4月から新たに週レギュラーが2本増え「週7本」に。今やテレビ界に欠かせない顔となった坂上忍。彼はなぜ、ここまでテレビに求められるのか。そこには“役者”としての矜持と、番組を俯瞰するプロデュース的な視点にあった。
坂上が児童劇団の老舗「劇団若草」に入ったのは3歳の時。以来、半世紀近く芸能界に身を置いているが、4月17日放送の『マツコの知らない世界』(TBS系)に出演した際、マツコ・デラックスから「若い子たち、坂上さんが役者だって知らない人いるよね」と指摘されていた。
坂上の、役者としての仕事は、ここのところ、ほぼ皆無。ドラマ出演は一昨年、昨年ともに1本のみとなっている。
それでも坂上は、そのマツコとの対談で、「こうなっても、ずっと役者の世界にお世話になってきた」と述べており、あくまで俳優としてバラエティに出ているというスタンスを変えていない。
■台本に忠実
役者が司会業をするメリットを語る際の好例がある。1970年代、『アフタヌーンショー』(テレビ朝日系)の司会者として名を馳せ、レポーターから何度も言われる「そーなんですよ、川崎さん」の名フレーズでも有名になった川崎敬三(2015年没)。彼はもともと大映のニューフェイスとしてデビューした俳優だったが、次第に司会業にシフトした。
その司会のスタイルは「番組の台本通りに、きっちり進行すること」だったという。同じく坂上も台本通りに忠実にスタジオを回すタイプ。さらに打ち合わせも入念に行い、台本への書き込みも積極的にすることはあまりにも有名だ。
これはまさに、本読み、リハーサル、そして本番へと自分を役柄に染め上げていく俳優のアプローチそのもの。つまり坂上は、スタジオという舞台の上で、「司会者という役を演じている」のかもしれない。
このように、情熱をとことん注ぐ姿勢は、台本にそれほど頼らず、己の力量だけで笑いをさらっていくタレント司会者とは一線を画すものだ。そこに、バラエティスタッフも新鮮さと気概を感じ、一緒に仕事をしてみたいというモチベーションが働くのだろう。
■関口宏との共通点
役者上がりの司会者の代表格として、関口宏がいる。彼もかつてはドラマ『喜びも悲しみも幾歳月』(TBS系)といったホームドラマや『江戸を斬る』(同)などの時代劇にも出演していたが、そもそも出自は「親の七光り」。俳優に進んだのは、父親で名優・佐野周二の影響である。
だが、息子の関口自身は残念ながら役者としての評価はそこまで高いものではなかった。実際に一時期、俳優の仕事が減り、その後の進路について悩んでいた時期もあったという。もし俳優として極めていれば、別の道に転身しようという気持ちも働かなかったはずだ。
坂上も、同世代の俳優である阿部寛や香川照之のように演技力の高さで名声を博していれば、バラエティ進出には「目」が向かなかったのかもしれない。
■プロデューサー感覚
関口宏と坂上の共通点はまだある。それは、番組を俯瞰するプロデューサー的目線だ。関口は、司会を務める『サンデーモーニング』(TBS系)が裏番組の『THE・サンデー』(日本テレビ系)に視聴率で迫られたとき、当時としては珍しかった女子大生キャスターを起用しようと提案、それが功を奏したと言われている。また1週間のニュースを振り返り、総ざらいするスタイルも関口発案だった。
一方の坂上は、番組のVTRチェックをする際、わかりづらい場合は直すよう注文をつけるという。さらに3月5日の『バイキング』で「番組作り」をライフワークである競艇にたとえ、「エンジンだ、ボートだ、選手の特性だとかっていうデータとか経験値があるわけじゃん。で自分の働いた金を張るわけじゃないですか。番組作りも、その枠の時間帯とかカラーとか裏番組とかっていうのをいろんな中で、みんなで『ああでもない、こうでもない』って話して、『じゃあ、今週は、これでベット!』みたいな」と語っている。
つまり彼は司会という肩書きを超え、番組作りにも積極的に関わっていることがうかがえる。また蛇足だが、坂上の時として物議を醸す発言も、関口と共通している。
■坂上の弱点
ここまで活躍しながらも、まだ体力を含めてトータルで余力はあるという坂上。だが、3カ月後、必ず終わることに向かって努力するドラマの世界とは違い、バラエティが「終わらない」ことを目指して進む世界だということに今さらながら驚いているという。
その過酷さに坂上は、フジテレビから見える景色を眺めながら「俺、いつまでここにいなきゃいけないんだろう」と思うこともあるのだとか。
そんな彼を今のテレビ界で一番すごいと慕うマツコは、「坂上さんが(『バイキングを』)辞めるって言わなかったら(フジテレビは)辞める気ないと思うよ。数十年ぐらい続くかもよ」と言っていた。果たして坂上は、どこまで上り詰めるのだろうか。
(文=都築雄一郎)
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