オリンピック組織委はなぜ無償ボランティアと同じ業務の高額アルバイトを雇うのか?

 10月28日に配布された「タウンワーク」(リクルートジョブズ)の表紙に「東京2020オリンピック・パラリンピックを支える仕事特集」の文字が踊っていた。

 中身を見てみると、パソナとヤマト運輸の大々的な人材募集広告が載っていた。載。「仕事特集」とはいえ、たった2社なのは、両社が五輪スポンサーであり、人材派遣では独占的立場にあるからだろう。ヤマトは主にロジスティクス(フォークリフト等)の仕事がメインだが、驚いたのはパソナである。

 パソナは「2020年2月から9月までの期間限定」とし、「国際スポーツ大会でのイベントスタッフ」となぜか東京五輪の名前を伏せながら、8業種のアルバイトを募集している。五輪の名を使わないのは、スポンサーレギュレーションの問題があるからだろうか。

 その募集名称は、

・国際コミュニケーション
・各競技会場運営
・選手宿泊施設運営
・IT テクノロジー
・トランスポート
・メディカル
・会場、施設管理
・バックオフィス
などとなっている。微妙にボランティアの活動名称とは違うが、内容は全く同じだ。

 例えば「国際コミュニケーション」はボランティアの「アテンド」という業務内容と同じだし、「各競技会場運営」もボランティアの「競技」と同じである。同様に「選手宿泊施設運営」は「運営サポート」、「ITテクノロジー」は「テクノロジー」、「トランスサポート」は「移動サポート」、「メディカル」は「ヘルスケア」、「バックオフィス」は「運営サポート」と業務が重なっている。唯一重ならないのは「会場、施設管理」で、会場内看板などの設置、維持管理をするという。

 つまり、ボランティアがやらない業種を募集しているのではなく、ほとんど同じ業務内容で募集しているのだ。

 だが、組織委は「五輪を支えるのは無償のボランティアだ」と言って11万人以上の無償ボランティアを募集(都市ボランティア含む)したのではなかったか。大量のタダ働きを集めておいて有償アルバイトも募集するとは、一体どういうことなのか。同じ仕事内容で一緒に働いたとして、ボランティアは何時間働いてもタダだが、このアルバイトは時給1600円。つまり1日働けば12000円近くになる。

 大会ボランティアの募集は昨年の10月から12月に実施され、約半年をかけてマッチングを行い、8万人を選定したと報じられた。それを今になって大々的にアルバイトを募集するのは、実は人手が足りない状態なのか。

 一つ考えられるのは、給料を払い、雇用関係が発生するアルバイトなら容易に辞めないだろうから、ボランティアのグループ責任者として配置しようという目論見かもしれない。大会中は酷暑が予想されるが、ボランティアは雇用関係にないためいつでも離脱できるし、組織委もそれを咎めるわけにはいかない。もし酷暑でボランティアが大量に離脱するようなことがあれば大会運営に支障が出るから、各部署に最低限の有償アルバイトを配置して、万一に備えようという算段が考えられる。

 しかしこれは、無償でもいいから大会を盛り上げたいと応募してきたボランティアをバカにしていないか。無償でもやりたいと集まってきた人々と、同じ業務を有償で請け負うアルバイトが同じ思いで働けるものだろうか。ボランティアは無償を承知で応募してきたが、彼らだって、もしもらえるなら、時給を貰った方が嬉しいに決まっている。

 「五輪を支えるボランティアは無償が大前提」と言って多くの人々を集めながら、その横で有償の、しかも高額時給でアルバイトを集めるのは、無償でも役に立ちたいというボランティアの純粋な思いを踏みにじる行為ではないのか。有償アルバイトを大々的に雇うカネがあるなら、最初からボランティアを有償で集めればよかったのではないだろうか。これでは、無償で働くボランティアがあまりにも哀れだ。

 なぜこのようなことが平然と行われるのか全く理解できないので、組織委に3度目の公開質問状を送ることにした。その質問を以下に記し、回答が来次第、こちらでお伝えしたい。

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 御中

 10月28日に配布された「タウンワーク」の「東京2020オリンピック・パラリンピックを支える仕事特集」にて、株式会社パソナとヤマト運輸株式会社の人材募集広告が掲載されていました。

 特にパソナの募集内容は、組織委が募集した大会ボランティアと業務がほぼ同じ(「会場・施設管理」を除く)であるにも関わらず、時給は1600円と高額が提示されていました。この件に関して、以下お尋ねしたいと思います。

(1)今回のパソナの募集人数は何人でしょうか
(2)今回の人材募集に関する、組織委からパソナへの業務委託費を開示してください
(3)8万人の大会ボランティアを無償で集めながら、なぜほぼ同じ業務内容の有償アルバイトを募集するのでしょうか。ボランティアの人数が足りないのでしょうか
(4)ボランティアとアルバイトは同じフィールド(職場)で勤務するのでしょうか
(5)ボランティアとアルバイトの制服は違うのでしょうか
(6)無償のボランティアが有償アルバイトと一緒に仕事しても待遇が違いすぎ、ボランティアから不満が出ることが予想されます。ボランティアにはどのように説明するのでしょうか。もしくは、すでに説明したのであれば、その内容を教えてください

佐野SAのストライキも再び過熱、労働組合は弁護士にもない強い権利を持っている

前編では、ブラック企業と戦う際に相談できる場所は、「弁護士」「労働基準監督署」「労働組合」の3つだと説明した。後編では、労働組合に相談する際のポイントや自分で労働組合をつくる方法について解説する。

弁護士と労働組合 どちらに依頼するべきか
 長時間残業や残業代未払い以外の労働トラブルは、弁護士ないし、労働組合に相談したほうがよいだろう。ただし、労働組合は必ずしも法律を学んだ者がいるわけではなく、交渉力が弱い労働組合だとトラブルがさらに長引くリスクもある。どちらに相談すべきか迷った場合は、以下の点についてチェックしてほしい。

・交渉や訴訟に発展する場合を想定して弁護士費用を用意できるか
・法的な問題なのか、ハラスメントなどの問題なのか

 退職勧奨や不当解雇などのトラブルは、純粋に法的な問題なので経済的な事情が許すならば弁護士に依頼すれば、撤回までスムースに解決してくれる可能性が高い。しかしながらパワハラやセクハラといった、職場の人間が態度を改めない限り解決しない問題については、弁護士に依頼しても一時的な解決に留まることが多い。

 このようなトラブルの場合、労働組合に加盟して交渉するほうが効果は高い。労働組合は団体交渉権といって、経営者側を交渉の場に強制的に着かせることができる権限を与えられているからだ。法的強制力をもった存在が社外で監視しており、こちらがおかしなことをすれば、また繰り返し会社にやってくると感じさせるほうが、問題解決につながりやすい場合が多い。

まずは弁護士に相談 労働組合にセカンドオピニオンを求める方法が無難
 とはいえ、私個人としては、まずは弁護士に相談することを勧めている。労働組合は法律を必ずしも熟知しているわけではないので、初動を誤るとこちらが不利になり、取り返しがつかなくなるケースがあるからだ。

 また、弁護士は労働法以外の法律についても知識があるため、他の法律を適用して決定的な解決方法や抑止力となる方法を見つけてくれることもある。まずは、日本労働弁護団をはじめとした労働事件に強い弁護士に相談してみるとよいだろう。そのうえで、法律的な問題として対処できない場合は、労働組合に持ち込んで抑止力を働かせるという方法が賢明だ。

・ブラック労働組合に気をつける
 ただし、労働組合の中には「ブラック労働組合」も存在する。後述するが労働組合は簡単に作れるうえに、やり方次第では、非弁行為(弁護士の資格を持たずに他人のトラブルに介在して金銭を受け取る行為)や、企業恐喝まがいのことを合法的に行える。このことを悪用する団体がいるのも事実なので注意が必要だ。

 労働組合の名前を検索してみて、過激派との関係が見られたり、昔の学生運動に参加していた人たちがキーマンになっている情報が出てきたら、近づかないほうが無難だ。また、特定政党の政治活動支援や、社会問題の解決をやたらと訴えている団体も連絡を控えたほうがいい。自分の労働問題の解決には真摯に対応してもらえず、選挙活動や社会問題のデモ運動などに駆り出されるだけに終わることもありうるからだ。

 相談すべき労働組合について迷ったら、大手の労働組合である「連合」や「全労連」といった団体が無料相談を受け付けている。弁護士に相談した見解も伝えたうえで、解決方法がないか相談してみるとよい。

・相談の際のポイント 事件の経緯と解決の着地点を事前に明確にすること
 ただし、弁護士に相談する場合も、労働組合に相談する場合も、事前にポイントを押さえて整理しておく必要がある。トラブルの当事者が口頭で話そうとすると、うまくいかないことが多いからだ。特に弁護士に相談する場合は、時間制になっていることがほとんどなので、だらだらと時間をかけて説明すると、それだけ費用がかさんでしまう。

 そういったことを避けるために、トラブルに巻き込まれてから現在までの状況を時系列にまとめた資料を作っておくとよい。資料と言っても簡単なもので大丈夫。「●年●月●日に誰からこういったことをされた」ということを羅列した資料だけでも作ってから相談すると、あなたが現在置かれている状況を的確に伝えられ、また相談もスムーズに進む。

 相談に先立ってもう1つ整理しておいてほしいことがある。それは、問題解決の現実的な着地点を明確にするということだ。

 私も労働組合でパワハラやセクハラ被害にあっていた方の相談を担当していた。もっとも困ったのが「上司の真摯な謝罪を要求する」といった、感情での解決を求めるケースだ。気持ちはよくわかるが、相手側が真摯に謝ったとしても、被害感情が癒えないケースは珍しくない。また、相手側が「謝るだけで済むならいくらでも謝ってやる」と開き直り、事態の解決につながらないことも多い。

 着地点としては、相手の厳重な処罰を求めるか、再発の防止を社内で取り組み、具体的な方法を報告すること。再発した場合は、賠償を含めた法的対処を行う旨の書面に署名捺印をさせ、経過を見るなどといった対応を交渉の着地点にしたほうがよい。あくまでも形に残る落としどころを明確にすることが大事だ。

東北道佐野SAケイセイ・フーズ労働組合に与えられている強権
 労働組合は弁護士に与えられていない権利である団体交渉権が与えられている。団体交渉権とは、会社側を強制的に話し合いの席に着かせる権利だ。なお、企業側が交渉を拒否するなど、不誠実な対応を行った場合は不当となる。

 この場合、多くの労働組合は各都道府県に設置されている労働委員会に救済申し立てを行うが、その結果、団体交渉の拒否が不当だと認められれば、不当労働行為として企業側が過料に処されるだけでなく、損害賠償責任を問える可能性が出てくる。

 また労働組合は、団体交渉を通じた話し合いをしても平行線をたどる場合は、団体行動権を発動できる。いわゆる「ストライキ」だが、労働組合に加盟した従業員全員で仕事を放棄しても、経営側は組合員を解雇することはできない。また、一定の条件下でストライキを行う場合、会社側は損害をこうむった内容について、民事事件や刑事事件として労働組合を提訴することができない。

 直近では、栃木県の東北道佐野SA上り線にあるフードコートを運営するケイセイ・フーズ従業員がストライキを行って注目を集めている。もちろん、労働組合側の主張のみを根拠に、労働組合側の主張が正しいとは断言できない。しかしながら、大前提としてケイセイ・フーズ労働組合には、前述の強権が法で認められており、あなたが労働組合に加入しているのならあなたにも同じ権利が保障されていることは知っておいていただきたい。

業務委託や請負で働く人も労働組合には加盟できる
 あまり知られていないが、労働組合は、個人事業主である「委託」「請負」で働く人も加盟したり結成したりすることができる。実際に、フードデリバリーで知られるようになったウーバーイーツに業務委託で働く人たちが、「ウーバーイーツユニオン」を結成している。また、コンビニエンスストア経営者で結成した「コンビニ加盟店ユニオン」は、岡山県労働委員会に正式に認可され法人登記されている。

 「ブラック企業を見分ける方法」で、「委託」や「請負」で働くことは、リスクが大きいことを説明した。しかしながら、正社員として雇用されることが難しい時代になっている。また、建設業や機械製造業などをはじめとして、「委託」や「請負」で働く人が多数を占める業界も多い。そのような働き方を選択する場合は、仕事を発注してきた依頼主とトラブルに発展した場合の救済措置の一つとして、労働組合があることを知っておいていただきたい。

労働組合は2名から作ることができる
 また、あまり知られていないが、労働組合は簡単に作ることができる。労働組合法第2条では、労働組合の定義を「団体」としている。この解釈については学説が分かれているが、2名以上の人が主張すれば正当性を帯びると解釈されている。つまり、労働形態に関係なく、働いている人が2名以上集まって規約を作り、労働組合を結成したと会社側に通達すれば、合法的に労働空組合を設立できるのだ。

 ただ、自分たちだけで労働組合を立ち上げて会社と闘うとなると、ノウハウの蓄積がないぶん圧倒的に不利となる。まずは外部の信頼できる労働組合に加盟し、同じ職場で働いている人たちを誘って加盟してもらうとよい。一定人数が加盟したら、外部の労働組合の支部としてノウハウを教えてもらいながら、社内で労働組合をつくるとよいだろう。

(監修/山岸純)
(執筆/松沢直樹)

非正規はなぜ給与が低いのか? 身分制度と財界の思惑

 2019年10月、台風19号が日本列島に甚大な被害をもたらした。災害の影響で仕事が休みになったという人は多く、Twitterでは「バイト休み」「仕事休み」という言葉が喜びの声とともにトレンド入りした。しかし臨時休業を喜ぶ人がいる一方で、1日欠勤扱いになるだけでも死活問題だという非正規労働者もいただろう。

 日本は他国と比較して祝日が多いが、10連休だった今年のゴールデンウィークでは、ネット上に「10日間も仕事ができないと生活が大変になる」と悲痛な叫びが相次いでいたことも記憶に新しい。

 国税庁が9月に発表した調査では、役員を除く正規労働者の平均年収は503万5000円だったが、非正規労働者は179万円。実に300万円以上の開きがあった。補助的な働き方をしている非正規労働者もいるが、単身世帯や、非正規労働で家族を養う人などにとって、200万円に届かぬ年収は厳しいと言えるだろう。ワーキングプアが社会問題化して久しいが未だこの問題が解消される見込みはない。

 社会問題に精通している静岡県立大学短期大学部准教授の中澤秀一氏に、非正規労働者の現状について話を聞いた。

 

中澤秀一 静岡県立大学短期大学部准教授
静岡県立大学短期大学部准教授。専門は、社会保障・社会政策。これまでに全国17道府県で最低生計費試算調査の監修を担当する。近著:『最低賃金1500円がつ くる仕事とくらし―「雇用破壊」を乗り越える』(共著、大月書店、2018年)、「ひとり親世帯の自立―最低生計費調査からの考察―」『経済学論纂』第59巻(共著、中央大学経済学研究会、2019年)。他に、座談会「最賃1500円」で暮らせる賃金・雇用をつくる (共著、『経済』2019年3月号)、「ひとり暮らし高齢者の生活実態と最低生計費」『社会政策』(共著、ミネルヴァ書房、2018年)

非正規雇用は補助的な稼ぎ方だから給与が低くても良い?
 正規労働者と非正規労働者の間にははっきりとした待遇格差が存在する。そもそも、各々の“稼ぐ目的”が違うと認識されているからだ。

中澤氏「非正規労働者が担う時給が適用される仕事は“家計補助的”であるから、独立した生計を保障する必要がない、つまりそんなに高い賃金を払う必要がないと考えられています。

 “家計補助的”とはどういうことか。時給制の仕事をしている労働者は、専業主婦であれば正社員の夫に、学生であれば親に扶養されていることを前提にしているため、『フルタイムで働く必要がない』、ひいては『非正規労働者は独立して生活しない』と見られてきたということです。

 しかし現実には、扶養されていない非正規労働者の数はどんどん増えていますし、正社員の配偶者を持つ人が“フルタイムパート”として働くことも一般化しており、必ずしも正社員と非正規労働者との働き方を線引きできなくなっているのです」

 筆者の周りでも、フルタイムで働き自立した生活を送ろうとしている非正規労働者は珍しくない。非正規労働者への見方は、家計補助的なものから変化して然るべきだと思うがなぜ未だに待遇格差があるのか。

中澤氏「非正規労働者は“雇用形態”ではなく“身分”と捉えられているので、『低い賃金時給で構わない』という考え方が根底にあるのだと私は思います。本来であれば、“フルタイム勤務の非正規労働者”というのはあり得ず、そういう働き方をする労働者は正社員として雇用しなければならないのです。しかし、経営者側は人件費を抑えるために、非正規労働者という“身分”制度を狡猾に活用しています」

 非正規労働者は主に時間給が適用されている。中澤氏は「一部の時給制で働く労働者の中には、超長時間働けば給料が月給制よりも高くなるというケースはあると思います」と認めるが、一方で「そうしたケースはあくまでも例外。基本的に時間給のメリットは労働者側にありません」と一蹴する。

中澤氏「月給制だと生活の設計が立てやすく、これは労働者には大きなメリットです。フルタイムで働いているなら月給制で支払われるべきなのです。

 反対に、経営者側は働いた時間だけ支払えば良いので時給制のメリットがあります。月給制だと働いていなくても30日分支払うのですから、経営者側はデメリットが生じるわけです。

 いまの経団連の前身組織である“日本経済団体連合会”(日経連)が、1995年に発表した『新時代の日本的経営』において、従来の年功賃金や終身雇用といったいわゆる『日本型雇用』を3グループに分けるべきだと提言しました。

「長期蓄積能力型(≒日本的な正社員)」、「高度専門能力活用型(≒企画、営業、研究開発等のいわゆる専門職」、「雇用柔軟型(≒パートやアルバイト、派遣)」の3つです。

 これにより、意図的に雇用の流動化が進みました。時給制で働かされる非正規労働者が増え続けてきましたが、そこには資本側の明確な方針があったのです」

中高生に労働者の権利を教える取り組みを
 非正規労働者の権利は、一般にあまり知られていない。時給制で働く非正規労働者も本来であれば有給休暇を利用できる。しかし非正規労働者であっても有給休暇を利用できること自体を知らない人も少なくないのだ。非正規労働者が自身の権利を知り、利用しやすくするためにはどのような対策が必要になるか。

中澤氏「現在、大学などの教育機関ではこういったことを含めて“ワークルール”をキャリア支援の一環として行うようになってきています。このような啓発活動がもっと増え、中学高校から実施されるようになると、労働者としての権利意識が高まると思います。

 また、中小企業の経営者の中にも、こういった制度があることを知らない層がいます。さらに、知っていても利用させない悪徳な経営者さえ存在します。経営側にも行政指導を行うなど、社会全体でキャンペーンを実施するべきでしょう」

 中澤氏は理想的な給与形態として同一労働同一賃金の適用を進言する。

中澤氏「同じ価値の仕事をしている人であれば、雇用形態にかかわらず同じ賃金が支払われるべきです。そのためには、職務評価が必要になってきます。まだまだ日本では均衡待遇が主流で、均等待遇が実現していません。“身分”に関係なく、同じ賃金が支払われるようになれば、“身分差別”も解消されていくでしょう」

 2020年4月から同一労働同一賃金が施行され、正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間の不合理な待遇差が禁止される。だがこれで解決と見るのは早すぎる。各雇用形態の基本給は様々な要素に基づき支払われており、非正規労働者への適切な職務評価をすること自体に困難が生じる恐れがあるためだ。

中澤氏「厚生労働省は同一労働同一賃金について、職務分析・職務評価は、正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者の基本給に関ずる『待遇差が不合理かどうかの判断』『公正な待遇を確保』するため、賃金制度を検討する際に有効とする、いくつかの事例とガイドラインを示しています。このように政府は職務評価の実例を示し、企業もこれに則って進めていくことになるでしょう。

 ただ、厚生労働省が『正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間の基本給に関する均等・均衡待遇について考えてみませんか』としているように、『“均等待遇”ではなく“均衡待遇(正規と非正規とで職務内容が異なる場合に、むしろ一定の格差を認めてしまう)”で良い』との考え方もあります。真の均等待遇を実現するためには、職種が異なる場合であっても労働の質が同等であれば、同一の賃金水準を適用するような職務評価が必要になります」

 最後になるが、非正規社員でなくとも安泰とは決して言えない状況だ。

中澤氏「アメリカでは“ホワイトカラー・エグゼンプション(年収要件と管理職などの職務要件を満たす労働者には残業代を支払わなくて良い制度)”を導入した結果、貧困線以下の賃金水準でも残業代が支払われなかったり、一部の業務を“管理職の仕事”とみなされ残業代が支払われなかったりするケースがあります。日本でも今年4月からホワイトカラー・エグゼンプションと似た制度“高度プロフェッショナル制度”が導入されましたが、多くの識者が指摘しているように、年収要件は下げていくことが可能であるし、過労死を誘発するような超長時間労働を合法化する危険性のある制度です」

もっと強く、カッコよく。K-POPアイドルは「自分らしく生きる女性たちのロールモデル」になった

韓国の大衆音楽、おもにティーンエージャー向けのポップスがK-POPと呼ばれるようになったのは1990年代後半のこと。それからわずか20年ほどでK-POPは世界的な知名度を誇るジャンルに成長した。

 これほどまでに愛される理由はいろいろとあるだろう。キレのいいダンスパフォーマンス、華やかなビジュアル、エッジの利いたサウンドメイクなど、具体的にあげればきりがない。

 中でも最近のK-POP人気を拡大させる原動力となっているのが“ガールクラッシュ”だ。「女性が憧れる女性」という意味で、特にアイドルグループを形容するときによく使われる。

 それではどんなところが女性を引き付けるのか、それがなぜ重要な要素となったのか、ガールクラッシュと評されるアーティストたちを通じて紹介したいと思う。第1回はK-POPシーンのトップを走る3組にクローズアップする。

■ITZY(イッジ)

ITZY『IT’Z ICY』
 ガールクラッシュを明確に意識したコンセプトで大きな成功を手に入れた5人組。TWICEの妹分として今年2月に登場し、デビュー曲「DALLA DALLA(違う違う)」の大ヒットでいきなりスターダムへ。<綺麗なだけで魅力がない子たちと私は違うの/あなたの基準に私を合わせようとしないで/私は今の自分が好きなの/私は私よ>という同曲の歌詞の通り、誰にも媚びずに我が道を突き進む姿に多くのリスナーが共感した。

 続く第2弾「ICY」でも自立した女性の魅力をアピールした彼女たちだが、その魅力が同性のみならず男性にも支持されているのが面白い。ガーリーな要素をほどよく散りばめたクールビューティと言ったらよいのだろうか、男女を問わず人気を集めるこの絶妙なバランスは、所属会社・JYPエンターテインメント(以下、JYP)の先輩であるTWICEや、さらにもっと上の先輩・WONDER GIRLS(少女時代やKARAとともに一時代を築いたアイドルグループ)のエッセンスも感じ取れる。

<私たちは“モンスタールーキー”という呼び名を手に入れたい。新人だけどすべてを上手くこなせる、今まで見たことのないグループになりたいんです>

 これはデビュー直後のショーケースでのITZYのコメントである。ブレイク前に自らハードルを上げるのはかなり勇気のいることだ。にもかかわらず、彼女たちは強気の発言を続ける。

<TWICE先輩はラブリーで美しいけど、私たちはガールクラッシュな魅力と明るく若いエネルギーを持っています>

 メンバー全員が自由に発言できるのは所属会社の理解があってのことだろう。今年2月、JYPはソニーミュージックと合同で新たなガールズグループを手掛けることを発表したが、そのときにJYPの設立者であるパク・ジニョンが語った内容が興味深い。

<審査基準は他の会社とは少し違うはずです。ダンスや歌が上手かどうかよりも大切なのはナチュラルさ。自分の声、自分の表情、自分の性格で踊っているかを見ます>

 同様の基準は、おそらくITZYのメンバーを選考する際にも適用されたと思われる。周囲が求めるものに合わせるのではなく、自分の中から自然に出たもので勝負することが今のアイドルには必要だとJYPは確信しているに違いない。ITZYのガールクラッシュ的な魅力はこのような選考過程を経て生まれたと言えよう。

☆ITZY「ICY」

 

■BLACKPINK

BLACKPINK『KILL THS LOVE -JP Ver.-』(ユニバーサルミュージック・ジャパン)
 日本は現在、第2次K-POPブームが巻き起こっているが、その中心的役割を担っているのがBLACKPINKである。所属会社は大手のYGエンターテインメント(以下、YG)で、先輩のBIGBANGや2NE1の美学を継承しながら、自分たちのスタイルを追求。ITZYが「こういう感覚ってよくわかる」と女性の共感を呼んでいるのに対し、こちらは女性が「こんな風になりたい」と憧れるような存在だろうか。サウンドの方向性やファッションなどで独自性が際立っているのがグループの最大の強みとなっている。

 彼女たちの主要作品を手掛けているのは、TEDDYというK-POPの黎明期から活動する男性アーティストで、BIGBANGと2NE1の楽曲にも関わってきたことで知られる。BLACKPINKが今年4月に発表した「Kill This Love」にも彼はメインコンポーザーとして参加しているが、トラップをほどよく加えた重低音のリズムと力強いボーカルが複雑に絡み合う様はTEDDYならでは。このクセのあるサウンドを難なく自分のものにしてしまうメンバーたちは、間違いなくトップクラスのガールクラッシュである。

 代表曲「DDU-DU DDU-DU」(2018年)をリリースするにあたり、TEDDYはYGのヤン・ヒョンソク代表とともに、BLACKPINKの4人に<女性らしくする必要はない。もっと強く、カッコよく踊れ>とアドバイスしたという。「Kill This Love」も同じ方向性でやった結果、ついにオンリーワンのスタイルが完成したというわけだ。

 メンバー全員がスタイリッシュなビジュアルを誇り、ステージ衣装でも私服でもモデルのようなオーラを放つ。女性ファンはインスタグラム等でメンバーの服装をチェックして参考にすることが多いらしく、日本進出のときにファッション雑誌や女性誌を中心にした広報を展開していたのもうなずける。

☆BLACKPINK「Kill This Love」

 

■TWICE

TWICE『&TWICE』(ワーナーミュージック・ジャパン)
 もはや説明は不要なほど、日韓で国民的人気アイドルとなったTWICE。ポジティブ、スポーティー、キュートといった言葉が似合う彼女たちは、先に紹介した2組と異なるカラーでブレイクを果たしているものの、同性の人気がダントツに高い。

 支持されるいちばんの理由は「親しみやすさ」ではないだろうか。「ある日、街でスカウトされた」「オーディションで選ばれて人気者に」といった数々のエピソードは、一般の人たちに「ひょっとしたら私も努力すればなれるかも」という思いを抱かせるには十分だ。

 デビュー当時の雑誌インタビューで、彼女たちは自身の魅力について次のようにコメントしている。

<TWICEは重複するキャラクターがなく、多様なカラーを持つチームです。さらにステージに立つと、すべてのカラーがよく調和するんです>

 ファンは好みのメンバーを見つけて、その活躍ぶりを自分のことのように喜ぶ。その選択肢の多さと親しみやすさが同世代の女性を引き付けているようだ。

 そんな彼女たちも日本2ndアルバム『&TWICE』(2019年11月20日リリース)ではガールクラッシュ的な魅力を前面に出している。リードトラック「Fake & True」では「ありのままの自分であきらめずに進もう」と励まし、「Stronger」では勇気と信念を持って次の時代を切り開いていく力強さを表現するなど、同世代の女性たちへのメッセージを込めた曲が数多く並ぶ。本作によってTWICEの人気はさらに拡大するだろう。

☆TWICE「Fake & True」

 

 今回は超大手芸能プロダクションに所属し、トップクラスの人気を誇るグループをピックアップした。
 次回は、より自覚的に「男性上位で保守的な社会と対峙する」「自由な生き方を求める女性たちのロールモデルになる」といった役割を背負ったグループを紹介する予定。
 お楽しみに!

メルカリは手数料が…お得度を「ラクマ」「PayPayフリマ」と比べてみました

3大フリマアプリどれがお得?
 最近、テレビでフリマアプリのCMをよく見かけるようになりました。メルカリ、ラクマ、そして、今年の10月にリリースされたばかりのPayPayフリマ。

 それぞれが独自のPRを行っていますが、いったいどのアプリを使うのがお得なのか、いまいちわからないという方も多いと思います。というわけで、今回は、この3大フリマアプリを様々な視点から比較してみたいと思います。

※あくまで個人の見解です。どうかご理解ください。

ユーザー数1位は「メルカリ」
 2019年11月末現在、圧倒的にユーザー数が多いのは、言わずと知れた、メルカリです。「フリマアプリ=メルカリ」が定着し、「フリマアプリやってる?」と聞かれたことはないけれど、「メルカリやってる?」と聞かれたことはあるという方もいるかもしれません。

 今年9月に、メルカリの累計取引数は5億件を突破し、日本国内の利用者数は月間1,350万人を超えるということが発表されました。

 ラクマもユーザー数を伸ばしていますが、メルカリと比べると、およそ半分ほどと言われています。サービス開始から間もないPayPayフリマの正確なユーザー数はわかりませんが、出品されている商品の数から見ても、まだまだだということが想像できます。

 が、しかし、 Yahoo! が本気を出して手掛けるPayPayフリマが、今後、どのようなキャンペーンを仕掛け、いかにユーザー数を伸ばしていくのか、2020年のフリマアプリ業界、下克上の可能性も大いにあると個人的には思っています。

販売手数料の安さ1位「ラクマ」
 メルカリと、PayPayフリマの販売手数料が、10%なのに対し、ラクマは、販売手数料3.5%+消費税と少しわかりづらくなっています。

具体的に説明しますと、10000円の商品の場合は

10000×販売手数料3.5%=350円

この350円に消費税がプラスされるので

350×消費税10%=35円

販売手数料の350円に、消費税の35円を加えた、385円が差し引かれるということです。ちなみに、小数点以下は切り捨てとなります。

 

 それぞれのフリマアプリの最低出品価格300円で比べると、販売手数料は、メルカリとPayPayフリマが30円なのに対し、ラクマは11円。およそ3分の1というラクマの手数料の安さは、大きな魅力といえるでしょう。

※)メルカリは2019年12月1日まで、販売手数料無料のキャンペーン中です

売上金の使い道1位「ラクマ」
 商品が実際に売れたその売上金は、電子マネーとしてコンビニやスーパー、ドラッグストアなどで使用することが可能です。しかし、そのポイント還元率にはそれぞれ大きな差があります。

 2019年11月末現在、それぞれのペイのポイント還元率は以下の図の通りです。

 

 メルカリの売上金を街で使用しても、ポイント還元はありません。ですが、メルカリは「ID」払いなので、楽天ペイや、PayPayで支払いできないお店でも使える場合が多いというメリットも……。SuicaやPASMOで支払いできるお店は、たいてい「ID」払いにも対応しているので、便利なんです。

 では、なぜ私はラクマを1位に選んだのか? 「なんちゃらペイを使うのは少し不安だけど、楽天市場でならたまに買い物する」という方も多いと思ったからです。ラクマの売り上げは、楽天キャッシュにチャージすれば、楽天市場での買い物に使えます。これは大きな魅力ではないでしょうか。

取引のやりやすさ1位「PayPayフリマ」
 2013年にサービスが開始したメルカリから、遅れることおよそ6年のこのタイミングで、新規参入した「PayPayフリマ」。

 メルカリでのやりとりに、少し煩わしさを感じていたユーザーにはありがたい改善点がいくつかあります。その1つが「出品者からの評価をなくしたこと」です。

 メルカリでは、購入者と出品者、双方の「評価」をもって取引終了となりますが、正直、出品者側から購入してもらった方をわざわざ「悪い評価」にすることは、ほぼほぼないのではないでしょうか。

 PayPayフリマでは、商品を受け取った購入者が、出品者を評価したところで、取引終了。たかが1回の操作ですが、わざわざ「評価」する手間が省けました。

 PayPayフリマでは、購入からの取引メッセージのやりとりの回数が制限されているのも特徴です。「ありがとう」「よろしく」の無限ループになりかねない取引メッセージのやりとりが疲れるという方にとっては、制限してくれて“ありがとう”かもしれません(とはいえ“15回も”メッセージが送れますが)。

掘り出し物が見つかる確率1位「PayPayフリマ」
 PayPayフリマでは、11月17日までに出品した商品に限り、送料を全額PayPayフリマが負担するという太っ腹キャンペーンが行われました。

 これまで「かさばる」「重い」「送料が高くついてしまう」「これ以上値下げできない」「まったく売れない」といった商品を、送料の負担を考えずPayPayフリマに出品できる出品者側からすると、ありがた過ぎるキャンペーン。

 ですが、購入者側にもメリットがあります。それは、メルカリやラクマでは、送料や手数料が高くついてしまうため、これ以上値下げできなかった“かさばる掘り出し物”を、PayPayフリマで見つけられる可能性が大いにあるということです。

 また、PayPayフリマには、ヤフオクから出品された(条件を満たした)商品も並びますので、ヤフオク組による“お宝”が手に入るかもしれません。

 ちなみにPayPayフリマでは、出品から30日が経過すると、自動的に商品が公開停止となります。11月17日までに出品された商品でも、一度公開停止となると送料無料の恩恵は受けられなくなりますので、“かさばる掘り出し物”を探すなら、今がチャンスです。

メルカリよりもラクマの方が規制がゆるい?
 メルカリに比べラクマの規約は多少ゆるめなのか、メルカリでは出品後すぐに事務局から削除されてしまったものが、ラクマなら普通に出品できるということがよくあります。

 もちろんそれは、メルカリの事務局がトラブルを招かないために、細かく規制しているわけですが、こちらが悪気なく出品したものが削除されてしまうということもしばしば…。

 というわけで、メルカリで出品できなかった商品は、1度ラクマで試してみてもいいかもしれません。

小見出し3大フリマ総合評価1位「メルカリ」
 様々な視点から3つのフリマアプリを比較してきましたが、2019年末現在、なんだかんだユーザー数が圧倒的に多いメルカリがもっとも強いです。

 ただ、先にも書いた通り、メルペイでの支払いにはポイント還元がありません。メルカリでの売り上げは、ある程度貯まったら手数料を払ってでも、銀行口座に移すことを個人的にはオススメします。

 さて、2020年のフリマアプリ業界はどうなるのか。新規参入のPayPayフリマが、どんな一大キャンペーンを仕掛けるのか? メルカリ、ラクマはどう対抗していくのか?

 いちユーザーとしては、3社が競合することにより、“あり得ないお得なキャンペーン”が爆誕することを、大いに期待しています!

沢尻エリカ逮捕の“ニュース”はあまりに不自然、エイベックス社長や蜷川実花氏をなぜ追及しないのか

 女優の沢尻エリカの薬物所持による逮捕を、テレビのワイドショーは連日とても大きく扱っている。しかしその報道姿勢には違和感がある……どころか、あまりに異常だと言わざるを得ない。

 沢尻エリカを擁護する気は毛頭なく、今後は薬物依存を治療してほしいと思う。彼女の演技が上手下手とか、性格がどうとかはどうでもいい。だが沢尻エリカがクラブで踊っているだけの映像を「奇行」と称し、撮影中の言動を「異変があった」と伝え、「巨額の賠償金が発生する」と脅し、「大河ドラマが大変だ」と煽り、挙句「仕事のプレッシャーがあったようだ」「太ることを極端に恐れていた、美への執着心があった」等と報じる“ニュース”ばかりが溢れている。これは明らかにおかしい。なぜなら、彼女の関係者が薬物使用について知っていた可能性などには触れず、彼女個人の責任に終始しているからだ。

 唯一、文藝春秋の運営する週刊文春オンラインは20日、「週刊文春」(2012年6月7日号)の記事を再掲。<「目的は沢尻エリカの弱みを握り、脱がせてカネにすることだった」――元夫・高城剛氏が語っていた薬物問題の“真相”>というタイトルで、もともとは沢尻の主演映画「ヘルタースケルター」の公開時期に出たものだ。その前号(2012年5月31日号)で同誌は、沢尻エリカが09年にスターダストプロモーションを解雇されたのは、彼女が「大麻中毒」であり大麻の継続的な使用をやめるつもりがないと宣言したことが理由だったと報じていた。

 沢尻エリカは2009年に高城剛氏と結婚。しかし2010年には離婚騒動が起こっていた。結局2013年に離婚しているが、文春の記事は離婚に関して揉めていた時期のものである。

 結婚前の交際中、高城氏はロンドンの代替治療施設に通わせ、薬物依存からの脱却を促したという。沢尻は薬物依存から回復し、二人は結婚。しかし2010年4月に沢尻が一方的に離婚意思を表明する。高城氏は突然の妻の翻意に当惑、のちに沢尻本人から「エイベックスの松浦勝人社長に、ドラッグのことを知られた。高城と離婚すればエイベックスと契約し日本芸能界で活躍できると言われた」と聞いたのだそうだ。

 松浦氏は沢尻に「俺が離婚させてやる。マスコミはどうにでもなる」と話した、という。高城氏は沢尻との離婚そのものよりも「マスコミが偏った報道をすること」に困っていると言い、<マスコミおよび、それに連なる『誰か』は、僕をつぶしたいのでしょう。その『誰か』の目的は明確で、エリカを『脱がせてカネにする』ことです。そのために、彼らは組織的にエリカの薬物問題を、隠蔽し続けてきたのだと思います>と語っている。

マスコミは本当に「どうにでもな」っている
 非常に衝撃的な記事だが、当時この「文春」記事を取り上げるメディアはネットニュースくらいのものだった。しかし沢尻エリカが逮捕され「10年以上前から複数の薬物を使用していた」と供述している今、同誌記事における高城氏の証言の信憑性は非常に高いと言わざるを得ない。

 また、高城氏は同記事において映画『ヘルタースケルター』の蜷川実花監督も沢尻の薬物使用を知っているはずだと言及。

<蜷川さんも事実を知っているはずなのに、なぜ隠そうとするんですかね。僕はエリカから、(蜷川監督に)早い段階で伝えられたと聞いています。>

 沢尻エリカが逮捕された以上、松浦勝人氏、そして蜷川実花氏への追及もあってしかるべきだろう。しかし沢尻が11月16日に逮捕されてから現在に至るまで、ワイドショーでは朝から晩まで沢尻の素行云々の話題を取り扱っているのに、そのことを伝える番組は皆無だ。所属事務所であるエイベックスも、蜷川実花氏も、彼女の薬物使用を全く知らなかったことになっている。

 日刊ゲンダイチャンネルでは、沢尻が実の姉のように慕っていた蜷川実花氏が、いかに彼女のために親身になっていたかを伝える記事を出している。蜷川氏は公開中の監督作『人間失格 太宰治と3人の女達』でも沢尻を起用。かつてスキャンダルまみれだった沢尻に手を差し伸べ、再生に尽力してきたのだとある。蜷川実花氏は、本当に沢尻の動向を知らなかったのだろうか。

 前傾「文春」記事における高城氏の証言で特に恐ろしいのは、松浦氏が「マスコミはどうにでもなる」と話したということ、および、沢尻エリカを『脱がせてカネにする』ために、<組織的にエリカの薬物問題を、隠蔽し続けてきた>ということの二点だ。今回の“ニュース”を見ていると、本当にマスコミは松浦氏の意向次第でどうにでもなるのだろうと思わされる。

[wezzy_blogcard 70688]

「女の子のために」椎名林檎は楽曲を生み続けてきた

11月18日放送の『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)に音楽家の椎名林檎が出演。1998年のデビュー以来、この世に生み出してきた数々の名曲の製作方法について語り、椎名林檎による世の女性たちに向けた発言がSNSで大きな反響を呼んでいる。

 11月13日に初のベスト盤『ニュートンの林檎』を発売した椎名林檎。昨年デビュー20周年を迎えた。デビューシングル『幸福論』(1998年)から順調にキャリアを重ねてきた椎名林檎だが、彼女には唯一無二といえる独特な楽曲の魅力があることは言うまでもない。同番組では、その楽曲製作方法にフォーカスしたインタビューが行われた。

 まず、その独特な曲のモチーフや発想をどこから得ているのかという質問に対して、椎名林檎は<お客さんたちの日々の暮らしのツイートを覗き見ていて>と返答。ツイッターを日常的に見ており、<落ち込んでいると思ったら、そのことに対して(曲を)贈りたいと思ったりとか。こんなサウンドでスカッとしてほしい>と、SNSから楽曲の着想を得ていることを明かした。

 そのうえで、椎名林檎は<(ネットユーザーの意見として)『今回のは全然ピンと来ない!』とか、期待されてることと、そうでないことを本音で仰ってるのを見たい><M9に歌が着地しがちだよねって、ネットで言われてる。気にします、絶対しないようにしようって>と、ネットやSNSの意見を積極的に楽曲づくりに反映させていることを赤裸々に明かしていた。

 椎名林檎とファンはネットを介してインタラクティブな関係性にあることが垣間見え、SNSでは驚きや喜びの反応が相次いだ。

「女の子たちの人生のサントラになってほしい」
 椎名林檎が自身の『丸の内サディスティック』(1999年)に代表されるような「FM7ーE7ーAm7ーC7」というコードワークをはじめ、音楽理論などの楽曲製作方法について語る場面では、女性をエンパワーメントする発言が多くあった。

 スタジオゲストの作曲家・岩崎太整から、転調をどこまで意識しているかとの質問を受けると、椎名林檎は「わからないで進行していって、意識しないほうがうまくいくような」と説明。その理由は、こういうことのようだ。

<一番重要なことが置いていかれる気が……下半身で書けてないというか、子宮で書けてない。学理を気にして聞いてらっしゃらない女の子たちが自然に寄り添って、そういう方たちの気分に自然に寄り添って、人生のサントラになっててほしいって思ってます>

 初期作から一貫して、アルバムで曲間を設けずに曲を連続させている理由は、「女の子たちの人生のサントラだから」。

<女の子たちのツイート見てると、朝出勤するときはすごく良かったのに、上司がいきなりこんなことを言ってきて『生きるの嫌になっちゃった』ってくらいまで、ドンって沈んじゃったりされてるでしょう。殿方のことは知ったこっちゃないんですけど。女の子の人生って言うのは、すごくヘンな、心ない殿方たちの一言とか失言で、左右されちゃったりする>

<生理もあるし、自分の内なるバイオリズムがコントロールできない。仕様がない。それと合致しちゃって帰ってこれなくなって、長引くとかザラですから。そういうのからすると、『良かったね、ジャーン!』(ピアノを弾く)とは、ならないじゃないですか。だからリアリティーを持って書きたい。彼女たちの忙しない日々に寄り添う内容を。殿方は黙ってて、わかんないだろうから>

デビュー当時、「水着を着て来て」と要求され
 椎名林檎は意識的に「女の子たち」の人生に寄り添った楽曲づくりをしていることを明らかにした。そのことと、椎名林檎自身が過去に「“女性”アーティスト」であるがために屈辱を受けた経験は無関係ではないのではないか。

 今年5月25日放送の『COUNT DOWN TV』(TBS系)に出演した椎名林檎は、デビュー間もない新人歌手の頃、2ndシングル『歌舞伎町の女王』などのプロモーションでラジオの放送局を回っていた際に大人たちから受けた屈辱を明かした。

<結構いろんなところに行くと、面と向かって『ゴースト(ライター)いるんでしょ?』とか、『本当はいくつなの?』とか>
<あと、私が怒りからなのか人知れずひとりで泣いちゃったのは、明日のどこどこのキャンペーンの局の方が『たまたまプールサイドでの収録なんで、水着をなるべく着てきてほしい』みたいなことをおっしゃってるっていうのをメーカーの人から聞いたときに、なんかまあ悲しさなんでしょうね、すごく、怒りなのか悲しさからなのか、泣いたことがあって>

 この時の苦い経験は、椎名林檎がシンガーソングライターとして大成した後もずっと記憶に残り、活動に影響を与え続けたという。

 同番組では、アルバム『三毒史』(2019年)のアートワークで自身がケンタウルスに扮したことについても、<エスカレートしちゃって。(バカしてくる)相手のレベルに合わせて、『そういうふうに疑うんだったらこっちだって!』みたいな。マッチョイズム。虚勢の張り方ですもんね。鎧着たりとか>と、その経緯を語った。

 椎名林檎の過去の作品にも“虚勢を張った”ビジュアルは貫かれている。ガラスを割ったり(5thシングル『ギブス』/2000年)、日本刀でメルセデス・ベンツを真っ二つにしたり(6thシングル『罪と罰』/2000年)、スタンガンを持ったり(アルバム『私と放電』/2008年)と、強烈な“強さ”を表現したアートワークが見られる。

 この“武装”は椎名林檎の大きな特長のひとつになったが、当時まだ若く新人だった彼女が「水着を着てほしい」と言われて受けた衝撃、落胆、その傷は、多くの女性が共感するところではないか。椎名林檎の楽曲が、たくさんの女性に支持されることは必然だろう。

「たった今こういう気分の女の子のために」
 椎名林檎は、若い女性の生きづらさについて直球で語ったこともある。

 2011年発売の雑誌「Lips」8月号(マガジンハウス)のインタビューに、<女性って20代までは大変ですよね~自分次第で何者にもなれるはずなのに、社会だったり男性の目線だったり、余計なことに捕らわれて不自由になりがち。それはもったいないと思う>との発言が残っている。

 また、2017年のフジテレビ系ドラマ『カルテット』(椎名林檎が主題歌として『おとなの掟』を書き下ろした)の脚本家・坂元裕二が2018年に発売した著書『脚本家 坂元裕二』(ギャンビット)でも、椎名林檎は“女の子のために”と強調していた。

<たかだか三分ほどの曲でもそうですし、五十分のアルバムでも、九十分のステージでも同じです。「たった今こういう気分の女の子のために」と用意します。そうそう思い浮かべるのは決まって女性です。男性に対してはおよそ腹立たしさしかない。それは女性を瞬間的にブスにするのが必ず男性だからでしょうね>

 しかしもちろん、そうして生まれた楽曲は女性だけが享受の権利を持つものではなく、多くの男性ファンの心にも深く響いている。ともすればミサンドリーに転びかねない「殿方は黙ってて」だが、椎名林檎のそれには有無を言わせぬ説得力があり、男性も頷かざるを得ないところだろう。

秋葉原のアダルトゲーム屋外広告はなぜ撤去されたか。“オタクの街”の在り方と行政の対応

過日、秋葉原の大通りに出現した巨大なアダルトゲームの屋外広告が問題視され、数日で撤去となった。

 秋葉原の街中に位置する、ゲームやDVDを販売する店舗のビルに張り出された問題の広告は、バストや臀部を極端に露出した大勢の女性キャラクターのイラストが描かれたもの。「超エッチ」「おっぱいハーレム」「孕ませ」などのコピーが並ぶ、アダルトゲームの広告だった。

 この広告掲示についてSNSで拡散されると、「あんなに肌が露出している内容の広告を街中に出していいのか」「アダルトゲームの屋外広告は不適切ではないか」と疑問視する声が続出した。徒歩2分ほどの距離には小学校もあり、登下校中の児童への影響を懸念する意見も多かった。

 結局、問題の広告は11月8日の時点で撤去されている。

 一方で、ネットでは広告が撤去されたことに抗議する声も見られた。秋葉原はサブカルチャー・オタク文化の街として有名であることから「秋葉原はそういう街だろう」「秋葉原に来ない奴が文句を言うな」との意見も噴出。ただし、そうしたカルチャーを支持する人たちの間でも「これはさすがにやりすぎ」「文化を守るためにもゾーニングは必要だ」と苦言も出ている。

 そこで、今回の広告撤去騒動や秋葉原エリアの特殊性について、千代田区の環境まちづくり部担当者に話を聞いた。

千代田区には届け出が出されていなかった
――問題の屋外広告は、どういった経緯や理由で撤去されたのでしょうか。

担当者:東京都の担当者が現地に赴き、有害な広告に対する措置が条項に含まれている「東京都青少年の健全な育成に関する条例」に明記されている「青少年に対して性的感情を刺激する」ものであると判断し指導、11月8日の午前中には撤去されました。千代田区としては、東京都の報告を受けて9日に現地を訪れ、確認と指導を行いました。

――問題の広告は秋葉原の目抜き通りに面したビルに堂々と張り出されていましたが、広告板の設置を千代田区は許可していたのでしょうか。

担当者:秋葉原エリアに屋外広告物を出すには、千代田区に申請を出した上でチェックを受けて屋外広告物許可を取っていただくという手続きが必要になります。これは東京都の屋外広告物条例に基づくもので、23区やその他の市町村共通の指導根拠です。ただし、問題の広告は届け出が提出されておらず、そのため千代田区としても騒動になってから問題を確認したというのが正直なところです。

――実際に広告を撤去するという段階では東京都の主導で動いたということですが、これはなぜですか?

担当者:屋外に広告物を出す場合、関連する条例はいくつかあり、すべてが千代田区で事務を行っているわけではありません。千代田区は「東京都屋外広告物条例」に定められたサイズや位置などの規格を遵守しているかを確認し、問題がなければ許可を出しています。
 ただし、「東京都屋外広告物条例」には、広告物の内容に関する詳細な規定がないため、千代田区がイラストや文章などの内容について指導したとしても、法的な根拠はなく強制力がないんです。
 そのため今回は、東京都の担当者と連携を取って、「東京都青少年の健全な育成に関する条例」に基づいて広告物の内容を指導できるようにいたしました。

――今回のように、届け出なく広告物を掲示した場合にペナルティはありますか。

担当者:千代田区としては、条例違反があった場合には是正指導を行います。注意を繰り替えしても改善が見られないなど、悪質であると判断した場合には、条例に沿って然るべき対応をいたしますが、そのようなケースは多くはありません。

――騒動を受けて、千代田区ではどのように対応していきますか。

担当者:先ほど申し上げた通り、千代田区には「東京都屋外広告物条例」に基づく権限しかないため、広告物の内容については指導ができません。ただ、今回の騒動のような例もできましたし、今後は申請時に問題になりそうな内容と認めた場合は担当者が口頭で注意をしたり、必要と判断すれば東京都に情報を提供したりと対応していくことになると思います。

――秋葉原という街の特殊性から、こうした広告も許容すべきだという意見もネット上では一部見受けられます。

担当者:実は、今回の広告撤去についても「無理やり撤去するのはどうなんだ」「表現の自由ではないか」という反対のご意見も多くいただいています。秋葉原は近年、こうしたサブカルチャー文化のおかげで活性化しているという側面もありますし、行政としては表現に対してどのような線引きをしていくか、そういった難しさはあります。
 ただし、今回のように一般の方の理解を得られないものを認めることはできませんし、こうした広告が増えていくようであれば看過はできません。千代田区としては、地域の皆さんの目やご意見を大切にしつつ、東京都をはじめ関係各所と連携を取って対応を考えていくというのが今後の姿勢になると思います。

佐山彩香の強制「禊フルヌード」が告発ではなく“大人の世界を学んだ話”になってしまう日本の芸能界

 グラビア引退を発表した佐山彩香の袋とじグラビアとインタビューが、18日発売の『週刊プレイボーイ』2019年12月2号(集英社)に掲載されている。明るく語られているそのインタビュー内容に衝撃的な箇所があった。過去、スキャンダルの揉み消しと引き換えに「禊フルヌード」を半強制的に撮影させられたというのである。

 現在26歳の佐山彩香は、2009年にスカウトされたことをきっかけに「日本一可愛い女子高生」の冠をつけ芸能界入り。グラビアアイドルとして活動しながら、女優業にも進出している。デビュー10周年の今年、グラビアからの引退を発表した。

佐山彩香がスキャンダル揉み消しと引き換えに要求された「フルヌード」
 佐山彩香は20歳を迎えたころに芸能活動を一時休止しているが、これは原因不明の脱毛症により髪の毛がほとんど抜けてしまったことが理由だったという。一年半ほど仕事を休んでいる間に、<突然、ある週刊誌から事務所に連絡がきた>そうだ。それは、彼女がデビュー前に撮影した男性とのツーショット写真を掲載するとの連絡だった。

 なぜデビュー前のプライベート写真がスキャンダル扱いになったのかというと、写真に写っていた男性が“いわくつき”の人だったため。事務所と週刊誌編集部による交渉の末、佐山の“フルヌード”と交換条件で、記事の掲載を差し止める話へと発展し、佐山は脱ぐことを迫られた。

 週刊誌と事務所の間で勝手に話が進んでしまったものの、佐山は脱ぎたくないとフルヌードになることを拒否。<私は脱ぎたくないし、別に記事が出てもいい、なんなら芸能界を辞めてもいいと思った>そうだが、当時のマネージャーから「CMの仕事などが決まっており、色々な人に迷惑がかかる」と説得され、「もうやるしかないのかな」と撮影に踏み切ったそうだ。

 本人が嫌がっているにも関わらず、周囲に迷惑がかかるなどと脅してヌード撮影をさせることが、芸能界では当然のルールになっているのだろうか。少なくとも、これを「性暴力」と受け止める土壌はそこにはないのかもしれない。日本の芸能界に「#MeToo」が派生し得ないのも納得だ。

 佐山彩香が今回のインタビューで禊のフルヌードを“告発”ではなく、“大人の世界を学んだ話”として披露していることからは、「禊ヌード」が業界において特段タブーではないことがうかがえる。

 また、“禊ヌード”という話題は比較的カジュアルに、週刊誌等で扱われる。不祥事を起こした女性芸能人のヌード披露を予想する記事は後を絶たない。不倫発覚時の矢口真里、トラブルで所属事務所を辞めた西内まりや、TBSを退社した宇垣美里など、“禊ヌード”の噂を立てられた女性芸能人は枚挙に暇がない。

性的な要求を迫ることが当然になっているのか
 芸能界での暗黙のルールは“禊ヌード”だけではない。性接待をさせられそうになったことを告発した女性タレントもいる。女優でヨガインストラクターの松本莉緒は、今年3月に出演した『有田哲平の夢なら醒めないで』(TBS系)の中で、性接待をさせられそうになったと告白していた。

 松本によると20代のとき、自分のやりたい仕事に近い人物から電話で「アラブの王族の直々の指名だから、今から来て欲しい」と誘われ、クラブのVIPルームに行ったという。すると、電話をかけてきた人は「端っこの人が一番お金持ってるから後はよろしくね」と言い残して帰ってしまったそうだ。

 松本は「これはやばい」と感じ、5分もしないうちに非常階段から逃げたという。彼女は「こんなことして仕事をもらわなきゃいけないのはしょうもないし、精神崩壊しました」と語り、スタジオは騒然となった。だがスタジオで驚いていた芸能人たちも、まさかこのような話を初めて聞いたわけではないだろう。

 芸能界という場所で活動していくにあたり、様々な業界ルールが設けられている。しかしその中でも、「これをしなければ周囲に迷惑がかかる」「賠償金が発生する」「芸能界から干す」などと脅し、ヌードや性接待を強要することが慣例としてまかり通っているとしたら、是正されるべきだろう。仮に事務所関係者などがタレントに権力者への性接待を斡旋しているのなら、それは法律で禁止されている“管理売春”だ。

 芸能界がいくら特殊な業態であるとしても、そこで働く人間の人権を軽視したルールは、正当化できない。

実父の性的虐待はなぜ無罪になったのかーー性被害の実態について、知っておきたいこと

 2019年3月、性犯罪の無罪判決が相次ぎ、物議を醸した。とくに世間の注目を集めたのが、3月26日に名古屋地裁岡崎支部で判決が下された、通称「岡崎事件」だ。この裁判では、19歳になる実の娘に中学2年生の頃から性的虐待を繰り返していた父親が準強制性交罪で起訴されたものの、無罪判決となった。準強制性交罪の成立要件のひとつ、性行為に同意がなかったことは認められたものの、もうひとつの抗拒不能(意思決定の自由を奪われている状態)であることは裁判で認められなかったからだ。

この無罪判決については、性犯罪の被害者支援団体や法律の専門家、市井の人々から、疑問を訴える声が相次いだ。そして、岡崎事件をきっかけに、性被害の正しい実態を知ってほしいという声が高まっている。

 10月20日、日本学術会議の主催で、性暴力事件をさまざまな視点から考えるシンポジウムが開催された。法律の研究者や性暴力被害者支援団体、精神科医などが登壇し、それぞれの知見から性暴力事件における問題が語られた。そのシンポジウムの様子を一部レポートする。

見えにくい性的虐待
 岡崎事件では、父親による実の娘への性的虐待は中学2年生のときから始まり、繰り返されていたことが分かった。

 親による子どもへの虐待というと、まずは身体的虐待をイメージする人が多く、性的虐待は少ないと思っている方も多いのではないだろうか。他方で、性的虐待は妊娠などの深刻な事態にならないと発覚しづらいことも事実だ。

 神奈川県では、性的虐待の割合が少なすぎることはおかしいとの違和感から、性的虐待に対象を絞った調査を行ったという。

 神奈川県中央児童相談所虐待対策支援課の三桝優子さんからは、「神奈川県児童相談所における性的虐待調査報告書(第4回)」をもとに、性的虐待の実態について説明があった。それによれば性的虐待は、外からはごくごく一般的に見える「普通の家庭」でも起こっている。

 

神奈川県中央児童相談所 虐待対策支援課 三桝優子さん
三桝さん:神奈川県が被害児童212名を対象として行った調査報告書では、児童相談所が性的虐待の被害を受理した時点の子どもの6割は小学生、または中学生でした。ただし、乳幼児を含めた未就学児が全体の16%を占めており、0歳~3歳にも重篤事例が見られました。
 性的虐待を受け始めた年齢と、被害を受理した時点の子どもの年齢に約3年の差があることから、ほかの虐待に比べて発見が遅れていることも明らかになっています。
 性的虐待というと、血縁関係のない者や実親ではない親族などが行なっているというイメージを抱きがちですが、実際の虐待者の割合は「実父」が35%で最も多く、「養父」や「継父」よりも多いという実態があります。「実父」「実母」「兄」を合わせると、51%にのぼります。
 また、虐待者の就労状況で最も多い区分は「定職」の40%であり、いわゆる一般的な家庭でも性虐待は起こります。虐待を受けた子どもに何らかの症状が現れる場合は約半数にとどまるため、外見からは性的虐待を発見することは困難であることも分かっています。
 実際に、被害が発覚するのは子ども自身の告白によるパターンが6割以上であり、子どものちょっとした告白が虐待通告につなげられるような環境を整えることが、被害発見のために必要なことではないかと考えています。

 三桝さんの話からは、性的虐待は特殊な条件のある家庭で起こるものだという先入観によって、被害者を見逃してしまう危険性があるため、正しい実態を知ることが必要だと感じた。

被害者が迎合的態度を示す理由
 性暴力被害に遭った被害者は、「なぜ逃げなかったのか」「抵抗できたのではないか」などと責められることがある。先述した岡崎事件においても、そうした選択肢が被害者にもあったと見なされたことで、加害者の無罪判決につながってしまった。

 被害者はなぜ逃げられないのか、性虐待の被害に遭っているときの子どもの心理状態について、医師であり認定NPO法人「チャイルドファーストジャパン」理事長の山田不二子さんは、「子どもは支配を受けている立場にあるので逃げられない」と説明する。

 

認定NPO法人チャイルドファーストジャパン理事長 山田不二子さん
山田さん:性虐待は、最初からレイプするのではなく、ボディタッチのような軽い行為から始まって、子どもにとってはこの後どうなっていくのか分からないような状態で、徐々にエスカレートしていくことが多いです。虐待者は、脅しと飴(何かを買い与えるなど)を使い分け、子どもを共犯者に仕立てることで秘密を守らせます。虐待者の原動となっているのは、性欲というより支配欲や征服欲であることが多くあります。

 また、山田さんによれば、性暴力被害時の「5F反応」(=人間が危機・恐怖に直面した時、生存可能性を最も高める反応として脳科学の最新の知見に基づいて検証されている反応のこと)には「友好反応」「凍結反応」「闘争反応」「逃走反応」「迎合反応」があるが、「被害者が虐待者に友好的な態度を取って関係を維持することで自分を守ろうとすることもあり、『闘争』と『逃走』はできないことがあります」という。

 これを踏まえて、フェミニストカウンセリングに携わる「性暴力禁止法をつくろうネットワーク」共同代表の周藤由美子さんからは、父親からの性的虐待など継続した性暴力において一見すると誤解されてしまう被害者の行動を理解するために、職場や教育機関での継続したセクハラ被害についての調査報告を使った説明があった。

 

性暴力禁止法をつくろうネットワーク共同代表 周藤由美子さん
周藤さん:職場のセクハラにおいては、加害者が上司や取引先など立場が上のために冷たくあしらうことが困難な状況であることが多く、被害者は加害者を怒らせないために褒めたり、感謝したりするメールを送ったりすることがあります。こういった被害者の行動は一見すると迎合的な態度に見えるため他者からは理解されにくく、警察へ相談に行っても被害届を受け取ってもらえなかったり、事件化されなかったりする場合もあります。
 被害者は、加害者のもとへ自分から出向くこともありますが、その背景には、加害者を不機嫌にさせないために要求される前に行動に移したり、被害であったことを確かめるとともに2度としないように伝えるために申し入れようとしたりなどという被害者心理があるんです。

 被害者からすれば、加害者の気分次第で加害行動が行われるため、「ごめんなさい、もうしません。」と言ってもらわない限りは、ずっと加害者のことを気にしていなくてはいけない状況になる。主導権の握れない苦しさから逃れるために、被害者が迎合的に見えるような態度を取ることもあるという。

 筆者もかつてセクハラ被害に遭った経験があり、主導権を握れない苦しさについて非常に共感した。加害者がいつセクハラ行為に及ぶか予測がつかないうえに自分を守る手段がないため、常に恐怖に頭が支配されているような感覚であり、「どうせ嫌なことをされるなら、いつされるか分かっていた方がいい」と思ったこともあった。

 筆者は、被害から時間が経っても当時の自分の感情を理解するには時間を要した。そのため、被害に遭っている最中の被害者が、自分の迎合的態度を理解するのは困難であると感じた。

 ご自身も性的虐待のサバイバーであり、被害者の当事者団体である一般社団法人「Spring」代表の山本潤さんは、性犯罪に無罪判決が相次いだことについて、被害者の立場からの思いを語った。

 

一般社団法人Spring代表 山本潤さん
山本さん:過去にも同様の無罪判決が出ていましたが、またこのような判決が出てしまったことを残念に感じました。被害者が裁判で訴えるまでには、警察に相談をして、検察では起訴か不起訴か判断され、そして裁判に至るという大変な過程があります。勇気を出して訴えたにも関わらず、無罪になった被害者の気持ちを思うといたたまれません。
 ただ、社会の反応は少しずつ変わっています。今年4月にはフラワーデモが行われ、メディアが報道することによって社会的な関心を集めました。
 2020年に刑法の検討委員会が予定されていますが、性暴力が適切に裁かれるためには、「同意のない性交は犯罪」というルールを作ることが必要だと考えています。

 山本さんからは、天皇陛下の即位にともない10月18日に約55万人に実地された恩赦(刑罰を特別な恩典によって許し、または軽くすること)には、「痴漢や盗撮、児童ポルノ禁止法違反で有罪や罰金刑になった人も含まれている」という説明もあった。

 以前、筆者が取材したシンポジウム「性犯罪をなくすための対話」では、痴漢や盗撮は常習性が高いといった話もあり、治療につながらない加害者は再び同様の性犯罪を繰り返すのではないかという疑問がある。

 

司法の無理解
 千葉大学大学院教授で法律の専門家である後藤弘子さんからは、刑法の問題点について指摘があった。

 

後藤弘子さん
後藤さん:現在の刑法ができたのは1907年(明治時代)で、立法者に女性はいませんでした。当時は加害者である男性が性をコントロールすべきであるという考えが前提であり、性犯罪に対する刑法は加害者である男性が持つあるべき被害者像を前提として作られています。また、事実とは異なるステレオタイプ的な被害者像や加害者像が前提として共有されていたり、両者の関係性における「権力性」や「支配性」への理解不足があったりします。

 これから、性暴力被害者が正義が実現されたと感じられる刑事司法を作っていくためには、一つひとつの判決を批判し、現在の法律が被害者の実態に合っていないことを強調していくことが重要です。また、裁判官の教育のための教材も必要だと考えています。

―――――

 現状、あまり知られていない性的虐待の実態や被害者心理――いわゆる強姦神話(=強姦に対する誤った認識。被害者側が自身を責めることも含まれる)がまかり通っており、被害について誤解されている側面もあるだろう。

 最近では、2018年度の性暴力被害者ワンストップ支援センター運営費が削減されていたことが明らかになったが、これは性暴力被害者支援の必要性が認識されつつあるにもかかわらず、流れに逆行した動きではないだろうか。

 性的虐待に対して一人ひとりができるのは、ほんの小さなことかもしれない。無罪判決のことを知らない友人に話すなどして問題提起を広める、支援団体に寄付するなどもそのひとつだ。ただし、まずは真の被害実態や被害者心理を知ることが、支援への第一歩であるとも感じた。