10代男女の成長物語がここに!――『青春高校3年C組』その魅力とウインターライブレポート

 2018年も、秋元康プロデュースによるアイドルグループが多くの話題を集めた。海外で新グループを立ち上げた48グループや、「吉本坂46」を発足させた坂道シリーズをはじめ、エイベックスと共同で運営する「劇団4ドル50セント」、テレビ番組と連動した「ラストアイドル」、ワーナーミュージック・ジャパンとタッグを組んだ「国民的ガールズバンドオーディション」など、新企画を次々に打ち出し、それまでとは違った側面で楽しませてくれるのは、「さすが」という他はない。

 そんな中、今年の4月に、テレビ東京で、秋元康企画・監修の新たな番組が始まった。タイトルは『青春高校3年C組』。どこかにある、でもどこにもないような「理想のクラス」3年C組を舞台に、生徒たちが企画に挑戦し、その様子を生放送で伝えるというものだ。

 テレビ東京のみの放送ではあるが、「SHOWROOM」や「Paravi」といった配信サービスで楽しめるため、全国のアイドルファンが視聴可能だ。

 

■多種多様な生徒と、実力派のMC陣

 まず、「生徒」となる出演者は、番組内のオーディションで選ばれた若者たち。この時点で、番組の方向性というものが見えてくる。どんなメンバーを選ぶかで、盛り上がり方や人気が全く変わってくるからだ。

 実際選ばれたのは、実に個性豊かな面々だった。

 ジュニアアイドルグループ「みにちあ☆ベアーズ」の元メンバーで、学級委員長を務める美少女・日比野芽奈。中学時代から7年間引きこもっていたという村西里世。仕草や雰囲気が老けて見えるのか、「おばちゃん」の愛称で親しまれている宇都木彩乃など。

 一方、男性陣は、ナイジェリアと日本のハーフである「チャーリー」ことエゼマタ健太チャールズ。体重120kg超えの巨漢・佐藤諒。見た目のヤンキーっぽさが売りの「リッキー」こと奥村力など、こちらもバラエティ色豊か。

 何よりも、「美男・美女」だけではないところがいい。10代男女が多く出演する番組といえば、今年5月に終了した『Rの法則』(NHK Eテレ)に近い部分もあるが、あちらは基本的にモデルや芸能活動経験がある出演者が多く、美男美女揃い。見ている立場からすると、「どうせみんな“リア充”だしなぁ」という気持ちにならなくもなかった。

 しかし、『青春高校』は違う。多くのメンバーが、何かコンプレックスを抱えていたり、「自分を変えたい」というような気持ちを抱いていたりするのだ。そこに大きな魅力がある。

 一方で、選ばれたメンバーには共通点も感じる。それは、「伸びしろがある」ということだ。実際、毎日の生放送を続けて見ていると、それぞれの成長が見えてくる。

 それは、MC(番組内では「担任」)のキャスティングからも感じることができる。

 隔週木曜日担当のバカリズムは、『アイドリング!!!』(フジテレビ系)のMCを10年近く担当し、菊地亜美や朝日奈央などを育ててきた。金曜日のバナナマン・日村勇紀は、相方の設楽統とともに『乃木坂工事中』(テレビ東京系)など、乃木坂46のMCを務め、「公式お兄ちゃん」と呼ばれるまでになっている。他にも、月曜日のメイプル超合金は、『STU48のセトビンゴ!』(日本テレビ系)で、STU48と共演。隔週火曜日のバイきんぐ・小峠と、水曜日の三四郎は、『浅草ベビ9』(テレビ東京系)で、ベイビーレイズJAPANや9nineと共演している。つまり、多くのMCが、番組を通してアイドルを“育てた”実績があるということだ。

 番組プロデューサーは、『ゴッドタン』でもおなじみの佐久間宣行。彼の中にも、芸人と若者のぶつかり合いによって生まれる、感動や面白さを見せようという思いがあったのではないだろうか。

 生徒たちの成長の度合いを見せるかのように、定期的に企画やイベントが組まれている。

 野外合宿、運動会、新メンバーの加入……その時々に用意された課題に取り組むことにより、メンバーは絆を強め、また少し大人へと近づいていくのだ。

 そんなイベントの中でも、一番の盛り上がりを見せたのが、8月27日に東京富士大学で開催された『青春高校文化祭』だった。会場にはキャパいっぱいの1,000人ものファンが訪れ、「アイドル部」「軽音部」「ダンス&ボーカル部」などの、練習の成果を見届けたのだ。

 そのライブの最後に発表されたのが、「12月26日に、ウインターライブを開催する」という告知だった。一つの山を越えたメンバーたちは、次のイベントに向かって歩き出した。

 そして迎えた、ウインターライブ当日。私も会場に足を運んだので、レポートしたい。

■熱気と感動に包まれた3時間

 開場時間の17時半頃、会場である中野サンプラザに到着すると、すでに大勢の客が集まっていた。ちなみにチケット(およそ2,000枚)はソールドアウト。年末の忙しい時期ではあるが、多くのファンが、彼ら彼女らの発表を見届けようと思っていたのだ。

 入場待機列を眺めてみると、若い男女が多い。皆、自分の現在を、生徒たちに重ね合わせているのかもしれない。入口で、生徒手作りのパンフレットを受け取り、会場に入る。

 注意事項のアナウンス、前説をそれぞれ担当の生徒たちがこなしていく。いずれも、プロとは一味違う初々しさが微笑ましい。

 定刻を15分ほど押して、開演。幕が上がると、出演者の生徒たち31人、そしてMCの中井りか(NGT48)、岩永達彦(ノブナガ)が登場。多くのステージを経験している中井だが、生徒たちかうまくできるかどうか心配で緊張しているという。

 簡単な挨拶の後、まずは、夏に作られた、それぞれのユニットの楽曲披露となった。

 トップバッターは、軽音部。小峠が学生時代に作った曲をベースにした「うるさいうた」を披露する。8月の文化祭に比べ、レベルが上がっているのはもちろんだが、新メンバーが加わり、音に厚みが加わった。特に、上島陸歩のヴァイオリンが、魅力的な音を奏でていた。

 ここで、客席に来ていたMC陣、三四郎の小宮浩信と相田周二、そして安藤なつ(メイプル超合金)が挨拶する。今回相田は、ダンスボーカル部のセンターを務めるということもあり、気合が入っている。

 続いて、企画ユニットが「バトラー」、ダンス&ボーカル部が「Leave it to me!」をパフォーマンス。どちらも新メンバーが加わっているが、クオリティは前回以上。それぞれの熱意が感じられた。

 そして、アイドル部が登場し「チャイムの途中で」を歌う。こちらは、前回の7人から9人に増員。華やかさが増した印象だった。客席からも、色とりどりのペンライトが振られ、彩りを添えていた。

 ここからは、かくし芸的なステージが続く。まずは3人組の漫才部。台本もメンバーで書いたという、ドライブデートを題材にした漫才は、テンポもよく面白かった。そして、MC・中井りかも加わってのコント部。アイドルの握手会という設定で、中井のスキャンダルをネタにしたストーリーは大ウケだった。

 前回賛否両論あったマリンバ演奏では、ピアノや太鼓も加わって、SEKAI NO OWARI「スターライトパレード」を披露。他の出し物のような、熱さこそないものの、なにかほのぼのとして温かい気持ちになれた。

 続いて、今回の目玉のひとつでもある、全員コント。主役は、前回の文化祭で、補欠から正規メンバーに昇格した、別所匠。30分を超えるコントだったが、ひとりひとりの熱演もあって、あっという間に感じた。

 そして後半戦。ここからは、今回のライブのために作られた、新ユニットや新曲のコーナーだ。

 トップバッターは、今回唯一のソロ、前川歌音による「クラクションレクイエム」。かつての中森明菜を彷彿させる楽曲に、マイクスタンドを使った大胆なパフォーマンスが見事。会場からの大歓声に、満足感を感じているようだった。

 そして、チャーリー(エゼマタ健太チャールズ)とおばちゃん(宇都木彩乃)によるユニットで、「ナイジェリアローズ」。こちらは、チャーリーが曲の途中で上着とズボンを脱ぎ捨て、短パンひとつで歌うという驚きの趣向であった。

 ここで客席には、隔週火曜日MC・千鳥の二人が登場。会場に歓声が沸き起こる。

 さて、ステージ上には、元引きこもりの村西里世が登場し、YouTubeとTwitterで、50万回以上再生されたという「引きこもりあるあるのうた」を歌う。自身の経験をも織り込んだと思わる歌詞と、コミカルなダンスが印象的。引きこもりらしく、スウェット姿もよく似合っていた。

 そして、クラスではモテない男子キャラとなっている、出口晴臣、別所匠の2人による「負け犬のブルース」。ここでは、出口がハーモニカも奏で、切なげな歌を一層盛り上げていた。

 部活の発表に戻り、軽音部が新曲「自己嫌悪の夜」を演奏。切ないバラードに、キーボードのソロ、そしてやはりヴァイオリンがいい味を出している。そのままの盛り上がりを受け、企画ユニットの「気まぐれカモン」へと繋がった。

 新メンバーの、「マーガリン」こと大曲李佳がセンターとなった、アイドル部は、「無人島へ連れてって」を歌い踊る。AKBなどにも通じる王道のアイドルソングで、9人のフォーメーションも見事だった。

 部活のラストは、三四郎・相田がセンターをすることになった、ダンス&ボーカル部の「マイナスワン」。赤いジャージ風の衣装で12名が踊る様は圧巻だった。短い練習時間だったと思うが、相田も立派に務めを果たしていた。

 ライブも一通り終了し、生徒がステージに揃ったところでサプライズ。なんと、番組MCを務めている芸人13人による新曲「たった一つだけの約束」ができたとのこと。会場に来ていたMC陣もマイクを握り、曲が流される。「死ぬな、生きろ!」というメッセージが伝わってくる力強い曲。生徒たちは涙を流して聞き入っていた。

 その後、もう一つのサプライズ、来年2月に、新宿アルタで1週間劇場公演が決まったとのこと。こちらもどんな内容になるのか、期待して待ちたい。

 最後、メンバーから感謝の言葉が述べられ、全員で合唱曲「夕焼けはなぜ、一瞬なのか」を歌う。会場は、ひとつのことをやり遂げた生徒たちに拍手を送り、3時間にも及んだライブは終了した。

 

■ライブを通して伝えたかったこと

 企画もバラエティに富んでいて、楽しく、見ごたえのあるライブだった。テレビの企画であることを考えれば、構成や演出は細かく決められていたことと思う。制作しているのは、経験豊富なプロの人たちだ。良いものができるのも納得だ。ただ、実際にステージを生で見て、生徒たちの頑張る姿に、台本を超えた勢いや感動を感じたことも事実である。

 近年は、ネットなどの広まりにより、「学校」というものの存在は希薄化しているのではないかと思う。この番組の作り手側の人たちが経験した時代は、今よりもっと濃密な学校生活があった。私自身振り返ってみても、学生時代、学校は生活のほぼ全てで、塾に行っている人すら少数派だったのだ。

 この番組を生み出したのは、あの頃の学校を作りたかった人たちなのだ。人間関係が濃くて、キラキラと輝いていた。そんな思い出の中の「理想の学校」、それこそが、今回見せてくれた若者たちの「青春」なのだろう。

「学校って、こんなに楽しかったんだよ。こんなに一生懸命になれたんだよ」そんなことを、生徒たちや、テレビの向こうにいる視聴者に知ってほしかったんじゃないだろうか。熱血モノの学園ドラマも流行らなくなった今、バラエティとドキュメンタリーの間にあるような、この番組が、伝えようとしているものは大きいはずだ。

 番組が始まって8カ月、実際に生徒たちは大きく成長した。かつての『夕やけニャンニャン』(フジテレビ系)や『ASAYAN』(テレビ東京系)などの例を見るまでもなく、若い子たちが成長する姿を見るのは、何よりも嬉しいものだ。当然、番組である以上、つらいことや厳しい面もあるだろう。しかし、困難を乗り越えてなお「前に進もう」とする姿勢は、実に尊いものなのだ。

「学校」がコンセプトであるがゆえに、生徒たちもみないつかは卒業していく。彼ら彼女らが外の世界に向け大きく羽ばたいていく日まで、しっかりと見届けたいと思った。

(文=プレヤード)

10代男女の成長物語がここに!――『青春高校3年C組』その魅力とウインターライブレポート

 2018年も、秋元康プロデュースによるアイドルグループが多くの話題を集めた。海外で新グループを立ち上げた48グループや、「吉本坂46」を発足させた坂道シリーズをはじめ、エイベックスと共同で運営する「劇団4ドル50セント」、テレビ番組と連動した「ラストアイドル」、ワーナーミュージック・ジャパンとタッグを組んだ「国民的ガールズバンドオーディション」など、新企画を次々に打ち出し、それまでとは違った側面で楽しませてくれるのは、「さすが」という他はない。

 そんな中、今年の4月に、テレビ東京で、秋元康企画・監修の新たな番組が始まった。タイトルは『青春高校3年C組』。どこかにある、でもどこにもないような「理想のクラス」3年C組を舞台に、生徒たちが企画に挑戦し、その様子を生放送で伝えるというものだ。

 テレビ東京のみの放送ではあるが、「SHOWROOM」や「Paravi」といった配信サービスで楽しめるため、全国のアイドルファンが視聴可能だ。

 

■多種多様な生徒と、実力派のMC陣

 まず、「生徒」となる出演者は、番組内のオーディションで選ばれた若者たち。この時点で、番組の方向性というものが見えてくる。どんなメンバーを選ぶかで、盛り上がり方や人気が全く変わってくるからだ。

 実際選ばれたのは、実に個性豊かな面々だった。

 ジュニアアイドルグループ「みにちあ☆ベアーズ」の元メンバーで、学級委員長を務める美少女・日比野芽奈。中学時代から7年間引きこもっていたという村西里世。仕草や雰囲気が老けて見えるのか、「おばちゃん」の愛称で親しまれている宇都木彩乃など。

 一方、男性陣は、ナイジェリアと日本のハーフである「チャーリー」ことエゼマタ健太チャールズ。体重120kg超えの巨漢・佐藤諒。見た目のヤンキーっぽさが売りの「リッキー」こと奥村力など、こちらもバラエティ色豊か。

 何よりも、「美男・美女」だけではないところがいい。10代男女が多く出演する番組といえば、今年5月に終了した『Rの法則』(NHK Eテレ)に近い部分もあるが、あちらは基本的にモデルや芸能活動経験がある出演者が多く、美男美女揃い。見ている立場からすると、「どうせみんな“リア充”だしなぁ」という気持ちにならなくもなかった。

 しかし、『青春高校』は違う。多くのメンバーが、何かコンプレックスを抱えていたり、「自分を変えたい」というような気持ちを抱いていたりするのだ。そこに大きな魅力がある。

 一方で、選ばれたメンバーには共通点も感じる。それは、「伸びしろがある」ということだ。実際、毎日の生放送を続けて見ていると、それぞれの成長が見えてくる。

 それは、MC(番組内では「担任」)のキャスティングからも感じることができる。

 隔週木曜日担当のバカリズムは、『アイドリング!!!』(フジテレビ系)のMCを10年近く担当し、菊地亜美や朝日奈央などを育ててきた。金曜日のバナナマン・日村勇紀は、相方の設楽統とともに『乃木坂工事中』(テレビ東京系)など、乃木坂46のMCを務め、「公式お兄ちゃん」と呼ばれるまでになっている。他にも、月曜日のメイプル超合金は、『STU48のセトビンゴ!』(日本テレビ系)で、STU48と共演。隔週火曜日のバイきんぐ・小峠と、水曜日の三四郎は、『浅草ベビ9』(テレビ東京系)で、ベイビーレイズJAPANや9nineと共演している。つまり、多くのMCが、番組を通してアイドルを“育てた”実績があるということだ。

 番組プロデューサーは、『ゴッドタン』でもおなじみの佐久間宣行。彼の中にも、芸人と若者のぶつかり合いによって生まれる、感動や面白さを見せようという思いがあったのではないだろうか。

 生徒たちの成長の度合いを見せるかのように、定期的に企画やイベントが組まれている。

 野外合宿、運動会、新メンバーの加入……その時々に用意された課題に取り組むことにより、メンバーは絆を強め、また少し大人へと近づいていくのだ。

 そんなイベントの中でも、一番の盛り上がりを見せたのが、8月27日に東京富士大学で開催された『青春高校文化祭』だった。会場にはキャパいっぱいの1,000人ものファンが訪れ、「アイドル部」「軽音部」「ダンス&ボーカル部」などの、練習の成果を見届けたのだ。

 そのライブの最後に発表されたのが、「12月26日に、ウインターライブを開催する」という告知だった。一つの山を越えたメンバーたちは、次のイベントに向かって歩き出した。

 そして迎えた、ウインターライブ当日。私も会場に足を運んだので、レポートしたい。

■熱気と感動に包まれた3時間

 開場時間の17時半頃、会場である中野サンプラザに到着すると、すでに大勢の客が集まっていた。ちなみにチケット(およそ2,000枚)はソールドアウト。年末の忙しい時期ではあるが、多くのファンが、彼ら彼女らの発表を見届けようと思っていたのだ。

 入場待機列を眺めてみると、若い男女が多い。皆、自分の現在を、生徒たちに重ね合わせているのかもしれない。入口で、生徒手作りのパンフレットを受け取り、会場に入る。

 注意事項のアナウンス、前説をそれぞれ担当の生徒たちがこなしていく。いずれも、プロとは一味違う初々しさが微笑ましい。

 定刻を15分ほど押して、開演。幕が上がると、出演者の生徒たち31人、そしてMCの中井りか(NGT48)、岩永達彦(ノブナガ)が登場。多くのステージを経験している中井だが、生徒たちかうまくできるかどうか心配で緊張しているという。

 簡単な挨拶の後、まずは、夏に作られた、それぞれのユニットの楽曲披露となった。

 トップバッターは、軽音部。小峠が学生時代に作った曲をベースにした「うるさいうた」を披露する。8月の文化祭に比べ、レベルが上がっているのはもちろんだが、新メンバーが加わり、音に厚みが加わった。特に、上島陸歩のヴァイオリンが、魅力的な音を奏でていた。

 ここで、客席に来ていたMC陣、三四郎の小宮浩信と相田周二、そして安藤なつ(メイプル超合金)が挨拶する。今回相田は、ダンスボーカル部のセンターを務めるということもあり、気合が入っている。

 続いて、企画ユニットが「バトラー」、ダンス&ボーカル部が「Leave it to me!」をパフォーマンス。どちらも新メンバーが加わっているが、クオリティは前回以上。それぞれの熱意が感じられた。

 そして、アイドル部が登場し「チャイムの途中で」を歌う。こちらは、前回の7人から9人に増員。華やかさが増した印象だった。客席からも、色とりどりのペンライトが振られ、彩りを添えていた。

 ここからは、かくし芸的なステージが続く。まずは3人組の漫才部。台本もメンバーで書いたという、ドライブデートを題材にした漫才は、テンポもよく面白かった。そして、MC・中井りかも加わってのコント部。アイドルの握手会という設定で、中井のスキャンダルをネタにしたストーリーは大ウケだった。

 前回賛否両論あったマリンバ演奏では、ピアノや太鼓も加わって、SEKAI NO OWARI「スターライトパレード」を披露。他の出し物のような、熱さこそないものの、なにかほのぼのとして温かい気持ちになれた。

 続いて、今回の目玉のひとつでもある、全員コント。主役は、前回の文化祭で、補欠から正規メンバーに昇格した、別所匠。30分を超えるコントだったが、ひとりひとりの熱演もあって、あっという間に感じた。

 そして後半戦。ここからは、今回のライブのために作られた、新ユニットや新曲のコーナーだ。

 トップバッターは、今回唯一のソロ、前川歌音による「クラクションレクイエム」。かつての中森明菜を彷彿させる楽曲に、マイクスタンドを使った大胆なパフォーマンスが見事。会場からの大歓声に、満足感を感じているようだった。

 そして、チャーリー(エゼマタ健太チャールズ)とおばちゃん(宇都木彩乃)によるユニットで、「ナイジェリアローズ」。こちらは、チャーリーが曲の途中で上着とズボンを脱ぎ捨て、短パンひとつで歌うという驚きの趣向であった。

 ここで客席には、隔週火曜日MC・千鳥の二人が登場。会場に歓声が沸き起こる。

 さて、ステージ上には、元引きこもりの村西里世が登場し、YouTubeとTwitterで、50万回以上再生されたという「引きこもりあるあるのうた」を歌う。自身の経験をも織り込んだと思わる歌詞と、コミカルなダンスが印象的。引きこもりらしく、スウェット姿もよく似合っていた。

 そして、クラスではモテない男子キャラとなっている、出口晴臣、別所匠の2人による「負け犬のブルース」。ここでは、出口がハーモニカも奏で、切なげな歌を一層盛り上げていた。

 部活の発表に戻り、軽音部が新曲「自己嫌悪の夜」を演奏。切ないバラードに、キーボードのソロ、そしてやはりヴァイオリンがいい味を出している。そのままの盛り上がりを受け、企画ユニットの「気まぐれカモン」へと繋がった。

 新メンバーの、「マーガリン」こと大曲李佳がセンターとなった、アイドル部は、「無人島へ連れてって」を歌い踊る。AKBなどにも通じる王道のアイドルソングで、9人のフォーメーションも見事だった。

 部活のラストは、三四郎・相田がセンターをすることになった、ダンス&ボーカル部の「マイナスワン」。赤いジャージ風の衣装で12名が踊る様は圧巻だった。短い練習時間だったと思うが、相田も立派に務めを果たしていた。

 ライブも一通り終了し、生徒がステージに揃ったところでサプライズ。なんと、番組MCを務めている芸人13人による新曲「たった一つだけの約束」ができたとのこと。会場に来ていたMC陣もマイクを握り、曲が流される。「死ぬな、生きろ!」というメッセージが伝わってくる力強い曲。生徒たちは涙を流して聞き入っていた。

 その後、もう一つのサプライズ、来年2月に、新宿アルタで1週間劇場公演が決まったとのこと。こちらもどんな内容になるのか、期待して待ちたい。

 最後、メンバーから感謝の言葉が述べられ、全員で合唱曲「夕焼けはなぜ、一瞬なのか」を歌う。会場は、ひとつのことをやり遂げた生徒たちに拍手を送り、3時間にも及んだライブは終了した。

 

■ライブを通して伝えたかったこと

 企画もバラエティに富んでいて、楽しく、見ごたえのあるライブだった。テレビの企画であることを考えれば、構成や演出は細かく決められていたことと思う。制作しているのは、経験豊富なプロの人たちだ。良いものができるのも納得だ。ただ、実際にステージを生で見て、生徒たちの頑張る姿に、台本を超えた勢いや感動を感じたことも事実である。

 近年は、ネットなどの広まりにより、「学校」というものの存在は希薄化しているのではないかと思う。この番組の作り手側の人たちが経験した時代は、今よりもっと濃密な学校生活があった。私自身振り返ってみても、学生時代、学校は生活のほぼ全てで、塾に行っている人すら少数派だったのだ。

 この番組を生み出したのは、あの頃の学校を作りたかった人たちなのだ。人間関係が濃くて、キラキラと輝いていた。そんな思い出の中の「理想の学校」、それこそが、今回見せてくれた若者たちの「青春」なのだろう。

「学校って、こんなに楽しかったんだよ。こんなに一生懸命になれたんだよ」そんなことを、生徒たちや、テレビの向こうにいる視聴者に知ってほしかったんじゃないだろうか。熱血モノの学園ドラマも流行らなくなった今、バラエティとドキュメンタリーの間にあるような、この番組が、伝えようとしているものは大きいはずだ。

 番組が始まって8カ月、実際に生徒たちは大きく成長した。かつての『夕やけニャンニャン』(フジテレビ系)や『ASAYAN』(テレビ東京系)などの例を見るまでもなく、若い子たちが成長する姿を見るのは、何よりも嬉しいものだ。当然、番組である以上、つらいことや厳しい面もあるだろう。しかし、困難を乗り越えてなお「前に進もう」とする姿勢は、実に尊いものなのだ。

「学校」がコンセプトであるがゆえに、生徒たちもみないつかは卒業していく。彼ら彼女らが外の世界に向け大きく羽ばたいていく日まで、しっかりと見届けたいと思った。

(文=プレヤード)

高畑充希、満島ひかり、早見あかり――食べる女性はなぜあんなにも美しいのか?

 高畑充希の主演ドラマ『忘却のサチコ』(テレビ東京系)が話題だ。

 出版社に勤務する佐々木幸子(高畑)が、結婚式当日に婚約者・俊吾(早乙女太一)に逃げられるという心の傷を負いながら、様々な食べ物によってそれを乗り越えていくという物語。漫画原作によるコミカルさと、融通が利かない幸子を演じた高畑の演技が見ものだが、なんと言っても一番の魅力は、彼女の食事シーンである。

 ひとつひとつの食材をゆっくりと口に運び、慈しむように味わう。おいしさを表現するモノローグのセリフや、CGを使った演出もいいが、高畑のうっとりとした表情が実に魅力的だ。おそらくは、演技だけでなく、本当においしいと思って食べており、その気持を表現に乗せているのではないかと思う。

 このような演技を見せるためには、いくつかの才能が必要である。

 まず、食べ物を「おいしい」と感じる“感性”だ。これはもしかすると、生まれついての能力、あるいは育ってきた環境によるかもしれない。鮮度の良さや、ちょっとした味付けの違いを感じ分ける舌を持っていないといけない。

 次に、“上品な食べ方”だろう。ただ単に空腹を満たすために、食べ物を口に詰め込むような雑な食べ方では、見ていてあまり気持ちのいいものではない。かと言って、少しずつちょこちょこと食べているのも味気ない。その絶妙な加減を心得ているのだ。演技指導はあるにせよ、食事という日常の行動に、その人の品位のようなものが表れると思う。

 最後に、その根底にある食物に対する“感謝の念”だ。おいしいものをおいしく食べ、自分の命が繋がっていく、その根源的な尊さを感じる気持ち。それは画面を通しても伝わるものだ。

 実は、この「美女と食べ物」系のドラマ、ここ数年で話題作が結構ある。

■後藤まりこ/ドラマ『たべるダケ』(テレビ東京系)

  2013年に放送された、ドラマ『たべるダケ』(テレビ東京系)。これは、とにかく魅力的な食べ方をする謎の女性・シズル(後藤まりこ)に魅了された男・柿野(新井浩文)が、彼女を追って騒動を巻き起こす物語。ロックミュージシャンでもあった後藤の食べっぷりは、まるで音楽をかき鳴らすような迫力と輝きに満ちていた。

 

■武田梨奈/ドラマ『ワカコ酒』シリーズ(テレビ東京系)

 15年から放送され、人気シリーズとなった『ワカコ酒』(テレビ東京系)は、落ち着いたグルメ作品だ。女優の武田梨奈が、主人公・村崎ワカコを演じている。26歳のOLワカコが、会社帰りに、美味い肴を食べながらひとり酒を楽しむというストーリーだ。

 武田の上品で、どこか庶民的な雰囲気が抜群にいい。ゆっくりと美味いつまみを食べ、最後には「ぷしゅー」というセリフと共に、幸せを噛みしめるといった具合だ。

■早見あかり/ドラマ『ラーメン大好き小泉さん』(フジテレビ系)

 同じく15年放送の『ラーメン大好き小泉さん』(フジテレビ系)も、このカテゴリーだろう。とにかくラーメン好きの女子高生・小泉さん(早見あかり)が、タイトル通り、大好きなラーメンを食べ歩くというもの。

 この時の早見あかりの食べっぷりも見事だった。長い髪を後ろに束ね、手首をコキコキと鳴らしてからラーメンを食べる姿。哲学を持ってラーメンに挑んでいる主人公の思いを、見事に表現していた。彼女は、「ももいろクローバー」の一員として、多くの人の前でパフォーマンスをしてきた人だ。そんな経験がこの役に活きていたことは間違いないだろう。

 

 ■満島ひかり/「キリン一番搾り生ビール」CM

 最後に、ドラマではないが、「キリン一番搾り生ビール」のCMキャラクターを務めている満島ひかりも挙げておきたい。若い女性が一人で焼き肉を食べ、ビールをぐいっと飲む。最後の「あぁ、幸せ!」という時の表情も実にいい。彼女もまた、演技だけではなく、本当においしさを感じていることが伝わってくる。

 これらのドラマ・CMには、実は共通点がある。それは、多くの場合、「女性が一人で食事をしている」ということだ。

 女性というのは、友達や仲間と一緒に行動しがちだし、一昔前には、「女性が一人で食事なんかして……」という風潮があったことも事実だ。しかし、今はそんな時代ではない。女性だって男性と同じように一人で食事し、その幸せを味わえばいい。そもそも食べるという行為は、ごく個人的で孤独なものだ。

 作品で描かれた女性はみな、食事と真剣に向き合い、その何たるかを突き詰めていく。それは、「生きるための糧」かもしれないし、「人生を豊かにするためのもの」であるかもしれない。物語の中で、どこか生きづらさを感じている主人公たちは、「ものを食べる」という行為において開放される。そこにカタルシスが生まれるのである。

 それにしても、なぜ、美女が食事をする姿は、これほどまでに私達の心を惹きつけるのだろうか?

 それは、突き詰めていけば、食べるということが“生命の根源となる行為”だからではないだろうか。そもそも、なぜ男性が美しい女性に惹かれるのか、それはより優良な子孫を残すためだ。生まれながらに備わったものだと言っていい(もちろん容姿に限らず内面も含めてであるが)。

 一方、ものを食べるということも、本能的な欲求だ。その2つが合わさって、我々の目の前に提示されるのだ。それはもう、魅惑的なものに映って当然である。「美しい女性がおいしそうにものを食べる」というだけで、命を授けてくれた神への儀式のようにすら思えてくる。

 近年、大食いの女性タレントが人気であることも、その一端の表れではないかと思う。

「食べる姿が美しいのは名女優」ということもいえるだろう。真剣に食べ物と向き合うことによって、彼女たちはまた、自分自身とも向き合っているのである。

 これからも、見ていてお腹が空いてくるようなドラマが作られるとともに、それを見事に表現してくれる女性が現れることを期待したい。

 ただし、こんなに素敵な女性の食べっぷりばかり見ていると、若手の女性タレントが、食べ歩き番組などで「おいしい~」などと小さな口で頬張っている程度では満足できなくなってしまう。その点はご注意を!

(文=プレヤード)

武器はアイドルを思う心のみ! 自由をかけた親との戦い――ドラマ『婚外恋愛に似たもの』第4話

 世の中にある揉め事や悩み事の多くは、親子関係に起因していることが多い。子供を自分の分身のように考えて思う通りに育てたい親と、自我の目覚めとともにそこから離れたいと願う子。縁を切るとか疎遠になるということではなく、その問題を“きちんと整理できた時”、人は大人になるのではないかと思う。

 dTVで配信されている、栗山千明主演のドラマ『婚外恋愛に似たもの』第4話。今回は、大富豪の父との確執に苦しむ隅谷雅(平井理央)の“お家騒動”がテーマだった。

「隅谷雅はアイドルに夢中になっているショタコン」との怪文書を流した張本人が、自分の父親だと知った雅は、父に徹底抗戦を試みる。美佐代(栗山千明)の入れ知恵で、昌子(江口のりこ)と同性愛関係にあるとの文書を拡散するという作戦だ。

 当然、父からの反応はすぐにあった。

「そんなに親の望む人生が嫌か!」と怒りに震える父は、「嫌です。お父様に殺されてもかまわない」と言い切る雅に、親子の縁を切ることを告げる。雅は、人生を賭してアイドルを選んだのだ。

 もちろん、これは彼女がたまたま“ドルヲタ”という道を選び、顕在化したものであって、それが例えば芸能界への道でも、親の反対した相手との結婚でも、“親の束縛から離れ、自由になりたい”という、多くの人間に共通する思いであることは間違いない。

 雅はまさに、その瞬間、本当の大人になったのである。

  ドラマでは、子供と縁を切ることになった親の心情も語られている。実際に子供を持っている昌子は言う。

「子供が幸せな結婚をして、可愛い孫を生んでくれたらって思うのは、親なら当然の願望ではないか」

 確かにその通りだ。自分の子供が幸せになり、血を受け継いだ子孫を残してくれる、それはもはや遺伝子レベルに組み込まれた願望だともいえる。

 しかし、さまざまな事情があって、親のそのような願望を叶えてあげられない人はたくさんいる。親の思いと自分の思いが違っていたら、それは自分の気持ちを優先すべきだ。ただし、そんな場合でも、親にしてもらったことを忘れてはいけない。 雅自身も、そのことには気付いている。「覚えている」という事実はそれだけで価値のあることなのだ。

 今回の一件もあって、美佐代、昌子、雅には、絆のようなものが生まれてくる。ヲタク同士というのが入り口ではあっても、それぞれの境遇を知るにつれ、協力し合う関係になったのだ。

 三人で帰る道すがら、彼女たちは、偶然、雅の推しであるスノーホワイトのチカちゃん(増子敦貴)と遭遇する。驚いて立ちすくむ雅に、チカは「いつもありがとう」と声をかける。

 彼は、雅を知っていてくれた。いわゆる「認知」である。ドルヲタの中で「認知される」というのは、特別な意味がある。一方的に応援していた相手が、自分という存在を知っていてくれたのである。

 地下アイドルなどで、接触イベント(握手会やチェキ会など)が頻繁にあれば、比較的容易に認知してもらえる。SNSでリプを送ったり、ライブで目立つ格好をしたりして、積極的に自分をアピールし、覚えてもらうのがコツだ。その努力が実り、初めてこちらから名乗らずとも名前を呼んでもらえたり、サインに名前を書いてもらえたりしたときの感激は、ひとしおである。

 スノーホワイトは、そのような接触イベントはあまりやっている様子もないので、認知を知った雅の思いは想像するにあまりある。おそらく、これによってよりチカちゃんへの憧れはますます強くなったことだろう。ここでも「自分を覚えている」というのは重要な意味を持つのだ。

 一方、美佐代は夫(袴田吉彦)から、不倫相手であるアイドル・さなが、若い頃の美佐代に似ていたと告げられる。さなの写真を見た美佐代は思う。「見事な三番目顔だ……」。

 この、「三番目」を好きになるという夫の気持ち、実はよく理解できる。私も、アイドルグループで推しになるのは、実は一番人気の子であることは少ない。そこには、ファンとしての自分の存在価値のようなものを考えてしまうからかもしれない。

 例えば、100人のファンがいるメンバーであれば、彼女にとって自分は100分の1の存在でしかない。しかし、30人のファンの中の一人であれば、その価値は3倍以上に膨らむのだ。

 他にも、あまり歌がうまくないために、周りについていこうと努力する姿や、ダンスがぎこちなく必死になっている姿などは、私のような者にとっては、実に魅力的に見えるのである。一番の子にはない魅力を、三番目、四番目の子は兼ね備えているのである。

 ドラマでは、最後に、次回以降キーとなるであろう人物、真美(安達祐実)が登場する。「目立たないにもほどがある平均的な女」、美佐代は真美をそう評した。友情で結ばれつつあるホワラー3人組に新たなメンバーの登場である。今度はどんなドルヲタっぷりが見られるのか、注目したい。

(文=プレヤード)

■ドラマ『婚外恋愛に似たもの』
dTVにて毎週金曜日配信

武器はアイドルを思う心のみ! 自由をかけた親との戦い――ドラマ『婚外恋愛に似たもの』第4話

 世の中にある揉め事や悩み事の多くは、親子関係に起因していることが多い。子供を自分の分身のように考えて思う通りに育てたい親と、自我の目覚めとともにそこから離れたいと願う子。縁を切るとか疎遠になるということではなく、その問題を“きちんと整理できた時”、人は大人になるのではないかと思う。

 dTVで配信されている、栗山千明主演のドラマ『婚外恋愛に似たもの』第4話。今回は、大富豪の父との確執に苦しむ隅谷雅(平井理央)の“お家騒動”がテーマだった。

「隅谷雅はアイドルに夢中になっているショタコン」との怪文書を流した張本人が、自分の父親だと知った雅は、父に徹底抗戦を試みる。美佐代(栗山千明)の入れ知恵で、昌子(江口のりこ)と同性愛関係にあるとの文書を拡散するという作戦だ。

 当然、父からの反応はすぐにあった。

「そんなに親の望む人生が嫌か!」と怒りに震える父は、「嫌です。お父様に殺されてもかまわない」と言い切る雅に、親子の縁を切ることを告げる。雅は、人生を賭してアイドルを選んだのだ。

 もちろん、これは彼女がたまたま“ドルヲタ”という道を選び、顕在化したものであって、それが例えば芸能界への道でも、親の反対した相手との結婚でも、“親の束縛から離れ、自由になりたい”という、多くの人間に共通する思いであることは間違いない。

 雅はまさに、その瞬間、本当の大人になったのである。

  ドラマでは、子供と縁を切ることになった親の心情も語られている。実際に子供を持っている昌子は言う。

「子供が幸せな結婚をして、可愛い孫を生んでくれたらって思うのは、親なら当然の願望ではないか」

 確かにその通りだ。自分の子供が幸せになり、血を受け継いだ子孫を残してくれる、それはもはや遺伝子レベルに組み込まれた願望だともいえる。

 しかし、さまざまな事情があって、親のそのような願望を叶えてあげられない人はたくさんいる。親の思いと自分の思いが違っていたら、それは自分の気持ちを優先すべきだ。ただし、そんな場合でも、親にしてもらったことを忘れてはいけない。 雅自身も、そのことには気付いている。「覚えている」という事実はそれだけで価値のあることなのだ。

 今回の一件もあって、美佐代、昌子、雅には、絆のようなものが生まれてくる。ヲタク同士というのが入り口ではあっても、それぞれの境遇を知るにつれ、協力し合う関係になったのだ。

 三人で帰る道すがら、彼女たちは、偶然、雅の推しであるスノーホワイトのチカちゃん(増子敦貴)と遭遇する。驚いて立ちすくむ雅に、チカは「いつもありがとう」と声をかける。

 彼は、雅を知っていてくれた。いわゆる「認知」である。ドルヲタの中で「認知される」というのは、特別な意味がある。一方的に応援していた相手が、自分という存在を知っていてくれたのである。

 地下アイドルなどで、接触イベント(握手会やチェキ会など)が頻繁にあれば、比較的容易に認知してもらえる。SNSでリプを送ったり、ライブで目立つ格好をしたりして、積極的に自分をアピールし、覚えてもらうのがコツだ。その努力が実り、初めてこちらから名乗らずとも名前を呼んでもらえたり、サインに名前を書いてもらえたりしたときの感激は、ひとしおである。

 スノーホワイトは、そのような接触イベントはあまりやっている様子もないので、認知を知った雅の思いは想像するにあまりある。おそらく、これによってよりチカちゃんへの憧れはますます強くなったことだろう。ここでも「自分を覚えている」というのは重要な意味を持つのだ。

 一方、美佐代は夫(袴田吉彦)から、不倫相手であるアイドル・さなが、若い頃の美佐代に似ていたと告げられる。さなの写真を見た美佐代は思う。「見事な三番目顔だ……」。

 この、「三番目」を好きになるという夫の気持ち、実はよく理解できる。私も、アイドルグループで推しになるのは、実は一番人気の子であることは少ない。そこには、ファンとしての自分の存在価値のようなものを考えてしまうからかもしれない。

 例えば、100人のファンがいるメンバーであれば、彼女にとって自分は100分の1の存在でしかない。しかし、30人のファンの中の一人であれば、その価値は3倍以上に膨らむのだ。

 他にも、あまり歌がうまくないために、周りについていこうと努力する姿や、ダンスがぎこちなく必死になっている姿などは、私のような者にとっては、実に魅力的に見えるのである。一番の子にはない魅力を、三番目、四番目の子は兼ね備えているのである。

 ドラマでは、最後に、次回以降キーとなるであろう人物、真美(安達祐実)が登場する。「目立たないにもほどがある平均的な女」、美佐代は真美をそう評した。友情で結ばれつつあるホワラー3人組に新たなメンバーの登場である。今度はどんなドルヲタっぷりが見られるのか、注目したい。

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「身バレ・親バレ・彼氏バレ」ドルヲタが恐れる危機とは? ドラマ『婚外恋愛に似たもの』第3話

「リア充(リアルが充実している)」という言葉が使われ始めたのはいつ頃だったろう。

 おそらく、ネットの中で力を持ち始めた大型掲示板あたりが最初だと思うが、「自身はリア充ではない」と自認している人が、「リア充爆発しろ!」などと書き込みをするようになって、徐々に広まっていったのではないかと思われる。

 つまり、非リア充側が、リア充側を敵視する時の力が、大きな原動力となったのだろう。

 ここで考えてみたいのだが、“非リア充”という言葉には、二つの意味が内在している。一つは文字通り「今のリアルが充実していない」こと、そしてもう一つは「リアル以上に非リアル(妄想の世界)が充実している」ことだ。

 dTVで配信されている、栗山千明主演ドラマ『婚外恋愛に似たもの』第3話のメインキャストである売れっ子経営コンサルタント・隅谷雅(平井理央)は、完全に後者である。

 大物資産家の父のもとに生まれ、勉強も仕事も一番だった。見た目も申し分のない美人で、「この人がリア充じゃなかったら、いったい誰がリア充なんだ?」と思われるほどだろう。しかし、彼女はバリバリと仕事をこなす一方で、近づいてくる男に興味も示さず、ただひたすらに推しである「スノーホワイト」のチカちゃん(増子敦貴)を「自分の夫」と思い込み、日々応援に明け暮れているのだ。まさに“推しとの非リアルが現実を凌駕している状態”だろう。

 もちろん、男性ヲタ界隈でも、好きな女性アイドルを「俺の嫁」と呼んではばからず、家に帰れば彼女のポスターを見たり音楽を聴いたりして過ごす人は少なくない(本来の夫婦は、部屋に妻の写真を過剰に貼ったり彼女の歌を聴いたりはしないだろうが)。しかし、雅のように、リアリストな面と夢見がちな面を、自分の中で共存させている例は、さすがに珍しいだろう。

 今回、もう一点象徴的だったのは、いわゆるエリート(=仕事ができる)のドルヲタの存在である。

 アイドルの現場では、とにかく湯水のようにお金を落としていく人、通称“財閥ヲタ”が存在する。CDやグッズを買い占め、特典会では何回もループ(繰り返し並ぶこと)をし、地方での公演があれば、どこまででも追いかけていく。確かに、もともと家が裕福な人もいると思うが、話を聞いてみると、やはり会社である程度の役職についていたり、高収入であったりする人が多いのも実情だ。

 雅や財閥ヲタのように、何もかも恵まれている人がアイドルにハマるのには、どのような背景があるのだろうか。私はそこに、“お金では買えない存在に、お金をかければ近づくことができる”という心理が働いているように思う。

 そもそも、財閥ヲタは金持ちである。そして、今の日本において、お金で買えないものはほぼないだろう。そんな中で、“アイドル”と“彼(彼女)の心”は、お金ではとうてい手に入るものではないのだ。

 人間は欲深いとよく言われるが、まさにその通り。一通りのものが手に入れられる環境に置かれると、次に欲しくなるのは、“それでも手に入らないもの”なのだろう。アイドルにハマる財閥ヲタは、それを象徴した存在だと言える。

 雅は、それほどチカちゃんにハマっていながら、そのことを周囲にはひた隠しに隠している。個人でコンサルを営む彼女にとっては、世間の評判は大きくビジネスに影響するからだ。

 そんなある日、雅がドルヲタであることを公表する怪文書が、取引先の会社に次々と送られてくる。契約中止の連絡が相次ぎ、途方に暮れた雅であったが、美佐代(栗山千明)の助言により、その出どころを突き止めようとする。以前勤めていた会社に入り込み、犯人と思われる人を問い詰めてみると、今回の事件を指示したのはなんと、会長である、雅の父だった。

 いわゆる“親バレ”である。

 正確にリサーチしたわけではないが、ドルヲタの多くは、自身の趣味を親には隠しているケースが多い。実家で同居していれば、親に怪しまれ、カミングアウトすることもあるかもしれないが、離れて暮らしていれば、親バレするメリットはほぼ何一つない。

 雅のように、アイドルと“脳内結婚”し、現実で家庭を持つことにまったく興味を示さなければ、親としては子供の将来が心配でならないだろう。もちろん、親世代からすれば、ドルヲタというものが理解しにくい存在だということもある。私自身のことを考えてみても、テレビでドルヲタのドキュメンタリーなどが流れると、実家の親から電話があり「あんなふうにだけはならないように」と釘を刺されるのである。

 日本には昔から「知らぬが仏」ということわざがある。親に余計な心配をかけず、また、親から余計な干渉を受けずに済むのであれば、自分の趣味などというのは隠しておいたほうが幸せなのかもしれない。

 それはもちろん、リアルな世界での恋人やパートナー、ドラマの中で“息子バレ”をしてしまった昌子(江口のりこ)のように、多くの家族に知られてしまうことは、ドルヲタとして最も避けるべき危機のひとつなのである。

 そして、もう一つ、隠しておいた方がいい理由がある。人間にとって、楽しみというのは、密かであれば密かであるだけ、なんとも言えない甘美な魅力を放つものなのだ。仕事先にも、親にも、パートナーにも言えない。そんな“背徳感”を楽しむのもまた、アイドルの魅力であると思うのだ。

 次回、雅は、ドルヲタであることを世間に公表し、苦境に追い詰めた張本人である父親と対峙することになる。アイドルへの思いとプライドをかけて、父親とどのような対決をすることになるのだろう。多くのドルヲタが抱える問題のひとつの結論が出されるかもしれない。

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dTVにて毎週金曜日配信

あなたにとってアイドルとは?――ヲタク心理を問われるドラマ『婚外恋愛に似たもの』第2話

「あなたにとって、アイドルとはどんな存在ですか?」

 アイドル好きを公言していると、しばしば聞かれる質問だ。正直、一言で説明することは難しい。実際、私自身も明確にわかってはいないし、ドルヲタ同士で酒を飲みながら延々と語り合ったこともある。最終的には、それぞれが自分の中に「アイドルとはこういう存在」というビジョンを持っていればそれが正解なのだと思う。

 dTVで配信中のドラマ『婚外恋愛に似たもの』第2話では、主人公たちのアイドルに対する思いが語られた。

 千葉の元ヤン主婦・益子昌子(江口のりこ)は、中学生の息子(畠山紫音)が万引きをしたとのことでスーパーに駆けつける。そこで目にしたのは、履歴書を万引きした息子の姿だった。「履歴書をどこに出すつもりだったのか?」そう問い詰める昌子。なかなか口を割らない息子であったが、やがて本当の気持ちを話し始める。

「ディセンバーズエンターテイメントスクールに送るつもりだった」

 そう、昌子が愛してやまないアイドルグループ「スノーホワイツ」の所属する事務所を受けようとしていたのだ。

 そもそも、昌子にとって推しの八王子(太田将煕)は、“理想の息子”だった。実際の息子の素行に苦しめられる昌子からすれば、アイドルに対しての感情は「母性」であったのかもしれない。

 実は、男性である私からしても、この感情は理解できる。

 若い頃、女性アイドルは、世間でよく言われるように「疑似恋愛」の対象であった。「あんな子と仲良くなりたい。恋人になりたい」そんな気持ちが強かったことも事実だ。しかし、自身が年を重ねるにしたがって、それだけでは説明のつかない感情も入ってくるようになった。複雑な感情ではあるが、その中には間違いなく「父性」というような気持ちが混じっいる。

 実際、アイドルの現場では、自分の娘のような年齢の女の子を応援しているファンが多く見られる。子供がいる人も、そうでない人もいるだろうが、「子供を応援したくなる気持ち」というのは多くの人に多くの人が共通して持つ感覚だと思う。

 昌子が、八王子に抱いた思いも、人間としてごく自然なものであったと言えよう。そして、それに対する息子の思いもまた胸に迫ってくる。

 母親がアイドルを理想の息子と思っている。そんな母親を喜ばせるため、自分もそのアイドルになろうとしたのだ。アイドルという存在をめぐって、親子の絆が深まっていく。そんなことが象徴されるいいシーンであった。

 一方、神田みらい(Da-iCE・岩岡徹)推しのセレブ主婦・桜井美佐代(栗山千明)は、同じホワラー(スノーホワイツのファン)ということで、昌子と仲良くなり、素直に自分の気持を話せるような関係にまでなる。

 昌子が美佐代のマンションを訪れた夜、テレビマンである美佐代の夫・修一郎(袴田吉彦)が怪しい男に襲われる。昌子の反撃により難を逃れたが、相手は修一郎が深い仲になったアイドル・さなのファンであった。

 ここで、アイドルファンの視点へと切り替わる。

 自分が好きなアイドルが、テレビ局関係者と不倫の関係にある。暴行は立派な犯罪だが、相手に一言言ってやりたくなる気持ちもわかる。その場に居合わせた美佐代も、昌子も、そしてもしかしたら修一郎でさえも、その男の気持ちは痛いほどわかっていたのかもしれない。この「2つの視点がぶつかりあうシーン」というのが、個人的には大好きだ。

 続いて、このドラマで重要な役となる人物が登場する。美佐代の会社員時代のライバル・隅谷雅(平井理央)だ。

「いつも上から三番目」を自認する美佐代にとって、何事もうまくこなし、一番になる雅は天敵なのである。鼻持ちならないセレブエリートの女性を、平井理央が嫌味な雰囲気たっぷりに演じている。彼女も実はホワラーで、次回以降、さらに美佐代らと大きく関わってくることになりそうだ。

 そして、スノーホワイツのライブに向かう朝、美佐代は言う。

「女にとってアイドルはデトックス」

 自分が若さを保ち、美しくいられるのもアイドルへの思いがあるからだという意味だろう。これは、女性アイドルを応援する男性ヲタクについても言えることだ。

 若い女の子を応援する男性は、おしなべて実年齢よりも若く見える。これは、現場でアイドルヲタを見ていての実感だ。それは、“若い子と会うから”という理由で意識的に服装などに気を使っていることもあるだろうが、やはり気持ちの面で“好きなものに夢中になっている”ということが、大きく働いていると思う。

 私自身、アイドルのライブを見たり、イベントで接したりしていると、自分が若くいられることを実感する。「好きなアイドルと1回握手をすると3日寿命が延びる」というのが私の持論である。

 男性アイドルの女性ヲタク、という視点で描かれたこのドラマ。1回25分と短いが、毎回、アイドルファンとしての立場を考えされるシーンが織り込まれている。もちろん、アイドルには興味がないという人が「ドルヲタってこういう世界なのね」という感覚で見ても十分に楽しめるであろう。

 今回テーマとなっていた、「自分にとってアイドルとはどんな存在か」。見ている人も、一度問いかけてみてはいかがだろうか。

 ちなみに私がヲタク仲間と議論した結論。それは、「アイドルは妖精」というものだった。気持ち悪い結論になってしまい、すみません。

(文=プレヤード)

■ドラマ『婚外恋愛に似たもの』
dTVにて毎週金曜日配信

人生が辛い時ほどアイドルは輝いて見える――ドルヲタを描いた栗山千明主演ドラマ『婚外恋愛に似たもの』レビュー

 今の時代、一口に「アイドル」と言っても、その種類は多岐に渡る。それらをひとくくりに語ることはもはや不可能だろう。ただ、絶対的に大きなくくりとして分けられるのは「女性アイドルのファン」と「男性アイドルのファン」である。

 その中で、「女性アイドルファン」については、地下のライブハウスでヲタ芸を打ち、サイリウムを振っているような姿で、ドラマやドキュメンタリーなどで多く取り上げられてきた。しかし、一方の「男性アイドルファン」というものは、あまりセンセーショナルにとらえられることがなかった。ある意味、ヲタクの中でもベールに包まれた存在だと言えるかもしれない。

 そんな男性アイドルのヲタクが主人公となった、宮木あや子の小説『婚外恋愛に似たもの』(光文社)が、ドコモの動画配信サイト「dTV」で連続ドラマ化された。6月22日に配信された第一話をチェックしたので、レビューしていこう。

 まず注目したいのは、今回の出演者だ。主人公・桜井美佐代を演じるのは、栗山千明。学生時代からモデル・女優として活躍し、男女問わず人気を集めているが、2000年に主演した深夜ドラマ『秘密倶楽部o-daiba.com』(フジテレビ系)では、宮崎あおいやベッキーらと「リアルシスターズ」を結成、アイドルファンからも大いに注目を集めた経歴がある。

 そして、有名なのは彼女のオタク趣味。アニメ、ゲーム、マンガなどに造詣が深く、役を演じる上でも、その気質が見え隠れすることがある。昨年放送されたドラマ『でも、結婚したいっ!~BL漫画家のこじらせ婚活記~』(同)では、そのヲタクぶりが遺憾なく発揮され、恋愛に疎いBL漫画家をリアリティを持って演じていた。

 第一話でもう一人のメインとなっていたのは、やんちゃな息子に手を焼くシングルマザー・益子昌子役の江口のりこ。言わずと知れた名バイプレーヤーだ。とにかく個性的な役を演じたらピカイチ、作品自体にコミカルさや深みを与えることができる。

 今回は、美佐代と昌子との置かれている環境の差がじっくりと描かれていた。子供はいないものの、テレビマンの夫(袴田吉彦)と結婚し、いわゆる「勝ち組」とも言える美佐代。高級マンションに暮らし、ブランド物を身につけるその姿からは、不満などなにもないように思える。

 しかし、義母からの「子供はまだか」との催促や、夫の女遊びなどに悩まされる日々。そんな時、街で偶然見かけた男性アイドルに心奪われてしまう。

 彼女が夢中になっているのは、5人組の男性アイドルグループ「スノーホワイツ」。中でも「みらきゅん」こと神田みらい(Da-iCE・岩岡徹)が彼女のイチオシだ。彼のことを思っている時が、彼女の唯一の幸せなのかもしれない。

 そんなある日、美佐代は、夫から家を出ていくようにと告げられる。もともとアイドル好きの夫は、「KGB64」という女性アイドルグループのメンバー、さなちゃんといい仲になり、一緒に暮らしたいというのだ。男性アイドルヲタの女性が、女性アイドルヲタの夫に別れを迫られるという修羅場の構図。 好きな女性アイドルと関係を持った夫を前に、美佐代は思う。

「好きなアイドルと寝たいとは思わない。でも一晩中独占できるなら、その美しい寝姿をただ眺めていたい」

 ここに男性と女性のアイドル観の違いが透けて見える。

 双方のアイドルファンの名誉のために言っておくが、アイドル好きの男性が皆アイドルと繋がりたいと思っているわけではなく、もちろん逆に女性がみな関係を持ちたいと思っていないわけでもない。ただ、一般的に、女性アイドルに対して男性ファンが「繋がりたい」という欲求を持つことは多い。

 これは、男女の資質によるものが大きいだろう。

「夜空に輝く星を見て、男はそこに行くことを願い、女はそれを手にすることを願う」そんな言葉を聞いたことがある。男性ヲタクと女性ヲタクの違いがあるとすれば、そこに介在するセクシャリティの差だと言えるかもしれない。

 さて、一方の昌子である。彼女は、問題ばかり起こしている中学生の男の子を抱えたシングルマザー。スーパーのレジのパートをしながら息子を養っているが、生活は楽にはならない。そんな彼女が心の支えにしているのもまた「スノーホワイツ」。彼女は「ハッチ」こと八王子(太田将煕)のファンである。

 彼女がパートをする高級スーパーに、美佐代が買い物に来るシーンで二人の運命が繋がる。ひょんなことからお互い“ホワラー(スノーホワイツのファン)”であることを知り、話をするのだ。

 ここでは、二人の格差が顕著に現れる。セレブな生活をし、客として食材を買う者と、そこで働く者。しかし、その格差さえも「同じアイドルのファン」ということで、一瞬で消え去ってしまう。これこそが、アイドルファンの中にある自由なのだ。

  そしてもう一つ、二人が「今の現実をつらい」と感じている点も重要だ。アイドルとはつらい気持ちを感じた時に、すっと心に入ってくるものだ。人生がつらければつらいほど、アイドルはより輝いて見える。そんな気がする。この二人もそうなのであろう。

 美佐代は、自分は「一番になりたくてもいつも三番目の女」だと思い悩む。ヒエラルキーの底辺にいる人から見れば、三番目など羨ましくて仕方がないだろう。しかし、人の思い、欲望というものは、相対的に見てしまいがちなのだ。

 アイドルの現場というのは、そんな社会のヒエラルキーをなくしてしまう空間だ。

 もちろん、同じイベントに来た人にも、収入や家庭など差はあるだろう。しかし、好きなアイドルを思い、応援する瞬間において、それらを消し去る力があるのだ。ファンになってしまえば、誰が偉いわけでも誰がみじめなわけでもない。それが根底にあることを知ってもらいたい。おそらくは、このドラマも、その素晴らしさを伝えてくれるものとなっていくことだろう。

 第一話では少しの登場となったものの、他のキャストも見逃せない。

 まずは、女経営者、隅谷雅役の平井理央。元フジテレビアナウンサーのイメージが強いが、もともとは『おはスタ』(テレビ東京)の「おはガール」として活動するなど、アイドルファンにも人気が高かった。実際にアイドル側にいた彼女が、アイドルファンの側を演じるというのが、なんとも面白い。

 主要メンバーの中で一番の「オタク具合」を見せてくれるのではと期待されるのが、片岡真弓役の富山えり子。14年の『ごめんね青春!』(TBS系)や、16年の『重版出来!』(TBS系)など、アイドル女優が出演したドラマにも出ていたので馴染みがあるだろう。今年1月~3月に放送された、芳根京子主演の『海月姫』(フジテレビ系)で、人形オタクの女性を見事に演じていたのも記憶に新しい。ちなみに同作では、昌子役の江口のりこも、個性的な役で出演していた。この二人の掛け合いがまた見られるというのも興味深い。

 最後は、専業主婦・山田真美役の安達祐実。子役時代から積み重ねてきたキャリアでは、アイドル的な曲を出していたこともある。彼女の中で「オタク」という存在がどう消化され、演じられるのかも見ものである。

「婚外恋愛」という不思議なワードが冠されたこのドラマ。「不倫」でも「浮気」でもない愛情の形を見せてくれるのではないかと思っている。

 なお、最後になるが、回想シーンでアイドルのコスプレをした栗山千明はなかなかのサービスショットだった。「男性アイドルファン」がテーマであるだけに、メインターゲットは女性に設定されているだろうが、男性が見ても十分に楽しめる作品となっているし、今後も遊び心あふれる展開を見せてくれるのではないかと期待は高まるばかりだ。

(文=プレヤード)

■ドラマ『婚外恋愛に似たもの』
dTVにて6月22日より毎週金曜日配信

アイドル界にも存在する? 大石理乃が苦言を呈して話題の「SSWおじさん」その生態と心理とは

 最近、駅前の広場などで、フォークギターを持ち、自作の曲を歌う女の子をよく見かける。

 いわゆる“アイドル”とは違うのだろうが、意外に(といっては失礼だが)可愛い子も多く、それなりにファンもついているようだ。実際、ライブハウスなどでは、彼女たちのような“シンガーソングライター”が多く活動しており、ひとつの文化となりつつある。

 5月11日、そんなシンガーソングライターの一人、大石理乃によるツイートが大きな話題となった。語られていたのは、女性ミュージシャンの現場に現れる「SSW(シンガーソングライター)おじさん」についてだ。

 彼女によれば、「SSWおじさん」には、上記のような特徴があり、「私なんかよりもめっちゃ才能あるのにアイドルオタクやSSWおじさんに適応できなくて消えていったシンガーソングライター女子がたくさんいるのが残念だなって思う」とも述べている。

 実際、このSSWおじさんが問題となる行動をしてしまう背景には、どのような心理があるのだろうか。

 まず、人間の中には、「自分の知識をひけらかしたい」という欲求がある。突き詰めていけば、「こんなに物知りですごい」と思われたかったり、「実は才能がある」と見られたいという、「承認欲求」のひとつだと思われる。

 SSWおじさんの年代を考えると、彼らが若い頃のフォークソングブームや、その後のバンドブームなどで、実際に音楽を「かじって」いる人が多い。そんな人たちが、自分の音楽知識を披露する相手として、不運にも彼女らが選ばれてしまったということだ。

 お互いの知識を自慢し合ったり、アイドルやアーティストの批評をするというのは、ヲタクの楽しみ方のひとつではあるだろう。テレビを見ていて、いわゆる「マニア」の人たちが驚くべき知識量と見解を披露していることはよくあることだ。なので、その行動自体を批判するつもりはない。

 ただ、それらは、自分の好きな対象に向けるのではなく、同じ対象を好きなヲタク同士で話せばいいと思う。演者は、その人の表現方法でパフォーマンスをし、ファンはその姿を好きになるのが美しいと思うのだ。

 次に挙げられる理由として、一般の会社などにも多いのだが、人を批判したり、説教をしたりという行為自体が好きな人というのが存在するという点だ。そういう人が、会社などで妙な権力を持ってしまうと、部下にあたる人はたまったものではない。昨今、パワハラやセクハラ問題が大きく取り沙汰されるようになったとはいえ、弱い立場にキツくあたる人は、まだまだいる。

 ライブでの力関係は、必ずしも「客>演者」ではないはずなのだが、まだそれほど多くはないファンを無下にすることもできず、悩んでしまうアーティストもいるのだろう。

 もうひとつ、環境的な問題もある。ライブの後に自作のCDを手売りしたり、その際にファンと話をしたりするという、「地下アイドル+ミュージシャン」のようなスタンスの文化は、そこに生まれるルールなどがまだ固まりきっていないのだ。

 いいにつけ悪いにつけ、ここ最近のアイドルブーム以降、“アイドル現場”というのは常に注目される存在となった。それにより、何か問題が起きれば、他のヲタクがそれをネットで拡散し、当事者を批判するというサイクルで、顕在化してきたのである。

 事実、アイドル現場ではもうずっと以前から、問題のある行動をする人たちを指す「厄介」という言葉が流布している。運営や他のファンがそのように認識することで、現場のルールというものが形作られているのだ。

 そんなアイドル現場でも、多かれ少なかれ、アイドルや運営に批判的なことを言うヲタクはいる。もちろん、本当に相手のことを考えての苦言やアドバイスであれば、それなりに意味のあることだろう(ただし、私は個人的にはそれでも余計な口出しをすべきではないと思っている。嫌なことがあるのであれば、その現場に来なければいいだけのことだ)。

 しかし、ただ“批判したいがための批判”は、お互い何の得にもならない。

 では、相手のためになる助言とそうでない助言との差は、どこにあるのだろうか?

 端的に言ってしまえば、“そこに愛情が介在するかどうか”である。本当に相手のことを思っての言葉なのかどうか、そこが重要なのだ。ただ単に自分の好みと違うことをしたから文句を言うのか、5年先、10年先まで見越して、「今こうしておいたほうが絶対に良くなる」との思いからアドバイスをするのか、その差は大きい。

 それぞれが楽しめる現場を作るために、アイドルやアーティストのファンの人たちには、「厄介」な存在にはなってほしくない。だから、もし相手に何か言いたいことがあったとしても、まずは一度、それが本当に相手のためになるのかどうかを考えてみてほしい。あなたのためにやり方を変えることによって、それをいいと思っていたファンを減らしてしまう可能性もあるのだ。

 そして、もしこの記事をSSWおじさんに困っているアーティストが見ていたとするなら、ある程度ドライに対応することも、やむを得ないことだと知ってもらいたい。本当に、ファンを平等に扱うためには、その場の対応だけではなく、先々多くのファンを獲得した時のことまで考えるべきなのだ。日本人は、とかく「聞き流す」というスキルが不足している人が多い。ビジネスで成功している人ほど、聞き流すことが上手いものだ。

 それにしても、この世界では、次から次へとよくいろんな「厄介」が出てくるものだ思う。厄介な存在を乗り越え、演じる者と見る者の思いが調和し、少しずつファンの輪が広がっていく現場は楽しいものだ。そんな場所が、少しでも多くなるよう、願わずにはいられない。

(文=プレヤード)

アイドル界にも存在する? 大石理乃が苦言を呈して話題の「SSWおじさん」その生態と心理とは

 最近、駅前の広場などで、フォークギターを持ち、自作の曲を歌う女の子をよく見かける。

 いわゆる“アイドル”とは違うのだろうが、意外に(といっては失礼だが)可愛い子も多く、それなりにファンもついているようだ。実際、ライブハウスなどでは、彼女たちのような“シンガーソングライター”が多く活動しており、ひとつの文化となりつつある。

 5月11日、そんなシンガーソングライターの一人、大石理乃によるツイートが大きな話題となった。語られていたのは、女性ミュージシャンの現場に現れる「SSW(シンガーソングライター)おじさん」についてだ。

 彼女によれば、「SSWおじさん」には、上記のような特徴があり、「私なんかよりもめっちゃ才能あるのにアイドルオタクやSSWおじさんに適応できなくて消えていったシンガーソングライター女子がたくさんいるのが残念だなって思う」とも述べている。

 実際、このSSWおじさんが問題となる行動をしてしまう背景には、どのような心理があるのだろうか。

 まず、人間の中には、「自分の知識をひけらかしたい」という欲求がある。突き詰めていけば、「こんなに物知りですごい」と思われたかったり、「実は才能がある」と見られたいという、「承認欲求」のひとつだと思われる。

 SSWおじさんの年代を考えると、彼らが若い頃のフォークソングブームや、その後のバンドブームなどで、実際に音楽を「かじって」いる人が多い。そんな人たちが、自分の音楽知識を披露する相手として、不運にも彼女らが選ばれてしまったということだ。

 お互いの知識を自慢し合ったり、アイドルやアーティストの批評をするというのは、ヲタクの楽しみ方のひとつではあるだろう。テレビを見ていて、いわゆる「マニア」の人たちが驚くべき知識量と見解を披露していることはよくあることだ。なので、その行動自体を批判するつもりはない。

 ただ、それらは、自分の好きな対象に向けるのではなく、同じ対象を好きなヲタク同士で話せばいいと思う。演者は、その人の表現方法でパフォーマンスをし、ファンはその姿を好きになるのが美しいと思うのだ。

 次に挙げられる理由として、一般の会社などにも多いのだが、人を批判したり、説教をしたりという行為自体が好きな人というのが存在するという点だ。そういう人が、会社などで妙な権力を持ってしまうと、部下にあたる人はたまったものではない。昨今、パワハラやセクハラ問題が大きく取り沙汰されるようになったとはいえ、弱い立場にキツくあたる人は、まだまだいる。

 ライブでの力関係は、必ずしも「客>演者」ではないはずなのだが、まだそれほど多くはないファンを無下にすることもできず、悩んでしまうアーティストもいるのだろう。

 もうひとつ、環境的な問題もある。ライブの後に自作のCDを手売りしたり、その際にファンと話をしたりするという、「地下アイドル+ミュージシャン」のようなスタンスの文化は、そこに生まれるルールなどがまだ固まりきっていないのだ。

 いいにつけ悪いにつけ、ここ最近のアイドルブーム以降、“アイドル現場”というのは常に注目される存在となった。それにより、何か問題が起きれば、他のヲタクがそれをネットで拡散し、当事者を批判するというサイクルで、顕在化してきたのである。

 事実、アイドル現場ではもうずっと以前から、問題のある行動をする人たちを指す「厄介」という言葉が流布している。運営や他のファンがそのように認識することで、現場のルールというものが形作られているのだ。

 そんなアイドル現場でも、多かれ少なかれ、アイドルや運営に批判的なことを言うヲタクはいる。もちろん、本当に相手のことを考えての苦言やアドバイスであれば、それなりに意味のあることだろう(ただし、私は個人的にはそれでも余計な口出しをすべきではないと思っている。嫌なことがあるのであれば、その現場に来なければいいだけのことだ)。

 しかし、ただ“批判したいがための批判”は、お互い何の得にもならない。

 では、相手のためになる助言とそうでない助言との差は、どこにあるのだろうか?

 端的に言ってしまえば、“そこに愛情が介在するかどうか”である。本当に相手のことを思っての言葉なのかどうか、そこが重要なのだ。ただ単に自分の好みと違うことをしたから文句を言うのか、5年先、10年先まで見越して、「今こうしておいたほうが絶対に良くなる」との思いからアドバイスをするのか、その差は大きい。

 それぞれが楽しめる現場を作るために、アイドルやアーティストのファンの人たちには、「厄介」な存在にはなってほしくない。だから、もし相手に何か言いたいことがあったとしても、まずは一度、それが本当に相手のためになるのかどうかを考えてみてほしい。あなたのためにやり方を変えることによって、それをいいと思っていたファンを減らしてしまう可能性もあるのだ。

 そして、もしこの記事をSSWおじさんに困っているアーティストが見ていたとするなら、ある程度ドライに対応することも、やむを得ないことだと知ってもらいたい。本当に、ファンを平等に扱うためには、その場の対応だけではなく、先々多くのファンを獲得した時のことまで考えるべきなのだ。日本人は、とかく「聞き流す」というスキルが不足している人が多い。ビジネスで成功している人ほど、聞き流すことが上手いものだ。

 それにしても、この世界では、次から次へとよくいろんな「厄介」が出てくるものだ思う。厄介な存在を乗り越え、演じる者と見る者の思いが調和し、少しずつファンの輪が広がっていく現場は楽しいものだ。そんな場所が、少しでも多くなるよう、願わずにはいられない。

(文=プレヤード)