今や日常生活において、かかせないツールとなっているコミュニケーションアプリ「LINE」。かつては子どもの送迎時に、ママたちが立ち話をしているような光景が見かけられたが、時間に追われ忙しく過ごす共働き世帯が増えた今、ママたちのコミュニケーションの場は、LINEのグループチャットになっているという。そんな、ママたちの「グループチャット」から浮き彫りになった、彼女たちの悩みや、苦悩、気になる話題を覗いてみる。
日々子育てに奔走するママ同士は、「持ちつ持たれつの関係」とよく言われ、頻繁に頼みごとが交わされているという。その内容は、例えば、「うちの子が〇〇ちゃんの持っているおもちゃを気に入ってしまったので貸してほしい」「万札しか持ち合わせていないので、ランチの支払いを一時的に立て替えてほしい」といった具合に、何かを貸してもらうケースが多いイメージがある。しかし、今はアプリでおもちゃの中古品が廉価で手に入り、たとえ現金がなくてもキャッシュレス決済ができるようになった。そのため、「〇〇を貸してほしい」より、「〇〇をやってほしい」という頼みごとが増えているという。モノや金銭の貸し借りに比べ、トラブルに発展しにくそうにも見えるが、そうとは言い切れない現状があるようだ。
「うちの子の写真も買っといて」ママ友の頼みごとに不満爆発
恵里佳さん(仮名・33歳)は、関東近県のベッドタウンにある幼稚園に4歳になる女児を通わせている。数年前から、駅前や工場跡地などにマンションが建設されたため、ファミリー層の新規住民が増えたという。
「職場へのアクセスが良かったので引っ越しを決めました。自分たちと同じように、結婚や出産などで移住してきた人も多いですが、駅から少し離れると古い住宅地になるので、もともとの地元の人も結構住んでいるんです。幼稚園には『親子2代で通っている』という人もいます」
こうした「自分もこの幼稚園の卒園生」という保護者が、行事などで率先して役員を手伝う“リーダー的な立場”にいるという。
「そのうちの一人である40代のAさんも、園で会うと、小学校の学区情報や夏祭りの情報などを共有してくれて、ほかのママより年上ということもあり、みんなのリーダー的存在になっています。でも、ちょっと困ったことがあって……Aさんって、スマホやパソコンを使うのが苦手みたいなんです。親しいママ友とのグループチャットで、『AさんはLINEで連絡が取りづらい』『スマホやパソコンを使う頼まれごとをされて困っている』と話題になったんです」
その頼まれごとの一つが、園行事の写真購入を代行してほしいというものだ。
「うちの園では、プライバシーの問題から、カメラマンに撮影してもらった行事の写真を、園内に掲示しないことになっています。代わりに、専用の販売サイトからほしい写真を選び、有料で購入するんです。自宅にいながら、空いた時間にスマホやパソコンで写真を確認できるため、とても便利なのですが、Aさんから『私の娘の分も買って』と頼まれるようになって、正直面倒に感じています……」
園専用の写真販売サイトは、専用のログインパスワードなどが付与され、関係者しか閲覧できない仕様になっている。
「ママ友とのランチで、『子どもの有料販売の写真を購入しているか』という話題になり、『私は毎回購入している』と答えたのがまずかったみたいで。Aさんから『買いたいけど、よくわからなくて。送料はこちらが払うから、私の娘の分も買ってくれないかしら』と言われて、つい承諾してしまったんです」
後悔したような表情を浮かべる恵里佳さん。Aさんは、「うちの子が写っているものであれば、あなたの判断で選んでもらいたい」と頼んできたという。
「運動会などの大きなイベントの写真は、全部で100枚以上にもなります。子どもの顔を登録しておくことで、近い顔の画像が表示される機能もあるのですが、精度が低くて、同じ髪形の別の子の写真が表示されるんですよ。また、学年ごとに分けて表示されることもない。子どもの良い表情の写真が欲しければ、結局全ての写真に目を通すしかないんです」
こうした実情を、親しいママ友とのグループチャットで愚痴ったという恵里佳さん。「確かにAさんってそういうところあるよね」などと盛り上がったそうだ。
「全ての画像を見るだけで一苦労なのに、送られてきた写真をAさんに渡すと、気に入らないのか『いらない』と言いたげな不機嫌な顔をされたりもします。仲の良いママ友から『毎回は面倒だよね、パシリみたいじゃん』『送料を浮かしたいママをグループチャットで探したらいいのに』と、グループチャットで励まされ、ちょっとすっきりしましたが……」
このように、幼稚園や保育園では、保護者や保育士の負担を減らそうとIT化が進んでいるが、恵里佳さんのように、また別の負担を強いられるケースもあるようだ。
都内にある認証保育園に4歳になる息子を通わせている保奈美さん(仮名)は、園からの連絡方法が全てプリントされた紙で渡されるのを、不便に感じている。
「親しいママ友が、課外学習の持ち物や保護者会の時間などを、毎回グループチャットで聞いてくるんです。わからないことを聞く手段として、グループチャットは便利なのですが、連絡帳に入っている配布物にきちんと目を通していないような気がして……。最近は『なんでもかんでも気軽に「教えて」と頼みすぎなのでは?』と感じるようになりました。そもそも園が、プリントではなくメールで連絡事項を送ってくれればいいんですけどね」
保護者会で取り上げられた内容を、親切なママがグループチャットで共有することもあるという。
「仕事が忙しいのかもしれませんが、中にはたったの一度も顔を出さないママもいます。『誰かが教えてくれるから、別に行かなくてもいい』って空気を感じ、モヤモヤするんですよ。参加しているママたちは時間を割いているのに……保護者会後にだけグループチャットにやってきて、『教えてください』って、どうなんでしょう」
一方、小学生の子どもを持つママたちにとって、「欠席の連絡」は頭を悩ませるものの一つだという。多くの公立小学校では、欠席の連絡のために、保護者が学校に電話するのが禁止事項となっている。なんでも、インフルエンザなどが流行した際、職員室の電話がつながらない状況になってしまうのを避けるためだという。その代わりに、家が近所の子や同じクラスの友達に、欠席の旨を書いた連絡帳を預け、担任の先生に渡してもらわなければならないそうだ。
なんともアナログな方法での欠席連絡だが、入学前の説明会が行われる2月のシーズン、ネット上では「誰も知り合いがいない、欠席連絡はどうしよう」というママたちの悲痛な声を見かける。
昨年から、都内にある小学校に息子を通わせている裕美さん(仮名)は、子どもの具合が悪くなると、自分も気分が落ち込むという。
「学区から遠い保育園に子どもを預けていたため、小学校に知り合いが誰もいなかったんです。入学してみると、すでに園時代のママ友たちがグループをつくっていて、欠席時の連絡帳の受け渡しもグループチャットでささっと連絡を取り合い、仲間同士で快くやっているようでした。私は、交流がなかった近所のママさんに、思いきってLINEの連絡先を交換してもらい、欠席の時には『連絡帳をお願いします』とメッセージを送りました」
連絡帳をほかの児童に預ける場合、保護者にLINEであらかじめ頼むことが主流となっているようだ。
「うちの子は体調を崩しやすいタイプで、よく学校をお休みするんですが、LINEで『お願いします』と送ると、いつも『大丈夫ですよ』と一言しか返信がなくて……。このママさんと私は、PTAのメンバーで、彼女はそのグループチャットでは、とても張り切ってメッセージを送っているんです。そのギャップを見ると、自分が参加していないグループチャットで、『あの人は頼んできてばかりで図々しい』と言われていないか、勝手に心配になってしまいます」
今はLINEのおかげで、頼みごとがしやすくなった半面、お礼などの礼節が欠けてしまっているのかもしれない。一方で、「こんな気軽に頼んでしまって、相手にどう思われているか」と過剰に不安に駆られるケースもある。そんな便利さゆえにこじれてしまう、ママ友コミュニケーションの側面を見たような気がした。
