NHK連続テレビ小説『なつぞら』が好調だ
舞台は戦後。戦災孤児だった奥原なつ(広瀬すず)は、父親の戦友だった柴田剛男(藤木直人)に引き取られ、北海道の十勝で暮らすことになる。酪農の仕事を手伝いながら成長したなつは、農業高校の畜産科に進学する。
なつのモデルは実在したアニメーターの奥山玲子だ。奥原は東映動画で宮崎駿や高畑勲といったアニメ界の巨匠と青春を過ごしていたため、今後、戦後アニメーションの黎明期をどう描くのか注目されている。
同時に本作は朝ドラ100本目となる記念の作品で、松嶋菜々子や比嘉愛未といった、歴代朝ドラヒロインを演じた女優が多数出演。アニメファンと朝ドラファンのハートをがっつりとつかんでいるのが、人気の理由だろう。
そんな盤石の布陣となっている『なつぞら』だが、筆者が楽しみにしているのは、出演している若手女優の誰が“見つかるか”だ。
朝ドラに出演すると、俳優の知名度は一気に全国区となる。特に近年は、主演よりも脇役に注目が集まる。『あさが来た』の吉岡里帆、清原果耶、小芝風花、『まんぷく』の岸井ゆきの、小川紗良のように、朝ドラに出演したことで、広く知られることとなった女優は多い。
『なつぞら』で注目すべきは、なつのクラスメイトの“よっちゃん”こと居村良子を演じる富田望生(みう)だろう。その繊細な演技に、注目が集まっている。
富田は現在19歳。ぽっちゃり体形の若手女優という希少価値もあってか、出演作が急増しており、今年は話題作『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(日本テレビ系)にも出演した。
なつを演じる広瀬との共演は、映画『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』『SUNNY 強い気持ち・強い愛』に続いて3度目ということもあってか、息はばっちり。広瀬は、富田のことを天才だと語っている。
福島県いわき市出身の富田はピアニストを目指していたが、小学6年生の時に東日本大震災に遭遇。母の仕事の関係で福島を離れた影響で、ピアノをやめてしまう。「何もしていない状況」を変えたいと思った富田は、ネットで見つけた映画『ソロモンの偽証』のオーディションを受ける。太っている役を演じるために15kg増量して役作りに挑み、シリアスな演技が評価された。
以降、学園ドラマや青春映画における、ぽっちゃり女子の役を独占することとなる。
こう書くと体形だけで役を得たかのように聞こえてしまうかもしれないが、もちろん、彼女の魅力はそれだけではない。一作一作、見較べると同じぽっちゃり女子でも、性格も環境も全然違う人間を見事に演じ分けている。
残念ながら今の日本のテレビドラマにおいて、女芸人も含めたぽっちゃり女優は、陽気な3枚目か粗暴なキャラといった引き立て役に描かれがちだ。『なつぞら』も例外ではなく、なつがよっちゃんを牛役に見立ててクラスメイトの前で牛の出産場面を再現したシーンに対して、SNS上では批判が多かった。
筆者も『なつぞら』を楽しみながらも、富田のポテンシャルをうまく生かしきれてないことには歯がゆく思っている。
それはすでに『宇宙を駆けるよだか』が、富田の演技力を見事に生かし切っているのを見ているからだろう。
本作は、Netflixで配信された異色の学園ドラマ。豊かな家に生まれ、容姿も美しく心も清らかな女子高生・小日向あゆみ(清原果耶)が、貧しい家に生まれ、太っている卑屈な同級生・海根然子(富田望生)がかけた呪いによって、外見と内面が入れ替わってしまう。海根の体になったあゆみは、恋人にも家族にも自分のことを理解してもらえず孤立し、クラスメイトからもバカにされる。
10代の女の子がさらされる容姿に対する目線は残酷で、ぽっちゃり=太っているということは、同級生から侮蔑の対象とされてしまう。そういう現実を本作は容赦なく描いているのだが、同時に、それを超える価値観も提示している。
海根の体になったあゆみは、ただ一人、自分のことを信じてくれた同級生の男の子に支えられて変わっていく。それに伴い、不潔に伸びっぱなしだった髪の毛も清潔にまとめて、次第に笑顔が増えていくと、周囲の反応も変わっていく。逆に海根の内面が入り込んだあゆみは、次第に卑屈な内面が露呈し、孤立していく。
見ていて驚くのは、海根がどんどんかわいく見えてくることで、最終的に、太っている女性を根拠もなく不細工だと思い込んでいた(自分の中にあった)偏見がガラガラと崩れていく。これは、内面の入れ替わりに伴う外見と表情の変化を、富田がしっかりと演じきったからだ。
筆者はいつか、本作を超える富田の才能を生かした作品を見てみたい。できれば、それは朝ドラのヒロインであってほしい。
せっかく新しい時代に突入したのだ。体形でキャラを決める偏見は平成で終わっていい。多様性が叫ばれる時代だからこそ、朝ドラヒロインにも、もっといろんな体形や性格の子がいてもいいのではないかと思う。
●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。
◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆