学校で子どもたちに朝食を提供する「学校朝食」の取り組みが全国で広がっているという。朝食を食べない小・中学生が増加傾向にあること、毎日朝食を取る児童生徒ほど学力調査の得点が高い傾向にあることは、文部科学省や農林水産省の調査結果からも関連が指摘されている。
11月16日放送の『めざましテレビ』(フジテレビ系)では、近年朝食を食べていない小学生が増加しつつあり、学校給食がそのような子どもたちの救世主になるかもしれないとして「学校朝食」の取り組みが紹介された。
「学校朝食」に対する視聴者の反響は大きく、ネット上では様々な意見・感想が飛び交った。学校朝食を「素晴らしい」「食育の実践」という声もあるが、「本来親の役目では?」「子どもの朝食くらい親が作れ」「育児放棄」「美談にする話じゃない」と疑問や違和感を唱える声も多く、また、かねがね教員の過重労働が指摘されていることもあってか教員の負担増を懸念する声も相次いでいる。
『めざましテレビ』では、いくつかの学校および自治体の学校朝食の取り組みがクローズアップされた。たとえば、東京都足立区の足立入谷小学校では、月2回「学校で朝ごはん」を実施しており、朝食代は無料、希望する児童やその兄弟を対象に学年単位で参加を呼び掛けているとのことで、番組の取材当日は1年生が対象のため一緒に参加する保護者の姿も見られた。
番組によれば、「学校で朝ごはん」の実施日、足立入谷小では、朝6時過ぎに地域のボランティアの方々が家庭科室にて、地域から提供された食材で魚や野菜をふんだんに使った朝食を50人分作り、朝食を希望する児童たちは授業が開始する8時45分より1時間早い7時15分に登校し、みんなで朝食を食べる。
朝食を食べた児童たちは「めちゃめちゃ幸せです」「みんなでワイワイ食べるので嬉しいです」と笑顔を見せ、参加した保護者たちも「野菜とか家だとほとんど食べないけどここではたくさん食べる」など良い反応で、吉田益巳校長は「朝ごはんを食べた日は担任が困るくらいにハイテンションで元気に一日を過ごしているみたいです」と有効性を語っていた。
しかしこの放送からは、教員が学校や家庭科室の鍵を開けるために早朝出勤しているのではないか? 教員の負担は大丈夫なのだろうか? という疑問も湧く。その点について足立入谷小に問い合わせたところ、吉田益巳校長が取材に応じてくれた。
「鍵を開けているのは警備員で、警備員が自身の出勤時間に合わせて開錠し、ほぼ同時に地域のボランティアさんが来ています」(吉田校長)
吉田校長は、「なるべく教員の負担はかけないように」気を配っているという。学校は、場所と子どもを貸すだけで、あとは地域の方がやり、誰が来ても接待はしない。「教員には前もって参加募集をかけたり出席確認をしたりするくらいで、当日はほとんど負担をかけていない」「自分も食べたい教員が手伝うことはある」とのことだった。
児童たちに朝食の良いイメージを伝えるための試み
この取り組みの発案者である吉田校長自身、前日に児童たちに声をかけ、また当日も朝食を食べてきていない子、少ししか食べてこなかった子がいたら授業に間に合う範囲で誘うという。ちなみに、1時間目が始まるのは8時45分だが、登校時間は8時から8時20分、「学校で朝ごはん」の実施日は参加児童が早めに登校して7時30分集合・7時40分に「いただきます」とのことだ。
もともとは6時半にボランティアが来ることになっていたが、ボランティアとして支援してくれる人々は朝起きるのが早く、警備員もちょっと早めの出勤となり、結果的に最初の設定より早く開いているという。
足立入谷小学校は児童数152人で各学年ひとクラスの小規模校。95%の子は朝食を食べており、食べていない子も寝坊とか親の体調不良とか突発的な理由が多いそうだ。朝食がチョコパイだけ、牛乳だけの日があるという子は実際におり、家庭のルールで「朝食は自分で作る」子もいて、そういう子には「明日は作らなくていいからおいで」と声をかけるのだそう。
番組では50人分の朝食を作っていると紹介されていたが、毎回人数は随分違うそうだ。学年単位+その兄弟で実施しており、撮影当日はテレビに映りたいがために多くの児童が集まり、1年生対象の実施日で特別に保護者参加があったから、多かったとのことだ。
また、『めざましテレビ』の放送では、朝食を食べていない子どもの〈救世主〉として学校朝食がクローズアップされていたものの、今回の取材で吉田校長は、「学校で朝ごはん」の主旨について、「本校の朝食を食べていない子のためにやっているのではなく、朝ごはんの大切さを伝えるためにやっている」と明かした。
児童たちに朝食の良いイメージを伝え、大人になった時に朝食を用意する習慣を持ってもらえたら、との思いから、メニューにも気を配る。実施日になると、参加児童たちはそんな朝食を楽しみに学校にやって来るそうで、「うちの学校の子どもたちは朝ごはんを食べていないように全国から思われていたら、残念」と危惧する。
元々、「学校で朝ごはん」は、「宿泊学習のような発想」から生まれた活動だという。「宿泊学習では、朝、楽しい雰囲気の中、みんなで朝食を食べている。宿泊学習で子どもたちが朝から夜までずっと元気に過ごせるのは、そんな朝食のおかげではないか」と吉田校長は考えているそうだ。
確かに、筆者も小・中学校時代、宿泊学習でみんなで食べる朝食は、普段の給食とはまた違った雰囲気で楽しかったと記憶している。宿泊学習という特別な時間・空間ゆえ、みんなテンションが高くなり、さほど親しくない相手とも仲良く過ごせたり、なんてこともあった。取材を終えてからあらためて録画した11月16日の『めざましテレビ』の放送を視聴すると、朝ごはんを食べる足立入谷小の児童たちは、元気で活き活きとしていた。
地域で子どもを見守る取り組みは増えつつある
学校に限らず、子どもたちに家庭以外の場所で朝食を提供するという取り組みは、徐々に広がっている。広島県廿日市市では11月14日、学力向上などを目的に小学生に無料朝食で提供する広島県のモデル事業を開始した。これも『めざましテレビ』で紹介された取り組みだ。
都道府県が主導となっての学校朝食の提供は全国初であり、週に一度、企業から無償提供されたパン・シリアルなど調理不要なメニューを地域ボランティアが始業時間前に用意するという。廿日市市の1校で試験的に始まった段階だが、広島県知事は「少しずつ増やし、最終的には県全体に広げることができれば」と展望を語っている。
そのほか、大阪市西淡路の「朝ごはん屋さん」、福岡県福岡市では週1で企業提供のパン牛乳バナナなどを子どもたちに提供する取り組み、高知県では教員を志す学生主体で学校朝食を提供する「お話モーニング」など、オリジナリティに富んだ朝食提供が全国各地で行なわれている。
朝ごはんを提供する「子ども食堂」もある。たとえば東京都板橋区のマンションで開かれる「まいにち子ども食堂高島平」では、名前の通り“毎日”、平日・土日祝を問わずオープンしており、朝食は朝7時~8時に提供している。子どもは朝・昼・夕すべて無料で、大人は朝100円・昼200円・夜300円。臨時休業の際はTwitterやFacebookで告知されるとのこと。
神奈川県横須賀市の古民家を利用した子ども食堂「よこすかなかながや」は、火・木・土の週3日、子どもたち無料で夕食を提供しているほか、今年4月より平日の朝6時半~8時まで朝食の無料提供を行う「あさながや」をスタート。神奈川県平塚市では今年1月、NPO法人未来体験プロジェクトが主宰する「朝ごはんこども食堂」がオープン。居酒屋を借り、毎月第3月曜の朝、子ども50円・大人200円で朝食を提供する。なお、神奈川県では中学校の完全給食の導入が立ち遅れており、現在、横須賀市・平塚市ともに中学校では牛乳のみ提供されるミルク給食しか実施されておらず、それだけに朝食の無料提供は、困窮する生徒たちにとって重要なセーフティーネットにもなり得るだろう。
一概に“子どもの貧困対策”として括れるような活動ではなく、足立入谷小の例のように朝食の大切さを伝え、子どもたちに元気に過ごしてもらえるよう、学校で朝食を食べる機会を設けているケースもある。いずれにせよ、家庭外の朝食を食べる場所は、子どもにひとつの居場所をもたらすこと、大人が子どもを見る機会として有効活用できる可能性を持つのではないか。
貧困対策であろうとなかろうと、学校であろうと子ども食堂であろうと、子どもに居場所を作り、地域の大人が子どもを見る機会は重要だろう。家庭環境に困難を抱える子を福祉につなげることもできるかもしれない。子どもたちの健全な成長を地域で支える取り組みが広がることはこの少子化社会において希望だ。