メルカリよりZOZOTOWNのほうが安い! シルクの新品スカートをお得に買えたワケ

――2年で1,300万円以上溶かし、現在借金は●00万円の“買い物狂い”のライターが、苦しくも楽しい「散財」の日々を綴ります。

 「一目惚れ」、それはそれは甘美な響き……。いつものようにZOZOTOWNを見ていた私は、「はにゃ!」と声を上げました。なんとも可愛いスカートを見つけてしまったのです! それは、「CABaN(キャバン)」の「シルク ボタニカルプリントロングスカート」。定価は、堂々の4万9,500円。約5万円とかたっけ~~~~~!!!!

 それもそのはず、このスカート、商品名にもある通り、素材がシルクなんざんす。うんうん、生地にこだわった上質なスカートってことね! まあ、それはいいんだけど、さすがに定価で買うのは……ねえ?

 こういうときに重宝するのがフリマアプリ! 早速メルカリで商品名を検索すると、やった、あった~~~~!! でも、やっぱり高い。4万2,999円で売り切れているものもありましたし、安くても、3万5,000円前後。でも、それだけ人気ってことよねえ。うーん、やっぱり欲しい、絶対欲しい。なにがなんでも買ってやる!!!!

 そう思ったものの、私がメルカリで購入を検討したスカートは、ZOZOで見たものとは若干、形が違うのが気になりました。どうやら、メルカリで取引されているスカートは、今期のものではないようなのです。そりゃそうか……。

 さっぱり最新のデザインがいいと思った私は再びZOZOに戻り、白と黒、どちらにするか悩み始めました。一目惚れしたのは、白なんだけど、汚れが目立ちそうよね。

 その昔、私は似たようなボタニカルスカートを「allureville(アルアバイル)」というブランドで買ったことがあるんだけど、数回着ただけで汚れが気になっちゃって(これから汚したらどうしようと思って)、2万7,000円もしたのに、7,000円で売っちゃったの。そういう苦い経験があるから、白いスカートを買うのは憚られる……。

 しかも、単体で見るととっても素敵だけど、トップスと合わせるのが難しそう。白いスカートに合わせたら、雰囲気が甘くなりすぎる気がするし……うん、決めた。黒、黒を買うわ! ZOZOは比較的すぐに値下げしてくれるから、もうちょっと待とうっと。

 それから2週間、すっかりスカートの存在を忘れていた頃に、ZOZOのLINE公式アカウントから「10%オフ」とのお知らせが到着。10%オフということは、4万4,550円で買える!! さらに、2,000円のオフのクーポンが出ていたので、4万2,550円!!!! ひゃっほ~~~い!!!!!! メルカリに出品されている中古のスカートよりも安くなるじゃん!!!!!!!!!!

 急いでZOZOを開き、商品ページを覗くと、黒のスカートはラスト1点。「このスカートをかっさらうのは私よ!」とばかりに速攻でスカートにダンクシュート! なんだかんだで最近、怒濤の買い物をしている私なのでした……。

■今回の出費
キャバン「 シルク ボタニカルプリントロングスカート」 4万2,550円

電子書籍『“買い物狂い”の散財日記~千葉N子のリアルな家計簿大公開~』発売中!

 2020年3月から連載中の人気コラム『“買い物狂い”の散財日記』が、ここでしか読めない書き下ろしエピソードを大量に収録して初の書籍化! 

 “買い物狂い”の千葉N子氏が、日々の散財ぶりはもちろん、フリマアプリの活用法や通販サイト利用時の注意点など、知っておけば必ず得をする買い物術から失敗話までを赤裸々に綴ります。さらに、“買い物狂い”のひと月の散財リストや1年の散財額も大公開! 物欲が刺激されること間違いなしの一冊です。

発売元:サイゾー
発売日:2022年9月1日
価格:950円(税込み)

<ご購入はこちらから!>
Amazon Kindleストア https://www.amazon.co.jp/dp/B0BCVH3VSZ

母亡き後、父との同居を事後報告した兄……家と土地の相続をめぐる妹のモヤモヤ

“「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”
――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)

 そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。

父を気にかけてくれていた兄

 浅倉貴代さん(仮名・39)はここ数年、兄とこれまでで一番良い関係を築いている。

 「母の死でわかった“一族の支配者”――『ママがいなくなったんだから……』優しい伯母の正体」で登場してくれた浅倉さん家族は、“女が強い一族”だった。母、隣に住む母の姉と祖母、従姉妹たちとは密に付き合っていたが、父や兄家族とはあまり接点がなかった。

 そんな関係が一変したのは、母の死だった。まだ50代だった母が急死すると、伯母との関係がぎくしゃくし出した。みんなで使っていた別荘の維持管理費など、お金のことをこまごまと言われるようになり、それまで防波堤となっていた母がいなくなったことで、伯母や祖母からの軋轢が直接、浅倉さんにのしかかってくるように思えたのだ。

 そうするうちに別荘にも足が遠のき、あれほど仲のよかった従姉妹たちとも会うことがなくなっていた。

 その代わりのように親密になったのが、兄家族だった。

「兄より年上のお嫁さんが苦手で、ずっと敬遠していたのですが、それで気が付かなかった兄のマメさがわかったんです。一人になった父のことを気にかけて、ちょくちょく実家に顔を出しては掃除をしたり、お金に無頓着な父のために金銭管理をしたりしてくれていたようで、すっかり見直しました」

 浅倉さんは、実家の隣県に住んでいることもあって、父の面倒を見てくれる兄を信頼し、感謝していたという。

同居の事後報告に納得できない……

 ところが、先日兄から突然「父さんと一緒に住むことになった」と聞かされたのだ。

「兄家族のマンションを売り、実家をリフォームして父と同居するというんです。もうマンションも売りに出していて、同居も決まったことだと言うのでモヤっとしてしまいました。私には一言も相談してくれなかったんだ、と」

 決まってから伝えたのは、事前に相談したら、浅倉さんに反対されるかもしれないと思ったからじゃないか、と疑念を抱いた。

「兄のお金でリフォームするというので、父の介護も兄夫婦がする覚悟なんでしょうから、私はラクではあるんですが……」

 そういいながらも、納得できない表情だ。

 家の名義は父だが、兄がリフォームして同居するとなると、家も土地も兄が相続することになるだろう。そのつもりで、浅倉さんに打ち明けるのはすべて決定した後になったのではないかと疑ってしまう。

 「家や土地、ちょっとアテにしてたんだけど」と軽く笑う浅倉さん。

「さすがに、父が死んだ後に『土地や家の評価額の半分を私にちょうだい』なんて言ったら兄が困るでしょう。そんなお金、工面できるわけがないですから。父にも家や土地以外に預貯金はないと思うし」

 モヤモヤを抱きながらも、兄家族とはこれまで通り付き合っていくつもりだ。疎遠になった伯母や祖母のようにはなりたくないと思う。母が生きていた頃は、伯母一家と隣同士で互いの生活も丸見えだったのに、今や他人以下なのだ。

「実は、伯母が1年ほど前に亡くなっていたというんです。そんな大切なことさえ、私たちには知らされていませんでした。一人になった祖母はますます頑なになっていて、兄家族が実家に戻ってくるのもイヤがっているらしいです」

 兄家族が父と同居すると、隣の祖母との関係はどうなるのか。トラブルにならないか心配する半面、面倒なことに巻き込まれないで済んだと、ホッとする気持ちもあると明かした。家や土地と天秤にかけると、どっちが得なのか。その結果はまだはわからない。

中学受験塾に通うお金がない! それでも第一志望に合格した子が小4からやっていたこととは?

 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

 今や中学受験は「珍しくないこと」といえるほどの大盛況ぶり で、今年度の中学受験者数は過去最高を記録。近年では、中学受験開始も低年齢化が進んでおり、一部の地域では小学1年生から中学受験専門塾に通っている子も多数存在する。

 中学受験塾に限らず、世の中は早期教育全盛の時代。英会話を筆頭に体操、水泳、ピアノ、プログラミング、公文などの習い事に複数通っている子も珍しくない。

 子どもの塾や習い事は、親の所得格差が如実に現れるものだが 、このような早期教育は皆無でも、難関大学の切符を手にしている子もまた多い。

 今回は、裕福とはいえない家庭環境にありながらも、中学受験をして「夢を叶えた子」の話をしてみたい。

 春香さん(仮名)は現在20歳。幼稚園の頃に父親を亡くし、母親である真理さん(仮名)との2人暮らしだ。

 父親は大病を患い、その治療費がかなりの額に及んだそうで、春香さんいわく「父が亡くなった時には、我が家の財布はスッカラカン」。真理さんは長く専業主婦であり、正社員の働き口がなく、早朝と日中のパート の掛け持ちで、必死に春香さんを育ててくれたという。

「私が住んでいるのは教育熱心なご家庭が多いエリアなので、放課後に遊んでいても、友達は『習い事があるから』って帰っちゃうんですよ。うちは経済的に塾や習い事なんてもってのほかだったので、1人残されてしまって……。 小4からは学童もなかったため、みんなが塾に行く一方、私は閉館まで市の図書館で本を読むってコースが多かったです」

 真理さんには「朝と夜の食事は家族で!」という方針があり、春香さんと必ず一緒に食卓を囲んでいたという。

「その時に、親子で『今日あった楽しいこと』を発表し合っていました。それこそ、近所の家の犬をなでたとか、そんな他愛もない話です。それから、最近読んで面白かった本を互いに教え合ったり……。2人とも図書館マニアなので、読書が趣味なんですよ。お金、要らないですし(笑)」

 春香さんは、幼い頃に母と囲んだ食卓の話をするうち、 思い出したようにこんな話を付け加えた。

「母のすごいところは、子どもの話を最初から最後まで、ちゃんと聞いてくれたところですね。母が『うんうん、それで?』と言ってくれるので、調子に乗ってしゃべっていました」

 春香さんが小5になった頃、ある日、真理さんはホワイトボードを買ってきて、キッチン脇に据えたそうだ。

「何を書いてもいいボードなので、お絵描きしたり、ほかにも、買って来てほしいものを書いておくとか、伝言板のような役割も果たしていました。そこに、ある時、私が何気なく“疑問”を書いたのが、私の中学受験の始まりでした」

 春香さんは「なぜ、空は青いのか?」と書いたのだそうだ。

「今ではスマホで検索すれば一発 解決でしょうが、当時、我が家にはなかったので(笑)、3日後くらいですかね。母が『ママはこう思うんだけど、合ってるかしら?』と言ってきたんです。それで、私も一緒に調べて、いろいろな説を考えたんですが、正解かどうかがわからなかったので、学校の担任の先生に聞きに行きました」

 当時の担任は、春香さんいわく「とてもいい先生」で、 懇切丁寧に「空が青い理由」を教えてくれたそう。その時、春香さんは「勉強って楽しい!」と実感したそうだ。

「昨日まで疑問でしかなかったことが解るって、すごく面白いと思いました。それで、次々と思いつく疑問を自分なりに調べて、先生に正解かを聞きに行ったんです」

 そんな中、先生が「春香は公立中高一貫校に入りなさい」と背中を押してくれるようになったという。

「先生は、面談の時も母に熱心に中学受験を勧めてくれました。でも、なんたって我が家にはお金がないですから(笑)、みんなが通うような有名な中学受験塾 には行けないんです。そしたら、母がどっかから、格安で勉強をみてくれる塾を見つけてきて、そこに通うようになりました」

 そこは、おじいさん先生が1人で生徒たちを見ている“寺小屋”のような雰囲気だったそうだが、毎年、公立中高一貫校に合格者を出しているという実績を持つ塾。春香さんは水を得た魚のように中学受験の勉強に身を入れ出した。

「多分、中学受験をする友達が羨ましかったんだと思います。心のどこかで『みんな、いいなぁ、塾に行けて楽しそう』って思っていましたから。『自分も塾ってところに行けて、受験ってものができるんだ!ってすごくうれしかったのを覚えています」

 春香さんは1年半の勉強の末、見事、志望校の公立中高一貫校に合格。その後、塾にも予備校にも通わず、大学受験を突破し、現在、国立大学の看護学部の3年生。父親が入院生活を送っていた時、お世話になった看護師さんにずっと憧れていたのだそうだ。

「今でも思い出すんですが、あの頃の母はいつ見ても、夜中に勉強していたんですよね。働きながら勉強するなんて大変なのに、全然、 嫌そうじゃなかったのも印象深くって。『ママ、今まで勉強したことなかったから、すごく新鮮!』と言って、ニコニコしていました。いつも『春ちゃん、勉強って楽しいわね』と笑いかけてくれるので、私には『勉強は楽しいこと』って刷り込みがあったようです(笑)」

 実は、真理さんは春香さんの受験に負けじと勉強に励み、ある難関資格を取得。今では、その分野の正社員として働いているとのことだ。

 中学受験塾の入塾時期が低年齢化しているという話題が取り上げられるたび、早期教育の是非が議論になる昨今。 しかし、中学受験、ひいては子どもの教育において重要なのは、家庭でいかに「勉強は楽しい」という実体験を積ませられるかなのかもしれない―― 春香さんの話を聞いて、そんなことを思った。

『夕暮れに、手をつなぐ』、北川悦吏子作品あるあるを徹底解説――令和とは思えない“昔懐かしさ”の正体

テレビ・エンタメウォッチャー界のはみ出し者、佃野デボラが「下から目線」であらゆる「人」「もの」「こと」をホメゴロシます。

【今回のホメゴロシ!】「恋愛至上主義の終幕」に真っ向から立ち向かう、『夕暮れに、手をつなぐ』の味わい深さ

 2023年1月期ドラマが順次最終回を迎えている。話題となった作品を振り返ってみると、女性同士の友情を描いた「タイムリープもの」の『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)、主人公2人の「音楽を通じたバディ」の関係性に重きを置いた『リバーサルオーケストラ』(同)、恋愛ドラマと見せかけて「ダイバーシティの理想形」を描いていた『星降る夜に』(テレビ朝日系)等々、「ベタベタの恋愛至上主義ドラマはもう古い」という時代の空気感が顕著に現れたラインナップだった。

 そんな中、異彩を放っていたのが、“恋愛の神様”こと北川悦吏子大先生が脚本を務め、3月21日に最終回が放送された『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS系)だ。同作は、宮崎の片田舎で育ち、結婚目前に東京で婚約者にフラれ、なぜか急にデザイナーとしての才能を開花させる空豆(広瀬すず)と、コンポーザーとしてメジャーデビューを目指す音(King&Prince・永瀬廉)が、ご都合だらけの……もとい、運命的かつ衝撃的な出逢いを果たし、ひょんなことから一緒に下宿生活を送ることになる物語。

 さすがはラブストーリーの“老舗”、ドラマ業界の大丸別荘である。「時代の空気? 知るかよ」とばかりに、恋愛要素や「(大先生が思う)キュン」を前面に押し出したドラマをあえてこの時代にぶつけてくる剛気には恐れ入るばかりだ。昨年末の番宣でしきりに見かけたキャッチコピーも振るっていた。

「世界一美しいラブストーリー」

 《北川悦吏子さんが考えてくださいました!》と、Twitterの番組公式アカウントがうやうやしく明かす、この謳い文句。コピーライター養成講座の課題で提出したなら間違いなく落第点だろうという陳p……あ、いや、“昔懐かしい”味わいがある。そしてドラマ本編も、令和の作品とは信じ難い、“昔懐かしい”仕上がりとなっていた。

 北川作品を語るうえで欠かすことのできない、“昔懐かしい”ルッキズムと偏見と権威主義が、今作にも存分に注ぎ込まれている。空豆は高校時代、あまりの美少女ゆえクラスでいじめられたという。「美人だから妬まれていじめられる」というステレオタイプの発想が、今日び大変珍しい。

 北川作品でおなじみの「(大先生が思う)美男美女以外は“背景”扱い」という作劇も健在だ。空豆が、レコード会社のA&R・磯部(松本若菜)の友人・真子(馬場園梓)に「顔が地味」と言い放つシーンがあった。さすがに時流に合わせてプロデューサーが進言したのか、『半分、青い。』(2018年/NHK総合)の頃から比べると、今作では随所に「台詞がソフトに調整された形跡」が見受けられた。

 しかし、「大先生」と「作品」と「ツイート」は「三位一体」の関係にあるので、普段からの大先生のTwitterでの炎上名人ぶりを見ていると、今作の初稿台本ではもっとあからさまな表現や、きわどい台詞があったのではないかと想像してしまう。

 空豆のキャラクター造形に見え隠れする、「(大先生が思う)田舎者」への色眼鏡も相当なものだ。宮崎県の田舎町から東京に出てきた空豆は、はんてんのようなダサいコートをまとい、噴水の水で顔を洗う。TPOをわきまえず、所構わず野猿のように振る舞う。

 空豆の話す“方言”には、大先生が適当に考えた「なんとなく九州とかそっちのほうっぽい」“チャンポン語”を当てている。生まれ育った土地の言葉は、その人にとってアイデンティティの一つだと思うのだが、「他者への敬意? 多様性の尊重? 知るかよ」という、平素からの大先生の思考を、包み隠さず作劇に反映する大胆さにはいつも新鮮に驚かされる。「鼻クソをほじくって練って机の下になすりつけていそうなほどにガサツな女性」である空豆という役を完璧に演じ切った広瀬すずの役者魂には拍手を送りたい。

 「芸大」「パリコレ」「紅白」など、大先生の大好物である「権威」を象徴するキーワードの頻出ぶりも通常運転だ。なぜか急に天才として覚醒した空豆が、表参道のJIMMY CHOOのショーウィンドウを眺めながら「プラダもグッチもヴィトンも、みんなライバルよぉ」と大風呂敷を広げるシーンは、権威やブランドに憧れを抱きつつ、同時に内心では、自分自身も作品も「権威」であり「ブランド」であることを確信している大先生にしか書けないものだと感服した。

 ところで、長きにわたって北川作品を見続けていると、「お約束」がたくさんあることに気づく。これはもう、筆者のような“ファン”にとっては、歌舞伎の見得みたいなもので、「お約束」が登場するたびに、思わずテレビの前で「ヨッ! 北川屋!」「待ってました!」と「大向う」を張りたくなってしまう。そこで、本稿では代表的な北川作品の「お約束」をいくつか紹介したい。

(1)ドラマでの私語りと登場人物への「投影」

 今作のヒロインの名前「浅葱空豆」が、北川大先生の実娘がかつて写真家として活動していたときのカメラマンネーム「あさぎ空豆」に由来することは広く知られるところだが、ドラマの登場人物に自分(と娘)の「依代」をさせることは、もはや北川作品において常態化している。

 『半分、青い。』では、野面なヒロイン・鈴愛(永野芽郁)と、そんな娘をひたすら全肯定する母・晴(松雪泰子)の両者を自らの依代にした。次いで、『ウチの娘は、彼氏ができない!!』(21年/日本テレビ系)では、売れっ子恋愛小説家である母・碧(菅野美穂)に自らを投影し、オタクで陰キャの娘・空(浜辺美波)に実娘の姿を投影した。

 これはスタッフの忖度なのだろうか。今作では、空豆の母で世界的に有名なデザイナー、塔子(松雪泰子)の髪形を大先生そっくりに寄せている。公共の電波を使って松雪泰子と広瀬すずに自分と娘の依代をさせ、大先生の「家族の思い出ビデオ」を作るという強勇さは、アッパレと言うほかない。

(2)ほぼ実娘への取材だけで書く「ユース・カルチャー」

 《私はリサーチしないよ。極力。しても一回。なぜなら、想像の翼を折るから。》と、かねてより宣言していた大先生(現在このツイートは削除済み)。宣言通り、大先生の脚本作りのための取材といえば、家族とママ友と岩井俊二など、近しい人たちへの聞き込み、そしてTwitterでフォロワーに呼びかける「情報おねだり」のみであることは有名だ。

 その結果、北川作品に登場する「若者カルチャー」は、「娘から聞いたんだけど、最近こういうのがはやってるんでしょ?」感がバリバリに出ていて味わい深い。聞きかじりの知識と「ふんわりイマジネーション」で脚本を書くので、ディテールの詰めが甘かったり、周回遅れだったり、架空の固有名詞がことごとく「樟脳の匂いがするおふくろの手編みのセーター」感があって、これまた“懐かしさ”を感じさせてくれる。

 今作では特に、先行の売れっ子ユニット「ズビダバ」、「イソベマキ」という通称を使いたいがための磯部真紀子という名付け、「ビート・パー・ミニット」のデビュー曲タイトル「きっと泣く」など、珠玉のネーミングセンスが際立っており、しばらくのあいだ思い出し笑いをさせてくれそうだ。

(3)社会問題に対する独特のスタンス

 「ポエムドラマ」の“老舗”の心構えとして、普段から新聞も読まなければニュースも見ない大先生。しかし、今作ではプロデューサーに導かれたのだろうか、大先生なりに「社会情勢」を盛り込んだ台詞が一つだけあった。空豆と音の下宿先の主で画家の響子(夏木マリ)が、空豆の祖母・たまえ(茅島成美)に、空豆の近況を伝えるシーンだ。

「(空豆は)近所のお蕎麦屋さんで、東京都の最低賃金で働いております。時給1,072円」

 「『最低賃金』のくだり、要るか !?」という疑問で頭の中がいっぱいになるし、クリエイティブ職以外の職業を軽視する大先生の、相変わらずのスタンスには一驚を喫する。「東京都 最低賃金」でGoogle検索してトップに出てきた文言をコピペしただけのような台詞も、まさに北川作品の真骨頂と言える。

 また終盤で急に、音がコンポーザーを務めるユニット「ビート・パー・ミニット」のヴォーカル・セイラ(田辺桃子)が、実は空豆に恋していたというエピソードが登場。「ジェンダー問題とか盛り込めばいいんでしょ?」とばかりにやっつけ処理された「付け足しトッピング」感に笑ってしまった。

(4)御年61歳の“ベテラン”脚本家による「リカちゃん遊び作劇」

 北川作品の人物造形はどれも、小学校低学年ぐらいまでの女の子が「リカちゃん遊び」をする際に読み上げる「えっとね〜、この子はね〜、パパがパイロットでね〜、ママが元CAでね〜、IQ140でね〜、トイプードルを飼っててね〜、麻布十番に住んでてね〜」という「夢設定」に似た味わいがある。

 今作では空豆の、特に仕事周りの作劇が凄まじかった。ダサい“はんてんコート”を着て上京するまでは、デザイン画の一つも描いたことがなかったのに、いきなり有名高級ブランド「アンダーソニア」(このネーミングも実にジワる)に採用されたり、秒速でトップデザイナーの久遠(遠藤憲一)に嫉妬されるほどのデザインを作り上げたり、音速で商業音楽のMVの衣装を担当したり、デザイナーデビューから1年足らずでパリコレに出られたりと、無茶苦茶だ。しかも作劇的にはすべて「天才だから」の一点張りで押し通す。

 ものの本によれば、「ドラマ1話につき使っていい『偶然』は、多くて3つまで」という基本原則があるらしい。しかしそこは北川大先生。セオリーなんて気にしない。試しに第1話に仕込まれた「偶然」を数えてみた。

1 偶然福岡に来ていた宮崎在住の空豆と、偶然福岡に来ていた東京在住の音が横断歩道でぶつかる
2 偶然同じワイヤレスイヤホンを使っていたため、互いに間違えて拾う
3 ヨルシカの「春泥棒」を偶然同じタイミングで聞いていた
4 大東京(人口1400万人)のビルの谷間の噴水の前で偶然再会
5 大東京(人口1400万人)のホテルのレストランで偶然再会
6 大東京(人口1400万人)の橋の上で偶然再会
7 空豆がサウナでのぼせて倒れるが、偶然にも音が住む家の大家が経営する銭湯だった

 なんと、7つもの「偶然」をブチ込んでいる。

 ほとんどのエピソードを「偶然」と「神様からのギフト(=天才的才能)」の2点突破で進めるのである。こうした「リカちゃん遊び作劇」が、今作でも炸裂していた。

(5)エコでサステナブルな執筆スタイル

 お気に入りの設定を何度も再利用するのも、北川作品の醍醐味だ。登場人物の実家が「皇室御用達の写真館」という設定が、『半分、青い。』と、『ウチの娘は、彼氏ができない!!』で使い回しされたことは記憶に新しい。

 今作では久遠のバックグラウンドとして「今をときめくトップデザイナーだけど、実は河内長野出身」という設定がお目見えしたが、『半分、青い。』でも鈴愛の漫画の師匠である秋風(豊川悦司)の出身地が河内地方だった。そしてその設定は、「繊細で洗練された作風で知られる秋風先生だけど、キレると泥臭い河内弁が出る」という(大先生が思う)“面白シーン”として消費された。いったい大先生は河内地方をどんな場所だと思っているのだろうか。

 こうした、5個ぐらいしかない引き出しを延々使い回すという“省力的”な作劇も、「北川作品あるある」として欠かせない要素だ。

(6)「厨二病の妖精」による試し行為

 大先生といえば、自由奔放なツイートがたびたび炎上することでおなじみだ。新作の脚本制作が始まるたびに「ワタシ大変、ワタシ頑張ってる」からの「褒め言葉おねだり」ツイートや、語弊だらけのきわどい「制作裏話」ツイートが増える。

 空豆や鈴愛など、大先生の創り出すヒロインが、わざと傷つけるようなことを言って相手の反応を見たり、相手の大事なものを乱暴に扱ったり破壊しようとするのは「試し行為」にほかならず、大先生が平素から息を吐くようにTwitterで行っていることに似ている。

《そもそも、この体調で連ドラは無理、と一度お断りしたのですが、なんとか頑張りませんか?とチーフプロデューサーの植田さんに説得されて、というか励まされて、書き始めました。》
《私は、しばらくホン(シナリオのこと)書かないと思います。諸事情があって。書くとしてもずいぶん先かと思われます。》

 こうしたツイートも試し行為に見える。その真意はおそらく、「お前ら、しばらく脚本のオファーするなよ? 絶対するなよ?」という「ダチョウ倶楽部しぐさ」ではないか。つまり、「アテクシは常に脚本家として求められて然るべき。求められたうえで袖にする立場。オファーしろ。受けるかどうかは別として」ということではなかろうか。

 このように、作品とツイートの両面から、見る者に「共感性羞恥」を味わわせてくれる。これもまた北川作品が唯一無二のジャンルたる所以だ。

 ……とまあ、北川作品の“魅力”は枚挙にいとまがないのだが、大先生の「依代三部作」と言える『半分、青い。』『ウチの娘は、彼氏ができない!!』『夕暮れに、手をつなぐ』の3作を並べてみると、前2作に比べて今作は、ややパンチが弱いと言わざるを得ない。

 先述の通り、スタッフによるコンプライアンスチェック(ただし、かなりザル)と「調整」が入った形跡が見て取れ、北川作品本来の「持ち味」が、多分に中和されていると感じた。「広瀬すずと永瀬廉に花火かシャボン玉をさせて、スローモーションをかけときゃ、どうにかなるだろう」という「臭み消し」の映像処理も、作品の「中和」に一役買っていた。

 今作において、くさややシュールストレミングのような、北川大先生にしか出せない味わいが稀釈されていたのは残念なことで、大先生本人も、渾身の台詞がカットされたことをわざわざ固定ツイートにして嘆いている。その台詞とは、例の「炬燵でじゃれ合うシーン」で音が空豆に向けた、

「月帰んなよ、かぐや姫」

というものだそうだ。こんなクソダs……いや、味わい深い台詞、“ファン”としては是非とも残してほしかった。
 
 ともあれ、『夕暮れに、手をつなぐ」は、令和の今に“懐かしさ”をもたらしてくれる、類稀な“ノスタルジック・エンターテインメント”と言えるだろう。「多様性の尊重」「恋愛至上主義の終幕」という時代の空気に真っ向から立ち向かう北川作品が、これからどんな展開を見せるのか。大先生の「ダチョウ倶楽部しぐさ」の動向とともに、見守っていきたい。

※《》内はすべて原文ママ。

ハライチ・岩井勇気、「女優との結婚はステイタス」という価値観の全否定に思うこと

私たちの心のどこかを刺激する有名人たちの発言――ライター・仁科友里がその“言葉”を深掘りします。

<今回の有名人>
「嫌だもん、芸能人と付き合ったりするの」ハライチ・岩井勇気
『ぽかぽか』(3月21日、フジテレビ系)

 芸能人や有名人の結婚相手というのは、“時代を映す鏡”といえるのではないだろうか。

 例えば、2021年に離婚したが、とんねるず・石橋貴明が女優・鈴木保奈美と結婚し、記者会見を開いたときのこと。男性リポーターから「とんねるずは2人とも、美人女優と結婚してうらやましい」という意味のコメントがあった(石橋の相方・木梨憲武の妻は女優・安田成美である)。

 男性お笑いタレントにとって、“美人女優”との結婚はステイタスを上げる“モノ”であるというニュアンスが込められた発言だけに、今なら炎上してもおかしくない。なぜ、このようなコメントがなされたかというと、当時、女優というのは実業家、俳優、プロデューサーの男性と結婚することが多く、人気女優と男性お笑いタレントというカップルがほとんどいなかったからではないかと思う。

 男性お笑いタレントが人気を博し活躍するようになると、彼らをMCに起用する番組が増えていく。その番組が高視聴率を記録すれば、彼らの番組に出たいと思う芸能人が増え、男性お笑いタレントの影響力および地位が向上していく。人気番組には、それにふさわしい人気アイドルや女子アナ、有名女優が出演することになるので、必然的に出会いの機会も増える。

 そうすると、とんねるずのように、これまであまり接点がないように思われた“美人女優”とゴールインする者が現れ、それがいつしか男性お笑いタレントのステイタスのようになっていったのだろう。

 実際、モテ男として知られ、13年に元モデルの一般女性と結婚したロンドンブーツ1号2号の田村淳は、独身時代に若槻千夏らバラエティアイドルとも浮名を流したが、ある番組で「女優と結婚したい」と発言していた。「女優の〇〇さんと結婚したい」ではなく、「女優」とまず職業を口にするあたり、当時の彼にとって女優を妻にすることがステイタスだったことがわかる。

 ほかにも、オードリー・若林正恭は、2017年12月24日放送のラジオ番組『第43回ラジオ・チャリティ・ミュージックソン』(ニッポン放送)内において、南海キャンディーズ・山里亮太について、「女子アナやモデルと結婚しようとしている節がある」「『ここまで来たら、一軍と結婚するしかないだろ』と叫んでいた」と暴露していた。そんな山里は、実際に女優・蒼井優と結婚している(そういう若林も、翌年元日に女優・南沢奈央との交際が報じられたものの、同年9月に破局している)。

 トロフィーワイフという言葉があるが、人からうらやましがられる女性と結婚することが、男性お笑いタレントにとって「売れた証拠」になるのかもしれない。

 3月21日放送『ぽかぽか』(フジテレビ系)に出演したお笑いコンビ・さらば青春の光・森田哲矢もそういった価値観であるらしい。「誰しもが、女優さんとか行きたくて、この世界入っている」と女優との結婚を夢見ていることを明かしていた。

 しかし、同番組司会のハライチ・岩井勇気は、「俺はまったく(そんな気持ちは)ないよ」「嫌だもん、だって俺、芸能人と付き合ったりするの。自意識高そうで」と全否定。女優をはじめ女性タレントとは「あえて結婚しない」という発言は、女性を男性の地位向上の道具とみなしていないという点で、今どきの視聴者にウケるのかもしれない。一方で、岩井の価値観は、時代とともに、タレントを取り巻く環境が変わったからこそのものと私には感じられる。

 2016年、「週刊文春」(文藝春秋)がベッキーの不倫を報じ、“数字”を稼ぐようになると、この流れにほかの週刊誌も追随するようになり、ワイドショーや情報番組が芸能人の不倫を追いかけるようになった。その時に面白いと思ったのが、『バイキング』(フジテレビ系)に出演していた司会の坂上忍が「芸能人同士で結婚するなら、不倫をしてはいけない」と言っていたことだ。

 芸能人だけでなく、既婚者の不倫は総じてよろしくないことだが、坂上のこの発言には理由がある。

 男性芸能人が不倫をしたとして、妻が一般人の場合、マスコミは原則妻を追わない。しかし、妻も芸能人の場合、マスコミは妻にもコメントを求めるし、それを無視するわけにもいかないだろう。場合によっては妻のイメージが低下して、仕事に差し障りが出てしまうかもしれない。つまり、自分と相手の事務所をも巻き込んだ大トラブルになりかねないわけで、芸能人と結婚するのなら、不倫はしないと腹をくくるべきだと持論を述べていた。

 女優など女性芸能人と結婚することは、男性芸能人にとってステイタスなのかもしれない。しかし、コンプライアンスが強化されている現代の芸能界で、女性芸能人を妻にすると、妻の顔が売れている分、面倒なことが起こりかねない……実際に岩井がそこまで思っているかは不明だが、一時期に比べ、芸人の妻が“一般人”であるケースが増えているのは、どこか示唆的ではないだろうか。

 千原ジュニア、ナインティナイン・岡村隆史、ノンスタイル・井上裕介、そして先に触れた若林は、だいぶ年下の一般女性と結婚している。彼らは番組で「うちの奥さんが」と妻の話をすることがあるが、こういう家庭の話は今時の視聴者が最も親近感を抱きやすいネタだし、妻は一般人で、表に出ない職業であるからこそ、ある程度好きに話せるのだろう。

 岩井も今のところ、女優をはじめ女性芸能人との結婚はまったく頭にないのかもしれない(過去には結婚願望がゼロとも語っていたそうだ)。それは確かに今の時代、賢い判断だろうが、恋愛や結婚というのは縁でするものだ。「思っていたのと違う」結果になるほうが面白いよとも申し上げたい。

メルカリで値下げ交渉も失敗! 安く買うための行動により陥った“魔のループ”とは?

――2年で1,300万円以上溶かし、現在借金は●00万円の“買い物狂い”のライターが、苦しくも楽しい「散財」の日々を綴ります。

 ジュエリーケースがほしいんですよ、私。でね、オーダーメイドで作っていただこうと思い、お店に見積もりを依頼したところ、できあがるのはずっと先。しかも、値段は最低14万円って言われたわ。ひょえ~~~~~!! 

 ちなみに、素材は木だから当然重くて、持ち運びには適さないの。旅行時には不便だし、万が一火事にでもなったときには大変!!!! 作ってもらうべきか否か悩んでいたある日のこと、通販サイト・ベイクルーズストアを眺めていた私は、「【GIGI】別注ジュエリーボックスmini」なるアイテムを発見しました。なんだこの可愛いジュエリーケースは……!

 miniサイズとありますが、詳細を確認したところ、指輪は18個入るらしい。ってことは、私のスタメンメンバーを全員入れられるということ。こ、これは、なかなか良い……!!

 問題は、ネックレスケースの部分。レビューには、「ネックレスをかけても、開閉するときにボタッと落ちてきてしまい、用途をなさない」って書いてあったのよねえ……。ウーン、それはちょっと嫌だなあ。

 あと、問題は色。今、在庫が残っているのはドット柄に赤地のものなんだけど、これがちょっと派手すぎる気もする。中の色がブルーのほうがよかったかもなんて……。

 そうして「もしかしたら、メルカリにあるかも……!」とひらめいた私は、すぐさまアプリを開いて検索。すると、私が欲しかった色のボックスは、確かに売られていました。でも、べクルーズストアで9,900円で売られていたのに対して、1万2,000円と定価オーバー。そこで、出品者に「9,900円になりませんか?」と値下げ交渉することに。

 その結果、「送料、手数料を含めると無理です」との返信が届き、あえなく失敗。まあ人気商品だし、そりゃそうだよねえ……。にしても、新品未使用で出品している人が大量にいるのはなぜ? 通販で購入したものの、実物を見て「イメージと違う」って思ったってこと……?

 疑念を抱きつつ、少しでも安く購入できないかと考えた私は、ポイントが3,000円分貯まっている楽天市場で商品の取り扱いがないかチェックしたところ、見事にヒット! 約6,900円で購入することができました。

 ポイントって罪なシステムよねえ。だって私、9,900円だったら買っていないもの。ポイントを使って安く買えるから、「どれどれとりあえず買ってみるか」と購入を決意したのよ。まあ、もし使い勝手が悪くても、手数料や送料分を上乗せして、メルカリで売ればいいかと思うと、気持ちも楽です。そして、売上金で買い物をしてポイントを貯めて……という魔のループ。この沼からにはなかなか抜け出せそうにありません……。トホホ。

■今回の出費
「【GIGI】別注ジュエリーボックスmini」 6,900円

電子書籍『“買い物狂い”の散財日記~千葉N子のリアルな家計簿大公開~』発売中!

 2020年3月から連載中の人気コラム『“買い物狂い”の散財日記』が、ここでしか読めない書き下ろしエピソードを大量に収録して初の書籍化! 

 “買い物狂い”の千葉N子氏が、日々の散財ぶりはもちろん、フリマアプリの活用法や通販サイト利用時の注意点など、知っておけば必ず得をする買い物術から失敗話までを赤裸々に綴ります。さらに、“買い物狂い”のひと月の散財リストや1年の散財額も大公開! 物欲が刺激されること間違いなしの一冊です。

発売元:サイゾー
発売日:2022年9月1日
価格:950円(税込み)

<ご購入はこちらから!>
Amazon Kindleストア https://www.amazon.co.jp/dp/B0BCVH3VSZ

万引きGメンになって45年、ついに引退を決意したワケ――「自分を許せなかった」事件の顛末

 こんにちは、保安員の澄江です。

 唐突な話ですが、いよいよ現場から離れる決心がつきました。立ち仕事に伴う足腰の痛みや、目が悪くなってきたことも大きな理由といえますが、先日、暴行被害を受けたことから決心がついたのです。今回は、その時のことについて、お話ししたいと思います。

 当日の現場は、ショッピングセンターM。私鉄沿線の駅近くに位置する商業ビルの地下1階にあるワンフロアの大型店で、1階に100円ショップや美容室、2階にはゲームセンターが入居しています。

 ここでの勤務は、今回で3回目。惣菜や生鮮食品をはじめ、コスメドラッグや衣料品の被害が多発しており、過去2回の勤務においても複数の捕捉がありました。主な被疑者層は、少年と高齢者で、犯行時間の予測が難しく、気の抜けない現場といえるでしょう。

 この日の勤務は、午前11時から午後7時まで。ひどく寒い日で、いつもより客入りは悪いものの、それなりに混雑する店内の巡回を続けます。

「あの人、なにをやっているのかしら?」

 午後2時頃。冷蔵ではないペットボトル売場で、棚からお茶を取っては戻すという若い男性が目につきました。おそらくは、20代後半から30代前半くらいの人でしょうか。どことなく芸人のもう中学生さんに似ている人です。左手にはビニール袋に入った複数の駄菓子が握られており、棚取は見ていないものの、この店の商品である気がしました。そのまま行動を見守ると、何種類ものお茶を手にしては戻すという行為を何度か繰り返した男性は、1本の緑茶を手にしてレジのほうに向かって歩き始めます。

おとなしそうな万引き男が豹変!

 手にある商品を、すべて精算したとしても、ほんの300円足らずの話です。おそらくは精算するだろうと思いながらも、念のために見守ると、どこか気まずそうな顔でレジ脇をすり抜けた男性は、そのまま出口につながるエスカレーターに乗り込んでしまいました。商品単価が安く、あまり気乗りしませんが、犯行を現認してしまった以上、見逃すことはできません。

「あ、飲んだ!」

 声をかけるべく一定の距離を保ちながらエスカレーターに乗り込むと、上がり切ったところでペットボトルのフタを開けた男性は、後方を振り返ってからゴクリとひと口飲みました。まだ敷地内の状況にありますが、未精算の商品を開封して口をつけたので、ここで声をかけます。

「こんにちは、お店の者です。それ、飲んじゃって大丈夫ですか?」
「え? ごめんなさい……」

 男の横について、顔を覗き込むようにしながら声をかけると、まるで子どものような言い方で対応されました。見た目の年齢と合わない態度に、どこか病的なものを感じます。

「ごめんなさいって、どういうこと? お金を払っていないなら、ちゃんとしていただかないと」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
「ここで謝られても仕方ないから、事務所で話を聞かせてもらえますか?」

 事務所への同行を求めると顔色を変えた男は、いきなり大声を出して、逃げるように身を捩りました。

「嫌だ! お父さんに怒られるから、絶対に行かない!」
「じゃあ、いますぐ警察を呼ぶことになるけど、それでもいい?」
「警察? 嫌だ、お父さんに怒られる! もう! 離せ、離せよ!」

 すると、大きく右手を振り上げた男が、鉄槌の形で私の顔を殴ってきました。腕をつかんで抵抗するも、空いている左手で顔や頭を何度も殴られたため、たまらずに背を向けてしまいます。

 その隙に逃走されましたが、痛みと衝撃で追いかける気力はなく、ただ呆然と顔を押さえて男の背中を見送りました。男の手にあったお茶と駄菓子は、いつの間にか床に放置されており、商品を取り返す使命は果たせたようです。

「大丈夫ですか? もう警察は呼びましたから、ちょっと待っていてくださいね」

 するとまもなく、ビル管理を担当する警備員が駆け寄ってきました。その様子からして、あまり積極的には関わりたくないようで、男を追いかける素振りはありません。

 痛々しげに顔を覗き込まれてから救急車も呼ぶといわれたので、そこで初めて自分の状態が気になりました。トイレに駆け込み鏡を見れば、左頬が腫れ、左目の白眼部分が真っ赤に充血しています。まるで試合後の格闘家のような顔になっているので、水をハンカチにしみこませて固く絞って、叩かれた場所を冷やしながら警察官の到着を待ちました。

「大丈夫ですか? 無理はしなくていいので、救急車が来るまでの間、話を聞かせてください」

 現場に臨場した刑事は、私から簡単な事情聴取を済ませると、すぐに防犯カメラ映像の確認にいきました。まもなくして犯人の映像は見つかり、その人着が無線で共有されると、早速に緊急配備が敷かれて逃げた男の探索が開始されます。コロナ禍で忙しいのか、救急車はなかなかきません。

 その間、窃盗の事実確認をするために店内の防犯カメラ映像を検証した結果、なんとも気まずい事実が発覚しました。男が店に入ってきた時の様子を確認すると、ペットボトルのお茶とビニールに入れた駄菓子を手に持って店に入ってきていたことが確認されたのです。

「万引きはしていないようですね。行動からすると、ちょっと変わった人に見えるけど、実際はどうでした?」
「確かに、少し病的な感じはしました。でも、お茶を盗っていないなら、誤認になっちゃうかもしれないので、被害届は大丈夫です」
「そうですか。もし病気の人だとすれば、行為能力の問題もあるから、そのほうがいいかもしれませんね」
「しっかり棚取は見たのですが、こんなこともあるんですね」

 以前、他社から移籍してきた新人さんの指導を担当した際、前の所属先では入店時から行動を見続けなければ、商品を隠匿する現場を見ても声をかけてはならないという規則があったと聞いたことがあります。その時は、なにをバカなことをと心の中で嘲笑した記憶がありますが、こうした経験のある人が作ったものだと思うと理解できました。

 ようやくに救急車が到着したので、近くの病院で診察してもらうと、頭部打撲のほか、左頬骨にひびが入っていることが判明。全治2カ月と診断されましたが、被害申告をしなかったことで補償は得られず、ただのヤラレ損といった結果となりました。それよりも、誤認事故に近しき事態からの受傷事故を起こした事実が重く、自分を許せない気持ちが消えません。それで、これを機に引退することに決めたのです。

 この仕事に就いて、早45年。これまで捕らえた万引き犯は、およそ1万人近くになると思われ、やり残したことはありません。これを最後にしてほしい。その思いを伝えるべく、被疑者の皆様と接してきましたが、どれだけ心に響いてくれたことでしょう。

「恨みっこなし」

 そう思い込むことで、我が身に積もらせた業を振り払っていきたいと思います。

 長きに渡りご愛読いただき、ありがとうございました。

(文=澄江、監修=伊東ゆう)

平野レミは、デキるビジネスウーマン――ただの天真爛漫な人ではないと思うワケ

私たちの心のどこかを刺激する有名人たちの発言――ライター・仁科友里がその“言葉”を深掘りします。

<今回の有名人>
「だから、なんだって? なんだって?」平野レミ
『ぽかぽか』(3月9日、フジテレビ系)

 “天真爛漫な人”というのは、テレビと相性がいい。予定調和ばかりの番組だと視聴者は飽きてしまうが、こういうキャラが1人いると、いい意味で番組が引っかき回されて、アクセントになる。

 中でも料理愛好家・平野レミは、“ザ・天真爛漫キャラ”といえるのではないだろうか。番組で料理を作る場合、一般的には、正しい手順、正しい分量、正しい方法 が重んじられるが、レミは違う。3月9日放送の『ぽかぽか』(フジテレビ系)では、レミが過去、番組の料理コーナーで、太めのパスタの束をひざで割る、トマトを包丁で切らずに手でにぎり潰すなどの“荒業”を披露したことが紹介された。

 料理だけでなく、私生活でも天真爛漫ぶりを発揮するレミ。 家に空き巣が入ったとき、警察が現場検証に来たが、レミが動き回るので犯人の足跡が消えてしまったなど、ユーモラスなエピソードには事欠かない。『ぽかぽか』で、ほんの少し前に話していたことを忘れてしまい、「だから、なんだって? なんだって?」と聞き返していたところを見るに、天真爛漫はテレビ向けのキャラなどではなく、彼女の性格そのものなのだろう。

 そんなレミを、天真爛漫を通り越して、“適当すぎる人”と見る人もいるかもしれない。けれど、私には、本当に好き勝手にやっている部分もあるが、一方ですごく“緻密で真面目”、かつ“デキる人” なのではないかと思えてならない。

 レミが生み出したヒット商品といえば、「レミパン」。『おしゃべりオジサンとヤバイ女』(テレビ東京系)に、レミが次男の嫁で料理家・和田明日香とゲスト出演した際、例によって自由に動き回っていたが、千原ジュニアは「本当にがさつなら、レミパンを作ることはできない」といった意味の発言をしていた。

 確かにレミパンユーザーの私も同意見だ。実際に使ってみるとわかるが、細部にまで心配りがあると感じる。明日香もレミについて「レシピに関しては、すごく細かい」と言っており、それはプロとして当然ではあるものの、細かなところまで手を抜かない真面目さがあるからこそ 、専門的な料理の勉強をしたわけではないのに、今 の地位を築くことができたのではないだろうか。

 また、自由に振る舞っているように見えるレミだが、押さえなければいけないポイント を心得ている人なのではないかと思う。それは「忘れてはいけないことは、忘れない」という彼女の性質に関係しているのではないか。

 上述した通り、レミはちょっと前に話したことを忘れてしまう。しかし、毎年タケノコを送ってくれる京都のお寺のことは忘れずに、テレビできちんと固有名詞を出す。寺は宣伝してもらうことを期待して、レミに贈り物を送っているわけではないと思うが、悪い気はしないだろう。忘れていいことは忘れるが、良くしてくれた相手へのお礼など、忘れてはいけないことは絶対に忘れないのがレミなのである。

 レミは芸能活動をする息子の妻たちへの気遣いも忘れない。長男であるTRICERATOPSのボーカル・和田唄の妻は女優・上野樹里 だが、レミは『ぽかぽか』内で、何の脈絡もなく、ネックレスに触れながら、「あ、これ、樹里ちゃんにもらっちゃった」「樹里ちゃんってうちの嫁」と息子の妻の名前を口にした。言葉こそ短いものの、姑に気を使う上野の優しさと、関係性の良さをうまくアピールしたといえる。

 一方、この日のレミの衣装は上下デニムであり、「次男のほう(の嫁)は、和田明日香。料理やってんの。それがジーンズのプロデュースやってるんだって」と説明していた。有名人であるレミが、テレビで商品を着用すれば、宣伝効果は絶大だろう。

 独特の口調に騙されてしまうけれど、レミは周りへの心遣いを忘れず、 押さえなければいけないポイントをしっかり押さえる―― そんなデキるビジネスウーマンのような人だと思う。

 加えてレミは、ただ単に天真爛漫というわけではなく、その本質はむしろ繊細なのではないかと思うことがある。レミが夫でイラストレーターの和田誠さんの話をするときだ。和田さんは2019年に亡くなったから、4年近い月日が過ぎようとしている。レミは常に明るく振る舞っている が、まだ悲しみは癒えていないようだ。

 『ぽかぽか』で、「何度生まれ変わっても、和田さんと結婚する」と語ったレミ。「今度はさ、あたしが先に死んで、それでこの悲しみ、会いたさ、つらさを和田さんに味わってもらってリベンジする」と笑っていたが、それはレミが今なおどれだけつらいかを物語っているし、彼女がちょっと泣きそうに見えたのは気のせいだろうか。

 いろいろな番組でレミは、和田さんは料理愛好家・レミの産みの親であり、最大の応援者であったと話している。彼女の見る者を引き付ける天真爛漫さは、和田さんという精神的な支柱を得たおかげで開花したものなのかもしれない。

 

96歳の祖母のピンチを救った、非常時に役に立つ“アイテム”とは?

――2年で1,300万円以上溶かし、現在借金は●00万円の“買い物狂い”のライターが、苦しくも楽しい「散財」の日々を綴ります。

 高齢の祖母がね、風邪を引いたんですよ。不幸中の幸いで、新型コロナウイルスには感染していませんでした。祖母は一人暮らしをしているんですが、布団に入らず、イスに座った状態で眠ってしまった、とのこと。それを2晩も続け、風邪を引いてしまったそうです。

 父が病院に連れて行ったものの、病院はどこも満員で入院はできないため、自宅療養を開始。しかし、祖母はすっかり食欲がなくなってしまい、飲むヨーグルトをちびちびと飲む……くらいしか食事をとっていないとか。ステディとお見舞いに行く際、がん治療のために入院生活を経験した彼がこう言いました。

ステディ「僕、食事が喉を通らなかったときに、メイバランスを病院から出された!」

 はて、メイバランス? ステディいわく、メイバランスとは、大手食品会社・明治が販売している栄養食品。ドリンクやゼリー、アイスが展開されており、高カロリーで病気の人にぴったりの飲み物とのこと。公式サイトを見ると、ドリンクタイプ(125ml、希望小売価格264円)は、たんぱく質、脂質、糖質、食物繊維、ビタミン、ミネラルといった6大栄養素がバランス良く摂取でき、200kcal(ご飯約1杯分のエネルギー)をとれるのだとか。

 そこで、メイバランスや少しでも食べられそうなお惣菜をいくつか買っていくことに。すると今度は、ステディから「うちにあるパルスオキシメーターも持っていこう!」と提案が。

 パルスオキシメーターとは、皮膚を通して動脈血酸素飽和度(SpO2)と脈拍数を測定するためのアイテム。赤い光の出る装置を指に挟むことで測定します。

 日本呼吸器学会の公式サイトによれば、SpO2は肺や心臓の病気で酸素を体内に取り込む力が落ちてくると下がり、一般的に96~99%が標準値とされ、90%以下の場合は十分な酸素を全身の臓器に送れなくなった状態(呼吸不全)になっている可能性があるとか。

 ステディは以前、コロナにかかった際、オキシメーターを購入していたんです。祖母の家に行く前、試しに私もSpO2値を測定したところ、数値は97。ステディからは「キミは健康」と言われ、安心しました。

 それから、祖母の元にオキシメーターとメイバランスなどを届けて、帰宅し数時間後……。祖母の看病のために実家に帰っていた妹から連絡がありました。

妹「おばあちゃん、オキシメーターでSpO2を測ったら、80しかなくて、救急車で運ばれました」

 なななななんだってえ~~~~~!? まさか、祖母のピンチにオキシメーターが大活躍。確かにお見舞いに行った際、「息苦しい」と言っていましたが、風邪による症状ではなく、肺炎になっていたそうなのです。というわけで、おばあちゃんは無事入院。病院で看病してもらえることになって、胸をなで下ろしました。

 祖母は齢96歳なので、あと1、2日発見するのが遅かったら、命にかかわっていたかもしれません。高齢者がいるご家庭は、オキシメーターがあると、非常時に役立つのではないでしょうか?

電子書籍『“買い物狂い”の散財日記~千葉N子のリアルな家計簿大公開~』発売中!

 2020年3月から連載中の人気コラム『“買い物狂い”の散財日記』が、ここでしか読めない書き下ろしエピソードを大量に収録して初の書籍化! 

 “買い物狂い”の千葉N子氏が、日々の散財ぶりはもちろん、フリマアプリの活用法や通販サイト利用時の注意点など、知っておけば必ず得をする買い物術から失敗話までを赤裸々に綴ります。さらに、“買い物狂い”のひと月の散財リストや1年の散財額も大公開! 物欲が刺激されること間違いなしの一冊です。

発売元:サイゾー
発売日:2022年9月1日
価格:950円(税込み)

<ご購入はこちらから!>
Amazon Kindleストア https://www.amazon.co.jp/dp/B0BCVH3VSZ

虐待されても母親が大好き――不安と喜びを抱えながら介護をする女性

“「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”
――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)

 そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。

 母・良江さん(仮名・70)から虐待を受けて育った黒沢美紀さん(仮名・45)。良江さんは長く統合失調症を患っていたが、体に合う薬が見つかり、おっとりとした女性に変わった。ただ、夫・昇二さん(仮名・75)から激しいDVを受けていたことも忘れてしまっている。今後は介護が必要になる可能性も高いと言われているし、昇二さんは脳梗塞のあと自宅で転倒、今も入院中だ。

どんなときも母のことが大好きだった

 今、良江さんからはたまに電話がかかってくる。「良江さんとの会話は楽しい」と美紀さんは笑う。

「この前は、うちに遊びに来てくれました。2人でテレビを見て、おしゃべりして、一緒にお寿司を食べて。私の手作りプリンに『お店に出せるで』とおいしそうに食べてくれました。私と母はのんびりした性格なので、一緒にまったりした時間を過ごせてうれしかったです。もし母が病気にならなかったら、病気になったとしても、すぐに治療を受けられていたら、私の人生は変わっていたのかな、とふと思いました」

 こんな穏やかな日にも終わりが来るのかと美紀さんは考える。良江さんが認知症になったとき、どこまで耐えてサポートできるのか不安を抱きながらも、それは今考えても仕方のないことだとも思う。

 美紀さんは、良江さんのことが大好きなのだ。

「あまりにもつらい思いをさせられて『なんで私だけ……』と涙することはたくさんありました。でもどんなときも、お母さんのことが大好きでした。私が2歳になるまでの短い間だったけれど、母が病気になるまでは私のことを大切に育ててくれていたんだろうと思います。本当は母は暴力なんて振るいたくなかった。娘のことを愛したかったはず。病気に振り回される母にとって、自分を取り巻く世界は恐ろしいもので、それが怖くて暴力を振るっていたんでしょう」

 それでも、わずかながらも良江さんが美紀さんに向けてくれた愛情があった。裁縫が得意で、浴衣やボストンバッグを作ってくれた。小学校の卒業旅行のために縫ってくれたそのバッグを持っていくと、友達からうらやましがられてうれしかったのを覚えている。

「当時は洗濯を干してくれなかったので、濡れた服で学校に行くしかなくてみじめでした。ただ、今思うと洗濯機さえ一生懸命回していたんでしょう。あんなことをされて、なんでだろうと思うくらい、母には愛情を持っています」

 統合失調症だけでなく、知的障害と発達障害もある母。もうおばあちゃんなのに、5歳くらいの女の子みたいにかわいらしい母――。今の母と過ごせる時間は限られているのかもしれない。それでもこの楽しいときをできるだけ心の中に貯金しておきたい。

 そして良江さんのおおらかさに救われつつも、昇二さんが施設に入ったら、あるいは亡くなったら、良江さんをどうするのか。経済的には大丈夫なのか――。差し迫った現実として考えなければならないところに来ている。

美紀さんの幸せを願う

 美紀さんの長い物語はここで終わった。

 父と母による壮絶なDV、性的虐待――それによって引き起こされた美紀さんの苦しみ、フラッシュバックで取った行動……。それらの詳細は書かなかったが、美紀さんは正直に打ち明けてくれた。息をのむほどの過酷な現実だった。思い出すのも、言葉にするのもどんなに苦しかったことだろう。よく生き延びることができたと感嘆するほどだった。

 美紀さんは「この機会に勇気をもって振り返る経験をしてみたい。それで何かが変わるかもしれません」と言って、すべてを話してくれた。美紀さんは「棚卸し」と呼ぶその作業をすることで、自分を癒やそうと――いや、“癒やす”なんて軽い言葉では表せない――生き直そうとしているのかもしれない。

 美紀さんにどんな言葉をかけていいのか、何度も逡巡した。

 「お父さんを許さなくていい」「距離を取っていい」――カウンセリングで使うような、どんな言葉も美紀さんの経験の前には、あまりに安っぽく薄っぺらい。

 美紀さんが言うように「重い十字架を背負わせた」のが神様なのなら、その神様が美紀さんと夫を出会わせてくれたことに感謝したい。そして、童女に返ったような良江さんとの平穏な日々が少しでも長く続くことを祈りたい。