ステイホームが叫ばれ続けたこの1年、体重の増加に頭を悩ませ、ダイエットを始めた人も多いだろう。食事管理アプリやダイエットアプリへの注目も増しているようで、今年行われた「女性が選ぶ『健康管理アプリ』」という調査では、利用率で「FiNC」、利用満足度で「カロママ」、おすすめしたい健康アプリで「あすけん」が、それぞれ1位に選ばれた(ウーマンリサーチ調べ)。
こうした健康アプリでは、自身の食事内容を記録することで、生活の改善点をアドバイスしてくれるのが特徴。その多くが「3カ月で3キロ減量」など、ダイエット効果も謳っているのだ。しかし、アプリのアドバイスを実践しているのに、思うように減量できない人も少なくないはず。
そこで管理栄養士の猪坂みなみ氏に、人気アプリの「あすけん」「FiNC」「カロママ」の特色と、その他おすすめのアプリ、さらにはアプリを使っても減量できなかった人へのアドバイスを聞いてみた。
――健康管理アプリといわれるものに関して、今年は世間の関心が増したようです。管理栄養士として、その実感はありますか?
猪坂みなみ氏(以下、猪坂) 健康に対する関心は高まっていると感じますね。健康系アプリの「あすけん」や「カロミル」も会員数が増えたというニュースがありました。「あすけん」は今年2月から4月末のアプリのダウンロード数が54万件と急増し、「カロミル」の場合も、今年5月から半年で約20万人増えたそうです。
――10月に発表された調査によると、健康管理アプリで人気なのが「あすけん」「FiNC」「カロママ」という結果でした。それぞれに特徴と違いはありますか?
猪坂 まず「あすけん」の一番大きな特徴としては、見やすい画面で栄養価が細かくたくさんチェックできるところ。ビタミンAやE、飽和脂肪酸など、多くの栄養素の摂取がグラフで表示されます。ほかのアプリでは、エネルギーや糖質は見られても、ビタミン系までカバーされてないことが多いので、そこが「あすけん」の一番の魅力だと思います。
――栄養価をチェックするうえで、食事内容の入力が必要ですよね。
猪坂 こういうアプリのネックは、食事記録を自分で入力するか、食事の写真を撮影しなければいけない点ですよね。「あすけん」も手入力と写真記録の2つがありますが、現時点では、写真の自動判別技術は開発途中で、実証実験を行っている段階だとHPに記載されていました。そのため、現時点ではうまく判別されないこともあるようなので、手入力をメインとしている人が多いのではないでしょうか。面倒くさがりな人や、まずは気軽に食事管理したいという人は、もしかしたら継続するのがが難しいかもしれないです。
ただ、このアプリの手入力はかなり使いやすいと思いますので、食事の栄養素を細かくチェックしたい人には、すごくぴったりなんです。私も何年も愛用しています。
――「あすけん」の食事内容のアドバイスはどういった形ですか?
猪坂 栄養士のキャラクターが、栄養状態に合わせたアドバイスを伝えてくれるので、具体的にどこを改善すればいいのかがわかりやすいです。それだけでなく、誕生日には「お誕生日おめでとうございます」と言ってくれたり、その日の食事内容を「今日は70点でした。頑張りましたね」などコメントしてくれるので、モチベーションも維持できます。
【あすけん】
メリット
◎摂取した栄養素を細かくチェックできる
◎AIのキャラクターがアドバイスをくれる
デメリット
◎食事記録は手入力がメイン
――では「FiNC」の特徴はどうですか?
猪坂 こちらはフィットネス、トレーニング系をサポートしてくれるのが魅力。有名トレーナーさんのトレーニング動画が見られたりするので、フィットネスに関心がある人はうれしいのではないでしょうか。インスタグラムのようなおしゃれな世界観の中でボディメイクを頑張りたいという、ローラを目指しているような女性にはぴったりだと思います。あとは、食事記録をしたりたくさん歩いたりするとポイントがたまり、FiNCの通販ショップで使えるので、お得にダイエットをしたい人にもおすすめです。
――食事面のアドバイスはありますか?
猪坂 食事記録は「あすけん」と同じくらい、ビタミンやミネラルなどがチェックできるので、運動と食事を両方ケアしたい人にはよさそうです。健康のコラムや食事アドバイスの記事も読めて、「あすけん」と同様、情報提供は十分してくれますね。アプリから飛べるFiNCの通販ショップ内では、スムージーや低カロリーなレトルト食品などの購入もできます。
【FiNC】
・メリット
◎フィットネスや不調改善情報等が豊富
◎15種類の栄養素をチェックできる
・デメリット
◎情報量が多すぎると処理するのが大変という人は使いづらい
――「カロママ」はどうでしょうか?
猪坂 こちらは全体的に可愛い世界観のアプリ。「あすけん」にもAIの女性キャラクターがいますが、「カロママ」のキャラのほうが絵本的な可愛いらしさで、親しみやすい雰囲気です。特徴的なのは「1食ロカボ」コース。ロカボとは、糖質摂取量を1食20~40gに抑える食事のことです。無理のない糖質制限を試してみたい人には向いていると思います。
――食事内容のチェック項目はどれくらいありますか?
猪坂 「カロママ」では、あすけんやFiNCほど多くのビタミンやミネラルはチェックできませんが、基本的な栄養素(エネルギーや糖質、たんぱく質、脂質、食物繊維など)は一通り確認することができます。また、食事提案機能があり、ローソンの商品からおすすめを教えてくれるという面白いサービスがあります。何を食べたらいいのかわからない、提案されたほうが助かるという人には、よさそうですね。
操作面は、LINEと同じような縦に流れる会話形式なので、気軽に使いやすい印象。キャラクターが「間食食べましたか?」「昼食食べましたか?」と質問してくるので、それに答えていくだけです。記入するたびに「偉いですね!」「ありがとうございます!」と返信をくれるので、モチベーションも上がりますね。
【カロママ】
・メリット
◎気軽に無理のない糖質制限が始められる
◎アドバイスでモチベーションが上がる
・デメリット
◎チェックできる栄養素(ビタミンやミネラル)が、あすけんやFiNCよりは少ない
――モチベーションの維持といえば、コメントやアドバイスの内容も大事ですよね。
猪坂 「カロママ」は可愛くて楽しいイメージとお伝えしましたが、「コーヒー」と入力しただけでも「登録ありがとうございます!」「カロリー、OKです!」などとコメントをくれるので、褒められて伸びるタイプと自覚する人にはいいかもしれないですね。それだけでなく、さらに詳しいアドバイスとして、良かった点や悪かった点、次回意識すべき点なども具体的に教えてくれるので、頼りになります。
一方で、「あすけん」は、たくさんの栄養素をチェックできるからこそ、それらのバランスをしっかり整えるために、より細かくアドバイスをしてくれます。褒めるというより向上心を刺激してくる印象。「あなたは鉄分が足りないので、こういうものがおすすめですよ」といった感じですね。お菓子やお酒などの嗜好品ばかりを登録すると、やんわりと怒られてしまうことも(笑)。どこを改善すればいいのかストレートに指摘してほしい人に向いていると思います。
1日の食事内容を100点満点で採点してくれますが、ある程度意識して食事を選んでも70点台だったり、高得点をとるのは難しい。ただ、その分より多くの栄養素のバランスを整えるための改善提案を受けることができます。
――FiNCもキャラクターがいるようですが、特徴はありますか?
猪坂 「フィンクちゃん」というスマイルマークのキャラクターがいて、食事記録の結果に応じて、カロリーや栄養素のバランス等についてアドバイスをくれます。特徴的なのは、毎日健康に関する豆知識クイズを出してくれて、正解するとポイントがもらえるという点です。会話形式なので、楽しく学ぶことができて、ポイントもGETできるなんてうれしいですよね。
おすすめは「MyFitnessPal(マイフィットネスパル)」「カロミル」
ーーこの3つのほかに、おすすめの注目アプリはありますか?
猪坂 記録が面倒な人向けだと、「MyFitnessPal(マイフィットネスパル)」。特徴としては、バーコード読み取り機能というのがあって、買った商品のバーコードを読み込むと、それが自動で記入されます。データベースが400万件以上あり、定番の食品ならほぼ確実にその商品が出てくるので便利。無料で使えます。
――コンビニや冷凍食品を食べるときは便利そうですね。
猪坂 画像判別機能が優れているのは「カロミル」というアプリ。ほかのアプリと比較して、最も精度が高いといわれています。手入力が面倒で、写真だけで管理したいなら「カロミル」がベストでしょう。食事提案機能も優れていて、自分の摂取カロリーに基づいて、朝食のメニューなどを提案してくれます。ただ、提案機能は有料プランになります。
――こうしたアプリは「3カ月で○kg減量」を謳うものが多いですが、実際3カ月使っても体重が減らないこともありますよね。成功する人と成功しない人の違いは何かあるのでしょうか?
猪坂 確かに、そうですよね。アプリを使って、自分なりに食事調整はできているはずなのに、思うような結果が出ない……という人は、個人的には、一度だけでも、アプリではなく専門家に相談するのがいいと思います。アプリでは、1日の摂取カロリーは、平均的な人の基礎代謝に合わせていると思うので、その提案の元に実践しても人によっては合わないかもしれません。食事制限に運動を加えるにしても、アプリだけだと、どれぐらいやればいいのかわからないですよね。
――管理栄養士さんに直接相談できる場所はありますか?
猪坂 薬局で食生活改善窓口といったものを設けていることがあります。そこで相談できるのと、ほかに地域ごとの「栄養ケア・ステーション」というサービスもあります。国が推進している地域住民の栄養ケア支援・指導の拠点で、高齢者向けのイメージをお持ちの人もいるかもしれませんが、特に年齢制限はありませんので、ぜひ調べていただくとよいと思います。また、近くに管理栄養士のいる薬局や栄養ケア・ステーションがないという場合は、オンラインで栄養士からアドバイスを受けられるサービスを利用してみるのも良いでしょう。
健康アプリは手軽に自身の食生活を把握することができます。最初の1週間、2週間だけでもいいので、ちょっと記録を頑張ってみると、自分の傾向がつかめると思います。自分の性格やライフスタイルに合ったアプリを使って、健康的な生活を目指してもらいたいですね。
猪坂みなみ(いのさか・みなみ)
管理栄養士。大学卒業後、大手食品メーカーにて商品企画や研究開発などに従事。ダイエットアドバイザー、料理研究家助手、医療ヘルスケアベンチャー企業の商品企画職等を経て、現在はLINEで気軽に取り組めるパーソナルダイエットプログラム「ダイエットナビ」の運営や、ヘルスケア領域の新規事業開発アドバイザリー、法人向けの健康経営サポート等を行う。
HP「Diet Solution Lab」