一度ハマったら最後……脱出ゲームより無理ゲーな「依存症脱出マンガ」の世界

 年明け早々風邪をひきました。紅白でDA PUMPがU.S.A.を歌ってるあたりから調子が悪くなり始めて、どっちかの夜が昼間になってる頃には最悪の体調になってました。とにかく咳がひどくて病院に行って咳止めをもらったんですけど、全然効かなかったので、市販薬でもっと強力なヤツはないのかなってネットで調べていたら知った衝撃事実。

 なんでも、咳止めに使われている成分に麻薬性のものがあり、咳止めの市販薬を大量に摂取するとチョーいい気持ちになるんだとか、咳止め依存症になって1日700錠も飲んでしまい、糖衣のせいでウン◯が真っ白になる人もいるとか、新年早々そんな情報いらないよ!!

 というわけで、何がきっかけでクスリにハマってしまうかわからないご時世ですが、そんなことにならないよう、薬物依存症やアルコール依存症の怖さをたっぷりと知ることができるマンガをご紹介したいと思います。

■『マーシーの薬物リハビリ日記』(田代まさし、北村ヂン/泰文堂)

 1980~90年代に超売れっ子タレントだった、マーシーこと田代まさし。シャネルズの一員としてデビュー後、コメディアンとしても活躍。「ダジャレの帝王」「ギャグの王様」などと呼ばれて、一躍スターに。ファミコンゲームになったり、原宿にタレントショップを開店させたり、CMで引っ張りだこだったりと、とにかく華々しい活躍ぶりでした。

 そんなマーシーが2000年、盗撮疑惑で書類送検され、記者会見で「ミニにタコができる」というタイトルの映像を作ろうとしていたと弁解してスベったのは、今でも芸能界史に残る名シーンでした。その後、芸能界に復帰したものの、覚せい剤取締法違反で3回も逮捕されており、05年と11年には刑務所へ。1億円もの借金を抱え、妻子には愛想を尽かされて離婚などなど、芸能界のほぼ頂点からものすごい勢いですべてを失うという、まさに絵に描いたような「転落人生」です。

『マーシーの薬物リハビリ日記』は、そのマーシーが、仕事のプレッシャーから覚せい剤にハマってしまってしまった経緯や、刑務所時代の過酷な生活などを超ぶっちゃけトークで生々しく告白しているマンガです。

 刑務所内での延々続く単純作業、脇見するだけで怒られる状況で「覚せい剤を打てば、めちゃくちゃ集中して作業できるのに!」って思っちゃったりとか……。

 薬物依存症リハビリ施設・ダルクの所長に、出所祝いにオゴってもらった食事が「しゃぶしゃぶ」だったとか……。

 自分に覚せい剤を流してくれていたヤクザのTさんがダルクに入所してきたので、一緒に薬物を克服しようということで、指切りげんまんしようとしたら、小指がなかった話とか……。

 いろいろと細かなギャグエピソードを挟んでくるセンスは、さすが元「ギャグの王様」。あまりにあっけらかんとしたノリのマンガなので、もしかしてこの人、全然反省していないんじゃないの? なんて思ってしまうのですが、むしろ「深刻に反省してます」って感じの真面目な人のほうが、精神を追い詰められて再び薬物をやってしまうそうなので、このくらいの軽めのノリのほうがいいのかもしれません。

「オレだって34年やめてるけど、いつまた使っちゃうかわからないもんね。気持ちよかったもんなぁ~。」

「覚せい剤の気持ちよさは一生忘れられないから、自分の意志で薬物をやめられるなんて考えないほうがいいよ、無理だから」

 これらは、ダルク所長の言葉ですが、まさに覚せい剤の怖さを表現しています。薬物依存症は、自分の意志では絶対に治せない病気であると認めることが大事なんだそうです。

 本書を読むと、芸能人のアノ人、ミュージシャンのアノ人、元スポーツ選手のアノ人たちが薬物で何度も捕まってしまう本当の理由がわかりますよ。まあ、一番捕まってるのは、ほかならぬマーシーなわけですが……。

■『アル中ワンダーランド』(まんしゅうきつこ/扶桑社)

 こちらは現在、サウナをテーマとしたエッセイマンガ『湯遊ワンダーランド』(同)が話題のマンガ家・まんしゅうきつこさんが、アルコール依存症だった頃の時代を描いた作品。

 もともと、ブログ「オリモノわんだーらんど」に掲載していたマンガが面白いと話題になってブレークしたまんしゅう先生は、その後に仕事依頼が殺到し、マンガの原稿依頼とブログの更新のプレッシャーからお酒に手を出し始め、アルコール依存症に。仕事のプレッシャーがきっかけになっているところは、マーシーのケースと共通しています。

 アルコール依存症に陥っていた時の日々の生活をマンガにしたという本作ですが、描かれているエピソードがまあ、本気でヤバイです。

 最初に登場するのは、空を飛んでいる飛行機が自分に向かって「地球を大切に」って話しかけてくる「フェイクプレーン」という幻覚について。「フェイクプレーンは実在する!」などと、いきなり力説するまんしゅう先生。素人にはちょっと何言っているかわかりませんよね。

 さらに、トークイベントに酩酊状態で出演し、壇上で突然おっぱいをさらけ出すという暴挙に出るまんしゅう先生。しかも、その時の記憶が一切なかったというのもすごいです。いやホント、酒の恐ろしさがビンビン伝わってきます。

 酒をやめることを誓い、3日間断酒。4日目に一杯だけのつもりで飲酒しながらネットサーフィンし始め……朝起きたらテーブルに空の酒瓶や酎ハイの空き缶が散乱しており、その横に「もう どん底」とメモが残っていたというエピソード、これも相当病んでますね。

 ちなみに、その頃のまんしゅう先生はビールも焼酎も仏壇の脇にあった日本酒も梅酒もドクダミ酒も料理酒も、家にある酒という酒を全部飲んでしまっていたそうで、アル中ヤバイ、これは酒やめないと、って気になります。

 そのほかにも、まんしゅう先生の挙動が不審すぎて、近所にキ○ガイとウワサされたり、オウムの残党がいるとウワサされるなどのエピソードもあり、酒でじわじわと人生が壊されていく過程が描かれていて戦慄します。

 病院で先生にアルコール依存症と診断されるも、誤診だと思い込んで信じないなど、末期的な状態に陥っていたまんしゅう先生ですが、断酒会に参加して、他の依存症患者のヤバイ姿を見たことがきっかけとなり、再び酒をやめようと誓い、現在は見事に依存症を克服したのだそうです。

 ちなみに以前、トークイベントでまんしゅう先生とご一緒したことがあるのですが、その時は全然アブナイ人ではなかったです。本にサインもしてくれたし、普通に素敵ないい人でした。今はサウナにハマって、そっちでトリップしているらしく、実に健康的でよかったよかった。

 というわけで、薬物とアルコール、2つの依存症から脱出したマンガをご紹介してみました。どちらの本も、堅苦しい雰囲気は一切なく、笑いながら軽い気持ちで読めるのですが、最終的にはクスリも酒もめっちゃヤバイんだということがしっかり伝わる読後感になっているので、いろんな誘惑に負けそうな人は、読んでおいて損はありません。

 記念すべき新元号1年目に、クスリや酒で人生を踏み外すことがないようにしたいものですよね。

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

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最後は”おいしくいただく”のがお約束!? 2019年に読みたい「イノシシマンガ」6選

 今年の干支といえば「亥」。つまり猪(イノシシ)ですよ。どうせ三が日過ぎたら忘れられる存在ですが、せめてこの時期だけは注目してあげたい―――。というわけで、今回は「イノシシ」が登場するマンガ特集です。

■『美味しんぼ 』

 僕が初めてマンガでイノシシを認識したのは,『美味しんぼ』でした。出てくるのは21巻に収録の「新しい企画」というストーリーで、主人公の山岡士郎とその一行が、山にイノシシ狩りに出かけていったところ、突如飛び出してきたイノシシに襲われ、大ピンチ……というところで連れてきた猟犬・コロに命を救われます。

 その後は、倒したイノシシで、イノシシ鍋パーティーが始まるのですが……

「イノシシの肉に味噌味が合います」

「イノシシ鍋を牡丹鍋ともいうんです」

「おひょお! イノシシっていうから肉が固いと思ってたら、柔らかいんだね!」

などといった、美味しんぼならではのテンションでイノシシ鍋豆知識が披露され、大変勉強になります。イノシシ肉は柔らかい! 僕はこのマンガがきっかけで、まったく興味のなかったイノシシ情報をゲットできていたのでした。

 

■『山賊ダイアリー リアル猟師奮闘記』

 リアル猟師マンガの先駆けともいえる『山賊ダイアリー』。単行本2巻は表紙がイノシシで、まさしくイノシシがメインともいえる内容です。

 主人公がキジ狩りに行ったところ、たまたまイノシシに遭遇し、イノシシを狩ることに。そこから始まるイノシシのガチ解体ストーリー。

 血抜きや内臓取り出し、皮剥ぎなどなど……解体をしつつも、途中で取り出した心臓(ハツ)を焼いて舌鼓を打ったり。レバーは血抜きのために切れ目を入れて水につける、肋骨と背骨の間にナイフを入れてアバラを外すなどなど、ガチなイノシシ解体の解説がマンガで描かれています。そんなに詳しく描かれたところで、到底真似できないんですが……。

 で、最後は焼き肉になるイノシシ。やっぱりイノシシ肉は脂が乗ってっておいしいそうですよ。なんか来年の干支のはずなのに食われる話ばっかりだな……。

■『罠ガール』

 田舎町の女子高生・朝比奈千代丸。家業が農家で、畑を荒らす野生動物に対抗するため、18歳にして「わな猟免許」を取得。罠をめぐって千代丸と動物の知恵比べが始まる、というマンガです。うーん、マニアック……。森ガール、山ガールときて、ついに罠ガールが出てくる時代ですよ、皆さん。

 その罠ガールが記念すべき第1話でバトルする動物がイノシシなのです。友人の畑を荒らすイノシシに対抗する罠は「くくり罠」。地面に隠しておいて、イノシシが罠を踏んだら、ワイヤーが締まってイノシシの足がギュッとなる罠です。このマンガでもやはりイノシシが突進してきて大ピンチに陥るシーンがあります。

 イノシシが出てくる場合、必ず人間に向かって突進してくるシーンがあるのはマンガ界における法則のようです。猪突猛進とはよく言ったもんです。

■『ミミック』

 お嬢様なルックスでいつもバイオリンのケースを持ち、毛皮のコートを羽織った美少女女子高生、姫小松にしき。まわりからは超お嬢様と思われているが、実はバイオリンケースにはボウガンやサバイバルナイフが入っており、毛皮のコートは買ったものではなく、父親が山で熊を仕留めた際の毛皮を使ったものという、山の中の洞窟でワイルドライフを送っている少女なのでした。

 第1話はにしきの秘密を知ろうと後をついてきた同級生・万星彦が森の中で突如現れたイノシシに襲われたところを、にしきがボウガンで仕留めて助けるというストーリーです。もちろん、仕留めたイノシシのお肉は牡丹鍋にしておいしくいただきました。

 イノシシが出てくるマンガって、展開が似てきてしまうのはどうしようもないのでしょうか……。

■『戦国小町苦労譚』

 こちらは、同名小説をコミカライズした作品です。農業高校に通う歴史大好き女子高生、綾小路静子がある日突然タイムスリップしてしまい、戦国時代へ行ってしまいます。

 命を助けてもらった織田信長に仕えることになった静子は、授業 で習った最新の農耕技術を披露したところ、とんでもない量の米が収穫でき、尾張の国で農業改革を起こしてしまうという、なかなかぶっ飛んだ農耕ファンタジーです。

 イノシシが出てくるのは、単行本2巻第6話で、「稲作ばかりでなく、タンパク源も必要」と猟に出た静子が、突如現れた手負いのイノシシに襲われ、大ピンチのところを猟犬に助けてもらうというもので、イノシシについては安心と信頼の同じパターンでした。

■『鬼滅の刃』

 最後にご紹介するのは、「週刊少年ジャンプ」(集英社)に連載中で、来年アニメ化も決定している作品『鬼滅の刃(きめつのやいば)』です。

 時は大正時代、炭売りの少年、炭治郎の家族がある日、何者かに皆殺しにされてしまいま。唯一、生き残った妹・禰豆子(ねずこ)は「鬼」に変貌してしまっていました。妹を人間に戻し、家族を殺した鬼を倒すため、炭治郎が修行の旅に出るというストーリーです。

 鬼にかまれるとかまれた人間も鬼になってしまうという、いわゆるゾンビ感染系マンガと似ている設定なのですが、イノシシの扱いは、ほかのマンガとは全然違いました。

 単行本3巻から登場し、主人公・炭治郎とともに鬼と戦う、嘴平伊之助(はしびらいのすけ)というキャラクターがいるのですが、イノシシに育てられ、イノシシのマスクをかぶって獣のように戦うのです。他の作品では狩られたり鍋にされたりする運命だったイノシシが、この作品では一躍準主役級のポジションに。まさに、マンガ界におけるイノシシのイメージを覆す、期待の新星といえる存在でしょう。

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 今年の干支「亥」にちなんでイノシシマンガを紹介しましたが、いかがだったでしょうか? イノシシマニアにはたまらない特集だったと思いますが、問題はこのコラムを読む人の中に猪マニアなんているのか、というところです。今年もこんな感じでマンガをご紹介していきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

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全254話! 甘酸っぱい青春が去来する、中高生ラブコメマンガのバイブル『BOYS BE…』

 突然ですが、皆さんは大志を抱いてますか? 「Boys, be ambitious(少年よ大志を抱け)」というクラーク博士の有名な言葉がありますが、僕はせいぜい年末ジャンボを買うぐらいで、そんなに大志なんて抱けてないですが。

 今回ご紹介するのは、その「Boys, be ambitious」にインスパイアされたマンガ『BOYS BE…』です。ただし、「少年よ、大志とかどうでもいいから、彼女ぐらい作っとけ」って感じで、ラブに始まりコメに終わる、オールアバウトラブコメな内容となっています。

 本作は原作・イタバシマサヒロ先生、作画・玉越博幸先生で、1991~96年まで、「週刊少年マガジン」(講談社)に連載されていました。単行本にして32巻分、全254話。ほぼ毎回1話完結オムニバス形式のラブコメになっているため、登場人物も設定も全然違うラブストーリーが5年間、毎週掲載されていたことになります。どんだけラブの引き出し多いんだよ!

 しかも、『BOYS BE…』が終わったと思ったら、ほぼそのままのコンセプトで『BOYS BE… 2nd Season』全20巻へと続くという無限プチプチならぬ無限ラブコメっぷり。もはや、いくらでもラブコメを量産できるラブコメ工場といっても過言ではないでしょう。

 そんな本作ですが、基本的に中高生の恋愛に特化しています。大抵はちょっとさえない男子が、学校で人気の女の子に告白しようか、でもオレなんか……なんてウジウジしながら、最終的に思い切って告白してみたらOKでした! みたいな話とか、幼なじみで全然女子として意識してなかったアイツをある日突然意識し始めて……みたいな話とか、付き合いたてのうぶカップルが、まだキスもしてないけど今日は家に親もいないし、思い切って……みたいな話です。どこかで聞いたことありますよね?

 そんなありきたりなパターンばかりで、254話も作れるのかよ? と思わずツッコみたくなるかもしれませんが、作れるんです! 

■中高生にありがちな甘酸っぱいシチュエーションを、余すところなく網羅

 本作は中高生向けのラブコメですから、とにかく甘酸っぱいのが大前提。弘兼憲史先生の『黄昏流星群』みたいな熟れた恋愛は絶対NGです。そのため、なんでもありというわけではなく、甘酸っぱい恋愛シチュエーションに特化しています。

 いつもケンカしている幼なじみに彼氏ができて、ヤキモチ焼いちゃったり。

 誕生日に手編みのマフラーをプレゼントされちゃったり。

 教育実習に来た先生を好きになっちゃったり。

 自転車のチェーンが外れて困っていた女の子と急接近したり。

 イヤホン左右半分ずつで聴くカップルが出てきたり。

 ……全部、恋愛マンガあるあるじゃないですか? いや、実際はナシナシですけど。そんなに都合よく自転車のチェーン外れている女子なんか見たことないですし、イヤホン左右に分けて聴いてるカップルもリアルでは見たことありません。もし現実にいたら、ハサミで一刀両断したくなりますしね!(ならないか)

■後半はマンネリ防止策で、マニアックなテーマも登場

 とはいえ、これだけ大量の話数ですから、中には“なんだこりゃ!?”というマニアックなストーリーも突発的に出てきます。これがまたいい意味でアクセントになっており、読者を飽きさせずに楽しませてくれるのです。

・自宅で手錠を掛け合って遊んでいたら両手が使えない状態で鍵が開かなくなってしまって、おまけに鍵がシャツの中に入ってしまい、意図せず手錠プレイに発展。

・学園祭の出し物で、ジャイアント馬場の着ぐるみを使って二人羽織をしていた男女が、転んで着ぐるみの中で急接近。

・好きな女の子に貸した帽子にいい匂いが残ってて、ずっと嗅いでいるうちに、学校中の女の子の臭いが気になりだして、嗅いで回るようになる。

・Eカップの彼女の乳輪の大きさが気になって、思い切って聞いたら怒られる。

・エッチする前にマムシドリンクを飲んだのがバレて、女の子に怒られる。

 だいぶマニアックですよね。しかし、たとえジャイアント馬場の着ぐるみが出てこようとも、マムシドリンクが出てこようとも、最終的には甘酸っぱいラブコメとして着地するのが『BOYS BE…』のすごいところなのです。

■ラブコメを科学することで、バッドエンドのない世界へ到達

『BOYS BE…』32巻の最終話では、全254話の統計データが公開されています。

 実は本作ではフラれて終了するバットエンドのパターンはたった3回しかなく、ほとんどの回がハッピーエンド。これは、バッドエンドだった時の読者のアンケートの評価が低かったことから、そのような方針になったのだそうです。まさに科学するラブコメ。緻密な計算に裏打ちされたストーリーだからこそ、これほどの長期連載になったのだといえます。

 そのほか、さわやか中高生ラブコメのイメージがある本作ですが、少年誌のニーズに応えるためか、意外とエッチなシーンも出てきます。統計データによると、パンチラシーンが254話中60回もあるそうです。パンチラ率23.6%。これを多いと見るか少ないと見るかは、人によって意見が分かれるところですね。

■ラブコメが止まらない、今も続く『BOYS BE…』ワールド

 本作はあくまで古き良き時代のラブコメ作品なのかと思いきや、実は『BOYS BE…』ワールドは今もなお続いているのです。

『BOYS BE… 2nd Season』以降も、

『BOYS BE… L CO-OP』6巻

『BOYS BE… pre-season』1巻

『BOYS BE… next season』6巻

などが出ており、現在は「イブニング」で『BOYS BE… adult season』が不定期連載中と、まるで『島耕作』シリーズ並みの息の長さを感じさせます。最終的には『BOYS BE… silver season』まで行ってしまうかもしれません。

 そんなわけで、もはや中高生恋愛のありとあらゆるケースを網羅したラブコメ巨大データベースともいえる『BOYS BE…』をご紹介しました。あらためて読み返してみると、おっさんでも年甲斐もなくキュンキュンできて、若返る気がします。もしかしたら『BOYS BE…』には、思わぬアンチエイジング効果があるのかもしれません。

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

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シュールすぎ! 「無口なゴリラ似の男子高校生」がジワジワ来る『ゴリラーマン』

 ゴリラっぽい面構えの人っていますよね。ガレッジセールのゴリとかFUJIWARA原西とか。そういえば、女優や女性ミュージシャンでもゴリラっぽいと評判の人がいたような……具体的な名前を挙げると問題になりそうなのでやめておきますが、とにかくゴリラっぽい顔の人がいるというのは紛れもない事実であります。

 今回ご紹介する『ゴリラーマン』は、まさしくド直球にゴリラっぽい男子高校生が出てくるマンガ。それ以上でもそれ以下でもない、だけどやたらと面白い。なぜ、主人公がゴリラっぽいだけで、こんなに面白くなるのか? 今回は『ゴリラーマン』の不思議な魅力について迫ってみたいと思います。

 本書は「週刊ヤングマガジン」(講談社)誌上で1988年から連載され、作者はハロルド作石先生。ほかに『BECK』とか『ストッパー毒島』などの代表作があります。

 主人公・池戸定治は、白武高校に来た転校生。顔がゴリラっぽく、無口というところ以外は謎に包まれており、白武高校の不良グループ・藤本軍団と行動を共にするようになります。そのルックスから、「ゴリラーマン」と呼ばれます。

 マンガは『BE-BOP-HIGHSCHOOL』の流れをくむような、いかにもヤンマガらしい不良高校生のドタバタ日常が展開されるのですが、そこに謎の男「ゴリラーマン」の存在があるだけで、とてつもなくシュールで個性的なマンガに仕上がっています。

■一言もしゃべらない主人公

 ゴリラーマンは主人公でありながら、まったくしゃべりません。主人公やヒロインなどの中心人物がまったくしゃべらない作品は、最近だと『ハイスコアガール』の大野晶ちゃんとか、『となりの関くん』の関くんなどが挙げられますが、ゴリラーマンも負けず劣らず、まったくしゃべりません。無口なイメージのあるゴルゴ13ですら、ゴリラーマンに比べたら100倍ぐらいしゃべってます。ネタバレになるのでここでは詳細は書きませんが、ゴリラーマンが作中でたった1回だけしゃべるシーンがあります。それ以外は本当にしゃべりません。

 そんなしゃべらないゴリラ、もといゴリラーマンが主人公であるがゆえに、まるでパントマイムを見ているような空気感があります。悲しい時も、困っている時も、怒っている時も、すべてゴリラっぽい顔芸と身ぶりで表現するだけ。なんともシュールなことになっているのです。

■ケンカ最強なのに、誰も気づいてない

「ほとんどの生徒たちは、ゴリラーマンの本当の恐ろしさをまだ知らない」

 作中にたびたび出てくるナレーションですが、このゴリラーマンの知られざる正体こそが、作品の面白さの中核となる要素です。

 学校の不良グループ・藤本軍団の仲間に引き入れられたゴリラーマンですが、無口でおとなしいのをいいことに、リーダーの藤本らに使いパシリにされたりします。しかし、実はあまりにケンカが強すぎて、過去に暴力沙汰で何度も転校するハメになっているため、自分の正体をひた隠しにしているだけなのです。ケンカはプロ格闘家並みの実力、スポーツも万能で野球をやらせればプロがスカウトしにくるくらいのセンスを持っていますが、ほとんどの生徒はゴリラーマンのすごさに気づいていません。

 白武高校と抗争を繰り広げる間柴高校の不良グループが、登校中の白武高校の生徒を襲うようになり、番長格の藤本までが病院送りにされてしまい大ピンチとなった時も、ゴリラーマンが誰にも見られないように一人で間柴高校に乗り込み、不良グループを全滅させてしまいました。ゴリラーマンのおかげで平穏な高校生活が戻ってきた白武高校ですが、ほとんどの生徒たちはゴリラーマンのおかげであることに気づいていないのです。

 ゴリラーマンのすごさに、周りはいつ気づくのか? それとも最後まで気づかれないのか? そんなミステリアスさもまた魅力なのです。

■次第に明かされていく、ゴリラーマンの秘密

 ほぼ毎回、1話完結型のストーリーである本作。一見すると、なんのオチもないような平凡な学園話であることも多いのですが、実は1話1話少しずつ伏線が張られており、後半へ進むに従ってゴリラーマンの秘密が明かされていきます。逆に言うと、最後まで読まないと、ただのゴリラみたいな生徒のいる不思議なマンガだという印象を持ってしまうかもしれません。

 ゴリラーマンの秘密に迫るシーンといえば、作品中盤で唐突に、顔がゴリラーマンそっくりの、お下げ髪にセーラー服を着た女子高生が自転車に乗って登場します。しばらく話数が進んでから、ようやくゴリラーマンの姉で、実はゴリラーマンよりも強い、そして案外モテるということもわかってきます。しかし、突然女装したゴリラーマンのようなキャラが出てくるインパクトは相当なもので、思わず吹いてしまうこと必至です。

 終盤では、ゴリラーマンとまったく同じ顔の池戸ファミリーが勢ぞろい。父も姉も兄も弟も、全員顔がゴリラーマン。家族全員が一切しゃべらないところも一緒で、一体どうやって家族間のコミュニケーション取ってるんだっていう、これまた卑怯なぐらいに笑えるシーンが出てきます。ゴリラネタだけでこんなに笑いを取れるって、なんてズルすぎる作品なんでしょうか。

 あらためて読んでみると、この『ゴリラーマン』は、ほかの作品に比べて何が魅力なのか説明しづらい、とても不思議な作品ではあるのですが、講談社漫画賞を獲っていたり、OVAアニメ化されたり、ファミコンゲームにまでなっており、当時最も評価されていた作品のひとつだったこともまた事実です。未読の方は、この機会にゴリラ顔が醸し出す独特のシュールな空気感を味わってみてはいかがでしょうか?

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

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突然の”三国志談義”にもスマートに対応! サクッとわかる『三国志』入門講座

 日本人が大好きな歴史マンガの代表作といえば、なんといって横山光輝先生の『三国志』、通称“横山三国志”ですよね。『三国志』こそニッポンのビジネスマンの嗜み、とばかりに日経新聞が“横山三国志”をネタにしたCMを展開したりしており、知っている人には笑えるが、知らない人にはなんのことやら、という状況になっております。

 僕自身の経験でいえば、飲み屋で同僚たちが急に熱い三国志談義を始めて、『三国志』を知らない僕は置いてけぼり。一人でエイヒレをつまみながらハイボールをひたすら飲むという状況に陥ったり、いきなり孔明のLINEスタンプを送りつけられて困惑するなどの経験をしています。こういった“三国志デバイド”な悲劇をこれ以上生まないためにも、今回は誰でも簡単に『三国志』を理解できるようになるための解説をしたいと思います。

 そもそも“横山三国志”とはなんなのか? “西川三国志”もあるのかというと、そんなものはありません。中国には魏・呉・蜀(ぎごしょく)の三国時代(西暦184~280年)について書かれた「三国志(正史)」という歴史書がありまして、その正史をベースに蜀の皇帝・劉備(りゅうび)を主人公とした「三国志演義(えんぎ)」という小説が存在するのです。

 日本では、この「三国志演義」にインスパイアされた作品が多く、吉川英治先生の小説『三国志』や光栄(現・コーエーテクモゲームス)のシミュレーションゲーム『三國志』などが人気となるわけですが、小説版『三国志』を元に、子どもでも楽しめるようにマンガ化して圧倒的支持を得たのが、横山先生によるマンガ版『三国志』なのです。とりあえず“横山三国志”さえ読んでおけば、三国志関連の知識はなんとかなります。

 そうはいっても単行本が60巻、電子書籍化もされておらず、初心者が全巻そろえて読むにはかなりハードルが高い作品です。今回はその“横山三国志”を挫折せず楽しむために必要最小限の、上っ面の部分をご紹介していきたいと思います。以降、本稿では『三国志』=横山三国志のことです。

 まず『三国志』のストーリーを非常に大ざっぱに説明しましょう。主人公は劉備(りゅうび)。母と2人暮らしで筵(むしろ)や草履(ぞうり)などを作っては売って生計を立てる底辺層の青年でしたが、当時民衆を苦しめていたヒャッハーな悪い奴ら、黄巾賊を倒すために立ち上がります。そこで出会った関羽(かんう)、張飛(ちょうひ)という超絶ケンカが強い2人の豪傑と意気投合し、3人で義勇軍として闘っていくうちに、戦国武将としてメキメキと頭角を現し、三国のうちの一国「蜀」を建国。そして、その後になんやかんやで蜀が滅亡するまでを描いたマンガです。

■とりあえず知っておきたい、三国志の主要登場人物9人

 三国志には無数にキャラが登場します。当然ながら、覚えれば覚えるほどドップリと三国志ワールドに浸れるのですが、今回の目的はあくまでも世間に話を合わせるためのにわか知識をつけることが目的ですので、とりあえず最重要な9人だけを押さえておきましょう。

劉備…ご存じ、本作品の主人公にして絶対的センター。ほかの武将に比べて、武力も知謀も秀でているわけではなく、出世欲もそんなになく、いまいちパッとしない感じですが、民衆思いで、仁義を重んじ、裏切りや卑怯な行いを絶対やらないというスタンスを貫くため、劉備を慕って三国志を代表するスター武将たちがどんどん集まってきます。このカリスマ性こそが劉備の持つ特殊能力なのです。

張飛…「桃園(とうえん)の誓い」によって義兄弟となった、劉備・関羽・張飛の桃園三兄弟の末弟で、劉備のカリスマ性に最初に気づいた人物。酒癖が悪く短気で、問題行動が多いのですが、いざ戦いになると一人で千人分の力があるといわれる「一騎当千」状態になります。とにかく信じがたい強さを見せる三国志最強武将の一人です。

関羽…桃園三兄弟の次男。張飛と同等レベルの強さを持つ上、頭脳明晰な人格者で、暴走機関車のような張飛をいさめられる数少ない男ということで、トータル的には張飛よりも高評価されている武将です。劉備は初期の段階で、関羽・張飛という三国志界有数の最強武将2人を部下にできたことが超ラッキーといえます。こんなご都合主義な展開は、ジャンプのマンガでもあんまりないです。

曹操(そうそう)…劉備にとって、最強にして最大のライバルといえば曹操。アムロに対するシャア、ケンシロウに対するラオウみたいな存在です。若い頃から戦術の天才と呼ばれ、三国のうちの一国「魏」を建国。常に中華統一の野望でギラギラしており、スキあらば劉備を潰してやろうと思っています。性格的には劉備とは真逆で、冷酷非道でズル賢いイメージがあり、作品中でもヒールとして扱われています。

呂布(りょふ)…三国志前半の最強キャラ。張飛や関羽でさえ、全盛期の呂布には勝てませんでした。とにかく鬼のように強いのですが、オツムのほうはめっぽう弱めで、文官にそそのかされて軽率に行動しがちです。劉備をはじめとする自分を助けてくれた恩人に対してもすぐに裏切る、超スーパー裏切り者キャラでもあります。最後は貂蝉(ちょうせん)という三国志を代表するハニートラップ美女にハメられた挙げ句、曹操に殺されます。

孔明(こうめい)…劉備率いる蜀軍の軍師として活躍する人物で、三国志における事実上の2代目センター。その存在は、ほぼネ申といえます。なにしろ、孔明の考えた作戦はほぼ100%成功し、敵に壊滅的な被害を負わせる上、誰々がいつ頃死ぬ、みたいな予言までできてしまうので、敵味方含め、みんな孔明の神業にビビりまくり。

 それまでは、「力こそパワー」みたいな武力によるバトルが中心だった『三国志』が、孔明の登場を機に、頭を使って作戦で勝つという頭脳戦中心に変わっていくため、作品としてもがぜん面白くなっていきます。『三国志』の前半を読んであまりハマれなかった人でも、孔明が出てくる21巻ぐらいまでは頑張って読むことをオススメします。

趙雲(ちょううん)…劉備率いる蜀軍で、張飛・関羽に次ぐ第三の最強武将が趙雲。張飛・関羽だけでも十分最強なのに、さらにもうひとり最強武将が追加されるという恐るべき層の厚さ。プロ野球で言ったら、バース・掛布・岡田がいた頃の阪神タイガースみたいな感じでしょうか。この趙雲は、張飛や関羽が年老いてだんだん出番が少なくなってくる中盤から後半にかけて輝く存在です。

孫権(そんけん)…三国のうちの一国「呉」の皇帝となる人物。呉のイケメン軍師、周瑜(しゅうゆ)率いる水軍を使った攻撃が得意です。劉備や曹操に比べると脇役っぽいポジショニングですが、3人の中では一番長生きしたのが孫権でした。

 孫権を覚えるついでにといってはなんですが、孫権の祖父・孫堅や父・孫策も三国志における重要キャラクターですので、まとめて覚えておいて損はありません。

司馬懿(しばい)…作品後半に出てくる魏の軍師。最強すぎて神状態だった孔明に唯一、対抗できたのが司馬懿です。劉備や曹操が病死した後、蜀は孔明、魏は司馬懿が率いることになるのですが、孔明と司馬懿の頭脳対決は『三国志』後半の最大の見せ場といえます。

 正直なところ、司馬懿も孔明の神がかった戦術にはやられっぱなしで、3:7ぐらいで孔明が圧勝しているのですが、孔明が途中で病死してしまうため、最終的に試合に負けて勝負に勝つ感じで、美味しいところを持っていく存在となります。

 こんな感じで独断と偏見で9人だけに絞り込んでしまうと、三国志好きの面々からは、なんだよ、董卓(とうたく)や于禁(うきん)を知らないのかよ、モグリだな! などと批判されてしまうかもしれません。そんな時は、「ああ于禁、アニメ版ではなぜか女だったあの于禁ね!」とかテキトーなトリビアを混ぜつつ相槌を打っておけば、なんとかなるでしょう。

■三国志好きが言いがちな有名イベント、用語

 三国志談義にいっちょ噛みするためには、人物だけでなく、ある程度の有名イベントや用語を理解しておく必要があります。とりあえず下記のキーワードを覚えておくと、ちゃんと『三国志』読んでる感が出せるのでおすすめです。

桃園の誓い…劉備が関羽、張飛という超絶ケンカに強い2人の豪傑と意気投合し、「桃園の誓い」という「オレたちの絆は一生、死ぬ時は一緒」みたいなブラザー感あふれる義兄弟の契りを交わした『三国志』初期の有名イベントです。

 この契りは、3人の義兄弟の固い絆を示す美しいエピソードとして語られることが多いのですが、作品後半で関羽が死んだ後、張飛や劉備は冷静さを失い、後を追うように死んでしまうことから、個人的にはむしろ、何かの呪いの一種なんじゃないかという気がしないでもないです。

三顧の礼…劉備が天才軍師・孔明を自分の軍にスカウトするために、何度も孔明の家に出向き、一度目は不在、2度目も不在、3度目になってようやっと孔明に会うことができたのですが、孔明はわざわざ3回も会いに来てくれた劉備に感激して仲間になってくれたというエピソードです。ビジネス書なんかを見ると、「三顧の礼」の精神こそ究極の営業術だ! みたいなことが書いてありがちですが、今はスマホもありますし、ちゃんとアポを取って会いに行くべきだと思います。

赤壁(せきへき)の戦い…基本的に『三国志』は、最大勢力である曹操の魏軍をいかにやっつけるか、劉備の蜀軍や孫権の呉軍がいろいろと頭を悩ませる話ですが、最強であるはずの曹操が、一度完膚なきまでにやられてしまう有名エピソードが「赤壁の戦い」です。

 曹操率いる魏軍が、呉軍の火計によってボッコボコにやられてしまうのですが、その決め手となったのが、孔明が儀式によって呉軍に有利な「東南の風を吹かせる」というものでした。実際には、孔明はこの時期に東南方向に強風が吹くことを知っていたのですが、わざわざ祭壇で儀式をやって、さも孔明が神風を起こしたように思わせたのです。こんなスーパーイリュージョンを見せられたら、誰もが孔明のことを神だと思っちゃいますよね。

孔明の罠…中華全土の武将や軍師たちを戦慄させるのが「孔明の罠」です。とにかく孔明は敵の作戦の裏の裏の裏の裏ぐらいまで読んだ上で、トリックを仕掛けてくるので、敵はほぼ100%の確率でまんまと孔明’sトラップにやられてしまうのです。孔明に対峙する相手は、何度も罠にハメられているうちに疑心暗鬼になってしまい、“孔明のことだから絶対何か罠を仕掛けている”と考えて身動きが取れなくなってしまうのです。

 ちなみに、後半に出てくる孔明の最大のライバル、司馬懿の「待てあわてるな、これは孔明の罠だ」というセリフはLINEスタンプになるほど有名です。

「ジャーンジャーンジャーン」「むむむ」「げえっ」…この3つは『三国志』の頻出フレーズです。「ジャーンジャーンジャーン」というのは、敵に攻撃を仕掛ける際に、ドラを一斉に鳴らして相手を混乱させる時の音です。「むむむ」と「げえっ」は作品中の有名武将たちがこぞって言うセリフで、用途としてはそのまんまなのですが、ネタとして「むむむ」と「げえっ」がやたらに多いマンガだということは知っておいたほうがよいでしょう。

■劉備玄徳? 諸葛亮孔明? 呼び名の謎

 ネット上の三国志関連の記事を見ていると「劉備玄徳」とか「諸葛亮孔明」という表記を見かけます。劉備が名字で玄徳が名前だから当然でしょ? と思うかもしれませんが、実はこれは間違いです。

 当時の中国人の名前は「姓・名・字(あざな)」と分かれているのが一般的で、「劉・備・玄徳」や「諸葛・亮・孔明」のように分割されるのですが、TPOに合わせて「姓&名」か「姓&字」の組み合わせで呼ぶのがルールなのです。

『三国志』では特に解説もなく「劉玄徳」とか「諸葛孔明」「諸葛亮」などの呼び方が出てくるので、誤植かな? と思ってしまうのですが、実はこれが正しい表現なのでした。「劉備玄徳」とか「諸葛亮孔明」とか得意げに言っちゃってる人は実は間違っているので、心の中でほくそ笑んでやるのがいいと思います。

 というわけで、時間がない人が上っ面だけ知るための、横山光輝『三国志』入門講座でした。これで、突然の同僚の三国志談義にもバッチリ対応できるはず……なのですが、曹操が主人公のマンガ『蒼天航路』の話をされると全然通用しないことが先日判明しましたので報告しておきます。こういう時は「孔明の罠」だと思ってあきらめるしかありませんね。

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

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伏線多すぎなのに、結局何もわからない! パニックホラーの最高峰『ドラゴンヘッド』とは?

 名作といわれるマンガの重要な要素、それは「伏線」ではないでしょうか。いかに作品中に多くの伏線をちりばめ、ラストまでに美しく回収するか、そして伏線が張られれば張られるほど作品は壮大になり、面白くなっていくともいえます。

 もちろん、伏線を張りまくり、大風呂敷を広げまくった挙げ句にまったく回収されないまま打ち切られてしまったマンガもあり、これは世間的にはガッカリ作品の評価を与えられてしまいます。

 ところで、世の中にはさんざん張りまくった伏線をほとんど回収することなく、むしろ「伏線? 張ってたっけ?」ぐらい開き直ったラストシーンを描いてるにもかかわらず、傑作と評される突然変異的作品も存在します。それが、今回ご紹介する『ドラゴンヘッド』です。

『ドラゴンヘッド』は望月峯太郎(現・望月ミネタロウ)先生による作品で、1994~99年の期間、「週刊ヤングマガジン」(講談社)誌上で連載されていました。

 修学旅行中に突如として大地震が発生、主人公の中学生、青木輝(テル)たちの乗っていた新幹線は大事故を起こし、崩落したトンネルの中に閉じ込められてしまいます。血みどろの惨劇となった新幹線の中の生き残りは、テル、アコ、ノブオの3人のみ。外界との連絡手段が完全に遮断されたトンネルという暗闇の中で、どうやって生き残るのか……。いわゆる、パニックマンガやサバイバルマンガに分類されるようなストーリーなのですが、かつてないインパクトのある描写がちりばめられており、さらに連載開始の翌年に阪神淡路大震災が発生したこともあり、パニックマンガの代表的な存在として語られるようになります。

 パニックマンガ・サバイバルマンガは実に多種多様ですが、地震や火山の噴火が原因の自然災害もの、放射能汚染や戦争が原因の人災もの、感染してゾンビになったりするアウトブレイクものなどがあります。では、『ドラゴンヘッド』はどれに属するのか? 地震や火山噴火のシーンが出てくるので自然災害もの……であるかのように語られがちですが、実は本当の原因がよくわからないのです。とにかく誰もハッキリしたことを教えてくれない。携帯電話もなく、ラジオもテレビも役に立たない。情報がなさすぎることによる「恐怖」が、本作品の特徴です。スマホ依存症の皆さんは、スマホをなくすと不安になりますよね? あれの1万倍ぐらい怖い状況だと思ってください(違うかも……)。

■前半の超ヤバい奴、ノブオ

『ドラゴンヘッド』では、要所要所に「超絶ヤバい奴」が登場して、ストーリーを盛り上げてくれます。作品前半、崩落したトンネル内で生き残った3人のうち、ノブオが超ヤバい奴でした。

 もともといじめられっ子でオドオドしている割に、神経質でキレやすいタイプのノブオ。周りは死体だらけ、トンネル内での暗闇と異常な暑さ、助けが来るあてはなく、食料もいつ底をつくかわからないという極限状況で、幻覚が見え始め、狂いだします。

 そしてたぶん、一度本作品を見たらインパクトがありすぎて脳裏にこびりついて忘れられなくなるのが、狂ってしまったノブオの全身ペインティング。落ちていた化粧道具を使って、口や目の周りには口裂け女みたいな隈取りを描き、全身には爬虫類のような斑点をペイントするという、常人には考えつかないセンス。とにかくキモい!

 さらに、眠っているアコの服を脱がせて同様のペイントをして、その場でマスターベーションをしてアコの体に射精するという変態行為をしたり、嫌いだった生活指導教師の死体を包丁で解体し、いけにえの儀式を始めるなど、エクストリームな狂いっぷり発揮してくれます。ただでさえ極限状態なのに、生き残りの1人が狂ってるとか、もう地獄絵図ですよね。

 結局、テルとアコだけがこのトンネルを脱出。ノブオはトンネルの中に残り、生死不明の状態となります。悪魔の化身となったノブオがラスボスとなって、再び現れるなんて展開もありそうでしたが……結果として再登場はありませんでした。これだけ強烈なキャラなのに、伏線でもなんでもないんかーい!!

 

■中盤の超ヤバいやつ、リュウズ

 トンネルを脱出し、東京に向かうテルとアコを待ち受ける外の世界も、まさしく地獄絵図。降り注ぐ灰で昼間なのに夜のように暗く、あらゆる建物は地震で倒壊し、がれきの山。人の気配もほとんどなく、いまだにこの世界にどんな災害が起こったのかまったくわかりません。とにかく核心に迫る情報は一切描かれない、超もったいぶる系マンガなのです。

 そんな中、自衛隊を逃げ出した仁村・岩田という2人の自衛隊の生き残りと行動を共にするようになったテルとアコ。破傷風になってしまったテルの薬の調達のために廃病院に向かったアコは、傷だらけの頭を持つ謎の人物と出会います。自分のことを「竜頭(リュウズ)」と名乗るこの男は、全身がげっそりと痩せこけ、感情がなく目がうつろで、たまにたどたどしく意味のわからない内容をしゃべるだけという、ノブオに匹敵するヤバいビジュアルのキャラクターですが、実は脳の手術により扁桃体や海馬を取り除き、恐怖など一切の感情をなくしてしまった人物なのです。

「竜頭」=『ドラゴンヘッド』という、作品タイトルといかにも関連がありそうなキャラクターで、実際、この大災害に関する秘密を何か知っていることは間違いないのですが、とにかくコイツ、何言ってるんだか全然わかりません。

「ホ…ク…サイ…の…エ…だ…よ…あれ…と…そっ…く…り…の…み…んな…見た…東…京…で…」

「そ…れ…で…い…つ…から…か…だ…誰か…が…た…たとえ…て…りゅ…りゅうず…て…」

 すごく意味深なのに、何もわからないセリフ。はあ? なんで急に北斎? ていうか、なんで倒置法? みたいな。読者のモヤモヤ感だけが、着実に募っていきます。本作は、とにかく作品中のあらゆるところに、こんな感じの意味ありげな描写が張り巡らされているのです。

■原因は富士山の噴火なのか、そうでないのか? どっちなんだコノヤロー!

 度重なる大地震、そして津波、倒壊する建物、降り注ぐ灰と泥流、空に立ち込める黒雲、落雷、火災旋風など、災害という災害が次から次へと襲いかかってくる『ドラゴンヘッド』ですが、どうやら富士山の噴火が原因らしい、という描写がチラホラ出てきます。

 しかし、富士山自体も噴火の威力で丸ごと消し飛んでしまっており、日本列島の半分近くが海に沈み、壊滅状態……などなど、明らかに富士山の噴火だけが原因ではないレベルの大災害で、核兵器の使用か、はたまた巨大隕石の影響なのか、もしくはそれ以外の人為的な何かが原因なのか、といろいろなことを想像させます。「放射性物質マーク」「葛飾北斎の絵」「木花咲耶姫命」「SSRI-EX」みたいな意味深なキーワードの伏線がたくさん出てくるのですが、まともな説明は一切なし。やはり徹底的に核心には触れてくれない作品です。

 

■結局、何が言いたかったのか?

 本作品はリアルタイムでは途中から隔週連載になったり休載が多かったこともあり、なかなかストーリーを追うことができず、単行本で初めてラストを知った人も多いのではないかと思います。実際、僕もその一人です。終始ハラハラドキドキで、あっという間に読み進められる作品なのですが、全10巻のうち9巻まで読んで、実はなんにも謎が判明していないことに気づき、読んでいるこっちが焦り始めます。そういう意味でも、ホラーです。

「あと残り1巻で、これどうやって収拾つけるの?」と思っていたら、9巻の半分ぐらいを過ぎてから、たたみ込むような説明セリフで文字数が激増。あれよあれよという間にラストシーンへ、えーこういうラストなの! なんかわかったような、わかんないような……こんなんアリ!? という感じの終わり方をします。

 ドラゴンヘッドとは結局なんだったのか……に関する考察はネットでも諸説あり、筋の通った考察も多数出ておりますが、本当の答えは望月先生のみぞ知るといったところでしょうか。

 人間の心に宿る「恐怖」という感情の深層に迫る大傑作なのか、単にオチを放り出しただけの問題作なのか、賛否両論の『ドラゴンヘッド』ですが、伏線を回収しようが回収しまいが、面白いものは面白いということを証明した作品でもあります。世の中にはマンガがあふれてるから、こういうマンガがひとつぐらいあってもいいかもしれませんね。

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

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現代の男は宮本成分が足りない! サラリーマンのバイブル『宮本から君へ』で仕事と恋愛を学ぶ!!

 今日もお仕事ご苦労さまです!! 日刊サイゾー読者の皆様の中には、ビジネスマンの方も多数いらっしゃると推察されます。近年のデキるビジネスマンと言えば、スマホ片手にノートPCを携え、スマートに仕事をこなすITサラリーマンのイメージですよね。しかし、スマートなだけがビジネスじゃありません。今時のビジネスマンがもう一皮むけるために、ぜひ読んでもらいたい作品があります。この4月からテレビ東京でドラマ化もされた『宮本から君へ』というマンガです。

 バブル時代の浮かれきった風潮に、冷水を浴びせるような衝撃的なシーンで、当時の読者をドン引きさせた悪名高い作品である一方、後年はサラリーマンのバイブルとして評価されたマンガでもあります。今回は読む人によって評価が真っ二つに割れてしまう伝説のマンガ、『宮本から君へ』で、現代のビジネスマンが知らない、仕事と恋の成功の秘訣を学んでみたいと思います。

 主人公・宮本浩は、マルキタという文具メーカーの新人営業マン。営業成績は決していい方とはいえず、取引先との人間関係もうまくいかず、同僚たちと居酒屋で愚痴を言い合う日々。スマートじゃないし、非モテだし、出世とも無縁で、おまけに自己中で頑固という、島耕作の対局のような生き様のサラリーマンです。

 そんな宮本は、通勤電車でいつも見かけるトヨサン自動車のOL・甲田美沙子にひと目惚れしてしまいます。それからというもの、毎日同僚に恋の相談してはイジイジしていて、仕事もままならない状況でしたが、ついに勇気を出して声をかけ、それがキッカケで次第に美沙子と親密な中に……そんな出だしのストーリー。ずいぶんとヌルい展開で、なんてことのない普通のダメサラリーマンマンガじゃないか……という印象を持ってしまうかもしれません。しかし、この前半で読むのをやめてしまうと、この後に待っている熱い超展開を見逃してしまうことになります。

 というわけで、『宮本から君へ』の何がスゴいのか? その名シーン・衝撃シーンをご紹介していきましょう。

 

■女に振られてパンツ一丁で極寒の海に入水、そして絶叫

 

 ひと目惚れした甲田美沙子との距離が次第に縮まったある日、会社をサボって2人で海を見に行くという、もうこれ完全に付き合えるだろという雰囲気のデート。美沙子の肩を抱き寄せて、ついに告白するぞ……というその瞬間、美沙子は付き合っていた男に捨てられたばかりだという告白をし始めます。なんでそのタイミングで! ワザとか? ワザとなのか?

 美沙子に男がいたとは知らず、告白する気マンマンだった宮本は、不意をつかれて気が動転。突然服を脱ぎ出してパンツ一丁になり、極寒の海の中に入って波に打たれながら絶叫を始めます。

「甲田美沙子が普通のやつなんかに捨てられちゃだめだろ!!」

「こういう時!! 側にいて!! 優しくするのが俺は!! 許せないから」

 傍から見るとマジ異常行動。彼氏にフラれたって言ってるんだから、別に告白してもいいと思うんですが、そこは男としてのプライドが許さない宮本。わかる、それはわかるが、突然パンツ一丁になるのは、よくわかりません。しかし、この後ぐらいから宮本は急激にモテはじめます。本当の愛には狂気が宿るもの……時には行動が異常なぐらいのほうが逆にモテる、そういうことじゃないでしょうか?(異論は認めます)

 

■謝っているはずなのに、いつのまにか相手を威嚇している攻撃的土下座

 

 宮本が働いている文具業界は、新規取引先には仲卸業者を仲介してクライアントに納品するため、仲卸業者には頭が上がりません。しかし、その仲卸の担当者・島貫部長がスゲー嫌なヤツなのです。常に全力で常に真っ直ぐな男・宮本は、露骨に賄賂を要求してくる島貫部長の要求を頑として呑まず、正攻法で営業をしてくるため、徹底的に嫌われます。

 自分の提案内容をなんとかクライアントにプレゼンしたい宮本、しかし島貫部長が見積書を書いてくれない限り、プレゼンができない……嫌がらせで見積書を書いてくれない島貫部長に対して取った、宮本の行動は……なんのひねりもない怒涛の土下座攻撃。

 オフィス街の路上のアスファルトに頭を擦り付けた土下座スタイルで、逃げようとする綿貫部長の行く手を阻みます。避けようとすると、四つん這いのまま高速移動して、再び行く手を塞ぎ土下座。最終的には道路のど真ん中で土下座をして渋滞まで引き起こし周囲の大注目を浴び、ついに島貫部長が根負けするのです。

 どうせ土下座するなら相手が嫌がる「攻めの土下座」をするべし、そんなビジネス土下座道を宮本から学ばされるシーンです。(周囲はすごい迷惑ですが)

 

■付き合う女をイイ女にしてしまう究極能力

 

 甲田美沙子にフラれた後、職場の先輩・神保の紹介で出会った年上の女、中野靖子は宮本にとって人生を左右する重要なパートナーになります。

 靖子の初登場シーンは、どう考えても二軍以下のルックスで、ツリ目のおせっかいババア。性格は気が強くてかわいげがないサバサバ系。いくらなんでも、これはヒロインにはなりえない、ただの脇役だろう、という存在でした。しかし、登場シーンを重ねるごとに、靖子のババ臭さが少しずつ減衰されていき、魅力的になっていくのです。しかも、ちょっと見ただけでは変化がわからないところがポイント。ほんの少しずつジワジワとイイ女になっていき、気がついたら作品中で最もカワイイ女に変貌を遂げていました。

 付き合う女をいつの間にか美人にしてしまう、この宮本の持つ謎のフェロモンこそ、最高の男である証明ではないでしょうか。

■サラリーマンにあるまじき異常なケンカっ早さ

 

 宮本は、新人営業マンでありながら、まっとうな社会人とは思えないほどのケンカっ早さで、そんじょそこらの任侠マンガのヤクザよりも、よっぽどキレやすい性格かもしれません。

 ライバルの文具メーカー・コクヨンの営業マン、益戸の挑発に乗って、客先で取っ組み合いになったり、カラオケスナックで酔った勢いでボクシング経験者と殴り合ったり、しかもケンカが強いかというと、別にそうでもなく、ほぼ全敗。作品中盤以降は、スーツ姿なのに頭に包帯を巻いていたり、腕にギプスをはめていたり、前歯が折れていたり、いつも満身創痍の状態で、どう考えても堅気のサラリーマンとは思えません。

 しかし、そのケンカっ早さにより仕事も恋愛も結果として好転してしまうのが宮本のすごいところです。もしかしたらサラリーマンが不利な状況を打開ために、時には後先考えずケンカをしてみるというのも一つの手なのかもしれません。(逆に会社クビになるかもしれませんが)

 

■作品後半の地獄のような鬱展開にドン引きする読者が続出

 

 本作品最大の問題シーンは、作品後半、宮本と靖子がラブラブで幸せモード全開、おまけに仕事も絶好調、という状況の中、突如として靖子が屈強なラガーマンにレイプされてしまうシーンがやってくるところです。しかも恋人であるはずの宮本が酔いつぶれているその横でのレイプ、という二重の意味での衝撃。

 以前ご紹介した『愛しのアイリーン』同様、幸せの絶頂から不幸のドン底に叩き落して読者をビビらせる、新井英樹イズムの真骨頂とも呼べるシーンですが、連載当時はあまりに凄惨なこのレイプシーンが原因で、連載終了が早まったともいわれています。

 本作品では何かとこのシーンが取りざたされがちなのですが、その後に宮本が、肉体的にも人格的にも別キャラクターとして進化し、壮絶な闘いの末に因縁のラガーマンに復讐を果たすシーンまでをセットで読むことで、作品の印象がだいぶ変わってきます。

 

■相手のことを一切考えない、超自己中なプロポーズ

 

 レイプシーン以降、誰の子かわからない子どもを身ごもった靖子。宮本は、誰の子であっても受け入れると、靖子へプロポーズするつもりでした。一方で靖子は誰とも結婚せず、シングルマザーとして生きることを決意していました。

 ラガーマンへの復讐を果たした後、それまでの人格とは全く変わって豪快なキャラになった宮本は、”俺が幸せになれば結婚相手も幸せになる理論”で、恐ろしいほど自己中なプロポーズを繰り返します。

「いいじゃねえか結婚、してちょうだいよ靖子ちゃん、チマチマ考えてねえでさっさと返事しやがれこのクソったれ」

 なんという斬新なプロポーズ。このセリフでどうやったら相手がOKすると思えるんでしょうか。しかし、その後の自己中プロポーズは、もっとすさまじいものでした。

「あきれようが嫌おうが、そんなこと屁でもねえ、お前がどんなに思おうと知ったこっちゃねえ、でも俺がこの先一生ずっと死ぬまで側にいてやる」

「子供は俺の子、俺こそがすげえ父親ら、大盤ぶるまい、お前らまとめて幸せにしてやる、俺の人生バラ色だからよお」

 あくまで根拠のない自信で押し切る宮本。そして、ついに受け入れる靖子。本作品で最も泣けるシーンですが、やはりここまで自信たっぷりに押されると、女性も思わずOKしちゃうものなんでしょうか。宮本流、最高にロックなプロポーズ。結婚する予定のある方はぜひ使ってください!(無責任)

 というわけで、賛否両論ありまくり、破天荒すぎるサラリーマンを描いたマンガ『宮本から君へ』をご紹介してみました。結局のところ、本作品のテーマはほぼ仕事と恋愛のみ。今回ご紹介したシーンにかかわらず、ほぼすべてのシーンで常に全力、常に熱くて、常に自己中という宮本の姿を見ると、良くも悪くも、心の中に強烈な何かが残ることは間違いありません。サラリーマンなら一度は読んでみて損はない作品です。
(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

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女子力のない男子は読んではいけない!? 未完の大ヒット少女マンガ『NANA』

 皆さんにとって、名前が「ナナ」の芸能人といったら誰でしょうか? 小松菜奈、水樹奈々、片瀬那奈、榮倉奈々、鈴木奈々、夏目ナナ、木の実ナナなどなど……いずれ劣らぬ大物ナナばかりですが(最後は別格)、今回ご紹介したいのは、ある意味日本一有名な「ナナ」、大ヒット少女マンガの『NANA』(集英社)であります。

 少女マンガの単行本発行部数では歴代3位、アニメ化、ゲーム化、映画化もされました。映画でヒロインを演じた中島美嘉や宮崎あおいは、この映画がきっかけでブレイク。作品の影響でルームシェアをする女子が続出……などなど、社会現象にまでなったカリスマ少女マンガ『NANA』ですが、それ故に男子にはとっつきづらく、敬遠したくなるような、少女マンガ色が特に濃い作品でもあります。今回はそんな『NANA』を、名前は知っているけど読んだことがない男子向けにご紹介したいと思います。

『NANA』は集英社の少女マンガ雑誌「Cookie」で2000年から連載中のマンガです。え? 連載中だったの!? ……そうなんです、実は『NANA』はまだ完結していません。作者・矢沢あい先生の急病により09年から休載となっており、単行本の最新刊となる21巻も同年に発売されたままです。当時『NANA』を愛読していた少女たちは、かれこれ9年間も22巻の発売を待ち続けているわけですが、いまだに発売のめどは立っていません。

 そんな『NANA』のストーリーをざっくり紹介すると、恋に生きる女・小松奈々と、男勝りなヴォーカリスト・大崎ナナという性格もルックスも真逆の2人のNANAの友情を中心に、「ブラスト」と「トラネス」という人気バンドのメンバー&関係者の泥沼な恋愛模様を描いた作品です。

 これだけだと、あまりに紹介が薄っぺらすぎて、『NANA』の魅力が全く伝わらないと思うので、多くの女子たちを虜にしてきた『NANA』のスゴい部分を詳しくご紹介していきたいと思います。

 

■斬新なプロローグ

 

『NANA』は単行本第1巻をまるまるプロローグに使う大胆な構成となっており、これから起こる物語の壮大さを予感させます。1巻の前半が小松奈々、後半は大崎ナナ、2人がそれぞれ上京することになるまでのエピソードが別々に描かれており、2巻になって初めて2人のNANAが出会います。

 奈々とナナは、たまたま東京行きの新幹線で隣同士となり、年齢も名前も同じということで意気投合。東京駅で連絡先も聞かずにそのまま別れたはずだったのに、部屋探しをしている時に再会。たまたま同じ物件を内覧に来ていたのです。そして運命の再会を果たした2人は、そのままルームシェアをすることに。しかも、その部屋番号は偶然にも707号室! ベタなぐらいにドラマティックな奇跡のオンパレードです。

 

■小松奈々の尻軽さがスゴい

 

 Wヒロインの片割れ、小松奈々は、常に男と付き合っていないと生きていけない恋愛依存体質。サラリーマンと不倫していたかと思えば、上京してからも立て続けに彼氏を3回乗り換えるなど、とにかくイケメンに目がありません。

 しかし作品の「陽」の部分を支えるムードメーカーでもあります。とにかく明るくてポジティブ。彼氏に二股かけられても、前彼との間に子どもができたのが発覚して彼氏と修羅場になっても、ポジティブポジティブ! 客観的に見て、かなりの地雷女なのですが、彼女こそが作品を盛り上げる最重要人物と言えます。

 ちなみに作品中での奈々のあだ名は「ハチ」です。大崎ナナと区別するために「ハチ(8)」と呼ばれるようになるのですが、「ハチ」が転じて「ハチ子」「ハチ公」そして「犬」などと呼ばれるようになったりして、なかなか酷い主役の扱いです。でもポジティブ!

■大崎ナナの心の闇がスゴい

 

 もう一人のヒロイン、大崎ナナは言うなれば本作品の「陰」の存在。パンクロックバンド「ブラックストーンズ(通称:ブラスト)」のカリスマ女性ヴォーカリストとして、常にパンキッシュでクールなファッションに身を包んでおり、男勝りな性格で、いわゆるサバサバ系なのですが、幼少期に母親に捨てられたことや、学生時代は友達が全然いなかったことなど、複雑で謎の多い生い立ちが、常に暗い影を落としています。

 男関係では、もともとブラストのメンバーで、メジャーバンド「トラップネスト(通称:トラネス)」に移籍した本城蓮(レン)と恋人関係にあります。レンに一途なナナは、レンの首に南京錠のネックレスをつけ、その鍵はナナが持っているという「シド&ナンシー」を彷彿とさせるエピソードがあったり、蓮(レン)の名前からとった蓮(はす)のタトゥーを腕に入れていたりなど、浮気でもしようもんなら後ろから刺しそうな勢いです。

 ナナは作品中盤までは、とにかくクールでカッコいいキャラクターなのですが、親友だった奈々がトラネスのリーダー・タクミとデキちゃった婚をして距離ができたことや、レンとの関係性が悪くなってきたことで、次第に情緒不安定な鬱っぽいキャラクターになっていきます。

 

■サークルクラッシャーの歌姫・レイラ

 

 天使のような歌声を持つハーフの歌姫、「トラネス」のヴォーカリスト・レイラは、作品中で圧倒的な歌唱力を持つ聖なる存在として描かれていますが、芸能人として常に周りから注目されているが故に、自由に恋愛ができず欲求不満に陥ります。結果として、ナナの恋人(のちに夫)・レン、奈々の夫・タクミ、ブラストの未成年ベーシスト・シンなどの身近な男子たちにちょっかいを出し、いろんなトラブルを巻き起こします。

 特に、作品後半ではレイラに関わった男たちは、逮捕されて留置所に行ったり、写真週刊誌にスキャンダルを報じられたり、交通事故に遭ったり……と、ことごとく不幸になるという、疫病神的存在になります。『NANA』の地雷女といえば小松奈々だったはずなのですが、それ以上の逸材が現れたのです。これこそまさにサークルクラッシャー。

 

■イケメンだからクズでも許されるバンドマンたち

 

 本作品に出てくる男性キャラクターは、ナナの所属する「ブラスト」やレンの所属する「トラネス」のメンバーが中心で、当然のことながら9割方イケメンです。

 ブラストのリーダー「ヤス」は弁護士の資格も持っており、困っている人がいたら放っておけない心優しきナイスガイ。スキンヘッドにサングラスで見た目はかなりイカツいけど、頼れるいいやつです。

 ブラストのギター「ノブ」は実家が旅館をやっているお坊ちゃま育ち。学生時代に孤立していたナナをバンドに誘ったのがノブでした。とても優しい性格の持ち主で、奈々に振られた後は、未練タラタラでAV女優と付き合っているナイスガイです。

 ブラストのベース「シン」は未成年でありながら、お金を持ってるお姉さんたちにウリをして、生計を立てている小悪魔的イケメンですが、どこか憎めない、いいやつです。

 トラネスのリーダーで奈々とデキ婚した「タクミ」は、女癖が悪く、暴君とあだ名されるほど暴力的な部分もありますが、機嫌のいい時はとても優しい。トラネスをメジャーバンドに押し上げるほどの才能を持つナイスガイです。

 トラネスのギター「レン」は、ナナと出会う前は女を取っ替え引っかえしていましたが、ナナに会ってからは、すっかり一途な男です。ヤク中だけどナイスガイです(ダメじゃん)。

 そんな感じで『NANA』の世界では男たちはみんな女子に優しい王子様。ちょっとばっかりクズもいるけど、女子を虜にする魅力に溢れているのです。

 

■不穏なポエムが心をかき乱す

 

『NANA』は、さすが大ヒット少女マンガだけあって、不倫、妊娠、リスカ、ドラッグ、恋人の死などなど……少女マンガで盛り上がりがちなドロッドロ要素が余すところなくストーリーに盛り込まれています。

 さらに、作品をドラマティックに盛り上げているのが、毎回ストーリーの冒頭に挿入される不吉な将来を暗示させるモノローグ。

あれだけいつも一緒にいたのに

少しもナナの事

分かってなんかいなかった

傷つけている事にさえ

気づかなかった

あたしを許して

ねえ ナナ

今も恋する乙女達は

ナナの歌を聴きながら

ナナとレンの物語を

語り継いでいるよ

だけど あたしが見たかったのは

あんな悲しい結末じゃなかったのに

……などなど、ええっ、将来いったい何があるのー!? ってなりますよね。どう考えてもバッドエンドに向かっている感じが不穏過ぎます。しかもこれだけ将来に向けて伏線を張っていながら、連載が止まっていて結末がわからないもどかしさ。

 というわけで、モテ系バンドでチャラついた美男美女がキャッキャウフフするラブコメだと思って読むと、実は重~い裏テーマが潜んでおり、大ヤケドしかねない少女マンガ『NANA』をご紹介してみました。男子も、己の中に持つ女子力を全力で開放して読まないとメンタルがやられてしまうかもしれません。そのぐらいパワーをもった作品といえるでしょう。
(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

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女子力のない男子は読んではいけない!? 未完の大ヒット少女マンガ『NANA』

 皆さんにとって、名前が「ナナ」の芸能人といったら誰でしょうか? 小松菜奈、水樹奈々、片瀬那奈、榮倉奈々、鈴木奈々、夏目ナナ、木の実ナナなどなど……いずれ劣らぬ大物ナナばかりですが(最後は別格)、今回ご紹介したいのは、ある意味日本一有名な「ナナ」、大ヒット少女マンガの『NANA』(集英社)であります。

 少女マンガの単行本発行部数では歴代3位、アニメ化、ゲーム化、映画化もされました。映画でヒロインを演じた中島美嘉や宮崎あおいは、この映画がきっかけでブレイク。作品の影響でルームシェアをする女子が続出……などなど、社会現象にまでなったカリスマ少女マンガ『NANA』ですが、それ故に男子にはとっつきづらく、敬遠したくなるような、少女マンガ色が特に濃い作品でもあります。今回はそんな『NANA』を、名前は知っているけど読んだことがない男子向けにご紹介したいと思います。

『NANA』は集英社の少女マンガ雑誌「Cookie」で2000年から連載中のマンガです。え? 連載中だったの!? ……そうなんです、実は『NANA』はまだ完結していません。作者・矢沢あい先生の急病により09年から休載となっており、単行本の最新刊となる21巻も同年に発売されたままです。当時『NANA』を愛読していた少女たちは、かれこれ9年間も22巻の発売を待ち続けているわけですが、いまだに発売のめどは立っていません。

 そんな『NANA』のストーリーをざっくり紹介すると、恋に生きる女・小松奈々と、男勝りなヴォーカリスト・大崎ナナという性格もルックスも真逆の2人のNANAの友情を中心に、「ブラスト」と「トラネス」という人気バンドのメンバー&関係者の泥沼な恋愛模様を描いた作品です。

 これだけだと、あまりに紹介が薄っぺらすぎて、『NANA』の魅力が全く伝わらないと思うので、多くの女子たちを虜にしてきた『NANA』のスゴい部分を詳しくご紹介していきたいと思います。

 

■斬新なプロローグ

 

『NANA』は単行本第1巻をまるまるプロローグに使う大胆な構成となっており、これから起こる物語の壮大さを予感させます。1巻の前半が小松奈々、後半は大崎ナナ、2人がそれぞれ上京することになるまでのエピソードが別々に描かれており、2巻になって初めて2人のNANAが出会います。

 奈々とナナは、たまたま東京行きの新幹線で隣同士となり、年齢も名前も同じということで意気投合。東京駅で連絡先も聞かずにそのまま別れたはずだったのに、部屋探しをしている時に再会。たまたま同じ物件を内覧に来ていたのです。そして運命の再会を果たした2人は、そのままルームシェアをすることに。しかも、その部屋番号は偶然にも707号室! ベタなぐらいにドラマティックな奇跡のオンパレードです。

 

■小松奈々の尻軽さがスゴい

 

 Wヒロインの片割れ、小松奈々は、常に男と付き合っていないと生きていけない恋愛依存体質。サラリーマンと不倫していたかと思えば、上京してからも立て続けに彼氏を3回乗り換えるなど、とにかくイケメンに目がありません。

 しかし作品の「陽」の部分を支えるムードメーカーでもあります。とにかく明るくてポジティブ。彼氏に二股かけられても、前彼との間に子どもができたのが発覚して彼氏と修羅場になっても、ポジティブポジティブ! 客観的に見て、かなりの地雷女なのですが、彼女こそが作品を盛り上げる最重要人物と言えます。

 ちなみに作品中での奈々のあだ名は「ハチ」です。大崎ナナと区別するために「ハチ(8)」と呼ばれるようになるのですが、「ハチ」が転じて「ハチ子」「ハチ公」そして「犬」などと呼ばれるようになったりして、なかなか酷い主役の扱いです。でもポジティブ!

■大崎ナナの心の闇がスゴい

 

 もう一人のヒロイン、大崎ナナは言うなれば本作品の「陰」の存在。パンクロックバンド「ブラックストーンズ(通称:ブラスト)」のカリスマ女性ヴォーカリストとして、常にパンキッシュでクールなファッションに身を包んでおり、男勝りな性格で、いわゆるサバサバ系なのですが、幼少期に母親に捨てられたことや、学生時代は友達が全然いなかったことなど、複雑で謎の多い生い立ちが、常に暗い影を落としています。

 男関係では、もともとブラストのメンバーで、メジャーバンド「トラップネスト(通称:トラネス)」に移籍した本城蓮(レン)と恋人関係にあります。レンに一途なナナは、レンの首に南京錠のネックレスをつけ、その鍵はナナが持っているという「シド&ナンシー」を彷彿とさせるエピソードがあったり、蓮(レン)の名前からとった蓮(はす)のタトゥーを腕に入れていたりなど、浮気でもしようもんなら後ろから刺しそうな勢いです。

 ナナは作品中盤までは、とにかくクールでカッコいいキャラクターなのですが、親友だった奈々がトラネスのリーダー・タクミとデキちゃった婚をして距離ができたことや、レンとの関係性が悪くなってきたことで、次第に情緒不安定な鬱っぽいキャラクターになっていきます。

 

■サークルクラッシャーの歌姫・レイラ

 

 天使のような歌声を持つハーフの歌姫、「トラネス」のヴォーカリスト・レイラは、作品中で圧倒的な歌唱力を持つ聖なる存在として描かれていますが、芸能人として常に周りから注目されているが故に、自由に恋愛ができず欲求不満に陥ります。結果として、ナナの恋人(のちに夫)・レン、奈々の夫・タクミ、ブラストの未成年ベーシスト・シンなどの身近な男子たちにちょっかいを出し、いろんなトラブルを巻き起こします。

 特に、作品後半ではレイラに関わった男たちは、逮捕されて留置所に行ったり、写真週刊誌にスキャンダルを報じられたり、交通事故に遭ったり……と、ことごとく不幸になるという、疫病神的存在になります。『NANA』の地雷女といえば小松奈々だったはずなのですが、それ以上の逸材が現れたのです。これこそまさにサークルクラッシャー。

 

■イケメンだからクズでも許されるバンドマンたち

 

 本作品に出てくる男性キャラクターは、ナナの所属する「ブラスト」やレンの所属する「トラネス」のメンバーが中心で、当然のことながら9割方イケメンです。

 ブラストのリーダー「ヤス」は弁護士の資格も持っており、困っている人がいたら放っておけない心優しきナイスガイ。スキンヘッドにサングラスで見た目はかなりイカツいけど、頼れるいいやつです。

 ブラストのギター「ノブ」は実家が旅館をやっているお坊ちゃま育ち。学生時代に孤立していたナナをバンドに誘ったのがノブでした。とても優しい性格の持ち主で、奈々に振られた後は、未練タラタラでAV女優と付き合っているナイスガイです。

 ブラストのベース「シン」は未成年でありながら、お金を持ってるお姉さんたちにウリをして、生計を立てている小悪魔的イケメンですが、どこか憎めない、いいやつです。

 トラネスのリーダーで奈々とデキ婚した「タクミ」は、女癖が悪く、暴君とあだ名されるほど暴力的な部分もありますが、機嫌のいい時はとても優しい。トラネスをメジャーバンドに押し上げるほどの才能を持つナイスガイです。

 トラネスのギター「レン」は、ナナと出会う前は女を取っ替え引っかえしていましたが、ナナに会ってからは、すっかり一途な男です。ヤク中だけどナイスガイです(ダメじゃん)。

 そんな感じで『NANA』の世界では男たちはみんな女子に優しい王子様。ちょっとばっかりクズもいるけど、女子を虜にする魅力に溢れているのです。

 

■不穏なポエムが心をかき乱す

 

『NANA』は、さすが大ヒット少女マンガだけあって、不倫、妊娠、リスカ、ドラッグ、恋人の死などなど……少女マンガで盛り上がりがちなドロッドロ要素が余すところなくストーリーに盛り込まれています。

 さらに、作品をドラマティックに盛り上げているのが、毎回ストーリーの冒頭に挿入される不吉な将来を暗示させるモノローグ。

あれだけいつも一緒にいたのに

少しもナナの事

分かってなんかいなかった

傷つけている事にさえ

気づかなかった

あたしを許して

ねえ ナナ

今も恋する乙女達は

ナナの歌を聴きながら

ナナとレンの物語を

語り継いでいるよ

だけど あたしが見たかったのは

あんな悲しい結末じゃなかったのに

……などなど、ええっ、将来いったい何があるのー!? ってなりますよね。どう考えてもバッドエンドに向かっている感じが不穏過ぎます。しかもこれだけ将来に向けて伏線を張っていながら、連載が止まっていて結末がわからないもどかしさ。

 というわけで、モテ系バンドでチャラついた美男美女がキャッキャウフフするラブコメだと思って読むと、実は重~い裏テーマが潜んでおり、大ヤケドしかねない少女マンガ『NANA』をご紹介してみました。男子も、己の中に持つ女子力を全力で開放して読まないとメンタルがやられてしまうかもしれません。そのぐらいパワーをもった作品といえるでしょう。
(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)

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時代を30年先取り! エッチでピュアなサイバーラブコメ『電影少女』“ビデオガール”とは

  みなさんは『電影少女』という作品をご存じでしょうか。今から29年前の1989年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載されていた作品で、桂正和先生の描いた美少女と少年誌の限界に挑むようなギリギリのお色気シーンが大変話題になりました。現在は乃木坂46・西野七瀬主演の深夜ドラマ『電影少女-VIDEO GIRL AI 2018-』(テレビ東京系)という実写作品が放送されており、原作となる本作品にも再び注目が集まっています。

 この『電影少女』は、ビデオの中にいる女の子(ビデオガール)が男子を慰めるためにテレビから現実の世界に飛び出してくるという、貞子もビックリな設定です。ブルーレイもDVDもない、VHSビデオデッキ全盛時代の作品でありながら、今どきのVRを使ったAVよりも、ずっと先進的な内容に驚かされます。しかもこの『電影少女』は、単なるエッチなだけのマンガではなく、ラブコメとしても名作なのです。

 主人公・弄内洋太(もてうち・ようた)は、名前をもじって“モテナイヨーダ”とあだ名されるほどの冴えない高校生。名字の時点ですでに非モテという、重い十字架を背負った主人公です。一方で、洋太の無二の親友である新舞貴志(にいまい・たかし)は、超絶モテモテのイケメンなので、なおさら洋太の非モテっぷりが引き立ちます。

 洋太は同級生の美少女・早川もえみに密かな恋心を抱いており、そのことを貴志にいつも相談していました。貴志は洋太の恋を応援し、もえみとの仲をいろいろとお膳立てしてくれますが、もえみが好きなのは、実は貴志だったことが判明。そう、いつだって結局イケメンが美味しいところを持っていくんです。というわけで、洋太は自分の気持ちを伝えることすらできずに轟沈してしまいます。

 失恋モードの洋太は、ふと見慣れないレンタルビデオ屋があるのを発見。いっちょアダルトビデオでも借りて自分を慰めるか! とばかりにアダルトビデオコーナーを物色していると、『なぐさめてあげる(ハート)天野あい』というビデオが目に留まります。

 実は、このレンタルビデオ店「GOKURAKU」は、ピュア(純粋)で優しい心の持ち主だけが見つけられる店。洋太のような心優しい選ばれた人間だけが、ビデオガールのビデオを借りることができるのです。ピュアな心を持つ人向けのアダルトビデオって……なんかいろいろと間違ってる気がしますが、もしかしたらピュアな心を持っている人ほどエロビデオを借りがちなのかもしれません。

 早速、洋太は『なぐさめてあげる(ハート)天野あい』をビデオデッキで再生しようと試みますが、そのビデオデッキが壊れていたせいで、テレビから飛び出してきたビデオガール「あい」は、本来の巨乳癒し系設定とは異なる、貧乳で一人称が「オレ」のボーイッシュ少女でした。実体として現れるだけに、ジャケ詐欺のAVよりもタチが悪いです。

 言葉遣いが男子みたいな「オレっ娘」で色気もゼロのビデオガール・あいですが、洋太を励ますために一生懸命尽くしてくれます。手料理を作ったり、風呂で背中を流したり、添い寝してくれたり、もえみちゃんとうまくいかない洋太を励ましたり……もちろんそれだけでなく、パンモロを見せたり、突然シャツを脱いでおっぱいを見せてみたりとエッチなシーンも山ほど出てきます。ボーイッシュ少女なので、そのへんも自由奔放……という設定なのです。ボーイッシュにそんなメリットがあったのか!!

 そんなビデオガールにも、お約束の恋愛禁止の掟があり、しかも再生期間3カ月だけのはかない命。しかし、あいは壊れたデッキで再生された影響で、洋太を好きになってしまうのです。自分はこんなに洋太が好きなのに、洋太が他の子と結ばれるのを応援しなければいけない、そして自分の気持ちは伝わらずに、いずれは消えて行く運命……そんなつらさを胸に秘めながら、けなげに毎日、洋太を励ますあいの姿がいじらしいのです。

 一時はあいと洋太が両想いになり、めでたくハッピーエンドか、というシーンもあるのですが、極上のラブコメでは決して簡単にハッピーエンドを迎えることはありません。謎のビデオガール組織GOKURAKUによってあいが連れ去られ、記憶を消されて今までの設定がリセットされたり……その後、リセットされたはずの記憶が復活し、洋太への想いが再びよみがえったところで、洋太は後輩の彼女ができてモテ期に入り、全然相手にされなかったり、別のビデオガール「まい」が刺客として現れて、あいを半殺しにしたりと……よく考えるとかなり散々なヒロインの扱いなのですが、何かと理由をつけては、最後の最後まで洋太とあいがすれ違い続けるあたり、まさしくラブコメの王道といえましょう。

『電影少女』といえば、この「天野あい」がメインキャラクターのイメージが強いのですが、実は「あい編」の後に、「桃乃恋」というビデオガールが活躍する第二章「恋(れん)編」があります。桃乃恋は一人称が「ボク」のボクっ娘で、恋愛がトラウマになっている気弱な少年、田口広夢の恋を応援するというストーリー。

 ただし、こちらはファン以外にはあまり知られておらず、存在感がほぼ空気状態。『電影少女』単行本全15巻のうち、ラストの14巻と15巻のみに掲載されているのですが、エッチなシーンがほとんどなく、主人公を好きになってしまうような禁断のギミックもなかったため、あまり話題にならなかったようです。読んでみると普通にほっこりするような、いいお話なのですが……まあ少年マンガのラブコメで人気を博すには、どうしてもエロ要素が必要ということでしょうか。

 というわけで、エッチなんだけど、とってもピュアなサイバーラブコメ「電影少女」をご紹介してみました。美少女と尻を描かせたら国宝級とも言われる桂先生の美麗なイラストをたっぷりと堪能できる本作品、改めて読んでみてはいかがでしょうか。
(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

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