山本太郎は新時代の田中角栄か!? れいわ新選組の「躍進の謎」に迫る!

 7月に行われた参議院選では、与党側が選挙前の147から141へと議席を減らした一方、野党第一党となる立憲民主党が改選前の9から17へと議席を伸ばす結果となった。

 しかし、そんな結果とともに、史上2番目の低投票率となる48.8%を記録し、国民の政治に対する関心の薄さがますます浮き彫りに。「れいわ新選組(れいわ)」や「NHKから国民を守る党(N国党)」などの出現といった、不可解な選挙結果で多くの国民を混乱に陥れている。

 
 この選挙を、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授の中島岳志氏は、どのように振り返るのか? 今回の選挙において中島氏が注目をしたのは、選挙前、マスメディアではほとんど黙殺されていた「台風の目」。そう、山本太郎の登場を「事件」だと語る。その真意とは!?  


■低投票率は日本だけではない!  


──まず、今回の参院選を全体として振り返り、中島さんとしてはどのように感じていますか?

 
中島:今回、与党側の明確な勝利というわけではなく、安倍政権の権力が強化された形にはなりませんでした。選挙前には安倍4選も議論されましたが、その後押しになった選挙とは言えないと思います。一方、注目すべきは野党勢力。特に、「れいわ新選組」の活躍でしょうね。

 
──今回の参院選に向けて、山本太郎氏はれいわを立ち上げました。そして比例代表において、政党が当選者の優先順位をあらかじめ決められる「特定枠」という選挙制度を活用しながら舩後靖彦氏、木村英子氏の2人を議員として送り出しています。  


中島:山本太郎氏の出現は、日本政治史上の「事件」とも言うべき出来事。私は、世界史的な意味があると考えています。それを捉えるためには、政治学でこの20年にわたって議論されてきた「ラディカルデモクラシー」という概念を抑えなければなりません。


  自由競争を重んじる新自由主義が世界を席巻していくと、政策のほとんどを市場に任せることになり、政治が介入する余地が小さくなる。政治に代わって、金融資本が大きな力を持つようになっていきます。アントニオ・ネグリとマイケル・ハートの『帝国』(以文社)などは、まさにそのような未来を予見する議論でした。

 
 そのような新自由主義が続き、かつ間接民主制の下では、主権者である国民は「自分の1票によって世の中が変わる」という感覚を得られなくなっていきます。選挙による生活の変化が期待できないから「1票の重さ」と言われてもきれい事にしか感じられない。その結果、「選挙に行かなくていい」という結論が導かれるんです。これは、日本だけでなく、多くの先進国で起こってきました。

 
──近年、国政選挙の投票率は60%を下回ることもあり、今回の参院選に至っては、48.8%という低投票率になりました。これは、投票によって「政治が変わる」という実感が持てない構造的な問題に起因しているんですね。

 
中島:そこで注目されるのが、直接的な主権の行使を標榜する「ラディカルデモクラシー」です。これには、大きく2つの方向があります。

 
 1つ目が「熟議デモクラシー」というもの。特に、地方政治などの現場では、タウンミーティングや市民の意見を集めるグループワークを行いながら議論を練り上げていき、政策に反映させる事例も多くあります。首長・議会・住民が一緒になって議論を練り上げる参加型デモクラシーを作ることで、有権者は政治参加の実感が得られます。

 
 そして、もうひとつの軸が、ベルギー出身の政治学者であるシャンタル・ムフなどが提唱する「闘技デモクラシー」というあり方。争点を明確にし、境界線を引いていくことで対立軸を作っていく。そして、対抗者に対して「俺の声を聞け」と戦いを挑みながら権利や欲求を訴えていくことで有権者の情動を喚起していくという方法です。

 
 この図式を前提として考えた場合、霞が関と永田町で政治が決まる自民党のやり方は、ラディカルデモクラシーではありませんでした。しかし、この「ラディカルデモクラシー」の中でも、「熟議デモクラシー」としての運動がかつて日本でも起こったことがある。それが、立憲民主党が躍進した1年9カ月前の衆議院議員選挙でした。


■有権者を「裏切った」立憲民主党


──この選挙の直前、枝野幸男氏によって立憲民主党がつくられ、55議席を獲得。同党は野党第一党の座に就いています。

中島:枝野氏は、国民からの「枝野立て」の声に従って立憲民主党を結党し、ひとりで記者会見に望みました。そこで、多くの人は「俺の声が枝野に届いた」と感じ、ラディカルデモクラシーが起動した。だから、枝野氏は「立憲民主党はあなたです」という言葉を使ったんです。

 しかし今回の選挙では、立憲民主党のラディカルデモクラシーとしての側面が裏切られた形になりました。


──「裏切られた」とは?
 

中島:以前、立憲民主党は、「立憲パートナーズ」に象徴されるように、市民と対等なパートナーシップを築き、熟議デモクラシーを行いながら政策立案を一緒にやっていこうと考えていました。グループワークを行いながら、ボトムアップの政治をするというのが立憲民主党の目指す形だったんです。


 しかし、ラディカルデモクラシーを支える人々は、一部の人間による政治に見えた途端「俺たちの声が届いていない」と思い、離れていってしまう。この1年9カ月の間で、立憲民主党の姿勢の中に永田町にいる「一部の人間」の論理が出てしまった。その典型が国民民主党とのいざこざです。


 今回の選挙で、立憲民主党と国民民主党は「どちらの人数を上にするのか?」という争いを繰り広げ「一緒に活動できない」という姿勢を露呈させる。そんな永田町の理屈で行われた交渉が、「立憲民主党はあなたです」というメッセージから遠く離れたものになってしまいました。もちろん、政治を行う上ではどうしても「プロ」の側面は必要になるのですが、ラディカルデモクラシーを狙うのであれば、それを見せてはいけない。いつも主体は「あなた」だ、という物語を設定し続けなければならないんです。

 
──立憲民主党は、国民民主党とのいざこざで「プロの政治」を露呈させたことによって、「あなた」という説得力がなくなり、ラディカルデモクラシーの追い風を受けられなくなってしまった、と。今回の選挙では改選9議席からおよそ2倍となる17議席を獲得していますが、野党第1党としては前回、16年参院選で旧民進党が獲得した32議席に遠く及ばない結果となっています。

 
中島:そこで、立憲民主党の支持が低下してきたときに登場したのが山本太郎氏でした。彼の政策は立憲民主党とは異なり、決してボトムアップ型ではありません。山本氏はどの政治家よりも多くの人の声を丁寧に聞いています。しかし、その声を血肉化した上で、独断的に政策を掲げる。「絶対に消費税を廃止する」という明確な争点をつくり、そこに対して「力を貸してくださいよ」と叫ぶんです。彼の演説を聞くと、論理的なことを述べながらも、その間に情動を喚起する言葉を投げかけていることがわかります。「国民はATMじゃない」「生きててくれよ」「バカにすんなよ」、そんな言葉に涙を流している支持者の姿さえもありました。

 
 そうやって、情動を喚起しながらも争点を明確化させ、安倍、竹中、経団連といった対抗勢力をはっきりさせることによって、ポケットに数百円しか入っていない「俺たち」が連帯するという運動なんです。ラディカルデモクラシーを「闘技デモクラシー」としてとった山本太郎の出現は、今回の参院選の中でも特筆すべき事件であったと思います。

 
■山本×枝野による政権交代


──そんなれいわの躍進に対しては、「左派ポピュリズム」という言葉も使われています。彼らのポピュリズム的な側面について、中島さんはどのように感じていますか?


中島:まず、政治学者が使う「ポピュリズム」と、世の中の「ポピュリズム」の意味が、大きく乖離しているという前提があります。

 
 ポピュリズムという言葉には「大衆迎合主義」という訳語が当てられていますが、この言葉自体にイデオロギーはなく、あくまでも「俺たちの声を聞け」という意味しか含まれていない。この声をしばらく独占してきたのが移民排斥や自国第一主義を掲げる右派勢力だったので、どこか右派的な印象がありますが、もともとはイデオロギーを示す言葉ではないんです。

 
「闘技デモクラシー」として左派ポピュリズムを起動させるリベラル側の動きとしては、アメリカではサンダース、イギリスならコービンといった人々がいます。彼らは、旧来左翼を打破し、大衆の情念に訴えながら「敵はあいつらだ」と語りかけているんです。

 
──中島さんが、山本太郎氏に注目をはじめたのはいつごろでしょうか?  


中島:実は、もともと山本太郎氏については、単に“お騒がせな人”としか思っていませんでした。原発に関する発言も同意できない部分があり、パフォーマンス過多の印象。むしろ毛嫌いをしていましたね。彼がれいわ新選組を旗揚げしたときにも、特に注目はしていませんでした。

 
 しかし、寄付が1億円を超えるような状況になり、社会現象が起こっているということをようやく認識する事ができた。そして、彼の演説動画を観たときに「もしかしたら、彼は闘技デモクラシーに火をつけようとしているのではないか?」「“日本のサンダース”になるのではないか?」と思えてきた。そこから彼に注目をはじめ、これまで書いたものを集めて読み始めたんです。すると、彼自身が6年間の議員生活の中で大きな変遷を遂げていたことがわかってきました。


──「大きな変遷」とは?  


中島:彼は、参院選に当選した6年前を冷静に反省しています。議席をとったにも関わらず、街頭演説に集まる人の数はどんどんと減少していく。彼が掲げる「脱原発」だけを述べていても、誰もついてきてくれなかったんです。しかし、「福島第一原発の処理を行っているのは金のない派遣の立場にいる人々で、これは格差問題である」と主張したところ、拍手が起こった。そこから、原発問題は労働問題につながっていることを実感して、勉強し始めるんです。

 
──以前は、反原発だけだったのが、労働問題や経済問題を含む広い視野を得ていった。  


中島:また彼のすごいところは、人の話をよく聞くところ。いくら格差問題を叫んでも、彼は俳優出身であり、下層労働者ではありませんよね。その代わりに例えば彼は、演説中に意見を言ってきた人を後日議員会館に招いて、その人の語りに耳を傾けたり、時にはその意見を取り入れることもしている。彼らの言葉を血肉化させることで、山本氏の中には体重の乗った言葉が生まれるんです。

 
 彼は日本のサンダース的な運動を作りました。そしておそらく、この流れは一過性ではないでしょう。  


──彼の行動は、今後どのくらいの規模にまで拡大していくと思いますか?

 
中島:僕は政権交代が可能かもしれないと思っています。ただ、そのためには闘技デモクラシーだけでは十分ではない。それだけで政権を運営できるほど政治は甘くないんです。官僚ともやりあえるほどの熟議デモクラシー型の政策集団がいることで、はじめて政権として成り立つでしょう。そこで必要なのが立憲民主党の枝野氏。彼が熟議デモクラシーの代表として、しっかりと山本太郎氏と相互補完的な関係を結ぶことができれば、自民党を倒すことも夢ではありません。逆に枝野氏が山本氏を遠ざけていては、政権交代はできないでしょう。熟議デモクラシーを担うリーダーが、別のところから出てくる可能性もある。誰が山本氏とパートナーシップを組めるのかがポイントです。

 
 かつて70年代の自民党には田中角栄と大平正芳という2人のタイプの違うリーダーがいました。「今太閤」と呼ばれ、大衆の情念を掴んだ田中角栄と、一橋大学を卒業後に高級官僚となり、自民党に入った大平。全く異なったタイプの2人ですが、大平は田中が持っている数十秒で人の心を掴む才能に憧れ、田中は大平が持つエリートとしての政策構想力に惚れ込んだ。そのような相補関係を、枝野氏と山本氏が築けるかが鍵になってくるのではないかと思います。(後編へ続く)

※写真/石田寛 Ishida Hiroshi

山本太郎は新時代の田中角栄か!? れいわ新選組の「躍進の謎」に迫る!

 7月に行われた参議院選では、与党側が選挙前の147から141へと議席を減らした一方、野党第一党となる立憲民主党が改選前の9から17へと議席を伸ばす結果となった。

 しかし、そんな結果とともに、史上2番目の低投票率となる48.8%を記録し、国民の政治に対する関心の薄さがますます浮き彫りに。「れいわ新選組(れいわ)」や「NHKから国民を守る党(N国党)」などの出現といった、不可解な選挙結果で多くの国民を混乱に陥れている。

 
 この選挙を、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授の中島岳志氏は、どのように振り返るのか? 今回の選挙において中島氏が注目をしたのは、選挙前、マスメディアではほとんど黙殺されていた「台風の目」。そう、山本太郎の登場を「事件」だと語る。その真意とは!?  


■低投票率は日本だけではない!  


──まず、今回の参院選を全体として振り返り、中島さんとしてはどのように感じていますか?

 
中島:今回、与党側の明確な勝利というわけではなく、安倍政権の権力が強化された形にはなりませんでした。選挙前には安倍4選も議論されましたが、その後押しになった選挙とは言えないと思います。一方、注目すべきは野党勢力。特に、「れいわ新選組」の活躍でしょうね。

 
──今回の参院選に向けて、山本太郎氏はれいわを立ち上げました。そして比例代表において、政党が当選者の優先順位をあらかじめ決められる「特定枠」という選挙制度を活用しながら舩後靖彦氏、木村英子氏の2人を議員として送り出しています。  


中島:山本太郎氏の出現は、日本政治史上の「事件」とも言うべき出来事。私は、世界史的な意味があると考えています。それを捉えるためには、政治学でこの20年にわたって議論されてきた「ラディカルデモクラシー」という概念を抑えなければなりません。


  自由競争を重んじる新自由主義が世界を席巻していくと、政策のほとんどを市場に任せることになり、政治が介入する余地が小さくなる。政治に代わって、金融資本が大きな力を持つようになっていきます。アントニオ・ネグリとマイケル・ハートの『帝国』(以文社)などは、まさにそのような未来を予見する議論でした。

 
 そのような新自由主義が続き、かつ間接民主制の下では、主権者である国民は「自分の1票によって世の中が変わる」という感覚を得られなくなっていきます。選挙による生活の変化が期待できないから「1票の重さ」と言われてもきれい事にしか感じられない。その結果、「選挙に行かなくていい」という結論が導かれるんです。これは、日本だけでなく、多くの先進国で起こってきました。

 
──近年、国政選挙の投票率は60%を下回ることもあり、今回の参院選に至っては、48.8%という低投票率になりました。これは、投票によって「政治が変わる」という実感が持てない構造的な問題に起因しているんですね。

 
中島:そこで注目されるのが、直接的な主権の行使を標榜する「ラディカルデモクラシー」です。これには、大きく2つの方向があります。

 
 1つ目が「熟議デモクラシー」というもの。特に、地方政治などの現場では、タウンミーティングや市民の意見を集めるグループワークを行いながら議論を練り上げていき、政策に反映させる事例も多くあります。首長・議会・住民が一緒になって議論を練り上げる参加型デモクラシーを作ることで、有権者は政治参加の実感が得られます。

 
 そして、もうひとつの軸が、ベルギー出身の政治学者であるシャンタル・ムフなどが提唱する「闘技デモクラシー」というあり方。争点を明確にし、境界線を引いていくことで対立軸を作っていく。そして、対抗者に対して「俺の声を聞け」と戦いを挑みながら権利や欲求を訴えていくことで有権者の情動を喚起していくという方法です。

 
 この図式を前提として考えた場合、霞が関と永田町で政治が決まる自民党のやり方は、ラディカルデモクラシーではありませんでした。しかし、この「ラディカルデモクラシー」の中でも、「熟議デモクラシー」としての運動がかつて日本でも起こったことがある。それが、立憲民主党が躍進した1年9カ月前の衆議院議員選挙でした。


■有権者を「裏切った」立憲民主党


──この選挙の直前、枝野幸男氏によって立憲民主党がつくられ、55議席を獲得。同党は野党第一党の座に就いています。

中島:枝野氏は、国民からの「枝野立て」の声に従って立憲民主党を結党し、ひとりで記者会見に望みました。そこで、多くの人は「俺の声が枝野に届いた」と感じ、ラディカルデモクラシーが起動した。だから、枝野氏は「立憲民主党はあなたです」という言葉を使ったんです。

 しかし今回の選挙では、立憲民主党のラディカルデモクラシーとしての側面が裏切られた形になりました。


──「裏切られた」とは?
 

中島:以前、立憲民主党は、「立憲パートナーズ」に象徴されるように、市民と対等なパートナーシップを築き、熟議デモクラシーを行いながら政策立案を一緒にやっていこうと考えていました。グループワークを行いながら、ボトムアップの政治をするというのが立憲民主党の目指す形だったんです。


 しかし、ラディカルデモクラシーを支える人々は、一部の人間による政治に見えた途端「俺たちの声が届いていない」と思い、離れていってしまう。この1年9カ月の間で、立憲民主党の姿勢の中に永田町にいる「一部の人間」の論理が出てしまった。その典型が国民民主党とのいざこざです。


 今回の選挙で、立憲民主党と国民民主党は「どちらの人数を上にするのか?」という争いを繰り広げ「一緒に活動できない」という姿勢を露呈させる。そんな永田町の理屈で行われた交渉が、「立憲民主党はあなたです」というメッセージから遠く離れたものになってしまいました。もちろん、政治を行う上ではどうしても「プロ」の側面は必要になるのですが、ラディカルデモクラシーを狙うのであれば、それを見せてはいけない。いつも主体は「あなた」だ、という物語を設定し続けなければならないんです。

 
──立憲民主党は、国民民主党とのいざこざで「プロの政治」を露呈させたことによって、「あなた」という説得力がなくなり、ラディカルデモクラシーの追い風を受けられなくなってしまった、と。今回の選挙では改選9議席からおよそ2倍となる17議席を獲得していますが、野党第1党としては前回、16年参院選で旧民進党が獲得した32議席に遠く及ばない結果となっています。

 
中島:そこで、立憲民主党の支持が低下してきたときに登場したのが山本太郎氏でした。彼の政策は立憲民主党とは異なり、決してボトムアップ型ではありません。山本氏はどの政治家よりも多くの人の声を丁寧に聞いています。しかし、その声を血肉化した上で、独断的に政策を掲げる。「絶対に消費税を廃止する」という明確な争点をつくり、そこに対して「力を貸してくださいよ」と叫ぶんです。彼の演説を聞くと、論理的なことを述べながらも、その間に情動を喚起する言葉を投げかけていることがわかります。「国民はATMじゃない」「生きててくれよ」「バカにすんなよ」、そんな言葉に涙を流している支持者の姿さえもありました。

 
 そうやって、情動を喚起しながらも争点を明確化させ、安倍、竹中、経団連といった対抗勢力をはっきりさせることによって、ポケットに数百円しか入っていない「俺たち」が連帯するという運動なんです。ラディカルデモクラシーを「闘技デモクラシー」としてとった山本太郎の出現は、今回の参院選の中でも特筆すべき事件であったと思います。

 
■山本×枝野による政権交代


──そんなれいわの躍進に対しては、「左派ポピュリズム」という言葉も使われています。彼らのポピュリズム的な側面について、中島さんはどのように感じていますか?


中島:まず、政治学者が使う「ポピュリズム」と、世の中の「ポピュリズム」の意味が、大きく乖離しているという前提があります。

 
 ポピュリズムという言葉には「大衆迎合主義」という訳語が当てられていますが、この言葉自体にイデオロギーはなく、あくまでも「俺たちの声を聞け」という意味しか含まれていない。この声をしばらく独占してきたのが移民排斥や自国第一主義を掲げる右派勢力だったので、どこか右派的な印象がありますが、もともとはイデオロギーを示す言葉ではないんです。

 
「闘技デモクラシー」として左派ポピュリズムを起動させるリベラル側の動きとしては、アメリカではサンダース、イギリスならコービンといった人々がいます。彼らは、旧来左翼を打破し、大衆の情念に訴えながら「敵はあいつらだ」と語りかけているんです。

 
──中島さんが、山本太郎氏に注目をはじめたのはいつごろでしょうか?  


中島:実は、もともと山本太郎氏については、単に“お騒がせな人”としか思っていませんでした。原発に関する発言も同意できない部分があり、パフォーマンス過多の印象。むしろ毛嫌いをしていましたね。彼がれいわ新選組を旗揚げしたときにも、特に注目はしていませんでした。

 
 しかし、寄付が1億円を超えるような状況になり、社会現象が起こっているということをようやく認識する事ができた。そして、彼の演説動画を観たときに「もしかしたら、彼は闘技デモクラシーに火をつけようとしているのではないか?」「“日本のサンダース”になるのではないか?」と思えてきた。そこから彼に注目をはじめ、これまで書いたものを集めて読み始めたんです。すると、彼自身が6年間の議員生活の中で大きな変遷を遂げていたことがわかってきました。


──「大きな変遷」とは?  


中島:彼は、参院選に当選した6年前を冷静に反省しています。議席をとったにも関わらず、街頭演説に集まる人の数はどんどんと減少していく。彼が掲げる「脱原発」だけを述べていても、誰もついてきてくれなかったんです。しかし、「福島第一原発の処理を行っているのは金のない派遣の立場にいる人々で、これは格差問題である」と主張したところ、拍手が起こった。そこから、原発問題は労働問題につながっていることを実感して、勉強し始めるんです。

 
──以前は、反原発だけだったのが、労働問題や経済問題を含む広い視野を得ていった。  


中島:また彼のすごいところは、人の話をよく聞くところ。いくら格差問題を叫んでも、彼は俳優出身であり、下層労働者ではありませんよね。その代わりに例えば彼は、演説中に意見を言ってきた人を後日議員会館に招いて、その人の語りに耳を傾けたり、時にはその意見を取り入れることもしている。彼らの言葉を血肉化させることで、山本氏の中には体重の乗った言葉が生まれるんです。

 
 彼は日本のサンダース的な運動を作りました。そしておそらく、この流れは一過性ではないでしょう。  


──彼の行動は、今後どのくらいの規模にまで拡大していくと思いますか?

 
中島:僕は政権交代が可能かもしれないと思っています。ただ、そのためには闘技デモクラシーだけでは十分ではない。それだけで政権を運営できるほど政治は甘くないんです。官僚ともやりあえるほどの熟議デモクラシー型の政策集団がいることで、はじめて政権として成り立つでしょう。そこで必要なのが立憲民主党の枝野氏。彼が熟議デモクラシーの代表として、しっかりと山本太郎氏と相互補完的な関係を結ぶことができれば、自民党を倒すことも夢ではありません。逆に枝野氏が山本氏を遠ざけていては、政権交代はできないでしょう。熟議デモクラシーを担うリーダーが、別のところから出てくる可能性もある。誰が山本氏とパートナーシップを組めるのかがポイントです。

 
 かつて70年代の自民党には田中角栄と大平正芳という2人のタイプの違うリーダーがいました。「今太閤」と呼ばれ、大衆の情念を掴んだ田中角栄と、一橋大学を卒業後に高級官僚となり、自民党に入った大平。全く異なったタイプの2人ですが、大平は田中が持っている数十秒で人の心を掴む才能に憧れ、田中は大平が持つエリートとしての政策構想力に惚れ込んだ。そのような相補関係を、枝野氏と山本氏が築けるかが鍵になってくるのではないかと思います。(後編へ続く)

※写真/石田寛 Ishida Hiroshi

れいわ新選組・山本太郎代表が政策を”丸呑み”したのは、あのお騒がせ経済評論家だった!

 7月21日に投開票が行われた参議院議員選挙は、与党自民党に対して野党側が有権者の関心をひくような選挙の争点を明確にできず、野党間の連携も取れなかったことで国民の選挙への関心は薄くなり、投票率は50%を大きく割り込むなど盛り上がりに欠けるものとなった。

 新設の無名政党が乱立する中で、ひときわ異彩を放ったのは、「れいわ新選組」(以下、れいわ)と「NHKから国民を守る党」(以下、N国)だった。果たして、れいわとN国はどのような政党なのか、そしてどのように評価すればいいのだろうか。

 れいわとN国は得票率が2%を超え、政治資金規正法に基づく政党として認められ、「政党助成金」の受給資格を獲得。今後、正式な政党としての活動していくことになる。まさに、新党としては“異例の出世”と言えよう。

 ある自民党有力議員の秘書は、れいわとN国の選挙戦略について「小泉純一郎元首相が2005年に“郵政省をぶっ壊す”として行った郵政解散選挙の“焼き直し”。選挙の争点を郵政民営化1本に絞り、“劇場型”と言われた政治手法を真似たもの」と分析する。

 同秘書は、「山本太郎代表が率いるれいわは、元タレントという山本代表の知名度の高さと重度障害を持つ2人を候補者としたことで、見事な“劇場型選挙戦”を演出した。一方、N国は『NHKをぶっ壊す』という選挙公約1つで注目を集めた。このフレーズは小泉元首相の選挙戦略の丸パクリ」という。

 確かに、れいわの山本代表が行った自民党が自らの選挙戦を有利にするために導入した「特定枠」を見事に逆手に取って、ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の船後靖彦氏と重度障害者の木村英子氏を参議院議員に当選させ国会に送り込んだ手腕は、旧態然とした既存政党にはない斬新な選挙戦略だ。結果、れいわと山本代表はメディアから圧倒的な注目を集め、重度障害を持つ2人の新人議員は一躍“時の人”となった。

 重度障害を持つ2人の新人議員の誕生は、国会という閉鎖された“伏魔殿”に新風を吹かせ、国会議事堂は重度障害者のための設備を整える動きを見せたことは、これまでの日本では考えられないことではある。

 しかし、あまりにも重度障害を持つ2人が注目を集めたために、れいわが掲げる「弱者に明るい未来を与える政治」は、障害者のみにスポットが当たってしまった。消費税廃止、最低賃金全国一律1500円を政府が補償などは、参議院選中はほとんど話題にならなかった。

 そもそも、山本氏のイメージは「熱血漢」「情熱的」「人情家」などといったものであり、決して「政策通」ではない。それが、参議院選に向けキーとなるいくつかの政策を打ち出している。この政策を作ったブレーンは誰なのだろうか?

 どうやら、れいわには、経済評論家の植草一秀氏が立ち上げに関わり、運営委員を務める「オールジャパン:平和と共生」(以下、平和と共生)が関係しているようだ。

 平和と共生は、2015年に「戦争と弱肉強食」の政治に反対し、「平和と共生」の政治実現を目指す主権者の集まりとして、連帯運動を広げて行くためのプラットフォームと説明されている。(「オールジャパン:平和と共生」のホームぺージは、https://www.alljapan25.com/about/)

 そして、8月1日の植草一秀氏のブログ「知られざる真実」には、「『れいわリベラリズム』軸に政策連合を形成する」との記事が掲載されており、そこには、「『れいわ新選組』は、『オールジャパン平和と共生』が18年4月に公開した次期政治決戦に向けての経済政策提言『シェアノミクス=分かち合う経済政策』を政権公約として丸呑み採用した」と書かれている。(https://www.data-max.co.jp/article/30729?rct=uekusa-blog)

 植草一秀氏と言えば、今でこそ表舞台から姿を消したが、以前は野村総合研究所エコノミストや早稲田大学大学院教授として、テレビでもお馴染みの顔だった。

 しかし、04年に品川駅のエスカレーターで女子高生のスカートの中を手鏡で覗こうとしたとして鉄道警察隊員に東京都迷惑防止条例違反容疑で現行犯逮捕され有罪となった。さらに、06年にも当時女子高校生に痴漢行為をしたとして、東京都迷惑防止条例違反の警視庁に現行犯逮捕され実刑判決が確定し、マスコミの表舞台から姿を消した人物だ。れいわの政権公約は、この植草氏らが作成した経済政策を“丸呑み”したものだと書かれている。

 どこの誰が作った政策でも関係はないのだが、問題は山本代表が“平和と共生”の掲げる理念に共感し、さらには “丸呑み”したという政策について単なる受け売りではなくしっかりと理解した上で、世間受けを狙ったものではなく、その政策の実現性を確信した上で、れいわの政権公約として打ち出しているのかが問われているのだ。

■N国は“とんでも議員のごみ箱”

 一方、「NHKをぶっ壊す」と連呼し、NHK改革だけを選挙公約としたN国の立花孝志代表は、元NHK職員から千葉県船橋市議会議員、東京都葛飾区議を経て、今回の選挙で参議院議員となった。

 NHK職員時代の05年に「週刊文春」(文藝春秋)でNHKの不正経理を内部告発しその後、不正経理で懲戒処分を受けNHKを依願退職した。2013年6月に政治団体「NHKから国民を守る党」を設立したのだが、大阪府摂津市議会議員選挙、東京都町田市議会議員選挙、東京都知事選挙、大阪府茨木市議会議員選挙、東京都議会議員選挙、大阪府堺市長選挙などに挑戦し、軒並み落選している。

 要は、地方自治などにまったく興味はなく、議員になれるなら「どこでもいい」ということなのだろう。政党名の「NHKから国民を守る党」やスローガンの「NHKをぶっ壊す」も、自らがNHKを依願退職(本人は事実上の解雇と言っている)に追い込まれたことから、“NHK憎し”の気持ちだけであり、決してNHKから国民を守ろうという気持ちなどないのではないだろうか。

 立花代表については奇怪な発言に加え、奇妙な行動や名誉棄損で訴訟を起こされるなどなど、おおよそ国会議員としての適性に問題がありそうな事柄を取り上げれば、“枚挙の暇がない”人物。

 立花代表はNHKの受信料を徴収する訪問員について「集金人がどれだけ怖いか。全員ではないが暴力団関係者を普通に使っている」と発言しているが、千葉県柏市議会議員選挙でのN国の街頭演説を映した映像で、街頭演説の最中に一般人の男性が叫んだヤジに対して、N国関係者や支持者がヤジを叫んだ男性を取り囲み、威圧的な脅しに近い行為を行っている光景が流された。N国は“まるで暴力団”というコメントが数多く寄せられていることを付け加えておく。

 N国は、酒に酔った状態で北方領土を戦争で取り返すとの発言や女性を要求する発言で日本維新の会を除名された丸山穂高衆議院議員を入党させたり、秘書への暴力とパワハラで告発され自民党から除名勧告を受けている石崎徹衆議院議員に入党要請を行うなど、“トンデモ議員のごみ箱”と化している。

 さて、今回の参議院議員選挙では、各党から多くの芸能人やスポーツ選手など知名度の高い「タレント議員」が立候補したが、その多くが落選したことに安心した。国会議員は自分の求めることだけ、専門とすることだけを主張し実現するのが仕事ではない。

 例えば、国家予算を審議する場合には、予算の中には、介護もあれば、教育もあり、公共事業や防衛もある。これらの事柄に対して、国民のために予算が使われているかを判断しなければならない。そのためには、さまざまな事柄に対して興味を持ち、知識を蓄え、自分の理念を持つ必要がある。

 参議院議員は当選すれば6年間はわれわれが納める税金での生活が保障される。国民のために、真摯に働き、国民を幸福に導く努力をする議員を選ぶことが国民の義務なのだ。

 余談だが、「政権を取る」とまで発言しているれいわ新選組の山本代表だが、何故、「新選組」という名前を選択したのか。安倍晋三政権が徳川幕府だとすれば、新選組は徳川幕府(安倍政権)を守るために組織されたものだ。ぜひ、次の選挙までに党名を変更することをお勧めする。

ロンブー田村淳の政界入り浮上で「N国」と「れいわ新選組」で争奪戦の動き

 吉本興業を巡る一連の騒動のせいか、まったく盛り上がらなかったのが7月21日に行われた参議院選挙。与党の圧勝となった中、最も注目を浴びたのが、約99万票を獲得した“N国”こと「NHKから国民を守る党」だった。

 その立花孝志代表は28日にAbemaTVで放送された『Abema的ニュースショー』に出演。自身が掲げた唯一の公約である「NHKをぶっ壊す!」に対する並々ならぬ思いを語っていたが、早くもその言葉どおりの動きを見せている。

「『北方領土を戦争で取り返す』といった主旨の発言が問題視され日本維新の会を除名した丸山穂高議員がN国に入党入り。元行政改革担当相で無所属の渡辺喜美参院議員にも接触し、参院での統一会派結成を目論んでいます。他にもN国は秘書への暴力とパワハラで告発を受けている自民党の石崎徹議員についても入党要請を行っており、今後“問題議員”の受け皿になっていきそうです」

 さらに、N国が2年以内に行われる衆院議員選挙で目論んでいるのが、芸能人候補者だという。

「ロンドンブーツ1号2号の田村淳に白羽の矢を立てているようです。淳はかねてから政界進出の噂があるのに加え、相方の田村亮は闇営業問題で吉本を契約解除される可能性がある。そうなれば、淳も追随して吉本を離れて出馬に踏み切ることも考えられます。ただ、淳に関してはN国同様、参院選で躍進を果たした『れいわ新選組』の山本太郎代表も狙っており、淳が入党するならこちらのほうが有力でしょう。東京から出れば山本代表との二枚看板になりますし、淳の出身地は安倍首相の地盤の下関ですから、そちらから出ても面白いことになりますよ」(週刊誌記者)

 吉本騒動は闇営業問題から、吉本vs.所属芸人に発展しているが、田村淳の政界転身で第3章の主役となるのだろうか。

ロンブー田村淳の政界入り浮上で「N国」と「れいわ新選組」で争奪戦の動き

 吉本興業を巡る一連の騒動のせいか、まったく盛り上がらなかったのが7月21日に行われた参議院選挙。与党の圧勝となった中、最も注目を浴びたのが、約99万票を獲得した“N国”こと「NHKから国民を守る党」だった。

 その立花孝志代表は28日にAbemaTVで放送された『Abema的ニュースショー』に出演。自身が掲げた唯一の公約である「NHKをぶっ壊す!」に対する並々ならぬ思いを語っていたが、早くもその言葉どおりの動きを見せている。

「『北方領土を戦争で取り返す』といった主旨の発言が問題視され日本維新の会を除名した丸山穂高議員がN国に入党入り。元行政改革担当相で無所属の渡辺喜美参院議員にも接触し、参院での統一会派結成を目論んでいます。他にもN国は秘書への暴力とパワハラで告発を受けている自民党の石崎徹議員についても入党要請を行っており、今後“問題議員”の受け皿になっていきそうです」

 さらに、N国が2年以内に行われる衆院議員選挙で目論んでいるのが、芸能人候補者だという。

「ロンドンブーツ1号2号の田村淳に白羽の矢を立てているようです。淳はかねてから政界進出の噂があるのに加え、相方の田村亮は闇営業問題で吉本を契約解除される可能性がある。そうなれば、淳も追随して吉本を離れて出馬に踏み切ることも考えられます。ただ、淳に関してはN国同様、参院選で躍進を果たした『れいわ新選組』の山本太郎代表も狙っており、淳が入党するならこちらのほうが有力でしょう。東京から出れば山本代表との二枚看板になりますし、淳の出身地は安倍首相の地盤の下関ですから、そちらから出ても面白いことになりますよ」(週刊誌記者)

 吉本騒動は闇営業問題から、吉本vs.所属芸人に発展しているが、田村淳の政界転身で第3章の主役となるのだろうか。

山本太郎・れいわ新選組へのアレルギーが「失言・差別発言」を招く? 自民党に警戒論広がる

 山本太郎氏が立ち上げた「れいわ新選組」が永田町を揺さぶっている。

 参院選比例区では228万票(得票率4.6%)を獲得し、「特定枠」として擁立した候補者2人が当選。山本氏こそ落選したものの、得票率2%以上という政党要件を満たしたことから、約6700万円の政党助成金が支給される予定だ。

 いち政治団体だった「れいわ」が、テレビや新聞の選挙報道で取り上げることはほとんどなかった。唯一、東京新聞だけが投開票前日の20日朝刊で「『れいわ現象』本物か?」という特集記事を掲載したくらい。マスメディアが「スルー」していた一方で、ネットで山本氏の街頭演説で人だかりができる様子が中継されたり、SNSで「インフルエンサー」が支持を表明したりした。そして、選挙期間中に約3憶7,000万円もの寄付金を集めた。

 当選した舩後康彦氏は筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者で、もう1人の木村英子氏も脳性まひで重度障害者がある。さっそく、参院議院運営委員会は25日午前の理事会から、国会内のバリアフリー化に向け協議に入った。山本氏が記者会見で語った「生産性ではなく存在しているだけで人間は価値があるという社会を実現するために政治がある」という言葉が、早くも現実になりつつある。

 これには、「れいわ」を「単なるパフォーマンス団体」と軽視していた自民党執行部も見方を変えつつあるようだ。大手新聞社の政治部デスクが語る。

「1992年に突如として結成され、それから、わずか2カ月後の参院選比例区で4人を当選させた『日本新党』のムーブメントと似ている、と語る自民党議員もいます。その後、日本新党は政治改革を掲げた日本新党は細川連立政権樹立まで突き進むわけですから、突如として登場した新党ブームには、与党も警戒しています。とはいえ、政治改革を掲げて政策理念をきちんと主張できた日本新党と違って、『れいわ』が掲げる消費税廃止や原発即時禁止は政策としては非現実的だと受け止める国民も多い。当事者性がある障害者福祉の拡充以外に、『れいわ』にアドバンテージはないというのが自民党の見方でしょう」

 勢いは認めざるを得ないが、政策で勝負できる政党ではなく、日本新党のように他の野党を巻き込む求心力もない。まだまだ政権を脅威にさらす存在ではない、というのが永田町の空気のようだ。だが、逆に内部からの「自滅」には注意をすべきだという意見が、自民党内部から聞こえてくる。

「自民党の幹部やベテラン議員を中心に、山本太郎氏に対するアレルギーがとても強い。元俳優でパフォーマンスは上手いが、普段の地道な政治活動でどんな実績があるのかと。重度障害者の2人を使って自分のいいように操ろうとする『狡猾な奴だ』と嫌悪感を露わにして言う議員もいます。もちろん、国会のバリアフリー化などは与野党問わず進めていく方針ですが、本音では、ただでさえ激務の国会議員活動を、当選した2人がどこまで担えるのか懐疑的にみている自民党議員がいることは事実。そこに山本憎しの感情がまざることで、何かのタイミングで”本音による失言”が出てしまわないかを危惧している。このご時世に障害者差別と取られる発言などしようものなら一発でアウト。そこから雪崩のように自民党批判が巻き起これば、それこそ山本太郎氏の思うつぼだと警戒している」(前出・デスク)

 かつて配布された自民党の「失言対策マニュアル」が、“れいわ用”にアップデートされる日も近いかもしれない。

山本太郎・れいわ新選組の大躍進で、立憲・市井紗耶香らタレント候補が揃って落選の憂き目に

 そのネーミングや山本太郎氏のキャラクターから、当初は“イロモノ”扱いされていた「れいわ新選組」が、参院選で2議席を獲得した。比例の得票数は228万票で、総得票率の4.6%に達したことから、得票率2%以上という政党要件も満たすことになった。

 時事通信によると、参院選の出口調査で「支持する政党はない」と答えた無党派層の比例代表での投票先は、自民党が25.5%でトップ、次いで立憲民主党の21%だった。そんな中、「れいわ新選組」は9.8%を集め、共産、公明、国民民主などを上回った。朝日新聞の出口調査でもほぼ同様の結果となった。

 改選から10議席減らした自民党は、さぞ歯ぎしりしているかと思いきや、自民党の票が「れいわ」に流れたわけではないという。大手紙の政治部記者はこう解説する。

「自民党の比例得票数は約1771万票で、2016年参院選の2011万票からは大きく下げました。ただ、16年参院選は投票率が約55%と今回よりも6ポイントほど高かったこともあり、自民党としては『勝ちすぎ』という分析をしていた。前々回の2013年の参院選の比例票が約1800万票だったことを考えると、長期政権に対する『飽き』も考慮すれば、無党派層の支持はそこまで落ちていないとみています」

 むしろ、「れいわ」躍進の影響を受けたと考えられているのは立憲民主党だ。改選議席9から17へと議席を大きく伸ばした一方で、比例代表では791万票で8議席がやっと。元モーニング娘の市井紗耶香氏や元RAGFAIRの奥村政佳氏など「タレント候補」はこぞって落選した。立憲執行部のある議員秘書は悔しさをにじませる。

「れいわブームが起こる前は、20議席はいくと踏んでいた。関西の小選挙区で取りこぼしたのも痛いが、比例票の相当数がれいわに流れたことが大きな原因。もし、れいわブームがなければ、市井や奥村は確実に当選していたはずだ」

 立憲民主党は、枝野幸男代表が「野党共闘」に一部否定的なスタンスを取るなど、足並みの乱れを引き起こしていた。野党がまとまりを欠くなかで、図らずも、れいわが「野党の受け皿」として機能したようだ。

「いわゆる無党派層ではあるが、反安倍で、基本的に自民党には投票しないという有権者が一定数いるのは事実。本来は立憲民主党がその受け皿となるはずでしたが、枝野代表の煮え切らない態度などもあり、その有権者の行き場がなくなってしまった。とはいえ、積極的に共産党には入れたくない。そういった人たちが、『反安倍』の一点突破でド左翼ともいえる主張を展開する山本太郎氏に引っ張られていった。皮肉ですが、野党共闘の間隙を突いたのが『れいわ』だったということでしょう」(前出・政治部記者)

 フタを開けてみれば、「野党の敵は野党」だったというオチ。野党が政権を取れる日は、まだまだ遠そうだ。

山本太郎・れいわ新選組の大躍進で、立憲・市井紗耶香らタレント候補が揃って落選の憂き目に

 そのネーミングや山本太郎氏のキャラクターから、当初は“イロモノ”扱いされていた「れいわ新選組」が、参院選で2議席を獲得した。比例の得票数は228万票で、総得票率の4.6%に達したことから、得票率2%以上という政党要件も満たすことになった。

 時事通信によると、参院選の出口調査で「支持する政党はない」と答えた無党派層の比例代表での投票先は、自民党が25.5%でトップ、次いで立憲民主党の21%だった。そんな中、「れいわ新選組」は9.8%を集め、共産、公明、国民民主などを上回った。朝日新聞の出口調査でもほぼ同様の結果となった。

 改選から10議席減らした自民党は、さぞ歯ぎしりしているかと思いきや、自民党の票が「れいわ」に流れたわけではないという。大手紙の政治部記者はこう解説する。

「自民党の比例得票数は約1771万票で、2016年参院選の2011万票からは大きく下げました。ただ、16年参院選は投票率が約55%と今回よりも6ポイントほど高かったこともあり、自民党としては『勝ちすぎ』という分析をしていた。前々回の2013年の参院選の比例票が約1800万票だったことを考えると、長期政権に対する『飽き』も考慮すれば、無党派層の支持はそこまで落ちていないとみています」

 むしろ、「れいわ」躍進の影響を受けたと考えられているのは立憲民主党だ。改選議席9から17へと議席を大きく伸ばした一方で、比例代表では791万票で8議席がやっと。元モーニング娘の市井紗耶香氏や元RAGFAIRの奥村政佳氏など「タレント候補」はこぞって落選した。立憲執行部のある議員秘書は悔しさをにじませる。

「れいわブームが起こる前は、20議席はいくと踏んでいた。関西の小選挙区で取りこぼしたのも痛いが、比例票の相当数がれいわに流れたことが大きな原因。もし、れいわブームがなければ、市井や奥村は確実に当選していたはずだ」

 立憲民主党は、枝野幸男代表が「野党共闘」に一部否定的なスタンスを取るなど、足並みの乱れを引き起こしていた。野党がまとまりを欠くなかで、図らずも、れいわが「野党の受け皿」として機能したようだ。

「いわゆる無党派層ではあるが、反安倍で、基本的に自民党には投票しないという有権者が一定数いるのは事実。本来は立憲民主党がその受け皿となるはずでしたが、枝野代表の煮え切らない態度などもあり、その有権者の行き場がなくなってしまった。とはいえ、積極的に共産党には入れたくない。そういった人たちが、『反安倍』の一点突破でド左翼ともいえる主張を展開する山本太郎氏に引っ張られていった。皮肉ですが、野党共闘の間隙を突いたのが『れいわ』だったということでしょう」(前出・政治部記者)

 フタを開けてみれば、「野党の敵は野党」だったというオチ。野党が政権を取れる日は、まだまだ遠そうだ。