M‐1出場芸人のすごさがわかる、泣けるお笑い芸人マンガ『べしゃり暮らし』

 皆さん、お笑いは好きですか? お笑いといえば、その頂点は「M‐1グランプリ」ですよね。2018年末に行われた平成最後のM‐1では、平成生まれの若手コンビ・霜降り明星が 見事、史上最年少の王者に輝きました。

しかしその直後、M-1審査員への暴言騒動が起こり、せっかくの感動を台なしにしてしまうという衝撃の結末を迎えました。いま考えてみると、ここまでの一連の流れも含めて、さすが平成最後といえる展開だったといえます。

 ところであらためて調べてみると、お笑い芸人をテーマにしたマンガってビックリするぐらい数が少ないんです。今回ご紹介する『べしゃり暮らし』(ヤングジャンプコミックス)こそが、ほぼ唯一のお笑い芸人マンガの成功例と言って過言ではありません。

『べしゃり暮らし』の作者は『ろくでなしBLUES』『ROOKIES』など不良&スポーツをテーマとした作品でヒットを飛ばしてきた森田まさのり先生。本作はお笑い芸人がテーマとなっていますが、もともと森田先生のお笑いへの思い入れはハンパではなく、本作以前にもお笑いがテーマの読み切りマンガを描いていたり、自ら吉本興業の芸人養成所NSCに入学したり、M‐1グランプリにまで出場したりしています。ちなみに、M‐1出場時のコンビ名は「漫画家」。まさかのヒネりなし!

 お笑い芸人をテーマにしたマンガが少ない理由は実にシンプルで、漫才をマンガにすると面白くないからです。漫才は単なるネタだけでなく、テンポや間や動きで笑いを生み出します。マンガでテンポや間を表現するなら漫才よりも4コママンガのほうが向いていますし、コントの場合も『こち亀』で両さんが無茶苦茶やって大原部長が怒り狂うシーンなんて、まるで警察コントのようですが、これをお笑い芸人がやっている体でマンガにしてしまうと、ちっとも面白くないわけです。

 では、『べしゃり暮らし』はなぜ成功したのか? それはギャグマンガにするのではなく、作品の中に友情・努力・勝利そして泣きの要素を組み込んだ、スポ根マンガ的アプローチを取り入れているからなのです。

 本作は、とにかく一番面白いやつになりたい! という野望を持つ高校生、自称“学園の爆笑王”上妻圭右(あがつま・けいすけ)が主人公。ある日、元お笑い芸人の転校生、辻本潤が現れ、圭右は自分より面白いやつの登場にライバル心をむき出しにするのですが……。それにしても、自称“学園の爆笑王”てなんやねん! 自分でハードル上げすぎてて笑えんわ!!

 圭右と辻本は、なんやかんやでぶつかり合いながらも漫才コンビ「べしゃり暮らし」を結成。NSCみたいなお笑い養成所・YCA(ヨシムラコミックアカデミー)に入所し、ライバルの若手芸人たちと切磋琢磨しながら、M‐1グランプリみたいな若手お笑いグランプリのNMC(ニッポン漫才クラシック)のチャンピオンを目指す、というストーリーです。

 あまりにも元ネタがバレバレすぎて、読んでいて「もうNSCとM‐1でええやん!」てなります。

■これはギャグマンガではない、人間ドラマだ!

 本作には、当然ながら、漫才コンビがネタを披露するシーンがたくさん出てきます。

「大阪人て、たこ焼き派か阪神ファンかに分かれるもんな」

「何のことやねん!」

「髪の毛には海藻がええらしいで」

「ああ、よう言うね」

「けど、もずくとかやったらわからんでもないけどワカメなんてのせてたらバレバレやで」

「直接のせてどないすんねん!」

 コンビの細かなやりとりにおいてもちゃんとボケとツッコミが成立しており、ネタの一つ一つがまるで芸人のネタ帳から出てきたかのような、クオリティの高いものになっています。細部まで手を抜かない森田先生の、お笑いへのこだわりが伝わってきます。

 ただしお笑いがテーマのマンガですから、ネタのやりとりに合わせて「ぎゃはは」「ぶははっ」「くすくす」「あはははは」という周囲の笑い声が入ります。マンガの中で先に笑われると、読んでるほうは不思議と笑えなくなります。

 まあ、いいんです。これはギャグマンガじゃない! 人間ドラマですから。読んで笑うんじゃなくて、泣くマンガですから!!

■芸人の苦労がしのばれる、リアル挫折エピソード

 本作では、若手芸人がブレークするまでいかにしんどい思いをするか、というエピソードがこれでもかというぐらいに盛り込まれています。

 主人公の圭右は、高校では笑いの天才と呼ばれるほどの存在ですが、辻本と組んでチャレンジしたNMCの予選で初めての挫折を経験します。プロの漫才コンビたちがひしめく中で、スベり倒します。とにかく、まるっきりウケない。

 しまいには漫才の途中でキレて、相方の辻本をステージに一人残して途中退場してしまったり、スベったのは笑いのセンスのない客のせいだと、最悪のセリフを吐いて自暴自棄に陥ります。

 しかし、辻本の先輩で、実力派の漫才コンビ「デジタルきんぎょ」金本のアドバイスによって、立ち直ることができたのです。なんだか、実際にありそうなエピソードですね。ちなみに、金本のモデルとなったのが千原ジュニアだそうで、こういう実在モデルのキャラクターがちょいちょい出てくるのもこのマンガの魅力のひとつです。

 せっかく立ち直った圭右ですが、その後も東京モンのくせに、ギャグを言う時に大阪弁になってしまうという癖を指摘され、再びスランプに陥ってしまいます。関東人の使うエセ関西弁ってイタいらしいですね。……って、このコラムのことやないか!!

■最大の泣けるテーマ「コンビの絆」

 本作で語られている最重要テーマ、それは「コンビの絆」または「コンビ愛」です。作中にはあらゆるタイプの漫才コンビのエピソードが描かれています。やれくっついただの別れただの、別れそうだったけどやっぱりヨリが戻った、ほかのやつに相方を奪われた……などなど、恋愛か! ってくらい人間模様の宝庫なわけですが、個人的に一番好きなのは、「べしゃり暮らし』のライバルコンビ「げんこつロデオ」のエピソードです。

「げんこつロデオ」は破天荒でケンカっ早い岩隈と、ビジネスライクでクールな内川の漫才コンビです。トラブルメーカーの岩隈に対し、いつも我関せずで、相方なんかいつでも切り捨てたる、というスタンスを取っていた内川ですが、ある日、岩隈からコンビ解散を持ちかけられます。

 岩隈の父親が会社で横領を行い、5,000万円もの借金を背負ってしまったのです。父親のしでかした借金を返すため、相方の内川には迷惑をかけられない、という岩隈の思いから出た解散話でした。

「くそ…意味なかったなぁ、俺の人生…」

 がっくりとうなだれる岩隈にかけた内川の言葉は意外なものでした。

「不幸や思うから意味なくなんねん、笑ろとけ笑ろとけ」

「5,000万? ちっさ、将来2人でどれだけ稼ぐ思てんねん」

「ちっ、俺も人がええな、まぁしゃーない、ビジネスパートナーやからな」

 クールに言い放っているようで、実はすごく相方思いだったのがビンビン伝わるこのセリフ。いやー、何度読んでも泣けるシーンです。実際、この文章タイプしながらも涙止まらないし。どんだけ涙腺弱いねん!

■最高のクズ男「辻本の父ちゃん」

 終盤に登場する最重要人物といえば、辻本の父ちゃんです。もともと引きこもりでしたが、一念発起して大物お笑い芸人の付き人になったものの、その後、クビになってからはグダグダの転落人生。妻子(辻本のおかんと辻本)を捨てて失踪したり、放火犯として逮捕されて刑務所に入ったり……。その間、おかんは一人で辻本を育て、過労のために入院するなど、苦労のし通しでした。そんな無責任な父親を、絶対許さないと誓う辻本。そりゃそうですよね。

 そんな辻本の父ちゃんですが、不器用さゆえに周りに迷惑をかけてしまうけど、決して悪い人間ではないのでした。結婚時の妻との約束「お笑いネタを一日一本作る」をずっと守り続けていた真面目さや、放火も実は冤罪だったことが判明するなどで、次第に辻本と和解ムードに。

 クライマックスは、NMCの準決勝で披露された「べしゃり暮らし」の漫才ネタ「父親に謝りたい」。すごく遠回しにステージ上で不器用な和解メッセージを送る辻本。こんなシーン見せられたら泣いちゃいますよね。

 というわけで、読んだら涙が止まらないお笑い芸人マンガ『べしゃり暮らし』をご紹介しました。華やかなお笑いの世界のその裏で、人知れずとてつもない苦労を重ねているお笑い芸人たち。これからは若手芸人の漫才を観たら、笑わずにむしろ泣いてやろうと思いました(やめとけ!)。

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

◆「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

世界が認めた「こんまりメソッド」をサクッと学ぶ『マンガで読む 人生がときめく片づけの魔法』

 先日、片づけコンサルタントの「こんまり」こと近藤麻理恵さんが世界中でブレーク中だというネットニュースが流れてきて驚かされました。2016年ごろ、すでにこんまりさんの著書は全米ベストセラーとなっていましたが、今回はなんとNetflixのリアリティー番組『KonMari~人生がときめく片づけの魔法~』が社会現象を巻き起こすほどヒットしているのだとか。

 こんまりさんの決めフレーズである「ときめき」を英訳した「SPARK JOY」が流行語になったり、片づけを表す動詞として「Kondo-ing」とか「Konmari」などと言われているという話まで聞きます。まるで「ググる」みたいな使われ方ですね。テニスの大坂なおみ選手、そしてこんまりさん、アメリカンドリームを体現する日本人女性が次々と登場する、すごい時代になったもんです。

 で、これだけ話題になると、片づけできない男子日本代表のような存在の僕でも、気になってくるじゃないですか。世界がときめく「こんまりメソッド」ってやつが。実はそんな僕らにまさしくピッタリな『マンガで読む 人生がときめく片づけの魔法』(サンマーク出版)という本があるんです!

 本書はマンガというだけあって、ストーリー仕立てになっており、めちゃくちゃ読みやすいです。

 主人公は29歳の独身OL・鈴木千秋。仕事ができるキャリアウーマンで、彼氏なしだけど、惚れっぽい性格で元カレは多数。ただし、とにかく片づけられない女子で、すさまじい汚部屋に住んでいるんです。

 ある日、隣の部屋に住んでいるイケメン(カフェ店員)が訪問してきた際、汚部屋を目撃されてしまい「ありえない……」と、ドン引きされる始末。しかも、訪問理由が「ベランダに放置されているゴミが臭うので、片づけてほしい」と注意するためだったというのですから、これはかなりやばいレベルの汚女子ですね。

 イケメンにドン引きされ、さすがに危機感を感じた千秋嬢が「片づけ」をネットで検索して出てきたのが、片づけコンサルタントの近藤麻理恵さんだったのです。

 というわけで、千秋嬢がこんまりさんに片づけレッスンを受け、部屋が超キレイになっていき、ついでに人生も上向きになるというサクセスストーリーなのですが、やっぱり気になるのは作中で描かれている片づけの魔法「こんまりメソッド」ですよね。全米を驚愕させた「こんまりメソッド」のすごさを、少し紹介してみたいと思います。

■こんまりメソッドは「リバウンドゼロ!」

 こんまりさんのレッスンを受けると、片づけの方法だけでなく意識改革までされるので、一度きれいになった部屋はリバウンドせず、きれいなままを維持できるのです! マジか! 自分、ダイエットでは何回もリバウンドしてるんですが、大丈夫なんですかね?

 

■新しい収納グッズを買っても片づけは解決しない

 こんまりさんは、物を増やすことにとても厳しいお方です。片づけのために新しい収納グッズを買おうとすると、怒られてしまいます。家に備わっている収納を最大限に活用し、シンプルさを追求すべし!

 

■捨てるものは家中から1カ所に集める

 こんまりさんによれば、一番捨てやすいのが「洋服」ということで、まずは家中すべての「洋服」を1カ所に集めることから始まります。自分がどれだけ無駄にモノを持っていたかを実感するために、1カ所に集めるのが有効なんだそうです。

 

■基準は「ときめく」かどうか

 こんまりさんの決めフレーズといえば、なんといっても「ときめき」です。それにしても今どき「ときめき」なんて、なかなか言いませんよね。『ときめきトゥナイト』とか『ときめきメモリアル』ぐらいでしか使われているのを見たことがないです。このちょっと少女マンガチックな概念を片づけに導入してしまう、という大胆さが、こんまりさんのすごさなのかもしれません。

 とにかく、洋服を一つ一つ触ってみて、ときめくかどうかで捨てるかどうかを決めるのです。もちろん、ときめかない服は部屋着に降格……などという発想はモノが減らせないのでNG。

「断言します! 外出着から降格させた部屋着は……十中八九着ません!」

だそうです。確かに、そうかもしれん……。

 また、いらない物を捨てる時にそれを抱きしめて「今までありがとう」とお礼を言いながら捨てるというのもユニークなところ。要所要所でこういうスピリチュアルなアクションを取り入れてるあたりに、海外ウケのよさの秘密がありそうです。

 

■洋服はハンガーにかけるより、たたむと威力が4倍に

 そのほか、こんまりメソッドで有名なのが、シャツやスカート、ズボンなどを小さな正方形に折りたたんで、しかもそれを直立させてコンパクトに収納するところ。Netflixではアメリカ人がこれを見て、「ワオ!」とか言ってびっくりしてました。

 ところで、みなさんはハンガーなどにかける収納と、たたむ収納、どちらをしていますか? シワになりにくい「かける収納」の方を選ぶ人が多いのではないでしょうか?

 ここでも、こんまりさんの持論が炸裂。

「それはたたむことの本当の威力を知らないのです!」

「正しくたためば、かける収納の2倍から4倍!」

 とにかく、洋服をたたむことについて熱く語ります。それにしても「たたむことの本当の威力」って、すごいパワーワードですよね。

■本は表紙を触って「ときめき」で選ぶ

 次の捨てるテーマは「本」。本も選ぶ基準は「ときめき」です。本の場合は、一冊一冊読み始めると捨てられなくなるので、ページをめくらずに表紙を触っただけで判断します。なんという大胆な割り切りでしょうか。

 さらに原則、「未読の本はすべて捨てる」というポリシーも画期的。いつか読むつもりで放っておかれている未読の本を読む「いつか」は永遠に来ない、本当に縁がある本であれば、再び自分の前にやってくる――というのが、こんまりメソッドなのです。確かに一理あるかもしれませんが、これは積ん読マンたちへの死刑宣告に等しいですね。

 

■思い出品は一番難易度が高い

 こんまりさんによれば「思い出品」は一番難易度が高いため、洋服や本などが捨て終わり、一番「ときめき感度」が上がっている時に手を付けるのがよいとのこと。

 特に写真、ぬいぐるみなどで「目」がこちらに向いていて視線を感じさせるようなものは捨てるのに躊躇してしまいがちなので、その場合は布で覆ったり、透けない紙袋に入れたりすると捨てやすいとか。供養するような気持ちで粗塩を振ってみてもよい、なんてアドバイスも。除霊か! これまた外国人ウケしそうなスピリチュアルなメソッドですよね。

 結局、本書の主人公、千秋嬢も部屋がキレイになって、仕事もうまくいって人生上向き。隣のイケメンともいい雰囲気になり、新しい恋へ発展……みたいな感じのハッピーエンド。まさしく片づけは人生を変えてしまうのです。

 ちなみに、Netflixの『KonMari~人生がときめく片づけの魔法~』もチェックしたところ、依頼人のアメリカ人が「ワオ!」とか言ったり、夫婦ゲンカが始まったり、号泣したり、こんまりさんのメイクが日本にいる時より濃くなっていたりと、過剰なまでの演出がされていて面白いのですが、肝心の片づけ方は全然マスターできませんでした。どう考えてもマンガ版のほうが実践的でわかりやすいので、すぐにでも「SPARK JOY」してみたい人には、この『マンガで読む 人生がときめく片づけの魔法』がおすすめです。

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

◆「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

世界が認めた「こんまりメソッド」をサクッと学ぶ『マンガで読む 人生がときめく片づけの魔法』

 先日、片づけコンサルタントの「こんまり」こと近藤麻理恵さんが世界中でブレーク中だというネットニュースが流れてきて驚かされました。2016年ごろ、すでにこんまりさんの著書は全米ベストセラーとなっていましたが、今回はなんとNetflixのリアリティー番組『KonMari~人生がときめく片づけの魔法~』が社会現象を巻き起こすほどヒットしているのだとか。

 こんまりさんの決めフレーズである「ときめき」を英訳した「SPARK JOY」が流行語になったり、片づけを表す動詞として「Kondo-ing」とか「Konmari」などと言われているという話まで聞きます。まるで「ググる」みたいな使われ方ですね。テニスの大坂なおみ選手、そしてこんまりさん、アメリカンドリームを体現する日本人女性が次々と登場する、すごい時代になったもんです。

 で、これだけ話題になると、片づけできない男子日本代表のような存在の僕でも、気になってくるじゃないですか。世界がときめく「こんまりメソッド」ってやつが。実はそんな僕らにまさしくピッタリな『マンガで読む 人生がときめく片づけの魔法』(サンマーク出版)という本があるんです!

 本書はマンガというだけあって、ストーリー仕立てになっており、めちゃくちゃ読みやすいです。

 主人公は29歳の独身OL・鈴木千秋。仕事ができるキャリアウーマンで、彼氏なしだけど、惚れっぽい性格で元カレは多数。ただし、とにかく片づけられない女子で、すさまじい汚部屋に住んでいるんです。

 ある日、隣の部屋に住んでいるイケメン(カフェ店員)が訪問してきた際、汚部屋を目撃されてしまい「ありえない……」と、ドン引きされる始末。しかも、訪問理由が「ベランダに放置されているゴミが臭うので、片づけてほしい」と注意するためだったというのですから、これはかなりやばいレベルの汚女子ですね。

 イケメンにドン引きされ、さすがに危機感を感じた千秋嬢が「片づけ」をネットで検索して出てきたのが、片づけコンサルタントの近藤麻理恵さんだったのです。

 というわけで、千秋嬢がこんまりさんに片づけレッスンを受け、部屋が超キレイになっていき、ついでに人生も上向きになるというサクセスストーリーなのですが、やっぱり気になるのは作中で描かれている片づけの魔法「こんまりメソッド」ですよね。全米を驚愕させた「こんまりメソッド」のすごさを、少し紹介してみたいと思います。

■こんまりメソッドは「リバウンドゼロ!」

 こんまりさんのレッスンを受けると、片づけの方法だけでなく意識改革までされるので、一度きれいになった部屋はリバウンドせず、きれいなままを維持できるのです! マジか! 自分、ダイエットでは何回もリバウンドしてるんですが、大丈夫なんですかね?

 

■新しい収納グッズを買っても片づけは解決しない

 こんまりさんは、物を増やすことにとても厳しいお方です。片づけのために新しい収納グッズを買おうとすると、怒られてしまいます。家に備わっている収納を最大限に活用し、シンプルさを追求すべし!

 

■捨てるものは家中から1カ所に集める

 こんまりさんによれば、一番捨てやすいのが「洋服」ということで、まずは家中すべての「洋服」を1カ所に集めることから始まります。自分がどれだけ無駄にモノを持っていたかを実感するために、1カ所に集めるのが有効なんだそうです。

 

■基準は「ときめく」かどうか

 こんまりさんの決めフレーズといえば、なんといっても「ときめき」です。それにしても今どき「ときめき」なんて、なかなか言いませんよね。『ときめきトゥナイト』とか『ときめきメモリアル』ぐらいでしか使われているのを見たことがないです。このちょっと少女マンガチックな概念を片づけに導入してしまう、という大胆さが、こんまりさんのすごさなのかもしれません。

 とにかく、洋服を一つ一つ触ってみて、ときめくかどうかで捨てるかどうかを決めるのです。もちろん、ときめかない服は部屋着に降格……などという発想はモノが減らせないのでNG。

「断言します! 外出着から降格させた部屋着は……十中八九着ません!」

だそうです。確かに、そうかもしれん……。

 また、いらない物を捨てる時にそれを抱きしめて「今までありがとう」とお礼を言いながら捨てるというのもユニークなところ。要所要所でこういうスピリチュアルなアクションを取り入れてるあたりに、海外ウケのよさの秘密がありそうです。

 

■洋服はハンガーにかけるより、たたむと威力が4倍に

 そのほか、こんまりメソッドで有名なのが、シャツやスカート、ズボンなどを小さな正方形に折りたたんで、しかもそれを直立させてコンパクトに収納するところ。Netflixではアメリカ人がこれを見て、「ワオ!」とか言ってびっくりしてました。

 ところで、みなさんはハンガーなどにかける収納と、たたむ収納、どちらをしていますか? シワになりにくい「かける収納」の方を選ぶ人が多いのではないでしょうか?

 ここでも、こんまりさんの持論が炸裂。

「それはたたむことの本当の威力を知らないのです!」

「正しくたためば、かける収納の2倍から4倍!」

 とにかく、洋服をたたむことについて熱く語ります。それにしても「たたむことの本当の威力」って、すごいパワーワードですよね。

■本は表紙を触って「ときめき」で選ぶ

 次の捨てるテーマは「本」。本も選ぶ基準は「ときめき」です。本の場合は、一冊一冊読み始めると捨てられなくなるので、ページをめくらずに表紙を触っただけで判断します。なんという大胆な割り切りでしょうか。

 さらに原則、「未読の本はすべて捨てる」というポリシーも画期的。いつか読むつもりで放っておかれている未読の本を読む「いつか」は永遠に来ない、本当に縁がある本であれば、再び自分の前にやってくる――というのが、こんまりメソッドなのです。確かに一理あるかもしれませんが、これは積ん読マンたちへの死刑宣告に等しいですね。

 

■思い出品は一番難易度が高い

 こんまりさんによれば「思い出品」は一番難易度が高いため、洋服や本などが捨て終わり、一番「ときめき感度」が上がっている時に手を付けるのがよいとのこと。

 特に写真、ぬいぐるみなどで「目」がこちらに向いていて視線を感じさせるようなものは捨てるのに躊躇してしまいがちなので、その場合は布で覆ったり、透けない紙袋に入れたりすると捨てやすいとか。供養するような気持ちで粗塩を振ってみてもよい、なんてアドバイスも。除霊か! これまた外国人ウケしそうなスピリチュアルなメソッドですよね。

 結局、本書の主人公、千秋嬢も部屋がキレイになって、仕事もうまくいって人生上向き。隣のイケメンともいい雰囲気になり、新しい恋へ発展……みたいな感じのハッピーエンド。まさしく片づけは人生を変えてしまうのです。

 ちなみに、Netflixの『KonMari~人生がときめく片づけの魔法~』もチェックしたところ、依頼人のアメリカ人が「ワオ!」とか言ったり、夫婦ゲンカが始まったり、号泣したり、こんまりさんのメイクが日本にいる時より濃くなっていたりと、過剰なまでの演出がされていて面白いのですが、肝心の片づけ方は全然マスターできませんでした。どう考えてもマンガ版のほうが実践的でわかりやすいので、すぐにでも「SPARK JOY」してみたい人には、この『マンガで読む 人生がときめく片づけの魔法』がおすすめです。

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

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一度ハマったら最後……脱出ゲームより無理ゲーな「依存症脱出マンガ」の世界

 年明け早々風邪をひきました。紅白でDA PUMPがU.S.A.を歌ってるあたりから調子が悪くなり始めて、どっちかの夜が昼間になってる頃には最悪の体調になってました。とにかく咳がひどくて病院に行って咳止めをもらったんですけど、全然効かなかったので、市販薬でもっと強力なヤツはないのかなってネットで調べていたら知った衝撃事実。

 なんでも、咳止めに使われている成分に麻薬性のものがあり、咳止めの市販薬を大量に摂取するとチョーいい気持ちになるんだとか、咳止め依存症になって1日700錠も飲んでしまい、糖衣のせいでウン◯が真っ白になる人もいるとか、新年早々そんな情報いらないよ!!

 というわけで、何がきっかけでクスリにハマってしまうかわからないご時世ですが、そんなことにならないよう、薬物依存症やアルコール依存症の怖さをたっぷりと知ることができるマンガをご紹介したいと思います。

■『マーシーの薬物リハビリ日記』(田代まさし、北村ヂン/泰文堂)

 1980~90年代に超売れっ子タレントだった、マーシーこと田代まさし。シャネルズの一員としてデビュー後、コメディアンとしても活躍。「ダジャレの帝王」「ギャグの王様」などと呼ばれて、一躍スターに。ファミコンゲームになったり、原宿にタレントショップを開店させたり、CMで引っ張りだこだったりと、とにかく華々しい活躍ぶりでした。

 そんなマーシーが2000年、盗撮疑惑で書類送検され、記者会見で「ミニにタコができる」というタイトルの映像を作ろうとしていたと弁解してスベったのは、今でも芸能界史に残る名シーンでした。その後、芸能界に復帰したものの、覚せい剤取締法違反で3回も逮捕されており、05年と11年には刑務所へ。1億円もの借金を抱え、妻子には愛想を尽かされて離婚などなど、芸能界のほぼ頂点からものすごい勢いですべてを失うという、まさに絵に描いたような「転落人生」です。

『マーシーの薬物リハビリ日記』は、そのマーシーが、仕事のプレッシャーから覚せい剤にハマってしまってしまった経緯や、刑務所時代の過酷な生活などを超ぶっちゃけトークで生々しく告白しているマンガです。

 刑務所内での延々続く単純作業、脇見するだけで怒られる状況で「覚せい剤を打てば、めちゃくちゃ集中して作業できるのに!」って思っちゃったりとか……。

 薬物依存症リハビリ施設・ダルクの所長に、出所祝いにオゴってもらった食事が「しゃぶしゃぶ」だったとか……。

 自分に覚せい剤を流してくれていたヤクザのTさんがダルクに入所してきたので、一緒に薬物を克服しようということで、指切りげんまんしようとしたら、小指がなかった話とか……。

 いろいろと細かなギャグエピソードを挟んでくるセンスは、さすが元「ギャグの王様」。あまりにあっけらかんとしたノリのマンガなので、もしかしてこの人、全然反省していないんじゃないの? なんて思ってしまうのですが、むしろ「深刻に反省してます」って感じの真面目な人のほうが、精神を追い詰められて再び薬物をやってしまうそうなので、このくらいの軽めのノリのほうがいいのかもしれません。

「オレだって34年やめてるけど、いつまた使っちゃうかわからないもんね。気持ちよかったもんなぁ~。」

「覚せい剤の気持ちよさは一生忘れられないから、自分の意志で薬物をやめられるなんて考えないほうがいいよ、無理だから」

 これらは、ダルク所長の言葉ですが、まさに覚せい剤の怖さを表現しています。薬物依存症は、自分の意志では絶対に治せない病気であると認めることが大事なんだそうです。

 本書を読むと、芸能人のアノ人、ミュージシャンのアノ人、元スポーツ選手のアノ人たちが薬物で何度も捕まってしまう本当の理由がわかりますよ。まあ、一番捕まってるのは、ほかならぬマーシーなわけですが……。

■『アル中ワンダーランド』(まんしゅうきつこ/扶桑社)

 こちらは現在、サウナをテーマとしたエッセイマンガ『湯遊ワンダーランド』(同)が話題のマンガ家・まんしゅうきつこさんが、アルコール依存症だった頃の時代を描いた作品。

 もともと、ブログ「オリモノわんだーらんど」に掲載していたマンガが面白いと話題になってブレークしたまんしゅう先生は、その後に仕事依頼が殺到し、マンガの原稿依頼とブログの更新のプレッシャーからお酒に手を出し始め、アルコール依存症に。仕事のプレッシャーがきっかけになっているところは、マーシーのケースと共通しています。

 アルコール依存症に陥っていた時の日々の生活をマンガにしたという本作ですが、描かれているエピソードがまあ、本気でヤバイです。

 最初に登場するのは、空を飛んでいる飛行機が自分に向かって「地球を大切に」って話しかけてくる「フェイクプレーン」という幻覚について。「フェイクプレーンは実在する!」などと、いきなり力説するまんしゅう先生。素人にはちょっと何言っているかわかりませんよね。

 さらに、トークイベントに酩酊状態で出演し、壇上で突然おっぱいをさらけ出すという暴挙に出るまんしゅう先生。しかも、その時の記憶が一切なかったというのもすごいです。いやホント、酒の恐ろしさがビンビン伝わってきます。

 酒をやめることを誓い、3日間断酒。4日目に一杯だけのつもりで飲酒しながらネットサーフィンし始め……朝起きたらテーブルに空の酒瓶や酎ハイの空き缶が散乱しており、その横に「もう どん底」とメモが残っていたというエピソード、これも相当病んでますね。

 ちなみに、その頃のまんしゅう先生はビールも焼酎も仏壇の脇にあった日本酒も梅酒もドクダミ酒も料理酒も、家にある酒という酒を全部飲んでしまっていたそうで、アル中ヤバイ、これは酒やめないと、って気になります。

 そのほかにも、まんしゅう先生の挙動が不審すぎて、近所にキ○ガイとウワサされたり、オウムの残党がいるとウワサされるなどのエピソードもあり、酒でじわじわと人生が壊されていく過程が描かれていて戦慄します。

 病院で先生にアルコール依存症と診断されるも、誤診だと思い込んで信じないなど、末期的な状態に陥っていたまんしゅう先生ですが、断酒会に参加して、他の依存症患者のヤバイ姿を見たことがきっかけとなり、再び酒をやめようと誓い、現在は見事に依存症を克服したのだそうです。

 ちなみに以前、トークイベントでまんしゅう先生とご一緒したことがあるのですが、その時は全然アブナイ人ではなかったです。本にサインもしてくれたし、普通に素敵ないい人でした。今はサウナにハマって、そっちでトリップしているらしく、実に健康的でよかったよかった。

 というわけで、薬物とアルコール、2つの依存症から脱出したマンガをご紹介してみました。どちらの本も、堅苦しい雰囲気は一切なく、笑いながら軽い気持ちで読めるのですが、最終的にはクスリも酒もめっちゃヤバイんだということがしっかり伝わる読後感になっているので、いろんな誘惑に負けそうな人は、読んでおいて損はありません。

 記念すべき新元号1年目に、クスリや酒で人生を踏み外すことがないようにしたいものですよね。

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

◆「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

最後は”おいしくいただく”のがお約束!? 2019年に読みたい「イノシシマンガ」6選

 今年の干支といえば「亥」。つまり猪(イノシシ)ですよ。どうせ三が日過ぎたら忘れられる存在ですが、せめてこの時期だけは注目してあげたい―――。というわけで、今回は「イノシシ」が登場するマンガ特集です。

■『美味しんぼ 』

 僕が初めてマンガでイノシシを認識したのは,『美味しんぼ』でした。出てくるのは21巻に収録の「新しい企画」というストーリーで、主人公の山岡士郎とその一行が、山にイノシシ狩りに出かけていったところ、突如飛び出してきたイノシシに襲われ、大ピンチ……というところで連れてきた猟犬・コロに命を救われます。

 その後は、倒したイノシシで、イノシシ鍋パーティーが始まるのですが……

「イノシシの肉に味噌味が合います」

「イノシシ鍋を牡丹鍋ともいうんです」

「おひょお! イノシシっていうから肉が固いと思ってたら、柔らかいんだね!」

などといった、美味しんぼならではのテンションでイノシシ鍋豆知識が披露され、大変勉強になります。イノシシ肉は柔らかい! 僕はこのマンガがきっかけで、まったく興味のなかったイノシシ情報をゲットできていたのでした。

 

■『山賊ダイアリー リアル猟師奮闘記』

 リアル猟師マンガの先駆けともいえる『山賊ダイアリー』。単行本2巻は表紙がイノシシで、まさしくイノシシがメインともいえる内容です。

 主人公がキジ狩りに行ったところ、たまたまイノシシに遭遇し、イノシシを狩ることに。そこから始まるイノシシのガチ解体ストーリー。

 血抜きや内臓取り出し、皮剥ぎなどなど……解体をしつつも、途中で取り出した心臓(ハツ)を焼いて舌鼓を打ったり。レバーは血抜きのために切れ目を入れて水につける、肋骨と背骨の間にナイフを入れてアバラを外すなどなど、ガチなイノシシ解体の解説がマンガで描かれています。そんなに詳しく描かれたところで、到底真似できないんですが……。

 で、最後は焼き肉になるイノシシ。やっぱりイノシシ肉は脂が乗ってっておいしいそうですよ。なんか来年の干支のはずなのに食われる話ばっかりだな……。

■『罠ガール』

 田舎町の女子高生・朝比奈千代丸。家業が農家で、畑を荒らす野生動物に対抗するため、18歳にして「わな猟免許」を取得。罠をめぐって千代丸と動物の知恵比べが始まる、というマンガです。うーん、マニアック……。森ガール、山ガールときて、ついに罠ガールが出てくる時代ですよ、皆さん。

 その罠ガールが記念すべき第1話でバトルする動物がイノシシなのです。友人の畑を荒らすイノシシに対抗する罠は「くくり罠」。地面に隠しておいて、イノシシが罠を踏んだら、ワイヤーが締まってイノシシの足がギュッとなる罠です。このマンガでもやはりイノシシが突進してきて大ピンチに陥るシーンがあります。

 イノシシが出てくる場合、必ず人間に向かって突進してくるシーンがあるのはマンガ界における法則のようです。猪突猛進とはよく言ったもんです。

■『ミミック』

 お嬢様なルックスでいつもバイオリンのケースを持ち、毛皮のコートを羽織った美少女女子高生、姫小松にしき。まわりからは超お嬢様と思われているが、実はバイオリンケースにはボウガンやサバイバルナイフが入っており、毛皮のコートは買ったものではなく、父親が山で熊を仕留めた際の毛皮を使ったものという、山の中の洞窟でワイルドライフを送っている少女なのでした。

 第1話はにしきの秘密を知ろうと後をついてきた同級生・万星彦が森の中で突如現れたイノシシに襲われたところを、にしきがボウガンで仕留めて助けるというストーリーです。もちろん、仕留めたイノシシのお肉は牡丹鍋にしておいしくいただきました。

 イノシシが出てくるマンガって、展開が似てきてしまうのはどうしようもないのでしょうか……。

■『戦国小町苦労譚』

 こちらは、同名小説をコミカライズした作品です。農業高校に通う歴史大好き女子高生、綾小路静子がある日突然タイムスリップしてしまい、戦国時代へ行ってしまいます。

 命を助けてもらった織田信長に仕えることになった静子は、授業 で習った最新の農耕技術を披露したところ、とんでもない量の米が収穫でき、尾張の国で農業改革を起こしてしまうという、なかなかぶっ飛んだ農耕ファンタジーです。

 イノシシが出てくるのは、単行本2巻第6話で、「稲作ばかりでなく、タンパク源も必要」と猟に出た静子が、突如現れた手負いのイノシシに襲われ、大ピンチのところを猟犬に助けてもらうというもので、イノシシについては安心と信頼の同じパターンでした。

■『鬼滅の刃』

 最後にご紹介するのは、「週刊少年ジャンプ」(集英社)に連載中で、来年アニメ化も決定している作品『鬼滅の刃(きめつのやいば)』です。

 時は大正時代、炭売りの少年、炭治郎の家族がある日、何者かに皆殺しにされてしまいま。唯一、生き残った妹・禰豆子(ねずこ)は「鬼」に変貌してしまっていました。妹を人間に戻し、家族を殺した鬼を倒すため、炭治郎が修行の旅に出るというストーリーです。

 鬼にかまれるとかまれた人間も鬼になってしまうという、いわゆるゾンビ感染系マンガと似ている設定なのですが、イノシシの扱いは、ほかのマンガとは全然違いました。

 単行本3巻から登場し、主人公・炭治郎とともに鬼と戦う、嘴平伊之助(はしびらいのすけ)というキャラクターがいるのですが、イノシシに育てられ、イノシシのマスクをかぶって獣のように戦うのです。他の作品では狩られたり鍋にされたりする運命だったイノシシが、この作品では一躍準主役級のポジションに。まさに、マンガ界におけるイノシシのイメージを覆す、期待の新星といえる存在でしょう。

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 今年の干支「亥」にちなんでイノシシマンガを紹介しましたが、いかがだったでしょうか? イノシシマニアにはたまらない特集だったと思いますが、問題はこのコラムを読む人の中に猪マニアなんているのか、というところです。今年もこんな感じでマンガをご紹介していきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

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全254話! 甘酸っぱい青春が去来する、中高生ラブコメマンガのバイブル『BOYS BE…』

 突然ですが、皆さんは大志を抱いてますか? 「Boys, be ambitious(少年よ大志を抱け)」というクラーク博士の有名な言葉がありますが、僕はせいぜい年末ジャンボを買うぐらいで、そんなに大志なんて抱けてないですが。

 今回ご紹介するのは、その「Boys, be ambitious」にインスパイアされたマンガ『BOYS BE…』です。ただし、「少年よ、大志とかどうでもいいから、彼女ぐらい作っとけ」って感じで、ラブに始まりコメに終わる、オールアバウトラブコメな内容となっています。

 本作は原作・イタバシマサヒロ先生、作画・玉越博幸先生で、1991~96年まで、「週刊少年マガジン」(講談社)に連載されていました。単行本にして32巻分、全254話。ほぼ毎回1話完結オムニバス形式のラブコメになっているため、登場人物も設定も全然違うラブストーリーが5年間、毎週掲載されていたことになります。どんだけラブの引き出し多いんだよ!

 しかも、『BOYS BE…』が終わったと思ったら、ほぼそのままのコンセプトで『BOYS BE… 2nd Season』全20巻へと続くという無限プチプチならぬ無限ラブコメっぷり。もはや、いくらでもラブコメを量産できるラブコメ工場といっても過言ではないでしょう。

 そんな本作ですが、基本的に中高生の恋愛に特化しています。大抵はちょっとさえない男子が、学校で人気の女の子に告白しようか、でもオレなんか……なんてウジウジしながら、最終的に思い切って告白してみたらOKでした! みたいな話とか、幼なじみで全然女子として意識してなかったアイツをある日突然意識し始めて……みたいな話とか、付き合いたてのうぶカップルが、まだキスもしてないけど今日は家に親もいないし、思い切って……みたいな話です。どこかで聞いたことありますよね?

 そんなありきたりなパターンばかりで、254話も作れるのかよ? と思わずツッコみたくなるかもしれませんが、作れるんです! 

■中高生にありがちな甘酸っぱいシチュエーションを、余すところなく網羅

 本作は中高生向けのラブコメですから、とにかく甘酸っぱいのが大前提。弘兼憲史先生の『黄昏流星群』みたいな熟れた恋愛は絶対NGです。そのため、なんでもありというわけではなく、甘酸っぱい恋愛シチュエーションに特化しています。

 いつもケンカしている幼なじみに彼氏ができて、ヤキモチ焼いちゃったり。

 誕生日に手編みのマフラーをプレゼントされちゃったり。

 教育実習に来た先生を好きになっちゃったり。

 自転車のチェーンが外れて困っていた女の子と急接近したり。

 イヤホン左右半分ずつで聴くカップルが出てきたり。

 ……全部、恋愛マンガあるあるじゃないですか? いや、実際はナシナシですけど。そんなに都合よく自転車のチェーン外れている女子なんか見たことないですし、イヤホン左右に分けて聴いてるカップルもリアルでは見たことありません。もし現実にいたら、ハサミで一刀両断したくなりますしね!(ならないか)

■後半はマンネリ防止策で、マニアックなテーマも登場

 とはいえ、これだけ大量の話数ですから、中には“なんだこりゃ!?”というマニアックなストーリーも突発的に出てきます。これがまたいい意味でアクセントになっており、読者を飽きさせずに楽しませてくれるのです。

・自宅で手錠を掛け合って遊んでいたら両手が使えない状態で鍵が開かなくなってしまって、おまけに鍵がシャツの中に入ってしまい、意図せず手錠プレイに発展。

・学園祭の出し物で、ジャイアント馬場の着ぐるみを使って二人羽織をしていた男女が、転んで着ぐるみの中で急接近。

・好きな女の子に貸した帽子にいい匂いが残ってて、ずっと嗅いでいるうちに、学校中の女の子の臭いが気になりだして、嗅いで回るようになる。

・Eカップの彼女の乳輪の大きさが気になって、思い切って聞いたら怒られる。

・エッチする前にマムシドリンクを飲んだのがバレて、女の子に怒られる。

 だいぶマニアックですよね。しかし、たとえジャイアント馬場の着ぐるみが出てこようとも、マムシドリンクが出てこようとも、最終的には甘酸っぱいラブコメとして着地するのが『BOYS BE…』のすごいところなのです。

■ラブコメを科学することで、バッドエンドのない世界へ到達

『BOYS BE…』32巻の最終話では、全254話の統計データが公開されています。

 実は本作ではフラれて終了するバットエンドのパターンはたった3回しかなく、ほとんどの回がハッピーエンド。これは、バッドエンドだった時の読者のアンケートの評価が低かったことから、そのような方針になったのだそうです。まさに科学するラブコメ。緻密な計算に裏打ちされたストーリーだからこそ、これほどの長期連載になったのだといえます。

 そのほか、さわやか中高生ラブコメのイメージがある本作ですが、少年誌のニーズに応えるためか、意外とエッチなシーンも出てきます。統計データによると、パンチラシーンが254話中60回もあるそうです。パンチラ率23.6%。これを多いと見るか少ないと見るかは、人によって意見が分かれるところですね。

■ラブコメが止まらない、今も続く『BOYS BE…』ワールド

 本作はあくまで古き良き時代のラブコメ作品なのかと思いきや、実は『BOYS BE…』ワールドは今もなお続いているのです。

『BOYS BE… 2nd Season』以降も、

『BOYS BE… L CO-OP』6巻

『BOYS BE… pre-season』1巻

『BOYS BE… next season』6巻

などが出ており、現在は「イブニング」で『BOYS BE… adult season』が不定期連載中と、まるで『島耕作』シリーズ並みの息の長さを感じさせます。最終的には『BOYS BE… silver season』まで行ってしまうかもしれません。

 そんなわけで、もはや中高生恋愛のありとあらゆるケースを網羅したラブコメ巨大データベースともいえる『BOYS BE…』をご紹介しました。あらためて読み返してみると、おっさんでも年甲斐もなくキュンキュンできて、若返る気がします。もしかしたら『BOYS BE…』には、思わぬアンチエイジング効果があるのかもしれません。

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

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シュールすぎ! 「無口なゴリラ似の男子高校生」がジワジワ来る『ゴリラーマン』

 ゴリラっぽい面構えの人っていますよね。ガレッジセールのゴリとかFUJIWARA原西とか。そういえば、女優や女性ミュージシャンでもゴリラっぽいと評判の人がいたような……具体的な名前を挙げると問題になりそうなのでやめておきますが、とにかくゴリラっぽい顔の人がいるというのは紛れもない事実であります。

 今回ご紹介する『ゴリラーマン』は、まさしくド直球にゴリラっぽい男子高校生が出てくるマンガ。それ以上でもそれ以下でもない、だけどやたらと面白い。なぜ、主人公がゴリラっぽいだけで、こんなに面白くなるのか? 今回は『ゴリラーマン』の不思議な魅力について迫ってみたいと思います。

 本書は「週刊ヤングマガジン」(講談社)誌上で1988年から連載され、作者はハロルド作石先生。ほかに『BECK』とか『ストッパー毒島』などの代表作があります。

 主人公・池戸定治は、白武高校に来た転校生。顔がゴリラっぽく、無口というところ以外は謎に包まれており、白武高校の不良グループ・藤本軍団と行動を共にするようになります。そのルックスから、「ゴリラーマン」と呼ばれます。

 マンガは『BE-BOP-HIGHSCHOOL』の流れをくむような、いかにもヤンマガらしい不良高校生のドタバタ日常が展開されるのですが、そこに謎の男「ゴリラーマン」の存在があるだけで、とてつもなくシュールで個性的なマンガに仕上がっています。

■一言もしゃべらない主人公

 ゴリラーマンは主人公でありながら、まったくしゃべりません。主人公やヒロインなどの中心人物がまったくしゃべらない作品は、最近だと『ハイスコアガール』の大野晶ちゃんとか、『となりの関くん』の関くんなどが挙げられますが、ゴリラーマンも負けず劣らず、まったくしゃべりません。無口なイメージのあるゴルゴ13ですら、ゴリラーマンに比べたら100倍ぐらいしゃべってます。ネタバレになるのでここでは詳細は書きませんが、ゴリラーマンが作中でたった1回だけしゃべるシーンがあります。それ以外は本当にしゃべりません。

 そんなしゃべらないゴリラ、もといゴリラーマンが主人公であるがゆえに、まるでパントマイムを見ているような空気感があります。悲しい時も、困っている時も、怒っている時も、すべてゴリラっぽい顔芸と身ぶりで表現するだけ。なんともシュールなことになっているのです。

■ケンカ最強なのに、誰も気づいてない

「ほとんどの生徒たちは、ゴリラーマンの本当の恐ろしさをまだ知らない」

 作中にたびたび出てくるナレーションですが、このゴリラーマンの知られざる正体こそが、作品の面白さの中核となる要素です。

 学校の不良グループ・藤本軍団の仲間に引き入れられたゴリラーマンですが、無口でおとなしいのをいいことに、リーダーの藤本らに使いパシリにされたりします。しかし、実はあまりにケンカが強すぎて、過去に暴力沙汰で何度も転校するハメになっているため、自分の正体をひた隠しにしているだけなのです。ケンカはプロ格闘家並みの実力、スポーツも万能で野球をやらせればプロがスカウトしにくるくらいのセンスを持っていますが、ほとんどの生徒はゴリラーマンのすごさに気づいていません。

 白武高校と抗争を繰り広げる間柴高校の不良グループが、登校中の白武高校の生徒を襲うようになり、番長格の藤本までが病院送りにされてしまい大ピンチとなった時も、ゴリラーマンが誰にも見られないように一人で間柴高校に乗り込み、不良グループを全滅させてしまいました。ゴリラーマンのおかげで平穏な高校生活が戻ってきた白武高校ですが、ほとんどの生徒たちはゴリラーマンのおかげであることに気づいていないのです。

 ゴリラーマンのすごさに、周りはいつ気づくのか? それとも最後まで気づかれないのか? そんなミステリアスさもまた魅力なのです。

■次第に明かされていく、ゴリラーマンの秘密

 ほぼ毎回、1話完結型のストーリーである本作。一見すると、なんのオチもないような平凡な学園話であることも多いのですが、実は1話1話少しずつ伏線が張られており、後半へ進むに従ってゴリラーマンの秘密が明かされていきます。逆に言うと、最後まで読まないと、ただのゴリラみたいな生徒のいる不思議なマンガだという印象を持ってしまうかもしれません。

 ゴリラーマンの秘密に迫るシーンといえば、作品中盤で唐突に、顔がゴリラーマンそっくりの、お下げ髪にセーラー服を着た女子高生が自転車に乗って登場します。しばらく話数が進んでから、ようやくゴリラーマンの姉で、実はゴリラーマンよりも強い、そして案外モテるということもわかってきます。しかし、突然女装したゴリラーマンのようなキャラが出てくるインパクトは相当なもので、思わず吹いてしまうこと必至です。

 終盤では、ゴリラーマンとまったく同じ顔の池戸ファミリーが勢ぞろい。父も姉も兄も弟も、全員顔がゴリラーマン。家族全員が一切しゃべらないところも一緒で、一体どうやって家族間のコミュニケーション取ってるんだっていう、これまた卑怯なぐらいに笑えるシーンが出てきます。ゴリラネタだけでこんなに笑いを取れるって、なんてズルすぎる作品なんでしょうか。

 あらためて読んでみると、この『ゴリラーマン』は、ほかの作品に比べて何が魅力なのか説明しづらい、とても不思議な作品ではあるのですが、講談社漫画賞を獲っていたり、OVAアニメ化されたり、ファミコンゲームにまでなっており、当時最も評価されていた作品のひとつだったこともまた事実です。未読の方は、この機会にゴリラ顔が醸し出す独特のシュールな空気感を味わってみてはいかがでしょうか?

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

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突然の”三国志談義”にもスマートに対応! サクッとわかる『三国志』入門講座

 日本人が大好きな歴史マンガの代表作といえば、なんといって横山光輝先生の『三国志』、通称“横山三国志”ですよね。『三国志』こそニッポンのビジネスマンの嗜み、とばかりに日経新聞が“横山三国志”をネタにしたCMを展開したりしており、知っている人には笑えるが、知らない人にはなんのことやら、という状況になっております。

 僕自身の経験でいえば、飲み屋で同僚たちが急に熱い三国志談義を始めて、『三国志』を知らない僕は置いてけぼり。一人でエイヒレをつまみながらハイボールをひたすら飲むという状況に陥ったり、いきなり孔明のLINEスタンプを送りつけられて困惑するなどの経験をしています。こういった“三国志デバイド”な悲劇をこれ以上生まないためにも、今回は誰でも簡単に『三国志』を理解できるようになるための解説をしたいと思います。

 そもそも“横山三国志”とはなんなのか? “西川三国志”もあるのかというと、そんなものはありません。中国には魏・呉・蜀(ぎごしょく)の三国時代(西暦184~280年)について書かれた「三国志(正史)」という歴史書がありまして、その正史をベースに蜀の皇帝・劉備(りゅうび)を主人公とした「三国志演義(えんぎ)」という小説が存在するのです。

 日本では、この「三国志演義」にインスパイアされた作品が多く、吉川英治先生の小説『三国志』や光栄(現・コーエーテクモゲームス)のシミュレーションゲーム『三國志』などが人気となるわけですが、小説版『三国志』を元に、子どもでも楽しめるようにマンガ化して圧倒的支持を得たのが、横山先生によるマンガ版『三国志』なのです。とりあえず“横山三国志”さえ読んでおけば、三国志関連の知識はなんとかなります。

 そうはいっても単行本が60巻、電子書籍化もされておらず、初心者が全巻そろえて読むにはかなりハードルが高い作品です。今回はその“横山三国志”を挫折せず楽しむために必要最小限の、上っ面の部分をご紹介していきたいと思います。以降、本稿では『三国志』=横山三国志のことです。

 まず『三国志』のストーリーを非常に大ざっぱに説明しましょう。主人公は劉備(りゅうび)。母と2人暮らしで筵(むしろ)や草履(ぞうり)などを作っては売って生計を立てる底辺層の青年でしたが、当時民衆を苦しめていたヒャッハーな悪い奴ら、黄巾賊を倒すために立ち上がります。そこで出会った関羽(かんう)、張飛(ちょうひ)という超絶ケンカが強い2人の豪傑と意気投合し、3人で義勇軍として闘っていくうちに、戦国武将としてメキメキと頭角を現し、三国のうちの一国「蜀」を建国。そして、その後になんやかんやで蜀が滅亡するまでを描いたマンガです。

■とりあえず知っておきたい、三国志の主要登場人物9人

 三国志には無数にキャラが登場します。当然ながら、覚えれば覚えるほどドップリと三国志ワールドに浸れるのですが、今回の目的はあくまでも世間に話を合わせるためのにわか知識をつけることが目的ですので、とりあえず最重要な9人だけを押さえておきましょう。

劉備…ご存じ、本作品の主人公にして絶対的センター。ほかの武将に比べて、武力も知謀も秀でているわけではなく、出世欲もそんなになく、いまいちパッとしない感じですが、民衆思いで、仁義を重んじ、裏切りや卑怯な行いを絶対やらないというスタンスを貫くため、劉備を慕って三国志を代表するスター武将たちがどんどん集まってきます。このカリスマ性こそが劉備の持つ特殊能力なのです。

張飛…「桃園(とうえん)の誓い」によって義兄弟となった、劉備・関羽・張飛の桃園三兄弟の末弟で、劉備のカリスマ性に最初に気づいた人物。酒癖が悪く短気で、問題行動が多いのですが、いざ戦いになると一人で千人分の力があるといわれる「一騎当千」状態になります。とにかく信じがたい強さを見せる三国志最強武将の一人です。

関羽…桃園三兄弟の次男。張飛と同等レベルの強さを持つ上、頭脳明晰な人格者で、暴走機関車のような張飛をいさめられる数少ない男ということで、トータル的には張飛よりも高評価されている武将です。劉備は初期の段階で、関羽・張飛という三国志界有数の最強武将2人を部下にできたことが超ラッキーといえます。こんなご都合主義な展開は、ジャンプのマンガでもあんまりないです。

曹操(そうそう)…劉備にとって、最強にして最大のライバルといえば曹操。アムロに対するシャア、ケンシロウに対するラオウみたいな存在です。若い頃から戦術の天才と呼ばれ、三国のうちの一国「魏」を建国。常に中華統一の野望でギラギラしており、スキあらば劉備を潰してやろうと思っています。性格的には劉備とは真逆で、冷酷非道でズル賢いイメージがあり、作品中でもヒールとして扱われています。

呂布(りょふ)…三国志前半の最強キャラ。張飛や関羽でさえ、全盛期の呂布には勝てませんでした。とにかく鬼のように強いのですが、オツムのほうはめっぽう弱めで、文官にそそのかされて軽率に行動しがちです。劉備をはじめとする自分を助けてくれた恩人に対してもすぐに裏切る、超スーパー裏切り者キャラでもあります。最後は貂蝉(ちょうせん)という三国志を代表するハニートラップ美女にハメられた挙げ句、曹操に殺されます。

孔明(こうめい)…劉備率いる蜀軍の軍師として活躍する人物で、三国志における事実上の2代目センター。その存在は、ほぼネ申といえます。なにしろ、孔明の考えた作戦はほぼ100%成功し、敵に壊滅的な被害を負わせる上、誰々がいつ頃死ぬ、みたいな予言までできてしまうので、敵味方含め、みんな孔明の神業にビビりまくり。

 それまでは、「力こそパワー」みたいな武力によるバトルが中心だった『三国志』が、孔明の登場を機に、頭を使って作戦で勝つという頭脳戦中心に変わっていくため、作品としてもがぜん面白くなっていきます。『三国志』の前半を読んであまりハマれなかった人でも、孔明が出てくる21巻ぐらいまでは頑張って読むことをオススメします。

趙雲(ちょううん)…劉備率いる蜀軍で、張飛・関羽に次ぐ第三の最強武将が趙雲。張飛・関羽だけでも十分最強なのに、さらにもうひとり最強武将が追加されるという恐るべき層の厚さ。プロ野球で言ったら、バース・掛布・岡田がいた頃の阪神タイガースみたいな感じでしょうか。この趙雲は、張飛や関羽が年老いてだんだん出番が少なくなってくる中盤から後半にかけて輝く存在です。

孫権(そんけん)…三国のうちの一国「呉」の皇帝となる人物。呉のイケメン軍師、周瑜(しゅうゆ)率いる水軍を使った攻撃が得意です。劉備や曹操に比べると脇役っぽいポジショニングですが、3人の中では一番長生きしたのが孫権でした。

 孫権を覚えるついでにといってはなんですが、孫権の祖父・孫堅や父・孫策も三国志における重要キャラクターですので、まとめて覚えておいて損はありません。

司馬懿(しばい)…作品後半に出てくる魏の軍師。最強すぎて神状態だった孔明に唯一、対抗できたのが司馬懿です。劉備や曹操が病死した後、蜀は孔明、魏は司馬懿が率いることになるのですが、孔明と司馬懿の頭脳対決は『三国志』後半の最大の見せ場といえます。

 正直なところ、司馬懿も孔明の神がかった戦術にはやられっぱなしで、3:7ぐらいで孔明が圧勝しているのですが、孔明が途中で病死してしまうため、最終的に試合に負けて勝負に勝つ感じで、美味しいところを持っていく存在となります。

 こんな感じで独断と偏見で9人だけに絞り込んでしまうと、三国志好きの面々からは、なんだよ、董卓(とうたく)や于禁(うきん)を知らないのかよ、モグリだな! などと批判されてしまうかもしれません。そんな時は、「ああ于禁、アニメ版ではなぜか女だったあの于禁ね!」とかテキトーなトリビアを混ぜつつ相槌を打っておけば、なんとかなるでしょう。

■三国志好きが言いがちな有名イベント、用語

 三国志談義にいっちょ噛みするためには、人物だけでなく、ある程度の有名イベントや用語を理解しておく必要があります。とりあえず下記のキーワードを覚えておくと、ちゃんと『三国志』読んでる感が出せるのでおすすめです。

桃園の誓い…劉備が関羽、張飛という超絶ケンカに強い2人の豪傑と意気投合し、「桃園の誓い」という「オレたちの絆は一生、死ぬ時は一緒」みたいなブラザー感あふれる義兄弟の契りを交わした『三国志』初期の有名イベントです。

 この契りは、3人の義兄弟の固い絆を示す美しいエピソードとして語られることが多いのですが、作品後半で関羽が死んだ後、張飛や劉備は冷静さを失い、後を追うように死んでしまうことから、個人的にはむしろ、何かの呪いの一種なんじゃないかという気がしないでもないです。

三顧の礼…劉備が天才軍師・孔明を自分の軍にスカウトするために、何度も孔明の家に出向き、一度目は不在、2度目も不在、3度目になってようやっと孔明に会うことができたのですが、孔明はわざわざ3回も会いに来てくれた劉備に感激して仲間になってくれたというエピソードです。ビジネス書なんかを見ると、「三顧の礼」の精神こそ究極の営業術だ! みたいなことが書いてありがちですが、今はスマホもありますし、ちゃんとアポを取って会いに行くべきだと思います。

赤壁(せきへき)の戦い…基本的に『三国志』は、最大勢力である曹操の魏軍をいかにやっつけるか、劉備の蜀軍や孫権の呉軍がいろいろと頭を悩ませる話ですが、最強であるはずの曹操が、一度完膚なきまでにやられてしまう有名エピソードが「赤壁の戦い」です。

 曹操率いる魏軍が、呉軍の火計によってボッコボコにやられてしまうのですが、その決め手となったのが、孔明が儀式によって呉軍に有利な「東南の風を吹かせる」というものでした。実際には、孔明はこの時期に東南方向に強風が吹くことを知っていたのですが、わざわざ祭壇で儀式をやって、さも孔明が神風を起こしたように思わせたのです。こんなスーパーイリュージョンを見せられたら、誰もが孔明のことを神だと思っちゃいますよね。

孔明の罠…中華全土の武将や軍師たちを戦慄させるのが「孔明の罠」です。とにかく孔明は敵の作戦の裏の裏の裏の裏ぐらいまで読んだ上で、トリックを仕掛けてくるので、敵はほぼ100%の確率でまんまと孔明’sトラップにやられてしまうのです。孔明に対峙する相手は、何度も罠にハメられているうちに疑心暗鬼になってしまい、“孔明のことだから絶対何か罠を仕掛けている”と考えて身動きが取れなくなってしまうのです。

 ちなみに、後半に出てくる孔明の最大のライバル、司馬懿の「待てあわてるな、これは孔明の罠だ」というセリフはLINEスタンプになるほど有名です。

「ジャーンジャーンジャーン」「むむむ」「げえっ」…この3つは『三国志』の頻出フレーズです。「ジャーンジャーンジャーン」というのは、敵に攻撃を仕掛ける際に、ドラを一斉に鳴らして相手を混乱させる時の音です。「むむむ」と「げえっ」は作品中の有名武将たちがこぞって言うセリフで、用途としてはそのまんまなのですが、ネタとして「むむむ」と「げえっ」がやたらに多いマンガだということは知っておいたほうがよいでしょう。

■劉備玄徳? 諸葛亮孔明? 呼び名の謎

 ネット上の三国志関連の記事を見ていると「劉備玄徳」とか「諸葛亮孔明」という表記を見かけます。劉備が名字で玄徳が名前だから当然でしょ? と思うかもしれませんが、実はこれは間違いです。

 当時の中国人の名前は「姓・名・字(あざな)」と分かれているのが一般的で、「劉・備・玄徳」や「諸葛・亮・孔明」のように分割されるのですが、TPOに合わせて「姓&名」か「姓&字」の組み合わせで呼ぶのがルールなのです。

『三国志』では特に解説もなく「劉玄徳」とか「諸葛孔明」「諸葛亮」などの呼び方が出てくるので、誤植かな? と思ってしまうのですが、実はこれが正しい表現なのでした。「劉備玄徳」とか「諸葛亮孔明」とか得意げに言っちゃってる人は実は間違っているので、心の中でほくそ笑んでやるのがいいと思います。

 というわけで、時間がない人が上っ面だけ知るための、横山光輝『三国志』入門講座でした。これで、突然の同僚の三国志談義にもバッチリ対応できるはず……なのですが、曹操が主人公のマンガ『蒼天航路』の話をされると全然通用しないことが先日判明しましたので報告しておきます。こういう時は「孔明の罠」だと思ってあきらめるしかありませんね。

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

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ジャンプ黄金期の異色作! 破天荒教師が博打で解決『アカテン教師 梨本小鉄』

 義務教育を受けていたころから、かれこれ30年近くたった今、あらためて思うのですが、教師って個性の塊でしたよね。サラリーマン生活を送っていると良くも悪くも「普通」の範疇で収まる人たちが多い中、結構変人の教師が多かったなあと思うのです。生徒が宿題を忘れると「窓から飛び降りて死ね!」が口癖だったF先生、教室に隠しカメラを設置していたのがバレて更迭されたT先生、今ごろ、どうしているのでしょうか?

 ところで、教師が主人公のマンガといえば、『GTO』から『まいっちんぐマチコ先生』まで、星の数ほどある定番ジャンル。そんなレッドオーシャンな市場の中でも、一度読んだら忘れることができない個性的な教師マンガがたびたび出現します。

 今回ご紹介する『アカテン教師 梨本小鉄』もそのひとつ。「週刊少年ジャンプ」(集英社)での連載作品ながら、すべてを博打で解決しようとする不健全極まりない不良教師が主人公の異色作です。

 連載期間は1986~87年まで、単行本は全4巻と、決して大ヒット作品というわけではないのですが、リアルタイムで読んでいたジャンプ読者にとっては絶対忘れることができないインパクトがありました。

 なにしろ、当時のジャンプといえば『北斗の拳』『ドラゴンボール』『キン肉マン』『シティーハンター』などが巻頭を飾る黄金期で、ほとんどの連載作品が「友情」「努力」「勝利」のジャンプ三原則を導入していた時代です。

 そこに、ニット帽・グラサン・口ヒゲという、うさん臭さ満載の小汚いおっさんを主役に据え、「飲む」「打つ」「買う」というジャンプ三原則の真逆を行くようなコンセプトの作品が突如として現れたわけですから、それはもう違和感バリバリでした。

 産休に入った教師の代用教員として、小春日和中学3年A組の担任をすることになった梨本小鉄は、いきなり二日酔いで初出勤。「俺が知りたけりゃあ…俺の授業に顔出しな!!」と言い放って新任挨拶をパスするなど、初日から破天荒。当然ながら、同僚の先生からは非難轟々です。そんな小鉄は、少年時代から天性の勘のよさで“予想屋の帝王”と呼ばれ、中学・高校では満点首席、自作の予想問題を的中させて、国内最高峰の東京T大に合格するという筋金入りの勝負師。人呼んで「“常勝無敗”の梨本小鉄」なのです。

■生徒に小遣いをベットさせる伝説の授業

 初授業も、トンデモないものでした。松・竹・梅の3問を用意し、生徒に自分の学力に合わせて問題を選択させます。それだけならいいのですが、サラ金で借りてきた札束を見せ金にして、生徒に小遣いをベットさせるのです。倍率は松が5倍、竹が3倍、梅が2倍……しかも確率の問題という名目で、丁半サイコロの確率を出す問題や、馬の予想表から3-6がくる確率を当てる競馬の問題、麻雀の配牌を見て自分がアガれる確率を求める問題など、ことごとく博打絡み。中学生の授業としては、あまりに刺激が強すぎます。

 しかも、ちゃんと確率を求めて回答する生徒に対し、「これはなァ『数学』じゃねえ…博打の問題だ!」「受験!? そんなもの、俺には関係ねえよ!! 俺は“運”を教えに来たんだ!!」など、ものすごい無茶な理屈をつけ、結局小鉄が親の総取りです。傍目には、ほぼ教師による生徒のカツアゲ。すごく……斬新な授業ですよね。

■金の亡者かと思いきや、実は生徒思いの人情派

 普段は生徒のことを「商売道具」などと呼ぶ小鉄ですが、困っている生徒には教師の枠を超えた面倒見の良さを見せてくれます。

 小鉄のクラスの女子、高橋初音の父親は飲み屋を経営しているのですが、まむしの銀造というヤクザ者の嫌がらせに遭っていました。たまたま初音の家に家庭訪問をしていてヤクザとカチ合った小鉄が揉め事に参入。小鉄が勝ったらヤクザにお引取り願うことを条件に勝負を始めます。

 それがなんと、「便器に札束を詰め込んで詰まらせたほうが勝ち」という謎の勝負。先攻のまむしの銀造が100万円を便器にツッコみますが、全部流れてしまいます。対する小鉄の所持金は、サラ金から用立てた100万円のみ。つまり、このままでは負けは必至ですが……実は小鉄の用意した100万円は聖徳太子の描かれた旧札。旧札のほうが新札よりサイズがでかいため、見事便器を詰まらせることに成功!初音のお父さんのピンチを救ったのです。いい先生ですよね。勝負内容はまったく意味不明でしたけど。

■独自の試験対策でクラスの成績が急上昇

 そんなこんなで、いい加減な二日酔いのギャンブル野郎だと思われていた小鉄が、次第に生徒から絶大な信頼を集めるようになるのですが、同僚の教師たちには疎まれ、校長にも目をつけられ、ついには解雇の危機に陥ります。

 そこで、小鉄は校長たちに、実力考査で自分のクラスの成績を急上昇させることを約束。手段を選ばない小鉄は、クラスの生徒全員に小鉄独自のカンニング方法を伝授。くしゃみ、せき、しゃっくり、ため息などの生理現象を利用して答えを教えるという画期的な方法です。

 さらに小鉄は、生徒に各教科の教師を尾行させて、アフター5の行動からテストの出題傾向を予想します。典型的なマイホームパパの教師は、型にはまった基本問題。クラブのママにべったりのスケベ教師はネチッコイ「筆記問題」で来るに違いない! など。出題者がスケベだと筆記試験になるみたいです。参考になりますね。

 そもそも、教師が生徒にカンニングを指南している時点で、教育者としてかなりアレなんですけど。その辺はジャンプのマンガなので仕方がありません。

■迷走しまくりのエピソード「全日本有能教師トーナメント」

 初っ端のインパクトのあるギャンブル授業のあと、しばらくはよくある人情教師マンガみたいなストーリーが続いていたのですが、作品終盤に突如として「全日本有能教師トーナメント」なるバトルが始まります。迷走するジャンプ作品が打ち切り目前にしてバトル展開に走る……黄金期のジャンプで日常的に見られた光景です。

 このトーナメントは、全国から選りすぐられた凄腕教師7名が賞金1,000万円を賭けて闘うバトル。各中学校から選ばれてたドロップアウト落ちこぼれの精鋭部隊のクラスの生徒をいかに手懐け、学力を向上させるかを競うのです。というか、”落ちこぼれの精鋭部隊”ってなんなんだよ!? 言葉として矛盾してるだろ!

 小鉄もたいがいヤバイ教師ですが、ほかのライバル教師たちも危険すぎ。どう考えても教師になっちゃいけないレベルです。

●貴王子紀世彦(たかおうじ きよひこ)

 小鉄の同僚で、通称「教育界の貴公子」。金持ちなのをいいことに、生徒をロレックスなどの金品で釣って成績を引き上げようとする成金教師。

●訥久広樹(どつく ひろき)

 往年のスパルタ塾「戸塚ヨットスクール」の戸塚宏校長を思いっきりインスパイアしている教師。ジャージ姿で竹刀をぶん回し、問題を間違えると沖に出てヨットの特訓をさせるという、戸塚ヨットそのまんまのスタイルで生徒が泣き叫びまくり。

●楠見玲子(くすみ れいこ)

「女性の自立」をモットーとするフェミニスト教師。授業中に「教室にも女性の権利確立を!」などと叫び、男子生徒を徹底的に弾圧。しかし、小鉄に敗れた後は教育方針が180度変わり、問題が解けたらおっぱい触らせてくれるエロ女教師に変貌。

●アビ・ナーシ・ヨンゾン

 ネパール出身の外国人教師。「梵(ぼん)」しか言わないが、超能力が使える。某尊師のように座ったまま空中浮揚をしたり、試験中にテレパシーで生徒の脳内にテストの答えを送り込んだりできる最強の教師。

 どうですか? こんな教師ばっかり出てくるバトル。見てはみたいですけど、絶対教わりたくはないですよね。

■人生に役立つかもしれない名言の数々

 本作には、人生の指針となるようなグッとくる名ゼリフもたくさん出てきます。

「この世に人が住む限り、『博打』と『教師』はなくならねえよ!!」

「アホダマー!! 運を手にすりゃあ 自分の『勝つ方程式』が見えてくる!!」

「いくら”学歴”ブラ下げても…天下を取らなきゃ親がなくぜ!!」

「アホダマー!! 酒の力を借りるのも人間社会の特権よ!!」

 などなど。ただ、これらはすべて中学教師の発言ですからね。それはそれでマズいんじゃないかと思わされます。ちなみに「アホダマー!」というのは小鉄オリジナルの決めゼリフです。当時450万部も発行されていたジャンプに載っていながら、ちっともはやらなかったのですが、このセリフを言ってピクッと反応した人はきっと“隠れ梨本小鉄ファン”に違いありませんので、そっとしておいてあげましょう。

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

◆「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

突然の大地震、その時あなたはどうする? 実践的震災サバイバルマンガ『彼女を守る51の方法』

 6月18日に発生した「大阪府北部地震」では4名の方が亡くなり、建物や交通網などに多くの被害を出しました。

 さらに、7月初旬に西日本を襲った記録的豪雨は、広島、岡山、愛媛など12府県にまたがり、甚大な被害を拡大しています。日本のどこにいようとも、地震、火山、豪雨など、自然災害の危機からは逃れられる絶対安全な場所はないということをあらためて痛感させられますね。

 自然災害についての意識が高まっている今だからこそ、ぜひ読んでもらいたいマンガが『彼女を守る51の方法』です。東京・お台場にマグニチュード8の直下型地震が起こったら、東京はどうなってしまうのか――そんな震災サバイバルマンガです。

「週刊コミックバンチ」(新潮社)にて2006~07年まで連載されていた作品で、作者は『ライチ☆光クラブ』『帝一の國』の古屋兎丸先生です。

 以前、本コラムでご紹介した『ドラゴンヘッド』(参照記事)は、正体不明の巨大災害後の人間の絶望と恐怖を描いたサバイバルホラーでしたが、この『彼女を守る51の方法』は、震災後に帰宅難民となってしまった人々がどういう行動を取るべきか、という部分に主眼が置かれた実践的なものです。

 主人公・三島ジンはお台場にある、フジテレビもとい、アルプステレビの就職説明会にきていた大学生。そしてヒロイン・岡野なな子は、ゴスロリメイドの格好で「死の時、魂は完全に聖化される」とか「聖デストピアが、ソドム様が…」とかブツブツつぶやいている、病み系女子です。

 ジンは、お台場にビジュアル系バンド「サリン・ヘルヴァイン」のライブ追っかけで来ていた高校時代の同級生・なな子を偶然見つけ、話しかけますが、彼女は「私はロルコです、昔のことは覚えてません」などと意味のわからないことを話しだして、過去を否定。高校時代、ジンはなな子のことが好きだったのですが、変わり果てた彼女にドン引き。この娘を守る方法が本当に51も存在するのでしょうか……。

 実は、なな子は高校時代にいじめに遭い、人間不信になってしまっていたのです。なな子の背負っていたつらい過去を思い出したジンは、彼女を放っておけず、めげずに話しかけるのですが、そんなジンをよそに、自暴自棄になって滅びの呪文「バルス」を唱え続けるなな子。やっぱり、こいつヤバイ……とその時、ものすごい轟音とともに激しい揺れが発生。そう、マグニチュード8の東京直下型地震が発生したのです。2人のいるお台場は震度7。揺れが収まると、目の前には地獄絵図が広がっていました。

 人が乗ったままの観覧車は折れ曲がり、建設中のマンションは倒壊、液状化でマンホールがせり上がり、地面は水浸しです。ゆりかもめは脱線・炎上し、ショッピングセンター内も死者だらけ、アルプステレビはケガ人だらけで野戦病院のようです。恐るべし東京直下型地震……。

 ジンとなな子はお台場を脱出し、2人の家がある新宿・早稲田を目指します。しかし、そのためには余震で揺れが続く恐怖のレインボーブリッジを渡り、震災後のアウトローが徘徊する六本木や、ギャングの巣窟となっている渋谷を抜けて歩いていくことになります。未曾有の崩壊に陥った東京には、多くの危険と困難が待ち受けていたのです。

 そんな流れで2人の目を通して、震災直後にパニックを起こした人々の心理状態や、一体どう行動するのが正解なのかなどが描かれている作品ですが、その中でも特に知っておいたほうがよさそうな内容を一部ご紹介します。

■ケガの止血にはナプキンを使え!

 太ももにガラスが突き刺さり、大量出血している女の子を助けるため、ジンはネクタイで太ももを縛り、さらに女の子の持っていたナプキンを利用して止血します。ナプキン! そういう手もあるのか!! 考えてみれば、血を吸収するためのテクノロジーの粋が集まっているわけですから、絶好の止血帯というわけです。

 大ケガしたらナプキン。いざという時のためにナプキン。特に女性はぜひ覚えておきたいですね。

■災害時はハイヒールの足を折れ!

 震災後は路面状態が悪く、亀裂が入っていたり陥没していたり、浸水していることもあります。そんな時、歩きにくい靴ではとてもサバイバルできません。ハイヒールを履いているのなら、思い切ってハイヒールの足を折って動きやすくしてしまいましょう。

 ちなみになな子は、ゴスロリスタイルの厚底パンプスを履いていたため、倒壊して無人となったショッピングセンターのマネキンが履いていたスニーカーを拝借。盗むんじゃないよ、借りるだけ! 

■パニックが発生したらとりあえず、しゃがんで大声を出す!

 お台場脱出のためにレインボーブリッジを渡るジンとなな子。しかし、レインボーブリッジを渡っている最中に巨大な余震が発生して橋が大きく傾いてしまい、橋が崩れるかもとパニックになった人の波が発生。このままでは、橋を渡る前に人の波にのまれてしまいます。その時ジンはすさかず、なな子に向かって大声で「しゃがめ!」「身を固めろ」「頭を守れ」と叫ぶことで偶然にもパニックが収まりました。

 誰かが突然しゃがむと周囲の人も反射的にしゃがんでしまう、という群集心理が偶然にも発生したのです。平常時にやると変な人扱いされそうですが、非常時にパニックが起こったら、冷静になってまず「しゃがむ」というのが有効そうです。 

■震災後はレイプマンがいっぱい! ミニスカ・お色気は厳禁!!

 メディアではほとんど報道されませんが、実は震災後、治安が不安定な状態につけ込んだ犯罪、特に強姦などが起こることもあるみたいです。酒を飲んだ男性がその勢いで……というケースが多いそうで、女性は要注意です。

 作品中盤で登場し、ジンやなな子と行動を共にするリカという少女は、ミニスカートにギャルメイクで、震災後も男に色目を使って食料を分けてもらいながら賢く生き抜いていましたが、調子に乗りすぎて六本木のアウトローたちに囲まれて襲われてしまいました。

 ミニスカートや露出の多い服装をしている場合は、できるだけ着替えたほうがよさそうです。

 さらに作品後半の舞台となる渋谷は、政府からの救援が1週間近く来ない状況で、ギャングたちによるレイプなどの犯罪の巣窟となっており、109ならぬ009(マルキュー)はギャングたちから逃れた女性だけで籠城する女の城と化していましたが、精神的ストレスの限界となった帰宅難民たちが暴動を起こし、マルキューに一斉に襲いかかるシーンがあります。

 しかし、マルキューにいた女性陣は、洋服を極限まで重ね着して、目の下にクマ、顔にニキビやソバカス、鼻の穴も大きく描いて、眉毛は太く眉尻は下げるという究極のブサメイクにより、男たちに襲われるのを逃れたのです。震災時は女であることを捨てる。究極の選択といえますが、これで身を守れるなら簡単なもんです。

■骨折ぐらいでは治療してもらえない! 災害医療トリアージ

 男たちにレイプされ、心身ともに傷ついたリカの体を医者に見せるため、病院へ向かうジン一行。

 しかし、そこで行われていたのはトリアージという、救命医療の方法。命を救える可能性がある人を最優先で治療するためのもので、けが人が赤、黃、緑、黒などのタグで色分けされており、赤以外のタグの人は治療をしてもらえない状況でした。

 たとえ骨折していたり、眼球が飛び出ていても、命には別状がないということで治療をしてもらえないのです。当然リカも診てもらうことができず、病院を後にします。

■富士山が爆発する! 怪しげな宗教団体による震災時のデマ

 震災が起きると、弱った人々の心に忍び込むように、怪しげな宗教団体が勢力を伸ばしてきます。本作品では食糧難が続く渋谷の帰宅難民に、食料とセットで「21世紀箱舟学会」なる、うさん臭い名前の宗教が会報を渡すシーンがあります。おなかが減っていてそこに食べ物があれば、宗教の会報だろうとなんだろうともらってしまうというのが人のさがですよね。

 しかも、「間もなく富士山が噴火する」「北朝鮮が侵略してくる」なんてもっともらしいデマ情報をセットで刷り込まれたら、不安になって入信してしまうかもしれません。デマがはやりやすい、というのも震災後の特徴のようです。ちなみに主人公のジンも、まんまと宗教にハメられ、大ピンチに陥ってしまいます。

*** 

 というわけで、大学生とゴスロリ女子による震災後の7日間を描いた『彼女を守る51の方法』を紹介しました。コメディっぽいシーンやラブストーリー要素もあり、堅苦しくなく読めますが、万が一の時には、意外とこういうマンガで得た知識というのが役に立ったりするものです。読んでおいて損はない作品といえるでしょう。

 

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

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