『コンフィデンスマンJP』見どころは古沢良太脚本だけじゃない!? フジテレビの敏腕スタッフが超高視聴率を狙う!

 長澤まさみ主演作『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)が4月9日にスタート、第1話の平均視聴率は9.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)であった。

 同作は『リーガルハイ』『デート』(同)を手掛けた脚本家・古沢良太の3年ぶりの連ドラ作品とあって、初回90分放送の肝いりの第1話。まずは、あらすじをさらっと解説したい。

 天才的な頭脳を持つもハニートラップが苦手な詐欺師・ダー子(長澤まさみ)、詐欺師なのにお人よしで騙されやすいボクちゃん(東出昌大)、変装の名人リチャード(小日向文世)の3人が、悪徳公益財団の会長・赤星(江口洋介)から20億円を騙し取るというのが第1話のストーリー。登場人物同士が騙し合い、視聴者の予想すら裏切る“コンゲーム”というジャンルの性質上、ストーリーの詳細はお伝えしないが、初回90分という長尺にもかかわらず、体感時間はアッと言う間という感じ。飽きることなく見ることができた。

 番組宣伝でデカデカと『脚本:古沢良太』と銘打たれた通り、脚本家に注目が集まる本作。この記事では『コンフィデンスマンJP』の見どころに触れつつ、企画や演出などを担当するフジテレビの人々にもスポットライトを当ててみたい。

■今からでも間に合う、古沢良太ってどんな人?

 スタッフを紹介する前に、まずは古沢良太に触れたいと思う。ネットニュースやCMなどで名前を見たことがあっても、どのくらいスゴい人なのか、わからないという人も多いはず。

 経歴をザックリ紹介すると、2002年テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞で『アシ!』という漫画家とアシスタントの交流を描いた作品で大賞を受賞。岡田恵和氏・井上由美子氏・両沢和幸氏、そして今は亡き野沢尚氏という脚本界のレジェンドたちに認められ、破格の賞金800万円(現在は500万円)を掴み取り、20代にして華々しいデビューを飾った。その後、30代のうちに映画『ALWAYS三丁目の夕日』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞、ドラマ『ゴンゾウ 伝説の刑事』(テレビ朝日系)で向田邦子賞の受賞などの各タイトルを総ナメにする。プロ将棋士に例えるなら、羽生善治的な存在と言えるだろう。

 本作『コンフィデンスマンJP』も、古沢良太の足跡が滲み出た一作だった。

『リーガルハイ』でも見られた、味方すら騙す裏切りの連続。『デート』にも使われた、行ったり来たりの自由な時系列での構成。そして登場人物同士の軽快な掛け合い。

 掛け合いの良さはデビュー当時から評価されていたが、構成力と予想のつかない展開は、『相棒』(テレビ朝日系)、『ゴンゾウ 伝説の刑事』『外事警察』(NHK総合)などの刑事ドラマで培ったと考えられる。

 ただ、それらの作品は、現在の古沢良太作品と比べると、ややヘビーなテイストの作品が多い。そこで注目したいのが、表題にも挙げたフジテレビの敏腕スタッフである。

■ブランド力低下のフジテレビにもいる、有能社員たち

 まず本作の企画を手掛けたのは、成河広明氏。『リーガルハイ』や『デート』の時からタッグを組んでいたプロデューサーだ。成河氏の代表作は、『ストロベリーナイト』『絶対零度~未解決事件特命捜査~』(共にフジテレビ系)など、古沢良太が過去に手掛けた刑事ドラマと毛色が似ている。

 それにもかかわらず、二人がタッグを組んだ作品は本作も含めてコメディ路線。そうなった経緯については当人同士しか存ぜぬことではあるが、古沢良太のコメディを書ける力を見抜いていなければ、『リーガルハイ』『デート』は存在せず、現在のように広く世に名の知れる脚本家になっていなかったかもしれない。いかに組むスタッフが大事かということがうかがえる。

 その点で、起用された演出家も素晴らしい。チーフディレクターの田中亮氏は『ラストシンデレラ』『ディア・シスター』(共にフジテレビ系)など女性層に向けたヒューマンコメディ作品を手掛けた監督。コミカルな世界観を艶っぽく見せる力に長けている。

 第1話のフジテレビ本社社屋のイルミネーションを背景に使ったタイトルバックは絶妙だった。さじ加減も優れており、一歩間違えばただのドタバタ喜劇になりかねない場面をスリリングに演出して冷めさせない。長澤まさみが持つセクシーさを控えつつ、チャーミングさを引き出し、「色仕掛けだけは下手くそ」というダー子の設定に説得力を持たせていた。

 同じくディレクターとして名を連ねる金井絋氏も『HERO』や『恋仲』(共にフジテレビ系)など幅広いジャンルの作品で登場人物の人間臭さを引き出してきた監督であるし、三橋利行氏も『俺のセンセイ』(フジテレビ系)という新人脚本家と組んだ深夜ドラマを洗練された作品に昇華させた力を持つ。

 上質な脚本をフジテレビのスタッフたちがどう料理するかも、楽しみな要素の一つである。

■初回平均視聴率9.4%。視聴率アップの秘策は?

 まるで忖度したかのように絶賛記事を書いてしまったが、本作にも課題はある。それが2ケタに届かなかった視聴率だ。

 直近の月9作品、『海月姫』初回8.6%、『民衆の敵』初回9.0%と比べれば健闘した数字と言えるが、TBS日曜劇場や日本テレビ水曜10時枠などのコンスタントに2ケタ視聴率を取る他局の看板枠に比べれば物足りない。

 Twitterやネットニュースなどで本作への絶賛の声が多く見受けられるも、褒められる作品イコール高視聴率とは限らない。『海月姫』も視聴者の満足度は高かったが、月9史上ワースト視聴率を更新した。ネットで声を上げる層は、目が肥えているという自負のある、言わばモノを見る玄人。そういった類の人は、ごく一部に過ぎない。炎上は低視聴率につながるが、ネット上の絶賛は高視聴率につながらない。バッシングを受けない程度に斬新で見易い作品を心がけるこたが、視聴率を上げる手でもある。そういった意味では光明がある。それは3月30日放送の『新・週刊テレビ批評』(フジテレビ系)で語られた古沢良太のスタンスだ。

「フジテレビは攻めの姿勢を貫くべき、ただし過激なことをすればいいというわけではない」

 高視聴率を目指すのに必要な“攻め”とは、好感を持たれるほんの少しの目新しさなのかもしれない。

『半沢直樹』(TBS系)は水戸黄門的な馴染みのあるフォーマットに、“上司への仕返し”という、ありそうでなかった要素を入れていた。『逃げるは恥だが役に立つ』(同)も時代の半歩先を行く契約結婚を主軸に置いた。両作品とも、視聴者にとって身近な会社組織と結婚生活を題材とし、それらに対する不満まで解消し、人気を博した。

『コンフィデンスマンJP』は、我々にとって身近なお金の不満を解消してくれるのだろうか?

 年収1,000万円超のテレビマンたちが、視聴者の財布の中の1円玉にまで想いを馳せる想像力と誠実さがあれば、この作品は多くの人に愛されるモノになる。

 本作がフジテレビの世の中からの評価に対するコンゲームとなることを期待しつつ、16日放送の第2話も見守りたい。(文=許婚亭ちん宝)

『孤独のグルメ』スタート!「こういうのでいいんだよ」という美学を覆すとんかつ屋の“追いステーキ”ってナンだ!?

 レギュラー放送としては1年ぶりとなる『孤独のグルメ Season7』(テレビ東京系)がスタート。

 ほぼ毎年レギュラー放送があり、さらに昨年は大みそかの年越し直前枠を2時間SPで任されるまでになった人気コンテンツ。もはや局を代表する顔だ。ただおじさんが独り言を言い(思い)ながら飯食うだけの地味な番組なのだが、それが逆によかった。

 言うまでもないが『アンナチュラル』(TBS系)や『バイプレイヤーズ』(テレビ東京系)で1~3月期もフル回転だった松重豊を押し上げた出世作。

 Season7の開幕を飾るのは上尾(埼玉)。Season6こそ大阪での遠征スタートだったが、それ以外の初回は、門前仲町、新丸子、赤羽、清瀬、稲田堤というクラクラするほどの地味具合。この気負わぬスピリットは変わらずだが、しかし今回の上尾でのとんかつが、とんでもないやつだった。

 

■第1話「埼玉県上尾市本町の肩ロースかつ定食」

 

 前日、すんでのところでとんかつを食いそびれた五郎(松重=個人でやってる輸入雑貨の貿易商)は、朝から腹がとんかつ状態。アンティーク照明を希望する呉服店主夫妻にカタログを届けに来たのだが、返す刀で着物を売りつけられそうになる。「売るか、売られるか」の弱肉強食なセールス合戦。なんとなく付き合い的にこちらも「買わなきゃいけない」ような気持ちになるのは営業あるあるだ。

「あやうくミイラ取りがミイラになるところだった」が、なんとか脱出。一安心したその直後、恒例・食事決心のシーン。いつもの「よし、店を探そう」を「よし、とんかつを探そう」とセルフパロディ。

 とんかつはSeason1の第6話で「ミックスかつ」、Season4の第7話で「カツサンド」を食べているが、意外とがっつりのとんかつ単体は初めて。

 いつもは惹かれそうな中華、洋食、うなぎに目もくれず、とんかつを求め彷徨う五郎。上尾市役所前で職員が行く飯屋があるはずと推理。(実は市役所に隣接する食堂にも、とんかつがあるのだが)長いとんかつクエストの末、たどり着いたのが今回の舞台・キセキ食堂だ。

 結論から言うと、地元では有名な人気店。今回の放送を知った店のファンは、むしろ「バレて」しまうことを悲しんでいるだろう。

 ドラマ内でも繁盛店として描かれているが、少なくとも今の時点でふらっと来て並ばず入れるようなことはないだろう(放送翌日にいたっては店頭のシート記入がいっぱいになり開店時間前なのに「品切れ」となるほど)。

 五郎が選んだのは、肩ロースを低温熟成したという人気ナンバーワンのキセキ定食。カツとステーキ(豚)があるのだが、「初めての方にはステーキをお勧めします」という注意書きを振り切り、カツを選ぶ「初志貫徹」。

 

■メジャーで肉を採寸する五郎

 

 出てきたカツは『なにこの威圧感』とビビるほどのデカさ。

 思わずメジャーを取り出し採寸しちゃう五郎。前シーズンでもアジフライを測っていた恒例のアレ。

 横16センチ、縦10センチ、高さ4センチ5ミリ。立体感がレンガのよう。

 真ん中の切り身にだけソースをかけ、箸で持ち上げるが、デカい。「ジェンガだな!」と例える心の声もデカかった。ジェンガがピンとこない人は、赤ちゃんの靴くらいのデカさを想像してほしい。もしくは小さめのテレビリモコン。一切れが、だ。一口かじって「何だよこれ、笑うしかないなあ」と目尻が垂れる。この番組(原作)を端的に表す名台詞「こういうのでいいんだよ」という美学とは明らかに違う、今までになかった圧倒的な美味さに屈服する感じ。

 続いて塩で一切れ。

「塩とんかつがうまいってことは肉がいい証し。それを白いご飯で追っかける法悦(ほうえつ)」

 塩レモンでも一切れ。

「今俺が食ってるのは肉の形をした幸せだ」

 辛味噌で一切れ。

「今度は辛味噌で名古屋に行ってみるか!」

 ふんだんな調味料でバイキング状態を楽しむ五郎。キャベツもごまドレやソースで味替え。どこにでも幸せはある。

 ちょいちょい「ごまドレいってみよー」「塩レモンいってみよー」と宣言する五郎が、いかりや長介みたいでどこか頼もしい。

 くどいようだが、肉一切れがデカく、五郎ですら場合によっては4口で食べていた。女性なら5口から6口は要するはず。中は低温熟成ということで、ほんのりピンク。生だと誤解する人もいるらしく、しっかり中まで火が通っていることを告げる張り紙が店内にあるほど。

 低温熟成ならではだと感じたのが、箸で肉片を持ち上げた際、両端が微妙にプルンとたわむこと。柔らかそうな食感が口に広がる。食ってないけど。

「肉食ってる感が尋常じゃない肉」

 これが230グラムの定食で1,000円。自分が地元民なら紹介した番組を生涯呪う。

■とんかつの後の「追いステーキ」

 

 さらに隣の客の「キセキのステーキとかつ100グラムずつ」という注文の仕方に注目し、「そういうのアリなのか……」とキセキのステーキ100グラムを追加。思わず隣の客に「助かりました」と礼を言い、動揺させてしまう五郎。今回も飯の海を自由に泳いでる。

 ラストのかつ一切れを再度とんかつソースで締める。ソースに始まりソースで終わる美学。

 そして美学とはとても思えない追加のステーキが到着。

「衣を脱いでなお旨し」という肉をステーキソースで。

「これはご飯いらない、肉で肉が食える」らしい。注文時にも「ここで追いステーキをかませたのはうれしい」と喜んでいたが、五郎独自の言語感覚がこのドラマの人気を支える一つ。いやメインといってもいい。追いステーキって、ソイソースみたいでどこかしっくりくるし。

 店員お勧めのオニオンソース。豚肉と玉ねぎの相性の良さから「生姜焼きの原理か」と発見する五郎。美味い組み合わせを考えている時、その舌は科学者だ。

 今回、ぜひ確かめたくなったのは、わさび醤油で食う(この店の)豚肉の美味さ。この組み合わせを「ベストアンサー」だと断言した五郎。

「俺の舌は今、感動にむせび泣いている」

 食えるか心配していたくせに、結局「あと300グラムくらい全然イケる」と胃袋フル回転。量を食っても軽い肉なのだろう。

「こんなとんかつとこんなステーキが、上尾の街に潜んでいたなんて。豚肉の道、奥深し」

 そして原作者・久住昌之がロケ地で飯を食う「ふらっとQUSUMI」のコーナー。原作漫画にない店しかドラマでは描かれないので、作者が来るのも基本毎回初めて。

 まずは予約限定の牛タンステーキを、わさび醤油で。美味いに決まってる。驚いたのは小ぶりの熟成ひれカツの150円といういう値段。小ぶりといっても久住ですら4口以上かかりそうな立派な「小ぶり」っぷり。店からしたら大迷惑だろうが、これとご飯だけでも昼飯としてアリだと思ってしまった。

 本編でメニューだけ出てきたお子様定食(カツまたはステーキ)も350円だし、五郎も言ってたが、いくら精肉店が経営してるとはいえ「店として大丈夫か?」。

 

■「行かない」視聴者でも、ただ見るだけで楽しめる作り

 

 この番組は基本実在する店やメニューで撮影しているのだが、店員は役者が演じているし、味わってるのも、あくまで架空の存在・井之頭五郎であって松重豊でないし、もちろん物語部分はフィクション。ドラマ本編部分には必要以上の「情報」的なものは差し込まず(久住コーナーが「情報」に当たるが、あくまで脇。逆に裏返しでここを「メイン」だと言う人もいる)、視聴者が「行く」という前提を強く押し出してはいない。

「食べたいけど行くの面倒臭い」とか「一見さん入りづらそう」とか「そもそも行く時間ない」とか、そういった萎える感情から解き放たれ、ただ井之頭というどこにでもいそうな人物が、ただ一人、悩んだり浮かれたり発見したりしながら日常の飯を享受するサマを観て楽しめばいいだけだ。

 グルメ情報を見てる時につきまとう「でもどうせ俺は行かないしな……」という劣等感に苛まれることがない。

 もちろん行きたくないわけではない。そりゃ行きたいし食べたいのだが、それはそれとして、「ここ」に行かないで「これ」を食べなくても、別に構わない気持ちにさせてくれる。腹が減ったら各々のとんかつ「らしき」ものを食えばいいのだ。

 だがしかし、今回はこのキセキのとんかつは食ってみたくて仕方がない。うれしいような悔しいようなこの気持ち。

 あくまで五郎が食らうところを鑑賞することで「自分の中に眠る食の思い出を喰らう」的な楽しみ方を提示してきた番組だったのに、こんなに感情をかき乱されるとは。

 Season6でもラム肉だらけの中華という未知の味を突きつけ我々を困らせた「前科」があったが(第8話)、今回は王道の味でありながらそのクオリティの高さと圧倒的なコストパフォーマンスで仕掛けてきた。この方向が番組的にどう影響するかはまだわからない。今週の「世田谷区経堂のバイキング」を待ちたい。
(文=柿田太郎)

『孤独のグルメ』スタート!「こういうのでいいんだよ」という美学を覆すとんかつ屋の“追いステーキ”ってナンだ!?

 レギュラー放送としては1年ぶりとなる『孤独のグルメ Season7』(テレビ東京系)がスタート。

 ほぼ毎年レギュラー放送があり、さらに昨年は大みそかの年越し直前枠を2時間SPで任されるまでになった人気コンテンツ。もはや局を代表する顔だ。ただおじさんが独り言を言い(思い)ながら飯食うだけの地味な番組なのだが、それが逆によかった。

 言うまでもないが『アンナチュラル』(TBS系)や『バイプレイヤーズ』(テレビ東京系)で1~3月期もフル回転だった松重豊を押し上げた出世作。

 Season7の開幕を飾るのは上尾(埼玉)。Season6こそ大阪での遠征スタートだったが、それ以外の初回は、門前仲町、新丸子、赤羽、清瀬、稲田堤というクラクラするほどの地味具合。この気負わぬスピリットは変わらずだが、しかし今回の上尾でのとんかつが、とんでもないやつだった。

 

■第1話「埼玉県上尾市本町の肩ロースかつ定食」

 

 前日、すんでのところでとんかつを食いそびれた五郎(松重=個人でやってる輸入雑貨の貿易商)は、朝から腹がとんかつ状態。アンティーク照明を希望する呉服店主夫妻にカタログを届けに来たのだが、返す刀で着物を売りつけられそうになる。「売るか、売られるか」の弱肉強食なセールス合戦。なんとなく付き合い的にこちらも「買わなきゃいけない」ような気持ちになるのは営業あるあるだ。

「あやうくミイラ取りがミイラになるところだった」が、なんとか脱出。一安心したその直後、恒例・食事決心のシーン。いつもの「よし、店を探そう」を「よし、とんかつを探そう」とセルフパロディ。

 とんかつはSeason1の第6話で「ミックスかつ」、Season4の第7話で「カツサンド」を食べているが、意外とがっつりのとんかつ単体は初めて。

 いつもは惹かれそうな中華、洋食、うなぎに目もくれず、とんかつを求め彷徨う五郎。上尾市役所前で職員が行く飯屋があるはずと推理。(実は市役所に隣接する食堂にも、とんかつがあるのだが)長いとんかつクエストの末、たどり着いたのが今回の舞台・キセキ食堂だ。

 結論から言うと、地元では有名な人気店。今回の放送を知った店のファンは、むしろ「バレて」しまうことを悲しんでいるだろう。

 ドラマ内でも繁盛店として描かれているが、少なくとも今の時点でふらっと来て並ばず入れるようなことはないだろう(放送翌日にいたっては店頭のシート記入がいっぱいになり開店時間前なのに「品切れ」となるほど)。

 五郎が選んだのは、肩ロースを低温熟成したという人気ナンバーワンのキセキ定食。カツとステーキ(豚)があるのだが、「初めての方にはステーキをお勧めします」という注意書きを振り切り、カツを選ぶ「初志貫徹」。

 

■メジャーで肉を採寸する五郎

 

 出てきたカツは『なにこの威圧感』とビビるほどのデカさ。

 思わずメジャーを取り出し採寸しちゃう五郎。前シーズンでもアジフライを測っていた恒例のアレ。

 横16センチ、縦10センチ、高さ4センチ5ミリ。立体感がレンガのよう。

 真ん中の切り身にだけソースをかけ、箸で持ち上げるが、デカい。「ジェンガだな!」と例える心の声もデカかった。ジェンガがピンとこない人は、赤ちゃんの靴くらいのデカさを想像してほしい。もしくは小さめのテレビリモコン。一切れが、だ。一口かじって「何だよこれ、笑うしかないなあ」と目尻が垂れる。この番組(原作)を端的に表す名台詞「こういうのでいいんだよ」という美学とは明らかに違う、今までになかった圧倒的な美味さに屈服する感じ。

 続いて塩で一切れ。

「塩とんかつがうまいってことは肉がいい証し。それを白いご飯で追っかける法悦(ほうえつ)」

 塩レモンでも一切れ。

「今俺が食ってるのは肉の形をした幸せだ」

 辛味噌で一切れ。

「今度は辛味噌で名古屋に行ってみるか!」

 ふんだんな調味料でバイキング状態を楽しむ五郎。キャベツもごまドレやソースで味替え。どこにでも幸せはある。

 ちょいちょい「ごまドレいってみよー」「塩レモンいってみよー」と宣言する五郎が、いかりや長介みたいでどこか頼もしい。

 くどいようだが、肉一切れがデカく、五郎ですら場合によっては4口で食べていた。女性なら5口から6口は要するはず。中は低温熟成ということで、ほんのりピンク。生だと誤解する人もいるらしく、しっかり中まで火が通っていることを告げる張り紙が店内にあるほど。

 低温熟成ならではだと感じたのが、箸で肉片を持ち上げた際、両端が微妙にプルンとたわむこと。柔らかそうな食感が口に広がる。食ってないけど。

「肉食ってる感が尋常じゃない肉」

 これが230グラムの定食で1,000円。自分が地元民なら紹介した番組を生涯呪う。

■とんかつの後の「追いステーキ」

 

 さらに隣の客の「キセキのステーキとかつ100グラムずつ」という注文の仕方に注目し、「そういうのアリなのか……」とキセキのステーキ100グラムを追加。思わず隣の客に「助かりました」と礼を言い、動揺させてしまう五郎。今回も飯の海を自由に泳いでる。

 ラストのかつ一切れを再度とんかつソースで締める。ソースに始まりソースで終わる美学。

 そして美学とはとても思えない追加のステーキが到着。

「衣を脱いでなお旨し」という肉をステーキソースで。

「これはご飯いらない、肉で肉が食える」らしい。注文時にも「ここで追いステーキをかませたのはうれしい」と喜んでいたが、五郎独自の言語感覚がこのドラマの人気を支える一つ。いやメインといってもいい。追いステーキって、ソイソースみたいでどこかしっくりくるし。

 店員お勧めのオニオンソース。豚肉と玉ねぎの相性の良さから「生姜焼きの原理か」と発見する五郎。美味い組み合わせを考えている時、その舌は科学者だ。

 今回、ぜひ確かめたくなったのは、わさび醤油で食う(この店の)豚肉の美味さ。この組み合わせを「ベストアンサー」だと断言した五郎。

「俺の舌は今、感動にむせび泣いている」

 食えるか心配していたくせに、結局「あと300グラムくらい全然イケる」と胃袋フル回転。量を食っても軽い肉なのだろう。

「こんなとんかつとこんなステーキが、上尾の街に潜んでいたなんて。豚肉の道、奥深し」

 そして原作者・久住昌之がロケ地で飯を食う「ふらっとQUSUMI」のコーナー。原作漫画にない店しかドラマでは描かれないので、作者が来るのも基本毎回初めて。

 まずは予約限定の牛タンステーキを、わさび醤油で。美味いに決まってる。驚いたのは小ぶりの熟成ひれカツの150円といういう値段。小ぶりといっても久住ですら4口以上かかりそうな立派な「小ぶり」っぷり。店からしたら大迷惑だろうが、これとご飯だけでも昼飯としてアリだと思ってしまった。

 本編でメニューだけ出てきたお子様定食(カツまたはステーキ)も350円だし、五郎も言ってたが、いくら精肉店が経営してるとはいえ「店として大丈夫か?」。

 

■「行かない」視聴者でも、ただ見るだけで楽しめる作り

 

 この番組は基本実在する店やメニューで撮影しているのだが、店員は役者が演じているし、味わってるのも、あくまで架空の存在・井之頭五郎であって松重豊でないし、もちろん物語部分はフィクション。ドラマ本編部分には必要以上の「情報」的なものは差し込まず(久住コーナーが「情報」に当たるが、あくまで脇。逆に裏返しでここを「メイン」だと言う人もいる)、視聴者が「行く」という前提を強く押し出してはいない。

「食べたいけど行くの面倒臭い」とか「一見さん入りづらそう」とか「そもそも行く時間ない」とか、そういった萎える感情から解き放たれ、ただ井之頭というどこにでもいそうな人物が、ただ一人、悩んだり浮かれたり発見したりしながら日常の飯を享受するサマを観て楽しめばいいだけだ。

 グルメ情報を見てる時につきまとう「でもどうせ俺は行かないしな……」という劣等感に苛まれることがない。

 もちろん行きたくないわけではない。そりゃ行きたいし食べたいのだが、それはそれとして、「ここ」に行かないで「これ」を食べなくても、別に構わない気持ちにさせてくれる。腹が減ったら各々のとんかつ「らしき」ものを食えばいいのだ。

 だがしかし、今回はこのキセキのとんかつは食ってみたくて仕方がない。うれしいような悔しいようなこの気持ち。

 あくまで五郎が食らうところを鑑賞することで「自分の中に眠る食の思い出を喰らう」的な楽しみ方を提示してきた番組だったのに、こんなに感情をかき乱されるとは。

 Season6でもラム肉だらけの中華という未知の味を突きつけ我々を困らせた「前科」があったが(第8話)、今回は王道の味でありながらそのクオリティの高さと圧倒的なコストパフォーマンスで仕掛けてきた。この方向が番組的にどう影響するかはまだわからない。今週の「世田谷区経堂のバイキング」を待ちたい。
(文=柿田太郎)

世界一うざい男・宮本はもう1人の自分なのか!? 恋も仕事も失敗だらけ『宮本から君へ』第1話

 常にクールでスマートでいることが求められる現代社会において、そこからいちばん遠い遠い存在が宮本浩という男です。新井英樹の同名コミックを原作にしたドラマ24『宮本から君へ』(テレビ東京系)の主人公・宮本浩は、とにかく暑苦しくて、面倒くさいことこの上ありません。中小企業に就職した社会人1年目の宮本は、恋に仕事に100%全力でぶつかり、そのたびに七転八倒します。そんな超うざいキャラクター・宮本役に、若手演技派の筆頭格である池松壮亮。脚本・演出が暴力青春映画『ディストラクション・ベイビーズ』(16)で注目を集めた新鋭・真利子哲也監督というタッグで、1クールにわたってオンエアされることに。モヤモヤモヤ~とした寝苦しい3カ月間になりそうですね。

 原作コミックは1990~94年に青年漫画誌「モーニング」(講談社)で連載され、バブル景気で浮かれまくっていた世相に、冷や水を差しまくるような異質な内容でした。小さな文具メーカーの営業部に配属された宮本(池松壮亮)の真っすぐすぎて、超かっこ悪い、痛~い青春の日々が描かれます。

 さて、テレビ版第1話のオープニング、駅のホームで電車を待つ若いOLの姿が映し出されます。宮本にとって憧れの女性となる甲田美沙子(華村あすか)の登場です。入社1年目で仕事が楽しくない宮本は、朝の通勤時に見かける美沙子だけが毎日の楽しみでした。電車の中で同僚たちとの会話を盗み聞きし、美沙子は大手自動車メーカーの受付嬢であることが判明。超美人な美沙子は、ちっぽけな文具メーカーに勤める宮本にとっては高嶺の花。さりげなく声を掛けたいけど、きっかけがつかめません。自分の持てる欲望と情熱をどう形にすればいいのか分からない宮本浩、22歳の新人営業マンでした。

 宮本のうざったさがむっちりみっちりと描かれたのが、職場の同僚たちと繰り出した居酒屋シーンでした。小田課長(星田英利)の面倒見のよさに甘え、愚痴をこぼしまくる宮本。「学校に行ってるうちはよかった。学校を出たら、夢も自信もなくなったなぁ~」と上司に向かってタメ口で愚痴るダメダメな宮本でした。「学校出たらから失う自信を、何か持ってたん?」と関西弁でやんわりと宮本に釘を刺す小田課長ですが、酔っぱらった宮本には馬の耳に念仏でした。「自宅通いのボンボンは生活を考えんでええなぁ」と同期入社の田島(柄本時生)にディスられ、店の中でつかみ合いのケンカに。「何か俺、デカいことやりたいんです~!」と居酒屋で叫ぶ宮本は自己チューな大バカ野郎です。

 翌朝、二日酔い状態で出社する宮本。同僚たちに向かって「デカいことやりたいんです」と叫んだ手前、田島が手渡すスポーツ飲料を飲んでまったりすることは宮本自身が許せません。ホームに立つ可憐な一輪の花・美沙子を見つけるや、ツカツカと歩み寄り、「僕の、僕の名前は宮本浩ですッ!!」とホーム中に響くようなハイトーンボイスで自己紹介するのでした。

 何かデカいこと=通勤電車で見かける美女に声を掛けること、というエピソードにほんの少しでも共感した人は、この先も『宮本から君へ』を見続けるでしょうし、まるで響かなかった人は、さっさとチャンネルを変えるか、SNSの世界に没頭することでしょう。

 まずはバットを振ってみなくちゃ、ボールは前には転がりません。ひどくかっこ悪いスイングでしたが、宮本の振ったバットにボールが当たり、運よくポテンヒットになりました。美沙子と毎朝、電車の中で世間話をする仲になったのです。出社前に超ラブリーなOLとお話ができるという、モテない男にとっては至高の喜びを手に入れた宮本でした。女神・美沙子はさらなる福音を宮本に与えます。「総務部の女の子が宮本さんに会ってみたいって」と合コンすることを持ち掛けてきたのです。俄然、やる気まんまんになる宮本、そして同僚の田島でした。

■美人OLが合コンに連れてきた女友達がつらかった!

 

 通勤中に出会う美人OLと仲良くなり、合コンにまでありつけるという美味しい展開。原作コミックが連載されたバブル時代のイケイケ感を彷彿させるじゃないですか。原作者の新井英樹自身も漫画家になる前は文具メーカーに勤めていたそうですが、バブル時代に流行したトレンディードラマのようなおしゃれな方向には、このドラマはこの先、間違っても転がりません。宮本たちは営業部の新人3人でこの合コンに臨みますが、そこで待っていたのは「女性幹事マックスの法則」でした。

 美人受付け嬢の美沙子がどんなかわいい友達を選抜して連れてくるのか? 浮かれ気分で渋谷の雑居ビル地下にある微妙な雰囲気のパブの扉を開けた宮本たちですが、美沙子が連れてきた女の子たちも微妙なランクでした。ひとりは乗りがよくて合コン向きですが、総務部の裕奈(三浦透子)は全身から暗いオーラを漂わせ、ねっとりとした視線を宮本に注ぐのでした。このメンバーの中では、どうしようもなく美沙子のルックスが際立ちます。無意識なのかもしれませんが、自分がいちばんかわいいことを美沙子はアピールしているようで、男性陣は一抹の侘しさを覚えるのでした。

 楽しいはずの合コンなのに、そこは男の度量の大きさが試される修練の場でした。懸命に場を盛り上げようとする田島。できれば美沙子と2人っきりになりたい宮本ですが、「宮本さんに会ってみたい」と言い出した裕奈のフォローもしなくてはいけません。口数が少ない裕奈は彼女なりに気を遣って、宮本たちのグラスにピッチャーからビールを注ぎ足そうとしますのが、その度にグラスを倒してしまい、「ごめんなさい、ごめんなさい」と泣きながら謝るばかりです。いましたよね、クラスに1人はマジメなんだけど、すっごい不器用な子が。要領よく人生を生きることができない裕奈は、社会人になってもつらい思いをしているのではないでしょうか。宮本や田島たちは、まるで鏡を見せられているようなブルーな気分です。宮本たちももっと要領がよければ、大きな会社に入社していたでしょうから。男の欲望としては美沙子に向かいながらも、心の中では裕奈にシンパシーを感じてしまう宮本でした。

 盛り下がり気味の合コンの雰囲気を変えようと、パブの店長がサービスで大きな鉢に入ったフルーツポンチを運んできました。ここでもやっぱり裕奈がやらかしてしまいます。宮本に上着を渡そうとする裕奈でしたが、宮本の上着のポケットに入っていた小さな包みを誤ってフルーツポンチの鉢の中に落としてしまいます。小さな包みは、「宮本」とサインペンで名前が書かれたコンドームでした。コンドームの包みだけが甘く濡れた、とってもしょっぱい合コンはこうして終わりを告げたのです。

 合コンの後もしばらくは美沙子や裕奈に振り回されることになる宮本ですが、やがて先輩営業マンの神保(松山ケンイチ)と一緒に得意先回りをするようになり、仕事の厳しさと面白さを同時に学ぶようになっていきます。さらには、年上の女性・靖子(蒼井優)との出逢いも待っています。原作コミックでは、宮本と靖子との濃厚なSEXシーンが激しい筆使いで描かれ、思わず読者が引いてしまったほどです。ベッドの上でもやっぱり宮本はクドくて、暑苦しい男なのです。R18映画『愛の渦』(14)でリアルなSEXシーンを見せつけた池松壮亮と、最近は『オーバー・フェンス』(16)や『彼女がその名を知らない鳥たち』(17)で濡れ場に挑んでいる蒼井優ですが、テレビ版『宮本から君へ』ではどこまで描いてみせるのか興味津々です。

 いかがだったでしょうか、『宮本から君へ』第1話。見終わった視聴者は「だせえよ、宮本」「コンドームをネタに渾身のギャグで切り返せよ」と宮本に向かって叫びたくなったんじゃないでしょうか。そうです、社会人1年生の宮本は実はかつての視聴者自身なのです。仕事や恋愛に失敗した恥ずかしい体験の数々を、テレビの中の宮本はこれからも生々しく再現してみせるのです。あのとき彼女にもっと違う言葉を掛けていれば、あの職場でもう少し要領よく立ち回っていたら……。忘れかけていた記憶のドロドロした部分を宮本は呼び起こすのです。やっぱり、宮本は超うざい奴です。これから、ひどく寝苦しい3カ月間になりそうです。
(文=長野辰次)

世界一うざい男・宮本はもう1人の自分なのか!? 恋も仕事も失敗だらけ『宮本から君へ』第1話

 常にクールでスマートでいることが求められる現代社会において、そこからいちばん遠い遠い存在が宮本浩という男です。新井英樹の同名コミックを原作にしたドラマ24『宮本から君へ』(テレビ東京系)の主人公・宮本浩は、とにかく暑苦しくて、面倒くさいことこの上ありません。中小企業に就職した社会人1年目の宮本は、恋に仕事に100%全力でぶつかり、そのたびに七転八倒します。そんな超うざいキャラクター・宮本役に、若手演技派の筆頭格である池松壮亮。脚本・演出が暴力青春映画『ディストラクション・ベイビーズ』(16)で注目を集めた新鋭・真利子哲也監督というタッグで、1クールにわたってオンエアされることに。モヤモヤモヤ~とした寝苦しい3カ月間になりそうですね。

 原作コミックは1990~94年に青年漫画誌「モーニング」(講談社)で連載され、バブル景気で浮かれまくっていた世相に、冷や水を差しまくるような異質な内容でした。小さな文具メーカーの営業部に配属された宮本(池松壮亮)の真っすぐすぎて、超かっこ悪い、痛~い青春の日々が描かれます。

 さて、テレビ版第1話のオープニング、駅のホームで電車を待つ若いOLの姿が映し出されます。宮本にとって憧れの女性となる甲田美沙子(華村あすか)の登場です。入社1年目で仕事が楽しくない宮本は、朝の通勤時に見かける美沙子だけが毎日の楽しみでした。電車の中で同僚たちとの会話を盗み聞きし、美沙子は大手自動車メーカーの受付嬢であることが判明。超美人な美沙子は、ちっぽけな文具メーカーに勤める宮本にとっては高嶺の花。さりげなく声を掛けたいけど、きっかけがつかめません。自分の持てる欲望と情熱をどう形にすればいいのか分からない宮本浩、22歳の新人営業マンでした。

 宮本のうざったさがむっちりみっちりと描かれたのが、職場の同僚たちと繰り出した居酒屋シーンでした。小田課長(星田英利)の面倒見のよさに甘え、愚痴をこぼしまくる宮本。「学校に行ってるうちはよかった。学校を出たら、夢も自信もなくなったなぁ~」と上司に向かってタメ口で愚痴るダメダメな宮本でした。「学校出たらから失う自信を、何か持ってたん?」と関西弁でやんわりと宮本に釘を刺す小田課長ですが、酔っぱらった宮本には馬の耳に念仏でした。「自宅通いのボンボンは生活を考えんでええなぁ」と同期入社の田島(柄本時生)にディスられ、店の中でつかみ合いのケンカに。「何か俺、デカいことやりたいんです~!」と居酒屋で叫ぶ宮本は自己チューな大バカ野郎です。

 翌朝、二日酔い状態で出社する宮本。同僚たちに向かって「デカいことやりたいんです」と叫んだ手前、田島が手渡すスポーツ飲料を飲んでまったりすることは宮本自身が許せません。ホームに立つ可憐な一輪の花・美沙子を見つけるや、ツカツカと歩み寄り、「僕の、僕の名前は宮本浩ですッ!!」とホーム中に響くようなハイトーンボイスで自己紹介するのでした。

 何かデカいこと=通勤電車で見かける美女に声を掛けること、というエピソードにほんの少しでも共感した人は、この先も『宮本から君へ』を見続けるでしょうし、まるで響かなかった人は、さっさとチャンネルを変えるか、SNSの世界に没頭することでしょう。

 まずはバットを振ってみなくちゃ、ボールは前には転がりません。ひどくかっこ悪いスイングでしたが、宮本の振ったバットにボールが当たり、運よくポテンヒットになりました。美沙子と毎朝、電車の中で世間話をする仲になったのです。出社前に超ラブリーなOLとお話ができるという、モテない男にとっては至高の喜びを手に入れた宮本でした。女神・美沙子はさらなる福音を宮本に与えます。「総務部の女の子が宮本さんに会ってみたいって」と合コンすることを持ち掛けてきたのです。俄然、やる気まんまんになる宮本、そして同僚の田島でした。

■美人OLが合コンに連れてきた女友達がつらかった!

 

 通勤中に出会う美人OLと仲良くなり、合コンにまでありつけるという美味しい展開。原作コミックが連載されたバブル時代のイケイケ感を彷彿させるじゃないですか。原作者の新井英樹自身も漫画家になる前は文具メーカーに勤めていたそうですが、バブル時代に流行したトレンディードラマのようなおしゃれな方向には、このドラマはこの先、間違っても転がりません。宮本たちは営業部の新人3人でこの合コンに臨みますが、そこで待っていたのは「女性幹事マックスの法則」でした。

 美人受付け嬢の美沙子がどんなかわいい友達を選抜して連れてくるのか? 浮かれ気分で渋谷の雑居ビル地下にある微妙な雰囲気のパブの扉を開けた宮本たちですが、美沙子が連れてきた女の子たちも微妙なランクでした。ひとりは乗りがよくて合コン向きですが、総務部の裕奈(三浦透子)は全身から暗いオーラを漂わせ、ねっとりとした視線を宮本に注ぐのでした。このメンバーの中では、どうしようもなく美沙子のルックスが際立ちます。無意識なのかもしれませんが、自分がいちばんかわいいことを美沙子はアピールしているようで、男性陣は一抹の侘しさを覚えるのでした。

 楽しいはずの合コンなのに、そこは男の度量の大きさが試される修練の場でした。懸命に場を盛り上げようとする田島。できれば美沙子と2人っきりになりたい宮本ですが、「宮本さんに会ってみたい」と言い出した裕奈のフォローもしなくてはいけません。口数が少ない裕奈は彼女なりに気を遣って、宮本たちのグラスにピッチャーからビールを注ぎ足そうとしますのが、その度にグラスを倒してしまい、「ごめんなさい、ごめんなさい」と泣きながら謝るばかりです。いましたよね、クラスに1人はマジメなんだけど、すっごい不器用な子が。要領よく人生を生きることができない裕奈は、社会人になってもつらい思いをしているのではないでしょうか。宮本や田島たちは、まるで鏡を見せられているようなブルーな気分です。宮本たちももっと要領がよければ、大きな会社に入社していたでしょうから。男の欲望としては美沙子に向かいながらも、心の中では裕奈にシンパシーを感じてしまう宮本でした。

 盛り下がり気味の合コンの雰囲気を変えようと、パブの店長がサービスで大きな鉢に入ったフルーツポンチを運んできました。ここでもやっぱり裕奈がやらかしてしまいます。宮本に上着を渡そうとする裕奈でしたが、宮本の上着のポケットに入っていた小さな包みを誤ってフルーツポンチの鉢の中に落としてしまいます。小さな包みは、「宮本」とサインペンで名前が書かれたコンドームでした。コンドームの包みだけが甘く濡れた、とってもしょっぱい合コンはこうして終わりを告げたのです。

 合コンの後もしばらくは美沙子や裕奈に振り回されることになる宮本ですが、やがて先輩営業マンの神保(松山ケンイチ)と一緒に得意先回りをするようになり、仕事の厳しさと面白さを同時に学ぶようになっていきます。さらには、年上の女性・靖子(蒼井優)との出逢いも待っています。原作コミックでは、宮本と靖子との濃厚なSEXシーンが激しい筆使いで描かれ、思わず読者が引いてしまったほどです。ベッドの上でもやっぱり宮本はクドくて、暑苦しい男なのです。R18映画『愛の渦』(14)でリアルなSEXシーンを見せつけた池松壮亮と、最近は『オーバー・フェンス』(16)や『彼女がその名を知らない鳥たち』(17)で濡れ場に挑んでいる蒼井優ですが、テレビ版『宮本から君へ』ではどこまで描いてみせるのか興味津々です。

 いかがだったでしょうか、『宮本から君へ』第1話。見終わった視聴者は「だせえよ、宮本」「コンドームをネタに渾身のギャグで切り返せよ」と宮本に向かって叫びたくなったんじゃないでしょうか。そうです、社会人1年生の宮本は実はかつての視聴者自身なのです。仕事や恋愛に失敗した恥ずかしい体験の数々を、テレビの中の宮本はこれからも生々しく再現してみせるのです。あのとき彼女にもっと違う言葉を掛けていれば、あの職場でもう少し要領よく立ち回っていたら……。忘れかけていた記憶のドロドロした部分を宮本は呼び起こすのです。やっぱり、宮本は超うざい奴です。これから、ひどく寝苦しい3カ月間になりそうです。
(文=長野辰次)

吉高由里子の“まっすぐ演技”が災いして、主人公に「検事無資格疑惑」が浮上!? 『正義のセ』第1話

 吉高由里子が、生真面目で理不尽なことが許せない性格の新人検事を演じているドラマ『正義のセ』が4月11日から放送スタート。第1話の平均視聴率は11.0%(ビデオリサーチ調べ、関東平均)と、2ケタの幸先良い滑り出しとなりました。

 このドラマはタレントでエッセイスト・阿川佐和子さんの同名小説が原作。阿川さんは「ゴルフでたまたま出会った女性検事に興味を持ち、それをきっかけに何人もの女性検事に会い綿密に取材して書き上げた」と語っていただけに、期待度も高い。また、前作の気分がどんよりしたドラマ『anone』とは打って変わり、“痛快お仕事ドラマ”ということで、「『anone』で水曜日の夜がつらかった」という人よ、戻って来い!……と願うばかりです。

 では前置きはこれくらいにして、早速、第1話のあらすじを振り返ってみましょう。

■若手女性検事が“正義”を貫くために大奮闘!

 主人公の竹村凜々子(吉高)は、大阪赴任を経てこの春から横浜地方検察港南支部に赴任する2年目の検事。赴任初日から5件の案件を担当することになった凜々子だが、いざ被疑者の取調べをすると、自らの喜怒哀楽が入ってしまい仕事にならず。バディを組む事務官・相原勉(安田顕)も呆れ顔。さらに、同僚の検事で港南支部のエース・大塚仁志(三浦翔平)からも「そんなんだから被疑者になめられるんだよ」と一喝されてしまう。

 そんな中、凜々子は傷害事件を担当することに。被害者である建設会社勤務の向井俊哉(浅利陽介)は、上司の恩田徹(石黒賢)から路地裏で暴行を受け、その弾みで階段から転げ落ち、全治2カ月の大ケガを負ってしまい被害届を出したというものだった。

 凜々子は「ひどいパワハラ上司だ」と憤りつつ恩田の取調べを行うが、恩田の姿は穏やか。それだけではなく、「向井が私を貶めようとしている」と話し、凜々子は困惑してしまう。

 翌日、向井の話も聞こうと向井が入院する病院を訪れた凜々子と大塚。向井は「日常的に恩田からパワハラを受けていた」と告白し、事件当日恩田に「告発する」と宣言したところ、事件が起こってしまったと説明。向井の妻・美織(森カンナ)が、「みんな信じてくれないけど、警察なら……」と被害届を出した経緯を語ると、凜々子は涙を堪えながら「私は信じます!」と宣言。病室を後にし、すぐさま向井と恩田が勤務する建設会社に向かった。

 事件当日に一緒にいた同僚・田中啓介(六角慎司)に話を聞くと、「恩田さんの証言通り」の一点張り。しかし、凜々子が「嘘をつくと刑法に触れる」と言ったところ、挙動不審になり何か隠している様子だった。

 事務所に戻り、凜々子は「嘘をついているのは恩田と田中だ」と言い張るが、大塚は「それはあなたの感想だ」と反論。それでも、「絶対にそうだ!」と言い張る凜々子に、支部長・梅宮譲(寺脇康文)は「起訴するだけの証拠を見つけるよう」にと促した。

 翌日、美織が凜々子のもとを訪れ、向井のもとを訪れた恩田が「被害届を取り下げれば、会社に残れるようにしてやる」と告げたので、それを呑んで被害届を取り下げると語った。それを聞き、ショックで何も言えなくなった凜々子だが、事務所に戻ると「今日1日で恩田が有罪の証拠を探してくるから時間をください」と同僚たちに頭を下げ、大塚とともに事件現場へ向かった。

 事件現場で通行人に聞き込みをする2人だが、夜になっても有力な証言は得られず。ダメかとあきらめかけたときに、凜々子はタクシーのドライブレコーダーに3人が映っていれば」とひらめき、タクシー会社に片っ端から聞き込み。すると、事件現場近くの繁華街を歩く3人が映っている証拠動画が見つかる。

 その翌日、凜々子と大塚は恩田を事務所に呼び、再度取調べを始める。シラを切り続ける恩田に昨晩見つけた証拠画像を見せ、さらに恩田が発注先から賄賂をもらっていた証拠も突きつける2人。それでもシラを切る恩田に2人は「田中も賄賂をもらっていたと白状した」と明かし、やっと恩田は白状。だが、それでも「自分の人生が台無しになった」と向井をののしり、暴行の事実なんてどうでも良いと言い張る恩田に、凜々子は「どうでも良いことじゃないです!」と立ち上って恩田に説教。すると、恩田は力なく椅子に座り込んだ。

 こうして起訴は梅宮によって受理。喜びのあまり、屋上で「よっしゃー!」と叫ぶ凜々子であった、という第1話でした。

■吉高の演技がひどすぎて“検事無資格疑惑”が浮上!

 同作の演出は、吉高主演で2017年1月期に放送された『タラレバ娘』(同)の演出を手がけた南雲聖一氏。さらに、脚本も『タラレバ娘』を手がけた松本裕子氏。となると、やっぱり吉高の演技も『タラレバ娘』と同じ演技で、見ていて新鮮さにかけました。

『タラレバ娘』放送時にも言われていましたが、喜怒哀楽が入りやすい性格を表現しようと、“立ち上がって怒る”“悲しそうな顔”などを見せるのですが、それがいちいち大げさ過ぎ。見ているこっちが恥ずかしくなるぐらいです。

 また、『ガリレオ』(フジテレビ系)での吉高演技で言われていたように、甲高い声が多く耳障りな印象が。さらに、セリフのしゃべり方からは幼稚さが感じられてきてしまい……。

 上記の2点が相まって、検事役に説得力がありません。「この子、本当に司法試験通ったのか?」と疑問を感じてしまい、子どもに「検事って正義感あれば誰でもなれるんだ~」と、間違った解釈を持たせてしまうように思えます。

 吉高の“アホ検事ぶり”に、さらに拍車をかけるのが衣装です。周りの検事や事務官はしっかりとスーツを着ているのにもかかわらず、凜々子の服装がジャケットを羽織っているものの、チェックのロングスカートにショートブーツ、さらにアーガイル柄の靴下というカジュアルな服装で検事感がまるでない。以前、『クローズアップ現代』(NHK)で実際に検事と働く女性に密着していた放送を見たのですが、女性たちはみな、中のトップスはラフだけどきちんとしたスーツを着用していました。そのため、これでは「どっかのOLか! 検事なめんな!」とツッコミたくなるのです。

 今話では裁判所のシーンがなかったのでこれでもまあ良かったですが、今後裁判シーンがあった際、このままの格好でいくのでしょうか? 今後どうなるのか、衣装にも注目するのもよいかと思います。

■視聴者に一切深読みさせてくれない“正義へ一直線”ストーリー

 今回の事件は上司からの部下へのパワハラという内容だったのですが、そのパワハラの内容があまりにもひどい。部下の頭に水をかけたり、居酒屋でお猪口を投げつける。さらに殴って階段から落とすなど、すさまじい暴力が。普通に見て、これはパワハラの領域を超えているでしょと思う上、会社はまったく気にしておらず、コンプライアンスをガン無視。現実社会では考えられないストーリーです。

「もしかして、主人公の凜々子の感情を正当化しようと、 “悪人は徹底的に悪く”描いてしまっているのか」と勘ぐってしまいます。それに、ひどすぎるパワハラをみせることで、大塚の「客観的に考えろ」という言葉が間違っているように聞こえ、さらに視聴者にストーリーを深読みさせず、まるで「お前らは凜々子の活躍ぶりだけ見てろ」と言われているようです。

 また、恩田を有罪にするべく証拠を見つけに行くシーンでは、あまりにも簡単に見つかりすぎて、「そんなに簡単にみつかるかーい!」と思わずツッコミを入れたくなってしまいそうです。この部分が薄いため、ドラマ全体が“凜々子の喜怒哀楽ショー”になっていて本来の“お仕事ドラマ”的要素がまったくありませんでした。

■「あれ、なんか懐かしい……」と思わせてくれる脚本と美術セット

 “主人公の女性検事とバディを組むのが男性事務官”、また“正義感が強く、思ったら突っ走っていくタイプの主人公”さらに先に述べたように“悪人は徹底的に悪く”といった内容だった同作。「あれあれ……どっかで見たことあるな」と思った方もいるはず。そうです! 木村拓哉が主演のドラマ『HERO』(フジテレビ系)にそっくりな内容なのです。

 もっと言えば、『HERO』では、証拠を見つけるまで二転三転あり、視聴者もテレビ喰らいついて見ていたものです。しかし、同作はその部分がさらっとしているため、本当に見ていてつまらない。その上、後半にあった恩田の取調べシーンで、視聴者も知らない賄賂の証拠が突如出てきてしまい……(笑)。「こ、これは一体……何?」となった視聴者もいたはずです。

 また、美術セットもすごい。事務所の中の取調室が『HERO』もろパクリなんです。そして、撮影アングルも画面向かって左右に検事と被疑者、さらに真ん中に事務官。さらに、画面の切り替わりも似ている。もしかしたら女版『HERO』を目指しているのかも!?

 以上、第1話の批評でした。次回は凜々子が初めて殺人事件を担当するとのこと。初回平均視聴率11.0%が上がるのか、下がるのか。第2話もお楽しみに。

(文=どらまっ子KOROちゃん)

吉高由里子の“まっすぐ演技”が災いして、主人公に「検事無資格疑惑」が浮上!? 『正義のセ』第1話

 吉高由里子が、生真面目で理不尽なことが許せない性格の新人検事を演じているドラマ『正義のセ』が4月11日から放送スタート。第1話の平均視聴率は11.0%(ビデオリサーチ調べ、関東平均)と、2ケタの幸先良い滑り出しとなりました。

 このドラマはタレントでエッセイスト・阿川佐和子さんの同名小説が原作。阿川さんは「ゴルフでたまたま出会った女性検事に興味を持ち、それをきっかけに何人もの女性検事に会い綿密に取材して書き上げた」と語っていただけに、期待度も高い。また、前作の気分がどんよりしたドラマ『anone』とは打って変わり、“痛快お仕事ドラマ”ということで、「『anone』で水曜日の夜がつらかった」という人よ、戻って来い!……と願うばかりです。

 では前置きはこれくらいにして、早速、第1話のあらすじを振り返ってみましょう。

■若手女性検事が“正義”を貫くために大奮闘!

 主人公の竹村凜々子(吉高)は、大阪赴任を経てこの春から横浜地方検察港南支部に赴任する2年目の検事。赴任初日から5件の案件を担当することになった凜々子だが、いざ被疑者の取調べをすると、自らの喜怒哀楽が入ってしまい仕事にならず。バディを組む事務官・相原勉(安田顕)も呆れ顔。さらに、同僚の検事で港南支部のエース・大塚仁志(三浦翔平)からも「そんなんだから被疑者になめられるんだよ」と一喝されてしまう。

 そんな中、凜々子は傷害事件を担当することに。被害者である建設会社勤務の向井俊哉(浅利陽介)は、上司の恩田徹(石黒賢)から路地裏で暴行を受け、その弾みで階段から転げ落ち、全治2カ月の大ケガを負ってしまい被害届を出したというものだった。

 凜々子は「ひどいパワハラ上司だ」と憤りつつ恩田の取調べを行うが、恩田の姿は穏やか。それだけではなく、「向井が私を貶めようとしている」と話し、凜々子は困惑してしまう。

 翌日、向井の話も聞こうと向井が入院する病院を訪れた凜々子と大塚。向井は「日常的に恩田からパワハラを受けていた」と告白し、事件当日恩田に「告発する」と宣言したところ、事件が起こってしまったと説明。向井の妻・美織(森カンナ)が、「みんな信じてくれないけど、警察なら……」と被害届を出した経緯を語ると、凜々子は涙を堪えながら「私は信じます!」と宣言。病室を後にし、すぐさま向井と恩田が勤務する建設会社に向かった。

 事件当日に一緒にいた同僚・田中啓介(六角慎司)に話を聞くと、「恩田さんの証言通り」の一点張り。しかし、凜々子が「嘘をつくと刑法に触れる」と言ったところ、挙動不審になり何か隠している様子だった。

 事務所に戻り、凜々子は「嘘をついているのは恩田と田中だ」と言い張るが、大塚は「それはあなたの感想だ」と反論。それでも、「絶対にそうだ!」と言い張る凜々子に、支部長・梅宮譲(寺脇康文)は「起訴するだけの証拠を見つけるよう」にと促した。

 翌日、美織が凜々子のもとを訪れ、向井のもとを訪れた恩田が「被害届を取り下げれば、会社に残れるようにしてやる」と告げたので、それを呑んで被害届を取り下げると語った。それを聞き、ショックで何も言えなくなった凜々子だが、事務所に戻ると「今日1日で恩田が有罪の証拠を探してくるから時間をください」と同僚たちに頭を下げ、大塚とともに事件現場へ向かった。

 事件現場で通行人に聞き込みをする2人だが、夜になっても有力な証言は得られず。ダメかとあきらめかけたときに、凜々子はタクシーのドライブレコーダーに3人が映っていれば」とひらめき、タクシー会社に片っ端から聞き込み。すると、事件現場近くの繁華街を歩く3人が映っている証拠動画が見つかる。

 その翌日、凜々子と大塚は恩田を事務所に呼び、再度取調べを始める。シラを切り続ける恩田に昨晩見つけた証拠画像を見せ、さらに恩田が発注先から賄賂をもらっていた証拠も突きつける2人。それでもシラを切る恩田に2人は「田中も賄賂をもらっていたと白状した」と明かし、やっと恩田は白状。だが、それでも「自分の人生が台無しになった」と向井をののしり、暴行の事実なんてどうでも良いと言い張る恩田に、凜々子は「どうでも良いことじゃないです!」と立ち上って恩田に説教。すると、恩田は力なく椅子に座り込んだ。

 こうして起訴は梅宮によって受理。喜びのあまり、屋上で「よっしゃー!」と叫ぶ凜々子であった、という第1話でした。

■吉高の演技がひどすぎて“検事無資格疑惑”が浮上!

 同作の演出は、吉高主演で2017年1月期に放送された『タラレバ娘』(同)の演出を手がけた南雲聖一氏。さらに、脚本も『タラレバ娘』を手がけた松本裕子氏。となると、やっぱり吉高の演技も『タラレバ娘』と同じ演技で、見ていて新鮮さにかけました。

『タラレバ娘』放送時にも言われていましたが、喜怒哀楽が入りやすい性格を表現しようと、“立ち上がって怒る”“悲しそうな顔”などを見せるのですが、それがいちいち大げさ過ぎ。見ているこっちが恥ずかしくなるぐらいです。

 また、『ガリレオ』(フジテレビ系)での吉高演技で言われていたように、甲高い声が多く耳障りな印象が。さらに、セリフのしゃべり方からは幼稚さが感じられてきてしまい……。

 上記の2点が相まって、検事役に説得力がありません。「この子、本当に司法試験通ったのか?」と疑問を感じてしまい、子どもに「検事って正義感あれば誰でもなれるんだ~」と、間違った解釈を持たせてしまうように思えます。

 吉高の“アホ検事ぶり”に、さらに拍車をかけるのが衣装です。周りの検事や事務官はしっかりとスーツを着ているのにもかかわらず、凜々子の服装がジャケットを羽織っているものの、チェックのロングスカートにショートブーツ、さらにアーガイル柄の靴下というカジュアルな服装で検事感がまるでない。以前、『クローズアップ現代』(NHK)で実際に検事と働く女性に密着していた放送を見たのですが、女性たちはみな、中のトップスはラフだけどきちんとしたスーツを着用していました。そのため、これでは「どっかのOLか! 検事なめんな!」とツッコミたくなるのです。

 今話では裁判所のシーンがなかったのでこれでもまあ良かったですが、今後裁判シーンがあった際、このままの格好でいくのでしょうか? 今後どうなるのか、衣装にも注目するのもよいかと思います。

■視聴者に一切深読みさせてくれない“正義へ一直線”ストーリー

 今回の事件は上司からの部下へのパワハラという内容だったのですが、そのパワハラの内容があまりにもひどい。部下の頭に水をかけたり、居酒屋でお猪口を投げつける。さらに殴って階段から落とすなど、すさまじい暴力が。普通に見て、これはパワハラの領域を超えているでしょと思う上、会社はまったく気にしておらず、コンプライアンスをガン無視。現実社会では考えられないストーリーです。

「もしかして、主人公の凜々子の感情を正当化しようと、 “悪人は徹底的に悪く”描いてしまっているのか」と勘ぐってしまいます。それに、ひどすぎるパワハラをみせることで、大塚の「客観的に考えろ」という言葉が間違っているように聞こえ、さらに視聴者にストーリーを深読みさせず、まるで「お前らは凜々子の活躍ぶりだけ見てろ」と言われているようです。

 また、恩田を有罪にするべく証拠を見つけに行くシーンでは、あまりにも簡単に見つかりすぎて、「そんなに簡単にみつかるかーい!」と思わずツッコミを入れたくなってしまいそうです。この部分が薄いため、ドラマ全体が“凜々子の喜怒哀楽ショー”になっていて本来の“お仕事ドラマ”的要素がまったくありませんでした。

■「あれ、なんか懐かしい……」と思わせてくれる脚本と美術セット

 “主人公の女性検事とバディを組むのが男性事務官”、また“正義感が強く、思ったら突っ走っていくタイプの主人公”さらに先に述べたように“悪人は徹底的に悪く”といった内容だった同作。「あれあれ……どっかで見たことあるな」と思った方もいるはず。そうです! 木村拓哉が主演のドラマ『HERO』(フジテレビ系)にそっくりな内容なのです。

 もっと言えば、『HERO』では、証拠を見つけるまで二転三転あり、視聴者もテレビ喰らいついて見ていたものです。しかし、同作はその部分がさらっとしているため、本当に見ていてつまらない。その上、後半にあった恩田の取調べシーンで、視聴者も知らない賄賂の証拠が突如出てきてしまい……(笑)。「こ、これは一体……何?」となった視聴者もいたはずです。

 また、美術セットもすごい。事務所の中の取調室が『HERO』もろパクリなんです。そして、撮影アングルも画面向かって左右に検事と被疑者、さらに真ん中に事務官。さらに、画面の切り替わりも似ている。もしかしたら女版『HERO』を目指しているのかも!?

 以上、第1話の批評でした。次回は凜々子が初めて殺人事件を担当するとのこと。初回平均視聴率11.0%が上がるのか、下がるのか。第2話もお楽しみに。

(文=どらまっ子KOROちゃん)

新ドラマ『シグナル』初主演・坂口健太郎のセリフと演技が大仰すぎてコント化……

 塩顔男子の代表格ともいえる坂口健太郎が連続ドラマ初主演を務める『シグナル 長期未解決事件捜査班』(フジテレビ系)の第1話が10日に放送され、平均視聴率9.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を獲得。まずまずのスタートを切りました。

 城西警察署地域課所属・南山田交番勤務の警察官・三枝健人(坂口健太郎)は、小学1年生の時、同じ学校に通っていた少女・田代綾香が誘拐・殺害される直前、犯人らしき女性を目撃。しかし警察は、右手親指の指紋が検出されたことなどから、犯人を25歳の男性・橋本啓介と断定し、捜査を進めます。

 やがて月日がたち、橋本は逮捕されぬまま、あと数日で時効を迎えることに。そんなある日、健人は職場のゴミ袋の中から無線機の声が聞こえることに気づき、応答します。

 その声の主は、過去に城西警察署刑事課に所属していた刑事の大山剛志(北村一輝)。大山は健人のことを“警部補”と呼び、閉鎖された谷原記念病院の通風孔内に、橋本の首吊り死体があることを発見したと伝えてきます。

 やがて、大山が何者かに襲撃されたような物音が聞こえたかと思うと、交信は断絶。しかもよく見ると、無線機には電池が入っていない。不思議な現象に首をかしげる健人ですが、とりあえず病院へ足を運んでみることに。すると、通風孔の中に白骨死体があるのを発見するのです。

 その白骨は橋本のものであることが判明。時効まで残り24時間を切ったタイミングだったため、警視庁は橋本の自殺ということで事件を処理することに決めます。

 しかし、橋本の死体からは右手の親指が欠損しているため、健人は、真犯人の女性が橋本に罪をなすりつけて殺したのだと臆測。犯人が慌てて行動しボロを出すことを狙い、マスコミに向かって「決定的な証拠がある」と訴えるのです。

 するとその狙い通り、看護師の吉本圭子(長谷川京子)から同僚の前川穂波という女性が怪しいと連絡が入ります。穂波は以前、谷原記念病院に勤務していたことがあるのですが、健人が出たニュース映像を見て、突然休暇をとり函館へ旅立ったというのです。

 その通報を受け、警察が穂波の職場のロッカーを調べたところ、時効までの日をカウントダウンするカレンダーを発見。これは犯人に間違いないと踏んだ健人は、函館にいる穂波をすぐさま任意同行するよう要請します。

 穂波の事情聴取は、城西警察署刑事課の刑事・桜井美咲(吉瀬美智子)が担当することに。しかし、その様子を見ていた健人は、違和感を覚えます。小学生の時に目撃した犯人らしき女性は、派手に着飾っていた。それなのに、穂波の身なりは地味なのです。

 健人の予感は的中。実は真犯人は圭子だったのです。自分のロッカーを穂波のものだと偽り、罪をなすりつけた。穂波の誤認逮捕を報じるマスコミが警察署前に押し寄せる中、健人は悔しさを滲ませます。時効まであと1時間を切り、もはやここまでか……。

 しかし、独自のプロファイリングによって、圭子が自己顕示欲の強い女性だと分析していた健人は、野次馬の中に紛れているのではないかと予想。そのとおり、人ごみの中に身を隠していた圭子を美咲が捕らえたところで今回は終了となりました。

 原作は2016年に韓国で放送され、高視聴率を獲得したドラマということで放送前から注目度が高かった本作。坂口の滑舌が悪かったり、表情の変化が乏しかったりといったマイナス・ポイントはあるものの、前半部分では無線機や真犯人の謎、サスペンス効果抜群のカット割りなど、「面白い展開になるのでは?」と、期待を抱かせてくれる雰囲気が感じられました。

 けれど、白骨死体が発見された途端、あまりに急展開となり、見てるこちらは置いてけぼり状態。犯人に迫っていく過程で、健人が興奮を抑えきれずにやたらとハァハァ息遣い荒くなっていくのですが、ちょっと落ち着けよと言いたくなる。下っ端警官が出しゃばりすぎだろ、とたしなめたくもなりました。

 で、まんまと圭子のワナにはまり、穂波を誤認逮捕したことに気づいた時には、「犯人は、逃亡するハズだという我々の思い込みを利用したんだ!」と悔しさ全開の演技を見せるのですが、「思い込みをしたのは我々ではなくお前だろ!」とツッコみたくなりました。

 さらに、野次馬の中に圭子がいると気づいた時には、「このタイミング、まさに今ここで見てる!」と、もはやコントかと思えるほどの大仰なセリフと芝居。この先、健人のキャラクターと坂口の演技に磨きがかかっていかなければ、このドラマかなり苦戦するのではないかな、というのが率直な意見です。

 ただ、大山の安否だったり、“23時23分になったらつながる”という無線機の謎、時効成立まで40分を残しての圭子の事情聴取など、今後の展開が気になる部分もあるので、主役の成長に期待しつつ次回以降も見守っていきたいと思います。
(文=大羽鴨乃)

新ドラマ『シグナル』初主演・坂口健太郎のセリフと演技が大仰すぎてコント化……

 塩顔男子の代表格ともいえる坂口健太郎が連続ドラマ初主演を務める『シグナル 長期未解決事件捜査班』(フジテレビ系)の第1話が10日に放送され、平均視聴率9.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を獲得。まずまずのスタートを切りました。

 城西警察署地域課所属・南山田交番勤務の警察官・三枝健人(坂口健太郎)は、小学1年生の時、同じ学校に通っていた少女・田代綾香が誘拐・殺害される直前、犯人らしき女性を目撃。しかし警察は、右手親指の指紋が検出されたことなどから、犯人を25歳の男性・橋本啓介と断定し、捜査を進めます。

 やがて月日がたち、橋本は逮捕されぬまま、あと数日で時効を迎えることに。そんなある日、健人は職場のゴミ袋の中から無線機の声が聞こえることに気づき、応答します。

 その声の主は、過去に城西警察署刑事課に所属していた刑事の大山剛志(北村一輝)。大山は健人のことを“警部補”と呼び、閉鎖された谷原記念病院の通風孔内に、橋本の首吊り死体があることを発見したと伝えてきます。

 やがて、大山が何者かに襲撃されたような物音が聞こえたかと思うと、交信は断絶。しかもよく見ると、無線機には電池が入っていない。不思議な現象に首をかしげる健人ですが、とりあえず病院へ足を運んでみることに。すると、通風孔の中に白骨死体があるのを発見するのです。

 その白骨は橋本のものであることが判明。時効まで残り24時間を切ったタイミングだったため、警視庁は橋本の自殺ということで事件を処理することに決めます。

 しかし、橋本の死体からは右手の親指が欠損しているため、健人は、真犯人の女性が橋本に罪をなすりつけて殺したのだと臆測。犯人が慌てて行動しボロを出すことを狙い、マスコミに向かって「決定的な証拠がある」と訴えるのです。

 するとその狙い通り、看護師の吉本圭子(長谷川京子)から同僚の前川穂波という女性が怪しいと連絡が入ります。穂波は以前、谷原記念病院に勤務していたことがあるのですが、健人が出たニュース映像を見て、突然休暇をとり函館へ旅立ったというのです。

 その通報を受け、警察が穂波の職場のロッカーを調べたところ、時効までの日をカウントダウンするカレンダーを発見。これは犯人に間違いないと踏んだ健人は、函館にいる穂波をすぐさま任意同行するよう要請します。

 穂波の事情聴取は、城西警察署刑事課の刑事・桜井美咲(吉瀬美智子)が担当することに。しかし、その様子を見ていた健人は、違和感を覚えます。小学生の時に目撃した犯人らしき女性は、派手に着飾っていた。それなのに、穂波の身なりは地味なのです。

 健人の予感は的中。実は真犯人は圭子だったのです。自分のロッカーを穂波のものだと偽り、罪をなすりつけた。穂波の誤認逮捕を報じるマスコミが警察署前に押し寄せる中、健人は悔しさを滲ませます。時効まであと1時間を切り、もはやここまでか……。

 しかし、独自のプロファイリングによって、圭子が自己顕示欲の強い女性だと分析していた健人は、野次馬の中に紛れているのではないかと予想。そのとおり、人ごみの中に身を隠していた圭子を美咲が捕らえたところで今回は終了となりました。

 原作は2016年に韓国で放送され、高視聴率を獲得したドラマということで放送前から注目度が高かった本作。坂口の滑舌が悪かったり、表情の変化が乏しかったりといったマイナス・ポイントはあるものの、前半部分では無線機や真犯人の謎、サスペンス効果抜群のカット割りなど、「面白い展開になるのでは?」と、期待を抱かせてくれる雰囲気が感じられました。

 けれど、白骨死体が発見された途端、あまりに急展開となり、見てるこちらは置いてけぼり状態。犯人に迫っていく過程で、健人が興奮を抑えきれずにやたらとハァハァ息遣い荒くなっていくのですが、ちょっと落ち着けよと言いたくなる。下っ端警官が出しゃばりすぎだろ、とたしなめたくもなりました。

 で、まんまと圭子のワナにはまり、穂波を誤認逮捕したことに気づいた時には、「犯人は、逃亡するハズだという我々の思い込みを利用したんだ!」と悔しさ全開の演技を見せるのですが、「思い込みをしたのは我々ではなくお前だろ!」とツッコみたくなりました。

 さらに、野次馬の中に圭子がいると気づいた時には、「このタイミング、まさに今ここで見てる!」と、もはやコントかと思えるほどの大仰なセリフと芝居。この先、健人のキャラクターと坂口の演技に磨きがかかっていかなければ、このドラマかなり苦戦するのではないかな、というのが率直な意見です。

 ただ、大山の安否だったり、“23時23分になったらつながる”という無線機の謎、時効成立まで40分を残しての圭子の事情聴取など、今後の展開が気になる部分もあるので、主役の成長に期待しつつ次回以降も見守っていきたいと思います。
(文=大羽鴨乃)

吉岡里帆演じるキョドコは死んでしまったのか!? 走馬灯のようにめぐる淡い幸せ『きみ棲み』最終話

 吉岡里帆が連続ドラマ初主演を果たした『きみが心に棲みついた』(TBS系)の最終回の視聴率は8.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)でした。後半では最も高い数字でしたが、全10話をとおして一度も10%台に乗せることはできませんでした。ヒット作とは呼べませんが、数字以上に吉岡演じるキョドコが心に棲みついてしまった視聴者も少なくないのではないでしょうか。『きみ棲み』最終話とキョドコ&星名がドラマ界に残したものについて振り返りたいと思います。

 第9話で漫画誌編集者の吉崎(桐谷健太)から別れを告げられた小川今日子(吉岡里帆)ことキョドコでした。恋愛相手に依存しているというのが、吉崎の言い分でした。シリーズ序盤のキョドコだったら、失恋のショックで会社も休んでいたはずですが、新ブランドの発売日が迫っていたのが幸いでした。仕事に打ち込むキョドコを見て、彼女をずっと見守ってきた先輩の堀田(瀬戸朝香)は「オガちゃん、変わったね」と温かい言葉を掛けるのでした。相性がまるで合わなかった八木(鈴木紗理奈)の「振った男に感謝やな」という憎まれ口にも「はい」と笑って返すことがキョドコはできるようになったのです。

 数々のパワハラ&セクハラがバレて停職処分となったゲス上司・星名(向井理)のいない職場で、キョドコはせっせと働きます。そんなとき、星名の姉・祥子(星野園美)が会社に電話を掛けてきます。星名の母(岡江久美子)が入院したので、星名に誰か連絡してほしいというものでした。

 星名とはすっぱり縁を切ったキョドコですが、自分の母親(中島ひろ子)に別離宣言した後ろめたさもあって、星名の母親が入院している病院へお見舞いに訪ねます。そんな余計な気遣いこそが、キョドコらしさです。病床の星名の母親が言った「優しいのね。あなたみたいな人があの子の周りにいるのなら、よかった」という言葉が胸に沁みるキョドコでした。

 タワーマンションの自宅で酒浸りの日々を送っていた星名に、キョドコは「お母さんに会いに行ってください」と電話で伝えますが、途中で切られてしまいます。結局、星名は母親の見舞いに行くことはありませんでした。新ブランドの発売日という晴れやかな日に、星名の母親はこの世を去るのでした。星名が完全に音信不通になったことに不吉な予感を感じたキョドコは、星名がひとりで行きそうな場所を探して回ります。星名はいました。大学の部室に篭って、練炭自殺をしようとしているところでした。

「キョドコかよ。あんただけだよ、このクソみたいな世界に。じゃあ、いいや。お前もつきあえよ」

 星名は父親を刺殺したのは母親ではなく、実は自分だったことをキョドコに打ち明け、キョドコとの心中を図るのでした。「星名さんをただ助けにきたんです」というキョドコでしたが、2人とも一酸化炭素中毒に陥り、お互いに心のキズを舐め合った大学の部室で重なるように倒れ込んでしまいます。

 

■ドラマを脇で支え続けたムロツヨシ。こちら側の人間に幸あれ!

 

 キョドコが目を覚ますと、そこは天国でした。というか、天国みたいなメルヘンワールドでした。別れたはずの吉崎がギリギリのところで現われ、病院へ搬送してくれたのです。キョドコが一度死んでからは、素晴しいことばかりが次々と起こります。星名は姿を消し、吉崎が担当した漫画家のスズキ先生(ムロツヨシ)は日本漫画大賞を受賞。その受賞パーティーの帰り道、吉崎は路上に転がっていた靴を拾います。見覚えのある靴でした。すっかり元気になったキョドコがまた盛大に路上でコケていたのです。灰かぶり姫のような悲惨な人生を歩んできたキョドコは、こうして無事に吉崎王子との再会を果たしたのでした。晴れてキョドコは純白のウェディングドレスに身を包み、幸せなエンディングを迎えます。結婚パーティーには仲の悪かった母親も出席し、キョドコとは恋敵だった飯田(石橋杏奈)や為末(田中真琴)も笑顔で参加しています。絵に描いたような大団円です。そして最後の最後に「Happy Wedding キョドコのクセに」とメッセージが添えられた星名からの花束が届くのでした。

 星名の練炭自殺騒ぎ以降、いっきに恋愛ファンタジーと化してしまった『きみ棲み』最終話でした。練炭自殺の巻き添えになったキョドコが、死ぬ間際に脳裏に浮かんだ妄想の世界なのかなと思ってしまうほど、キョドコにとってあまりに都合のいい幕切れです。まぁ、このくらいのハッピーエンドを用意しないと、キョドコの暗い人生を3か月間共にした視聴者も後味が悪いわけですけどね。

 ご都合主義で終わった最終話の中で眩しく輝いたのは、ドロドロの物語における一服の清涼剤としてコメディリリーフを務めてきたスズキ先生役のムロツヨシでした。キョドコをモデルにした『俺に届け 響け!』で漫画大賞を受賞したスズキ先生のスピーチは名言でした。

「この漫画は僕と同じような少数の、こちら側の人間の、淡々とした日常を描いたものです。普通から外れた変だと言われる人の、うれしいなぁとか、つらいなぁとか、まぁまぁだなぁとか、そんなことを思って生きている普通の人生です。最初は今の編集担当さんだけでした、分かろうとしてくれたのは。いや、分からなくても、彼が僕の味方でいてくれたから、僕はここまで描くことができたんです」

 スズキ先生にとって、編集担当の吉崎は恋人でもなければ、家族でもなく、仕事上の関係でしかありません。でも吉崎は仕事仲間として、親身になってスズキ先生と向き合い続けました。ドラマ版『きみ棲み』のいちばんのテーマが、スズキ先生のこのスピーチに凝縮されているようです。幼少期に家族の愛情を感じることができなかったキョドコと星名は、出会う人を自分のことを心から愛してくれる人か、そうでないかで選別していましたが、人と人との繋がり方はもっと多様で濃淡があっていいはずです。

 星名とキョドコが部室で倒れているのを救ったのは吉崎でしたが、その後ろにはバーテンの牧村(山岸門人)もいました。星名とキョドコがいそうな場所を思い出したのは、きっと牧村だったのでしょう。キョドコの校内ストリップを盗撮するなど、決して100%の善人ではない牧村ですが、かといって100%の悪人でもないわけです。「お前のことを一度も友達だと思ったことはない」と星名からも牧村は見下されていましたが、牧村は星名が100%の悪人ではないことを分かっていて、助けに走ったのです。

 ひとりの人間を悪人か善人かに簡単に分けられないように、人間の人生もどこからが幸せで、どこからが不幸かと線引きするのは難しいのではないでしょうか。善と悪も、幸と不幸も、とても微妙な紙一重の違いでしかないことをほのめかして『きみ棲み』全10話は終わりを告げるのでした。

 

■視聴者の心に棲みついたキョドコの正体は……?

 

 最後に『きみ棲み』がドラマ界に残したものについて考えてみたいと思います。視聴率的にはいまひとつだった『きみ棲み』ですが、2つの大きな鉱脈を探り当てたのではないでしょうか。ひとつは地上波テレビで、SMテイストなドラマが成立できたということ。吉岡里帆が下着姿やセミヌードになったことが話題となりましたが、吉岡の肌の露出以上に向井理との精神的なサド&マゾヒスティックな関係がドラマを盛り上げたように感じられます。大沢伸一のソロプロジェクトMONDO GROSSOが楽曲提供した「偽りのシンパシー」が流れると、職場が急にエロいムードになる展開は、大人の視聴者をゾクゾクさせるものがありました。

 TBSサイドは、ハリウッドが女性向けにつくったSM映画『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(15)っぽい世界を意識したのでしょう。ちなみにスズキ先生の描いた漫画『俺に届け 響け!』の作画・監修を担当したのはSMコメディ漫画『ナナとカオル』(白泉社)で知られる甘詰留太先生です。TBSが開発したソフトSM路線、深夜枠かBSドラマとして再挑戦すれば充分成功するのではないでしょうか。

 もうひとつ、『きみ棲み』が掘り当てた鉱脈は、アンチヒーローものには大きな可能性があるということです。向井理演じる星名が、暗い過去を封印して大学や企業内であくどい手を使いながら成り上がり人生を突き進むくだりは、松田優作主演のハードボイルド映画『蘇える金狼』(79)のようなピカレスクな魅力に溢れていました。

 大手芸能プロダクションが幅を利かせている現代のテレビ&映画界では、人気俳優たちの目標設定は、いい作品や面白い役に出会うことではなく、多くのCM契約を結ぶことになってしまっています。多くのCMに出るためには高視聴率ドラマに出演し、好感度の高いキャラクターを演じることが求められます。汚れ役や悪役に挑戦して、演技力を磨きたいという俳優本人の希望は、芸能プロダクションの方針にはなかなか反映されません。

 でも善人だらけのドラマほど、つまらないものはありません。NHKの朝ドラ『ゲゲゲの女房』のヒロインの夫役でブレイクした向井理ですが、同じく朝ドラ出身の国仲涼子と結婚し、いいタイミングでクセの強い星名役がオファーされました。女を利用するだけ利用して、ポイ捨てする星名は女性視聴者から嫌われて当然のゲスキャラクターでしたが、哀しい過去が多くの女性の母性本能を刺激するという非常に美味しい役となりました。星名のような二面性を持ったキャラクターは、今後のドラマでも大いにニーズがあるはずです。

 キョドコに振り回され続けた3カ月間でした。吉岡里帆演じるキョドコが幸せを手に入れてドラマは終わりを迎えましたが、視聴者の中には心の奥にもうひとりのキョドコの存在を感じている人もいるのではないでしょうか。キョドコはもしかしたら、視聴者の心に宿るトラウマのメタファーなのかもしれません。家族とずっと不仲だったり、学生時代の人間関係や別れた恋人のことを今も引き摺ってしまったり、みんなそれぞれ大なり小なりのキョドコを心に抱えているようです。そんなキョドコと、今後どう接すればいいのか。すごくうざいけれど、気になって仕方ない存在。その名はキョドコ。これからも長い長い付き合いとなりそうです。
(文=長野辰次)