虐待親のいたずら電話は彼氏や友人にまで……「殺したろか」と怒鳴られても、母を助けるために動いた理由

“「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”
――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)

 そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。

 黒沢美紀さん(仮名・45)は、統合失調症を患った母・良江さん(仮名・70)からの暴力に加え、良江さんに激しい暴力を振るう父・昇二さん(仮名・75)からは性的虐待も受けた。大学入学と同時に家を出て、その後結婚したが、ふたをしていた性的虐待の記憶がよみがえり、自殺を図った。一命を取り留めたが、今も自分と向き合い癒やす旅の途中だ。

実家を出てからも苦しめられた、母からのやまない電話

 統合失調症を患いながらも、30年近く治療を受けさせてもらえないままだった良江さんを病院につなげたのは、美紀さんだった。美紀さんが30代半ばの頃のことだ。

「幼い頃から母にはつらい目に遭わされて、『お母さんなんか死んでしまえばいい』という気持ちがある半面、『お母さんを助けてあげたい』という気持ちもありました。母が父から暴力を受けているとき、祖父が『全部お母ちゃんが悪い』と言うのを聞いて、『それは違う』とも思っていました」

 18歳で家を出てから、ほとんど実家には戻らなかったが、良江さんからは毎日電話が来る。大学から帰ると電話が鳴り続けていて、一晩中やまない。良江さんは『殺したろか』と何時間も怒鳴り散らす。受話器を離してうずくまっていると、良江さんは美紀さんが話を聞いていないことに気づき、美紀さんの下宿の大家さんや彼氏、友人たちにいたずら電話をかけて、『お前が電話に出ないから、こんな目に遭うんじゃ』と脅した。大家さんから泣くまで説教されたこともある。彼氏と別れた後も、良江さんは元カレの家に電話をかけ続けたため、苦情を言われたこともあった。

 美紀さんが社会人になって、ようやくたどり着いた精神科医からは、「お母さんからの電話は、たとえ苦しめられても取らないようにしなさい。取ってしまうのは、あなたの弱さ」だと言われ、良江さんが友人にいたずら電話をかけても、良江さんからの電話は取らないようにしてからは、かかってこなくなった。

母からの「助けて」のメッセージを聞き、地元へ通うように

 それから数年たったある日、美紀さんは留守電に良江さんからの「助けて」というメッセージが入っているのに気づいた。

 「初めてお母さんがまともなことを言った」と驚き、連絡をしてみると、良江さんは定年を迎えることに不安になった昇二さんから背中を蹴られ、背骨にヒビが入っていたことがわかった。

「『助けて』と言っている今なら、今度こそ助けられるかもしれない」

 美紀さんは夫と共に何度も地元へ通い、良江さんを医療につなげるため、保健所と連絡を取るなど奔走した。

 しかし、当然のように昇二さんは非協力的だった。「ワシが言っても、お母ちゃんは聞かん」と匙を投げていて、とうとう良江さんを保健所に連れていくことはできなかった。

 当時、地元に住んでいた妹の理香さん(仮名・43)は「姉ちゃん、もういいよ」と言い、夫も「お母さんを助けたいと思って動いたのは美紀なんだから、美紀がここであきらめても、誰も何も言うことはできないよ」と声をかけてくれた。

 それでも、美紀さんは最後にもう一度だけ頑張ろうと実家に向かった。すると、良江さんはあっけないくらい簡単に病院へ行ってくれたという。

 良江さんは、入院して治療することになった。担当医からは「未治療だった期間があまりに長いので、人格が壊れていて、もう元には戻らないかもしれない」と言われていた。ところが、さまざまな薬を試していくと、良江さんに合う薬が見つかったのだ。

続きは1月29日公開

PTA副会長が暴走! 保護者の負担そっちのけで「行事復活」に大張り切り、ワーママはうんざり顔

「子ども同士の付き合い」が前提のママ友という関係には、さまざまな暗黙のルールがあるらしい――。ママたちの実体験を元に、ママ友ウォッチャーのライター・池守りぜねが、暗黙ルールを考察する。

 年が明け、4月から新学年が始まるとなると、ママたちが頭を悩ませるのは「PTA活動」ではないだろうか。PTAへの加入は任意ではあるものの、当たり前のように活動せざるを得ないのが実情。学校によっては、在学中に一度は委員か役員をやらなければならないという暗黙のルールも存在する。

 今回は、仲の良いママ友とPTA役員になったものの、その活動に悩みを抱えるお母さんの話を取り上げる。

PTA役員になったママ友についていけない! 無償で作ったバザー用のスタイに“作り直し”要請

 テイクアウト専門の総菜屋に勤務している泉美さん(仮名・38歳)は、小学5年生の女の子を育てるママ。今年度、仲が良いママ友・奈菜さん(仮名・39歳)からの誘いを受け、PTA役員を務めたという。

「娘が4年生のときに、奈菜さんは推薦委員という役員をやっていたんです。この推薦委員は、秋頃に保護者に対し、翌年のPTA役員にふさわしいと思う人のアンケートを行い、選出された人に電話をかけるという仕事を担っています。奈菜さんは、回答に自分の名前があったのを見て、『誰かに頼むよりも自分がやろう』と思ったそうで、PTAの役員 を買って出ました」

 一方で奈菜さんは、泉美さんに「PTAの役員を推薦するアンケートに、あなたの名前を書いてもいい?」「一緒に役員をやらない?」と聞いてきたそうだ。

「事前に聞いてくれたのはよかったですが、断りづらいですよね。『仕事があるので、あまり活発にできない』と伝えたところ、『あなたの仕事は、早朝から午前までで終わるでしょ。PTAの集まりは午後にあるので大丈夫だよ』って押し切られました」

 PTAのシステムは学校によって異なるが、一般的には学年にかかわらず、学校全体の活動を円滑に行うための作業を担う会長や副会長、会計などは「役員」と呼ばれる。それぞれの学年の代表ともいえる学年委員や、広報委員などの「委員」に比べ、実質的な負担が大きいため、「もし子どもの在学中に役員か委員を一度はやらなければいけない場合、やっぱり委員を選ぶママが多い」そうだ。

「奈菜さんとは娘が同じ幼稚園に通っていて仲が良くなりました。彼女は幼稚園でもPTA役員をやっていて、みんなが嫌がるバザーの運営も率先して引き受けていましたね。絵が得意だからとポスターを描き、近所の学童や学区内の掲示板に貼らせてもらえるよう、各所にお願いしたそうで 、実際バザーは盛況に終わったのですが……奈菜さんの“やる気”についていけなくなるシーンが多々あったんです」

 例えば、保護者が無償で作ったバザー用のスタイやパッチワークの出来が気に食わなかった奈菜さんは、「これ、お金を出してまで欲しいと思うクオリティかな?」と言って作り直しを命じたという。

「ほかにも、出店の店番をママたちに強要したり……やる気がありすぎる彼女に巻き込まれ、周囲はみんな疲れ果てていました」

 結局、奈菜さんはPTAの副会長をやることになった。そして泉美さんを「同じ副会長にしたい」と打診してきたそうだ。

「『副会長は2人体制だから、泉美さんが忙しいときは、私がフォローする』と言ってくれたので、渋々引き受けました。いずれにせよ、私はそれまで委員もやったことがなかったため、一度は何かやらなければならなかったんです。でも奈菜さんはPTAに対してのモチベーションが私とは全然違うんですよね。それでいろいろ困ってしまって…… 」

 コロナ禍のPTA活動において、以前と最も変わった点は「小学校に行く回数が減ったこと」だろう。これまでPTA役員や委員は、何とか時間を捻出し、小学校にわざわざ出向いて会議を行っていたが、最近はLINEのグループチャットやオンライン会議ツールなどを使い、時間や場所を気にせず打ち合わせするようになった。しかし、奈菜さんはあくまで“対面”にこだわったという。

「奈菜さんは、それぞれの役員が集まった顔合わせの場で、『なるべくオンラインではなく、PTA室に集まって打ち合せしましょう』 と言い出したんです。奈菜さんは専業主婦なので時間があるんですが、忙しいワーママはうんざり顔でしたよ。 そういえば奈菜さんはよくPTA室にこもって事務作業をしていましたね……」

 コロナ禍でラジオ体操や夏祭り、交通安全教室など、学校行事が中止になったケースも多い。しかし、奈菜さんは「小規模での復活」を熱望したそうだ。

「奈菜さんは、『行事がなくなって、子どもたちがかわいそう』と繰り返すんです。確かに運動会や学習発表会などは、学年ごとの入れ替え制にし、入口で来場者全員に検温を実施するなどの手間がありましたが、開催して良かったって思うんです。でも、門松やしめ縄といった正月の飾りを小学校の校庭でお焚き上げする『どんど焼き』や、児童たちが集まって風船を空に放つ『風船飛ばし』は、別に復活しなくてもいいんじゃないかなって。ママさんたちのボランティアも必要ですし、準備も大変なので、ほかの役員さんも本音では復活に後ろ向きみたいなんですが、 奈菜さんに押し切られてしまいそう 」

 奈菜さんは、「来年も引き続き役員をやりたい」と意欲を見せているという。

「基本的には、うちの学校のPTA委員は1年任期ではなく、引き継ぎの期間も入れて2年やるのが通例。奈菜さんは、娘さんが6年生になるので、会長をやりたいのではないかと思います。私のほうは、もう今年で辞めたいですが。多分、来年の役員さんへの引き継ぎがあるので、『一緒にやろう』って誘われそうで頭が痛いです。また周囲を巻き込む“暴走”を起こすのも怖いですね」

 PTA活動は「積極的にやりたいという人のほうが圧倒的に少数派ではないか」と泉美さんは言う。

「だからこそ『できるだけみんなの負担を減らす』方針を取るのが、暗黙のルールだと思っていたのですが、奈菜さんには通用しませんでした」

 そもそも国内でPTAが広まったのは戦後すぐのこと。 「会員の主体は専業主婦」の時代が過ぎ去った現在、その活動自体が見直されるべきなのかもしれない。 ワーママが増えた令和のPTA活動をめぐっては、「できる限り最低限で抑えたい派」のほうが、「積極的に学校と関わりたい派」より多いだろう。

 2020年から始まったコロナ禍の影響で、PTA主体の行事が見直され、中止になったという話をよく聞く。また、泉美さんが言っていたように、オンライン会議が一般的になり、仕事を早退したり、休まなくても、ある程度の活動はできることも証明され、PTAの負担を減らす流れが活発化する気配を感じる。 泉美さんが言う「『できるだけみんなの負担を減らす』方針を取る」を暗黙のルールと捉える人も増えていると思う。

 しかし一方で、「子どもが小学校に在籍しているほんの1~2年我慢すればいいだけのこと」と思い、PTA活動自体に異議を唱えるママは少ないのではないだろうか。担当が数年で変わることもあり、そのやり方自体を大々的に変えるのは骨が折れると、とりあえず前年までのやり方が踏襲されがち。情熱を持って「負担を減らそう」と改革に乗り出す人がいない場合、奈菜さんのようなやる気のある人に流されることは大いに考えられる。

 泉美さんは、そもそも奈菜さんからの誘いを最初に断るのがベターだったのではないか。PTA活動は、どの委員や役員が自分に合っていて、どれくらい時間を取られるかを、できるだけ事前に調べるのが重要だ。そういった下調べナシで、誘われるがまま、やる気みなぎるタイプの奈菜さんと一緒に副会長になってしまっては、苦労するのは目に見えている。

 また、高学年になると子どもの塾通いが始まったり、中学受験に向けた学習が本格化するケースもあるので、できるだけ低学年で委員もしくは役員を終わらせておくというのも今では一般的だ。PTAで悩まないためには、小学校入学当初から、その攻略法を練っておくことが大事だと思う。

 子どもの小学校入学を控えるママたちには、上の子どもがすでに小学生というママ友から、事前にPTAの情報を入手することを強くおすすめしたい。「今はみんな忙しいから、PTA活動自体もそこまで大変じゃないはず」という自分都合の思い込みは禁物だろう 。

ぽっちゃりな私でも着れた! イオンで見つけた「ゆったりシルエット」「1着1万円弱」のアパレルブランドとは?

――2年で1,300万円以上溶かし、現在借金は●00万円の“買い物狂い”のライターが、苦しくも楽しい「散財」の日々を綴ります。

 手術を終えて退院したステディの仕事の関係で、一緒に千葉へ行くことになった私。ステディは病み上がりだし、一人じゃ心配なので、私もついて行くことにしたのです。

 荷物はなるべく軽く……っちゅーことで、服は初日にスカートとインナー2枚を着ていき、そのほかにトップス2枚、あとはタイツに靴下を持って出発することにしました。どうせ、友達には毎日1人ずつしか会わないし、同じ服を着てもバレることはないだろう! という算段です。

 千葉に到着し、ステディの実家でご両親と食事をして、宴もたけなわとなった頃合いに、お義父さんがこう言いました。

「明日も来なさいよ」

 えええええ!?!?!? う、うれしいけど、私、服1枚しか持ってきてないんです(汗)! ああ、どうしよう……。とりあえず、「ほほほ、伺います」と返事をしたものの、脳内はパニック。さあ、どうする、千葉N子!

 ええ、答えは簡単です。買うのよ。ないものは現地調達、それっきゃねえ! というわけで、翌日はフンフン鼻を鳴らしながら、ステディと共にイオンモール八千代緑が丘店の開店と同時に殴り込みに………いや、お洋服を買いに行きました。

 でもね、嫌な予感はしてたのよ。なんたってあたしゃあ、身長163cm、体重76kgという体形。イオンに入っている「Honeys(ハニーズ)」だの、「earth music&ecology(アースミュージックエコロジー)」の服が入るはずはないのです。

 とはいえ、夜はステディの家族に会わなければいけないので、服の購入はマスト。もし服が見つからなかったら、東京駅からすぐの場所にある大丸に駆け込んで、豊富なサイズ展開のブランド「23区」の服を買おうと思っていました。

 そしてイオンの2階に入っている店を見終わって、「やっぱり私に入る服などなさそうだ」と落ち込み、とぼとぼと3階を歩いていたときでした。なんかいい感じの服があると思い、「Comme ca Mature(コムサマチュア)」というお店を覗いてみることに。すると、11号サイズまで展開されているではありませんか。もしや、私でも入る服があるのでは――!?

 そうして緑色の可愛いトップスと明るいグレーのスカートを手に取り、店員さんに試着可能か聞いてみると、「どうぞ、どうぞ!」と返事が。気をよくした私はルンルンで試着室に入り、いざ着てみると、なんともジャストサイズ! 自分でいうのもなんだけど、似合ってる!!

 外に出ると、店員さんも、付き添いのステディも「似合う!」と言ってくれました。ブラボー!! 服を包んでもらってる間、店員さんに「入る服があってよかったです」と言うと、店員さんはにこにこしながら、「うちはゆるっとしたものが多いんですよね。姉妹店の『コムサ』はわりとぴちっとしたデザインが多いんですが……」とのこと。どうやら、「COMME CA DU MODE(コムサデモード)」の姉妹ブランドだったようです。

 なお、値段もそこまで高くなく、手頃で1着だいたい1万3,000円前後。イオンでこんないい出会いがあるとは思いもしませんでしたよ。全国のぽっちゃりさん、コムサマチュアはいいぞ! ゆったりしたシルエットだから安心して着られるし、可愛いデザインの服がたくさんあるので、気になった方はぜひチェックを!!

■今回の出費
コムサマチュア「
緑のトップスとスカート」 2万6,000円

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中学受験、憧れの第1志望に連続不合格――「入試の日に初めて行った」1月校に入学した親子の話

 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

 今年も全国各地で中学受験の本番が始まった。

 栄光ゼミナール調べによると、首都圏では中学受験生1人あたりの受験(出願)校数は、平均4.81校というのが昨今の状況。2月1日から本番が始まる東京・神奈川の子どもたちは、1月受験と呼ばれる千葉・埼玉の学校の入試、または地方にある寮完備の学校の東京入試を受けるケースも少なくなく、これからの数週間はハードスケジュールをこなすことになる。

 東京・神奈川の受験生にとって、1月受験は、2月の本命校受験を前に“まずトライしてみる”ものであり、「入試慣れ」の意味合いを持つ。これを業界用語で「お試し受験」とも呼んでいる。つまり、本命校は別にあるので、1月に受ける学校は、合格しても入学辞退するケースが多い(もちろん、1月校に行くことになっても本望というご家庭もある)。

 咲子さん(仮名)は、中学受験を経て入学した中高一貫校のS学園出身。

 彼女の母校愛は強く、結婚する前から、「女の子を産んで、母校に入れたい」と本気で願っていたそうだ。念願かなって、女の子・紗良ちゃん(現中学1年生・仮名)が誕生。咲子さんは自分の夢をかなえるため、紗良ちゃんが赤ちゃんの頃から、頻繁にS学園の行事に連れて行っていたという。

 当然、紗良ちゃんは母の恩師たちとも顔なじみに。それゆえ、紗良ちゃんにとっては、受験前から「S学園=自分の学校」という感覚が強く、当然のようにS学園を目指し、勉強に励んでいたと聞く。
 
 紗良ちゃんは最終模試で、S学園の合格確率80%を出していたため、咲子さんも受験に関しては楽観視していたという。

 ところが、どういう運命のいたずらか、3回チャレンジしたものの、S学園の扉は開かなかった。

 ご承知のように、近年、中学受験は大変な盛況ぶりで、人気校の倍率は高くなる一方である。S学園も人気校であるため、激戦になるのは間違いない。受験に「絶対」はないのである。

「私も紗良も受験を舐めていたのかもしれません。塾の先生の『受験は水物』という言葉が身に沁みますが、正直、“まさかの不合格”にうろたえました」

 紗良ちゃんは塾の勧めで、1月校を受験しており、その学校には合格。2月はS学園以外にも1校受験し、こちらも合格していた。つまり、合格した2校の中から、どちらを選択するのかを早急に迫られる事態になったのである。

「どちらに通うかを決めなければならないんですが、呆然としていた私は何も考えられなくなっていました。紗良はS学園に行くものと思い込んでいたので、ほかの学校のことはロクに調べもしなかったんです。特に1月校については何の情報も持っておらず、受験日に初めて学校を訪れたという有様で……早く決めなければならないのに、どうしていいのかわからなくなっていました」

 入学金を振り込まないと、どちらも合格が取り消しになってしまうという日の前夜、塾の先生から「紗良ちゃんと一緒に塾へ来てください」との電話が入った。

 塾の先生は受付で「お母さんはここでお待ちください」と言い残し、紗良ちゃんだけを連れて、教室に入っていったという。30分ほどたった頃、教室から紗良ちゃんがスッキリした顔で出て来て、咲子さんにこう告げたそうだ。

「ママ、紗良は(1月校の)K学園に行く。S学園に行けなくて、ごめんね」

 咲子さんは、その時のあることに気付いたという。

「その『ごめんね』でハッとしたんです。S学園は私の希望で、紗良の希望ではなかったんじゃないかって。私が喜ぶから、紗良は『S学園に入りたい』と思おうとしてくれたんじゃないのかって……。あの時、紗良は生まれて初めて、私に対して自分の口から『こうしたい』と言ってくれました」

 K学園の生活にも慣れた頃、咲子さんは紗良ちゃんに、「どうして入試の日にしか行ったことのない……知らないも同然のK学園に決めたの?」と聞いてみたそうだ。

 紗良ちゃんは、「塾の先生が、『先生は、K学園は紗良ちゃんに合っていると思うよ。男女共学で自由な校風だし、楽しいよ』って言ってくれて」と切り出し、当時の自分の思いを次のように明かしてくれたという。

「先生がね、『今まではママの言う通りにしていたかもしれないけれど、もう中学生なんだから、自分の行く学校くらい、自分で決めよう。自分の運命は自分で選択するんだよ』って。それで、K学園の入試の時、雰囲気がすごく良かったことを思い出して、ちょっと遠いけど、K学園がいいなって思った」

 咲子さんは、その言葉を聞き、「ああ、やっぱり紗良は、ちゃんと自分で行きたい学校を選べたんだ」と感慨深い気持ちになったそうだ。

「もちろん、紗良はS学園のことも気に入っていたとは思うのですが、今となっては逆に、不合格でよかったのかなと思います。あのままS学園に行っていたら、紗良はずっと『私の娘』として振る舞わなくてはならなかったかもしれません。でもK学園へは、“まっさらな紗良”で入学できたので、逆に伸び伸びとできているようにも思うんです。実際、紗良は今、すごく楽しそうです」

 中学受験は、良くも悪くも、子どもが親に“洗脳”されがちな世界なので、咲子さんのようなケースも珍しいことではない。

 親としての注意事項は、第1志望校はあるにせよ、併願校もしっかりと見極めた上で、受験のラインナップを組むこと。そして、入学校への最終判断は、子どもに任せるということだ。筆者は、さまざまなご家庭の「中学受験物語」を聞いているが、そのほうがのちの学校生活はうまくいくように感じる。

 12歳の子どもは、きちんと五感を使って、自分に合っている学校はどこかを判断する力を備えている――筆者は常々そう思っている。

メルカリでまつ毛美容液「エマーキット」の偽物を買いかけた? 評価「0」ユーザーに要注意すべきワケ

 

――2年で1,300万円以上溶かし、現在借金は●00万円の“買い物狂い”のライターが、苦しくも楽しい「散財」の日々を綴ります。

 たたた大変だあ~~~~~! 偽物をつかまされかけた~~~~~~~~~~!!!! 事の発端は、まつ毛パーマをかけたこと。そこで、施術してくれたお姉さんに「まつ毛が短くなっているので、美容液をつけるといいですよ」と言われたんですよ。

 まつ毛といえば……思い返せば、2年ほど前。妹に「これ、めちゃくちゃ伸びるよ!」と勧められて、「エマーキット」というまつ毛用美容液を使ったことがあります。

▼詳しい話は、こっちを見てちょうだいね。

 ざっくりと説明すると、その美容液はとんでもなくまつ毛が伸びて、ラクダのようにばっさばさになったのです。なので、今回もエマーキットを買おうとすぐに思い立ちました。

 過去の記事で、「定期購入で使いきれなかった人たちが、メルカリやラクマにいっぱい出品してるから、それを購入するのがお得!!」と書いた通り、私は今回もフリマアプリを見に行きました。すると、エマーキットが大量に出品されています。メルカリではちょうど5%オフキャンペーンを実施中だったため、出品されていた中でも安い4,300円の商品を、4,085円で購入することに。

 しかし、光の速さで購入手続きを終え、出品者さんに「よろしくお願いします」とメッセージを打っていた時、私はあることに気がつきました。その出品者さんの評価が「0」だったのです……。

 そう、フリマアプリには“暗黙の了解”があります。どんなに安売りしていても、評価が「0」の場合、偽物を出品したり、写真とは違う商品を送ってくるなど、悪質なユーザーである可能性があるんです。特に、自己紹介欄が未記入で、本人確認も行っていないユーザーは要注意。

 今回、評価欄を確認する前に勢いで購入してしまった私。どどどどどうしよう、もしかして、偽物を買っちゃった!?!?!?!?!? 怖くなって、「エマーキット 偽物」でネット検索してみると、製造元の「水橋保寿堂製薬」が公式サイト上で、注意喚起しているのを発見。

 どうやら、偽物と正規品はぱっと見では見分けがつかないものの、正規品には箱にシリアルナンバーやQRコードが印字された「真贋承認シール」が貼られている様子。

 そこで私は、疑惑の商品について出品者さんに「QRコードはありますか?」と質問をしてみました。すると、「簡易梱包なので、商品だけを送ります。なので、QRコードはありません」との返信が。ガガガガーン! これたぶん偽物だよね(涙)?

 でも、ストレートに「偽物ですよね?」と聞くのも失礼ですし、「箱アリだとおいくらですか?」と聞いてみることに。出品者いわく、「箱アリでしたら、プラス1,000円になります」とのこと。あ、あ、足元見てるゥ~~~~~!

 そういえば、たいていの人がひるむのでしょう。でも、私はこれも勉強代だと思い、偽物が届いたら、コピー品の調査をしているという水橋保寿堂製薬とメルカリ事務局に通報すべく、「わかりました。それでお願いします」と返事をしました。

 その後しばらくして、出品者から購入キャンセルの申請が届くというまさかの展開に。予想通り、偽物を売ろうとしていたんでしょう。

 エマ―キットの 模造品はたくさん出回っているようなので、購入を検討されている方がいらっしゃいましたら、十分にお気をつけください!

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『ハケンアニメ!』に込められたエンタメがもっと好きになる丁寧な想い

 家で料理をしながら掃除をしながら、いつも私は何かしら口ずさんでいる。アニメ『あたしンち』の母に張り合えるくらい。得意とは言えないが、歌うことは好きだ。中でもよく口ずさむ歌はある程度決まっていて、幼少期に観ていたアニメプリキュアのエンディング曲『キラキラしちゃってMy True Love!』という歌は私のおはこ。

“カーテンを開いて 夢の続き探さなくちゃ

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ZOZOで2万8,600円の新品スカートが、メルカリで1万円引き! それでも買い物狂いが「即購入」しなかったワケ

――2年で1,300万円以上溶かし、現在借金は●00万円の“買い物狂い”のライターが、苦しくも楽しい「散財」の日々を綴ります。

 最近、私はZOZOで商品を探し、「これがいい!」と思ったら、とりあえずメルカリで調べてみる、ということを繰り返しています。なんでかわからないけど、売れ筋の商品はメルカリにあるのよねえ……。アパレル店員さんが横流ししているのかしら?

 高確率で見つけるのは、ベイクルーズストアの商品。なぜかネットで売り切れになったものが、メルカリにごろごろ存在するんです。定価に手数料と送料が加わるので、かなり割高になりますが、売り切れている以上、そこでしか買えないため、しぶしぶ購入するわけです。ウーン、でもさあ、売るほうもなんのメリットがあるのかしらね。手数料・送料上乗せでも、定価で売っていたら、うまみはなさそうに見えるんだけど……。

 そんな私ですが、今までベイクルーズストアでよく服を購入していたものの、デブ化に伴い、ここの服が全然入らなくなってきました……。困った私は、ZOZOTOWNを開き、「LLサイズ以上」でアイテムを検索することに。このサイズ検索って本当に便利! ありとあらゆるブランドから、条件に合ったサイズの服を探し当ててくれるんだもん。

 今回、私が目を付けたのは、「O'Neil of Dublin(オニールオブダブリン)」というブランドの「ウーステッドウール100% キルトスカート マキシ 90cm」2万8,600円というアイテム。この間、「TOMORROWLAND(トゥモローランド)」で洋服を見たときに、チェックのめっちゃ可愛いスカートを見つけて、おそろいのカーディガンとともに試着したけれど、太ももで止まってしまったのよ。だから、似たような可愛いチェックのスカートが欲しかったの! LLサイズなら私でも入るのでは……?

 とりあえず、ZOZOでこのスカートに狙いを定めると、今度はメルカリを開いて「O'Neil of Dublin ウーステッドウール100% キルトスカート」で検索。すると、出てきます、出てきます……! 私の欲しい「14」サイズはないかなあ……と思いましたが、ありました。しかも、新品未使用で1万8,000円と、定価より1万円も安い!!!!

 とはいえ、第1希望で欲しい色とは違います。うーん、せっかく買うなら、好きなカラーのものが欲しい……。というか、そもそも入るかどうか謎だから、返品可能であってほしいけど、メルカリは、サイズが合わなかったなど購入者都合の返品は基本不可能なのがネック。熟慮に熟慮を重ねた結果、こうすることにしました。

「とりあえず、返品可能なZOZOで購入してみてサイズ感を確かめ、ちょうどよかったらメルカリで色違いも買う!」

 そして、待つこと数日、ZOZOからスカートが送られてきて、着たところ、サイズはぴったりでした! ぴったりすぎて、ちょっと腹の上にずり上がってくるところが難点ですが、かわいい!! よーし、1万8,000円のほうも買っちゃおう!!!!

 そして意気揚々とメルカリに戻ると、ななななななんと、件のスカートは売り切れていました……。さすがメルカリ、欲しいものはちゃんとウォッチしないとだめですね……トホホ。

■今回の出費
オニールオブダブリン「ウーステッドウール100% キルトスカート マキシ 90cm」2万8,600円

 

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映画『ファミリア』が「当事者」キャスティングで伝える、在日ブラジル人の事情と「脱獄」の意志

 1月6日より『ファミリア』が公開されている。

 実際に起きた事件などをヒントにした、いながききよたかによるオリジナル脚本を映画化したのは、『八日目の蟬』の成島出監督。共演は役所広司と吉沢亮という布陣で送り出される、骨太であるとともに共感しやすいサスペンスドラマ映画に仕上がっていた。

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玄関に並べられた「夫婦の遺骨」――闇金社員が走って逃げ出した“恐怖の現場”

 こんにちは、元闇金事務員、自称「元闇金おばさん」のるり子です。

 貸付残高のあるうちは、債務者や連帯保証人が名義を有する不動産謄本を、月に一度、必ず定期閲覧することになっていました。いわゆる与信管理というやつで、名義の変更や借り入れの追加、差押や仮登記など、大きな変更があった場合には、すぐに保全を取る決まりになっています。

 謄本を郵送請求して法務局から送ってもらい、変更の有無を確認するのは私の仕事。もし変更があった場合には、すぐ担当者に伝えなければならず、その知らせが回収業務開始の合図になっていました。そのほとんどが、行政からの差押や他業者からの根抵当権設定仮登記で、業界最大手だった日栄や商工ファンドによるものが最も多かったと記憶しています。他業者からの登記は、不渡発生と同様の扱いとなるため、変更を見つけるたびにドキリとさせられました。

「佐藤さん、小林製作所(債務者、仮名)さんの不動産謄本に変更がありました。個人名の賃借権が仮登記されています」
「本当? それは、まずいな」

 小林製作所に対する貸付残高は、150万円。個人名での賃借権設定仮登記は、闇金業者か暴力団関係者よるものといったところで、営業社員からすれば最悪の事態といえるでしょう。取り寄せた不動産謄本を渡すと、すぐに内容を確認した佐藤さんは、早速に受話器を上げて電話をかけ始めます。

「会社と自宅の電話が、両方とも止まっているから、現地に行かないとダメだ」

 社長が留守のため、一連のことを伊東部長に報告した佐藤さんは、いつも通り藤原さんを連れて債務者の事務所に向かいました。重要確認事項と各担当者をホワイトボードに書き終えた部長は、極真空手の有段者である小田さんと一緒に、代表者の自宅にいくそうです。連帯保証人も、債務者宅の近所に住む社長の幼なじみらしく、そちらの状況も合わせて確認することになりました。

「ねえ、小田君。現場に面倒なのがいたら、君の空手で、ぶっ飛ばしちゃってくれるかな」
「いやいや、暴力はダメです。空手に私闘なし。そう師範に教えられているものですから」
「じゃあ、向こうから来たら、どうするよ?」
「それは、いきますよ。極真空手は、背中を見せない。これも師範の教えです」

 取り立て部隊が出かけてから1時間ほど経過すると、現場(債務者の会社)に到着した佐藤さんから状況報告が入ってきました。もぬけの殻となった事務所は、すでに荒らされた様子で、従業員の姿もないそうです。これから部長たちと合流するというので、帰社された社長に伝えて、続報を待ちました。

 しばらくすると、珍しく慌てた様子の伊東部長が、息を荒らげながら電話をかけてきました。少し前に戻って来た社長に電話をつなぐと、スピーカーマイクで通話するため、その会話は必然的に社内で共有されます。

「小林の社長、女房と一緒に死んでいました」
「どうしてわかった? 死体があるのか?」
「2人分の骨壷が、玄関に安置されています。位牌の名前も確認したので、間違いないです」

 鍵屋を呼んで家に入ったところ、玄関ホールにお骨が並んで安置されていたそうで、その場から走って逃げ出したほどに驚かれたとのことでした。ケンカ自慢であろう小田さんも同様、こうした状況には弱いらしく、ここで寝るのは嫌だと駄々をこねているようです。

 家の中に入った2人が突如逃げ出したことで、それに釣られた鍵屋も全速力で走り出したと聞き、その情景が可笑しくてニヤついていると愛子さんが言いました。

「遺骨くらいで怖がって、部長たちも情けないわね」
「私の実家は葬儀屋なので、見慣れているから、なんとも思わないですけど」
「るりちゃんは、現場向きかもね。何事にも動じなさそうだから、きっと向いているわよ」
「それは絶対に無理ですよ。私、他人の家に泊まることできないので、占有できないし」

 結局、その社長の自宅は占有することになり、担当の佐藤さんと藤原さんが現場に入ることになりました。伊東部長と小田さんは、そのまま連帯保証人の自宅に向かい、取り立てを継続されます。

「いま、保証人さんに会えました。聞いたところ、先週、2人が自宅の風呂場で首を吊っていたのを、息子が見つけたみたいです。本人が保証しているのは、ウチともう一社だけみたいで、昨日、そこは完済したと話しています」
「そいつ、いくら持っているの?」
「すぐには用意できないみたいですけど、カードで借りられるし、車を売って作ることもできると話しています。車は、3年落ちのクラウンですね」
「ATMに行かせて、足りなかったらカード割だな。連絡しておくから、春田のところで率のいいものを買って、換金してもらえ」

 主に、中古時計やブランド物の買取販売を行う春田さんは、質屋も営む社長の仲間で「カード割」もやっていました。実際には買っていない商品を買ったことにしてクレジットカードを切らせて、手数料を引いた代金を手渡す商売です。

 売ったことにした商品は、別の日に買い取ったことにして、商品棚に戻します。例えば、保証人が100万円の時計をカードで買ったことにして、春田さんは手数料20万円を引いた80万円をうちの社長に手渡しします。その後、春田さんはその時計を買い取ったことにして、再度100万円で売り出すわけです。

 その80万円が、債権回収に充てられるわけで、体よくカード会社に現金化させる仕組みになっていました。このように二重の利益が生まれる仕組みを知った時には、とても理にかなった儲け方だと、金融屋さんの思いつく悪知恵に感心したものです。

 カード割が成功して、債権回収に成功したので連帯保証人とは和解しましたが、他社に持っていかれるならと社長自宅の占有を継続したところ、その日の夜に大きな事件が起こります。

 帰宅した債務者の息子さんと藤原さんが揉み合いになり警察を呼ばれ、社員2人ともが連行されてしまったのです。どうやら前日にも、取り立てにきた他業者と息子さんが派手に揉めていたらしく、警察から強行的な取り立ての即時中止を勧告されました。この業者によって事務所が荒らされていることも把握されており、重点警戒しているから事務所にも近づくなと釘を刺されます。

「強行的な取り立てを続けるのであれば代表も含めて逮捕する」

 いつになく強く警告されたため、警察の本気を感じた社長は占有を諦めて、すぐに手を引きました。ギリギリのところで逮捕を免れ、翌日も無事に出社した佐藤さんが、事務所の掃除をしながら昨夜の模様を語ります。

「揉み合いになった息子、元相撲取りなんだって。ものすごく力が強くて、ちょっと押されただけで、壁まで吹っ飛ばされてさ。前の日には、業者の乗ってきたセルシオのフロントガラスを素手で叩き割っているみたいなんだけど、なかなか素手で割れるもんじゃないし、そんなの検事に送っても信用されないって不問にしたらしいんだ。両親に心中されてね、俺らのことを逆恨みしているみたいだから気をつけろって、刑事に言われたよ。本気でやられたら、きっと死ぬぞって……」
「何時に出られたんですか?」
「夜中の1時くらいまでかかったかな。危うくパクられるところだったのに、一言の労いもなくてさ。この仕事に逮捕はつきものだから仕方ないって言うんだよ。ヤクザじゃあるまいし、ほんと困っちゃうよね」

 いつもならしつこく取り立てを続ける社長も、今回ばかりは太刀打ちできず、元金以外の利益を出すことはできませんでした。弱者に強く、強者に弱い。ビジネスのことを考えれば当然のことかもしれませんが、自身の逮捕を恐れて逆らうことなく警察の指示に従ったことは意外で、この件以降、社内における社長の威厳が小さくなったように思います。

 自分の利益を第一に考え、現場の社員に体を張らせておきながら我が身の保身を図った事実が、社長に対する忠誠心を大きく奪ってしまったのです。

※本記事は、事実を元に再構成しています
(著=るり子、監修=伊東ゆう)

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