出版不況を象徴する衝撃タイトル『マンガに、編集って必要ですか?』を読んで気がついたら泣いていた件

 

 

 今回ご紹介するのは、タイトルがかなり衝撃的な『マンガに、編集って必要ですか?』という作品。なんだなんだ、出版業界に対してモノ申す系の作品か!? 漫画家と編集担当といえば、二人三脚のイメージが太古の昔からあったじゃないですか! 出版不況をこじらせすぎて、その蜜月関係がいま崩壊しようとしているってことなんでしょうか……?

 作品名から漂うなんとも言えないダークネスなワクワク感を抑えきれずに読み始めてみた読み始めてみたものの、気がついたら目のあたりからこぼれ落ちる謎の水滴。何これ、もしかして……涙!? ていう感じになる作品でした。一体どういうことなのか、ご紹介しましょう。

『マンガに、編集って必要ですか?』の作者は青木U平先生。不倫のテクニックを描いた代表作『フリンジマン』が実写ドラマ化されたことも記憶に新しいです。『フリンジマン』以来、青木先生の描く女性キャラが全員「愛人」ぽく見えてしまう症候群に陥ってるのですが、どうやら本作ではそれはなさそうです。

 舞台はとある喫茶店、中年漫画家・佐木小次郎(45)と新米女性編集者・坂本涼(24)の打ち合わせのシーンから始まります。キャリア8年目、ヒット作が出ない焦りから、不毛な打ち合わせを切り上げて早く漫画を描きたい漫画家・佐木。一方、空気を読まずにケーキセットなんかを頼んじゃって、のんびりまったりと雑談をする編集担当・坂本。SかMかが判定できる心理テストを始めたりして、佐木のイライラが募っていきます。やべえ……オープニングからいきなり「編集いらない」感がムンムン漂ってる。

 その後も、かみ合わない打ち合わせは続きます。それもそのはず、坂本はファッション誌「Veve」から異動してきたばかりのキラキラ女子。マンガの編集者としては素人同然なのです。

 佐木が現在連載しているマンガは『男の四十路メシ』なる、ガッツリ井之頭五郎フォロワー的な作品ですが、坂本はマンガの舞台として「ナイトプール」を勧めてきたりします。「”映え”すると思うんですよー」……なんて脳みそがタピオカでできてるんじゃないかと思えるような緩めのトーク。そして、ついには……

 徹夜して海外ドラマを観ていたため、打ち合わせ中に居眠りしてしまう坂本。ちょっ、おま……ナメてんのか!? やっぱり編集はいらない! もう、タピオカ飲んで帰れ!!

 とまあ、そんな一向に作家のテンションが上がらない月イチ打ち合わせを惰性で繰り返している中、唐突に「その時」が来てしまいました。

「佐木先生の『男の四十路メシ』なんですけど……あと3回で打ち切りです」

 いきなりの死亡宣告。

「単行本が売れてないから…?」「そう…ですね」

 まったくオブラートに包まず、スーパードライに返答。そこはもっとなんか……柔らかい言い方ないの?

 ショックを隠しきれない佐木に対して、あっけらかんと返す坂本。

「考えてきたんです、新企画をいくつか」「佐木先生の新作、早く読みたくて」

「考えられるかそんなもん」

 今さっき打ち切り宣告されたばかりですから、そりゃそうですよね。空気読めないにもホドがあります。恐るべしタピオカ世代。

……ここまで見てきて漫画家かわいそうすぎる、マジで編集絶滅しろと思った人が多数かもしれません。しかし、このへんから作品の流れが変わっていきます。

 突然ポロポロと涙を流し始める坂本。そう、彼女も担当作品が打ち切りになることを人一倍悲しんでいたのです。涙を見せまいと平静を装っていたのですが、ついにこらえきれずに泣きだしてしまいました。

 あれ、もしかしてこの娘……いいヤツなんじゃ?

 実は彼女が持ってきた新作の企画書、相当に佐木のマンガを読み込んだ上で、今どきのトレンドも取り込んだ、しっかり作り込まれた企画書だったのです。その素晴らしさに、佐木もさすがに見直します。

 それもそのはず、坂本は女性誌出身のキラキラ女子編集者を装っていただけで、もともとは重度の引きこもり漫画オタク。高校時代から、面白い漫画を漫画家と一緒に作り上げるマンガ編集の仕事に就くことを熱望していたものの、入社した出版社では女性誌の編集部に配属、その後、やっと念願かなってマンガ編集部に転属となったのでした。まったくそんなそぶりを見せない、ただのタピオカ女子だと思っていましたが、この意外な不意打ちに、ついホロっときてしまったわけですよ。オイどんは。

 この企画書ならイケる! ようやっと坂本の能力を認め、新作で出直しを図ろうとした佐木でしたが、その矢先に……坂本が失踪。ズコー、なんという展開でしょう。

 そして、坂本が失踪して2年の時が流れ……その後もほかの編集担当と組むも鳴かず飛ばずだった佐木の前に、再び坂本が姿を現すのです。なぜ彼女は失踪したのか、失踪している間、何をやっていたのか、そして2人は再びパートナーになることができるのか……? 現在も新潮社「くらげバンチ」WEB上で絶賛連載中の作品です。

 今のところ、結局マンガに編集がいるのかいらないのか……その結論は出ていないわけですが、今後どんなストーリーになっていくのか予想がつかなすぎて楽しみな作品です。なお、誤解のないように言っておきますが、本作にタピオカは出てきません。

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

◆「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

 

●くらげバンチ(毎週金曜更新)

https://kuragebunch.com/episode/10834108156636852847

 

 

ジワジワくる、ブレない地味女の魅力『野田ともうします。』

 平成の時代に新たに生まれたモテキーワードに、「メガネっ娘」「不思議ちゃん」「地味系女子」なんていうものがあります。特にマンガの世界においては、地味でいかにもモテなそうな女子がメガネを取ったらかわいいことが判明し、激モテする……みたいなギャップ萌えが多数登場するようになりました。ギャップ萌え、いいですよね。僕なんか、すべてのマンガにギャップ萌えの要素があればいいと思ってるほどです。

 しかし、今回紹介する『野田ともうします。』(著・柘植 文)は、「メガネっ娘」「不思議ちゃん」「地味系女子」の要素をすべて兼ね備えていながら、それらがまったくモテ方面に作用していない、ガチでストイックな地味系女子マンガです。そして、その世界観・発想がすべて読者の斜め上を行く、究極の不思議ちゃんなのです。

 この形容詞しがたいジワジワくる面白さをなんとか皆さんに伝えたい、それが本稿の趣旨であります。

 本作のヒロイン・野田さんは、埼玉にあるFラン大学・東京平成大学の文学部ロシア文学科に通う女子大生。特技は親指を気持ち悪く動かせることで、その特技を生かして手影絵サークルに所属しています。この時点でいろいろとツッコミどころがありますが、まあとにかく花の女子大生とは程遠いキャラクターです。

 加えて、奥が一切見えない度の強そうなメガネ、実用本位のガチな三つ編み、スーパーの衣料品売り場で買ったようなトレーナーにGパン姿という飾らないビジュアル。どれひとつ取ってもラブい要素がない、完璧な地味女子です。そんな野田さんの行動一つひとつが独特すぎてジワジワくる、気がつくとちょっと好きになっている……そんな作品です。野田さんの魅力を伝えるべく、エピソードの数々を紹介していきましょう。

あらゆる行動が女子大生らしくない

 大学のクラス自己紹介の時、のみ込んだ金魚を口から出す「人間ポンプ」を披露する野田さん。当然、周囲にドン引きされます。しかし、まったく意に介さない、我が道を行くのが野田イズム。おそらく、ドン引きされていることすら気づいていないのです。

 大学生といえば合コンですが、合コンの時の自己紹介では「石破防衛大臣のモノマネ」を披露し、思いっきりその場をシラケさせます。この空気の読めなさ加減も野田さんの魅力。そんな野田さんの合コンの感想は、太宰治の小説の一節を引用し、「自分には人間の生活というものが見当つかないのです」。いや、いくらなんでも見当ついてなさすぎだろ……。

 クラスの女子ともっと打ち解けようとして、オシャレにスイーツの話を切り出してみる野田さん。「太宰治が心中した鎌倉の小動岬の近くの漁港で食べたシラスが甘くておいしかった」という話をしたところ、完全に無視されました。それ、スイーツの話じゃねーだろ!

 ここまでですでに感づいているかもしれませんが、野田さんは文学に精通しており、太宰治や芥川龍之介作品の一節からセリフをちょいちょい引用したがります。それはそれで文学少女らしくて萌えポイントのようにも思えるのですが、野田さんのチョイスはマニアックすぎるのです。

 バイト先のファミレスでゴキブリの死骸を見つけた時は、「さようでございます、あの死骸を見つけたのはわたしに違いございません」(芥川龍之介「藪の中」)などとセリフが自然に出てくる博学ぶり。

「太宰治の『津軽』って、文庫本に注釈が447個あるのをご存知ですか? つまり本文と巻末を447回行き来しなければいけないのです!」

 みたいな細かすぎる豆知識も紹介してくれます。一般人には恐ろしいほどにどうでもいい知識ですね。

 ちなみに野田さんは自分の誕生日を伝える時も、「私の誕生日って、アントワネットが断頭台で処刑された日と同じなんですよー」などと言います。もっとなんか別の表現方法あるだろ……。

ファミレスバイトで大活躍

 野田さんは大手ファミレスチェーン「ジョリーズ」でウェイトレスのアルバイトをしています。このジョリーズのキャッチフレーズは「すべてはお客様のために」なのですが、そのフレーズを真に受けている野田さんの接客方法は、ほかの人とちょっと違います。

「和牛ハンバーグ」を頼む客に対し、

「和牛という表記は国産を意味するものではなく、外国で育てた和牛を輸入したものであったりしますがよろしいですか?」

「海藻サラダ」を頼む客に対し、

「もしかして『海草=ヘルシー』と思われてのご注文かもしれませんが、当店のドレッシングをかければみな似たようなものですがよろしいですか?」

「ドリンクバー」を頼む客に対し、

「意外と面倒でおかわりしなかったり元をとろうと無理に飲んで後でトイレに行きたくなったりしがちですがドリンクバーご注文で大丈夫ですか?」

常連に対して、

「あんまりいらっしゃるとエンゲル係数が高まりますがよろしいですか?」

などなど、いちいち余計な一言を添えて接客をしてくれるのです。このせいで、営業に影響が出ていると思いきや、「すべてはお客様のために」を実践している貴重な店員ということリピートして通ってくれている常連客がたくさんいるのです。野田さんの隠されたカリスマ性が光るエピソードですね。

 地味系女子は自分に自信がないので、行動力もあまりないように思われがちですが、野田さんの場合は自分では地味だと思ってない、天然の地味系女子なので、意外にもアグレッシブな一面を持っています。

 ある日突然、大学のミスコンに出場することを決意する野田さん。テレビが壊れたため、優勝賞品の42型プラズマテレビ目当てにしているのですが、友人の重松さんに「野田さん、今あなたは100mを3秒ぐらいで走ろうとしてるわよ」って言われるぐらいの可能性の低さです。

 しかし、野田さんには勝機があるようです。

「ホラ、ふざけてクラスの目立たない子をみんなで学級委員に推薦しちゃうなんてこともありますし!」

 ……結果、書類審査で落選でした。

 また、大胆にも出会い系サイトに登録したりもしています。彼氏を見つけるとかいう動機ではなく、いろいろな人と交流してみたいと文通代わりに使っていたのですが、その交流内容にはだいぶクセがあり、本の中で挟まって死んでる虫「紙魚(シミ)」の話題をした挙げ句に、その虫の写真を送りつけたら相手から返事が来なくなってしまいました。……なぜ、その話題で共感を得られると思ったのか!

犬のヨダレで懸賞GET!?

 野田さんは究極の不思議ちゃんですから、いろいろと特殊な能力も持っています。懸賞ハガキを出す時に、犬のヨダレで切手を貼ると絶対当たるジンクスを持っているのです。ただし、安価な賞品はチワワクラスの犬で当たるが、1万円を超えると大型犬じゃないと当たらないという制約もあるため、ブルドッグのヨダレを使って「越前ガニ」を当てたりしています。なんだその輝かしい実績は……。

 そして、ハワイ旅行を当てるため、ついに野田さんが動く! なんと、命を懸けて土佐犬のヨダレをゲットしに行くのです。ボロボロになりながらも、無事土佐犬のヨダレで切手を貼ることができ、結果としてハワイアンセット(マカダミアナッツほか)が当たりました。やっぱり、当たることは当たるんだ!!

 そんなわけで、読むほどにジワジワくる不思議な面白さのある地味系女子マンガ『野田ともうします。』を紹介しました。ハマる人は絶対ハマるので、一度読んでみてはいかがでしょうか? それにしても女性が主人公なのに、すがすがしいくらい恋愛の要素がゼロなのも、今どきのマンガとして逆に新鮮な体験でした。

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

◆「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

ジワジワくる、ブレない地味女の魅力『野田ともうします。』

 平成の時代に新たに生まれたモテキーワードに、「メガネっ娘」「不思議ちゃん」「地味系女子」なんていうものがあります。特にマンガの世界においては、地味でいかにもモテなそうな女子がメガネを取ったらかわいいことが判明し、激モテする……みたいなギャップ萌えが多数登場するようになりました。ギャップ萌え、いいですよね。僕なんか、すべてのマンガにギャップ萌えの要素があればいいと思ってるほどです。

 しかし、今回紹介する『野田ともうします。』(著・柘植 文)は、「メガネっ娘」「不思議ちゃん」「地味系女子」の要素をすべて兼ね備えていながら、それらがまったくモテ方面に作用していない、ガチでストイックな地味系女子マンガです。そして、その世界観・発想がすべて読者の斜め上を行く、究極の不思議ちゃんなのです。

 この形容詞しがたいジワジワくる面白さをなんとか皆さんに伝えたい、それが本稿の趣旨であります。

 本作のヒロイン・野田さんは、埼玉にあるFラン大学・東京平成大学の文学部ロシア文学科に通う女子大生。特技は親指を気持ち悪く動かせることで、その特技を生かして手影絵サークルに所属しています。この時点でいろいろとツッコミどころがありますが、まあとにかく花の女子大生とは程遠いキャラクターです。

 加えて、奥が一切見えない度の強そうなメガネ、実用本位のガチな三つ編み、スーパーの衣料品売り場で買ったようなトレーナーにGパン姿という飾らないビジュアル。どれひとつ取ってもラブい要素がない、完璧な地味女子です。そんな野田さんの行動一つひとつが独特すぎてジワジワくる、気がつくとちょっと好きになっている……そんな作品です。野田さんの魅力を伝えるべく、エピソードの数々を紹介していきましょう。

あらゆる行動が女子大生らしくない

 大学のクラス自己紹介の時、のみ込んだ金魚を口から出す「人間ポンプ」を披露する野田さん。当然、周囲にドン引きされます。しかし、まったく意に介さない、我が道を行くのが野田イズム。おそらく、ドン引きされていることすら気づいていないのです。

 大学生といえば合コンですが、合コンの時の自己紹介では「石破防衛大臣のモノマネ」を披露し、思いっきりその場をシラケさせます。この空気の読めなさ加減も野田さんの魅力。そんな野田さんの合コンの感想は、太宰治の小説の一節を引用し、「自分には人間の生活というものが見当つかないのです」。いや、いくらなんでも見当ついてなさすぎだろ……。

 クラスの女子ともっと打ち解けようとして、オシャレにスイーツの話を切り出してみる野田さん。「太宰治が心中した鎌倉の小動岬の近くの漁港で食べたシラスが甘くておいしかった」という話をしたところ、完全に無視されました。それ、スイーツの話じゃねーだろ!

 ここまでですでに感づいているかもしれませんが、野田さんは文学に精通しており、太宰治や芥川龍之介作品の一節からセリフをちょいちょい引用したがります。それはそれで文学少女らしくて萌えポイントのようにも思えるのですが、野田さんのチョイスはマニアックすぎるのです。

 バイト先のファミレスでゴキブリの死骸を見つけた時は、「さようでございます、あの死骸を見つけたのはわたしに違いございません」(芥川龍之介「藪の中」)などとセリフが自然に出てくる博学ぶり。

「太宰治の『津軽』って、文庫本に注釈が447個あるのをご存知ですか? つまり本文と巻末を447回行き来しなければいけないのです!」

 みたいな細かすぎる豆知識も紹介してくれます。一般人には恐ろしいほどにどうでもいい知識ですね。

 ちなみに野田さんは自分の誕生日を伝える時も、「私の誕生日って、アントワネットが断頭台で処刑された日と同じなんですよー」などと言います。もっとなんか別の表現方法あるだろ……。

ファミレスバイトで大活躍

 野田さんは大手ファミレスチェーン「ジョリーズ」でウェイトレスのアルバイトをしています。このジョリーズのキャッチフレーズは「すべてはお客様のために」なのですが、そのフレーズを真に受けている野田さんの接客方法は、ほかの人とちょっと違います。

「和牛ハンバーグ」を頼む客に対し、

「和牛という表記は国産を意味するものではなく、外国で育てた和牛を輸入したものであったりしますがよろしいですか?」

「海藻サラダ」を頼む客に対し、

「もしかして『海草=ヘルシー』と思われてのご注文かもしれませんが、当店のドレッシングをかければみな似たようなものですがよろしいですか?」

「ドリンクバー」を頼む客に対し、

「意外と面倒でおかわりしなかったり元をとろうと無理に飲んで後でトイレに行きたくなったりしがちですがドリンクバーご注文で大丈夫ですか?」

常連に対して、

「あんまりいらっしゃるとエンゲル係数が高まりますがよろしいですか?」

などなど、いちいち余計な一言を添えて接客をしてくれるのです。このせいで、営業に影響が出ていると思いきや、「すべてはお客様のために」を実践している貴重な店員ということリピートして通ってくれている常連客がたくさんいるのです。野田さんの隠されたカリスマ性が光るエピソードですね。

 地味系女子は自分に自信がないので、行動力もあまりないように思われがちですが、野田さんの場合は自分では地味だと思ってない、天然の地味系女子なので、意外にもアグレッシブな一面を持っています。

 ある日突然、大学のミスコンに出場することを決意する野田さん。テレビが壊れたため、優勝賞品の42型プラズマテレビ目当てにしているのですが、友人の重松さんに「野田さん、今あなたは100mを3秒ぐらいで走ろうとしてるわよ」って言われるぐらいの可能性の低さです。

 しかし、野田さんには勝機があるようです。

「ホラ、ふざけてクラスの目立たない子をみんなで学級委員に推薦しちゃうなんてこともありますし!」

 ……結果、書類審査で落選でした。

 また、大胆にも出会い系サイトに登録したりもしています。彼氏を見つけるとかいう動機ではなく、いろいろな人と交流してみたいと文通代わりに使っていたのですが、その交流内容にはだいぶクセがあり、本の中で挟まって死んでる虫「紙魚(シミ)」の話題をした挙げ句に、その虫の写真を送りつけたら相手から返事が来なくなってしまいました。……なぜ、その話題で共感を得られると思ったのか!

犬のヨダレで懸賞GET!?

 野田さんは究極の不思議ちゃんですから、いろいろと特殊な能力も持っています。懸賞ハガキを出す時に、犬のヨダレで切手を貼ると絶対当たるジンクスを持っているのです。ただし、安価な賞品はチワワクラスの犬で当たるが、1万円を超えると大型犬じゃないと当たらないという制約もあるため、ブルドッグのヨダレを使って「越前ガニ」を当てたりしています。なんだその輝かしい実績は……。

 そして、ハワイ旅行を当てるため、ついに野田さんが動く! なんと、命を懸けて土佐犬のヨダレをゲットしに行くのです。ボロボロになりながらも、無事土佐犬のヨダレで切手を貼ることができ、結果としてハワイアンセット(マカダミアナッツほか)が当たりました。やっぱり、当たることは当たるんだ!!

 そんなわけで、読むほどにジワジワくる不思議な面白さのある地味系女子マンガ『野田ともうします。』を紹介しました。ハマる人は絶対ハマるので、一度読んでみてはいかがでしょうか? それにしても女性が主人公なのに、すがすがしいくらい恋愛の要素がゼロなのも、今どきのマンガとして逆に新鮮な体験でした。

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

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『きのう何食べた?』よりもディープ! よしながふみ飯テロエッセイ『愛がなくても喰ってゆけます。』

 4月からスタートした深夜ドラマ『きのう何食べた?』(テレビ東京系)。西島秀俊、内野聖陽をはじめとしたキャスト陣が原作のイメージにバッチリハマっていると、ネットでもかなりの評判のようです。

 原作マンガ『きのう何食べた?』は「モーニング」(講談社)で連載中のよしながふみ先生の作品で、几帳面で料理好きな弁護士・筧史朗(シロさん)と、人当たりがよくて女子っぽい美容師・矢吹賢二(ケンジ)という40代のゲイカップルが2LDKで過ごすなにげない日常を、料理を中心に描く作品。「料理」と「ゲイ」は、どちらもよしなが先生の得意とする題材で、その魅力が遺憾なく発揮されています(参照記事)。

 そして今回ご紹介する作品は、『愛がなくても喰ってゆけます。』。こちらはよしなが先生をモデルとしている漫画家「YながFみ」を主人公にしたエッセイ風のマンガで、実在するお店が次々登場するため、『孤独のグルメ』にも通じる非常に「飯テロ」度数の高い作品となっています。

ミステリアスすぎる、よしなが先生のプライベート

 主人公の漫画家「YながFみ」には、S原という男性同居人がいます。S原は、Yながを「お前」と呼ぶ世話焼き女房のような存在ですが、実はYながのアシスタントであり、大学時代のサークルの後輩でもあります。

 ああ、公私を共にするパートナーと同棲しているのだな……と思いきや、そういうわけではなく、お互いに恋愛感情はない、本当にただの同居人。しかし、もし35歳になってもお互い恋人がいなければ結婚しようという約束をしている関係でもあります。なんだそれ……。普通の感覚だとまったく理解しがたいのですが、漫画家という特殊な職業だとこういう関係が成立するんでしょうか。

食いしん坊ぶりがすさまじい

『きのう何食べた?』での筧史朗の料理上手ぶりを見ていると、よしなが先生の「食」へのこだわりが相当なものであることがわかりますが、このマンガではもっと激しく、グルメへの欲望がむき出しになっています。

「Yながはいったん気に入ると、執拗にその店のメニューを食らい尽くす悪癖がある」

「自分がウマイと思ったものを人もウマイと言ってくれる時、Yながの至福の時である」

 作中にこんなナレーションがあるぐらいです。その一方で、自分が紹介したお店をケナされることが耐えられず、当時付き合っていた彼氏をフッてしまったというエピソードもあります。「食」のほうが「男」よりも上位概念となっている、まさしくタイトルにあるように『愛がなくても喰ってゆけます。』なスタンスなのです。

 そんな、よしなが……もとい「YながFみ」の食への執着を示すセリフがまたすさまじい。

「あたし仕事をする時と寝てる時以外はほぼ四六時中食い物の事を考えて生きてんのね」

「あたしがこんだけ食い物に人生を捧げてきたんだから、食い物の方だってあたしに少しは何かを返してくれたっていいと思うの」

 尋常じゃないほどのこだわりを感じさせますよね、こと食い物に関してはだいぶアブナイ人といえます。

「YながFみ」の知人・友人たちも、食に関してある種の異常さを感じさせます。

 例えば、食べても食べても肥(ふと)らない、燃費が悪すぎて「アメ車」と呼ばれる女、O田N子。彼女も食に関してはだいぶダイナミックな持論を持っています。

「ヘルシーなフレンチくらいつまらん物は無いわね。ヘルシーに食いたきゃ他の物食うっつーの、アメリカ人の食う低脂肪アイスクリームのような欺瞞の匂いがするわ、ヘルシーなフレンチって」

 なるほど、フレンチにヘルシーさなど求めるなと。しかも、アメリカ人の食う低脂肪アイスクリームってたとえがなんだかとても具体的すぎます。

 また、Yながの2年後輩で元同居人でもあるM脇K子は激しい甘党。甘いものがあればご飯なんて要らない、ケーキバイキングする前には3食全部抜くとか、4日間食事せず甘いものばかり食べたため、塩分不足に陥りフラフラになるなど、だいぶスイーツ中心のストイックな生活を送っています。そして彼女も、甘いものばかり食べているのに痩せ型です。

 よしなが先生によれば「経験則的に馬鹿げた甘味好きの奴らはみな痩せている。肥った人間は大食した後にさらにデザートを食うから肥るのだ」だそうで。なるほどそういうことか、すべての謎は解けた!! よし、自分もこれから3食デザートのみにすれば激やせできるかも?(無理!)

ゲイに関する、さりげないカミングアウト

 よしながふみ作品といえばゲイの存在は欠かせないわけで、本作にも当然のごとくゲイが出てきます。大学サークルの同期、A藤という男です。

「オヤジは誰でも心の中に一軒のマイすし屋を持っている…」

などと謎の名言を放つ彼は、もともと学生時代はバイセクシャルだったのに、社会人になるにあたって、より世間の風当たりの厳しいほうに宗旨を統一しようと思ってゲイになったのだそうです。そのストイックさ……やはり普通じゃありません。

よしなが先生によれば、「食いしん坊の人間はそれがゲイだろーがノンケだろーが絶世の美女だろーが美味い物の前には必ず皆屈服する」……。次から次へと出てくる、よしなが先生のグルメ名言。一日中食い物のことを考えてるだけのことはありますね。

 そしてこのA藤に対して「YながFみ」が懺悔をしているシーンがあります。

「すんませんずっとゲイをネタにして漫画でメシを食ってきたよあたし、しかもうそゲイで!」

「イヤハヤ、ゲイカルチャーもよく分かってないし、申し訳ない!」

 よしなが先生、実はゲイのことよく知らないでマンガのネタにしてたんだ……。なかなか衝撃的なカミングアウトです。

『きのう何食べた?』の舞台が東京・阿佐ヶ谷であることは知られていますが、本作に出てくるお店も、阿佐ヶ谷、荻窪、新宿、中野など、中央線沿線が多めです。

 それにしても、FながとS原が食事している時の文字通り食い気味なセリフの応酬を聞いているだけでも、よだれがジュルッと出てきそうな勢い。どの店も行ってみたくなります。

「うっ、うまいなオイ!! この緑色のが!!」

「そーなのよっ!! 見た目しょっぱすっぱそーな味に思うんだけどほの甘いのよ!! そんでそこに魚介の旨味が!! うまいっしょ!? うまいっしょ!?」

「ぐわ、かに味濃い!! ガツンと濃厚」

「ね!? がっつりカニのダシの味がするトマトクリームソースでうまいんだよこれが!! やっぱイタリアンとか食いたい時ってガツンとした味のもん食いたい時だしさ!!」

 ちなみに僕は本作で紹介されている、池袋の「中国茶館2号館」というお店に実際に行きましたが、おいしい飲茶の食べ放題がリーズナブルなお値段で提供されていて、素晴らしかったです。よしなが先生、いいお店教えてくれてありがとう!

 というわけで、ドラマ『きのう何食べた?』に合わせて『愛がなくても喰ってゆけます。』も読んでおくと、深夜帯にめちゃくちゃ食欲が刺激されるのでおすすめですよ。体重2~3キロ増なら余裕です! さあ一緒に肥えましょう!!

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

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勝新パンツ事件、宜保愛子ブームはいつだった? ザ・広告業界マンガ『気まぐれコンセプト』で平成を振り返る

 新元号「令和」が、ついに発表されましたね。しかも、お札までリニューアルされるとか。あと数日で平成が完全終了ということで、いろいろと感慨深いです。筆者のような30代以上の人たちは、昭和に生まれ、青春時代やオッサン時代を平成で過ごし、余生を令和で終える……みたいな元号トリプルまたがり体験をすることになりますね。平成に結婚できなかった人は「平成JUMP」とか言うんでしたっけ? なんか響きがカッコよくていいじゃないか! たとえ令和で着地できなくたっていいじゃないか!(そこまでは言ってない)

 そんな昭和&平成経験者の僕らにとってありがちなのが、昭和と平成にそれぞれ起こったイベントの記憶があやふやになっていることです。バブルとか万博って昭和だっけ? 平成だっけ? みたいな。今回は、そのあたりをスッキリさせましょう。平成を振り返るのに最適なマンガ『気まぐれコンセプト完全版』から、「うわー、あったあった、こんなブーム」みたいな感じのやつをたっぷりとご紹介します。

 本作は「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で連載されている、ホイチョイ・プロダクションズによる4コマ漫画。白クマ広告社という架空の広告代理店を舞台に、時代のトレンドに合わせたネタをシニカルにイジる作風です。今回ご紹介する単行本『気まぐれコンセプト完全版』では1981~2015(昭和56~平成27)年までの35年分が掲載されています。

 僕なんかはバブル全盛の頃に本作をリアルタイムで読んでいたわけですが、いかにもギョーカイっぽい雰囲気が漂っているチャラチャラしたマンガっていうイメージがありまして、そのリア充すぎるオーラがあんまり好きではありませんでした。しかし、35年間このチャラいスタイルを貫いた結果、時代ごとのブームを反映した最強のトレンドデータベースとなっていたわけで、今さらながらとんでもなくスゴい作品だったことに気づかされました。

1988年(昭和63年)

 元号が平成に変わる直前の年、東京ドーム完成、青函トンネルが開通し、ビール業界では『スーパードライ』が大ブームという時代でした。

 そんな中、筆者の注目イベントは……

・『ドラクエIII』の発売日、ビックカメラ池袋東口店に行列1万人超え。

・ヤンキーによるドラクエ狩りが発生。

・浅野ゆう子と浅野温子の「W浅野」によるトレンディドラマ『抱きしめたい!』(フジテレビ系)放映開始。

・ソウル五輪でベン・ジョンソンが100m世界新を出すも、ドーピングがバレて金メダル剥奪。

「W浅野」って言葉が、とにかく脳裏に焼き付いてます。ちなみに網浜直子と飯島直子による「W-NAO」っていうユニットもあったんですけど、これはたぶん黒歴史でしょうね。

 昭和天皇の崩御による自粛ブーム、『魔女の宅急便』が映画公開、ベルリンの壁崩壊、消費税3%導入などの時代でした。

 この年の注目イベントは……

・泣ける話「一杯のかけそば」が社会現象になるも、作者の詐欺疑惑で、なかったことに。

・太陽銀行、神戸銀行、三井銀行が全部くっついて「太陽神戸三井銀行」が誕生し、その後「さくら銀行」に。

・セクシャルハラスメント略して「セクハラ」が流行語大賞。

「さくら銀行」は現「三井住友銀行」ですね。当時は銀行合併&改称ブームで、さまざまな新銀行が誕生しました。あと「アメカジ」の後に「渋カジ」ブームが来たのも、この頃だそうです。僕はファッションにまったく興味がなかったので、渋いオッサンの服装のことだと思ってました。

1990年(平成2年)

 世の中は、スーパーファミコン発売、『ちびまる子ちゃん』アニメ化、ティラミスブームの時代でした。

 この年の注目イベントは……

・勝新太郎がハワイ入国時にパンツの中に隠していたマリファナとコカインが見つかり、「もうパンツははかない」とコメント。

・歴代最強にエロいダンス「ランバダ」ブーム、石井明美がカバー。

・大仁田厚が「ノーロープ有刺鉄線電流爆破デスマッチ」で話題に。

 当時はティラミスがはやりすぎて、なんでもかんでもティラミス味になっていたのを覚えています。ロッテのティラミスチョコレートとか、板チョコの間にチーズっぽい何かがねじ込まれている無理やりさが素敵でした。また、ティファニーのオープンハートがバカ売れしたりとか、曖昧・いい加減なことを「ファジー」とオシャレに言い換えるブームも、この時代だそうです。

1991年(平成3年)

 SMAPがCDデビュー、99歳の双子姉妹・きんさんぎんさんブーム、ジュリアナ東京オープン、湾岸戦争開始の時代でした。

 この年の注目イベントは……

・『101回目のプロポーズ』(フジテレビ系)で武田鉄矢の「僕は死にましぇえん」が伝説の名セリフに。主題歌、CHAGE&ASKAの「SAY YES」も大ヒット。

・『東京ラブストーリー』(同)では、鈴木保奈美の「ねえ、セックスしよ」が伝説の名セリフに。

・霊能力者・宜保愛子ブーム。この頃は超能力とか霊能力がめっちゃ信じられてた。

・トップアイドル、宮沢りえのヌード写真集「サンタフェ」(朝日出版社)が155万部のベストセラーに。

・B21ヒロミが、大量のロケット花火を背負って宇宙へ向けて発射。やけどを負って入院。

「月9」ドラマというワードに、ものすごいパワーがあったのがこの時代です。そして、宮沢りえのヌード写真がいきなり発表された時は、おそらく日本中の男子がザワつくほどの衝撃でした。あと、フリッパーズ・ギターが電撃解散、解散理由が渡辺満里奈の取り合いのためとウワサされた……というのもこの年だそうです。満里奈の魔性っぷり、スゲーっすね。

 世の中は、バブル崩壊本格化、尾崎豊死去、バルセロナ五輪で岩崎恭子が金メダル獲得の時代でした。

 この年のお気に入りイベントは……

・不況によるもつ鍋ブーム。

・『進め!電波少年』(日本テレビ系)が放送開始。松村邦洋が渋谷センター街のチーマーにボコられる。

・貴花田と宮沢りえが婚約発表、2カ月後に解消。

 そうそうこの頃なぜか、もつ鍋がはやってたんですよ。しかも、今のおいしいもつ鍋じゃなくって、ゴムみたいにかみ切れない謎の物体が入ってる店が多くて、なんでこんなまずいもんがはやってるんだろう、これが不況ってやつなのか、地獄だな……って思ったもんです。

1993年(平成5年)

 小和田雅子さんが皇太子妃内定、ナタデココブーム、屋内スキー場ザウスがオープン、Jリーグ開幕とドーハの悲劇の時代でした。

 この年の注目イベントは……

・『悪魔のKISS』(フジテレビ系)で常盤貴子がおっぱいを丸出しして揉まれるシーンが伝説に。

・女子高生が下着を売るブルセラショップブーム。

・Tバックブームの先駆けとなった飯島愛が中学生男子の人気No.1タレントに。

・加勢大周が事務所独立でもめ、新加勢大周こと坂本一生が登場。

 そのほかにも、『料理の鉄人』(同)放映開始とか、J-POPはZARDやWANDSなどのビーイング系が全盛とか、『ポケベルが鳴らなくて』(日本テレビ系)で不倫OL役を演じた裕木奈江への大バッシングなどがありました。本当かわいそうだった……。

1994年(平成6年)

 全国的な水不足、ジュリアナの後継ディスコ・ヴェルファーレがオープン、気象予報士の登場、携帯電話が本格普及の時代でした。

 この年の注目イベントは……

・女子高生の間でポケベル暗号ブーム「14106(愛してる)」。

・『家なき子』(日本テレビ系)で安達祐実の「同情するならカネをくれ」が伝説のセリフに。

・「日清焼そばU.F.O.」でマイケル富岡がヤキソバンになる。

 そのほか、グレイシー柔術ブーム、Dr.コパの風水ブームなどがありました。当時は何かと失敗するたびに「それは風水が悪いせいだ」って言われる風潮だったのを思い出しました。知らんがな。

1995年(平成7年)

 阪神淡路大地震、地下鉄サリン事件、PHSサービス開始、発泡酒発売開始、野茂ドジャース入りの時代でした。

 この年の注目イベントは……

・Windows 95発売、発売日は秋葉原に1万人の行列。

・遠峯ありさが華原朋美に改名、小室ファミリー入り。

・ファッションブランドDKNYブーム。

などです。阪神淡路大地震、地下鉄サリン事件という出来事があっただけでも平成最悪の年だったという感じですが……明るい話題でいうと、ミスチルやダウンタウンが大ブームになったのもこの頃です。DKNYの帽子をかぶっている人がニューヨーク市警(NYPD)と間違えられるっていうのが、作中でネタにされてました。

1996年(平成8年)

 アトランタ五輪、銀座にスターバックス日本1号店、スーパールーズソックスのコギャルブーム、『電波少年』(日本テレビ系)の企画で猿岩石がユーラシア大陸横断ヒッチハイクで話題の時代でした。

 この年の注目イベントは……

・石田純一の「不倫は文化」発言でワイドショー界の伝説に。

・星座占いに13番目の星座、へびつかい座が登場。

・ミニスカポリスブーム。初代ミニスカポリスにさとう珠緒。

 そのほかにもK-1グランプリブームや小室ファミリー(安室奈美恵・華原朋美・globe・dos・trf)がオリコン上位を独占、木村拓哉主演『ロングバケーション』(フジテレビ系)でのチョベリバ発言などがありました。

***

 平成10年ぐらいまでご紹介しようと思いましたが、文字数がものすごいことになりそうだったので、このぐらいにしておきますが、こんな感じでトレンドを4コマ漫画形式でネタにしたものが35年分も収録されているんです。とんでもない情報量ですよね! チャラいとか言ってすんませんでした。

 皆さんも、昭和・平成を振り返るのに最高の『気まぐれコンセプト完全版』を読んでみてはいかがでしょうか? どうせなら、消費税が上がる前に買っておくのがチョベリグかもしれません。

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

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昭和~平成の移り変わり期に僕らをドギマギさせた、白倉由美「セーラー服3部作」

『セーラー服と機関銃』「セーラー服を脱がさないで」『美少女戦士セーラームーン』などなど、昭和から平成にかけて「セーラー服」はサブカルチャーに多大な影響を及ぼす最重要ワードのひとつでした。みんな好きだったでしょ? え、今でも大好き? 男だけど毎日着てる? いや、それは知らんけど……。

 しかし現在、あれほど栄華を誇ったセーラー服は、本来の学生服としてはほぼ姿を消し、コスプレやレトロ感を演出するためのアイテムとなっています。平成が終わり、令和になって、いよいよ「セーラー服」は完全にオワコンとなってしまうのかもしれません。

 今回は、そんな昭和を彩った「セーラー服」文化を象徴するマンガ、白倉由美先生の『セーラー服で一晩中』『セーラー服物語』『卒業、最後のセーラー服。』という3作をご紹介したいと思います。

 これらの作品を僕は勝手に「セーラー服3部作」と命名していますが、この3部作に共通する特徴として、超美少女のヒロイン、ちょっと病んでるストーリー、エッチなようであんまりエッチでない作風があります。それに加え、白倉先生特有の「超ゆるふわ」なセリフ回しがあります。

朝ごあん(=朝ごはん)

とおきおー(=東京)

選手こーたー(=選手交代)

かあいー(=かわいい)

かあうい(=かわいい)

ぎゃっこー(=学校)

などなど。「ぎゃっこー」とか、かなりハイレベルです。ちょっと気を抜くとわからなくなりそうなこの不思議な言語感覚、昭和×セーラー服の組み合わせが生んだ奇跡のひとつでしょうか。

■『セーラー服で一晩中』(「週刊少年チャンピオン」秋田書店/1987年作品)

セーラー服度:★

エッチ度:★

病んでる度:★★★★★

 17歳の女子高生・川原砂緒(かわはら・すなお)は、秋元康氏のような売れっ子業界人に見初められて結婚。しかし、旦那が速攻で死んでしまい、結婚からわずか5日で未亡人となります。

 傷心の砂緒のもとに、死んだ旦那の弟・藤井貴生が北海道から上京して住み込むことに。しかも、砂緖と貴生は同い年の同級生……同い年の義姉弟がひとつ屋根の下でドギマギするストーリーです。要するに『めぞん一刻』にセーラー服をかけて2で割ったような感じでしょうか。

 女子高生の未亡人が、たまたま同い年の、死んだ旦那の弟と恋に落ちる――なかなかありえない設定ですよね。しかし、ありえないと思われる設定でも強引に成立させてしまえるのが、昭和という時代を席巻した「セーラー服」の持つパワーなのです。

 白倉先生の描く超美少女と『セーラー服で一晩中』という刺激的なタイトル。そして掲載誌は「少年チャンピオン」ということで、読者はどうしても……その……エッチな感じの方向性を期待しちゃったものですが、そういったシーンはほぼ皆無。というか、「セーラー服」自体もそれほど出てこないという驚きの内容です。

 とはいえ、未亡人となったヒロインの情緒不安定さはなかなかのもので、死んだ旦那のセーターを抱えてベッドでむせび泣く、突然リスカする、病院の屋上から飛び降りようとする、なんの脈絡もなく小説を書き始めるなどなど。こういう不安定な少女を支えてあげてるうちに、恋に発展……というのも、昭和のラブコメっぽい感じですよね。

 ちなみに『セーラー服で一晩中』というタイトルについては、砂緖がセーラー服姿、貴生がタキシード姿で夜中の砂浜を一晩中走り回るというシーンがあるので、一応ウソではありません。正直、タイトルからもっとエロいやつを想像してましたが、冷静に考えると少年誌なのでこんなものなのかもしれません。

 

■『セーラー服物語』(「週刊少年チャンピオン」/88年作品)

セーラー服度:★★★★

エッチ度:★★★

病んでる度:★

 こちらはセーラー服を着た女子高生による、1話完結型の短編集形式の作品。ほぼ毎回セーラー服の女子高生が出てくるという意味で『セーラー服物語』の看板に偽りなし、といったところでしょうか。清楚系からビッチ系まで、例外なく美少女に描いてしまう白倉先生のすごみを堪能できます。

 前作同様ダイレクトにエッチなシーンが出てくるわけではないのですが、ストーリー上のエッチ度は増しています。少女売春とか処女喪失がキーワードになっている作品が、結構な頻度で出てきます。っていうか、この時代って、そんなにカジュアルに「少女買春」ってキーワードが使われてたんですね。

■『卒業、最後のセーラー服。』(「ヤングチャンピオン」/89年作品)

 

セーラー服度:★★★★★

エッチ度:★★★

病んでる度:★★★

 舞台を少年誌から青年誌に移し、ストーリーの背徳度が増しているのが本作。草薙優恵17歳、雄高16歳の、2人の美形姉弟の物語。お互いが愛し合ってるのに、姉弟だから一線を越えられない……みたいな、いろんな意味でギリギリな設定の作品です。

 制服モデルをしているほどの美少女・優恵は、スキが多くて、学校の男子に狙われまくり。女子にもやっかまれまくり。不良たちに囲まれ、服を脱がされ、貞操の危機……みたいなシーンも頻繁に出てきますが、ストーカー並みに姉のことを心配している弟の雄高が駆けつけ、間一髪で助けてくれる鉄壁のシスコン&ブラコンストーリー。

 そんな中、本格的に芸能課にスカウトされる姉の優恵、人気ロックバンド「ストーカー」のボーカルに抜擢された弟の雄高、2人の間に次第に距離ができ始め……というストーリー。文字通り「ストーカー」ってバンドが出てくるのが笑えるのですが、この当時はバンド名に使われるようなクールなキーワードとして使われていたんですね。今だと普通に犯罪者扱いの言葉ですから、時代を感じさせます。

 禁断のキンシンソーカン物かと思いきや、後半で実は血がつながっていないことがわかるお約束の展開もあり、セーラー服度もエッチ度も病んでる度も3部作のラストを飾るにふさわしい仕上がりとなっています。

***

 というわけで、昭和から平成への時代の移り変わり期に青少年をドギマギさせた、白倉由美先生のセーラー服3部作をご紹介しました。ちなみに『セーラー服と機関銃』のパロディで『セーラー服と一晩中』いうAVも存在しており、非常に紛らわしいのですが、今回ご紹介したマンガとはまったく関係ありませんので、念のため。

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

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うさんくささ全開! 東京五輪前に読むべきカオス漫画『ディアスポリス- 異邦警察-』

 皆さんは「インバウンド」っていう言葉をご存じですか? ダイエットに失敗することじゃないですよ! 訪日外国人旅行のことで、最近よく使われています。2020年の東京オリンピックに向けて、今まさにインバウンド景気のピークを迎えつつあります。

 そして、景気がいいということは、人手が足りない。じゃあ、外国人に働いてもらえばいいじゃん、ということで、外国人労働者とか移民の受け入れの話なんかも出てきていますね。カッコよくいうと、ダイバーシティの時代ってことです 。もちろん、お台場のビルのことじゃないです。

 そして、そんな今だからこそ、ご紹介したいマンガがあります。怪しげな外国人と怪しげな日本人がワンサカ出てくるカオスなマンガ『ディアスポリス-異邦警察-』です。 

 脚本:リチャード・ウー先生、漫画:すぎむらしんいち先生のコンビによる作品で、「モーニング」(講談社)で2006~09年まで連載されていました。タイトルの「ディアスポリス」は、「移民」「難民」を意味する「ディアスポラ」と警察の「ポリス」をかけ合わせた造語です。

 舞台は東京。難民認定を受けられない、ワケあり密入国外国人たちがテーマです。悪い奴らもいるが、ほとんどは貧しく悲惨な生活をしている人々。密入国外国人なので犯罪に巻き込まれても警察に相談できないし、医師にも診てもらえない、仕事の働き口もない……そんな弱者である「裏都民」たち を守るために作られた秘密組織が「異邦都庁」、通称・裏都庁です。

 裏都民には独自の法律、住所登録、納税があり、選挙権もあります。しかも、デキの良い(偽造)外国人登録証やパスポートまで与えられます。さらに裏都民の専用の病院、学校、銀行、郵便局も警察も全部そろっています。もちろん、全部「裏の」ですけど。 

 主人公は裏都庁公認の異邦警察の署長・久保塚早紀。闇でしか生きられない異邦人を犯罪から守り、時には厳しく罰する国籍不明の男。昔「異邦人」をヒットさせたシンガー久保田早紀が元ネタですが、それをわかる人は、そこそこ年食ってる人に違いありません。

 久保塚は、名前こそ日本人ぽいですが、実際の国籍や過去は不明。アフロヘアに顎ヒゲといううさんくさいルックス。ケンカはイマイチですが、困っている異邦人に対しては人一倍面倒見がよく、裏都民たちに信頼されています。

 本作の魅力は、なんといっても作品全体に漂う「うさんくささ」。これに尽きます。すぎむら先生の描く国籍不明のアクの強いキャラクターたちは、本作のうさんくささの演出に一役買ってい ますし、なにより脚本のリチャード・ウー先生がまたアレです。だって、長崎尚志名義で『20世紀少年』『MASTERキートン』といった有名作品を手がけるれっきとした日本人なのに、わざわざ本作では怪しげなアジア人風のペンネームに変更してるんですから。超くせー(褒め言葉)。

 登場人物たちもみんな、どこか憎めないうさんくささです。久保塚の「相棒」として刑事になる男、「鈴木」は、もともと東大卒のエリート銀行員。しかし、50億円横領の罪をかぶらされ、逃亡犯の身となり、過去を捨てて裏都民になったのです。潜入捜査のために顔をとびっきりのイケメンに整形するも、肥満体型 のため彦摩呂似になってしまったという面白キャラです。

 裏都庁の都知事「コテツ」も、都知事らしからぬうさんくささ。年齢不詳のミャンマー人で、常にアロハシャツにサングラス、葉巻というスタイル。イサームという元テロリストで、裏都庁最強の女戦士をボディーガードに雇ってています。

 裏都庁のNo.2として助役を務める中国人の阿(アー)さん。表向きはネズミ・ゴキブリ・スズメバチなどの害虫駆除会社・「 アーさんの店」を経営していますが、中国で悪徳警官殺しをして国を追われた裏都民です。

 裏都庁公認の医師、邱(チュウ)先生は、不法入国者のため無免許のモグリ医師。裏都民の中でも評判のヤブ医者で、腕の悪さは自他ともに認めるところ。いや、自分で認めるなよ……。

 こんな感じでどいつもこいつも、日本にいてほしくない怪しい人物ばかりなのですが、実はやむを得ない事情があり、悲しい十字架を背負っている人たちばかりであることが、後々のエピソードを通してわかってくるのです。

対立する日本人も、割とうさんくさい

 裏都庁は普通の日本人には全く知られていないシークレットな存在ですが、その存在に気づき、日本から抹殺しようとしている組織があります。その名はシャドー・オブ・ポリス、通称「S・O・P」。表向きは警備会社ですが、実態は警察を汚職などの理由でクビになった奴らの集まる、警察OB組織です。

 ほかにも、元牧師が組長を務める新宿のヤクザ・黒銭会とか、全身に蝶の入れ墨を施した詐欺師で初代裏都知事の山本、裏都庁も表の都庁も支配しようとする悪徳政治家・暁天栄作、そして本作品の裏ボスとなる正体不明の男「はだかの王様」などなど、うさんくさい日本人がいっぱい登場します。どいつもこいつも、一般市民であれば誰一人として関わりたくないタイプです。

裏都民の国籍がカオスすぎて、何言ってんだかわからない

 登場人物の大部分が密入国外国人のため、いろんな国籍の言葉のセリフが飛び交うのも本作の特徴です。中国・韓国・タイ・フィリピン・ロシア・トルコetc……要所要所には日本語訳が入っているものの、面倒くさいからか、大部分は日本語訳なしのそのまんまです。

「ニイ ンゴイドオ セイ ア」「ジャングリー」「カカーヤ ニェブリヤートナステ」「チャィウェラーイークノイ」「アークォン ヴィー トイトイ ホンテー- ドゥアザーケット ルアン クオイクン」

 作中、普通に飛び交う謎のセリフの数々……。すげーカオス。何言ってるんだか、全然わかりません。

 本作は、格闘マンガとしての側面もあります。初めはヘナチョコだった久保塚ですが、ロシアから来たユーリという男の元でロシア最強の格闘術「システマ」の修行をしたことで、宿敵S・O・Pの刺客達 に対しても負けない強さを身につけます。それと同時に、作品の格闘技色も強くなっていきます。

 それに合わせるかのように、久保塚を倒すための刺客たちもパワーアップ。イスラエルの格闘術「クラウ マガ」とか、フィリピンの棒術「カリ」とか、カンボジアの古武術「ボカタオ」の使い手などが登場します。

 空手とかテコンドーとか、ボクシングとかではなく、全然聞いたこともない格闘技名ばかりなので、てっきり創作なのかと思っていたのですが、ググったらどれも実在の格闘技でした。あるのかよ! マニアックすぎるだろ!!

映画化、そして続編へ

 本作は2016年に松田翔太主演でドラマ化、そして映画化されており、原作マンガのほうも「999」篇という新エピソードの続編が出版されています。アフロだった久保塚が、ドレッドヘアになっており、さらにうさんくささがパワーアップしています。ドレッドヘアの警察署長とか、ヤバイですよね。

 というわけで、インバウンドで外国人だらけのカオスになりつつある日本ですが、『ディアスポリス -異邦警察-』を読んでおけば、いろいろと異文化コミュニケーションに対する心構えができるのでお勧めです、という話でした。こんなにもうさんくさい外国人が出そろっているマンガは、たぶんほかにはありません。

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

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第3次Queenブームの今読みたい、時空を超えた盗作スペクタクル 『僕はビートルズ』

 皆さんビートルズ好きですか? とりあえず、嫌いってことはないですよね? 昔から、ほとんどの日本人はビートルズとQueenのことが好きだって決まっているんです。いわば、国民総にわかビートルズファン状態です。そんな、ビートルズがほどほどに好きな皆さんに今回ご紹介するのは『僕はビートルズ』(モーニング KC)。作品のタイトルを見て「いや違うだろ…って即刻否定したくなるマンガってそうそうないと思うのですが、これがまさしくそれでした。

 表紙に描かれているキャラクターはどう見ても日本人だし、特にビートルズに似てもいないし。100%「お前はビートルズじゃない」って言い切れます。ところが読んでみると、「やべえ、こいつら本当にビートルズかもしれない……」と思えてしまう、そんな作品だったのです。ちょっと何言ってるかわからないと思いますので、これから説明しましょう。

 本作は、凡人にはまず思い浮かばない大変トリッキーなストーリーです。ビートルズを愛しすぎる日本のビートルズコピーバンド「ファブ・フォー」のメンバーたちが、2010年の現代から、なぜかビートルズがこの世にデビューする前年の1961年(昭和36年)に突然タイムスリップ。それをいいことに、ビートルズの曲を自分たちのオリジナル曲として世間に出したら世界的に大人気となってしまい、本家のビートルズが消滅の危機に……というお話です。

 要するに、ビートルズを盗作した日本人バンドの物語なんですけど、そのスケールがデカすぎるのです。なにせ、本物が生まれる前の時代にタイムスリップしてるんですから。そりゃあ、盗作ぐらい余裕でできますよね。

 というわけで、まずは時空を超えたビートルズのパクリをやらかしたファブ・フォーのメンバーを紹介しましょう。

●蜂矢翔(はちや・しょう)

 愛称・ショウ。ビートルズのギター、ジョージ・ハリスンのパートを担当。ジョージと同じく、他のメンバーに比べてキャラが薄いのですが、一応本作の主人公です。ビートルズの曲をパクった罪悪感で一番苦しんでいるのがこのショウ。まだ良心が残っているあたり、メンバー中で一番マトモといえるキャラクターです。

●鳩村真琴(はとむら・まこと)

 愛称・マコト。ビートルズにおけるポール・マッカートニーのパートで、ベーシスト兼ヴォーカル。ポールに合わせてギターを左利きに矯正するほど、狂信的なまでにビートルズの完コピにこだわる男。この男がタイムスリップ後の日本で、まだ世に生まれてないはずのビートルズの名曲「イエスタデイ」を世間に披露し、真顔で「俺が書いた曲です」と言い放ったことがすべての混乱の始まり。

●鷹津礼(たかつ・れい) 

 愛称・レイ。ビートルズにおけるジョン・レノンのパートで、ギター兼ヴォーカル。ただのビートルズの完コピバンドで終わりたくない、オリジナルの精神こそビートルズだ! という主張のため、完コピ主義のマコトとしょっちゅうぶつかり、ついには脱退。ビートルズでも、ジョンが脱退するエピソードがあるので、それになぞらえている感じですね。

●鶴野コンタ(つるの・コンタ)

 愛称・コンタ。その昔「リンゴすったー!」と缶チューハイのCMでダジャレをかましたことで有名なリンゴ・スターのドラムパートを担当。一見、温厚で一番マトモそうなのですが、1961年にタイムスリップした直後に、速攻でストリップ嬢のヒモに収まるという、ダメな意味で順応性の高さを見せつけてくれます。

 テクニックなら本物よりも上を自任する、自称日本一のビートルズコピーバンド「ファブ・フォー」。そんな彼らに、すごいチャンスが巡ってきました。聖地英・リバプールで開催される世界一のビートルズバンドを決めるイベント、ビートルズ・コンベンションへの出演が決まったのです。

 しかし、世界一のビートルズバンドになり、二代目ビートルズになろうとする野望を持つマコトと、コピーバンドからの脱却をしたがっていたレイの意見が対立。コンベンションを目の前にして、レイが脱退を告げるのです。

 地下鉄六本木のホームで押し問答になるマコトとレイ、それを静止しようとするショウ。もみ合いになってホームから落ち、あわや地下鉄に轢かれる……というところで、まさかのタイムスリップ。そこはビートルズデビューの前年・61年の吉祥寺でした。

「コピーバンドのくせに、二代目ビートルズって……」「ビートルズのデビュー前年に、都合よくタイムスリップするって……」などなど、この時点でとにかく突っ込みたくなる要素満載です。

盗作のおかげで一躍超人気バンドに

 1961年にタイムスリップしたファブ・フォーのメンバーたちですが、マコトとショウがたまたま同じ場所に飛ばされ、一緒に行動することに。この時点で、ほかの2名はどこに飛ばされたのかはまだ不明です。

 マコトとショウはラーメン屋でラーメンを食べるも、支払った硬貨に「平成」と入っていたため、偽金疑惑でラーメン屋の大将に警察に突き出されそうになります。そこを助けてくれたのが、流しの演歌ギタリスト「竜さん」。エルビスに憧れて上京したものの、夢破れて流しで演歌を歌う日々の竜さんですが、マコトとショウが歌いだした自称オリジナル曲「イエスタデイ」を聴き、その才能に惚れ込み、俺がビッグにしてやるとばかりにいろいろと世話をし始めます。

 ライブの前座で「オール・マイ・ラヴィング」を披露したところ、新進気鋭の芸能プロ・マキプロダクションの社長の目に留まり、プロデビューすることになるのです。

 英語の歌詞が敬遠され、大手レコード会社には相手にされず、メンバーも2人だけだったため、当時誰も思いつかなかった自主制作&オーバーダブ録音の手法をマコトが提案。そして完成したレコード「抱きしめたい」はラジオでかかった途端に大ヒット、自主制作のレコードは品切れ。あっという間に謎のバンド、ファブ・フォーの存在は日本中に知れわたります。

 その後はストリップ嬢のヒモをやっていたコンタと、工事現場で働いていたレイもバンドに再合流。パワーアップして完全体となり、日本人のミュージシャンながらイギリスのUKチャートで1位と2位を独占するなど、世界を股にかけるモンスターバンドに成長。しかし、その裏で、本家ビートルズはというと……ファブ・フォーの楽曲を聴いたジョン・レノンが自信喪失し、解散状態に陥ってしまうのです。

 ビートルズに成り代わって着々と歴史を変えていくファブ・フォーを待っているのは、天国のような世界的スターへの道なのか、それとも地獄のような贖罪の日々なのか……そんな思いが交錯するストーリーとなっています。

 このマンガのクレイジーな面白さを支えているのは、ビートルズ愛が強すぎるゆえに、いろいろとありえない行動を取るマコトの存在です。ファブ・フォーのデビューレコードでは不足しているレイとコンタのパートの代わりにプロのセッションミュージシャンを入れるのですが、完璧主義のマコトが、ビートルズのレコードとまったく同じように演奏することを要求します。

「譜面どおりに弾くのは当たり前だ、俺はそれ以上を求めてるんだ」

「あなたはこの曲を理解していない」

「譜面に縛られて全然グルーヴが伝わってこない」

 それはもうボロックソに言います。当然ながら、ビートルズのレコードはこの世に存在していないので、聴いたことがない人にとってはむちゃな要求です。そのため、参加したセッションミュージシャンたちがついていけず、次々と辞めていきます。

 そのほかにも、このマンガの設定だからこそ成立するマコトのビートルズ盗作名言の数々が、マジでサイコ野郎。

「なぜ英語の歌詞をつけたの?」

「最初から世界を視野に入れてるからですよ」

 英語の曲しか書こうとしない理由について質問するマキ社長に対し、平然と答えるマコト。言うまでもなく、ビートルズのパクリだから、というのが本当の理由です。

「俺たちは動き出したんだ…俺たちこそがビートルズになるために、ビートルズは歴史に一つしか存在してはいけないんだ」

 ビートルズの曲を自分たちの曲だとかたってデビューしてしまったファブ・フォー。大人気となり、もはや後に引けなくなった後のマコトの決意です。誰よりもビートルズを愛しているはずなのに……。結果としてビートルズを乗っ取ろうとしているその発想が狂ってますよね。

「俺たちは、悪魔に魂を売ってビートルズの曲を奪った。許されない罪を犯してでも、なれるのなら、ビートルズになりたかったんだ」

 ビートルズが解散してしまったという報告を受け、自分たちがビートルズの曲を歌い継ぐしかない……と完全に開き直っているこのセリフ。単なるモノマネじゃなく、あくまで本物のビートルズに成り代わることにこだわってきたのです。まさしく悪魔の所業といえましょう。

本家ビートルズとの直接対決へ

 実は本作の終盤では、デビューできずに解散したかと思われていたビートルズが、実は解散しておらず、満を持して新曲でデビューし、ファブ・フォーのメンバーと直接対決するシーンが出てきます。このシーンこそが真の作品のクライマックス。

 本物のビートルズの演奏を間近で見て、本物との格の違いを思い知り、子どものように膝を抱えて号泣するファブ・フォーのメンバーたち、そして自分たちがビートルズの曲をパクってきたことを全世界に告白しようと決意します。その後、とんでもないラストへ……という展開になっています。

 S村河内氏もビックリな稀代のパクりバンドが果たしてどんな最期を迎えるのか、皆さんにもぜひ読んでいただきたいです。

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

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「ナマでヤるのはアリかナシか」で大激論! 型破り中学教師マンガ『鈴木先生』

 皆さんは教師マンガというと何を思い浮かべますか? 僕のようなおっさんは『まいっちんぐマチコ先生』『いけない!ルナ先生』みたいなお色気女教師をついつい思い浮かべてしまいます。もちろん、世代によって『GTO』だったり、『さよなら絶望先生』『地獄先生ぬ~べ~』『ビッグマグナム黒岩先生』など、さまざまだと思います。

 今回ご紹介する『鈴木先生』は、長谷川博己主演で実写ドラマ化や映画化もされた有名作品。文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞という華々しい肩書まで持っていますが、決して万人向けではなく、人によってはメンタルに深刻なダメージを与えかねない異色の教師マンガといえます。

 本作はいわゆる、不良生徒たちを熱血指導で真人間に変えていく典型的な教師マンガとは一線を画しており、出てくる生徒はどちらかというと頭が良く、生活態度も特に問題なく、暴力にも縁がない、「手のかからない生徒」ばかり。しかし、現代ではそういう一見まじめな良い子が内に秘めているストレスが爆発し、大問題に発展してしまうことがあるのです。というか、このマンガではそういう事件が多発します。

 それに対する鈴木先生の解決手法は、とにかく議論すること。理屈っぽい中坊たちが次から次へと鈴木先生を悩ませるのですが、それを真っ向から受け止め、さらにハイレベルな理屈をカマしてねじ伏せる……そんな文系熱血教師なのです。テーマは地味ですが、『MMR マガジンミステリー調査班』にも匹敵する登場キャラクターたちのテンションが高さで、あたかも壮大なマンガを読んでいるような錯覚に陥ります。

■恐ろしいほどどうでもいいことが大問題に!

 教室で次から次へと起こる大問題。え、そんなちっちゃいことで大騒ぎしてるの!? というテーマがめじろ押しで、“さすが中学生はめんどくせーな”と思わずにはいられません。

 最初のエピソードは、クラスの真面目な男子が給食の時間に突然「蛆(うじ)」「げりみそ」などと汚い言葉をつぶやくようになり、隣に座っている女子が激ギレするというもの。

 普通だったら、先生が男子生徒に「やめろ」ってガツンと言ってそれで終わりになりそうな話ですが、鈴木先生は違います。生徒と議論し、なぜこんなことになったのか原因を徹底的に考え、問題の根本的なところから解決しようとするのです。数日間の試行錯誤の結果、隣の女子が、お行儀悪く左手をだらーんと垂らして右手だけで食べてるのが気に入らないから嫌がらせをしたという理由が判明したのです。最初っからそうならそう言えよって感じなのですが。イマドキの中学生の深層心理は一体どうなってるのか、皆目見当がつきません。

 その次のエピソードも、本当にどうでもいい内容でありながら、壮大なスケールで展開します。給食の不人気メニューである酢豚を献立から廃止するという発表があり、酢豚大好き女子たちが抗議の声を上げたのです。

 ……正直、マジどうでもよくないですか? しかし、当人たちにとっては深刻な問題。生徒の期待を一身に背負った鈴木先生は、やむなく給食のおばちゃんと交渉したり、職員会議の議題にしたり、全校生徒にアンケートを取るなどして、なんとか酢豚が廃止されないよう懸命に働きかけるのですが、まさかの結末に……って、酢豚でこんなに神経すり減らさなきゃいけないなんて、中学教師って、本当に大変な仕事ですね。

■同僚たちのメンタルが次々と崩壊!

 生徒も大概面倒くさいのですが、先生たちもヤバイです。やはりブラックすぎる職場なのか、一見まともそうだった教師たちが突然メンタル崩壊し、廃人のようになってしまいます。

 1人目は、鈴木先生の同僚の体育教師、山崎先生。作品初期のころは鈴木先生の良き相談相手で、一緒に合コンしたりで仲良しだったのですが、途中から雲行きがおかしくなります。

 山崎先生は普段から過剰なスキンシップで女子生徒の間ではセクハラ教師として評判が悪く、生徒が非公式に行った教師の人気投票でワースト1になってしまいます。そして、人気No.1の鈴木先生に対して、嫉妬でおかしな行動を取り始めます。

「本当は鈴木ッお前が全部仕組んだんだろ!?」

 生徒の前で取り乱し、鈴木先生を罵倒し始める山崎先生。完全な八つ当たりモード。さらに、アンケート投票の首謀者である女子生徒にも詰め寄りますが……。

「女子生徒の体に…気安く触らないでっ!! 気持ち悪いっ!!」

などとボロクソに言われて、完全に精神崩壊。普段の言動までおかしくなり、ついには依願退職扱いに。その後は、教え子の姉が働いている風俗店に入り浸っていることまで発覚し、完全に教師生命が終わってしまいます。

 2人目は、家庭科の足子(たるこ)先生。最初のころは冷静な意見を言う、まともな教師だったのですが、鈴木先生と人気を二分するさわやかイケメン教師、岡田先生に振られてから、急激に情緒不安定になっていきます。教室で生徒に暴言を吐いたり、生徒を無視して授業を進めるなどし、ついに生徒側が足子先生の授業でストライキを敢行。足子先生もそれを受けて立つのですが、そのことがほかの教師たちに漏れると……。

「ちくしょうどいつだ、チクった奴は…ブチ殺してやろうか!?」

などと、およそ教師らしくない言動をするようになります。さらに、型破りな教育方針で生徒たちの支持を集める鈴木先生に対しても……。

「また鈴木先生が他人をダシにして株を上げて…! 大した英雄っぷりよね!! あんたなんか死ね!!」

などと言い放ちます。同僚に「死ねっ」なんていう教師、まじヤバイですね。その後も教室の窓から校庭に向かって「鈴木のバッキャロー!」と叫ぶなどディスりが止まらず、校長命令で自宅療養になってしまいます。最後にはビジュアルも変わり果てて、まるで妖怪のようになってしまいました。

 2人に共通するのは、生徒からの信頼が厚く、大人気の鈴木先生への嫉妬の感情がすごいことです。同僚を2人も嫉妬で狂わせるなんて、鈴木先生はとんでもなく罪な教師ですね。

■生徒は知らない、鈴木先生のヤバすぎる妄想癖

 生徒たちの悩みに真摯に耳を傾け、納得いくまで話し合うという教育スタイルで、生徒人気No.1の鈴木先生ですが、教師として完璧な聖職者かというと全然そんなことはなく、たまたま生徒にバレていないだけで、その裏にはかなりヤバい一面があるといえます。

 本作の絶対的ヒロイン・小川蘇美(そみ)は優等生で聡明、言うべきことははっきり言う、キリッとした美少女。クラスのマドンナ的存在です。男子生徒のファンが多数おり、時には彼女が原因で男子同士がいがみ合うことも。

 鈴木先生にとっても蘇美は、神聖視するほどにお気に入りの存在。しかし、次第にそれが歪んだ欲望へと変わっていきます。鈴木先生の夢や妄想の中で、裸で登場したりします。また、レインコートに長靴姿の蘇美を見て萌えたり、スクール水着姿にソワソワしたり、シャンプーの残り香にウットリしたり……。さらに学年中で、蘇美が誰が好なのかを詮索するウワサが広まり、それを聞きつけた鈴木先生は、相手が誰なのかを気にしすぎるあまり下痢になったり……これら一連の鈴木先生の失態は「小川病」と呼ばれるのですが、このようなキモめのシーンが延々と続きます。

 生徒に絶大な信頼を得ている聖職者も、一歩間違えればロリコンスレスレの性癖を持っている――。そんな教師たちのリアルな実態に迫っているともいえますが、文化庁の賞を獲っていながらも、この作品が賛否両論なのは、こういうシーンが堂々と描かれているからでしょう。。

■最大の修羅場! デキちゃった婚で学級裁判にかけられる鈴木先生

 教師といえば、生徒に対し「責任能力がないのに、安易にセックスするな」とか、「もしするんだったら、絶対ゴムをつけるように」などと偉そうに指導する立場です。

 そんな立場の鈴木先生が、なんとデキちゃった婚をすることになり、生徒たちが騒然。鈴木先生を告発する学級裁判、通称「鈴木裁判」が開始されます。

 教師のデキ婚はアリかなしか――。ものすごく大きなお世話って感じですが、意識の高い生徒たちが喧々囂々(けんけんごうごう)の大議論。

「ナシ」を主張する生徒に対して、「自分の親はデキ婚で自分が生まれた」「うちの親を否定するのか?」という意見が出たり、「結婚して責任を取るべきだ」という生徒に対して、「自分は両親が結婚せず、母親に育てられた。それは悪なのか?」とか、大人顔負けのセンシティブな議論が行われます。

 その後は、結婚しないのにナマでヤるのはアリかナシかというトピックスでも大激論。その間ずっと真ん中に座らされ、なんでゴムをつけなかったのか、責任は取るつもりなのかなどと問い詰められる鈴木先生。まさしく公開処刑と呼ぶにふさわしい状況なのですが、最終的にそこから、独自の鈴木理論で多感な生徒を全員納得させてしまう、鳥肌モノの展開を見せるのです。

 というわけで、ヤバイ教師マンガを紹介しました。読み始めるとメチャクチャ理屈っぽくって文字数が多いのですが、『MMR』のキバヤシを思わせる超ハイテンションな鈴木先生の勢いのせいで、ついつい一気読みしてしまいたくなりますよ!

◆「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

「ナマでヤるのはアリかナシか」で大激論! 型破り中学教師マンガ『鈴木先生』

 皆さんは教師マンガというと何を思い浮かべますか? 僕のようなおっさんは『まいっちんぐマチコ先生』『いけない!ルナ先生』みたいなお色気女教師をついつい思い浮かべてしまいます。もちろん、世代によって『GTO』だったり、『さよなら絶望先生』『地獄先生ぬ~べ~』『ビッグマグナム黒岩先生』など、さまざまだと思います。

 今回ご紹介する『鈴木先生』は、長谷川博己主演で実写ドラマ化や映画化もされた有名作品。文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞という華々しい肩書まで持っていますが、決して万人向けではなく、人によってはメンタルに深刻なダメージを与えかねない異色の教師マンガといえます。

 本作はいわゆる、不良生徒たちを熱血指導で真人間に変えていく典型的な教師マンガとは一線を画しており、出てくる生徒はどちらかというと頭が良く、生活態度も特に問題なく、暴力にも縁がない、「手のかからない生徒」ばかり。しかし、現代ではそういう一見まじめな良い子が内に秘めているストレスが爆発し、大問題に発展してしまうことがあるのです。というか、このマンガではそういう事件が多発します。

 それに対する鈴木先生の解決手法は、とにかく議論すること。理屈っぽい中坊たちが次から次へと鈴木先生を悩ませるのですが、それを真っ向から受け止め、さらにハイレベルな理屈をカマしてねじ伏せる……そんな文系熱血教師なのです。テーマは地味ですが、『MMR マガジンミステリー調査班』にも匹敵する登場キャラクターたちのテンションが高さで、あたかも壮大なマンガを読んでいるような錯覚に陥ります。

■恐ろしいほどどうでもいいことが大問題に!

 教室で次から次へと起こる大問題。え、そんなちっちゃいことで大騒ぎしてるの!? というテーマがめじろ押しで、“さすが中学生はめんどくせーな”と思わずにはいられません。

 最初のエピソードは、クラスの真面目な男子が給食の時間に突然「蛆(うじ)」「げりみそ」などと汚い言葉をつぶやくようになり、隣に座っている女子が激ギレするというもの。

 普通だったら、先生が男子生徒に「やめろ」ってガツンと言ってそれで終わりになりそうな話ですが、鈴木先生は違います。生徒と議論し、なぜこんなことになったのか原因を徹底的に考え、問題の根本的なところから解決しようとするのです。数日間の試行錯誤の結果、隣の女子が、お行儀悪く左手をだらーんと垂らして右手だけで食べてるのが気に入らないから嫌がらせをしたという理由が判明したのです。最初っからそうならそう言えよって感じなのですが。イマドキの中学生の深層心理は一体どうなってるのか、皆目見当がつきません。

 その次のエピソードも、本当にどうでもいい内容でありながら、壮大なスケールで展開します。給食の不人気メニューである酢豚を献立から廃止するという発表があり、酢豚大好き女子たちが抗議の声を上げたのです。

 ……正直、マジどうでもよくないですか? しかし、当人たちにとっては深刻な問題。生徒の期待を一身に背負った鈴木先生は、やむなく給食のおばちゃんと交渉したり、職員会議の議題にしたり、全校生徒にアンケートを取るなどして、なんとか酢豚が廃止されないよう懸命に働きかけるのですが、まさかの結末に……って、酢豚でこんなに神経すり減らさなきゃいけないなんて、中学教師って、本当に大変な仕事ですね。

■同僚たちのメンタルが次々と崩壊!

 生徒も大概面倒くさいのですが、先生たちもヤバイです。やはりブラックすぎる職場なのか、一見まともそうだった教師たちが突然メンタル崩壊し、廃人のようになってしまいます。

 1人目は、鈴木先生の同僚の体育教師、山崎先生。作品初期のころは鈴木先生の良き相談相手で、一緒に合コンしたりで仲良しだったのですが、途中から雲行きがおかしくなります。

 山崎先生は普段から過剰なスキンシップで女子生徒の間ではセクハラ教師として評判が悪く、生徒が非公式に行った教師の人気投票でワースト1になってしまいます。そして、人気No.1の鈴木先生に対して、嫉妬でおかしな行動を取り始めます。

「本当は鈴木ッお前が全部仕組んだんだろ!?」

 生徒の前で取り乱し、鈴木先生を罵倒し始める山崎先生。完全な八つ当たりモード。さらに、アンケート投票の首謀者である女子生徒にも詰め寄りますが……。

「女子生徒の体に…気安く触らないでっ!! 気持ち悪いっ!!」

などとボロクソに言われて、完全に精神崩壊。普段の言動までおかしくなり、ついには依願退職扱いに。その後は、教え子の姉が働いている風俗店に入り浸っていることまで発覚し、完全に教師生命が終わってしまいます。

 2人目は、家庭科の足子(たるこ)先生。最初のころは冷静な意見を言う、まともな教師だったのですが、鈴木先生と人気を二分するさわやかイケメン教師、岡田先生に振られてから、急激に情緒不安定になっていきます。教室で生徒に暴言を吐いたり、生徒を無視して授業を進めるなどし、ついに生徒側が足子先生の授業でストライキを敢行。足子先生もそれを受けて立つのですが、そのことがほかの教師たちに漏れると……。

「ちくしょうどいつだ、チクった奴は…ブチ殺してやろうか!?」

などと、およそ教師らしくない言動をするようになります。さらに、型破りな教育方針で生徒たちの支持を集める鈴木先生に対しても……。

「また鈴木先生が他人をダシにして株を上げて…! 大した英雄っぷりよね!! あんたなんか死ね!!」

などと言い放ちます。同僚に「死ねっ」なんていう教師、まじヤバイですね。その後も教室の窓から校庭に向かって「鈴木のバッキャロー!」と叫ぶなどディスりが止まらず、校長命令で自宅療養になってしまいます。最後にはビジュアルも変わり果てて、まるで妖怪のようになってしまいました。

 2人に共通するのは、生徒からの信頼が厚く、大人気の鈴木先生への嫉妬の感情がすごいことです。同僚を2人も嫉妬で狂わせるなんて、鈴木先生はとんでもなく罪な教師ですね。

■生徒は知らない、鈴木先生のヤバすぎる妄想癖

 生徒たちの悩みに真摯に耳を傾け、納得いくまで話し合うという教育スタイルで、生徒人気No.1の鈴木先生ですが、教師として完璧な聖職者かというと全然そんなことはなく、たまたま生徒にバレていないだけで、その裏にはかなりヤバい一面があるといえます。

 本作の絶対的ヒロイン・小川蘇美(そみ)は優等生で聡明、言うべきことははっきり言う、キリッとした美少女。クラスのマドンナ的存在です。男子生徒のファンが多数おり、時には彼女が原因で男子同士がいがみ合うことも。

 鈴木先生にとっても蘇美は、神聖視するほどにお気に入りの存在。しかし、次第にそれが歪んだ欲望へと変わっていきます。鈴木先生の夢や妄想の中で、裸で登場したりします。また、レインコートに長靴姿の蘇美を見て萌えたり、スクール水着姿にソワソワしたり、シャンプーの残り香にウットリしたり……。さらに学年中で、蘇美が誰が好なのかを詮索するウワサが広まり、それを聞きつけた鈴木先生は、相手が誰なのかを気にしすぎるあまり下痢になったり……これら一連の鈴木先生の失態は「小川病」と呼ばれるのですが、このようなキモめのシーンが延々と続きます。

 生徒に絶大な信頼を得ている聖職者も、一歩間違えればロリコンスレスレの性癖を持っている――。そんな教師たちのリアルな実態に迫っているともいえますが、文化庁の賞を獲っていながらも、この作品が賛否両論なのは、こういうシーンが堂々と描かれているからでしょう。。

■最大の修羅場! デキちゃった婚で学級裁判にかけられる鈴木先生

 教師といえば、生徒に対し「責任能力がないのに、安易にセックスするな」とか、「もしするんだったら、絶対ゴムをつけるように」などと偉そうに指導する立場です。

 そんな立場の鈴木先生が、なんとデキちゃった婚をすることになり、生徒たちが騒然。鈴木先生を告発する学級裁判、通称「鈴木裁判」が開始されます。

 教師のデキ婚はアリかなしか――。ものすごく大きなお世話って感じですが、意識の高い生徒たちが喧々囂々(けんけんごうごう)の大議論。

「ナシ」を主張する生徒に対して、「自分の親はデキ婚で自分が生まれた」「うちの親を否定するのか?」という意見が出たり、「結婚して責任を取るべきだ」という生徒に対して、「自分は両親が結婚せず、母親に育てられた。それは悪なのか?」とか、大人顔負けのセンシティブな議論が行われます。

 その後は、結婚しないのにナマでヤるのはアリかナシかというトピックスでも大激論。その間ずっと真ん中に座らされ、なんでゴムをつけなかったのか、責任は取るつもりなのかなどと問い詰められる鈴木先生。まさしく公開処刑と呼ぶにふさわしい状況なのですが、最終的にそこから、独自の鈴木理論で多感な生徒を全員納得させてしまう、鳥肌モノの展開を見せるのです。

 というわけで、ヤバイ教師マンガを紹介しました。読み始めるとメチャクチャ理屈っぽくって文字数が多いのですが、『MMR』のキバヤシを思わせる超ハイテンションな鈴木先生の勢いのせいで、ついつい一気読みしてしまいたくなりますよ!

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