「それはセクハラです」と声を上げ続けるしかない 刑法改正による強姦罪の厳罰化

 芸能人の強姦事件から職場のセクハラまで、女性の性的な被害が話題にならない日はない。なぜ被害はなくならないのか? セクシャルハラスメントの問題に詳しい太田啓子弁護士に話を聞く。今回は、刑法改正による強姦罪の厳罰化について解説してもらった。

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■相手の不快感に気づかない鈍感さ、無神経さこそが問題

――セクハラでも、裁判は個別の判断ですから、判決もバラバラの印象があります。

太田啓子弁護士(以下、太田) 司法試験の科目に「ジェンダー」はありませんし、ロースクールでも、司法試験に合格した後に通う司法研修所でも、ジェンダーバイアスの問題を勉強することが必須ではないはずです。ですから、裁判官によって、かなり個人差があるというのが正直なところかと思います。

 法律関係者も、必ずしも、社会内にあるバイアスから自由ではないですから。とにかく根本的には、社会全体で、性暴力とはどういうものか? とか、意に反する性暴力であっても、どうして明確に拒否できないことがあるのか? などの理解が深まらなければいけないとずっと考えています。

――実際には女性の意思には反していたのに、「女性は合意していた」と男性側は思う――というようなことが、どうして起きるのでしょうか?

太田 こういう認識のギャップは、加害者側の「認知の歪み」という言い方が当てはまるかと思いますが、本当にどうして、このシチュエーションで、相手の女性が合意していたとあなたは思えるのか? と感じることがあります。

――「無理やりの強姦」ではなくて、「合意の上でのセックス」と思ってしていた、ということですね。

太田 そうです。

――でも、女性の側は「合意ではなかった」と反論しますよね?

太田 はい。私は、過去に何度か「合意していない」と主張する被害者の代理人を務めていますが、加害者は「セックスなんかしてない!」と反論するかと思いきや、「合意してたじゃないか!」と主張するわけですね。しかし「なぜ彼女が合意してたとあなたは思えるの?」と、呆れることは本当に多いです。

 こういう認識のギャップについては、牟田和恵先生(大阪大学大学院教授)の『部長、その恋愛はセクハラです!』(集英社新書)に大変詳しく解説されていますので、是非お勧めしたいのですが、本当に多くのケースで、男性は「彼女も合意していたはず」だから、「強姦ではない」と言うんですね。そして、そう考えた理由を問うても、よくわからない答えしか返ってこなかったりします。

 たとえば、ある女性新入社員が、職場での歓迎会の帰りに、男性上司に「送る」と言われ、断ってもしつこく「送る」と言うので、やむを得ず上司と一緒に歩き、たまたま一番近道だからという理由で公園を通ったところ、上司のほうは「人気のない公園をわざわざ歩くなんて、俺に気があるんだな」と感じ、彼女にキスをしたと。彼女は嫌だったけれど、上司に強くは抵抗できずにいたところ、上司は「これはいける」と思い込み、その後も頻繁に誘うなど、行為をエスカレートさせていった……など。

 こういう、当事者の認識のギャップの大きさは、本当に驚くほどです。

――男性側に、悪気はないということですね。

太田 そういうことでしょうね。嘘をついているという自覚ではなく、本気で「相手が嫌がっているとは思わなかった」と言っているのだろうと思うことも、よくありますよ。しかし問題は「嫌がっているとは思わなかった」こと自体だと思うのです。相手の不快感に気づかない鈍感さ、無神経さこそが問題です。

 しかし裁判で「合意がなかったこと」とか、「女性が嫌がっていることを男性側が認識していたかどうか」を立証するのは、とても難しいのです。女性はかなりの勇気を振り絞って被害届を出しているのに、法廷で主張が認められないことも多く、さらに傷ついてしまいます。声を上げてもムダだと思って泣き寝入りしている女性は、かなり多いと思います。

■明治以来の刑法大改正で強姦罪も厳しく

――刑法は、どのように改正されるのですか? 来年の通常国会で性犯罪規定に関する刑法改正案が提出される予定で、これは1907年(明治40年)制定以来、初の大規模改正といわれています。

太田 明治時代という、女性に選挙権も被選挙権もない時代に作られた刑法の性犯罪規定が、戦後70年以上改正されずに生きていたというのは、冷静に考えれば、あってはならないことだったのではないでしょうか。男性の被害もありますが、しかし圧倒的に性犯罪の被害を受けやすいのは女性です。その女性の経験値や意見を反映しないで作られた刑法で、今まで性暴力は裁かれてきたということに、改めて怒りを覚えます。

 明治時代、女性は一人前の権利主体ではなく「男性の付属品」「所有物」のような扱いでした。性犯罪も、個人の性的自由を侵害する犯罪というより、社会の風紀を乱す犯罪というようなところを重視していたのではないでしょうか。条文の位置が、殺人罪や窃盗罪などの個人的法益を害する犯罪群のところではなく、前後に賭博罪や偽証罪などがある、社会的法益を害する犯罪群のところにあったりしますしね。

また、強姦罪と強制わいせつ罪で法定刑が違うのは、妊娠という結果を招く危険性がある犯罪のみを特に強く罰するという発想なのでしょうから、被害者本位の規定ではありません。

 現行の強姦罪(第177条)は「暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、3年以上の有期懲役に処する。13歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする」としていて、ここでいう「姦淫」とは「膣内に陰茎を入れること」だけを指します。膣内に大人のオモチャのような異物を入れることや、陰茎を挿入するのが肛門とか口であれば、「強姦罪」ではなく「強制わいせつ罪」、つまりより法定刑が低い犯罪類型に該当するということになってきました。

 しかし、被害者側からみれば、いずれも同じくらいに尊厳を傷つけられ、性的自由の侵害の程度は変わりませんよね。「膣じゃなくて肛門だったから、まだよかった」とは、普通は感じないのではないでしょうか?

 法務省の法制審議会(刑事法〈性犯罪関係〉部会)が何回か検討を重ねて、平成28年6月の審議会議事録資料として、「要綱(骨子)修正案」が公表されています。

 今回の改正案では「被害者の肛門内又は口腔内に陰茎を入れること」と、「行為者又は第三者の膣内、肛門内又は口腔内に被害者の陰茎を入れる行為」も「強姦罪」として処罰するという内容が盛り込まれ、肛門性交や口腔性交、いわゆるアナルセックスとフェラチオを強要することも「強姦罪」に入るという内容です。こういう内容ですので、被害者が男性の場合であっても、肛門性交や口腔性交を強いられた場合には「強姦罪」での処罰が可能となります。法制審議会(15年11月)では、「いわゆる肛門性交及び口淫は陰茎の体腔内への挿入という濃厚な身体的接触を伴う性交渉を強いられるものであって、姦淫と同等の悪質性、重大性がある」と説明されています。

■先輩方が声を上げてきたのは、無駄ではなかった

――確かに、悪質性でいえば同じですね。「今さら」感もなくはないですが、前進はしているのですね。

太田 はい。国際的に見て、まだ遅れているところはありますが、これからも実態に合わせて法整備を進めていければと思います。

 外国の例を見ると、たとえばフランスの刑法では、強姦罪で刑が加重される場合として「被害者に対して権限を行使できる立場にある者によってなされた強姦」とか「職業上の権限を付与された者がその権限を濫用することによって行った強姦」というのがあるそうです。現場では、まさに上下関係がある人間関係でにおいてこそ、被害者が強く拒否できず、それに乗じて性暴力が行われていることが多いわけですから、これは非常に現状に即していると思いました。

 ほかにも参考にしたい外国の規定はいろいろありますが、どれくらいうまく運用できているかなどは私もまだ不勉強です。それぞれを参考にしつつ、日本の規定も前進させていってほしいと思います。

――少しずつでも進めばいいですね。こうしてみると、セクハラの被害は減らないようでいても、30年前よりは20年前、20年前よりは現在のほうが改善されてきています。

太田 今まで私たちの先輩方が声を上げてきたのは、無駄ではありませんでした。セクハラ被害をゼロにするために、これからも繰り返し声を上げていきたいと思っています。

 あとは、教育も重要ですね。私にも2人の息子がいるので、子ども向けのアニメで脈絡なく女の子の入浴シーンが出てきたり、スカートの中をのぞきかけて女の子に怒られてもへらへらニヤニヤとしか謝らないような場面が出てくると、「こういうのは絶対ダメなんだよ! 女の子はすっごく嫌なのを、わかっておくように」と話すようにしています。子どもたちもわかってきていて、テレビでそういう場面があると、先手を打って「ママ、アレはダメだね」と言うようになっています(笑)。
(蒼山しのぶ)

太田啓子(おおた・けいこ)
国際基督教大学卒業、2002年に弁護士登録。「神奈川県弁護士会」「明日の自由を守る若手弁護士の会」所属。主に家族関係、雇用関係、セクハラ、性犯罪問題などを取り扱う。「怒れる女子会」や「憲法カフェ」などの活動を通じて、セクハラや憲法改についての問題提起も続ける。

相手がセックスに合意していたと思ったから無罪? 強姦罪の立件が難しい理由

 芸能人の強姦事件から職場のセクハラまで、女性の性的な被害が話題にならない日はない。なぜ被害はなくならないのか? セクシャルハラスメントの問題に詳しい、太田啓子弁護士に話を聞く。今回は、高畑裕太の強姦致傷罪での不起訴について解説してもらった。

(第1回はこちら)

■被害女性を傷つける、示談後の紛争蒸し返し

――セクハラ被害が問題になるたびに、男性側の勘違いがあらわになるケースも多い気がします。

太田啓子弁護士(以下、太田) たとえば9月に強姦致傷罪の容疑で逮捕・勾留されていた俳優が不起訴になりましたが、彼の弁護人のコメントには、かなり違和感がありました。

 示談成立について、弁護人側は検察官には伝えなくてはなりませんが、メディアへあのように発表することの是非には議論があると思いますね。ずいぶん報道されましたから、被疑者の名誉を少しでも回復しようという意図ではあったのでしょうし、その考え方自体はわかります。それにしても、内容については、問題が多かったと考えています。

――具体的には、どこが問題だと感じましたか?

太田 「知り得た事実関係に照らせば、高畑裕太さんの方では合意があるものと思っていた可能性が高く」とか、「違法性の顕著な悪質な事件ではなかったし、仮に、起訴されて裁判になっていれば、無罪主張をしたと思われた事件であります。以上のこともあり、不起訴という結論に至ったと考えております」、要は、別に悪いことをしたわけではないのだ、というような認識を示談後に発表するのは、被害申告を受けた女性を傷つけるものだろうと非常に気になっていました。

 そもそも、こういう場合の示談とは、事実関係についての認識のギャップを踏まえつつ、「それでもまあ、お互いに紛争を早期解決することを重んじて、認識の違いはこれ以上言わないことにして終わりにしましょう」というものなので、一方のみの事実関係についての認識を公に発表するのでは、紛争の蒸し返しのようなことになってしまいます。蒸し返したら他方から反論もあり得ますので、紛争が収束しませんよね。示談後の紛争蒸し返しというのは、弁護士としては通常、最も避けようとすることなので驚きました。

 そのため、数日後に「あの弁護人コメントは女性の承諾を得ているのだろうか」とブログに書いたりもしたのですが、当時は被害女性側の声は何も聞こえてきていなかったこともあり、弁護士仲間同士では、「もしかしたら、ああいう内容をメディアに発表してもよい、という承諾を女性側から得た上で、その分、ある程度高額な示談金で示談した可能性もあるのかもしれないね」などという臆測もしていました。めったにないことではありますが、もしも女性側が承諾している範囲の「蒸し返し」であるなら、まあ、いいのかも、と思わなくもなかったのです。

■「合意の上のセックス」って、なぜ思えるの?

――女性は、あの弁護人のコメントの発表を承諾していたのでしょうか?

太田 後に被害女性が「週刊現代」(講談社)の取材に応じて話したという内容(第1回第2回)が出てきましたね。これの記事によると、あの弁護人コメントの内容を、被害女性側は事前に知らされていなかったということです。ひどいと思いました。これでは、弁護人によるセカンドレイプだと思いますね。

 弁護人コメントの内容に戻りますが、「合意があるものと思っていた可能性が高く」「違法性の顕著な悪質な事件ではなかったし、仮に、起訴されて裁判になっていれば、無罪主張をしたと思われた事件」というところは、「本当は無罪主張をしたいが、諸事情から示談で事件を早期に終結させることとした。そもそも性的関係について合意があるものと思っていたのであるから、仮に有罪と認定されるとしても違法性は低く、悪質とはいえない」ということのようです。

 性的関係があったこと自体は双方に争いはない(事実として認める)が、加害者とされる方が「相手の合意があると思っていた」場合、それは「無罪」あるいは「違法性が低い」となるという一般的知見があるかのごとく言い切っているのが、弁護人コメントに対して感じる最大の違和感です。

 必ずしも、「無罪」あるいは「違法性が低い」とは言いきれないはずです。「合意があると思った」としても、そのことにそれなりに合理性はあるということでないと、「故意はない」とか「行為態様の悪質さは低い」とは言えないはずです。

――「合意があると思った」ことについての合理性に疑問を感じるというのは、たとえばどういうところでしょうか?

太田 前提として、犯罪は原則的に「故意」がなければ成立しません。「故意」とは、「わざと、その行為をしようとする」ことなので、強姦罪でいう「故意」とは、相手が同意していないのを知っていながら「わざと」性交しようとする意思です。なので、「相手の同意があると思って性交した」場合には、「故意がない」から「強姦ではない」という理屈になってしまうんですね。

 殺人罪を例にお話ししますと、「確かに自分は、鋭利な刃物で相手の頸動脈付近を突き刺した。でも、それは殺害行為ではないと思っていたので、殺人罪の故意はない」という主張を聞いたら、「そんなの不自然すぎる、あり得ない」と思いますよね。「殺害行為はしていない」と思ってさえいれば、すなわち「故意がない」とはならないわけです。

 強姦罪についても同様です。「相手が合意していたから、強姦行為はしていないと思っていた。だから強姦罪の故意はない」という主張は、理屈上はあり得ます。

 そのとき問われるのは「相手が合意していたと思った」という認識をどこまで、平たく言えば「あり得る」と認定するかどうかです。「よくそのシチュエーションで、相手が性的関係に合意してると思ったって言えるよね?」ということは、実務(実際の案件)ではよく出合う「加害者」の言い分です。

――具体的にお話しいただけますか?

太田 たとえば、路上で見知らぬ女性を拉致して車の中に連れ込み、人けのない山中に連れて行って性的行為をしたという場合、加害者側が「相手の女性は嫌がるそぶりもなく、自分との性的行為に同意していた。だから強姦じゃない」と言ったとしたら、さすがに一斉に「それはないだろう」と、みんな突っ込むと思うんです。

 ですが、もともと面識のある間柄だったらどうでしょうか? たまたま2人きりになる場面があって、そこで性的関係があったら? 男性上司が女性部下の自室に入って、そこで性的関係があったら? 女性部下は「『何もしない。一緒に酒を飲もう』と言われたから入れただけで、性的関係なんて合意していなかった」と言い、男性上司は「家に入れてくれて2人きりになった時点で、性的関係には合意があると思った」と言ったら? もともと知り合いではなかったけれど、急に親しく接近したように見える事情があったら? だんだん、「合意があったと思っても無理はない」という意見も出てきそうですよね。

■面識がある人間関係で起きた強姦については、なかなか立件してもらえない

――「高畑事件」でも、「加害者側」と「被害者側」の言い分が、かなり食い違っているようです。

太田 実際に犯罪が成立するような事実があったかどうかは、私も直接証拠などを見ていない以上、あまり推測であれこれ言うべきではないと思っています。

 ただし、争いがない事実(証拠により容易に認定できる事実)として、当日まで両者には全く面識がなく、ビジネスホテルの従業員とその客として偶然接点があっただけであること、現場は女性の勤務先であること、女性は勤務時間中かあるいは勤務を終えた直後の時間帯であること 女性が直後に被害を届け出ている、という点があるとはいえますよね。

 そのような、面識を得て間もない男女間で、女性の勤務先において、女性の勤務時間中か、それに近接する時間帯に、合意のある性的関係があったと加害者が思ったことにも合理的事情がある(=強姦罪の「故意」があるとはいえない)と判断するためには、いろいろな具体的事情がなければならないのではないかとは感じます。

――「合意があったはずだ」「いや、合意なんてしていなかった」と言い分が食い違ったときは、どう判断すればいいのでしょうか?

太田 性的関係に至る経過や両者の人間関係(上下関係があって、「被害者」側が真意に基づく言動をできなかった可能性など)を、詳細に把握し検討する必要があると考えています。

 しかし、その認定の過程には、男女関係についてのいろいろなバイアスが、実際問題入ってきます。たとえば「いやよいやよも好きのうち」というバイアスを検察官も持っていたら、「まあ、女性も、『いやよ、やめて』とは言ったようだが、それは文字通りイヤという意味ではなかったかもしれないし、男性側がそう考えても無理もない」と捉えて「合意があったと考えたことにもそれなりに合理性はあるから、故意があったとは言い切れない、嫌疑不十分」と判断する可能性はあるかもしれません

 現実問題、実務では、もともと面識がある人間関係で起きた強姦について被害届を出しても、なかなか立件してもらえないという感覚が正直ありますね。加害者側が「確かにセックスしたけど、向こうも合意してましたよ」と言うことが多いのでしょう。厳密な法律用語ではありませんが、よく「合意の抗弁」と言います。
(蒼山しのぶ)

(第3回につづく)

太田啓子(おおた・けいこ)
国際基督教大学卒業、2002年に弁護士登録。「神奈川県弁護士会」「明日の自由を守る若手弁護士の会」所属。主に家族関係、雇用関係、セクハラ、性犯罪問題などを取り扱う。「怒れる女子会」や「憲法カフェ」などの活動を通じて、セクハラや憲法改正についての問題提起も続ける。

おばさんの胸なら触っても問題ない? 性暴力の実態からかけ離れている法の不備

 芸能人の強姦事件から職場のセクハラまで、女性の性的な被害が話題にならない日はない。なぜ被害はなくならないのか? セクシャルハラスメントの問題に詳しい太田啓子弁護士に話を聞く。今回は、今年6月に不起訴になった、茨城県八千代町の大久保司(まもる)町長の「セクシャルハラスメント疑惑」を解説してもらった。

■人前で他人の胸をもんでも不起訴!

――現在でも毎日のように女性の性的な被害が報じられています。なぜセクハラの被害はなくならないのでしょう?

太田啓子弁護士(以下、太田) 理由はいくつもあると思いますし、男性が被害者の場合もありますが、やはり大きく言うと、「男女差別構造」と「男女の認識の差」の存在です。最近特に覚えているひどい例として、茨城県八千代町の大久保司町長の「セクシャルハラスメント疑惑」がありました。

 町長が加害者として告訴・告発されたのは2件です。2014年夏に、八千代町内の温泉施設で行われた歌謡ショーで、客席にいた50代の女性の胸をつかんだというのが1件目で、15年4月に歌謡ショーのステージ上で、出演者の60代の女性歌手の胸元に手を入れたというのが2件目の疑惑です。警察は、1件目は「強制わいせつ罪」、2件目は「県迷惑防止条例違反の疑い」として書類送検したのですが、検察は嫌疑不十分として不起訴にしました。

 特に驚いたのは2件目なのです。2件目はステージ上で大勢の観客の前で行われたもので、目撃者は多数いますし、その場面の写真もあるんですね。町長が女性歌手の着物の胸元を手で開いているような画像が、被害者とされる女性の提供としてテレビに流れ、インターネットで今でも見られます。その女性によると、着物の胸元に紙幣をねじ込むようなことをされたそうなのです。

――なぜ不起訴になったのですか?

太田 まず1件目ですが、現行の刑法の強制わいせつ罪(第176条)は、「13歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする」としています。

 16年6月8日付茨城新聞によると、1件目のケースに関して水戸地検の竹中理比古(よしひこ)次席検事は、「事実を認定するに足る証拠が得られなかった」と述べたそうです。これだけでは、どの事実の存在を認定できなかったのか、はっきりはわかりませんね。

 13歳以上の男女に対する「強制わいせつ罪」が成立するためには、(1)「暴行又は脅迫」の存在(2)「わいせつな行為」の2つの条件を充足する必要がありまして、(2)はあっても(1)がないと、犯罪は成立しないのです。

 ですから、実務では、被害者から見たら性的被害自体はあったとしても、「それでは強制わいせつ罪でいうところの『暴行又は脅迫』があったとはいえないんじゃないか」ということで(1)を満たさず嫌疑不十分、ということもあり得ます。本件もそうであった可能性があるかもしれませんが、情報が乏しく、これ以上はわからないですね。

 つまり、「暴行又は脅迫」を手段にしないで、違う手段を利用して「わいせつな行為」をしたとしても、それは現行法では「強制わいせつ罪」には問われないのです。

 フランスの刑法には「性的攻撃罪」というのがあるそうなのですが、その定義は「暴力、強制、脅迫又は不意打ちをもって行うすべての性的侵害」だそうです。これを見て、ああ、そうそう、「不意打ち」を利用する性的加害っていうのもあるよね、こうでなくては、と思いました。

 被害者の意思に反して体に性的に接触するなんて、それ自体が被害者の性的尊厳を傷つけるものですよね。「暴行又は脅迫」を手段にしなくても、そういう性的接触は可能なわけです。たとえば「不意打ち」でやるとか、人間関係上優位にあることを利用するとか。

 そういう実態を踏まえていない今の刑法では、「暴行又は脅迫」を手段にしない性的加害は「強制わいせつ罪」に該当しないことになってしまっている。つまりは「暴行又は脅迫」を手段にするもののみに限定している法律に不備があるのです。刑法の性犯罪関連規定の改正案が、来年通常国会に提出される予定で、十分ではなさそうですけれども、でも、少しはよくなることを期待しています。

■おばさんの胸を触っても、わいせつではない?

――2件目については、どうして不起訴になったのでしょうか?

太田 茨城県の「公衆に著しく迷惑をかける行為の防止に関する条例」2条には、公共の場所で、「人を著しく羞恥させ、又は人に著しく嫌悪の情を催させるような方法で」「衣服等の上から、又は直接他人の身体に接触」してはならない、という規定がありまして、電車内の痴漢もこれに該当する立件が多いですけど、2件目もこの規定に該当するのではないかということで警察は書類送検しました。

 ところが検察は不起訴にし、その理由を報道で見て、ひどいと思いました。前出の茨城新聞によると、竹中次席検事は「外形的事実は認められるが、ステージ上、大勢の観客の面前で行われ、性的色彩は薄く、被害者を著しく羞恥させ、著しく嫌悪の情を催させると評価するのは困難」と述べたそうです。

――「外形的事実は認めた」ということは、町長が女性の胸を触ったという事実があったことは検察も認めたのですよね?

太田 そうです。

――それなのに、どうして嫌疑不十分ということになったのでしょうか?

太田 「ステージ上、大勢の観客の面前で行われ、性的色彩は薄く、被害者を著しく羞恥させ、著しく嫌悪の情を催させると評価するのは困難」と検察は説明していますね。これを聞くと、「ステージ上、大勢の観客の面前で行われた」ことが「性的色彩は薄く被害者を著しく羞恥させ」たとはいえないことの理由になっています。

 いや、逆でしょう。大勢の人の前で胸元に手を入れられたなんて、むしろ被害者の羞恥心は強い理由になるはずです。いったいどういう思考回路なんでしょうか? 検察は大勢の人の前で女性の胸を触ったことを認定したのに、そして触られた被害者は刑事処罰を求めたのに、それでもなんの犯罪も成立しないと検察としては考えました――なんて、おかしすぎるでしょう。

――たぶん加害者としては、加害の意識はなく、「ふざけただけ」ということなんですよね。被害者も60代なので、「おばさんの胸だし、いいじゃん」というようなところがあったのかと思います。

太田 そうですね。実際、一般的に「若くはない」女性の性被害も結構あるわけですが、そういう場合、加害者は「もうおばさんなんだから、いいじゃん別に」みたいに思ってるんだなと感じることも結構あるんです。本件でも、そこのところ、加害者の言い分に、検察がそのまま乗ってしまったんじゃないのかという気がしています。

 もし相手の女性が「ミス茨城」「ミス八千代」みたいな、若くきれいな女性だったら、町長は同じことをしていたでしょうか? 少なくとも、全く同じことはしなかったんじゃないかという気がするんです。また、検察も、その行為は「性的色彩は薄い」と判断したでしょうか?

 その女性のことを「おばさん」だと思ってたから、加害者はこの行為に及んだし、検察も「まあ、性的色彩は薄いよね」と考えたんじゃないでしょうか?

 つまり「人前で、もう若くないおばさんの胸を触ったって、誰もわいせつだなんて思わない」みたいな発想が、加害者にはあったでしょうし、あろうことか、検察もそう考えたから「性的色彩は薄い」なんて言えたんじゃないでしょうか。言葉ではっきりはもちろん出てきませんでしたけど、「若い女の子の胸しか、俺らの性的欲求の対象にはならないし」というのを、加害者と検察が暗黙に共有してたんじゃないかという気がしました。

■法律のあり方が、性暴力の実態からかけ離れている

――本件で「性的色彩は薄い」というのは、本当によくわかりません

太田 「ステージ上、大勢の観客の面前で行われ」たから「性的色彩は薄い」って、「ショー的だった」ということなのかなと思うんですが、そんな「ショー」に女性は同意なんてしておらず、いきなり触られたわけです。それなのに「性的色彩は薄い」とは、ちょっと信じがたい発想ですね。

 あまりに信じがたいので、被疑者が町長という立場にあったことに「配慮」したのかなと思ってしまいますね。そういうのも、少しあったのかもしれません。あってはならないことですが。

 いずれにせよ、本当に被害者本位の法律運用ではないとも感じました。何歳になったって、いきなり人前で胸を触られるなんて、嫌に決まってるじゃないですか。やはり法律運用者が十分に性暴力の本質を理解しなければ、きちんと性暴力を裁くことはできないと、つくづく思いました。

――そもそも、2件目は「強制わいせつ罪」ではなく「迷惑防止条例違反」の容疑だったというのも、考えてみたら、よくわからないのですが。

太田 強制わいせつ罪の成立要件である「暴行又は脅迫」が認められないから、ということではないかと思います。

 2件目は、突然胸元に手を入れるという、まさに「不意打ち」で性的接触をしたということではないかと思うのですが、そういうのを「暴行又は脅迫」がないから「強制わいせつ罪」にはそもそも該当しない、という法律のあり方が、性暴力の実態からかけ離れていると考えています。
(蒼山しのぶ)

(第2回につづく)

太田啓子(おおた・けいこ)
国際基督教大学卒業、2002年に弁護士登録。「横浜弁護士会」「明日の自由を守る若手弁護士の会」所属。主に家族関係、雇用関係、セクハラ、性犯罪問題などを取り扱う。「怒れる女子会」や「憲法カフェ」などの活動を通じて、セクハラや憲法改正についての問題提起も続ける。

セクハラで退職した女性3人の悲劇! 被害に遭った場合の対処法とは?

 昨年のクリスマスに自殺した「東大卒で電通勤務」という鉄板のエリート女性社員について、この9月末に東京・三田労働基準監督署が「自殺の原因は長時間労働による精神障害」として労災認定したことが波紋を呼んでいる。女性は当時24歳、過労でうつ病を発症しており、パワハラやセクハラの被害を受けていた可能性も指摘されている。 

■今でも「セクハラは泣き寝入り」がほとんど

 自殺するほどではなくとも、セクハラ、パワハラの横行は日本では珍しくない。筆者の知り合いの20代の女性編集者も、今年だけで3人が退職した。それぞれ都内や近県の中堅出版社に正社員として勤務していたが、深刻なセクハラやパワハラに悩み、耐えてきた挙げ句の決断だった。

 いずれも在職中は社外の親友くらいにしか悩みを打ち明けられなかったといい、筆者も彼女たちの退職後にプライベートで会い、初めて聞かされた。

 事例としては損害賠償請求も可能と考えられるが、「時間もお金もかかる上に、プライベートのことを弁護士や裁判官など第三者に知られるのはつらい」「思い出すのも悲しい」「私がそんな目に遭っていたなんて、親に知られたくない」などの理由で、提訴をするつもりはないという。

 もうセクハラのことは一日も早く忘れたい――筆者も彼女たちの立場だったら、間違いなくそう考えるだろう。

■採用面接を担当していた総務課長から目を付けられたエミさん

 そのうちの1人、エミさんは、入社直後から採用面接を担当していた総務課長から、たびたび食事に誘われ、「面接の時からカワイイと思っていた」と言われるなど、「採用してやったオレに感謝しろ」と言わんばかりの態度が「キモすぎ」だったという。

 何かと理由をつけて2人だけの食事には応じないようにしていたら、「気に障った」ようで、急にパワハラを受けるようになった。あいさつしても無視され、仕事上の些細なミスなどで怒鳴られたり、エミさんの上司にまで文句を言われたりするようになった。しかし、上司も「課長はああいう人だから……」と自分に累が及ぶのを避けているのか、かばってはくれなかった。

 また、社内メールもチェックされているようで、総務課長はわざわざエミさんにだけ「著者へのメールは夕方までに送るように」と言ってきた。もちろん会社のメールアドレスなので管理職は読めるのだが、よほどの問題がない限り、個別の通信をチェックすることはないのではないか。

 その課長は他の若い女性社員にも同じようなことをしてきたのに、なぜかとがめられていない。それどころか、同僚の男性編集者たちは、辞めていくエミさんについて「この忙しい時に辞めるなんて……」「新人はこらえ性がない」などと言いたい放題だったという。

 現在は実家に戻り、求職活動をしながら、親に勧められて婚活をしている。

 「セクハラのトラウマで、まだ男性を信じられないところもあって、結婚はしばらくムリなんですけど、実家にいるのでお見合いくらいはしょうがないですかね」とエミさんは苦笑していた。

■エレベーターで部長にキスされそうになったミカさん

 同様に、入社時から、やたらと「ミカちゃん、カワイイ!」と連発するなれなれしい部長がいたが、「女子社員には、みんなに言うのだろう」「気のせい」と思うようにしていたミカさん。

 ある日、残業後に食事に誘われ、断り切れずに同行すると、ビールを飲みながら「次の本が売れたら、セックスしようか?」と直球で言われてドン引き。聞かなかったことにしてスルーしたら、帰りのエレベーターで2人きりになった時にキスされそうになった。 

 「酔っていたし、何かの間違いかも」と自分に言い聞かせたが、その時のイヤな気持ちが忘れられず、エレベーターに乗るのが苦痛になった。会社に行くのもつらくて常に気持ちが不安定になり、気がつくと勤務中にお菓子に手が伸びるようになった。

「別におなかはすいていないのに、食べずにはいられなかったんです」

 その結果、体重が10キロ以上も増えてしまい、仕事も手につかなくなった。このままではダメだと思い、退職して実家に戻った。

 両親が経営する商店の手伝いをしているうちに気持ちはだいぶ落ち着き、体重も戻ったと聞いたが、後日、筆者が「ミカさんも辞めちゃって、寂しくなりましたね」と同僚の男性編集者に言うと、「あの子はのべつまくなし食べていてキモかった。顔はカワイイのに残念」とイヤな顔をしていた。

■酒席でのセクハラの後にパワハラも受けたユリさん

 メディア業界には珍しく控えめな印象のユリさんは、幹部クラスにも人気があり、直属の上司である編集長とともに、よく酒席に誘われていた。しかし、酒席はセクハラがひどく、酔った幹部から胸などを触られることもあった。

「わりと名の通った会社に正社員で採用されて、親も喜んでいるので、辞めるなんてとんでもないことでした。でも、お酒の席だからガマンしようと思っても、イヤな気分になりますよね。それで酒席のお誘いを断るようにしたら、今度はパワハラで……」

 やはり些細なミスで叱責されたり、無視されたりするようになったという。朝起きると手が震え、なかなか起きられない。出勤が苦痛でたまらなくなり、心療内科へ。女性医師の対応がよかったために心が落ち着き、退職を決意した。現在も求職中だが、夫に支えられて平穏な日々を送っている。

 3人とも悩んだ挙げ句の決断だったが、形としては「自己都合退職」なので雇用保険の失業給付を受けられるまでに時間がかかり、給付制限もある。

「理不尽ですが、まあ授業料ですかね」

 3人とも、今ではそんなふうに笑う余裕も出てきているが、釈然としないものがある。彼女たちは家族や医師の支えもあって別の道を選ぶことができたが、そうはできない例も多いのではないか。

■相談窓口や弁護士に相談を

 女性の権利問題などに詳しい太田啓子弁護士は、「セクハラを受けた場合には、泣き寝入りしないで会社のセクハラ相談窓口や自治体の相談窓口(東京なら、東京都労働相談情報センターなど)に、すぐに相談することをお勧めします」と話す。

「弁護士への法律相談もためらわないでほしいです。月1回ですが、日本労働弁護団の『女性弁護士による働く女性のためのホットライン』という電話相談もあります。

 上司から2人きりの酒の席への誘いを受けた時など、本当は断りたいのに『上司だから』と不本意ながら行くことはありますよね。でも、誘ったほうは『合意』と解釈して、さらに親密な関係に持ち込もうとするんです。このような『感覚のギャップ』の存在を男性側がわかっていないことが、セクハラの問題の本質だと思います。『イヤよイヤよもいいのうち』なんて幻想ですからね。女性が本当に嫌がっているケースがほとんどです」(太田弁護士)

 セクハラを受けた場合、前述の3人のように、人に知られたり、被害を思い出すだけでもつらいと感じるのは想像に難くない。しかし、勇気を出して相談をする第一歩が、加害者の意識、ひいては社会の意識を変えることにもつながるのではないだろうか。
(蒼山しのぶ)

セクハラで退職した女性3人の悲劇! 被害に遭った場合の対処法とは?

 昨年のクリスマスに自殺した「東大卒で電通勤務」という鉄板のエリート女性社員について、この9月末に東京・三田労働基準監督署が「自殺の原因は長時間労働による精神障害」として労災認定したことが波紋を呼んでいる。女性は当時24歳、過労でうつ病を発症しており、パワハラやセクハラの被害を受けていた可能性も指摘されている。 

■今でも「セクハラは泣き寝入り」がほとんど

 自殺するほどではなくとも、セクハラ、パワハラの横行は日本では珍しくない。筆者の知り合いの20代の女性編集者も、今年だけで3人が退職した。それぞれ都内や近県の中堅出版社に正社員として勤務していたが、深刻なセクハラやパワハラに悩み、耐えてきた挙げ句の決断だった。

 いずれも在職中は社外の親友くらいにしか悩みを打ち明けられなかったといい、筆者も彼女たちの退職後にプライベートで会い、初めて聞かされた。

 事例としては損害賠償請求も可能と考えられるが、「時間もお金もかかる上に、プライベートのことを弁護士や裁判官など第三者に知られるのはつらい」「思い出すのも悲しい」「私がそんな目に遭っていたなんて、親に知られたくない」などの理由で、提訴をするつもりはないという。

 もうセクハラのことは一日も早く忘れたい――筆者も彼女たちの立場だったら、間違いなくそう考えるだろう。

■採用面接を担当していた総務課長から目を付けられたエミさん

 そのうちの1人、エミさんは、入社直後から採用面接を担当していた総務課長から、たびたび食事に誘われ、「面接の時からカワイイと思っていた」と言われるなど、「採用してやったオレに感謝しろ」と言わんばかりの態度が「キモすぎ」だったという。

 何かと理由をつけて2人だけの食事には応じないようにしていたら、「気に障った」ようで、急にパワハラを受けるようになった。あいさつしても無視され、仕事上の些細なミスなどで怒鳴られたり、エミさんの上司にまで文句を言われたりするようになった。しかし、上司も「課長はああいう人だから……」と自分に累が及ぶのを避けているのか、かばってはくれなかった。

 また、社内メールもチェックされているようで、総務課長はわざわざエミさんにだけ「著者へのメールは夕方までに送るように」と言ってきた。もちろん会社のメールアドレスなので管理職は読めるのだが、よほどの問題がない限り、個別の通信をチェックすることはないのではないか。

 その課長は他の若い女性社員にも同じようなことをしてきたのに、なぜかとがめられていない。それどころか、同僚の男性編集者たちは、辞めていくエミさんについて「この忙しい時に辞めるなんて……」「新人はこらえ性がない」などと言いたい放題だったという。

 現在は実家に戻り、求職活動をしながら、親に勧められて婚活をしている。

 「セクハラのトラウマで、まだ男性を信じられないところもあって、結婚はしばらくムリなんですけど、実家にいるのでお見合いくらいはしょうがないですかね」とエミさんは苦笑していた。

■エレベーターで部長にキスされそうになったミカさん

 同様に、入社時から、やたらと「ミカちゃん、カワイイ!」と連発するなれなれしい部長がいたが、「女子社員には、みんなに言うのだろう」「気のせい」と思うようにしていたミカさん。

 ある日、残業後に食事に誘われ、断り切れずに同行すると、ビールを飲みながら「次の本が売れたら、セックスしようか?」と直球で言われてドン引き。聞かなかったことにしてスルーしたら、帰りのエレベーターで2人きりになった時にキスされそうになった。 

 「酔っていたし、何かの間違いかも」と自分に言い聞かせたが、その時のイヤな気持ちが忘れられず、エレベーターに乗るのが苦痛になった。会社に行くのもつらくて常に気持ちが不安定になり、気がつくと勤務中にお菓子に手が伸びるようになった。

「別におなかはすいていないのに、食べずにはいられなかったんです」

 その結果、体重が10キロ以上も増えてしまい、仕事も手につかなくなった。このままではダメだと思い、退職して実家に戻った。

 両親が経営する商店の手伝いをしているうちに気持ちはだいぶ落ち着き、体重も戻ったと聞いたが、後日、筆者が「ミカさんも辞めちゃって、寂しくなりましたね」と同僚の男性編集者に言うと、「あの子はのべつまくなし食べていてキモかった。顔はカワイイのに残念」とイヤな顔をしていた。

■酒席でのセクハラの後にパワハラも受けたユリさん

 メディア業界には珍しく控えめな印象のユリさんは、幹部クラスにも人気があり、直属の上司である編集長とともに、よく酒席に誘われていた。しかし、酒席はセクハラがひどく、酔った幹部から胸などを触られることもあった。

「わりと名の通った会社に正社員で採用されて、親も喜んでいるので、辞めるなんてとんでもないことでした。でも、お酒の席だからガマンしようと思っても、イヤな気分になりますよね。それで酒席のお誘いを断るようにしたら、今度はパワハラで……」

 やはり些細なミスで叱責されたり、無視されたりするようになったという。朝起きると手が震え、なかなか起きられない。出勤が苦痛でたまらなくなり、心療内科へ。女性医師の対応がよかったために心が落ち着き、退職を決意した。現在も求職中だが、夫に支えられて平穏な日々を送っている。

 3人とも悩んだ挙げ句の決断だったが、形としては「自己都合退職」なので雇用保険の失業給付を受けられるまでに時間がかかり、給付制限もある。

「理不尽ですが、まあ授業料ですかね」

 3人とも、今ではそんなふうに笑う余裕も出てきているが、釈然としないものがある。彼女たちは家族や医師の支えもあって別の道を選ぶことができたが、そうはできない例も多いのではないか。

■相談窓口や弁護士に相談を

 女性の権利問題などに詳しい太田啓子弁護士は、「セクハラを受けた場合には、泣き寝入りしないで会社のセクハラ相談窓口や自治体の相談窓口(東京なら、東京都労働相談情報センターなど)に、すぐに相談することをお勧めします」と話す。

「弁護士への法律相談もためらわないでほしいです。月1回ですが、日本労働弁護団の『女性弁護士による働く女性のためのホットライン』という電話相談もあります。

 上司から2人きりの酒の席への誘いを受けた時など、本当は断りたいのに『上司だから』と不本意ながら行くことはありますよね。でも、誘ったほうは『合意』と解釈して、さらに親密な関係に持ち込もうとするんです。このような『感覚のギャップ』の存在を男性側がわかっていないことが、セクハラの問題の本質だと思います。『イヤよイヤよもいいのうち』なんて幻想ですからね。女性が本当に嫌がっているケースがほとんどです」(太田弁護士)

 セクハラを受けた場合、前述の3人のように、人に知られたり、被害を思い出すだけでもつらいと感じるのは想像に難くない。しかし、勇気を出して相談をする第一歩が、加害者の意識、ひいては社会の意識を変えることにもつながるのではないだろうか。
(蒼山しのぶ)

小保方晴子氏の『あの日』は男性研究者のセクハラ告発本だった!? 関係者が分析

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撮影=吉田尚弘

 STAP細胞騒動のヒロイン、理化学研究所の元研究員、小保方晴子氏の手記『あの日』(講談社)が売れに売れまくっている。紀伊國屋書店の2月13日~19日の週間ランキングでは、和書総合5位にランクインしている。前編は小保方氏のサクセスストーリー、後半はES細胞の窃盗の濡れ衣を晴らすために釈明する内容になっている。一方で、現役の研究者たちの間では、この本の狙いは「セクハラ告発」だという説が囁かれている。

■苦労知らずのプリンセス

 STAP細胞論文捏造問題を取材してきたノンフィクションライターの杉浦由美子氏は手記を読んだ感想をこう述べた。

「純粋に研究者の手記として読むと違和感だらけです。実験の具体的な様子がまったく描かれておらず、こういう苦労をしたというディテールが一切ないんです。その一方で、周囲の“おじさま”研究者たちが彼女に与えた賞賛の言葉はかなり詳細に明確に記されていますね」

小保方晴子氏の『あの日』は男性研究者のセクハラ告発本だった!? 関係者が分析

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撮影=吉田尚弘

 STAP細胞騒動のヒロイン、理化学研究所の元研究員、小保方晴子氏の手記『あの日』(講談社)が売れに売れまくっている。紀伊國屋書店の2月13日~19日の週間ランキングでは、和書総合5位にランクインしている。前編は小保方氏のサクセスストーリー、後半はES細胞の窃盗の濡れ衣を晴らすために釈明する内容になっている。一方で、現役の研究者たちの間では、この本の狙いは「セクハラ告発」だという説が囁かれている。

■苦労知らずのプリンセス

 STAP細胞論文捏造問題を取材してきたノンフィクションライターの杉浦由美子氏は手記を読んだ感想をこう述べた。

「純粋に研究者の手記として読むと違和感だらけです。実験の具体的な様子がまったく描かれておらず、こういう苦労をしたというディテールが一切ないんです。その一方で、周囲の“おじさま”研究者たちが彼女に与えた賞賛の言葉はかなり詳細に明確に記されていますね」

V6・井ノ原快彦、セクハラ特集の“男前発言”が話題! 『あさイチ』で人気急上昇のワケ

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イノッチの断言に有働アナも思わず涙目!?

 15日放送の『あさイチ』(NHK)でのV6・井ノ原快彦の発言が、ネット上で称賛を浴びている。この日のテーマは「女性リアル 知られざる“セクハラ”」。井ノ原は共演する有働由美子アナウンサーに対する、番組内での扱いに関しても言及。自らの番組における“セクハラ”まで厳しく追求する姿勢には、ファンのみならず多くの視聴者から共感を集めたようだ。

 番組冒頭では、過去に番組内で中谷文彦アナウンサーが、スカーフを巻いた有働アナに「有働さんは熟女仕様」「くすんだ顔も明るく見える」などと発言したことを紹介。これについて、番組には視聴者から「セクハラです」といったクレームが寄せられていたという。

「股間にツバ」は愛? 日本エレキテル連合のセクハラ告白、「お笑い界は異常」と大炎上

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日本エレキテル連合Twitterより

 ブレイク中の女性お笑いコンビ・日本エレキテル連合のとある“暴露”がネット上で話題になっている。2人は、8月24日放送のラジオ番組『笑福亭鶴瓶 日曜日のそれ』(ニッポン放送)で、過去に先輩芸人から両脚を開脚した状態で股間にツバを吹きかけられるという衝撃的なセクハラを受けたことを告白したのだ。

 「ダメよ~ダメダメ」というネタで人気沸騰中の日本エレキテル連合。同番組では、「芸人は真面目な人が多い」という話から、鶴瓶が「変にセクハラとかせぇへんやろ?」と振ると、2人は「そうですね……」と戸惑った様子で返答。「ノリでというか」と切り出し、「なんか、まんぐり返しっていうのをされまして」「“そこ”に『プッ!』って、ツバを吹きかけられるっていう」と、驚きのセクハラ行為を明かした。

フィギュア・高橋大輔に橋本聖子が強制キス! スポーツ界は「セクハラモンスター」の温床か

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「フィギュアスケート 2012-2013 シーズンガイド 最新選手名鑑」(新書館)

 20日発売の「週刊文春」(文藝春秋)に、衝撃のキス写真が掲載されている。男性は、フィギュアスケート選手の高橋大輔で、お相手の女性は、日本スケート協会理事で参院議員の橋本聖子氏。2月のソチ五輪閉会式後、打ち上げの席での一コマというが、橋本氏は高橋に執拗にキスを迫ったり、首筋に唇を這わせていたのだという。

「キス写真は、2枚掲載されており、最初の1枚は橋本氏が左手で高橋の手をつかみ、右手は肩に回しながらコトに及んでいます。橋本氏は唇をとがらせ、半開きの目で高橋を見つめながら恍惚の表情を浮かべているという、まさに衝撃ショットです」(芸能ライター)