小室圭さんと眞子さまの結婚問題 令和に引き継がれた懸案事項「女性皇族とご結婚する」こととは?

――4月下旬から5月上旬にかけて、改元報道がメディアを彩った。無論、その多くは祝福ムードであった。新しい時代が始まった今、皇族の結婚と将来という問題にも、日本人は正面から向き合う時期ではないだろうか? 週刊誌などで報じられる“小室圭さんと眞子さまの行く末”を中心にみていきたい。

 実に202年ぶりとなった、天皇の生前退位。「平成」の終わりと「令和」の幕開けは、昭和天皇の崩御に伴って行われた平成への改元のときとはまったく違った、国民挙げての祝賀ムードの中で行われた。

 この代替わりの前後に、慶事に影を落としたニュースがまったくなかったわけではない。4月26日、お茶の水女子大学附属中学校の悠仁さまの机の上に、棒にテープで固定された2本の刃物が置かれていたという事件で職業不詳の男が送検されたのは、奇しくも新天皇の即位の儀式である「剣璽等承継の儀」と「即位後朝見の儀」が行われた5月1日であった。男は天皇制を批判する供述をしているというが、新時代の訪れを国民全体が喜ぶムードの中で、この男の考えに関心を持つ日本人はほとんどいなかったと言っていいだろう。5月4日に行われた一般参賀では、皇居前に集まった14万人以上の人々が皇室に敬愛の意を表し、祝福した。

 そんなめでたい代替わりの中、平成から令和に持ち越された懸案事項といえば、やはり秋篠宮家長女眞子さまと小室圭さんの結婚問題だろう。そもそも、2人の婚約内定会見が行われたのは、平成29年9月3日。発表されていた結婚式の日取りは平成30年11月4日で、当初の予定ならすでに結婚していたはずなのだが、その後、小室圭さんの実母による金銭問題が浮上、結婚が延期されたのは周知の通り。

 皇室制度史が専門で『皇族』(中公新書)などの著書がある、静岡福祉大学名誉教授の小田部雄次氏は、こう語る。

「秋篠宮さまは平成30年11月30日の誕生日会見で、眞子さまと小室圭さんの結婚問題について、『多くの人が納得し喜んでくれる状況にならなければ、婚約にあたる納采の儀を行うことはできません』と述べました。皇族でも一般市民でも同じですが、熟慮の末の結婚であっても、その後どんな問題が出てくるかは予想しきれない。秋篠宮さまもお困りでしょうが、一番かわいそうなのは、一途に思い詰めている眞子さまですよね」

 改元をもって皇位継承順位1位である皇嗣殿下となられた秋篠宮さまの言う「多くの人の納得」とは何を指しているのだろうか? ネット上には眞子さまと小室圭さんの結婚は絶対認められないと、特に小室さんに対して罵詈雑言を浴びせる一部の人たちまでいる。だが、現皇室典範では、小室さんは皇室に入るのではなく、眞子さまが皇室を出て一般市民になるのである以上、本来は当人2人の合意があればそれで十分のはず。一体、皇族女性の結婚に求められる品格とはなんなのだろうか?

■旧華族に嫁いだ昭和天皇の皇女たち

 それでは、女性皇族はどのようなお相手と結婚してきたのか? 過去にさかのぼれば、昭和天皇には5人の皇女がいた。今回退位した上皇陛下の姉や妹たちだ。

 昭和天皇の第一皇女の照宮成子さまは、戦争中の昭和18年に当時の皇族の東久邇宮盛厚氏と結婚し、東久邇成子さまとなる。終戦後の11宮家の皇籍離脱により一般市民に。焼け跡で畑を耕して子どもの服を自らつくる節約生活を経験した。

 第二皇女の久宮祐子さまは、生後1年足らずで亡くなっているが、数奇な運命をたどったのは第三皇女の孝宮和子さまである。昭和25年に結婚した鷹司平通氏は元華族であるが、日本交通公社交通博物館に勤務していたため、「皇族とサラリーマンの結婚」といわれた。その後2人はそろって雑誌にも登場し、仲睦まじさをアピールしていたが、昭和41年に夫の平通氏は行きつけだった銀座のバーのマダムの家で、マダムと共に謎の死を遂げてしまう。事故死とも心中ともいわれたが、その真相は不明。その後、子どものいなかった和子さまはひとり暮らしをしていたが、昭和43年には自宅に侵入した強盗に刃物で襲われ、けがをする事件も発生した。ある皇室記者が解説する。

「おひとりになられた和子さまのことは、上皇陛下と美智子上皇后さまもとても気にかけていらっしゃいました。その後和子さまは赤坂御所で暮らすことになり、平成元年に亡くなるのですが、美智子さまはたびたび和子さまのもとを訪れるなど、気をお使いになっていたそうです」

 そして、第四皇女の順宮厚子さまは、元華族の池田隆政氏と結婚して池田厚子さまとなる。岡山で牧場を経営していた池田氏は、その後牧場を改装して池田動物園を運営する。

「皇族が岡山という遠い場所に嫁がれるというのは、当時としては大きな出来事でした。池田動物園は経営が苦しい時期もあり、厚子さまも自ら切符のもぎりをされたこともあるそうです。厚子さまはその後日本赤十字社岡山支部名誉会長を務めたほか、姉の鷹司和子さまの後を継いで伊勢神宮の祭主になり、黒田清子さまに引き継ぐまでその任を務めています。池田厚子さまのご夫妻は岡山の上流階級では、今も大変な尊敬を集めています」(皇室記者)

 そして第五皇女が、「おスタちゃん」という愛称で呼ばれた清宮貴子さま。これも旧華族の島津久永氏と結婚して、島津貴子さまとなった。前出の小田部氏は、「島津貴子さまは、婚約会見のときの『私が選んだ人を見てください』という言葉がよく知られていますが、それにしても、お相手は島津家の由緒ある家柄の人。恋愛結婚などともいわれましたが、やはりこの頃の女性皇族のご結婚は、名門の家とのお見合いによるものだったでしょうね」と話す。

 確かに、上皇陛下の姉妹の方々の嫁ぎ先を見ると、いずれも元皇族か、元華族の家柄であることがわかる。それに対し新しいパターンとなったのが、上皇陛下の第一皇女にして、新天皇陛下の妹である紀宮清子さまで、平成17年に結婚した相手の黒田慶樹氏は、東京都職員。家柄も旧華族ではなかった。

「もっとも黒田さんは、秋篠宮さまの学習院でのご学友であり、その身元は保証されていました。高円宮家の二女の典子さまが平成26年にご結婚した千家国麿さんは、出雲大社の宮司を務め、出雲では尊敬を受けている家柄。そして、高円家の三女の絢子さまが平成30年に結婚した守谷慧さんは、日本郵船社員で国境なき子どもたちの理事。ちなみに、守谷さんのお母様と絢子さんのお母様の高円宮妃久子さまは、古くからのお知り合いでした。基本的に、お互いの家同士が当人を熟知した上での結婚といえます。そんな中、眞子さまと小室圭さんの結婚だけが、親が相手の家のことがわからない、完全に当人同士の恋愛の結果でした」と小田部氏。

 これについて前出の皇室記者は、「それだけ秋篠宮さまが、娘の相手を見る目を信頼されていたのでしょうが、残念ながら、それが裏目に出てしまったということになりますね」と話している。やはり皇族の結婚は、完全な自由恋愛というわけにはいかなかったのだろうか?

■品位を保つために使われる結婚一時金

 では、結婚した元女性皇族と、そのお相手の暮らしはどのようなものなのだろうか? 前出の皇室記者は、次のように解説する。

「基本的には女性皇族の結婚は、お妃を迎え入れるときと違って、皇室を出て行かれるわけですから、皇室会議を経る必要はない。ご結婚後は一般人ですから、特に警備が付くこともありません。ひょっとしたら、この代替わりの間くらいは何かあるといけないので、警察も気をつけるかもしれません。基本的にどのようなことをしようと、暮らしには一般人以上の法的な規制はないわけですが、やはり皇族と結婚されたということは、お相手の男性もある程度自覚を持ってからのことだと思います。どこまで日頃自由にお酒を飲んだりするかはわかりませんが、日々の生活においては、国民の意識を感じながらお過ごしになっていると思いますよ」

 つまりは、例えばキャバクラなどに行ってはいけない、という確たる縛りがあるわけではないが、女性皇族の結婚相手たるもの、そのような場所に行かないくらいの自覚は持っているはずだ、ということだろう。

 皇族女性が結婚する際には、国から結婚一時金が支払われることになっている。黒田清子さんの際は1億5250万円。千家典子さんの場合は1億675万円、そして守谷絢子さんの場合も1億675万円が支払われることになった。たびたび報じられてはいるが、改めて皇室記者に解説願おう。

「これは元皇族にふさわしい品を保つためのお金ですね。住居もある程度セキュリティのしっかりしたところのほうが望ましいのですが、同時に、元皇族ともなるとお付き合いが大変です。結婚式などにはそれなりの服装をして行かないといけませんし、品位と知性を保つためにはそれなりのお金も必要になります。交際費とか、大事なときの贈り物に必要なお金もありますね。ただし、基本的には結婚したら、ご自身たちの収入で暮らしていってくださいということではあるので、一時金は、文字通り一度支払われたらおしまい。その後の給付金などはありませんから、このお金をきっちりと管理しながら過ごしていってください、ということです。仮にですが、小室さんがこの一時金から留学費用、借金の返済をしようとしたら、それは国民としては感情的に認めることはできないでしょうね。やはり、もとは国の税金で、それを元皇族にふさわしい生活をするために使ってください、ということで支給されるものですから」

 そもそも小室圭さんの振る舞いは、到底国民の信頼を得られるものではないと、ある皇室ジャーナリストは指摘する。

「究極的に言えばご結婚は自由ですが、天皇は国民の象徴であるというお立場を考えると、その周りにいらっしゃる皇族も、ある程度それなりの品位が求められる、国民にとって模範となるような存在でなければならない。それは、結婚した元女性皇族と、その伴侶も同様なわけです。そういうことを考えると、小室さんの場合は大変に残念なところがあると思います。それというのも、小室さんの教育のために母親の元婚約者がお金を出したことで、その方のその後の生活レベルが落ちてしまったわけで、そのお金はもらったものだから返せないというのは、感謝の気持ちが足りないですよね。

 せめて、今は返せないけど、長期的にこうして返しますと言うとか、なんらかの解決策は図ってほしかった。そういう方との結婚で果たしていいのか、ということになるのです。皇室の方々は、法的に定められた以上の責任を自覚しているからこそ、襟を正して自己研鑽して生活しているわけですから」

 奇しくも、新天皇は即位に伴って行われた朝見の儀のお言葉で、「歴代の天皇のなさりようを心にとどめ、自己の研鑽に励むとともに」と、研鑽という言葉を使われた。皇族に準じる女性皇族の結婚相手にも、その研鑽は求められるということだろうか。

■皇位継承が不安定な今、皇室と国民の関係はいかに

 そして今年3月、秋篠宮家二女の佳子さまが国際基督教大学を卒業するにあたって、記者の質問に文書で回答した。その中には、「相手がいるかについてですが、このような事柄に関する質問は、今後も含めお答えするつもりはございません。姉が結婚に関する儀式を延期していることについてですが、私は、結婚においては当人の気持ちが重要であると考えています。ですので、姉の一個人としての希望がかなう形になってほしいと思っています」という文言があった。この回答に対し、ネット上では皇族としての自覚が足りないといった批判が起こったが、そのような一部世論が、皇室の未来にとって悪い影響を及ぼさないか、小田部氏は憂慮しているという。

「私は佳子さまの発言はご立派なものだったと思っているのですが、それまで批判する人たちが大勢いるという現状には、そこまで皇室をたたくことが、皇室のサポートになると思っているのだろうか、という疑問を感じます。小室圭さんにしろ、今は職につこうとしてがんばって勉強しているわけで、もう少し彼を信じてあげてもいいのではという気がします。母親の元婚約者がたびたびマスコミの取材に答えて、小室さん母子の不誠実さを非難していますが、小室さんが世間に顔を知られているのに対し、元婚約者は匿名で、顔も出ず守られていて、これでは不公平ですよね。現状ではあまりにも情報が一方的ですし、不満があるのなら、民事裁判でもいいから公の場所で訴えて、国民に真実を提供するべきだと思います」

 このように述べる小田部氏は、皇室の将来という観点からも、現在の状態は望ましくないと話す。

「皇室が盤石なときならいいですが、今は若い男子の皇族が悠仁さましかおらず、皇室の将来が不安視されている時代です。皇族のお相手に対する国民の要求があまりに厳しくなり、小室さんのケースのように日本人全体が小姑みたいになっているようでは、愛子さまや悠仁さまのご結婚相手が見つからない、ということになりかねない。せっかく皇族の方々に日本という国の統合の象徴になっていただいているのですから、国民やマスコミも、ご結婚の相手が来ていただけるような環境づくりをしてほしいものだと、私は感じています」

 今回の即位の儀式では、立ち会った男性皇族が秋篠宮皇嗣殿下と、上皇陛下の弟である常陸宮さまだけ。将来の皇位継承の危うさが浮き彫りになる形となった。その対応策としての、女性・女系天皇の容認や、女性宮家の創設についても取り沙汰され始めてから長い時間がたっているが、いまだ結論が出ていない。

 また、女性皇族の結婚といえば、気になるのは、まだ結婚されていない3人の成年女性皇族のこともある。三笠宮家彬子さまはすでに37歳。三笠宮家瑶子さまは35歳。そして高円宮家承子さまは33歳になる。これについて、前出の皇室記者は、「この方々については、お付き合いしていた方がいたという話も聞いたことがありますが、女性皇族が結婚すると宮家を出なければいけない現状では、ご自身が結婚すると、三笠宮家、高円宮家が将来的になくなってしまう。ご自身の宮家を守るために、女性宮家を認めるかどうかの議論の新しい展開を待たれているのでは、という印象を受けています」と話す。

 ただ、女性皇族の結婚相手が皇族に入るようになれば、今以上にお相手の品格や適性について議論が沸騰するのは必至。新しい令和の時代にも、女性皇族のお相手が今以上に国民の関心の的になることだけは、間違いなさそうだ。(月刊サイゾー5月号『情弱ビジネスのカラクリ』より)

芸能人の肖像権侵害に薬機法違反 マツコや欅坂46も無断で登場「あなたにおすすめ」広告の闇

 NHK『クローズアップ現代+』で放送された『追跡!“フェイク”ネット広告の闇』。芸能人の写真を無断使用した広告が新聞社のニュースサイト等に掲載されていたことが報じられ、話題となった。また「あなたへのおすすめ」という形でメディアに掲載される広告には、薬機法に抵触するものも散見。放置されているのはなぜなのか?

 ニュースサイトで記事を読み終えたときに、関連記事に混じって「あなたにおすすめ」と表示される広告。読み終えた記事とは無関係な健康食品等を扱ったものも多く、「PR」という文字も小さくではあるが表示されているため、その存在を認識している人は多いだろう。

 これは「レコメンド・ウィジェット」と呼ばれる広告配信システムで表示されるもの。朝日新聞などの新聞社のニュースサイトから、サイゾーの運営する「日刊サイゾー」のようなサイトまで、多くのウェブメディアに導入されている。コンプレックスの改善を促すような文言に釣られ、自身を“情弱”と認めながらもついクリックしてしまう人もいるはずだ。だが、そのシステムで配信される広告が物議を醸している。

 きっかけになったのは、1月22日放送のNHK『クローズアップ現代+』の特集『追跡!“フェイク”ネット広告の闇』。特に注目されたのが、芸能人の写真を無断で使用・加工したり、体験談を捏造した健康食品やサプリの広告だ。番組ではマツコ・デラックスの画像や名前を無断使用した広告を取り上げ、新聞社のウェブサイトにもその手の広告が掲載されていたことが反響を呼んだ。

 なお、現在も無断使用とおぼしき広告が掲載されたままのサイトは多く残っているが、サイトの作りが明らかに荒いものが多く、画像の出典も不明なものが大半。メディアに掲載されている広告の文言では、芸能人の名前が使われているものの、リンク先に飛ぶと名前も画像も出てこない……というものもあった。

 なぜ、このようなタチの悪い詐欺まがいの広告が制作され、大手メディアに配信されてしまっているのか?

 まず取材に応えてくれたのは、レコメンド・ウィジェット広告事業を展開する、ネット広告配信会社の社員。芸能人の写真を無断使用する広告については、「以前から弊社で扱う広告の中にも疑わしいものがあり、対策を講じようとしていた」とのこと

「そんな時期に放送されたのが『クローズアップ現代+』の特集でした。レコメンド・ウィジェット広告では、広告配信を行う会社名が表示されていますし、大きな会社は我々を含めて9社ほどしかない。『クローズアップ現代+』で実名で報じられたのは1社のみですが、芸能人の肖像権侵害と思われる広告は、どの会社にも少なからずある。配信先のメディアでは地方新聞が名指しされていましたが、それ以外のニュースサイトでも配信されていました」(同)

 日本でレコメンド・ウィジェット広告を手がける代表的な企業は、LOGLY、Outbrain、popIn、Speeeや、この分野の世界的企業で、日本ではヤフーとビジネスを行っているTaboolaなど。サイバーエージェントやGMOインターネットもこの広告配信事業を手がけている。

 ネット広告配信会社の社員によると、現在はその多くの会社がチェック体制を厳格化し、肖像権侵害と思われる広告は減少しつつあるそうだ。ではなぜ、そうした広告が以前は放置されていたのか?

「レコメンド・ウィジェット広告は、記事を読み終えた人が自然にクリックしやすく、広告効果が非常に高い。業界も急成長中で、扱う広告の数も増え続けているため、単純にチェックが追いついていないのが原因のひとつでした」(同)

 なお芸能人の名前や写真が無断使用されていたのは、健康食品やサプリメントの広告。その手の広告では「芸能人の名前を使うだけでCTR(クリック率)が大きく上がる」(同)ということも、放置される原因となっていた。

「我々も大きな利益を上げられたため、厳しい取り締まりを迅速に行えなかった部分はありました。『クローズアップ現代+』の報道後は、芸能人との契約があるか否か、画像を使っている場合は出典がどこかを確認するようになりましたが、そこまで厳密なチェックを行わない会社は今もあると思います」(同)

 一方で、肖像権侵害の疑いがあるサイトは、「我々が配信をとりやめても、ランディングページは今も残っているところが多い」(同)とのこと。悪質な業者は、今も違う場所で集客を行っているわけだ。

「広告配信の審査を通すときだけ穏当なページを作り、いざ配信が始まったらランディングページを変えてしまう悪徳業者もいました。問い合わせ先の電話番号に連絡したら、ファミリーマートの店舗につながったこともありましたね(笑)。会社を売り逃げして、また別の会社を立ち上げて同じビジネスをしている人もいるでしょうし、イタチごっこのような状態が続いています」(同)

■薬機法の違反率は約7割という調査も

 レコメンド・ウィジェット広告の業界には、また別の問題も残っている。インターネット広告業界の不正対策事業に取り組んでおり、『クローズアップ現代+』の特集にも情報提供で協力した土橋一夫氏は次のように話す。

「特に問題なのは、薬機法違反と思われる広告が非常に多いことです。『クローズアップ現代+』の報道後は、芸能人の名前や写真を使った広告が減った代わりに、薬機法違反の広告はむしろ増えた印象があります」(土橋氏)

 薬機法違反の広告は、業界で以前から問題視されていたという。

「2017年12月にアフィリエイト業界の会合でJARO(日本広告審査機構)の方とお話したとき、『WELQ問題以降、ネット上では医学的に誤った情報を掲載するサイトは減少したが、薬機法に違反した商材を扱うサイトは減っておらず、広告枠を通じて集客を行うようになった』という話を聞きました」(同)

 WELQ問題とは、DeNAの医療系キュレーションメディア『WELQ』において、不正確な医療情報記事が大量公開されていた問題のこと。報道の加熱後は同サイトが閉鎖に追い込まれ、グーグルの検索結果の上位にも類似サイトの記事は表示されにくくなった。

「なお薬機法を無視した表現で集客を行うサイトは、そのサイト自体が検索上位に表示されてしまうと、不正の証拠が残りやすい。そのためウェブメディアの広告枠を利用することが多く、現在はレコメンド・ウィジェット広告の中に多く紛れ込んでいる状況なんです」(同)

 なお土橋氏は、著名人肖像権侵害サイト・薬機法違反サイト検知システム「ヤクパト」を運営。広告サイトを自動で収集し、その内容をチェックしている。

「将来的には違反の判定も自動化する予定ですが、現在は薬機法の知識を持った人を雇い、判定を行っています。現状では4441件の広告枠の調査を終えており、薬機法違反と判定した広告は509件。違反率は全体の11・5%になりました。なお薬機法の対象となる商品を扱った広告は747件。その商品のみに限ると、違反率は68・1%と、7割近い広告が違反となります」(同)

 なお、この数字にはNHKが報じた芸能人の肖像権侵害の広告などは含まれていない。「その手の広告や、詐欺まがいの情報商材の広告も含めれば、違法な広告の割合はさらに上がるでしょう」と土橋氏は話す。

「レコメンド・ウィジェット広告を手がける企業の中には、株式上場している企業もある。そのような企業が、1割を超えるようなボリュームで違法広告を扱っている状況は異常です。また、『クローズアップ現代+』の報道では、違法な広告サイトの制作・運営者としてアフィリエイターの存在がクローズアップされましたが、我々が薬機法違反と判定した広告のうち、アフィリエイターが関わっていることが確認できたのは3分の1程度。残りの3分の2は広告代理店が制作・運営をしているものと思われます。悪質なアフィリエイターも一部ではいますが、大部分は“企業犯罪”の話なんです」(同)

 では、具体的にはどのような表現が薬機法違反となるのか。

「わかりやすいものだとビフォー・アフターと言われる『使用前後表示』。ダイエット前後の変化の写真を掲載しているサイトは、薬機法違反になります。『○キロ痩せました』と書く『臨床結果言及』も違反で、医師推薦の表記も違反です。『最高』などの文言を使う『最高表示』も違反の一種で、『アミノ酸は脂肪を燃焼します。そのアミノ酸がこのサプリメントにはたくさん入っています』と、原料の効能に言及するのも違反です」(同)

 このような違反の基準を聞くと「それだと大半の広告が違反にならないか?」「そういった言葉や写真を使えなかったら、当たり障りのない広告しか作れないでしょ」と感じる人が多いだろう。

「おっしゃる通りですね。実際に大手の健康食品会社や、真面目に事業に取り組んでいる企業は、そうやって穏当な表現のみを使って広告を作っています。ただ、そのような広告はインパクトが弱いので、CTRは下がる。一方で、薬機法違反の表現を使えば、クリック率も購入率も上がり、高い収益を上げられます。そのため高額な広告費を支払えるので、広告枠のオークションでも、意図的に違反をした業者が勝ってしまうんです」(同)

 そのような流れで、レコメンド・ウィジェット広告の中には、薬機法違反の疑いが高い広告が蔓延しているわけだ。なお、広告配信会社が厳しくチェックを行い、「薬機法違反の疑いがあるものは掲載しない」という姿勢を明確にすれば、その手の広告は消えるはずなのだが……。

「適法性の確認には専門的な知識と時間が必要で、その作業を専門業者に依頼すると、ひとつのウェブページあたり5万円程度の費用が必要です。その点で、『薬機法に関わる広告は、すべて専門家にチェックしてもらう』というのは、採算面を考えると難しいでしょう。だからといって、『違法な広告が配信されるのは仕方ない』という態度は許されないと思います」(同)

 前出の広告配信会社の社員は、「薬機法に抵触する可能性のある表現が見られた場合は、修正をお願いしている」と話すが、配信している広告の数は膨大。チェックの時間を増やしても、対応が追いつかない部分があるという。

「薬機法違反かどうかの判断は非常に難しいですし、専門知識を持った人間が確認を行っている会社は少ないはずです。なお、我々が扱う広告の6割ほどは、ダイエットやシミ、シワ、バストアップ、ハゲ、口臭などに関わるコンプレックス商材。今は薬機法に関わるサプリメントや健康食品の広告には頼らざるを得ず、それに代わるジャンルは常に模索している状況です」(広告配信会社社員)

 そのため、薬機法の部分でグレーに見える広告も配信しているわけだ。

「『薬機法違反の疑いのある広告は掲載しません』という態度が正しいことはわかっていますが、正しいことをすると売り上げは減る。ウチの場合は利益を削る覚悟で基準を厳しくしていますが、『業界で基準を設けよう』という話が出ても、なかなか足並みは揃いません。そういった広告を必要悪として受け入れながら、『ウチの会社はどこまで踏み込んだことをやれるのか』というチキンレースを続けているのが、今のこの業界の現状なんです」(同)

 そんな業界の中には、感覚が麻痺しつつある人間もいるそうだ。

「ウェブ広告業界で影響力が強い方が、『ゴミ広告ばかりが配信されている状態=広告配信会社の業績がいい状態……となっている今、業界はどこへ向かうべきなのか』という趣旨のことをフェイスブックで書いたところ、あるレコメンド・ウィジェット広告配信会社の社員が反応。『「ゴミ広告」に助けられている人が少なからずいると思うのです』『美容健食コスメサプリなどの広告への業界関係者の厳しいヘイトについて疑問視しております』といった反論を述べてきたことがありました。“ヘイト”という言葉を使う感覚が異常だと思いますし、『その広告を配信している会社がそれを言うか?』と唖然としてしまいました」(土橋氏)

 悪質な広告の被害では、騙した側の広告主が非難され、騙された側の消費者が“情弱”とバカにされがちだが、広告を配信する側の人間も、その弱者を食い物にするビジネスに加担しているわけだ。

■違法広告を掲載するメディアにも責任が

 ここまでは違法広告が蔓延する現状について、主に広告配信会社の立場から考察を行ってきたが、この現状の責任は彼らだけにあるわけではない。

「広告を掲載するメディア側は、『広告配信会社がチェックしてくれているはずだ』と考えて、誰もチェックを行っていないのが現状でしょう。一方で広告配信会社は、広告主との契約時に『違法性のある表現は使用しないこと』と取り決めを行っているでしょうから、一義的な責任は広告主の側にあると考えているはずです」(土橋氏)

 そうやって責任の所在を不明にした状態で、今のネット広告の市場や、その収益に頼るウェブメディアは成り立っているのだ。

「朝日新聞のサイトにも、薬機法違反の疑いのある広告が混じっていますからね。そのためウェブメディアがこの問題を報じると、『じゃあお前のサイトに出てくる広告は大丈夫なのか?』という話になってしまう。それで事態の改善が進まない部分はあるでしょう」(同)

 皮肉なことに、この問題を報じたウェブメディアの記事でも、読み終えると「あなたにおすすめ」と薬機法違反の広告が表示されることが多かった。小社サイゾーの運営するサイトの収益や、筆者のような書き手の原稿料も、その一部は違法性の判断が難しい広告サイトから生まれていることも否定できない。責任を背負う覚悟と、身を切る覚悟は、広告に関わる全員に求められるのだ。

「その点で、私はウェブメディアの『ねとらぼ』に期待しています。『ねとらぼ』を運営するアイティメディア株式会社は、レコメンド・ウィジェット広告を手がけるログリー株式会社の株主でもある。『ねとらぼ』はネット上の問題を誠実に報じるサイトだと思いますし、株主の側から問題提起する報道が始まれば、業界は変わると思います」(土橋氏)

 そして土橋氏は「レコメンド・ウィジェット広告としては、健康食品・美容の広告を一律で配信停止にするのが現状で取りうる最善の対策ではないか」と語る。

「大量の広告が消え、利益は大きく下がるでしょうが、その代わりに単価は安くても別の広告が入るはずです。また、レコメンド・ウィジェット広告とは分野が違いますが、ヤフーやグーグルのサイトでは、違法性のある広告の比率が明らかに低い。それは広告と法律に対する会社の姿勢が明確だからだと思いますし、レコメンド・ウィジェット広告の分野でも、違法性のある広告は努力で減らせるはず」(土橋氏)

 先述の広告配信会社の社員も次なる一手を模索しているという。

「現在のウェブ広告の業界は、単価が高い少数の広告を厳密にチェックして配信する方法から、薄利多売の方向に移行する過度期にある。だからこそ多くの問題が起こっています。違法性のある広告の判定については、この先数年のあいだにAIがかなりの正確さで行えるようになるでしょう」(広告配信会社社員)

 さりとて、悪徳業者をレコメンド・ウィジェット広告の配信から排除しても、彼らはまた別の場所でビジネスを始めるだろう。

「『犯罪者が犯罪をする場所を変えているだけ』と言われたらそうかもしれませんし、その点には私もむなしさを感じています。ただ、だからといってレコメンド・ウィジェット広告が巨大な犯罪市場となっている現状は放置できない。この場所をきれいな状態にすることにも、犯罪者が一時的にでもビジネスをできない状態を作ることにも、私は価値があると思います」(土橋氏)

 ネットに限らず、雑誌の広告にも怪しげなコンプレックス商材は今も昔も多い。その広告費にビジネスが支えられてきたのは紛れもない事実だ。人間の抱えるコンプレックスも、「長生きしたい」「痩せたい」「きれいになりたい」といった欲望も、この先消えることはないだろう。肖像権侵害や薬機法違反の表現で、消費者を食い物にする広告を「情弱ビジネス」と片付けるのはたやすいが、この問題は企業もユーザーも向き合い続けていくべきものなのだ。(月刊サイゾー5月号『情弱ビジネスのカラクリ』より)

芸能人の肖像権侵害に薬機法違反 マツコや欅坂46も無断で登場「あなたにおすすめ」広告の闇

 NHK『クローズアップ現代+』で放送された『追跡!“フェイク”ネット広告の闇』。芸能人の写真を無断使用した広告が新聞社のニュースサイト等に掲載されていたことが報じられ、話題となった。また「あなたへのおすすめ」という形でメディアに掲載される広告には、薬機法に抵触するものも散見。放置されているのはなぜなのか?

 ニュースサイトで記事を読み終えたときに、関連記事に混じって「あなたにおすすめ」と表示される広告。読み終えた記事とは無関係な健康食品等を扱ったものも多く、「PR」という文字も小さくではあるが表示されているため、その存在を認識している人は多いだろう。

 これは「レコメンド・ウィジェット」と呼ばれる広告配信システムで表示されるもの。朝日新聞などの新聞社のニュースサイトから、サイゾーの運営する「日刊サイゾー」のようなサイトまで、多くのウェブメディアに導入されている。コンプレックスの改善を促すような文言に釣られ、自身を“情弱”と認めながらもついクリックしてしまう人もいるはずだ。だが、そのシステムで配信される広告が物議を醸している。

 きっかけになったのは、1月22日放送のNHK『クローズアップ現代+』の特集『追跡!“フェイク”ネット広告の闇』。特に注目されたのが、芸能人の写真を無断で使用・加工したり、体験談を捏造した健康食品やサプリの広告だ。番組ではマツコ・デラックスの画像や名前を無断使用した広告を取り上げ、新聞社のウェブサイトにもその手の広告が掲載されていたことが反響を呼んだ。

 なお、現在も無断使用とおぼしき広告が掲載されたままのサイトは多く残っているが、サイトの作りが明らかに荒いものが多く、画像の出典も不明なものが大半。メディアに掲載されている広告の文言では、芸能人の名前が使われているものの、リンク先に飛ぶと名前も画像も出てこない……というものもあった。

 なぜ、このようなタチの悪い詐欺まがいの広告が制作され、大手メディアに配信されてしまっているのか?

 まず取材に応えてくれたのは、レコメンド・ウィジェット広告事業を展開する、ネット広告配信会社の社員。芸能人の写真を無断使用する広告については、「以前から弊社で扱う広告の中にも疑わしいものがあり、対策を講じようとしていた」とのこと

「そんな時期に放送されたのが『クローズアップ現代+』の特集でした。レコメンド・ウィジェット広告では、広告配信を行う会社名が表示されていますし、大きな会社は我々を含めて9社ほどしかない。『クローズアップ現代+』で実名で報じられたのは1社のみですが、芸能人の肖像権侵害と思われる広告は、どの会社にも少なからずある。配信先のメディアでは地方新聞が名指しされていましたが、それ以外のニュースサイトでも配信されていました」(同)

 日本でレコメンド・ウィジェット広告を手がける代表的な企業は、LOGLY、Outbrain、popIn、Speeeや、この分野の世界的企業で、日本ではヤフーとビジネスを行っているTaboolaなど。サイバーエージェントやGMOインターネットもこの広告配信事業を手がけている。

 ネット広告配信会社の社員によると、現在はその多くの会社がチェック体制を厳格化し、肖像権侵害と思われる広告は減少しつつあるそうだ。ではなぜ、そうした広告が以前は放置されていたのか?

「レコメンド・ウィジェット広告は、記事を読み終えた人が自然にクリックしやすく、広告効果が非常に高い。業界も急成長中で、扱う広告の数も増え続けているため、単純にチェックが追いついていないのが原因のひとつでした」(同)

 なお芸能人の名前や写真が無断使用されていたのは、健康食品やサプリメントの広告。その手の広告では「芸能人の名前を使うだけでCTR(クリック率)が大きく上がる」(同)ということも、放置される原因となっていた。

「我々も大きな利益を上げられたため、厳しい取り締まりを迅速に行えなかった部分はありました。『クローズアップ現代+』の報道後は、芸能人との契約があるか否か、画像を使っている場合は出典がどこかを確認するようになりましたが、そこまで厳密なチェックを行わない会社は今もあると思います」(同)

 一方で、肖像権侵害の疑いがあるサイトは、「我々が配信をとりやめても、ランディングページは今も残っているところが多い」(同)とのこと。悪質な業者は、今も違う場所で集客を行っているわけだ。

「広告配信の審査を通すときだけ穏当なページを作り、いざ配信が始まったらランディングページを変えてしまう悪徳業者もいました。問い合わせ先の電話番号に連絡したら、ファミリーマートの店舗につながったこともありましたね(笑)。会社を売り逃げして、また別の会社を立ち上げて同じビジネスをしている人もいるでしょうし、イタチごっこのような状態が続いています」(同)

■薬機法の違反率は約7割という調査も

 レコメンド・ウィジェット広告の業界には、また別の問題も残っている。インターネット広告業界の不正対策事業に取り組んでおり、『クローズアップ現代+』の特集にも情報提供で協力した土橋一夫氏は次のように話す。

「特に問題なのは、薬機法違反と思われる広告が非常に多いことです。『クローズアップ現代+』の報道後は、芸能人の名前や写真を使った広告が減った代わりに、薬機法違反の広告はむしろ増えた印象があります」(土橋氏)

 薬機法違反の広告は、業界で以前から問題視されていたという。

「2017年12月にアフィリエイト業界の会合でJARO(日本広告審査機構)の方とお話したとき、『WELQ問題以降、ネット上では医学的に誤った情報を掲載するサイトは減少したが、薬機法に違反した商材を扱うサイトは減っておらず、広告枠を通じて集客を行うようになった』という話を聞きました」(同)

 WELQ問題とは、DeNAの医療系キュレーションメディア『WELQ』において、不正確な医療情報記事が大量公開されていた問題のこと。報道の加熱後は同サイトが閉鎖に追い込まれ、グーグルの検索結果の上位にも類似サイトの記事は表示されにくくなった。

「なお薬機法を無視した表現で集客を行うサイトは、そのサイト自体が検索上位に表示されてしまうと、不正の証拠が残りやすい。そのためウェブメディアの広告枠を利用することが多く、現在はレコメンド・ウィジェット広告の中に多く紛れ込んでいる状況なんです」(同)

 なお土橋氏は、著名人肖像権侵害サイト・薬機法違反サイト検知システム「ヤクパト」を運営。広告サイトを自動で収集し、その内容をチェックしている。

「将来的には違反の判定も自動化する予定ですが、現在は薬機法の知識を持った人を雇い、判定を行っています。現状では4441件の広告枠の調査を終えており、薬機法違反と判定した広告は509件。違反率は全体の11・5%になりました。なお薬機法の対象となる商品を扱った広告は747件。その商品のみに限ると、違反率は68・1%と、7割近い広告が違反となります」(同)

 なお、この数字にはNHKが報じた芸能人の肖像権侵害の広告などは含まれていない。「その手の広告や、詐欺まがいの情報商材の広告も含めれば、違法な広告の割合はさらに上がるでしょう」と土橋氏は話す。

「レコメンド・ウィジェット広告を手がける企業の中には、株式上場している企業もある。そのような企業が、1割を超えるようなボリュームで違法広告を扱っている状況は異常です。また、『クローズアップ現代+』の報道では、違法な広告サイトの制作・運営者としてアフィリエイターの存在がクローズアップされましたが、我々が薬機法違反と判定した広告のうち、アフィリエイターが関わっていることが確認できたのは3分の1程度。残りの3分の2は広告代理店が制作・運営をしているものと思われます。悪質なアフィリエイターも一部ではいますが、大部分は“企業犯罪”の話なんです」(同)

 では、具体的にはどのような表現が薬機法違反となるのか。

「わかりやすいものだとビフォー・アフターと言われる『使用前後表示』。ダイエット前後の変化の写真を掲載しているサイトは、薬機法違反になります。『○キロ痩せました』と書く『臨床結果言及』も違反で、医師推薦の表記も違反です。『最高』などの文言を使う『最高表示』も違反の一種で、『アミノ酸は脂肪を燃焼します。そのアミノ酸がこのサプリメントにはたくさん入っています』と、原料の効能に言及するのも違反です」(同)

 このような違反の基準を聞くと「それだと大半の広告が違反にならないか?」「そういった言葉や写真を使えなかったら、当たり障りのない広告しか作れないでしょ」と感じる人が多いだろう。

「おっしゃる通りですね。実際に大手の健康食品会社や、真面目に事業に取り組んでいる企業は、そうやって穏当な表現のみを使って広告を作っています。ただ、そのような広告はインパクトが弱いので、CTRは下がる。一方で、薬機法違反の表現を使えば、クリック率も購入率も上がり、高い収益を上げられます。そのため高額な広告費を支払えるので、広告枠のオークションでも、意図的に違反をした業者が勝ってしまうんです」(同)

 そのような流れで、レコメンド・ウィジェット広告の中には、薬機法違反の疑いが高い広告が蔓延しているわけだ。なお、広告配信会社が厳しくチェックを行い、「薬機法違反の疑いがあるものは掲載しない」という姿勢を明確にすれば、その手の広告は消えるはずなのだが……。

「適法性の確認には専門的な知識と時間が必要で、その作業を専門業者に依頼すると、ひとつのウェブページあたり5万円程度の費用が必要です。その点で、『薬機法に関わる広告は、すべて専門家にチェックしてもらう』というのは、採算面を考えると難しいでしょう。だからといって、『違法な広告が配信されるのは仕方ない』という態度は許されないと思います」(同)

 前出の広告配信会社の社員は、「薬機法に抵触する可能性のある表現が見られた場合は、修正をお願いしている」と話すが、配信している広告の数は膨大。チェックの時間を増やしても、対応が追いつかない部分があるという。

「薬機法違反かどうかの判断は非常に難しいですし、専門知識を持った人間が確認を行っている会社は少ないはずです。なお、我々が扱う広告の6割ほどは、ダイエットやシミ、シワ、バストアップ、ハゲ、口臭などに関わるコンプレックス商材。今は薬機法に関わるサプリメントや健康食品の広告には頼らざるを得ず、それに代わるジャンルは常に模索している状況です」(広告配信会社社員)

 そのため、薬機法の部分でグレーに見える広告も配信しているわけだ。

「『薬機法違反の疑いのある広告は掲載しません』という態度が正しいことはわかっていますが、正しいことをすると売り上げは減る。ウチの場合は利益を削る覚悟で基準を厳しくしていますが、『業界で基準を設けよう』という話が出ても、なかなか足並みは揃いません。そういった広告を必要悪として受け入れながら、『ウチの会社はどこまで踏み込んだことをやれるのか』というチキンレースを続けているのが、今のこの業界の現状なんです」(同)

 そんな業界の中には、感覚が麻痺しつつある人間もいるそうだ。

「ウェブ広告業界で影響力が強い方が、『ゴミ広告ばかりが配信されている状態=広告配信会社の業績がいい状態……となっている今、業界はどこへ向かうべきなのか』という趣旨のことをフェイスブックで書いたところ、あるレコメンド・ウィジェット広告配信会社の社員が反応。『「ゴミ広告」に助けられている人が少なからずいると思うのです』『美容健食コスメサプリなどの広告への業界関係者の厳しいヘイトについて疑問視しております』といった反論を述べてきたことがありました。“ヘイト”という言葉を使う感覚が異常だと思いますし、『その広告を配信している会社がそれを言うか?』と唖然としてしまいました」(土橋氏)

 悪質な広告の被害では、騙した側の広告主が非難され、騙された側の消費者が“情弱”とバカにされがちだが、広告を配信する側の人間も、その弱者を食い物にするビジネスに加担しているわけだ。

■違法広告を掲載するメディアにも責任が

 ここまでは違法広告が蔓延する現状について、主に広告配信会社の立場から考察を行ってきたが、この現状の責任は彼らだけにあるわけではない。

「広告を掲載するメディア側は、『広告配信会社がチェックしてくれているはずだ』と考えて、誰もチェックを行っていないのが現状でしょう。一方で広告配信会社は、広告主との契約時に『違法性のある表現は使用しないこと』と取り決めを行っているでしょうから、一義的な責任は広告主の側にあると考えているはずです」(土橋氏)

 そうやって責任の所在を不明にした状態で、今のネット広告の市場や、その収益に頼るウェブメディアは成り立っているのだ。

「朝日新聞のサイトにも、薬機法違反の疑いのある広告が混じっていますからね。そのためウェブメディアがこの問題を報じると、『じゃあお前のサイトに出てくる広告は大丈夫なのか?』という話になってしまう。それで事態の改善が進まない部分はあるでしょう」(同)

 皮肉なことに、この問題を報じたウェブメディアの記事でも、読み終えると「あなたにおすすめ」と薬機法違反の広告が表示されることが多かった。小社サイゾーの運営するサイトの収益や、筆者のような書き手の原稿料も、その一部は違法性の判断が難しい広告サイトから生まれていることも否定できない。責任を背負う覚悟と、身を切る覚悟は、広告に関わる全員に求められるのだ。

「その点で、私はウェブメディアの『ねとらぼ』に期待しています。『ねとらぼ』を運営するアイティメディア株式会社は、レコメンド・ウィジェット広告を手がけるログリー株式会社の株主でもある。『ねとらぼ』はネット上の問題を誠実に報じるサイトだと思いますし、株主の側から問題提起する報道が始まれば、業界は変わると思います」(土橋氏)

 そして土橋氏は「レコメンド・ウィジェット広告としては、健康食品・美容の広告を一律で配信停止にするのが現状で取りうる最善の対策ではないか」と語る。

「大量の広告が消え、利益は大きく下がるでしょうが、その代わりに単価は安くても別の広告が入るはずです。また、レコメンド・ウィジェット広告とは分野が違いますが、ヤフーやグーグルのサイトでは、違法性のある広告の比率が明らかに低い。それは広告と法律に対する会社の姿勢が明確だからだと思いますし、レコメンド・ウィジェット広告の分野でも、違法性のある広告は努力で減らせるはず」(土橋氏)

 先述の広告配信会社の社員も次なる一手を模索しているという。

「現在のウェブ広告の業界は、単価が高い少数の広告を厳密にチェックして配信する方法から、薄利多売の方向に移行する過度期にある。だからこそ多くの問題が起こっています。違法性のある広告の判定については、この先数年のあいだにAIがかなりの正確さで行えるようになるでしょう」(広告配信会社社員)

 さりとて、悪徳業者をレコメンド・ウィジェット広告の配信から排除しても、彼らはまた別の場所でビジネスを始めるだろう。

「『犯罪者が犯罪をする場所を変えているだけ』と言われたらそうかもしれませんし、その点には私もむなしさを感じています。ただ、だからといってレコメンド・ウィジェット広告が巨大な犯罪市場となっている現状は放置できない。この場所をきれいな状態にすることにも、犯罪者が一時的にでもビジネスをできない状態を作ることにも、私は価値があると思います」(土橋氏)

 ネットに限らず、雑誌の広告にも怪しげなコンプレックス商材は今も昔も多い。その広告費にビジネスが支えられてきたのは紛れもない事実だ。人間の抱えるコンプレックスも、「長生きしたい」「痩せたい」「きれいになりたい」といった欲望も、この先消えることはないだろう。肖像権侵害や薬機法違反の表現で、消費者を食い物にする広告を「情弱ビジネス」と片付けるのはたやすいが、この問題は企業もユーザーも向き合い続けていくべきものなのだ。(月刊サイゾー5月号『情弱ビジネスのカラクリ』より)

【海外のインフルエンサー・マーケティング最前線】山火事に便乗してプロモーション? セレブたちがSNSに広告垂れ流し

――海外では企業のデジタルマーケティングにSNSで話題のインフルエンサーを起用する「インフルエンサー・マーケティング」が巨大市場になりつつある。一方で、倫理観の欠如から、騒ぎに乗じたり巻き込まれたりで炎上し、“フォロワー”も“広告主”も騙すようなインフルエンサーが出現し始めていて……。

 大量のインフルエンサーを広告に起用したが、大失敗に終わった「Fyre Festival」のドキュメンタリー番組を、NetflixとHuluは同時期に配信開始していた。

 インスタグラムやYouTubeで人気を集め、世間に与える影響力が大きいインフルエンサー。そんなSNS上で多くのフォロワー数を持つ彼らに、企業が商品の宣伝やPRを依頼する「インフルエンサー・マーケティング」が、日本でも勢いづいている。デジタル産業の市場調査を行う「デジタルインファクト」によると、国内市場規模は2018年時点ですでに219億円となっており、10年後には933億円まで膨れ上がるとされている。

「日本でも」と述べたが、欧米ではすでにケタ外れの市場となっており、インフルエンサー・マーケティングの代理店「mediakix」の概算によると、昨年の世界市場の規模は3000~6000億円。今後5年間で1兆円にまで成長するという予測もある。

 インフルエンサーはYouTuberなどの「有名な素人」程度の者から、ハリウッド映画に主演するような世界的なセレブまで幅広い人種をカバーし、00年代生まれの物心がついたときからインターネットが当たり前のように存在する「デジタルネイティブ」な世代から多大なる人気を博している。

 一方でインフルエンサーを起用したマーケティングは、時に彼らの言動をスポンサーがコントロールできないため、彼らの不適切な言動によって炎上し、製品のブランドイメージに傷がつくこともあり、また、誇大広告や詐欺まがいの商品をフォロワーたちに拡散してしまう危険性もはらんでいる。

 そんな中でも象徴的な事件とされるのが17年に起きた「Fyre Festival」騒動だろう。かつて、麻薬王のパブロ・エスコバルが所有していたバハマの離島でメジャー・レイザーやG.O.O.D. Musicに所属する豪華アーティストらが出演する音楽フェスを開催すると謳い、ケンダル・ジェンナー(インスタグラムのフォロワー数約1億人/以下同)やベラ・ハディッド(約2400万人)、エミリー・ラタコウスキー(約2200万人)、ジャスティン・ビーバーの妻ヘイリー・ビーバー(約1900万人)といった、セレブ系インフルエンサーたちを惜しみなく起用。カリブの孤島で集まり、2週間に渡って海辺でお酒を飲みながらヨットとシェフまで付いてくる高級ヴィラに宿泊して、贅沢な時間を過ごす――。そんな触れ込みでインフルエンサーたちが自身のインスタグラムで「#fyrefestival」と、ハッシュタグを付けて写真を投稿したところ、17万~132万円の高額チケットにも関わらず、48時間以内に95%も売れたという。

 しかし、いざ参加者たちが島に到着すると、そこには豪華なヴィラなんてものはなく、建設現場のようなフェス会場には災害時に使うテントが水浸しで置かれているという、劣悪な環境だった。しかも、出演アーティストは誰ひとりとしておらず、暴動も発生したため、フェスは当日になって中止。その後、主催者は詐欺罪で逮捕されたが、その顛末はNetflixとHuluでドキュメンタリー番組として配信された(Huluは終了)。

 さらに、主催者たちだけではなく、SNSで「虚構のフェス」を拡散したインフルエンサーたちも問題視され、彼女たちも訴訟を起こされてしまった。その結果、この市場のことをフォロワーを騙す「情弱ビジネス」だと揶揄する声も上がっている。そこで本稿では、海外におけるインフルエンサー・マーケティングの最前線に迫りたい。

■スポンサード投稿1回で1億円稼ぐインフルエンサー

 まず、インフルエンサー・マーケティングとは、ユーザーとの距離感が近いSNSやYouTubeの人気者に、企業がアプローチし、彼らに自社製品をSNSで宣伝してもらって、インフルエンサーは企業から報酬を受け取るというもの。例えばインスタグラムの場合は「#ad」や「#PR」などのハッシュタグが付いているものが、スポンサード投稿だ。

 この市場はいつ頃から始まったのだろうか? 『戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などの著作を持つPRストラテジスト・本田哲也氏に話を聞いた。

「インフルエンサー・マーケティングや口コミ・マーケティングが、米国で始まったのは05年頃。当時のインフルエンサーと呼ばれる人は主にブロガーでしたが、その中でも有名な人々は商品をPRするというよりも、テック関連の情報発信をするような、シリコンバレーにいるテック系のジャーナリストのほうが多かった。一方で、P&Gの『トレモア』というプログラムなど、商品をPRするインフルエンサー・マーケティングの原型も出現しました」

「トレモア」は、ティーンのインフルエンサーにゲームや音楽といったクライアントの商品を提供し、それを友人に広めてもらい対価を得るプログラムだ。今でこそ、日本でもこの市場が活況になったが、広告文化の違いもあって、根付くまでにはだいぶ時間がかかった。

「日本でも06年頃からブログやmixiブームが起き、インフルエンサーが登場するようになりました。私が設立したブルーカレント・ジャパンや、サイバー・バズなど、インフルエンサーを扱う企業が登場するのもこの年です。しかし、インフルエンサーは当時の日本の広告文化とは相容れませんでした。PR文化が根付いている米国と違って、日本の広告は媒体売りですし、インフルエンサーと聞いても広告のモデルくらいでしか使い道がないと思われていたのです。そうしているうちに08年のリーマンショックが起きてインフルエンサーのブームは沈静化。流れが持ち直すのは10年代に入ってスマホが普及し、インスタグラムなどのSNSが登場してから。ここでようやくインフルエンサーが活躍するインフラが整えられた、といった感じですね」(同)

 現在、インフルエンサーと呼ばれる人々は冒頭でも述べたように素人からセレブまで幅広い。ただ、インフルエンサー・マーケティングに限っていえば、前述のように企業から報酬を支払われる場合は、スポンサード投稿であることを明示しなければならないため、日本ではYouTuberなどのスポンサード投稿は多くても、かつてのステマ騒動が尾を引いてるのか、芸能人によるものはあまり目立っていない。

 その一方で、米国の場合はYouTuberだけではなく、ハリウッド映画のスター俳優であるドウェイン・ジョンソン(約14億人)、カーダシアン家のケンダル&カイリー・ジェンナー(約13億人)姉妹や、2世モデル姉妹のベラ&ジジ・ハディッド(約4700万人)が、インフルエンサーとして容赦なくスポンサード投稿で稼いでいる。米国のポップカルチャーに詳しいライターの辰巳JUNK氏は、こう語る。

「今ではセレーナ・ゴメス(約15億人)やクリスティアーノ・ロナウド(約16億人)など、多くのスーパースターがスポンサード投稿を行っているとされていますが、その中でも話題性があるのはイットモデル(ファッション界以外でも認知されているモデル)たちですよね。例えば、Fyreのプロモーションにも参加していたエミリー・ラタコウスキーはインフルエンサー業をオープンにしており、『収入の大半がスポンサード投稿。この稼ぎがあるから映画で役を選ぶことができる』と、語っています。こうしたイットモデルたちが支持されているのは、やっぱり彼女たちが、『多くの人々の憧れ』だからなんですよね。彼女たちを取り巻く『イケてる商品や体験』をフォロワーたちは渇望しているんです」

 ちなみに、インスタグラムの予約投稿ツール「Hopper HQ」はSNSに投稿されるインフルエンサーのギャランティ・ランキングを発表しているが、昨年もっとも高額だったのはカイリー・ジェンナーで、その額は一投稿あたり1億円と推測している。今や、セレブたちもインスタグラム投稿で巨額の富を得る時代となっているのだ。

■山火事に便乗してPR! 不謹慎インフルエンサー

 他方で、デジタルマーケティングに詳しいウェブ編集者A氏によると、一般人ながらインスタグラムのフォロワー数が10万人前後のいわば「有名な素人」層である“マイクロ・インフルエンサー”たちが、今は注目されていると語る。

「従来のイメージだと、広告はどんなものでも『いかに広い範囲に告知できるか』という、リーチが目的と思われるでしょう。ですが、マイクロ・インフルエンサーや、それよりもっとフォロワー数の少ないナノ・インフルエンサーを利用する広告主は、リーチだけを目的にしているわけではありません。インフルエンサーが活躍するプラットフォーム、特にフェイスブックやインスタグラムでは、アルゴリズムによってユーザーと関係値が高い人物の投稿が優先的に表示されます。そのため、それぞれの興味に特化した分野の商品のPRでは、(特にその商品と関連のない)セレブの投稿よりも確実に表示され、相互作用が高まる。つまり、リーチよりも、いわゆるエンゲージメントを重要視しているのです」

 つまり、宣伝したい商材によっては、誰もが知っている有名人よりも、特定の層で話題のインフルエンサーを起用したほうが、ターゲティングしやすいということだ。

 また、特定の層の有名人とはいえ、マイクロ・インフルエンサーから大成することもある。例えばジャスティン・ビーバー(約1億人)も、当初は無名のYouTuberだった。今、米国にはジャスティンのようにSNSから注目を集めて、セレブの仲間入りを果たすインフルエンサーも雨後の筍のごとく登場している。

 だが、数が多いだけにさまざまな人間がいるのもまた事実。いまだにフォロワー数をカネで水増しするインフルエンサーの存在が問題視されているが、そんなことはまだかわいいほうで、中には詐欺まがいの行為を働く者もいる。

 次記事でもいくつか紹介しているが、海外で起こったマイクロ・インフルエンサーの騒動を追ってみると、「私の美容法教えます」や「絶対に痩せるフィットネス」といった情報商材を2万5000~5万円程度で販売し、「効果がない」「音沙汰がない」などとクレームが続出して炎上するといったものが多い。

 しかし、こうした騒動の中でも批判が多かったのは、昨秋発生した「カリフォルニア州の山火事」をインフルエンサーたちが自身の宣伝に使ったことだろう。

 糾弾されたインフルエンサーたちは、インスタグラムのユーザーが火事に関する被害状況や現地の写真を求め、ハッシュタグ検索することを見越して「#californiafire」や「#californialove」といった山火事に関するハッシュタグに、山火事と関係のない海岸で笑顔で飛び跳ねていたり、全裸で佇む自らの写真を形式的な追悼コメントにくっ付けて商品のプロモーション投稿をしていたのだ。こうした行為は話題になっている事柄に関連する言葉を、自らの利益のために利用する「keyword squatting(キーワード無断占拠)」だと非難された。

 このような形で炎上したインフルエンサーのほとんどは謝罪に追い込まれ、時には自ら謹慎や引退といった代償を支払っているが、中には炎上すればするほどフォロワーを増やし、結果としてスポンサード投稿のギャラが上がるという、焼け太りインフルエンサーも存在する。

「Fyreに関わったモデルたちは騒動当時、総じて炎上しましたが、むしろ今はインフルエンサー・マーケティングの市場拡大に伴い、彼女たちのスポンサード料金は増加しています。例えば、その知名度ゆえに騒動時、もっともバッシングされたケンダル・ジェンナーのスポンサード投稿の推定料金は17年に4000万円だったのが、昨年は5500万円に増えています」(辰巳氏)

 ちなみに、ケンダルはFyreに関するPRをインスタグラムに1回投稿するごとに、2700万円も支払われたとも報じられている。もはや、「やったもん勝ち」「炎上商法上等」というような市場になりつつあるようにも思えるが、前出の本田氏はこう語る。

「皮肉なことですが、Fyreはインフルエンサー・マーケティングの可能性と影響力というのを証明したかもしれませんね。結果的には騙されましたが、アッという間に人が動いた。また、悪質なインフルエンサーでも儲かってしまうという仕組みがある以上、こういった人間はいなくならないでしょうし、これからは倫理観のあるインフルエンサーと、そうでないもので二極化していくと思います。消費者にも『インフルエンサーの背後では企業が動いているケースもある』という、情弱というよりも、新しいタイプのリテラシーが求められるようになったと思います」

 そのため、業界自体は今、健全化のためにあらゆる取り組みを進めている。例えば、昨年フランスで行われた「カンヌライオンズ」という広告祭では、ユニリーバの最高マーケティング責任者が「フォロワーをカネで購入するようなインフルエンサーは起用しない」と宣言し、「フォロワーを水増ししているインフルエンサーたちを、根絶するため積極的に取り締まる」とも、述べた。

 それと連動するように、米国の「Mavrck(マーベリック)」というインフルエンサー・マーケティング会社は、インフルエンサーのフォロワーやエンゲージメントの購入履歴に基づき、詐欺行為のリスクを高、中、低の3段階で定義するシステムを、昨夏にリリースしている。このような動きは今、世界各国で起きているという。

「国内でもTHECOO株式会社などではインフルエンサーの評価・分析ツールを提供しています。こうした施策やサービスが広く普及すれば、今後は自浄作用が働いて(倫理のないインフルエンサーや企業の)淘汰は進むと思います」(A氏)

 ちなみに本田氏によると「コンプライアンス研修をインフルエンサーに対して行う事業者も出始めた」とのこと。このような取り組みも行われているため、今後、インフルエンサー・マーケティングが情弱ビジネスではなく、まっとうな市場になる可能性は高いかもしれない。とはいえ、お騒がせインフルエンサーたちがいなくなるのも、それはそれで寂しい。(月刊サイゾー5月号『情弱ビジネスのカラクリ』より)

エイズは政府が投与した……計算高き天才か、素の天然か? カニエ・ウェスト”情弱”的論考

――今やヒップホップ・シーンのみならず、セレブリティ界隈でも一挙手一投足が話題になる、ご存じカニエ・ウェスト。音楽プロデューサーからキャリアをスタートさせ、ラッパーとしてデビューした彼の言動を振り返りながら、果たして「天才」なのか「情弱」なのかを徹底分析!(月刊サイゾー19年5月号『情弱ビジネスのカラクリ』より)

「400年間、奴隷だったって言われてるけど……400年だよ。自ら選択したんじゃないかな。そんな状態のままで400年、みんなそろってだよ。それって精神的に監獄に入ってるのと同じだよね」 ――この黒人奴隷制度に関するカニエ・ウェストの発言が、たちまち世界中を駆けめぐったのは2018年4月のこと。いくらなんでも、自分から好き好んで奴隷を選ぶ人間がどこにいるというのか。カニエは頭がおかしくなってしまったのか……等々、すぐさま世界中から多くの非難を浴びたのは記憶に新しい。

 これだけでも十分に問題発言である。だが、この発言に文脈を与えてしまうような前段があり、彼は数日前のツイッターで次のようにツイートしていた。

「あなたたちがトランプに同意する必要はない。ただ、みんなからどんなに責められても、私のトランプへの好意は消えない。私たちは2人ともドラゴン・エナジー。彼は自分にとっての兄弟分。みんなのことは好きだ。自分は誰かの行動すべてに同意はしない。それでこそ個人というものが成り立つわけだから。それに各々の考えを持つ権利が、我々にはある」

 この“ドラゴン・エナジー”とは、創造や力のエキスのことである。それ以上にわかりやすいのは、ツイートと一緒にトランプのモットー「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」(アメリカ合衆国を再び偉大な国にしよう)の文言入りの赤いキャップ(通称「MAGAハット」)をかぶった自撮りが含まれていたことだろう。これらの言動がつながっているとしたら、「カニエはトランプ支持者なのか。だから奴隷制度は奴隷側が間違っているみたいなこと言ってるのか!」という理解が世の中に広まってもおかしくない。

 さらにさかのぼれば、16年11月にカリフォルニア州サンノゼで行われたライブでは、ステージから「自分は投票しなかったけど、していたとしたら、ドナルド・トランプに投票していただろう」と語りかけ、その翌月にはトランプ・タワーを訪れ、2人は15分にわたり会談したのだった。これらからわかるのは、カニエはメインストリームで活躍中の彼以外の多くのラップ・アーティストとは異なり、トランプ大統領にまったく嫌悪を抱いていないことだ。19年現在、多くの人がカニエ・ウェストに対して抱くイメージは、「エゴの強い、ナルシシスティックなセレブ」というものだろう。言うまでもなく、トランプは大統領になる前からセレブだった。そんな世界が認めるセレブでもあるカニエだが、無名時代から今とまるっきり同じだった、というわけではない。彼が最初に音楽業界と接点を持ったのは、音楽プロデューサーとしてだ。簡単に彼の音楽キャリアをおさらいしておこう。

 通常は33回転でプレイするレコードを45回転で再生すると、聴こえてくる歌声は高く早口になり、風変わりな印象を残す。このアイデアをサンプリングとして取り入れたビートが、カニエのプロデューサーとしてのシグニチャー・サウンドとなる。これが時期にして03年前後。そんな彼をプロデューサーとして本格的に起用したのが、かのジェイ・Zだった。「ピンク色のシャツを着ているヤツ」というのがジェイ・Zのカニエへの第一印象だったという。どこまでが明確に意図されたものなのかわからないが、人の印象に強く残る部分をキャリアの最初期から持ち合わせていたことになる。

 こうして、まずはプロデューサーとして音楽業界に食い込むことができたカニエは、ジェイ・Zのレーベル〈ロカフェラ〉と契約を交わし、03年にはラッパーとしてメジャーデビュー。自らプロデュースを手掛け、シグニチャー・サウンドに彩られてラップするデビュー作『The College Dropout』(04年)は大ヒットを記録。ラッパーとしても成功を収め、自分の言葉や主張を獲得した彼は、冒頭に挙げたような問題発言の主としての片鱗を見せ始めるようになる。

「知ってるよ 政府がエイズを投与している/俺たちは祈るのみ 牧師のように」――マルーン5のボーカル、アダム・レヴィーンをフィーチャーした05年のシングル「Heard ’Em Say」でカニエはこうラップしている。つまり、エイズにまつわるもっとも有名な陰謀論に与しているのだ。しかも、これは一時の気の迷いなどではない。同年、貧困とエイズへの認識を高めることを目的に開催されたコンサート・ツアーにおいて、彼は「人間が作り出した病気が……アフリカに仕掛けられた。ブラック・パンサーの分裂を目的に、ブラック・コミュニティにクラックが仕掛けられたようなものだ」と観客に語りかけたのだ。こうなるとさすがに「おい、カニエ、ヤバくないか」と考えるのが筋だろう。翌年06年に「ローリング・ストーン」誌は、「本当にそう信じているのか?」と、改めてカニエに問うと、「エイズは黒人とゲイを殺す目的で作り出されたものだ」と語ったのだった。

 

■未来を予知した情強発言? 空気を読めない情弱行為?

 カニエを骨抜きの情弱にしてしまった張本人! と思われている節があるが、「カニエはカニエよ」と、亭主の3歩後ろを歩く発言をするキム・カーダシアン。 

 しかし、これらの理由だけで、カニエのことを「陰謀論好きな情報弱者である」とは決められないだろう。すでに05年に、このエイズ陰謀論容認発言よりも圧倒的に大きな規模で報じられる発言を、彼は公の場で残している。それは、甚大な被害を残したハリケーン・カトリーナ襲来後の復興支援チャリティ番組生放送中のことで、「ジョージ・ブッシュは黒人のことは気にかけていない」とサラリと言いのけたのだ。番組側が慌てふためいたのは言うまでもない。もちろん、それが正論だからだ。と同時に、当時のカニエは、たとえ陰謀論であっても、なにより黒人の側に立った見解を完全に支持する立場に自分を置いていた。しかし、そうだとするなら、後の「自分から奴隷でいるのを選んでいた」発言は余計に矛盾することになる。この間、カニエの意識を大きく変えるような重大な出来事が起きたのだろうか? 彼のアーティスト担当であったユニバーサルミュージック合同会社の柴田壯一郎氏に話を聞いた。

「気の毒な話ですが、母親であるドンダ・ウェストが亡くなったことが、彼を大きく変えたのではないでしょうか。母親の大規模な整形手術(脂肪吸引)の費用を全額カニエが負担し、翌日合併症で死亡した事件です。母親はシカゴ州立大学英語学部の学部長を務めるほどの人でしたが、カニエのデビュー後は職を捨て、彼のパーソナルマネージャーとして息子を支えることに従事しました。過去にカニエが来日したタイミングで母親と共に滞在先のホテルで話す機会があったのですが、『母親を三鷹の森ジブリ美術館に連れて行きたい』と話していて、本当に母親思いのアーティストだったことを記憶しています(※しかし、結局美術館は予約待ちで入館することはできなかったようだ)」

 母親であるドンダが亡くなったのは、07年11月。「母親の死をきっかけに、それまで陽だったイメージが“陰”に変化した。例えば、アルバムでいえば『Late Registration』(05年)や『Graduation』(07年)は陽のイメージですが、以降のアルバム作品は陰のイメージが払拭できていないような気がします」と、柴田氏は続ける。さらに追い打ちをかけるように、ガールフレンドとの別れが08年のアルバム『808s & Heartbreak』を生み出すことになった。ほかにも「ビヨンセこそ授賞に値するアーティストだ!」と宣言したい一心で、「MTVビデオ・ミュージック・アワード」の授賞式で、テイラー・スウィフト受賞の瞬間にステージに乱入したのは、09年9月のことだ。

 こうしたネガティブな流れを、少しでもポジティブな流れに変えるきっかけとなったのが、12年に明らかとなったキム・カーダシアンとの交際だった。2人の出会いは04年までさかのぼり、とあるパーティに出席していたことがきっかけといわれている。その後も逢瀬を重ね、カニエはシングル「Cold」(12年)のリリックで、キムとの交際を公にしたのだ。「パリス・ヒルトンの友達」程度の認知度でしかなかった彼女が一躍時の人となったのは、08年の「セックステープ流出事件」であることは、以前の本誌でも紹介済みだが、カニエとキムが結ばれたことで、実際にどのような変化が起きたのか?

「音楽的才能のあるカニエがキムを妻にしたことで、キムをエンタメ界が認める方向に進み、キム・ワナビーみたいな白人たちが有名黒人男性を物色する“Get Out”現象みたいなトレンドができたと感じています。08年前後までは、まだキムやカーダシアン・ファミリーは“エンタメ業界の徒花”といった感じだったので、あれぐらいの距離感だったらまだよかったんですが、アメリカでは付き合うのと結婚するのはまったくの別物ですからね」

 こう語るのは、アメリカのエンタメ事情に詳しい音楽ジャーナリスト/翻訳家の押野素子氏だ。押野氏が述べた「キム・ワナビーのような白人が有名黒人男性を物色する現象」に絡めて言えば、逆に「有名黒人男性が勝手に近づいてきて盛り上げてくれた」トランプとしては、想定外のことだっただろう。そんなカニエがキムと婚約したのは13年10月だったが、いま思えばこの年に「黒人差別の象徴」である南軍旗(南北戦争における「南部白人の誇り」)をあしらったジャケットを作り、物議を醸したこともあった。

「カニエは政治に詳しくないのにトランプを支持しているのは、単に価値観が合い、お互い金持ちという共通項ぐらいの感覚で、トランプの政策には興味を持っていないかと思います。加えて、『黒人だからこうしなきゃいけない』というルールに縛られるのが嫌いなタイプと思われている節も多い。では、ハリケーン・カトリーナのときのブッシュ発言をした意識高い系の気概はどこに? と思う方もいるでしょうが、たぶんあの時はカニエが本当にそう思ったから口に出しただけで、基本的に感情で動く人なのではないかなと思います」(押野氏)

 冒頭で挙げた言動やツイートに対するリアクションの中には、単純にカニエを忌避するものも多かった。が、同時に(我々が愛してきた)カニエがトランプを支持するはずがない、悪いのはカニエではない――。そんな思いを大前提にした“陰謀論”がいくつか生まれた。その中でもっとも広く拡散されたのが、“パフォーマンス・アート説”だ。これはカニエがこれまでツイートしてきた現代アートの作品やアーティストを関連づけて、丁寧に読み解いていくと、「すべて(の言動)はパフォーマンス・アートの一環である」とする見方。次に広まったのが、「今、我々が目にしているのは、それまでのカニエ・ウェストではなく、クローンに違いない」というポスト・ヒューマンな類の陰謀論である。例えば、トランプを称賛したり、恩人であるジェイ・Z&ビヨンセ夫妻を公然と非難したり、些細なことかもしれないが、突然髪をブロンドに染めた行為など。16年にカニエ自身の精神状態が悪化し、24時間の監視下に置かれたことや、体調不良で倒れ緊急搬送入院によってライブを急遽中止したことも、この陰謀論に拍車をかけた。

 いずれにしても、自分の理想とする(ココがミソ!)カニエへの絶対的な愛がない限り、こうした陰謀論も湧いて出てこない。こうして陰謀論の種を蒔いたカニエではあるが、18年8月に地元シカゴのラジオ番組に出演し、奴隷制度における軽率な発言、並びにMAGAハットをかぶったことへの影響について謝罪するに至った。その上で「トランプは黒人が自分のことをどう思っているのか気にかけ、黒人に好かれたいとも思っている。彼は実現が必要であれば実際に行っていくだろう。ほかの誰もと同じように彼にもエゴがあり、最強の大統領になりたがっている。そして、ブラック・コミュニティからの支持もなければ、最強の大統領になれないこともわかっている」と話した。

 とにかく、カニエはトランプを嫌いになれないことだけは確かなようだ。その証拠に、同年10月には再びホワイトハウスにトランプを訪ね、「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」と書かれた言葉をカニエ流にデザインし直した、オリジナルのMAGAハットをトランプとイヴァンカらに贈っている。

 

■計算高き天才か、天然の情弱なのか

 カニエがトランプ・ファミリーにMAGAハットをプレゼントした翌月、妻であるキムは「カニエはトランプのパーソナリティが気に入っただけで、政治についてはわかっていない」と述べた。さらに、キムとカニエの間に娘・ノースが生まれたとき、病院で知り合ったというブレット・イーストン・エリス(『アメリカン・サイコ』で知られる作家)は、カニエの言動に対して取り巻くメディアへ次のような見解を述べている。

「メディアはカニエを小馬鹿にするような態度を取り、『ドラッグをやっている』と決めつけている。確かに要領を得ないところはあるが、カニエが言おうとしていたことはアホでもない限り理解できるのに、そうやってバイアスを感染させていた。メディアは『カニエはドラッグ乱用に対する治療が必要』と持っていきたかったのだ。そして、奴隷発言とトランプ支持で、彼は二度とキャリアを取り戻すことはできず終焉を迎える、とメディア同士がコンセンサスを取っていた」

 そして次の発言は、キムが述べた最新の言葉だ。「カニエは常にカニエであって、私が変えるつもりはまったくない。だって、それが私の愛したカニエなのだから。私が変えられるわけがない」――カニエ・ウェストという愛すべき情弱は、やはり全世界を巻き込む天才なのかもしれない。

 

カニエ・ウェスト●1977年、アメリカ合衆国イリノイ州シカゴ出身のアーティスト/プロデューサー/デザイナー。妻はリアリティ番組『カーダシアン家のお騒がせセレブライフ』でもおなじみのキム・カーダシアン(左肩)。これまでにアーティスト、プロデューサーとして数多くのグラミー授賞歴を持つ。と同時に、トランプ大統領(右ヒザ)への賛辞をはじめとする、数多くの問題発言、行動を起こしてしまう愛すべきキャラとして確固たる地位を築いている。左足にくっつているのはカニエのマスコットキャラ、ドロップアウト・ベア。

【ROLAND】「俺か、俺以外か。」名言を連発する現代ホスト界の帝王、その新たな野望とは?

――「自分に嘘をついたことは一度もない」。虚構渦巻く歌舞伎町の夜をくぐり抜け、実業家に転身したROLANDの現在地。

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(写真/石黒淳二)

 ギリシャ神話の美少年ナルキッソスは、湖面に映る自分の姿と恋に落ち、届かぬ思いに絶望しながら、やがて水仙の花と化す。「ナルシスト」の語源となる逸話である。

 そして現代、新宿歌舞伎町のネオンの奥に「くだらないSNSを見ているくらいなら、鏡を見ているほうがいい」と言い放つひとりの男がいる。現代ホスト界の帝王ROLAND。「世界には2種類の男しかいない。俺か、俺以外か。」の決め台詞でネットやテレビをにぎわせるあの男だ。サラサラのブロンドヘアにバッキバキの腹筋。ホスト時代、月間6000万円を売り上げたエピソードでも知られる。そんな彼は、2018年末で現役ホストを引退し、実業家に転身。ホストクラブの運営など、さまざまな事業を手がけている。なかでも力を入れているのが、新宿にオープンしたメンズ脱毛サロンROLAND Beauty Loungeの運営だ。

「ホスト引退後は、本当に情熱を感じられること以外は仕事にしないと決めていて、メンズ美容の分野なら最高のものを目指せると思ったんです。自分もホスト時代から全身脱毛をしていて、あらゆる施術を試しました。脱毛ってやっぱり痛いんですよ。人生を生きているうえで『犠牲なくしてリターンはない』と思って耐えてきたんですけど、探しているうちに痛みもなくて、効果が続く脱毛方法が見つかって……。これなら自信持って紹介できると」

 犠牲なくしてリターンなし――。しっかり名言をぶち込んでくるところはさすがである。本人いわく、「行きたくなる美容サロンを自分のために作っただけ」とのこと。それでも評判は上々だという。そこで、気になるのは脱毛へのこだわりだ。全身ツルツルになると、男が上がるのだろうか?

『川栄李奈』だけじゃなく、元カノにも幸せになってほしい――川栄ベイビー

『川栄李奈』

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5月17日、結婚&妊娠を発表した女優・川栄李奈と俳優・廣瀬智紀。その後、「週刊文春」5月30日号にて廣瀬の二股疑惑が報道された。ちなみに、本文中に出てくるオードリー・春日俊彰はプロポーズ10日前に浮気してたんだって。「FRIDAY」(講談社)に書いてあった。

「いや~、廣瀬智紀の刀剣が乱舞しましたな~」

 そんな、おっさんらの下衆な居酒屋トークがはばかられるほど、元AKB48で女優・川栄李奈と『映画刀剣乱舞』等で活躍中の俳優・廣瀬智紀の結婚&妊娠発表は、世間から手放しで祝福された。だが、残念なことにそれからわずか5日後、毎度おなじみ「週刊文春」(文藝春秋)が、夫・廣瀬の二股疑惑を報じてしまったため「ほら、やっぱり刀剣が乱舞してた」と自らの下衆な発想を反省していたおっさんらに、再び自信を与える結果となってしまった。

 一時期は『AKB48選抜総選挙』で躍進した娘に翌週、文春砲を食らわせる“若い子の芽を摘む”所業が繰り返されており、「文春が発売されるまでが総選挙」といった「家に帰るまでが遠足」みたいなことになっていたが、最近ではオードリー・春日俊彰のように、アイドル以外の芸能人の結婚報告ですら発表後はうかうかできない状況になっている。

 とはいえ、発表当初の盛り上がりは相当なもので、やれ「女優としてこれからなのに」であるとか「スポンサー対応が……」みたいなネガティブな声はほとんどなく、「皇室か!」というぐらいの祝福ムード。「ああ、皆から愛されるってこういうことなんだな」と酔ってカラオケで『ZOO~愛をください~』を熱唱して、女子の気を引こうとする卑しい独身中年男としては襟を正される思いである。

【五所純子/ドラッグ・フェミニズム】薬草で開眼した大学生・カツキの「学問のすすめ」

――覚醒剤、コカイン、大麻、向精神薬……クスリに溺れる女たちを嗤うのはたやすい。だが、彼女らの声に耳を澄ませば、セックスやジェンダーをめぐる社会の歪みが見えてくる。これは、文筆家・五所純子による“女とドラッグ”のルポであり、まったく新しい女性論である。

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21歳の女子大生であるカツキは、このように水のペットボトルをよく持ち歩く。(写真/草野庸子)

「いまなら勝ち逃げなんですよ」

 東京近郊の駅前、2リットルのペットボトルを抱えてカツキは現れた。ラベルの剥がされたボトルの中で透明な液体が揺れている。ドラッグで喉が渇いているのかと思いきや、子どもの頃から無類の水好きで、いつも飲料水を持ち歩いているという。荷物は水だけ。誤解をふくんだ視線をカツキは楽しんでいるようだ。現在21歳の大学生。

「物心ついたのが、クイズ番組の影響でバカキャラがウケてる時代でした。だから変なこと言うのが偉いと思ってた。体育と音楽は5だけど、それ以外はオール1。その成績表がイケてるって勘違いしたし。環境のせいにしちゃいけないけど、私は腐った蜜柑の箱に入れられた王族だったんです」

 ポケットからA4の厚紙を取り出して広げる。三白眼に長髪の人物が真ん中に描かれ、そこから伸びた吹き出しに〈健康・私〉〈愛・宇宙・水・母〉〈私は最強すぎてゴメン〉〈秒で10万〉〈薬物はギャンブル〉〈自信ない人間がやっても状況は悪化するだけ〉などの文字が踊る。カツキの人生パズルだ。

 人物の真下に書かれた〈初大麻 高1〉を指差して語りはじめた。

「高校1年の夏にレイプされかかったんです。主犯の男と体育倉庫に閉じ込められて、数人の取り巻きが扉閉めて固めてました。私は暴れて抵抗して、それが防犯カメラに映ってて。ほんとは主犯の男が退学するはずだったけど、噂が広まって私はいづらくなって。それに動機がくだらなかったんですよ。私、そいつに告られたことがあって。そしたら『なんでお前みたいなフツウの女に断られなきゃいけねぇんだよ』って逆恨み。マジでくだらない。

 超底辺の通信校に移って、そこのスケーターの男の子たちと遊ぶようになりました。みんな大麻吸ってて、私ももらって吸うようになって。私ずっと友達いらない精神でやってて、男の子としか遊んでなかったんですよ。私だけ女一人っていう優越感もあったな。でもそのうち『あいつだけタダで狡くね?』ってなったんだと思う。売買の関係になって、そしたら一緒にキメる感じじゃなくなって、パッと受け渡して解散で」

 男と渡り合う女は腕力で折られ、男たちにまぎれる女は無償の優遇がないと知る。狭い世界だ。ふいに女友達から電話がかかってきて、「親友からです」とカツキは言った。

〈初LSD 高校〉を指差すと、「でも、これ面白くないんで」と口ごもる。人を笑わせられるかが大事な基準らしい。

「芸大で音楽やってる姉の部屋に入ったらLSDがあったからキメた。それだけです。たぶんお姉ちゃんはプレッシャーでおかしくなってたんですよね。私が10歳のときに音楽教師だったパパが死んで、ママが私たちを育ててくれたんですけど、『お姉ちゃんがお父さんの才能を引き継いで頑張ってくれるよ』って励ます人がわりといたんです。いつからか、お姉ちゃんがテレビを壊したり、飼ってた猫の叫び声が姉の部屋から聞こえたり、それを受け入れられなくてママが酒浸りになったり。姉は精神科病院を出たり入ったりで、いまは家にいます。姉は仕事してないし、ママが働くばっかで、私が稼がなきゃってプレッシャーがありますね」

 大学進学とともに家を出た。高校時代に貯めた金でマンションを借りたが、それはカラオケ店などのアルバイトでつくった金だった。

「キャバのほうが儲かっただろうけど、『水商売やってそう』ってよく言われてて、まんまやるのは悔しいから絶対やらない。いまもそう。プライドです」

〈プリンセスポット プッシャー時代〉はパズルの左上にあった。

「夜系以外で手っ取り早く稼ぐならクスリしかないと思ったんですよね。周りの女子大生は夏休みに出稼ぎとかキャバとかやってたけど、プッシャーなら一瞬の受け渡しでアガリが出るかなって。スケーターの友達に『大元を紹介してくんない?』って頼んで、『大元はムリだけど、上から3番目くらいなら』って。言われた期限内に売ればアガリがあるけど、はみ出たらアガリなし。まあ、厳しいですよね」

【茅島みずき】圧倒的美少女! 力強い表現力とその裏の涙を見せた話題の14歳

【拡大画像はグラビアギャラリーでご覧いただけます。】

――ポカリスエットのCMで大注目を集める中学3年生。堂々たる演技のウラには幼少期から培ってきた“経験”が生かされていた。

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(写真/宮下裕介)

 初めての全国での生放送『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)に出演した直後の取材だった。バラエティ界の猛者がそろう番組で、この14歳は、見た目以上に大人びていた。

「緊張はしなかったです。皆さん優しく接してくださいましたし、あまり緊張するタイプではなくて。小学2年生の頃からゴルフ漬けだったんですけど、感情を出すとスコアは落ちてしまうので、もしかしたらそういうところが、今にも生きてるかもしれません」

 長崎県在住の中学3年生、茅島みずき。祖父の影響で始めたというゴルフのベストスコアは「70」で、以前はプロを目指していたほどの腕前を持つ。全国大会にも出場してきたというから、どうりで度胸が据わっているわけだ。元々芸能界にはそれほど興味がなかったというが、全国大会で良い結果が出ず挫折をしてゴルフから離れていた時に、母の勧めでアミューズのオーディションを受けると、グランプリを受賞。そして今年の4月、これまで宮沢りえ、綾瀬はるかといったスターが出演した「ポカリスエット」のCMに大抜擢されたのだ。学校を舞台に激しいダンスを踊りながら、力強く歌い上げる姿は堂々たるもの。かわいさとかっこよさを兼ね備えた圧倒的な美しさで、話題になった。しかしそんな彼女も、CM撮影では苦労を重ねていたという。

LGBTペンギンを棚から外せ! 米国で禁書扱いされる創作童話・児童文学

――前記事では海外での童話の規制事情を紹介してきたが、実は創作童話や児童文学の締め付けも厳しいみたいで……。

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日本でも昨年、岩崎書店から出版された『にじいろのしあわせ』は、ペンス副大統領を皮肉った政治的なパロディ絵本でもある。

 何百年も前の童話の中には今の価値観だと許されないような表現や描写もあるだろう。その結果、前記事でも紹介したような排除運動が起きているわけだが、憂き目にあっているのは童話だけではない。

 米国では図書館や学校に対して行政ではなく、保護者がクレームを申し立て、特定の地域だけで禁書にされた創作童話や児童文学がある。わかりやすいのは、人種差別的だという『ハックルベリー・フィンの冒険』や、反キリスト教的だとしてやり玉に挙げられていた『ハリー・ポッター』シリーズだろう。一方で、イマイチよくわからない理由で禁書に指定された本もある。

 例えばディズニー映画でもおなじみの『クマのプーさん』は06年にカンザス州の一部地域において「動物が人間の言葉を話すという表現は神への侮辱」という理由で、禁書になっている。また、カンザスつながりでいえば『オズの魔法使い』は「子どもに無利益であり、子どもを臆病にさせる」という理由で、シカゴやテネシーなどの図書館や学校で禁止されたこともある。

 さらに、ニューヨークの動物園で赤ちゃんペンギンを育てる2羽の雄ペンギンの実話を描いた『タンタンタンゴはパパふたり』(日本語版・ポッド出版)という絵本は、05年の出版以降、多くの保守的な地域で「LGBTQIA+コンテンツだから」という理由で禁書となった。ちなみに、シンガポールでは14年に国立図書館で破棄処分されている。