。自分の家庭だけ、自分の子どもだけよければいいみたいな風潮が強すぎるんじゃないかな」と応えた。加えて、社会学者が主張している“個人化”について語った。

「よく言われているのは、これからは家族だったり、職場だったり、従来のいわゆる安定した固体的なコミュニティがすべて溶けてなくなり、社会が流動化していきます。それは社会が個人化していくということ。これは世界的な傾向です」

 それを聞いて、角田さんは江戸時代に養子が多かったことについて語り出し、「ある商家がずっと繁栄していて、子どもが生まれなかったら、番頭で一番いい子を養子にして継がせていた。それで経済はしっかり回っていた。芸能人の不倫問題なんかも、実は見かけ以上に複雑で『結婚したら不倫はダメ』とか、結婚という固定観念を検証しないで無理矢理死守しようとしている。それが、待機児童とかあらゆる問題につながっているんじゃないかと思いますよ」と、これまでの固定観念で社会が回っていることに、疑問を呈した。

■独身は幸せを考えない方がいい?

 話題は「結婚できないと、一人前じゃない」という社会の圧力に、独身者たちが潜在的に苦しめられていることについても及んだ。荒川さんによると、その要因は、欧州諸国に比べて日本は結婚規範が根強いことをあげる。強い結婚規範は「結婚できない自分は何かが足りないのだ」という自己否定感と、その人が社会的役割を果たしている、という何かの承認感への欲求を生む。

 さらに、ソロ男もソロ女(詳しくはこちら)も、自己有能感は高い割に、自己肯定感がそれほど高くない。特に、「頑張った割に評価されていない」という承認不足や「まだまだこんなものでは満足しない」という達成不足という欠乏意識の強さがみられ、それゆえ、素直に幸福度を感じ取れないことにつながってしまっているという。

 トークの最後では、観客から「ソロ男はどうやって生きれば、幸せになるか?」という質問が飛び出し、荒川さんからは「独身は無理に幸せを考えなくてもいいのでは(笑)」という、意表をつく答えが返ってきた。

「赤ちゃんの寝顔を見ただけで、疲れがふっ飛ぶという既婚者の幸福感は、家族を持たないソロ生活者はわかりようがない。子どもがどれだけ力を与えてくれるかさえも想像できない。でも、だからこそ、そういう感じられないものを想像したって、しょうがない。特に、ソロ男は、消費で幸福を感じようとする傾向があります。ドーパミン消費といって、アイドルやメイド喫茶にお金をつぎ込んでしまったりする。でも、それを続けるとかえって幸せを感じにくくなります。無理に幸せになろうとして自分を追い込まない方がいい」

 一方、角田さんは、次のように話す。

「既婚者の幸せとかソロの幸せとか、分けていることがナンセンスだと思いますよ。僕は、幸せは欲の処理方法だと思っていて、若い頃は男の場合、性欲を処理することがすべてだったりするんだけど、自分の体が萎えてくると、性欲よりも、睡眠欲、食欲とかが大事になるし、最後には知的好奇心が圧倒的に感情を豊かにしてくれるんじゃないかなと思ってる。この知的好奇心をどう刺激して、満足させて生きていくか」

 幸せの形は人それぞれ。結婚するかどうかも人それぞれ。“既存の家族”という概念が、絶対的ではないものになろうとする未来、ソロ社会を生き抜くため、老若男女、個人と個人が助け合う必要がある。現代は、そうしたそれぞれが精神的に自立し、まったく新しい概念のコミュニティの形が生まれる助走期間なのかもしれないと感じるイベントとなった。
(上浦未来)

荒川和久(あらかわ・かずひさ)
博報堂ソロ活動系男子研究プロジェクト・リーダー。早稲田大学法学部卒業。独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・WEBメディア多数出演。著書に『結婚しない男たち 増え続ける未婚男性「ソロ男」のリアル』(ディスカヴァー携書)。東洋経済オンラインにて『ソロモンの時代』連載中。

角田陽一郎(かくた・よういちろう)
1970年千葉県生まれ。東京大学文学部西洋史学科卒業後、1994年にTBSテレビに入社。TVプロデューサー、ディレクターとして『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』『EXILE魂』『オトナの!』など、主にバラエティ番組の企画制作をしながら、2009年ネット動画配信会社goomoを設立(取締役)。2016年末TBS退社。著書に『成功の神はネガティブな狩人に降臨する―バラエティ的企画術』(朝日新聞出版)『最速で身につく世界史』(アスコム)など。『水道橋博士のメルマ旬報』『cakes』で連載中。

2035年、日本の人口の半分は独身者に! 「超ソロ社会」でどう生き抜く?

「誰もがソロ(独身)として、生きなければいけないリスクを抱えている」

 そう語るのは、博報堂ソロ活動系男子研究プロジェクト・リーダーの荒川和久さん。2017年1月、『超ソロ社会 「独身大国・日本」の衝撃』(PHP新書)を発表し、20年後には15歳以上の全人口に占める独身者(未婚+離別・死別者)数が、男女合わせて4,800万人を突破し、全体の48%を占めるようになる、と推測している。

 未婚化や少子高齢化が叫ばれているが、結婚しても、離別や死別などによって、ソロに戻るリスクがある。世界に先駆けてソロ社会になる日本では、いったいどうすれば生き抜けるのか? 下北沢の本屋B&Bで、『さんまのスーパーからくりTV』や『中居正広の金曜日のスマたちへ』(ともにTBS)など、数々のバラエティ番組のプロデューサーとして活躍し、16年12月にTBSテレビを退社した角田陽一郎さんをゲストに迎え、ソロ社会のこれからについて語った。

■結婚したからといって、安心できない

 荒川さんは、15年に初の著書『結婚しない男たち 増え続ける未婚男性「ソロ男」のリアル』(ディスカヴァー携書)を発表し、“結婚できない”ではなく、“結婚しない”男たち「ソロ男」の生態をまとめ、大きな話題を呼んだ。

 今回の新著のテーマ “ソロ社会” について、荒川さんは「未婚化や少子高齢化より深刻なのは、このソロ社会化なんです。結婚したからといって安心できません。3組に1組が離婚する現代。結婚すると、日本人は特に配偶者や家族に依存しがちです。結婚すると、“上がり”みたいに思ってしまう人もいるんですよね」と話す。

 すると、角田さんから「結婚って、ドラマでいうと、『ロングバケーション』(フジテレビ系)の最終話だと思っている。プロポーズをしてゴール。でも、結婚は『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)の第1話ですから! これから、赤木春恵さんとのバトルが始まり、えなり君が大学生になるまで続くんです」と笑いを誘った。

■「バリバリ働く女性ほど未婚率が高い」という事実

 

 トークの序盤では、荒川さんが収集分析した“ソロ社会化”に関係する結婚や離婚に関するデータの数々が紹介された。

 その中で、ソロ社会化する上で問題視されているのが、生涯未婚率(45~49歳と50~54歳の未婚率の平均値から算出したものを50歳時の未婚率とする統計指標)。15年の国勢調査によれば、男性23.4%、女性が14.1%だったが、35年には、男性が3割、女性2割が生涯未婚になると推計されている。過去と比較するグラフでは、1950年には95%結婚していた事実にまず驚かされるが、85年には女性の生涯未婚率がグッと上がる。

「バブルの崩壊という経済的要因も入ってきたりもするんですが、男女雇用機会均等法で、女性の意識が変わった。昔は、専業主婦ばかりだったので、結婚することは死活問題だったんです」(荒川さん)

 つまり、かつての女性は、生活のために結婚せざるを得なかった。しかし、時代が進み、働いて稼げる女性であるほど、経済的に自立する。すると、無理に結婚をする必要がなくなっていく。しかも、女性は自分よりも年収の高い相手を希望する上方婚志向があり、男性も自分より低い年収の女性を求める傾向が顕著なのだ。

■結婚しても、孤独死のリスクはある

 さらに、どうにか結婚できたとしても、離婚が待ち受けているかもしれない。荒川さんが「結婚しても安心できない」と主張する理由のひとつに、「3組に1組が離婚する」という事実がある。厚生労働省の「人口動態統計」によると、「特殊離婚率」(離婚数を婚姻数で割った比率)が、2001年以降35%をキープし続けているのだ。

 離婚率が一番高かったのは、小泉内閣の時。結婚生活は、専業主婦にとっては“経済活動”であるため、景気にもっとも影響されるという。それとは別に、同居期間20年以上の“熟年離婚”も増えており、1947年はたった7%だったが、2016年は30%に上がっている。

 第一生命経済研究所が60代から70代の夫婦を対象に行った調査によれば、男性は90%が「配偶者が頼りになる」と言っているものの、女性は58%。「今と同じ人と結婚したいか?」という質問に「結婚したい」と答えているのは、男性は6割に対し、女性は半分の3割という。夫が円満だと思っていても、妻は見限っているかもしれない。

■不倫問題が待機児童問題につながっている!?

 また、話題は子どもについても及んだ。子どもを持たないと、どこか後ろめたい気持ちを持つ人も多いが、荒川さんは、こう語る。

「結婚をして、自分の子どもを生み育てる集団だけが家族ではないし、それだけが人間としての社会的役割を果たすということではないのでは? 生涯未婚であれ、生涯無子であれ、社会の一員としてしっかり働き、金銭を循環させることで、間接的に子どもをサポートしていければいいはず」

 その話に、角田さんは元水泳選手・岩崎恭子さんの父親の話を取り上げ、「本当の親と一緒に住めない子たちの里親をやっているんですって。自分の子どもを育てるだけじゃない、いろんな子どもを育てる、ということを社会に広めることは、アリなんじゃないかな」と話す。

 それには荒川さんも「アリだと思います。自分の家庭だけ、自分の子どもだけよければいいみたいな風潮が強すぎるんじゃないかな」と応えた。加えて、社会学者が主張している“個人化”について語った。

「よく言われているのは、これからは家族だったり、職場だったり、従来のいわゆる安定した固体的なコミュニティがすべて溶けてなくなり、社会が流動化していきます。それは社会が個人化していくということ。これは世界的な傾向です」

 それを聞いて、角田さんは江戸時代に養子が多かったことについて語り出し、「ある商家がずっと繁栄していて、子どもが生まれなかったら、番頭で一番いい子を養子にして継がせていた。それで経済はしっかり回っていた。芸能人の不倫問題なんかも、実は見かけ以上に複雑で『結婚したら不倫はダメ』とか、結婚という固定観念を検証しないで無理矢理死守しようとしている。それが、待機児童とかあらゆる問題につながっているんじゃないかと思いますよ」と、これまでの固定観念で社会が回っていることに、疑問を呈した。

■独身は幸せを考えない方がいい?

 話題は「結婚できないと、一人前じゃない」という社会の圧力に、独身者たちが潜在的に苦しめられていることについても及んだ。荒川さんによると、その要因は、欧州諸国に比べて日本は結婚規範が根強いことをあげる。強い結婚規範は「結婚できない自分は何かが足りないのだ」という自己否定感と、その人が社会的役割を果たしている、という何かの承認感への欲求を生む。

 さらに、ソロ男もソロ女(詳しくはこちら)も、自己有能感は高い割に、自己肯定感がそれほど高くない。特に、「頑張った割に評価されていない」という承認不足や「まだまだこんなものでは満足しない」という達成不足という欠乏意識の強さがみられ、それゆえ、素直に幸福度を感じ取れないことにつながってしまっているという。

 トークの最後では、観客から「ソロ男はどうやって生きれば、幸せになるか?」という質問が飛び出し、荒川さんからは「独身は無理に幸せを考えなくてもいいのでは(笑)」という、意表をつく答えが返ってきた。

「赤ちゃんの寝顔を見ただけで、疲れがふっ飛ぶという既婚者の幸福感は、家族を持たないソロ生活者はわかりようがない。子どもがどれだけ力を与えてくれるかさえも想像できない。でも、だからこそ、そういう感じられないものを想像したって、しょうがない。特に、ソロ男は、消費で幸福を感じようとする傾向があります。ドーパミン消費といって、アイドルやメイド喫茶にお金をつぎ込んでしまったりする。でも、それを続けるとかえって幸せを感じにくくなります。無理に幸せになろうとして自分を追い込まない方がいい」

 一方、角田さんは、次のように話す。

「既婚者の幸せとかソロの幸せとか、分けていることがナンセンスだと思いますよ。僕は、幸せは欲の処理方法だと思っていて、若い頃は男の場合、性欲を処理することがすべてだったりするんだけど、自分の体が萎えてくると、性欲よりも、睡眠欲、食欲とかが大事になるし、最後には知的好奇心が圧倒的に感情を豊かにしてくれるんじゃないかなと思ってる。この知的好奇心をどう刺激して、満足させて生きていくか」

 幸せの形は人それぞれ。結婚するかどうかも人それぞれ。“既存の家族”という概念が、絶対的ではないものになろうとする未来、ソロ社会を生き抜くため、老若男女、個人と個人が助け合う必要がある。現代は、そうしたそれぞれが精神的に自立し、まったく新しい概念のコミュニティの形が生まれる助走期間なのかもしれないと感じるイベントとなった。
(上浦未来)

荒川和久(あらかわ・かずひさ)
博報堂ソロ活動系男子研究プロジェクト・リーダー。早稲田大学法学部卒業。独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・WEBメディア多数出演。著書に『結婚しない男たち 増え続ける未婚男性「ソロ男」のリアル』(ディスカヴァー携書)。東洋経済オンラインにて『ソロモンの時代』連載中。

角田陽一郎(かくた・よういちろう)
1970年千葉県生まれ。東京大学文学部西洋史学科卒業後、1994年にTBSテレビに入社。TVプロデューサー、ディレクターとして『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』『EXILE魂』『オトナの!』など、主にバラエティ番組の企画制作をしながら、2009年ネット動画配信会社goomoを設立(取締役)。2016年末TBS退社。著書に『成功の神はネガティブな狩人に降臨する―バラエティ的企画術』(朝日新聞出版)『最速で身につく世界史』(アスコム)など。『水道橋博士のメルマ旬報』『cakes』で連載中。

結婚しないと一人前になれないのか? ソロ男が語る未婚男性への「ソロハラ」と幸せの多様性

hakuhodo_arakawa2_mini.jpg
博報堂ソロ活動系男子研究プロジェクトリーダー・荒川和久さん

(前編はこちら)

■ソロ男だけでなく、ソロ女も増えている

――職業以外で、ソロ男を見分けるにはどうしたらいいのでしょうか?

荒川和久さん(以下、荒川) 「束縛されたくない」「ひとりの時間を絶対に確保したい」「何かがあっても他人に頼らず、自分でなんとかする」。この3つの質問の答えが、全部オールイエスだったら、ソロ男度数が高いですね。中でも、3つ目の「自分でなんとかする」項目について、チェックしたほうがいいですね。不測の事態が起きた時が一番わかりやすいんですけれど、たとえば予測できないような何か事故が起きたとする。それをまず自分でどうしようかと先に考えようとする人なのか、「どうすればいい?」と先に誰かに連絡したり、相談しようとするのか。先に自分でなんとかしようとする人は、ほぼソロ男確定です。

 そうは言っても、ソロ男を好きになってしまう時もある。付き合った後で、ソロ男だったということが往々にしてあるわけですね。そうなった時、簡単なのはあきらめること。世の中の半分以上はソロ男じゃないのに、なぜそこに行くのか、という話じゃないですか。そうなる前に、早めに3つのことを質問したり、観察して、ソロ男なのかを見極めることをおすすめします。

――“ソロ男的な女性”というお話が出てきましたが、“ソロ女”も増えているのでしょうか?

荒川 本を読んでいて、こういう女性いるいると思いませんでしたか? 我々の周りや、映像プロダクションに勤めている女性のディレクターやプロデューサー、ウェブのプログラマーなど、わんさかいますよ。「わたしのことかと思った」と言われたこともありましたね。「もはやソロ男じゃん」みたいな(笑)。

 職業別の生涯未婚率を見ると、女性の場合、芸術家やデザイン業などは24%、広告業は27%、映像、広告、新聞業に至っては34%です。男性も、これらの職業は生涯未婚率が高いです。なお、家事手伝いなんてやってる子は、ほぼみんな結婚しますよ。

■結婚していないから昇進できない“ソロハラ”

――荒川さんは、40歳を過ぎて未婚でいることで、生きづらいと思ったことはありますか?

荒川 男は結婚して一人前だといっているガラパゴスな人たちが、世の中には本当にたくさんいますからね。「俺は世の中のことを柔軟に見ているんだ」とか言いながら、そういう人に限って、「結婚もできない奴は人間的に欠陥がある」と言うわけですよ。うちの会社は、個人的なプライバシーについては侵入してきませんが、インタビュー調査によると、「お前、結婚してないから課長への昇進ナシな」ということを平気で言われる会社もあるみたいですよ。

 女性に対して、「結婚しないの?」はセクハラになりますよね。同様に、男性に対して、「独身でいるうちは半人前だから昇進ナシ」というのも問題だと思うんです。“ソロハラ”です。そんな人たちには、考え方を変えてもらいたいんですけど、なかなか変わらないでしょうね。彼らは「ソロ男は所詮変わり者だからさ」という一言で片付けるんですよ。まっとうではない、とハナから拒絶してしまうんです。

 彼らは「結婚して、子どもを持って、家族を養ってこそ一人前である」という価値感で人生を歩んでいます。自分が信じてきた価値観だから、崩されたくないんですよ。これまで家族のため、子どものために小遣い3万円、ランチは300円のかけそばだけで我慢し、それを美徳として生きてきた。それなのに、好きなことにお金を使って、ひとりで生きていきます~と楽しそうにするソロ男を認めたくないわけです。

■1万人いれば、1万通りの幸せの形がある

――結婚する、しない、どちらが幸せなんでしょう? 

荒川 〈結婚すべき/すべきじゃない〉とか、〈結婚したほうが幸せ/幸せじゃない〉とか、二択の話ではないと思うんですよ。1万人いれば、1万通りの幸せの形があります。それなのに、このルートが正しくて、このルートは間違っていると決めてしまうのは、おかしいような気がします。「結婚することが幸せ」というなら、「結婚して離婚した人はどうなの?」という話になりますよね。今や3組に1組は離婚しているんです。

 幸せの形は多様だと思うし、結婚して、子どもを持って、家族で暮らすという従来の形が幸せと感じる人もいるでしょう。それは否定されるものではありません。けれど、それだけが幸せの形じゃないし、みんながみんなそれを目標にしなくてもいいと思うんです。それとは別に、ずっとひとりだけれども、趣味を楽しんで仲間といたり、旅行へ行ったり、そんなひとりで生きていくことも幸せの形なんです。それをはたから見て、「孤独だね、寂しいね、孤独死するよ」と決めつけることが大きな問題なんです。確固たるものを持っていれば、人が何を言おうと、それが幸せの形です。

 そういう人同士が付き合って、「ちょっとだけ一緒にいようか」って始まった関係が、「おじいちゃん、おばあちゃんになっても一緒にいたね」という結果論も人の幸せですよ。もっといえば、途中で子どもが生まれたので「結婚しようか」という人も、いるかもしれないですよね。人の幸せには、いろんな道があると思いますよ。
(上浦未来)

荒川和久(あらかわ・かずひさ)
博報堂ソロ活動系男子研究プロジェクトリーダー。1963年生まれ。早稲田大学法学部卒業。博報堂入社後、自動車・飲料・ビール・食品・化粧品・映画・流通・通販・住宅など、幅広い業種の企業プロモーション業務を担当。プランニングだけではなく、キャラクター開発やアンテナショップ、レストラン運営も手がける。従来、注目されなかった独身男性生活者に着目し、2014年より「博報堂ソロ活動系男子研究プロジェクト」を立ち上げた。自らも「ソロ男」である。

結婚しないと一人前になれないのか? ソロ男が語る未婚男性への「ソロハラ」と幸せの多様性

hakuhodo_arakawa2_mini.jpg
博報堂ソロ活動系男子研究プロジェクトリーダー・荒川和久さん

(前編はこちら)

■ソロ男だけでなく、ソロ女も増えている

――職業以外で、ソロ男を見分けるにはどうしたらいいのでしょうか?

荒川和久さん(以下、荒川) 「束縛されたくない」「ひとりの時間を絶対に確保したい」「何かがあっても他人に頼らず、自分でなんとかする」。この3つの質問の答えが、全部オールイエスだったら、ソロ男度数が高いですね。中でも、3つ目の「自分でなんとかする」項目について、チェックしたほうがいいですね。不測の事態が起きた時が一番わかりやすいんですけれど、たとえば予測できないような何か事故が起きたとする。それをまず自分でどうしようかと先に考えようとする人なのか、「どうすればいい?」と先に誰かに連絡したり、相談しようとするのか。先に自分でなんとかしようとする人は、ほぼソロ男確定です。

 そうは言っても、ソロ男を好きになってしまう時もある。付き合った後で、ソロ男だったということが往々にしてあるわけですね。そうなった時、簡単なのはあきらめること。世の中の半分以上はソロ男じゃないのに、なぜそこに行くのか、という話じゃないですか。そうなる前に、早めに3つのことを質問したり、観察して、ソロ男なのかを見極めることをおすすめします。

――“ソロ男的な女性”というお話が出てきましたが、“ソロ女”も増えているのでしょうか?

荒川 本を読んでいて、こういう女性いるいると思いませんでしたか? 我々の周りや、映像プロダクションに勤めている女性のディレクターやプロデューサー、ウェブのプログラマーなど、わんさかいますよ。「わたしのことかと思った」と言われたこともありましたね。「もはやソロ男じゃん」みたいな(笑)。

 職業別の生涯未婚率を見ると、女性の場合、芸術家やデザイン業などは24%、広告業は27%、映像、広告、新聞業に至っては34%です。男性も、これらの職業は生涯未婚率が高いです。なお、家事手伝いなんてやってる子は、ほぼみんな結婚しますよ。

■結婚していないから昇進できない“ソロハラ”

――荒川さんは、40歳を過ぎて未婚でいることで、生きづらいと思ったことはありますか?

荒川 男は結婚して一人前だといっているガラパゴスな人たちが、世の中には本当にたくさんいますからね。「俺は世の中のことを柔軟に見ているんだ」とか言いながら、そういう人に限って、「結婚もできない奴は人間的に欠陥がある」と言うわけですよ。うちの会社は、個人的なプライバシーについては侵入してきませんが、インタビュー調査によると、「お前、結婚してないから課長への昇進ナシな」ということを平気で言われる会社もあるみたいですよ。

 女性に対して、「結婚しないの?」はセクハラになりますよね。同様に、男性に対して、「独身でいるうちは半人前だから昇進ナシ」というのも問題だと思うんです。“ソロハラ”です。そんな人たちには、考え方を変えてもらいたいんですけど、なかなか変わらないでしょうね。彼らは「ソロ男は所詮変わり者だからさ」という一言で片付けるんですよ。まっとうではない、とハナから拒絶してしまうんです。

 彼らは「結婚して、子どもを持って、家族を養ってこそ一人前である」という価値感で人生を歩んでいます。自分が信じてきた価値観だから、崩されたくないんですよ。これまで家族のため、子どものために小遣い3万円、ランチは300円のかけそばだけで我慢し、それを美徳として生きてきた。それなのに、好きなことにお金を使って、ひとりで生きていきます~と楽しそうにするソロ男を認めたくないわけです。

■1万人いれば、1万通りの幸せの形がある

――結婚する、しない、どちらが幸せなんでしょう? 

荒川 〈結婚すべき/すべきじゃない〉とか、〈結婚したほうが幸せ/幸せじゃない〉とか、二択の話ではないと思うんですよ。1万人いれば、1万通りの幸せの形があります。それなのに、このルートが正しくて、このルートは間違っていると決めてしまうのは、おかしいような気がします。「結婚することが幸せ」というなら、「結婚して離婚した人はどうなの?」という話になりますよね。今や3組に1組は離婚しているんです。

 幸せの形は多様だと思うし、結婚して、子どもを持って、家族で暮らすという従来の形が幸せと感じる人もいるでしょう。それは否定されるものではありません。けれど、それだけが幸せの形じゃないし、みんながみんなそれを目標にしなくてもいいと思うんです。それとは別に、ずっとひとりだけれども、趣味を楽しんで仲間といたり、旅行へ行ったり、そんなひとりで生きていくことも幸せの形なんです。それをはたから見て、「孤独だね、寂しいね、孤独死するよ」と決めつけることが大きな問題なんです。確固たるものを持っていれば、人が何を言おうと、それが幸せの形です。

 そういう人同士が付き合って、「ちょっとだけ一緒にいようか」って始まった関係が、「おじいちゃん、おばあちゃんになっても一緒にいたね」という結果論も人の幸せですよ。もっといえば、途中で子どもが生まれたので「結婚しようか」という人も、いるかもしれないですよね。人の幸せには、いろんな道があると思いますよ。
(上浦未来)

荒川和久(あらかわ・かずひさ)
博報堂ソロ活動系男子研究プロジェクトリーダー。1963年生まれ。早稲田大学法学部卒業。博報堂入社後、自動車・飲料・ビール・食品・化粧品・映画・流通・通販・住宅など、幅広い業種の企業プロモーション業務を担当。プランニングだけではなく、キャラクター開発やアンテナショップ、レストラン運営も手がける。従来、注目されなかった独身男性生活者に着目し、2014年より「博報堂ソロ活動系男子研究プロジェクト」を立ち上げた。自らも「ソロ男」である。

「結婚しなくてもいいが、子どもは欲しい」もはやマイノリティではない、未婚男性“ソロ男”の生態

<p> 「結婚できない」ではなく、「結婚しない」を選択する時代が、もうやってきている。「国立社会保障・人口問題研究所」によれば、日本人の男性未婚率は2010年で20.1%、2035年には30%近くまで増えると予想されている。</p>