カニエ・ウエスト、「BLMは詐欺」「White Lives Matter」と主張で大炎上! 伝えたかった意味は?

 カニエ・ウエストことYe(イェ)が、現地時間10月3日にパリコレで開催したYEEZYコレクション・シーズン9で、後ろに「White Lives Matter(白人の命は大切、以下WLM)、前にローマ法王ヨハネ・パウロ2世の顔をプリントしたTシャツをお披露目。

 ショーを見守るYeもこれを着用し、「Black Lives Matter(黒人の命は大切、以下BLM)への冒涜」「暴力的なワード」「白人至上主義を加速させる危険極まりない行為」だと大バッシングが巻き起こった。Yeはインスタグラムに「BLMは詐欺」だと投稿。「All Lives Matter(すべての命が大切)」を主張しているが、炎上はまだまだ続いている。

 ラッパー、プロデューサー、デザイナーに実業家、宗教や政治にも手を染め、教育者としても活動するなど、多方面に強い影響力を持つYeが、世界中から注目されるパリコレで「WLM」をファッションに取り入れたことに、BLM団体は「犬笛(政治)パフォーマンス」だと強く批判。

 Yeは、ショーの直後、インスタグラムのストーリーで、「みんなBLMは詐欺だって知ってんだろ」「(BLMは)もうおしまいだ。(終わらせてくれてありがとうだな)どういたしまして」と投稿。ネット上には、「BLMは詐欺じゃない!」という声が殺到し、大炎上した。

 BLMが世界的に知られるようになったのは、今から2年前。丸腰の黒人が警察官に殺されるという事件が立て続けにネット上に拡散され、全米で大規模な黒人差別抗議デモ“BLM運動”へと発展した。一部では暴動化し、アメリカの黒人たちの怒りを世界が知ることになった。

 この運動を支えるためにBLM運動基金が立ち上げられ、世界中から多額の寄付金が集まったが、役員や指導者たちがこれを横領していたことが次々と発覚。先月も、代表者が1,000万ドル(約14億5,000万円)を超える寄付金を私的に流用したとして起訴されており、YeはBLM組織の腐敗を世界に発信したかったものとみられている。

 寄付金を集めたBLM組織については以前より問題になっており、“BLM運動の象徴的犠牲者”として知られるブリオナ・テイラーの母親も、「個人的に地元のBLM(組織)と関わりを持ったことはない」「それなのに、ブリオナの遺族のためにと寄付金を募っている。これは詐欺だ」と非難。Yeは、この言葉もインスタグラムで紹介している。

 人種差別を助長すると非難を浴びるYeだが、マサチューセッツ大学の政治学教授タティシ・ナタダや、親友のショーン・コムズ、ドレイクからも応援してもらっているとインスタグラムで感謝。しかし、最新の投稿では「All Lives Matter(すべての命が大切)」と主張しており、ネット上からは「だったら最初から、この言葉を使えばいいのに……」と戸惑う声も。

 今回の騒動は、これまで当然のこととして考えられていた思想や価値観、概念などが革命的に変化する「パラダイムシフト」だと表現しているYe。どんな騒動も乗り切ってきた彼なので、このことが不買運動や業界から干されるきっかけにはならないだろうが、「ほかに方法はなかったのか残念」という声はあまりにも多く、当分炎上は続きそうだ。

キム・カーダシアンの“クローン”!? 元夫・カニエ・ウエストの新恋人「キム3.0」にネット上大盛り上がり

 離婚手続きを粛々と進めている妻キム・カーダシアンに未練タラタラのカニエ・ウエスト(Yeに改名)が、わずか1カ月半で破局した元カノ、ジュリア・フォックスよりもさらにキムに激似の美女チャニー・ジョーンズとの交際を認めるSNS投稿をした。

 キムを意識しているとしか思えない挑発的な写真をインスタグラムに投稿するチャニーにも注目が集まっており、長い髪で乳房と股間を隠したオールヌードセルフィーは「もはやキムのクローン」だと称賛され、フォロワー数はうなぎ上りに。ゴシップサイトに「YeNey」というカップル名もつけられ、ネット上は大盛り上がりしている。



 カニエとチャニーがうわさになり始めたのは2月上旬。マリブのSoho Houseで笑い合っている姿がキャッチされ、チャニーのキムそっくりな姿にネット上は騒然。チャニーは、同月22日にマイアミで開催されたカニエの新作アルバム『ドンダ2』のリスニングパーティにも出席し、彼女の体形、髪形、ファッションがキムそのものだったことから、米大手ゴシップサイト「TMZ」は「Kim 3.0」と表現。

 元カノのジュリアは、無理やりキムに似せている感があったが、チャニーはナチュラルにそっくりなため、「すごい女性が登場した!」と大盛り上がりした。



 米人気ゴシップサイト「The Shade Room」は、カニエとチャニーが体を密着させるパパラッチ写真に「親密な関係になってきたようだ」「2人をなんて呼ぼう? YeNeyかな?」というコメントをつけて報道。

 3月1日、カニエは自身のインスタグラムに黒いハートをつけてこのスクリーンショットを投稿し、チャニーにタグ付けしたことから、ファンは「交際を認めた!」と興奮した。



 米版タブロイド紙「The Sun」によると、チャニーはカニエより20歳年下の24歳。多くのメディアが“インフルセンサーでモデル”と伝える彼女のインスタグラムはセクシーな写真ばかりで、DJキャレドやT.I.、ショーン“ディディ”コムズら、HipHop界の大御所からもフォローされる、フォロワー数39.5万人を超える注目の美女だという。



 まるでキムのような全裸セルフィーやセクシー写真ばかりをインスタグラムに投稿するため、カニエを利用してセレブに成り上がり、荒稼ぎしようと企んでいるのかと思われがちだが、ミーハーな女性ではないようだ。



 バイデン大統領夫妻の出身校であるデラウェア大学で初等教育を専攻、人間発達・家族学を副専攻。優秀な成績を修めたDean’s Listに3年連続して選ばれた才女で、2020年に卒業。現在はウィルミントン大学でカウンセリングの修士号取得のため勉学に励んでいる努力家だという。



 社会人としても活躍しており、父親がCEOを務めるカウンセリング・サービス・センター「ファースト・ステイト・ビヘイビアル・ヘルス」のCOO(最高執行責任者)として人々のメンタルヘルスの改善・向上に力を注いでいる。



 全裸自撮りをインスタグラムで公開するチャニーが高学歴でキャリアも素晴らしい女性だというギャップに、好意を抱く者は多いようだ。アルメニア系のキムはセルフタニングで黄金色の肌を手に入れているが、チャニーは黒人の血が混じっているためナチュラル・ブラウンのようで、それがまた良いという声も上がっている。



 新恋人ができても、4人の子どもをもうけたキムとの復縁を切望し続けていると思われるカニエ。しかし、ステディな恋人がいるキムの気持ちは完全に切り替わっており、「クローンのチャニーで我慢するしかなさそう」とネット上ではカニエに同情が集まっている。



 3月2日、審問によりキムの「離婚が成立する前に、独身に戻りたい」という申し立てが認められたが、この数日前に、カニエは4番目となる弁護士クリス・メルヒャーを突然解雇。

 精神的に不安定な状態が続いていると懸念されているカニエだが、カウンセリングを得意とするチャニーなら、彼をサポートできるのではないかと「YeNey」カップルの誕生を歓迎するファンは多い。今後、2人の関係がどのように進展するのか、チャニーはますますキムのクローンと化すのか見守っていきたい。


「桁外れの金持ち」「さすがぶっ飛んだ男!」カニエ・ウェストの金の使い方に、ネットが大盛り上がりのワケ

 昨年1月から聖歌隊を全米各地に引き連れ、セレブを巻き込んだゴスペルプロジェクト「サンデー・サービス(日曜礼拝)」を主催。キリスト教福音派の信仰をますます深化させ、10月には崇高なる9thアルバム『JESUS IS KING』をリリースしたカニエ・ウエスト(43)。

 福音を広めるエヴァンジェリストとしての任務を着々と進める彼の思想を、多くの人たちが好意的に受け入れ、心酔。11月に米ビジネス誌「ファスト・カンパニー」主催のイノベーション・フェスティバルで、「2024年の大統領選に立候補する」「名前もクリスチャン・ジーニアス・ビリオネア・カニエ・ウエスト(クリスチャンで天才で億万長者のカニエ・ウエスト)に1年間改名する」と宣言した時も、「彼なら革命を起こしてくれるかもしれない」と応援する声が上がったものだった。

 神に導かれるように直感で動くというカニエは、今年7月、突然、11月に行われる大統領選に出馬すると表明。初の選挙集会では泣きじゃくりながら「(妻の)キム・カーダシアン(39)が(第一子である)ノース(7)を身ごもった時、自分は自分の父親がそうしたように、中絶を望んでしまった」「俺は娘を殺しかけた!」と叫び、世間をドン引きさせた。

 Twitterでも妄想に苦しむような不穏なつぶやきを投稿しては削除を繰り返し、ネット上では「双極性障害(躁うつ病)が再発しているのではないか」「薬はちゃんと飲んでるの?」などと心配する声が多数上がっていた。

 そんなカニエが、サンデー・サービスに5,000万ドル(約53億円)を、選挙戦には現時点で586万ドル(約6億2,000万円)を注ぎ込んだことが明らかになったのだ。

 現地時間9月1日に配信されたニック・キャノンのポッドキャストに出演したカニエは、「(世界的に人気のファッションブランド)イージーの宣伝費用を全てサンデー・サービスに使っている。去年は5,000万ドル使った。総勢120人くらいでジャマイカに行ったりしているが、その飛行機代とかも合わせてね」「イージーは放っておいても売れるから、(ブランドの)広告に金を使うのではなく、教会に投資することにしたんだ。福音を広める投資にね」と告白。

 ほかにも、「コロナのせいで仕事が減っているパパラッチ事務所を買収し、自分に同行させたい。いい写真を撮ってもらうんだ」「TikTokは(キリスト教信者として)不快なコンテンツが多いが、アイデアは気に入った。TikTokとコラボして、キリスト教徒版のジーザスTokを作りたいと思っている」などの発言も飛び出し、「さすがぶっ飛んだ男!」「ぶれない男!」「桁外れの金持ち!」だとネット上で大きな話題になった。

 一方で、米業界紙「The Hollywood Reporter」は、カニエがこれまでに選挙に費やした金は586万ドルだと報道。連邦選挙管理委員会に提出された財務報告書によると、カニエがこれまで586万ドルを主にコンサルタント料に使ったことが明らかとなった。

 カニエは7月と8月、個人として選挙運動本部に対し、670万ドル(約7億1,200万円)を融資。市民からの200〜1,000ドル(約2万1,000円〜約10万6,000円)の寄付金も8口もらっているそうで、コンサルタント費用として120万ドル(約1億2,700万円)の負債を抱えているものの、無理なく選挙戦を進めているという印象を世間に与えた。

 カニエは今年、米経済誌「フォーブス」によって「ビリオネア(資産10億ドル以上の富豪)入りした」と報道されている。純資産13億ドル(約1,400億円)とされており、11月の大統領選まで一体どれくらいの資金を投入するのかが注目されている。

 ラッパー、音楽プロデューサーとしても類まれなる才能を持つカニエ。妻のキムに“女性美を最大限に表現する”“露出度の高い”衣装を着せ、エレガントなセックスシンボルへと押し上げた“夫”としても評価されているが、エヴァンジェリストとして覚醒してからは、セクシーすぎるキムの衣装に文句をつけるようになった。

 昨年のMETガラ直前には、「俺はラッパーとして、露出しまくるあばずれをたくさん見てきた。そんな子たちと同じレベルで露出してる自分の妻を見てるとさ、既婚者で深い家族愛を持つ、もうすぐ4児の父親となる俺の魂に、ガチで悪影響を与えるんだよね」と文句タラタラ。そしてすぐさま「あなたが、このセクシーで自信に満ちあふれた私を作り上げたんじゃない!」「あなたが変換時期を迎え、その旅の途中であるからといって、私もそうだとは限らないのよ!」とキムに猛反論され、タジタジとなってはいたものの、彼女はファッションデザイナー、実業家、そして『JESUS IS KING』が9作連続全米ナンバーワンの記録を作ったアーティストとして、夫のカニエのことを深くリスペクトしている。

 先日、カニエが16年に手掛けたタイガとのコラボ曲「Feel Me」の未公開MVが、撮影した監督によりリークされ、「巨大なキムの股から異父妹カイリー・ジェンナーが出てくる“異様な出産シーン”」が「えげつなくすごい」とネット上を騒がせた。

 リリースしたらすさまじい再生回数を記録したであろうこのMVは、カニエがエヴァンジェリストとして覚醒したこと、カイリーとタイガが別れたことからお蔵入りに。せっかく出演したMVがボツになれば機嫌を損ねるモデルが多いだろうが、キムは怒ることなくカニエの選択を尊重したのだろうとみられている。

 慈善活動家でもあり、比較的軽い麻薬絡みの罪などで、初犯にもかかわらず重い刑を科せられた受刑者のために恩赦を獲得する活動を行い、より多くの人を救いたいと弁護士を目指して奮闘するキムのことを「単なるお騒がせセレブではない」と評価する人は多い。カニエのサンデー・サービスも手伝っており、カニエの良きパートナーである彼女が、「アメリカのファーストレディになったら……」と期待する人も少なからずいるのだ。

 カニエは、7月に立候補した時点で主要な州での立候補受け付けが終了していたため、どう転んでも大統領に当選することはないが、共和党と民主党の接戦州で大きな影響を及ぼすのではないかとみられている。

カニエ・ウエスト、セレブへの批判ツイート連投! 「読んでいてつらい」「笑う人いない」心配の声続出

 既報の通り、現地時間7月19日に開催した大統領選に向けた集会で、「(一瞬、中絶を考え)娘を殺しかけた」「オレも父親から中絶を望まれた子だった」と嗚咽しながら明かし、世間をあぜんとさせたカニエ・ウエスト。

 白人保守層のような思考を見せつつも黒人差別を訴え、人工妊娠中絶に反対するキリスト教福音派のような発言をしたかと思えば「人工妊娠中絶は合法にすべし」と言い放つなど、枠にとらわれない“ぶっ飛んだ”演説だったのだが、彼の精神状態がかなり不安定になっているのではと心配する声が多く上がった。

 英タブロイド紙「ザ・サン」は、この演説に激怒した妻のキム・カーダシアンが、カニエに「今すぐ大統領選から退いて。さもなくば、私があなたの元を去るわよ」と告げたと報道。米ニュースサイト「TMZ」は、カーダシアン家や友人たちはカニエを心配しており、双極性障害の症状が出ているのだから治療を受けるべきと提言しているのだが、カニエは聞く耳を持たないと伝えた。

 そのカニエが現地時間20日夜、Twitterに姑クリス・ジェンナーや妻キムをはじめ、複数のセレブへのディス・ツイートを立て続けに投下し、さらにファンを心配させている。

 カニエは何の前触れもなく、突然「クリス、ふざけんな。お前とCalmyeがオレの子どもたちのそばに来ることは許可していないからな。お前らみんなで、オレを(病院などに)閉じ込めようとしているんだろ」と投稿。「Calmye」とは、クリスが2014年秋から交際しているコーリー・ギャンブルのことで、「コーリー(Corey)はオレ(Kanye)のダウングレード版だからCalmyeにする」というカニエ思考によるもののようだ。

 15年のインタビューでクリスを「母さん」と表現するなど、慕っていたカニエ 。しかし、コーリーのことは気に入らず、以前も「オレたちはお前のことを何も知らないよな。お前の家族にも会ったことがないし」と、ぶしつけなメールを彼に送りつけ、クリスを怒らせたことがあった。

 カニエは続けて、「みんな、映画の『ゲット・アウト』はオレのことだと知ってる」とツイート。『ゲット・アウト』(17)とはアカデミー賞脚本賞を受賞したジョーダン・ピール監督の大ヒットホラー映画。「白人が永遠の命を得るため、おびき寄せた黒人に白人の脳を移植する」という内容だ。

 次に、「ノースの母親(キムのこと)がセックス・レイプを売らないように、オレは子どもたちのために命を懸ける」「ノースの母親が、(雑誌)プレイボーイに写真を撮られないよう、オレは神のために命を懸ける。神にそう動かされるのだ。オレは今、牧場にいる……捕まえにこい」とツイート。「セックス・レイプ」とは、キムが02年当時交際していた歌手レイ・ジェイと撮影したセックス・テープのことと思われる。07年、第三者が大手ポルノサイト「Vividエンターテインメント」に、このテープを売却。キムは阻止しようと訴えたが、和解金を提示され、訴訟を取り下げた。このセックス・テープがキムを一躍 スターダムへと押し上げたのだ。

 17年に発売されたカーダシアン家の暴露本『Kardashian Dynasty』では、クリスがこのセックス・テープを「Vividエンターテインメント」に流したと書かれている。クリスは否定しているが、「クリスが売り込んだ」「クリスがセックス・テープを撮れと命じた」というウワサは以前から流れていた。また「プレイボーイ」は、07年に子どもたちのマネジャーを務めるクリスが受けた仕事。これらを踏まえて、カニエは「クリスがキムの性を売っている」と非難したのだ。

 そして、カニエは次に、「ドレイク」という一言に、“考える顔の絵文字”を添えて投稿。「オレを捕まえにこい……プシャが言っていたように、これはエクソダスだ」「神に誓って」と宣言。これは、20日午後にリリースした「Only You Freestyle」という新曲で、カニエとプシャ・Tをディスったとウワサされているドレイクに対するもの。18年にカニエとドレイクは音源をめぐり対立し、不仲に。ドレイクのメールにぶち切れたカニエが数時間で100件を超えるディス・ツイートを投稿した。この時、カニエは、双極性障害の症状が出ていたが薬を飲まず、精神的にとても不安定だったから連続ツイートをしてしまったのだと明かしている。

 続いて、「シャイアはウソつき野郎だ」「キムがオレを閉じ込めるために、医者を連れてこようとした」「もしオレがマンデラのように閉じ込められたのなら、そうことだ」「シャイアはYZY GAPの撮影初日に参加すると約束したのに、すっぽかした」「アナ・ウィンターはオレにいつもよくしてくれるが、GAPと仕事をすると話した時、オレのことを狂っているという目で見た。その後、電話かけてきたけど、クソくらえだ」とツイート。

 これらは、キムが自分のことを精神科病棟に緊急入院させようと、ロサンゼルスから医師を連れてこようとしたこと。カニエと「GAP」のコラボライン「YZY GAP」の撮影をめぐり、親交のある俳優シャイア・ラブーフと行き違いがあったことを示唆したものだとみられる。アナとは、カニエと親交が深い米「VOGUE」の名物編集長のこと。彼女がハイブランドでないGAPを見下していると言いたいのだろう。

 カニエはその後、「今、クリスとキムから電話があった」とツイートし、クリスに送った「オレと話す心の準備はできたか」というメッセージのスクリーンショット画像と、子どもたちと触れ合う自分の写真に「ウエスト家の子どもたちは、絶対にプレイボーイに載せない」という言葉を添えて投稿。

 続けて、Googleで「正義の怒り」を検索したスクリーンショット画像、「オレは妻を愛している。家族はそばにいるべき。もう、EやNBCには動じない」と投稿し、一家を追ったリアリティ番組『カーダシアン家のお騒がせセレブライフ』を放送している米「E!」局や、同局の親会社であるNBCユニバーサルの指示により、キムがカニエのいるワイオミングではなくロサンゼルスに住み続けていることを示唆。そして、「NBCはビル・コスビーを閉じ込めたんだぞ」と、80年代に爆発的な大ヒットとなったコメディ番組『コスビー・ショー』のビルが性的暴行で刑務所に入っているのは、番組を放送したNBCの差し金ともとれるツイートをした。

 一連のツイートの締めくくりは、「キムはオレを措置入院させようと、医者を連れてワイオミングに飛ぼうとした。映画『ゲット・アウト』のように。昨日、オレが娘の命を救ったことを思い出して泣いたから」だった。

 これらのツイートは、40分の間に立て続けに投稿されたもので、ネット上でたちまち拡散。子どもたちの写真とGoogleの検索スクショ画像以外はすべて削除されたが、「これは完全に精神崩壊でしょ」「精神的に苦しんでいるのがよくわかる。読んでいてつらくなる」「コロナ禍で双極性障害が悪化したのかな」「これを笑う人はいない。だって明らかに病気だよ」などと心配する人が多く、ネット上は騒然とした。

 カニエだが、ツイートを削除した後は「音楽に集中」とつぶやき、新作アルバムを宣伝するなど、のんきな様子を見せている。しかし、「いつまた精神状態が悪化するかわからない」とハラハラし、早期の治療を望むファンが多いようだ。

 一方で、連続ツイートをバカにしたり、笑いものにしたりする人々に対し、デミ・ロヴァートらセレブが苦言を呈している。双極性障害であることをカミングアウトしている歌手のホールジーも、「冗談を言うのはやめようよ」「躁病エピソードは冗談じゃないんだよ。理解も同情もできないなら、黙っててくれる?」と警告していた。

 21日にはTwitterで「#PrayForYe」(カニエのために祈ろう)というハッシュタグがトレンド入り。07年に自分の頭を丸刈りにした歌手ブリトニー・スピアーズに対してもそうだったが、アメリカ人は派手に精神崩壊したセレブに対して優しく見守る傾向にある。カニエの今回の一連のツイートも「奇行」とは捉えず、「メンタルが悲鳴を上げているSOSだ」と受け止め、「病気だから仕方ない」「妻を信用できず、苦しいのだろう。強い被害妄想にとらわれていて、彼も周りの人たちも気の毒だ」といった同情のほうが多いようだ。

 「今回は大統領選を見送り、治療後に2024年の大統領選にチャレンジしてほしい」と願うファンの声も多いが、我が道を行くカニエだけに、どうなるのだろうか………。

カニエ・ウエスト、メンタル崩壊か? 「娘を殺しかけた」大統領選に向けた初集会で衝撃発言!

 米独立記念日にあたる7月4日、Twitterで「(11月の)米大統領選に出馬する」と宣言。「あと4カ月しかないのに、間に合うの!?」と全米をあぜんとさせたカニエ・ウエスト。

 7日には米経済誌「フォーブス」のインタビューを通じ、「バースデー・パーティ」(パーティには党という意味もあり)と命名した新党から出馬し、もうトランプ大統領を支持しないと明言。「オバマ政権時の副大統領だったことから大半の黒人票を得るであろう民主党のジョー・バイデン候補から黒人票を奪うことで、共和党のトランプ大統領を有利にする」との推測については「否定しない」と述べた上で、「(そもそも)黒人票は民主党のものだと決めつけること自体が、白人至上主義なんだぜ」と持論を展開。「何事においてもそうだが、オレは勝利する!」と、自信のほどをのぞかせた。

 インタビューでは「生涯で一度も投票したことはない」「2月に新型コロナウイルスに感染していた」と仰天告白したり、「コロナワクチンは、人々にマイクロチップを埋め込むために使われる」「(安全な人工妊娠中絶手術を受けられるように活動する)全米家族計画連盟の施設は、白人至上主義者が悪魔の仕事をするため、都市に設置された」といった陰謀論を支持していると熱弁。

 聖書にもとづき、人工妊娠中絶や死刑にも反対。マーベル・コミックの『ブラックパンサー』の本拠地である架空の国ワカンダをカニエの考える国家のフレームワークとして使いたいと力説し、「中国は大好き。新型コロナは中国のせいでも、中国人のせいでもない。彼らも神の子だ」と、中国と友好的な関係を築くと明言した。

 これに対し、ネット上では多くの人が「言ってることおかしい」「陰謀論を本気で信じてるんだ……」と大いに戸惑い、「精神崩壊寸前なのでは」と心配する声が続出した。

 9日には米芸能誌「People」オンライン版が、「カニエは今、躁状態とうつ状態を繰り返す双極性障害のサイクルに入り込み、苦しんでいる」という関係者の証言を紹介。妻キム・カーダシアンや家族は、「いつものように、数週間で普通の状態に戻ってくれるよう祈っている」と伝えた。

 大統領選まで4カ月を切っており、テキサス、ニューヨーク、イリノイなどの大きな州を含む複数の州で独立系候補として投票用紙に名前を記載してもらう「登録期限」が過ぎていることから、今回の立候補は見送るようだとも伝えられた。しかし、15日にはオクラホマ州の選挙管理員会がTwitterで、「期限最終日に、独立系候補者のカニエ・ウエストがオクラホマ州総選挙投票用紙に載る資格を得た」と発表。

 登録に必要な一定数の署名を集めるため専用サイトを立ち上げ、Twitterを頻繁に更新するなど、選挙活動を本格化させたカニエが、19日の午後5時から、サウスカロライナ州で初の選挙集会を開催した。

 ゴスペルが流れた後、防弾チョッキを着用してマイクも持たずに登場したカニエは、事前登録をして集まったマスク姿のゲストたちに向かって笑顔を見せながら演説を開始。

 処方されたオピオイド(麻薬系鎮痛剤)依存を克服するまでの戦いや、アディダスと結んだパートナーシップ契約の話をしたと思ったら、おもむろに「キムが第一子ノースを妊娠した時、最初は出産してほしくなかった」と激白。

「聖書には“汝、殺すなかれ”とある。あの日、オレのガールフレンド(キム)が電話をかけてきて泣き叫んでいた。オレはラッパーで、複数のガールフレンドがいて……。で、彼女が『妊娠したの』って言ったんだ。俺は『イエス!』と反応したけど、すぐに『いや、まずいな』って言ったんだ」

「彼女は1カ月、2カ月、3カ月間泣き続けた。オレたちは、この子を中絶しようと話し合った。彼女は(中絶用)ピルを握りしめていた」

 そんな時、カニエは、神の啓示を得たという。仕事をしていた時、「突然、ラップトップ画面が突然白黒になったんだ。そして、神に言われた。『私のヴィジョンをフ●ック(めちゃくちゃに)したら、あなたのヴィジョンをフ●ックする』」と、Fワードを使い説明した。カニエはすぐにキムに電話し、「(おなかの子を)この世に迎えるぞ」と告げたとのこと。「このスピーチの後に妻が私と離婚したとしても、彼女がノースをこの世に誕生させたことは変わらない」「彼女は、子どものために立ち上がったんだ」とキムをたたえた。

 そして、「オレの母親はオレの命を救った。オレの父親は、オレを中絶することを望んでいたから。カニエ・ウエストは、存在しなかったかもしれない。父親が忙しすぎて、それどころじゃなかったからだ!」と絞り出すように語ると、表情を崩し、嗚咽。自分も父親と同じように中絶を望んだことを恥じているのか、「オレは娘を殺しかけた!」と叫びだし、会場から「アイ・ラブ・ユー、カニエ!」と励まされる場面もあった。そして人工妊娠中絶に反対ではあるものの、予期せぬ妊娠をした女性のために「中絶は合法にしたい」と明言。「法律は神が作ったものではないから、法律を遵守する意味はない」と言い放った。

 ほかにも経済的な問題から堕胎を選ぶ人を救うため、「赤ん坊を迎えた人には100万ドル(約1億円)」を与えるという制度をつくることや、マリファナの解禁を公約。会場を沸かせた。

 カニエは頭に浮かんだことをそのまま口にしているようで、全体的に見て、とりとめがない演説となった。19世紀の奴隷制廃止論者ハリエット・タブマンのことを、「彼女は奴隷を解放したわけじゃない。奴隷をほかの白人のところへ働きに行かせただけ」という持論を展開し、会場をざわつかせた場面もあった。

 ネット上では、「即興演説すぎて何がなんだか」「ノースを殺しかけた、ということしか頭に残らない」「カニエっぽいとえば、カニエっぽいんだけど。大統領選だよ?」と混乱する人が多く見受けられ、「キム、自宅から早く旦那を迎えに来て!」「またメルトダウンして、強制入院させられそう」などと心配する人も。

 ハリエットに対する発言は大バッシングされるに値するものだが、「双極性障害なんだから仕方ない」「叫んだり急に泣きだしたり、メンタルがものすごく不安定そうで涙が出てくる。療養して、元気になってほしい」と同情が集まっている。

カニエ&キム夫妻、新型コロナによる自粛生活で夫婦関係が悪化! 豪邸の両端で家庭内別居状態に

 カリフォルニア州ロサンゼルス郡ヒドゥン・ヒルズに建つ6000万ドル(約64億円)の大豪邸で4人の子どもたちと自主隔離生活を送っている、カニエ・ウエスト&キム・カーダシアン。しかし、顔を合わせればケンカしてしまうので、1.5万平方フィート(約1400平方メートル)という広さを誇る邸宅の両端で「家庭内別居状態」と伝えられている。

 英タブロイド紙「ザ・サン」によると、キムは、6歳の長女ノース、4歳の長男セイント、2歳の次女シカゴ、1歳になったばかりの次男サームの4人の子どもたちの世話や遊び相手、勉強を見るなど、フルタイムで子育てをしているのに、カニエは自由時間を自分磨きのためにフル活用。父親として自分から動こうとはせず、「自分に何ができるのか」を聞きもしないカニエに、キムはイライラしているそう。天然だからか、カニエは「キムの神経に障るようなことばかりしている」といい、情報筋によるとキムの精神状態は悪化しているという。

 社交家でワーカホリックのキムは、「働き詰めの生活に慣れていたため、新型コロナウイルスのせいで生き生きと仕事ができない状態や、子どもたちと長時間べったりと過ごす日々に気が狂いそうになっている」とのこと。情報筋は「キムは、カニエが家庭人としての責任をきちんと果たしていないと感じており、イラ立っている」「これ以上の衝突を避けるため、それぞれが邸宅の両端に移動して生活をすることにした」と明かした。

 カリフォルニア州が外出禁止令を発令した3月19日以降、ナニーや家政婦とも離れ、家族6人だけで自主隔離生活を送っている夫妻。社会的正義の塊で、現在弁護士を目指しているキムは、ロックダウン当初からSNSを通して「外出自粛がいかに大切か」「ソーシャル・ディスタンシングも大事」と呼びかけてきた。

 自主隔離生活12日目、31日に人気トーク番組『ザ・ビュー』に遠隔出演した際には、「(この生活が始まってから)初めて髪をとかして化粧をした」「4人の子どもたちとの生活は本当に大変」「洗濯も料理もしているし……」と愚痴った。が、夫婦関係については、「家族の絆が強まっている感じ」「たくさんの映画を一緒に見ているの」と円満アピールしていた。

 しかし、4月10日に自身が手掛ける化粧品を使ったメイク法を伝授する動画に、パジャマ姿のノースが乱入し、キムはイライラ。「この撮影はゲストルームでしてるのよ。子どもたちが一人にしてくれないから!」と打ち明けたキムに、ノースが「意地悪ね!」と反論。13日に公開した、隔離生活の継続を呼びかける州政府の公共広告動画にもノースが乱入。「(ママは普段から)もっと子どもとたくさんの時間を過ごすべきなのよ。自分の友達ばっかりとじゃなくて!」と指摘されると「事実ね」とうなだれ、ネット上で「本当にナニーや家政婦のいない生活を送っているようだ!」と話題に。「オレ様気質のカニエには子どもたちのしつけなんて任せられないだろうし、気の毒」「6歳以下の子が4人なんて、家の中はハチャメチャでしょ」と同情する声も上がった。

 4月下旬、米誌「People」は、カニエが仕事を理由にレコーディングできるワイオミング州の家に短期間移動したと報道。騒がしい子どもたちから逃げたわけではなく、キムが一人で休めるように数日間子どもたちをワイオミング州に呼び寄せたとも伝えられ、「交代で子育てをしている」「理想の夫婦」と羨望を集めていた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大が深刻化するとともに、プライベートジェットであってもワイオミング州とカリフォルニア州を行き来するという感染リスクの高い行動を自粛したようで、6人でカリフォルニア州の豪邸にこもり始めてから、すでにかなり時間がたっている。日々の不満が鬱積し、どんどん夫婦仲が悪化しているようだ。

 2019年10月に放送された『カーダシアン家のお騒がせセレブライフ』では、ファッションの祭典「METガラ」前日に、キムの衣装に対してカニエが「露出度が高くてセクシーすぎる」とネチネチ言い始める様子が映し出されていた。すぐさま、「あなたが私をセクシーで自信に満ちあふれた人間に仕立てたんじゃない!」「あなたが今、(精神的な)変革の道を進んでいるからって、私もそうだとは限らないのよ!」と強い口調で言い放ったキム。ケンカしたくないカニエがすごすごとその場から逃げ出しており、「ひょっとして不仲なのでは」と心配する声が上がった。だが、ファンの多くは「キムも母親になって強くなった」「自信がついてモラハラ気味の夫に押し流されなくなった」「カニエもそんなキムのことを愛しているはずだから大丈夫」と楽観的。

 今回も離婚を考えるなどの深刻な事態ではないとのこと。キムは、カニエが子育てに参加し、育児を分担することで、自分の仕事や勉強、プライベートの時間を確保したいと考えているだけだとも伝えられている。

 関係が悪化しても、それがきっかけとなり絆が深まる夫婦は少なくない。カニエとキムがこの自主隔離生活で、夫婦として家族としてレベルアップするよう、ファンは願っている。

【米エンタメ2019年】ヒップホップ界における「男らしさ」、ディズニー進歩路線を阻む中国……ショービズ界の社会正義はどうなる?【渡辺志保×辰巳JUNK対談(下)】

 渡辺志保さんと辰巳JUNKさんによる、2019年米ショービズ界を振り返る対談は、これが最終回。ヒップホップ界における「男性らしさ」の変化、アーティストの融和路線、そして多様な人種をキャスティングして挑戦的な作品を作ってきたといわれるディズニーの進歩路線と中国資本の影響など、ショービズ界における「社会正義」について語ってもらいました。

【米エンタメ2019年総決算】カニエ「宗教に傾倒」、カーダシアン家「コントロール不能」、ビヨンセは「優等生すぎ」!?【渡辺志保×辰巳JUNK(上)】

【米エンタメ2019年総決算】2019年はボディポジティブで稼いだセレブ、来年は環境系ビジネスに注目!?【渡辺志保×辰巳JUNK対談(中)】

――近年は「#MeToo」ムーブメントからさらに進んで、アメリカでは「有害な男らしさ(トキシック・マスキュリニティ)」という概念が広がってきたように思います。カミソリメーカー「ジレット」が1月に啓蒙的なCMを作って大きな話題となりましたし、ブラッド・ピット主演の『アド・アストラ』(2019)も作品の根底には男らしさへの懐疑といったテーマがあったように見受けられます。お二人は、それを象徴するようなニュース、出来事で印象に残っているものはありますか?

渡辺志保さん(以下、渡辺) 私はヒップホップ界隈を中心に見がちなんですが、ここ1~2年、どんどん「マスキュリニティ」自体をどう表現していくか、その意味合いも含めて変化してきていると感じました。

――長年ヒップホップ界隈は男性社会で、成功の証しとして「家・車・オンナ」を歌ってきたし、ミソジニー(女性蔑視・女性嫌悪)やホモフォビア(同性愛嫌悪)が強い業界といわれてきましたが……。

辰巳JUNKさん(以下、辰巳) ヒップホップ界隈だと、ジェイ・Zの動きは早かったと思います。2017年に発売したアルバム『4:44』に収録された「Smile」という曲では母親が同性愛者だと告白しているし、ライブでは客席にいる女の子に向かって「いまのアメリカは人種差別主義より、性差別のほうがキツい。でもきみは何にでもなれるんだよ。きみが信じれば大統領にだってなれる」と語りかけたニュースもインパクトが大きかった。彼はヒップホップ界のスーパースターじゃないですか。そういう人が性差別を認めたのは大きい。ケンドリック・ラマーも賛否はあれど「フォトショップ修正していない、ストレッチ・マークがついたリアルな体のほうがいい」とラップして話題になったり、その次はドレイクが女性スターを集めて称賛した……。

渡辺 「Nice for What」のMVですね。

辰巳 ドレイクゆえに商業的というか、なんかあざとい(笑)。でも「あざとい」と言われようと、スーパースターがそういう動きを見せたのは、やっぱり大きな変化ですし。今年は何より女性ラッパーの活躍が目に見えて大きいから、確実に時代は変わってきてますよ。

渡辺 辰巳さんのおっしゃる通りだと思います。そして、ここに至るまではカニエ・ウェストの動きも大きかったのでは、と。彼はファッションデザイナーとして活動していることもあって、ルイ・ヴィトンやバルマン、クリスチャン・ディオールの人たちと付き合い始めたんですよ。メゾン界は同性愛者の男性も少なくないと思うのですが、そういう人たちと仕事することを全く厭わない。ヒップホップはマッチョなイメージ強いから、男性は常にダボダボのファッション、でかい服を着て体をでかく見せることがひとつのスタンダードだったんです。その中でカニエがタイトなファッションに身を包んで、同性愛者のデザイナーと行動を共にするのは、大きなブレイクポイントだったと思うんです。

 その後にオッド・フューチャーというクルーが台頭してきて。オッド・フューチャーには、レズビアンのシドがいたり、「初恋の相手は男性だった」とカミングアウトしたフランク・オーシャンがいたりと、ジェンダーやセクシャリティの観点から見ても非常に多様性に富んだクルーなんです。それが世界規模で人気を得た。同じ頃に人気を得たエイサップ・モブというクルーのエイサップ・ロッキーも、アレキサンダー・ワンやリック・オウエンスなどのファッションブランドとも仲良く付き合っていて、彼自身もフェミニスト。そういう下地がヒップホップのシーンにはあったんです。

 今年は、ミーガン・ジー・スタリオンやリゾ、去年大ブレイクしたカーディ・Bら、言いたいことをはっきり言って、自分がいいと思う姿のままで作品を作り続けるような女性アーティストが台頭してきた。なので、ヒップホップにおけるミソジニー、マスキュリニティはここ5年ぐらい、すごいスピードで変わってきていると感じます。

辰巳 タイラー・ザ・クリエイターが今年新作アルバム『IGOR』を出したんですが、その中に「A BOY IS A GUN」という曲があって。もともとフェミニストのスローガンの「A GIRL IS A GUN(女性を弱い存在と決めつけるな)」というフレーズを逆転させて「A BOY~」とすることで、「どんなジェンダーや性別でも、恋愛関係は銃のように危険だよな」という曲になっているらしくて。もともとタイラーは過激な歌詞を書いたことで、オーストラリアから入国拒否されたこともあって……。

渡辺 そうそう。彼はかつて蔑視用語である「Faggot」(男性同性愛者を侮辱する言葉)を多用して、人権団体から抗議されたこともあったんですよ。でも彼の周りにはフランク・オーシャンやシドがいて、もともとそういうコミュニティの中にいたからこその発言だったのかなとも思うんだけど。

辰巳 しかも本人も、男性に対するセクシャリティをほのめかしている。そういう経緯もあって、なおかつそんな彼がセクシャリティについて考えさせるような曲を作り、売れているという現象を含めて、多様になっているのがおもしろいですよね。

渡辺 アメリカで今年一番売れたのはリル・ナズ・Xの「Old Town Road」ですが、彼も自分がゲイだとカミングアウトしてます。あれは飛び道具的なヒット曲ではあるけど、「Billboard Hot 100」で19週連続1位という大記録を更新するほどのヒット曲を歌っているラップアーティストが同性愛者だというのは、興味深いトピックとして挙げられると思います。

――去年に続いてカーディ・Bの躍進がすさまじく、一方でラップ界の女王ニッキー・ミナージュは「アデルとコラボした」と軽はずみなリップサービスし、それを真に受けたファンからバッシングされたり、結婚・引退宣言をしたり(その後すぐ撤回)、なにか空回りしているような空気がありました。

渡辺 カーディはセールス的な面もすごいのですが、彼女は10代の頃からストリッパーとして働いていて、それを隠すことなく、SNSでのぶっちゃけキャラとしても人気を博した。ニッキーは、その反対なんですよ。彼女もメジャーデビュー前は露出度高い格好で売っていたんですが、メジャー契約した途端に「バービー」になった。ピンクのウイッグをつけて、ジャケ写でもありえないくらい脚を長くして、自分をお人形さんに仕立て上げて、ラッパーとしてのキャリアを築いていった。彼女はリル・ウェインやドレイクがいるヤングマネーというクルーに所属してるんですけど、その中の紅一点という形でデビューしたんですよ。カーディにそういうクルーはおらず、自分ひとりでのし上がった。今はもう「自分」をどんどん出していって、セルフメイドなアーティストじゃないと成功しないことを、カーディが証明したのかなと私は思っていて。今年リゾとかミーガン・ジー・スタリオン、キャッシュ・ドールといった女性ラッパーがブレイクして、いろんな女性ラッパーがいていいんだよという扉を開いたのが、カーディだったんじゃないかなと思います。

辰巳 今まで「ヒップホップのクイーンは1人しかいない」と神話的な感じでいわれてたらしいんですけど、カーディが2週連続1位を獲った後にリゾが1位を獲ったり、いろんな女性アーティストが出てきたということは、その神話が崩れて、もっとバラエティー豊かになるんじゃないのかな。あとポップシンガー含む、女性アーティストの融和路線が目立ってきているといわれていて、リゾやビリー・アイリッシュもそうですが、ほかのアーティストとケンカしない。これまでケイティ・ペリーとレディー・ガガがレーベルに楽曲のリリース日をぶつけられたことがあったけど、最近はそういうのもないですね。

渡辺 ティナーシェという黒人女性アーティストが、「男性ラッパーは何百といるのに、黒人女性アーティストといったら、ビヨンセかリアーナしか聞こえてこない」みたいなことをインタビューで言っていて。多分それはヒップホップ界の女性ラッパーにとっても同じで、ここ10年ぐらい席がひとつだけっていう時代だったんでしょうが、今年はラプソディやイギリスのリトル・シムズといった女性ラッパーたちも素晴らしいアルバムを出している。しかもそれがちゃんと評価されている。当たり前ですけど、ヒップホップだけを見ても、男性アーティストは誰かひとりだけに絞るなんてない。ジェイ・Zもカニエもケンドリックも同時代に売れてるし、ほかにもいろんな席がある。女性ラッパーもそういった状況になり始めてきているのかなと、去年~今年、非常に感じるところですね。

――融和路線でいえば、長年いがみ合っていたケイティ・ペリーとテイラー・スウィフトが今年電撃和解をしましたが、辰巳さんはどう見ていましたか?

辰巳 あれも融和路線ですよね。融和路線は多分、アリアナ・グランデの「thank u, next」という曲ぐらいからブームになってきていて。アリアナが曲で元カレたちをディスるのかと思ったら、彼らとの付き合いを肯定して前に進むような、ポジティブな感じのムードが生まれましたね。最近は明るいポップなムードの曲のはやりが戻ってきて。テイラーも、その流れについてきていますね。明るく友好的な愛を説いている。

渡辺 辰巳さんは、2020年はどういうムードになると思いますか?

辰巳 どうなんですかね。2019年は、キャンセルカルチャー(炎上や批判などによって商品やサービスを停止に追い込むだけではなく、特定個人のキャリアに終止符を打とうとする動き)や、行きすぎたウォークカルチャー(awake<目覚める>から派生したスラングで、不当な差別などに目覚めてアクションを起こすというもの)への批判が活発になったと聞きました。アリアナ・グランデ、チャーリー・XCXらも間接的にですが、「フェイクウォーカー」を批判したこともあったんです。この場合、「フェイク」とつくので、社会正義運動のように見せかけて精査せずにバッシングするユーザーやメディア媒体を批判するニュアンスで、キャンセルカルチャーと距離が近い。

渡辺 あらを探そうと思えば、絶対誰もが持っているじゃないですか。

辰巳 そうなんですよ。でも批判に対して、企業側も自粛しすぎたことがキャンセルカルチャーを勢いづけた部分もあると思う。バーバリーのショーに参加したモデルが、マリン・テーマのフーディーについて「ひもが、首つり自殺のひもに見える」との批判をインスタグラムに投稿したら、メディアがすぐに「バーバリーが自殺フーディーを発売」と報じて、バーバリー側もすぐ謝る。個人的に、このケースは、議論を深めていってもよかったと思うんですが……企業側はメディア対応も大変でしょうし、すぐに火消ししたほうが商売的には楽なんでしょうね。そういったキャンセルカルチャー的な動きは、反省や再構築が進みそうです。でもアメリカのポップカルチャーがすごいのは、カニエとか、映画『ジョーカー』(2019)のトッド・フィリップス監督ら、ウォークカルチャーなどの今までネガティブ意見を言いにくかった潮流を批判したクリエイターの作品が、興行的・数字的にもトップを取っていて。

渡辺 そこがすごいところですよね。みなさんが作品として享受するし、金になるし、作品は消えない。

辰巳 いろんな議論があって、その賛否両方が作品にすぐさま取り込まれるし、それを表現した作品も受け入れられる。議論としてどっちが良い悪いという話ではなくて、ダイナミズム自体、吸収力自体がすごいところだなと思います。

渡辺 確かに日本だとキャンセルカルチャーって、炎上してなくなって終わりになることのほうが多い。

辰巳 あと「社会正義」系列でいうと、近年はディズニー映画の進歩主義路線が賛否を呼んでいるわけですが、実はハリウッドの劇場大作は世界各地で売り上げを立てなきゃいけない。業界として一番重視しているのが中国市場なわけです。セクシャルマイノリティを感じさせるシーンを入れると、中国などで規制されるリスクがある。実写版『美女と野獣』(2017)やフォックスの『ボヘミアン・ラプソディ』(18)が複数の国で規制対象や騒動になってからは(※1)、ハリウッド・スタジオ全体が抑えめになってきていると報道されています。それはキャンセルカルチャーとかじゃなく、国家介入、表現規制の問題ですよね。

渡辺 しかも今ハリウッドって、中国資本が至る所に入ってるわけですから。

辰巳 ドルチェ&ガッバーナの事件(※2)のように、本当に市場から締め出される恐怖もある。NBA騒動(※3)もありましたし、2020年以降は他国市場のコンテンツ検閲リスクに関する議論が大きくなるのではと思っています。今は自由でクリエイティブといわれている「ネットフリックス」も、競争の中で国際展開重視になってきてるし、新しい実験的な作品を出すというスタイルは続けられないかもしれない。なので、2010年代はいろんな議論や反発があり、ウォークカルチャーのストレスもたまっているんですが、将来2010年代を振り返ったときに、「1970年代みたいに自由とか開放とか革命とかがあったよね」「中国とかインドの興行をあまり気にせずに作品を作れた時代だった」と言われる可能性もあると思います。国際情勢を考えたら、グローバル展開コンテンツがアメリカ的自由を世界中で貫くというのは難しいかもしれない。

――今まではアメリカの自由を流布できたけど、今後は中国とかインドで受け入れられるものに、どうしても近づかざるを得ない?

渡辺 インドは今、エンタメ的にボリウッド時代とは違う注目のされ方だと感じます。「Spotify」でも「デシラップ」という公式プレイリスト(現在はインドの国番号を用いた「+91」というタイトルに改名)が人気を集めています。「デシ」ってインド系、またはインドに近いバングラデシュなどの南アジア系の人々や文化を指す言葉とのことで、場合によっては差別的な意味合いを持つので、Spotifyのプレイリストも改名されたのではと思うのですが。今年、アカデミー賞の短編ドキュメンタリー賞を撮ったのが『ピリオド ―羽ばたく女性たち―』という作品なんです。これはインドの女の子たちの生理事情、ナプキンなどの生理用品が手に入らず、でもそれをどうにかしようという内容の、30分のショートドキュメンタリー。それがアカデミー賞を受賞して、かつネットフリックスで公開されている。インドは今、経済的にもすごい勢いで発展しているし、人材的にも優秀な人がそろっている国。今後アジアは、韓国・日本・中国ではなく、インドや東南アジアが注目されていく時代なのかもしれません。

辰巳 そうですね。ビジネス的にも、インドの時代といわれてます。

渡辺 だから、どうアジアが発展するかで、アメリカにおけるアジアの立ち位置や、カルチャーの流れも変わっていくと思います。

※1 『美女と野獣』はマレーシアで、『ボヘミアン・ラプソディ』は中国で、キャラクターが同性愛者だと感じさせるシーン、カミングアウトするシーンが削除・修正された

※2 もともとドルチェ&ガッバーナの中国向け広告動画において、「不自由そうに箸でピザを食べる」といった描写があり、人種差別的だと批判が相次いだ。その後、とあるインスタグラムユーザーが、同ブランドのデザイナー、ステファノ・ガッバーナとのやりとりの中で、彼が中国を侮辱するようなコメントをしたとスクリーンショット付きで拡散(ステファノはアカウントが乗っ取られたと主張)。予定したファッションショーが中止になったほか、中国最大のネットショッピングサイト「アリババ」や百貨店、免税店などが同ブランドの商品の取り扱いを中止するなど、事実上、中国市場から締め出された形となった

※3 米プロバスケットボール(NBA)のヒューストン・ロケッツのジェネラルマネジャー、ダリル・モーリー氏が、香港でのデモを支持する旨をTwitterに投稿。これに対し、NBAをスポンサードしていた中国企業が出資の取りやめ・一時停止を次々と発表し、中国におけるNBAの放映権を持つテンセントも一時放映を停止した。その後、ダリル氏は該当ツイートを削除したが、米メディアやファンは「NBAから表現の自由が失われる」と批判。後日、スポンサードの一時停止が解消され、試合の放映も再開されたが、米中共に禍根を残す形となった

 

【米エンタメ2019年総決算】カニエ「宗教に傾倒」、カーダシアン家「コントロール不能」、ビヨンセは「優等生すぎ」!?【渡辺志保×辰巳JUNK(上)】

 1月3日に米ケーブル局「Lifetime」がR&B歌手R・ケリーの性的虐待告発ドキュメンタリー『Surviving R.Kelly(R・ケリーからの生還)』を放送するという衝撃的な出来事から始まった、2019年の米ショービス界。#Me Too以降は性暴力根絶、有害な男らしさへの警鐘といった機運が高まっており、さらには多様性ある社会を目指すためのポリティカル・コレクトネスが作品はもちろんアーティスト自身にも求められるなど、業界そのものの価値観が大きく変わろうとしている。

 そこで、ブラックミュージックやヒップホップに詳しいライターの渡辺志保さんと、ゴシップとカルチャーの両視点からショービズ界に斬り込むライター辰巳JUNKさんに、19年に起こったトピックを振り返りつつ、来年以降の動向を占ってもらった。

――今年も本当にいろんなことが起こりましたが、気になる出来事はありましたか?

渡辺志保さん(以下、渡辺) 例年に続き、個人的には今年もカニエ・ウェスト、キム・カーダシアン夫妻が気になっていました。1月にはカニエがサンデーサービス(※1)をスタートしたんですよ。最初はキムのインスタグラム・ストーリーでちょっと見られるぐらいだったのですが、徐々に参加していたミュージシャンもインスタに上げ始めて、「なんだこれ?」と広まっていったんです。4月に行われたアメリカ最大の音楽フェス「コーチェラフェスティバル」でも、出張版サンデーサービスを催して。もともとカニエは、今年のコーチェラにヘッドライナーとして出演する予定だったんですけど、ステージじゃなくてドームを作りたいと言いだしたんです。主催者側が「立地的に無理」と言ったら、「じゃあもう出ません」ということで、いったんは出演がキャンセルになった。結局メイン会場から離れた原っぱみたいなところを使い、かなりイレギュラーな形でサンデーサービスを持っていった。その際に、サンデーサービスが初めて世界中に生中継されて、その全容が明らかになったんです。そのぐらい、今年は宗教色の濃い活動が盛んでしたね。

 10月25日にアルバム『JESUS IS KING』を発売したんですが、制作期間中はスタッフに婚前交渉を禁止するとか、自分のアルバムでは下品な言葉は絶対使わないとか、そこまで徹底していたみたいで、もともと作っていた別のアルバムはお蔵入りになった。個人的に、いちファンとしてはカニエと周波数を合わせるのがちょっと大変な1年でした。

辰巳JUNKさん(以下、辰巳) だって1年ぐらい前は「妻の姉妹全員とヤリたい」みたいな下品な曲(「XTCY」)を作ってましたよね。

渡辺 そう。去年9月には米最大級のポルノサイト「Pornhub」の「Pornhub Awards」に、カニエのクロージングライン「イージー」からポルノ女優用の衣装を提供していたんですよ。しかも、ちゃんと特別に誂えた素敵な衣装で、おっぱいバーンって出てるみたいな。それ用に「I Love It」という曲を作ったり、そのリリックも「おまえは本当になんてヤリマンなんだ」といった歌詞で身もふたもない感じだったんですけど……。

――そこまで方向転換して、ファンはついていけてるんですか?

辰巳 あんまりついてきてない。

渡辺 でも『JESUS IS KING』はビルボードで1位になっていて、同時にクリスチャン・ミュージック部門でも1位を獲っているんです。賛否両論ある感じで、アルバムに対するレヴューも真っ二つに分かれているという印象です。

辰巳 サンデーサービスは、ブラッド・ピットらハリウッドセレブも参加してますよね。その流れのもとにありそうな存在が、ジャスティン・ビーバーやセレーナ・ゴメスらが通っていた「ヒルソング教会」。サンデーサービスと同じように音楽をメインとした礼拝なんですけれど。ニック・ジョナスも通っているし、キムエ夫妻(キム・カーダシアンとカニエ)の結婚式もヒルソングと近しい牧師に来てもらってました。カーダシアン姉妹の中では、コートニーが一番熱心に通っていました。一時期、ジャスティンがコートニーとウワサされたのは、同じ教会に通う信者だからかも。当時のジャスティンはセレーナ、いま妻となったヘイリー、コートニーら、信者仲間とばっかりウワサが出ている。Twitterを見ていておもしろいなと思ったのは、「『JESUS IS KING』を聞いて、ヒルソングからカニエ教会に移るセレブは多そう」という内容のツイートです。

※1 一般的な日曜礼拝とは異なり、牧師による説法ではなく、ゴスペルなどのパフォーマンスがメイン。もともとは一部の人しか参加できないクローズドな形だったが、回を重ねるごとに規模が大きくなり、最近では多くのセレブも参加している

――今年、こんなにもカニエの活動に宗教色が強くなった原因というのは?

渡辺 カニエは16年の8月から『ザ・セイント・パブロ・ツアー』と題したツアーで全米を回ってたんですが、12月に途中で切り上げて、精神疾患が原因で入院した。それも本人の意思にそぐわない形で入院し、治療の際にオピオイド(※2)が使われたそうで。それでカニエは「病院側にオピオイド中毒にされちまった」と歌の中でも言うようになった。加えて、昨年リリースされたアルバム『ye』ではかねてから患っていた双極性障害のことや自殺願望があったとくみ取れるようなことも歌うように。さらに10年以上前になりますが、07年には最愛の母親であるドンダを亡くし、かつ彼女の死に目にも会えなかった。なので、常に喪失感や虚無感、焦燥感といったものに襲われてたのかなと。そこで自分が信頼できる牧師に出会い、大きく宗教的なほうに傾いていったのではないかというのが、私の個人的な推察です。でも今、アメリカの若いアーティストはメンタルヘルスについてラップしたり、自殺問題を扱うドラマ作品が増えたりという状況下ですから、もしかすると宗教は次のトレンドになるんですかね?

辰巳 「ニューヨーク・タイムズ」によると、北米の若者は信仰心が薄くなってるらしいです。それなのに、一般的に保守的とされる福音派寄りのヒルソング教会がリベラル都市の若者に受けたから驚かれている。実際に教会に行った人に聞くと、すごく楽しいらしいんですよ。サンデーサービスと一緒で、厳粛な雰囲気というより、コンサート、フェスみたいな。だからカニエが新しい形のヤング受け教会っぽいものを始めたというのは確かにそうなんですけど、その前にはヒルソング・ブームがある。もともとあそこの牧師はロックスターみたいな感じで、サンローランの30万円のジャケットとか着てる。諸説ありますが、「金を稼いでもいい」的なビジネスマンを祝福する教えのようなので、セレブと相性がいいですよ。

渡辺 カニエって、お金を稼ぐことに対してはやっぱり貪欲なんですよね。ちゃんと金も稼ぎつつ、自分の教えや自分の愛をみんなに広めたいという姿勢がカニエなので、ヒルソングと共鳴することがあるのかも。

――今年の前半、ジャスティンも宗教的な言動が多かったですが、カニエほどの影響力はなかったように思います。その差はなんだと思いますか?

辰巳  いや、でも影響力ありますよ。だってヒルソングで飛び込みライブとかするんですもん。本気で追いかけるようなファンじゃなくても、Twitterを見ていて歩いて5分ぐらいの教会にジャスティンが来てると知ったら、とりあえず行く人は絶対いるじゃないですか。

渡辺 カニエはやり方が派手だし、賛否の「否」も多いから目立ってしまうんじゃないですかね。あと、もともと最近のカニエは「黒人性が薄い」というふうに皮肉っぽく言われることもあって、サンデーサービスも最初、ロサンゼルスのカラバサスだけで開催していたんです。カラバサスって、日本でいうと田園調布の奥の奥みたいな、一般市民が入れないくらいの高級住宅地なんですよ。だから、貧困や自分たちの置かれた環境の苦しさから、心の拠り所として宗教を信仰しているような、本来カニエが自分のコミュニティとしていてもおかしくないような一般的なアフリカン・アメリカンの人々が育ったコミュニティと全く真逆のところで、自分の宗教的イベントをスタートさせてるのはすごく皮肉だと思ったし、今のカニエっぽいなと同時に思いましたね。たぶん、ジャスティンは逆で、元の彼のイメージと信仰のイメージが乖離していないのかなとも思う。何不自由ない家庭で育てられた、みたいな。

辰巳 でもジャスティンのお母さんは、もともと福音派の信者なんですよ。シングルマザーで、そんなに裕福でもない。ジャスティンを妊娠したときはドラッグ中毒にも苦しんでいて、中絶も考えたけど、やっぱり産もうと。それで今は中絶禁止運動をしています。

渡辺 そうなんですね。今年は中絶禁止法がジョージア州やアラバマ州などで次々可決されたじゃないですか(※3)。福音派は、基本的には中絶禁止ですよね。アラバマで中絶禁止法が可決されたときに、若い男性ラッパーたちがSNSで反対の姿勢を示したんです。ジョージア州のときも、ミーゴスのオフセットが「これは現代の奴隷法と一緒」とツイートしていました。今後どんどんカニエが福音派に寄っていくことがあれば、そこでまた思想の対立が浮き彫りになってくるのかなと。と言いつつ、カニエは本当に言うことがコロコロ変わるので。そこが前提としてあるので、彼の今後を占うのは、非常に難しいんですが。

※2 麻薬性鎮痛薬。アメリカでは多くの依存症患者を生み出したことで社会問題になっており、2018年は1日に100人を超える人がオピオイドの過剰摂取で亡くなったとも報じられている
※3 今年に入って、アラバマ州やミズーリ州など9つの州で、中絶を禁止したり、制限をかけたりするような法案が次々と成立。性暴力による妊娠も例外としないなど厳しい規定を掲げる州もあり、多くの市民から反発が相次いだ。背景には、福音派を中心とする宗教保守の存在と、彼らの票を取り込みたいトランプ大統領の思惑の一致があるともいわれている

――一方、カニエの妻であるキム・カーダシアンは実業家としてはもちろん、近年、罪状に対して量刑の重い囚人の減刑を訴える活動家としても動いています。また今年は、司法試験受験資格の取得を公言しました。この動きはどう見ていますか?

渡辺 いつまでたってもお騒がせセレブ路線は厳しいというのはあるんじゃないですか。

辰巳 話題になった補正下着ブランド「SKIMS」は今までの商品と違って、多様性路線の広告を出しています。やっぱり世論的にも、ヴィクトリアズ・シークレット(※4)は「時代遅れなんじゃ?」といった感じなので、彼女は既存路線が社会的にシビアになってきたという時流を読んでいると思います。

渡辺 カーダシアン家のリアリティショー『カーダシアン家のお騒がせセレブライフ』を見ていても、台本通りにいかない現実がどんどん浮き彫りになっているように感じます。例えば、長女コートニーは、スコット・ディシックという恋人と、彼との間に生まれた子ども3人を抱えているのが番組の“テンプレ”だったんですが、この2人が別れちゃって。その後、スコットが義妹ケンダル・ジェンナーと仲の良いモデルと付き合いだしたり。今年でいえば、妹カイリーの親友ジョーディン・ウッズと、クロエの内縁の夫で娘のパパであるトリスタン・トンプソンの浮気疑惑というすごいゴシップもありました。しかもクロエが妊娠9カ月のときもトリスタンは浮気をしていて、子どもを産めば夫婦関係が落ち着くと思いきや、すぐジョーディンとの浮気が浮上。

 こうして、番組を仕切っている母クリスの想像を超える、ネガティブなリアルの部分が明るみになってきた。これまでテレビ的においしいと思ったら妊娠中の娘たちを常にカメラに追わせてきたんですが、昨年、カイリーが妊娠・出産したときは例外で、産むまで全く公表しなかった。この3~4年、みんなが面白がるようなお騒がせセレブリティ一家という枠には収まりきらなくなってしまっていると思います。姉妹5人がそれぞれにアイデンティティや、本当にやりたいことを考え始めているのかも。

辰巳 もともと剛腕なクリスお母さんの指揮のもと始まったリアリティショーで、娘たちは若かったこともあって、結構やらされてた仕事もあったんじゃないかと思います。特にジェンナー姉妹は、幼いころから自宅でカメラが回っているわけじゃないですか。クリスは常に生き生きしてるけど、カーダシアン姉妹はパリス・ヒルトンほど「カメラのフラッシュが大好き」ではなさそうだし。あと、キムはパリの強盗事件(※5)の影響が結構大きかったと思います。犯人は、キムのSNSの投稿を見て、居場所を特定したと言ってるので。それ以降は、きらびやかでゴージャスな私生活というのは前面に出していないし。

渡辺 私はキムの弁護士を目指すという動きは、非常にすばらしいなと思っています。40手前で、子どもを4人抱えて。キムが弁護士になったら、カニエがかねてから公言している2024年の大統領選出馬にも大きな支えになるのかな。

※4 アメリカ最大手のランジェリーブランド。世界的スーパーモデルがランウェイを練り歩く毎年恒例のファッションショーは、女性たちの羨望を集めていた。しかし、昨年同社の幹部がプラスサイズモデルやトランスジェンダーモデルは起用しないと明言。時代に逆行するような発言と同社の世界観は、性差別・多様性の欠如と非難されるようになり、徐々に売り上げにも影響が表れた。今年はショーを中止することが発表されている
※5 2016年10月、ファッションウィークのためにパリの高級プレジデンスに滞在していたキム・カーダシアンのもとに、警察官を装った5人組が押し入り、総額10億円ともいわれる宝石が盗まれた。キムは被害に遭う前に、SNSで巨大ダイヤがあしらわれた指輪やパリでの様子を投稿しており、犯人たちはこれを見て犯行を計画したという

――キムエ夫妻とは、夫同士は師弟関係にありながら、妻たちは性格も価値観もまったく合わなそうなジェイ・Z&ビヨンセ夫妻の今年はいかがでしょうか?

渡辺 昨年は2人でアルバムもリリースしていたけど、今年はあんまり夫妻としての印象がないかも。ビヨンセは映画『ライオン・キング』の声優を務め、同作に絡めたアルバムを作ってそこにジェイが1曲参加していましたけど。

――ビヨンセが双子を生んでから体形をコントロールできずに、なかなか表に出てこないという見方もあります。

辰巳 基本、あんまり出てこないじゃないですか。インタビューも媒体を絞っているし、例えば米「VOGUE」に出ても、自分で編集している。だけど『ライオン・キング』関連ではめちゃくちゃインタビューを受けていて、ディズニーパワーは半端ねぇなって思いました。

渡辺 本当、ディズニーパワー半端ないですよね。ビヨンセが声優を務めて、なおかつ彼女は、レーベル面ではソニー所属なのですが、ディズニーとソニーが組んでビヨンセのアルバム『ライオン・キング:ザ・ギフト』を発表した。一方で、『ライオン・キング』本編のサウンドトラックをまとめているのが、ファレル・ウィリアムズなんですね。なので、ビヨンセ、ジェイ・Z、そしてファレルのヒップホップ優等生三つ巴感が半端ないなと思って。こういう人たちが業界を牛耳っていくんだなと思いました。

 大企業と組んで自分の作品をすごくまっとうな形で出すというのもカニエとは正反対だし、ビヨンセには絶対ジェイが関わっているから、ジェイの抜け目なさもすごく感じた。『ザ・ギフト』は、本当にバランスがいいんですよね。今のアフリカで活躍しているアーティストたちを多くフィーチャーして、アルバムをまとめ上げた。そこに加えてジェイもいるし、ケンドリック・ラマーもいるし、同じく声優を務めたチャイルディッシュ・ガンビーノもいるし、百点満点! 今年もすごい優等生チックな動きだったかなと。

辰巳 今の時代に優等生といわれるのは、安心感というかレア感もありますよね。

渡辺 そうそう。今、一世代後の若いアーティストって――例えばリゾやビリー・アイリッシュもそうですが――既存のスタンダードじゃなくて、「どこかいびつでも、私はこうよ」って常識を打ち破っていくことが求められていると思うんですよ。ビヨンセは圧倒的な牽引力があるんだけど、優等生的な完璧主義者でもある。なので、どのようにして彼女が次世代にバトンを渡す時が来るのか、ちょっと気になります。 

 今年ネットフリックスで配信されて大きな話題となった『HOMECOMING: ビヨンセ・ライブ作品』(※6)も本当に素晴らしい作品で、ここでひとつ、彼女は自分のルーツのことも描いて、アーティストとして表現しきったっていうのはあると思う。だから次のビヨンセがどういう手を打ってくるのか、めちゃめちゃ気になっています。そうこうしている間に、例えばリアーナはビューティーやメゾンブランドを始めて大成功している。ビヨンセも10年くらい前にファッションブランドを立ち上げたけど、すぐ畳んだんですよ。だから、彼女たちが今の後輩たちをどう見ているのかも、すごく気になる。ただアイコンとしては不動の地位を築いているアーティストなので、ここから人気がガタ落ちするとか、変なアルバムを作って叩かれるとか、そういったことは絶対ない。どういう動きをするのか、そこに興味が集まっています。

(第2回に続く)

※6 2018年のコーチェラのヘッドライナーを務めるまでの彼女と、実際のステージを映し出したドキュメンタリー映画。前年の双子の妊娠・出産、産後の体形変化、黒人であることについて話す貴重な映像となっている

【米エンタメ2019年総決算】カニエ「宗教に傾倒」、カーダシアン家「コントロール不能」、ビヨンセは「優等生すぎ」!?【渡辺志保×辰巳JUNK(上)】

 1月3日に米ケーブル局「Lifetime」がR&B歌手R・ケリーの性的虐待告発ドキュメンタリー『Surviving R.Kelly(R・ケリーからの生還)』を放送するという衝撃的な出来事から始まった、2019年の米ショービス界。#Me Too以降は性暴力根絶、有害な男らしさへの警鐘といった機運が高まっており、さらには多様性ある社会を目指すためのポリティカル・コレクトネスが作品はもちろんアーティスト自身にも求められるなど、業界そのものの価値観が大きく変わろうとしている。

 そこで、ブラックミュージックやヒップホップに詳しいライターの渡辺志保さんと、ゴシップとカルチャーの両視点からショービズ界に斬り込むライター辰巳JUNKさんに、19年に起こったトピックを振り返りつつ、来年以降の動向を占ってもらった。

――今年も本当にいろんなことが起こりましたが、気になる出来事はありましたか?

渡辺志保さん(以下、渡辺) 例年に続き、個人的には今年もカニエ・ウェスト、キム・カーダシアン夫妻が気になっていました。1月にはカニエがサンデーサービス(※1)をスタートしたんですよ。最初はキムのインスタグラム・ストーリーでちょっと見られるぐらいだったのですが、徐々に参加していたミュージシャンもインスタに上げ始めて、「なんだこれ?」と広まっていったんです。4月に行われたアメリカ最大の音楽フェス「コーチェラフェスティバル」でも、出張版サンデーサービスを催して。もともとカニエは、今年のコーチェラにヘッドライナーとして出演する予定だったんですけど、ステージじゃなくてドームを作りたいと言いだしたんです。主催者側が「立地的に無理」と言ったら、「じゃあもう出ません」ということで、いったんは出演がキャンセルになった。結局メイン会場から離れた原っぱみたいなところを使い、かなりイレギュラーな形でサンデーサービスを持っていった。その際に、サンデーサービスが初めて世界中に生中継されて、その全容が明らかになったんです。そのぐらい、今年は宗教色の濃い活動が盛んでしたね。

 10月25日にアルバム『JESUS IS KING』を発売したんですが、制作期間中はスタッフに婚前交渉を禁止するとか、自分のアルバムでは下品な言葉は絶対使わないとか、そこまで徹底していたみたいで、もともと作っていた別のアルバムはお蔵入りになった。個人的に、いちファンとしてはカニエと周波数を合わせるのがちょっと大変な1年でした。

辰巳JUNKさん(以下、辰巳) だって1年ぐらい前は「妻の姉妹全員とヤリたい」みたいな下品な曲(「XTCY」)を作ってましたよね。

渡辺 そう。去年9月には米最大級のポルノサイト「Pornhub」の「Pornhub Awards」に、カニエのクロージングライン「イージー」からポルノ女優用の衣装を提供していたんですよ。しかも、ちゃんと特別に誂えた素敵な衣装で、おっぱいバーンって出てるみたいな。それ用に「I Love It」という曲を作ったり、そのリリックも「おまえは本当になんてヤリマンなんだ」といった歌詞で身もふたもない感じだったんですけど……。

――そこまで方向転換して、ファンはついていけてるんですか?

辰巳 あんまりついてきてない。

渡辺 でも『JESUS IS KING』はビルボードで1位になっていて、同時にクリスチャン・ミュージック部門でも1位を獲っているんです。賛否両論ある感じで、アルバムに対するレヴューも真っ二つに分かれているという印象です。

辰巳 サンデーサービスは、ブラッド・ピットらハリウッドセレブも参加してますよね。その流れのもとにありそうな存在が、ジャスティン・ビーバーやセレーナ・ゴメスらが通っていた「ヒルソング教会」。サンデーサービスと同じように音楽をメインとした礼拝なんですけれど。ニック・ジョナスも通っているし、キムエ夫妻(キム・カーダシアンとカニエ)の結婚式もヒルソングと近しい牧師に来てもらってました。カーダシアン姉妹の中では、コートニーが一番熱心に通っていました。一時期、ジャスティンがコートニーとウワサされたのは、同じ教会に通う信者だからかも。当時のジャスティンはセレーナ、いま妻となったヘイリー、コートニーら、信者仲間とばっかりウワサが出ている。Twitterを見ていておもしろいなと思ったのは、「『JESUS IS KING』を聞いて、ヒルソングからカニエ教会に移るセレブは多そう」という内容のツイートです。

※1 一般的な日曜礼拝とは異なり、牧師による説法ではなく、ゴスペルなどのパフォーマンスがメイン。もともとは一部の人しか参加できないクローズドな形だったが、回を重ねるごとに規模が大きくなり、最近では多くのセレブも参加している

――今年、こんなにもカニエの活動に宗教色が強くなった原因というのは?

渡辺 カニエは16年の8月から『ザ・セイント・パブロ・ツアー』と題したツアーで全米を回ってたんですが、12月に途中で切り上げて、精神疾患が原因で入院した。それも本人の意思にそぐわない形で入院し、治療の際にオピオイド(※2)が使われたそうで。それでカニエは「病院側にオピオイド中毒にされちまった」と歌の中でも言うようになった。加えて、昨年リリースされたアルバム『ye』ではかねてから患っていた双極性障害のことや自殺願望があったとくみ取れるようなことも歌うように。さらに10年以上前になりますが、07年には最愛の母親であるドンダを亡くし、かつ彼女の死に目にも会えなかった。なので、常に喪失感や虚無感、焦燥感といったものに襲われてたのかなと。そこで自分が信頼できる牧師に出会い、大きく宗教的なほうに傾いていったのではないかというのが、私の個人的な推察です。でも今、アメリカの若いアーティストはメンタルヘルスについてラップしたり、自殺問題を扱うドラマ作品が増えたりという状況下ですから、もしかすると宗教は次のトレンドになるんですかね?

辰巳 「ニューヨーク・タイムズ」によると、北米の若者は信仰心が薄くなってるらしいです。それなのに、一般的に保守的とされる福音派寄りのヒルソング教会がリベラル都市の若者に受けたから驚かれている。実際に教会に行った人に聞くと、すごく楽しいらしいんですよ。サンデーサービスと一緒で、厳粛な雰囲気というより、コンサート、フェスみたいな。だからカニエが新しい形のヤング受け教会っぽいものを始めたというのは確かにそうなんですけど、その前にはヒルソング・ブームがある。もともとあそこの牧師はロックスターみたいな感じで、サンローランの30万円のジャケットとか着てる。諸説ありますが、「金を稼いでもいい」的なビジネスマンを祝福する教えのようなので、セレブと相性がいいですよ。

渡辺 カニエって、お金を稼ぐことに対してはやっぱり貪欲なんですよね。ちゃんと金も稼ぎつつ、自分の教えや自分の愛をみんなに広めたいという姿勢がカニエなので、ヒルソングと共鳴することがあるのかも。

――今年の前半、ジャスティンも宗教的な言動が多かったですが、カニエほどの影響力はなかったように思います。その差はなんだと思いますか?

辰巳  いや、でも影響力ありますよ。だってヒルソングで飛び込みライブとかするんですもん。本気で追いかけるようなファンじゃなくても、Twitterを見ていて歩いて5分ぐらいの教会にジャスティンが来てると知ったら、とりあえず行く人は絶対いるじゃないですか。

渡辺 カニエはやり方が派手だし、賛否の「否」も多いから目立ってしまうんじゃないですかね。あと、もともと最近のカニエは「黒人性が薄い」というふうに皮肉っぽく言われることもあって、サンデーサービスも最初、ロサンゼルスのカラバサスだけで開催していたんです。カラバサスって、日本でいうと田園調布の奥の奥みたいな、一般市民が入れないくらいの高級住宅地なんですよ。だから、貧困や自分たちの置かれた環境の苦しさから、心の拠り所として宗教を信仰しているような、本来カニエが自分のコミュニティとしていてもおかしくないような一般的なアフリカン・アメリカンの人々が育ったコミュニティと全く真逆のところで、自分の宗教的イベントをスタートさせてるのはすごく皮肉だと思ったし、今のカニエっぽいなと同時に思いましたね。たぶん、ジャスティンは逆で、元の彼のイメージと信仰のイメージが乖離していないのかなとも思う。何不自由ない家庭で育てられた、みたいな。

辰巳 でもジャスティンのお母さんは、もともと福音派の信者なんですよ。シングルマザーで、そんなに裕福でもない。ジャスティンを妊娠したときはドラッグ中毒にも苦しんでいて、中絶も考えたけど、やっぱり産もうと。それで今は中絶禁止運動をしています。

渡辺 そうなんですね。今年は中絶禁止法がジョージア州やアラバマ州などで次々可決されたじゃないですか(※3)。福音派は、基本的には中絶禁止ですよね。アラバマで中絶禁止法が可決されたときに、若い男性ラッパーたちがSNSで反対の姿勢を示したんです。ジョージア州のときも、ミーゴスのオフセットが「これは現代の奴隷法と一緒」とツイートしていました。今後どんどんカニエが福音派に寄っていくことがあれば、そこでまた思想の対立が浮き彫りになってくるのかなと。と言いつつ、カニエは本当に言うことがコロコロ変わるので。そこが前提としてあるので、彼の今後を占うのは、非常に難しいんですが。

※2 麻薬性鎮痛薬。アメリカでは多くの依存症患者を生み出したことで社会問題になっており、2018年は1日に100人を超える人がオピオイドの過剰摂取で亡くなったとも報じられている
※3 今年に入って、アラバマ州やミズーリ州など9つの州で、中絶を禁止したり、制限をかけたりするような法案が次々と成立。性暴力による妊娠も例外としないなど厳しい規定を掲げる州もあり、多くの市民から反発が相次いだ。背景には、福音派を中心とする宗教保守の存在と、彼らの票を取り込みたいトランプ大統領の思惑の一致があるともいわれている

――一方、カニエの妻であるキム・カーダシアンは実業家としてはもちろん、近年、罪状に対して量刑の重い囚人の減刑を訴える活動家としても動いています。また今年は、司法試験受験資格の取得を公言しました。この動きはどう見ていますか?

渡辺 いつまでたってもお騒がせセレブ路線は厳しいというのはあるんじゃないですか。

辰巳 話題になった補正下着ブランド「SKIMS」は今までの商品と違って、多様性路線の広告を出しています。やっぱり世論的にも、ヴィクトリアズ・シークレット(※4)は「時代遅れなんじゃ?」といった感じなので、彼女は既存路線が社会的にシビアになってきたという時流を読んでいると思います。

渡辺 カーダシアン家のリアリティショー『カーダシアン家のお騒がせセレブライフ』を見ていても、台本通りにいかない現実がどんどん浮き彫りになっているように感じます。例えば、長女コートニーは、スコット・ディシックという恋人と、彼との間に生まれた子ども3人を抱えているのが番組の“テンプレ”だったんですが、この2人が別れちゃって。その後、スコットが義妹ケンダル・ジェンナーと仲の良いモデルと付き合いだしたり。今年でいえば、妹カイリーの親友ジョーディン・ウッズと、クロエの内縁の夫で娘のパパであるトリスタン・トンプソンの浮気疑惑というすごいゴシップもありました。しかもクロエが妊娠9カ月のときもトリスタンは浮気をしていて、子どもを産めば夫婦関係が落ち着くと思いきや、すぐジョーディンとの浮気が浮上。

 こうして、番組を仕切っている母クリスの想像を超える、ネガティブなリアルの部分が明るみになってきた。これまでテレビ的においしいと思ったら妊娠中の娘たちを常にカメラに追わせてきたんですが、昨年、カイリーが妊娠・出産したときは例外で、産むまで全く公表しなかった。この3~4年、みんなが面白がるようなお騒がせセレブリティ一家という枠には収まりきらなくなってしまっていると思います。姉妹5人がそれぞれにアイデンティティや、本当にやりたいことを考え始めているのかも。

辰巳 もともと剛腕なクリスお母さんの指揮のもと始まったリアリティショーで、娘たちは若かったこともあって、結構やらされてた仕事もあったんじゃないかと思います。特にジェンナー姉妹は、幼いころから自宅でカメラが回っているわけじゃないですか。クリスは常に生き生きしてるけど、カーダシアン姉妹はパリス・ヒルトンほど「カメラのフラッシュが大好き」ではなさそうだし。あと、キムはパリの強盗事件(※5)の影響が結構大きかったと思います。犯人は、キムのSNSの投稿を見て、居場所を特定したと言ってるので。それ以降は、きらびやかでゴージャスな私生活というのは前面に出していないし。

渡辺 私はキムの弁護士を目指すという動きは、非常にすばらしいなと思っています。40手前で、子どもを4人抱えて。キムが弁護士になったら、カニエがかねてから公言している2024年の大統領選出馬にも大きな支えになるのかな。

※4 アメリカ最大手のランジェリーブランド。世界的スーパーモデルがランウェイを練り歩く毎年恒例のファッションショーは、女性たちの羨望を集めていた。しかし、昨年同社の幹部がプラスサイズモデルやトランスジェンダーモデルは起用しないと明言。時代に逆行するような発言と同社の世界観は、性差別・多様性の欠如と非難されるようになり、徐々に売り上げにも影響が表れた。今年はショーを中止することが発表されている
※5 2016年10月、ファッションウィークのためにパリの高級プレジデンスに滞在していたキム・カーダシアンのもとに、警察官を装った5人組が押し入り、総額10億円ともいわれる宝石が盗まれた。キムは被害に遭う前に、SNSで巨大ダイヤがあしらわれた指輪やパリでの様子を投稿しており、犯人たちはこれを見て犯行を計画したという

――キムエ夫妻とは、夫同士は師弟関係にありながら、妻たちは性格も価値観もまったく合わなそうなジェイ・Z&ビヨンセ夫妻の今年はいかがでしょうか?

渡辺 昨年は2人でアルバムもリリースしていたけど、今年はあんまり夫妻としての印象がないかも。ビヨンセは映画『ライオン・キング』の声優を務め、同作に絡めたアルバムを作ってそこにジェイが1曲参加していましたけど。

――ビヨンセが双子を生んでから体形をコントロールできずに、なかなか表に出てこないという見方もあります。

辰巳 基本、あんまり出てこないじゃないですか。インタビューも媒体を絞っているし、例えば米「VOGUE」に出ても、自分で編集している。だけど『ライオン・キング』関連ではめちゃくちゃインタビューを受けていて、ディズニーパワーは半端ねぇなって思いました。

渡辺 本当、ディズニーパワー半端ないですよね。ビヨンセが声優を務めて、なおかつ彼女は、レーベル面ではソニー所属なのですが、ディズニーとソニーが組んでビヨンセのアルバム『ライオン・キング:ザ・ギフト』を発表した。一方で、『ライオン・キング』本編のサウンドトラックをまとめているのが、ファレル・ウィリアムズなんですね。なので、ビヨンセ、ジェイ・Z、そしてファレルのヒップホップ優等生三つ巴感が半端ないなと思って。こういう人たちが業界を牛耳っていくんだなと思いました。

 大企業と組んで自分の作品をすごくまっとうな形で出すというのもカニエとは正反対だし、ビヨンセには絶対ジェイが関わっているから、ジェイの抜け目なさもすごく感じた。『ザ・ギフト』は、本当にバランスがいいんですよね。今のアフリカで活躍しているアーティストたちを多くフィーチャーして、アルバムをまとめ上げた。そこに加えてジェイもいるし、ケンドリック・ラマーもいるし、同じく声優を務めたチャイルディッシュ・ガンビーノもいるし、百点満点! 今年もすごい優等生チックな動きだったかなと。

辰巳 今の時代に優等生といわれるのは、安心感というかレア感もありますよね。

渡辺 そうそう。今、一世代後の若いアーティストって――例えばリゾやビリー・アイリッシュもそうですが――既存のスタンダードじゃなくて、「どこかいびつでも、私はこうよ」って常識を打ち破っていくことが求められていると思うんですよ。ビヨンセは圧倒的な牽引力があるんだけど、優等生的な完璧主義者でもある。なので、どのようにして彼女が次世代にバトンを渡す時が来るのか、ちょっと気になります。 

 今年ネットフリックスで配信されて大きな話題となった『HOMECOMING: ビヨンセ・ライブ作品』(※6)も本当に素晴らしい作品で、ここでひとつ、彼女は自分のルーツのことも描いて、アーティストとして表現しきったっていうのはあると思う。だから次のビヨンセがどういう手を打ってくるのか、めちゃめちゃ気になっています。そうこうしている間に、例えばリアーナはビューティーやメゾンブランドを始めて大成功している。ビヨンセも10年くらい前にファッションブランドを立ち上げたけど、すぐ畳んだんですよ。だから、彼女たちが今の後輩たちをどう見ているのかも、すごく気になる。ただアイコンとしては不動の地位を築いているアーティストなので、ここから人気がガタ落ちするとか、変なアルバムを作って叩かれるとか、そういったことは絶対ない。どういう動きをするのか、そこに興味が集まっています。

(第2回に続く)

※6 2018年のコーチェラのヘッドライナーを務めるまでの彼女と、実際のステージを映し出したドキュメンタリー映画。前年の双子の妊娠・出産、産後の体形変化、黒人であることについて話す貴重な映像となっている

「金と名声についてどう思う?」「一番好きな姉妹は?」、雑誌の企画でカニエが妻キムにインタビュー!

 奇抜な言動でメディアにおもしろおかしく書き立てられることが多いが、ヒップホップ・アーティスト、ファッション・デザイナーとしての才能は高く評価されているカニエ・ウエスト。アメリカで社会問題になっている、オピオイド(処方鎮痛薬)依存だったことを公にし、患っている双極性障害のことを「障害じゃない、スーパーパワーだ」と言い放つなど、ポジティブで表裏のないカニエの好感度はとても高く、妻キム・カーダシアンのイメージアップにも一役買っている。

 セックス動画で有名になったキムだが、カニエのアドバイスとサポートのもと、ファッショニスタ、実業家として成功を収め、いまや多額の寄付をする慈善家としても知られるように。昨年は、不当な量刑を言い渡された女性2人のために働きかけ、見事恩赦を勝ち取った。今年4月には弁護士になるため猛勉強していることを発表。「キムが弁護士になったら、2024年の米大統領選へ意欲を見せているカニエの最大の後押しとなるはず」とファンをわくわくさせている。

 そんな2人が、アラビア版「VOGUE」最新号の“カニエがキムをインタビューする”という斬新な企画に登場。インタビュアーとしてデビューを飾ったカニエが、キムの本音を引き出したと大きな話題になっているのだ。

 まず「弁護士資格に必要な法務学の博士号を金で買おうとしている、というウワサが流れているが」というカニエの質問に、キムは買収を否定した上で「過小評価される中で、期待以上の結果を出すことが、私のやる気になるから」と、そう思われても別に構わないと回答。「いい人になろうと頑張っている。過去の過ちをいい経験として捉えて……そこから学び、成長して前に進むの」と、ポジティブに発言した。

 常にメディアに追いかけられ、スポットライトを浴びる生活については、「最悪だった時期さえも世間に見せたことを、後悔はしていない。見ている人たちがつらい状況に立たされた時に、苦しんでいるのは自分だけじゃないと思ってもらえるから。実際にたくさんの人から、『苦しい時に孤独に陥らなかったのは、あなたのおかげ』と言われるのよ」「発言力を持つ(立場になった)ことはすごく気に入っているし、与えられた(SNS)プラットフォームにも感謝している」と答え、「もう少しだけプライバシーが欲しい」こと以外に、不満はないと明かした。

 また2人の初めての「ちゃんとした」デートについての感想を聞かれると、キムは「やだ! 私ったら、どれだけ多くの時間とエネルギーを無駄遣いしてたのかしら。なんでもっと早くこうしなかったのだろう?」と答え、カニエ以上にしっくりくる人はいないと直感したそう。

 「金と名声についてどう思うか」というダイレクトな問いには、「お金は常にゴールだと考えているけど、名声には取りつかれている状態。恥ずかしくなるほど執着している…… よく名声には中毒性があるというけれど、心底同意するわ」と、赤裸々に認めた。

 カニエは、リアリティ番組『カーダシアン家のお騒がせセレブライフ』で、私生活をカメラに追わせている姉コートニー、妹クロエ、年の離れた異父妹のケンダル、カイリーの中から「一番好きな姉妹を選んで」という聞きづらい質問もぶつけたが、キムは「友人や恋愛関係のように、その時その時で変化するものだから」と戸惑いながら、「今年は私とクロエにとって最強の年」と回答した。

 「ケンダルやカイリーとも親密なのは明らかだけど、コートニー、クロエとの方が、はるかに多く一緒の時間を共に過ごしてきているでしょう? コートニー、クロエとの歴史の方が長いし、一緒にいろんなことを経験してきた。共通の友人もたくさんいるし」と説明し、「コートニーと私はいつだって親密。でも今年は、クロエとの絆がすごく深まったわ」と、今一番好きなのはクロエだとあらためて述べた。

 このインタビューは、現地時間8月26日にアラビア版「VOGUE」のウェブサイトで公開されると同時に、たちまちネット上で話題に。「パリで強盗事件に遭ったのに、世間の目にさらされることは気に入っていると明かしたのにはびっくり」「名声中毒だと認めさせたのもさすが」など、インタビュアーとしてのカニエの才能を高く買う声が、次々と上がっている。

 これまで何度か不仲報道が流れてきたカニエとキムだが、インタビューでは信頼があるからこその際どい質問や回答があり、揺るぎない関係を築いていることがうかがえる。とはいえ、ドラマ以上に波乱な展開を見せる『カーダシアン家のお騒がせセレブライフ』だけに、今後も2人の動向から目が離せない。