『コンフィデンスマンJP』見飽きたフジの“内輪盛り上がり”……ファン以外は楽しめない最終回!?

 『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)、6月11日放送の最終話「コンフィデンスマン編」。

 詐欺に嫌気がさしたボクちゃん(東出昌大)は、ダー子(長澤まさみ)とリチャード(小日向文世)の元から去る。引っ越し屋の仕事を始めたボクちゃんは、新入りの従業員・鉢巻秀男(佐藤隆太)と出会う。半年前、鉢巻は結婚詐欺に遭っており、金をだまし取ったのがダー子とリチャードという疑惑が浮上。憤ったボクちゃんはダー子たちが隠れ住むホテルの一室に鉢巻を連れて行く。そこで鉢巻は本性をあらわし、引き連れてきたマフィアとともにダー子たち3人を監禁。鉢巻の真の目的は、中国系マフィアであった父親・孫秀波(麿赤兒)が騙し取られた15億円をダー子たちから取り戻すことだった。

 以上が最終話のつかみ。ラストには大どんでん返しが待っており、SNSでもネットニュースでも「すごい!」「騙された!」などの絶賛の声が相次いだ。

 しかし、本当に賞賛に値する最終回と言えるのだろうか? 喜んでいるのは作品のファンだけではないのか? 最終回で初めて見た視聴者でもついていける内容だったのか?

「目に見えるものが真実とは限らない」という本作のコンセプトになぞらえ、最終話「コンフィデンスマン編」を批判的な目線で振り返りたい。

(これまでのレビューはこちらから)

■出た出た! 出ました! フジお得意の内輪盛り上がり

 賞賛されたラストのどんでん返しをネタバレすると、「最終話は第1話よりも前の物語でした」という時系列のトリック。【毎話ダー子たちの食事を配膳する外国人男性がマフィアの中にいた】や、【ボクちゃんの脱退の回数が1話の時より少ない(1話が400回目の脱退・最終話が398回目の脱退)】などの伏線が張り巡らされていた。

 1話から本作を見て来た私は、素敵なファンサービスだと感じた。しかし、冷静に考えれば、最終話で初めて見た人にとっても面白い内容なのか疑問に思った。

 そこで「コンフィデンスマン 初めて見た」で検索し、好意的なツイートを数えてみると15件前後。「コンフィデンスマン」だけで検索すればこの一週間で1万件近いツイートがあるのに比べ、初めて見た人のリアクションは薄いように思える。また、継続視聴していたファンのツイートの中にも、「中だるみを感じた」などの批判的な意見もある。

 原因は、絶賛されたどんでん返しのために伏線を配置する故に、無理にストーリーを押し進めてしまったせいだと考えられる。

 ラストでダー子たちは鉢巻からも15億円を騙し取るのであるが、「鉢巻秀男がファザコンだから銀行口座のパスワードは父親の言いつけ通りのものにしているだろう」と臆測だけで詐欺に及ぶのは、雑な計画と言える。また、最初から鉢巻を騙すつもりだったという後明かしも唐突過ぎる。一応、前フリとしてあったホテルの部屋番号が各話と違うという映像的伏線も、最終話だけを見た人にとっては「何のこっちゃ」という話である。

 ストーリーの面白さというより、ウォーリーを探せ的な面白さに寄せ過ぎたように思う。同じウォーリー的な楽しみで言えば、映画『サスペリア PART2』(1975年)の方が巧妙なので是非見てほしい。室内に隠れた殺人犯が意外な場所で一瞬映るという映像的伏線は見事だ。犯人捜しの物語で、犯人がチラッと映るのはストーリー上、意味を成している。

 本作に話を戻すと、初めて見た人にとっては鉢巻を騙す物語なのに、「実は最終話は第1話の直前の物語でした」と言われても、「だから何?」という感想しか湧かないだろう。

 内輪盛り上がり的なノリが一因で嫌われたテレビ局が、内輪盛り上がりで物語を終結させた。その結果、視聴率は、9話から0.3%ダウンの9.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。最終話まで2ケタに届くことはなかった。映画化の決定で再度注目されたのだから、初めて本作を見る人までファンにするガッツキがほしかった。作品の良さを語り合う相手を増やすこともまた、継続視聴した人に対するファンサービスだと私は思う。

■それでも各話名作ぞろい! 勝手に“ベスト3”

 最終話を酷評してしまったが、本作が名作であることに変わりはない。

 Blu-ray&DVD-BOXが9月19日に発売されるだけでなく、「FODプレミアム」で全話見逃し配信されている。しかし全話見るのは時間と根気が必要。そこで、個人的にお薦めできる三つの回を紹介したい。

【3位】第9話「スポーツ編」

 小池徹平扮するIT社長にニセのバスケチームを売りつけるまでの一話。

 巧妙な伏線が見所の回ではあるが、スポーツアクションが多く、『SLAM DUNK』(集英社)などの名作のパロディも楽しめて、疲れていても見易い一作となっている。

【2位】第3話「美術商編」

 石黒賢演じる美術商の毒舌ぶりが痛快で、『リーガル・ハイ』(同)の古美門弁護士が好きな人には必見の回。美術商のバックグラウンドとキャラクター造詣がしっかりしていたため、美術商の転落後を描いた1シーンはグッとくる。脚本家・古沢良太の作るキャラとセリフの面白さを堪能できる一話。

【1位】第7話「家族編」

 コンゲームが本来持つべき、騙し合いや裏切りをコミカルに楽しむことができる。スリルあり、笑いありなのに、ラストは家族愛に泣かされる。そしてベタなストーリーというわけでもない。エンターテインメントのあるべき姿を提示した珠玉の一作。基本設定さえ押さえておけば、この一話だけ見ても十分楽しむことができる。

 他にも第1話は登場人物とストーリーの設定をおさらいできるし、批判はしたものの最終話も全話見た人にとって楽しめる作りにはなっている。

 映画の公開前におさらいするも良し。リアルタイムで見れなかったから見るも良し。酷評しておいて言うのも掌クルクル過ぎるが、実に楽しい3カ月間を『コンフィデンスマンJP』に与えてもらった。

■これからの“月9”は? フジテレビは……?

 『コンフィデンスマンJP』の後作品として控えるのは、7月期『絶対零度』、10月期は海外ドラマ『SUITS』のリバイバルとウワサされている。共に刑事ドラマと弁護士ドラマで、あらすじやコンセプトを見る限り海外ドラマの事件モノにテイストを寄せるようだ。

 過去には『ガリレオ』や『コード・ブルー』などのシリーズも放映された枠ではあるが、恋愛ドラマのイメージが強い月9の路線変更に勝算はあるのだろうか?

 個人的には海外ドラマの亜流には勝算がないと踏んでいる。

 路線変更には、低視聴率を恐れぬ“チャレンジ精神”。もしくは見向きもされない期間を我慢する“忍耐力”が必要だからだ。

 TBSの『半沢直樹』と『逃げるは恥だが役に立つ』にはチャレンジ精神があった。当時ヒットになりにくいとされた業界モノと恋愛モノ。しかし、それぞれ時代劇要素や社会派要素をエッセンスとして足して、面白いと思わせようとする気概を感じた。

 一方、忍耐力が垣間見えるのはテレビ朝日。「見飽きた」「ダサい」などと言われてきた事件モノを、手を替え品を替え放映し続け、ノウハウを蓄積して『相棒』などのヒットシリーズを生み出した。また忍耐力が若手育成にも作用しているのか、若手スタッフが手掛けた『おっさんずラブ』がブームに至っている。

 近年の視聴者の目は肥えていると言われるが、一番の所以は、画面越しでも作り手の思惑を見抜く感受性にあると思う。制作者の熱意も感じ取れれば、方針の迷走や不安すら見抜いてしまう。小手先のテクニックだけで、現代の視聴者を「面白いよ」と騙すことはできない。

 最後に、私個人の話になるが、幼少期は『北の国から』を見て友達のいない期間を乗り越え、苦学生時代はトレンディドラマを見て、実感できないバブルを感じとった。フジテレビの番組が温かかったから、暗い青春時代を明るく生きることができた。

 かつて視聴者の気持ちに寄り添っていたフジテレビのこれからを見守りつつ、何気ない一日でも「楽しかった」と言わせてくれるテレビの未来に期待をしたい。

(文=許婚亭ちん宝)

『Missデビル』伏線を強引に回収……ずさんすぎる脚本のせいで、菜々緒ステップアップに失敗か

 菜々緒が型破りな人事コンサルタント役を演じるドラマ『Missデビル 人事の悪魔・椿眞子』(日本テレビ系)の最終話が16日に放送され、平均視聴率9.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。前回から1.8ポイントアップとなりました。

(前回までのレビューはこちらから)

 16年前、父親が経営していたホテル・アックスが全焼したものの、共亜火災保険の偽装工作により保険金が下りず、その復讐のため同社へ入社したという椿眞子(菜々緒)。その偽装工作の証拠となる写真を突きつけ、共亜火災社長・大沢友晴(船越英一郎)が罪を認めたところで前回は終了となりました。

 そして今回、その続きからとなったのですが、大沢は罪を認めたものの、「今更どうした」とばかりに居直り。眞子は怒りを抑え、偽装工作の証拠写真をマスコミにリークする代わりに、父親の行方を教えてくれと交換条件を提示します。

 大沢の話によれば、16年前、ホテル・アックス火災の調査を依頼した会社社長・縣雄二(大高洋夫)が、眞子の父親を殺し、ホテルの跡地に埋めたとのこと。眞子は、部下の斉藤博史(Sexy Zone・佐藤勝利)を引き連れ、すぐさま遺体を捜すのですが、見つかりません。

 その一方で前回、縣が殺され、大沢の秘書・本橋瑞希(瀬戸さおり)が自首したため、共亜火災はマスコミの標的になり、大混乱。さらに、ホテル・アックスの偽装工作も何者かによって週刊誌へリークされてしまい、一気に倒産の危機に陥ります。

 そこへ、投資会社・グッドマンキャピタルのCEO曽我部(堀部圭亮)が乗り込んできて、出資を提案。大沢が雲隠れしてしまったため、前々回、会長・喜多村完治(西田敏行)の娘であることが発覚した、人事部長の伊東千紘(木村佳乃)に会社の舵取りが委ねられます。

 16年前の偽装工作を認め、規模を縮小して再建を目指すか。あるいは曽我部の言いなりにはなるものの社員を守るため嘘を貫き通すか。悩んだ末、千紘は前者を選択。マスコミを集め会見を開きます。

 そこへ突然、大沢が姿を現し、アメリカの損害保険会社と業務提携を結んできたことを報告。さらに、週刊誌に偽装工作のことをリークしたのは自分だと明かし、マスコミの前ですべてを謝罪します。そして会見後、大沢は目に涙を浮かべ眞子に深謝。眞子は、大沢が「仕事というモンスターに食われた」犠牲者であるとして、これを許します。

 結局、共亜火災は規模を10分の1に縮小。再建を目指す会社から眞子は身を引き、博史はそのまま残ることに。2人が別れの言葉を交わしたところで終了となりました。

 さて感想ですが、前回のレビューで予想した通り、とっ散らかりすぎた伏線をうまい具合に回収できず、モヤモヤ感の残る結末となってしまった印象です。

 まず、眞子の復讐劇ですが、今まで悪事を働いた社員に対しては、遠慮会釈せずハイキックをぶちかましていたくせに、大沢に対しては及び腰。ベテラン俳優を慮ったのか知りませんが、最後まで“人事の悪魔”といわれる所以でもあるドSキャラを貫いて欲しかったです。

 しかも結局、父親は見つからないという、なんともスッキリしない終わり方。そもそも、これまでの放送回で、父親についての情報がほとんど提示されてなかったんですね。だから今回、眞子が遺体を見つけようと、涙ながらに土を掘り起こすシーンに関しても、まったく感情移入できず。これまでクールだった眞子とはギャップのある人間味あふれる姿で感動を誘う、という魂胆が丸わかりだったため、逆に興ざめでした。

“愛する父親のための復讐”を描きたかったのなら、ドラマ終盤に過去の眞子と同じような境遇の被保険者を出した方が効果的だったんじゃないですかね。その顧客と娘が、父親と自身の幼少期を彷彿させるため、眞子が肩入れ。そして、またもや偽装を画策しようとした大沢を成敗。という流れの方がまだ納得いく決着になったと思いますし、眞子のキャラクターももう少し深掘りできたのではないでしょうか。

 恐らく、これまで博史をさまざまな部署へ研修に送り込んでいたのも、“大沢のような仕事人間になるな”というメッセージを伝えたかったからだと思うのですが、最後の最後にその流れをぶった切るように、眞子の復讐がメインになったため、ほぼ無意味な展開が続いたことになってしまいました。

 終わってみれば、印象に残ったのは眞子のハイキック姿ばかり。菜々緒としては、“悪女を超えた悪魔”というキャッチーな役で女優としてさらなるステップアップを図りたかったのでしょうが、あまりに脚本がずさんすぎたため、思うような成果は出せなかったようです。

 ただ、華やかなビジュアルと身体能力の高さ、たまに見せるおとぼけ演技の面白さは魅力的ですから、作品に恵まれればさらなるブレークの可能性も。ネット上で“大根”と批判された佐藤はさておいて、菜々緒には今後の活躍を期待したいです。
(文=大羽鴨乃)

今夜最終回! 岩田剛典主演『崖っぷちホテル!』残念すぎるクライマックスに絶望中……

 日本テレビ系の日曜ドラマ『崖っぷちホテル!』も、今夜いよいよ最終回。直前となった第9話の視聴率は7.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、前回の第8話より0.8ポイント下げました。第8話、つまんなかったもんなー。

 さて、このドラマは基本的に岩田剛典くんのためのアイドルドラマです。機知に富んだカリスマホテルマンでありながら、「正装すると吐いちゃう」という明確な欠点を持つ愛すべき副支配人・宇海くん(岩田)が、やる気のなかった従業員一人ひとりに意識改革をもたらしていく。そうして、やる気と生きがいを取り戻した従業員たちによって、ホテル・グランデ・インヴルサ(ポルトガル語で「大逆転」の意)が、文字通り大逆転を果たしていく。そういう物語です。

 第6話までで概ね大逆転は完了し、今回はいよいよ宇海くん個人についてのお話が、ラスト2話で語られることになります。アイドル岩ちゃんがもっとも輝くべきは、まさにこの残り2話となります。

 そんなわけでクライマックス直前となった第9話、ついにあの宇海くんが吐き気を克服し、タキシードに身を包むまでが描かれました。振り返りましょう。

(前回までのレビューはこちらから)

■輝かなかった!

 結論から言って、ここまでの9話の中で、もっとも魅力のない宇海くんが描かれました。身勝手で思慮が浅く、客の都合なんてまるで考えず、エゴイスティックに自己陶酔に浸る、ただ顔面がかわいいだけの青年がそこにいました。

 ここまで、大雑把にいって「客の夢」と「従業員の夢」を同時に叶えることでホテルをどんどんよくしてきた宇海くんだったわけですが、なんだろう、今回「俺の夢」のために動き出した途端に、そのカリスマ性が霧散していったように見えたんです。

 その宇海くんの夢というのは「大花火大会をしたい」というものでした。ホテルの創立50周年記念日に大花火大会をしたい。天気予報ではたぶん暴風雨だけど、この日にやりたい。

 このホテルで花火大会を行うとすれば、それは20年ぶりだそうです。20年前の30周年でも、花火をやってる。そういう説明とともに、楽しそうに花火を見上げる少年少女がセピア色で映し出されます。要するに宇海くんとこのホテルには昔から縁があって、20年前にここで花火を見上げたことがあるという事実が示唆されるのです。少年は宇海くんで、少女は現・総支配人の佐那ちゃん(戸田恵梨香)でしょう。そういう思い出もあって、ここで花火がしたい。ここまでは、わからんでもない。

 ここから、物事が説明されるたびに謎が積み重なっていきます。

 宇海くんは前職である巨大ホテルチェーン「バリストン」でも花火大会を企画していたそうです。それは「夢」だったから。夢のために、花火師の免許も取っているのだそうです。

 わからないのは、何が宇海の「夢」なのか。ただ「花火を上げたい」ならホテルじゃなく花火屋さんになればいいし、「ホテルで花火を上げたい」のなら、悪天候が予想される50周年記念じゃなくても、免許持ってんだから週1とか月2とかで上げればいいし、景気がいいならTDRみたいに毎日上げたっていいでしょう。で、「佐那ちゃんとのセピア色の思い出があるから、どうしても50周年に上げたい」というなら、今度はバリストンで上げようとした意味がわからない。「あの日の思い出よ、もう一度」というのが夢だとしたら、バリストンで上げても意味がないでしょう。

 ここまで誰かのために頑張ってきて、その姿が実に魅力的で、誰からも慕われるようになった主人公が、いよいよ自分の夢を語る。夢を実現する。もう周囲は、協力する気満々です。そしてテレビの前のわたしたちは、感動する気満々です。それなのに、この「主人公の夢」のフンワリ具合は、いったいなんなのか。隠してきた夢とは、そのキャラクターそのものであるはずです。

 宇海くん、あんたは誰だ。

 さらにわからないのが、このときに語られたバリストンでの花火企画の顛末と、転職理由です。

 いわく、バリストンで花火大会を企画したものの、誰かが嫌がらせで業者に当日キャンセルの連絡をしてしまい、客をガッカリさせたとのこと。これで、なんか辞めたくなっちゃったときにインヴルサに誘われたから、すっぱり転職したのだそうです。いわく、そういうタイミングだったと。

 もともと、フラっと現れて、佐那ちゃんが「一緒に働いて!」とお願いしたら、即答で「面白そうだからいいよ!」と応じるブッ飛んだ職業意識が魅力として打ち出されていたわけですが、前職を辞めたいタイミングだったとなると話が違ってきます。「バリストンという一流よりも、インヴルサでの逆転に魅力を感じた」のならホテルマンとして超絶カッコいいですが、辞めたいときにオファーをもらっただけなら、普通の転職だもん。さんざんカットインしてきた「少年少女のインヴルサでのセピアな過去」による“運命”っぽい演出の意味が、宇海くんが事実関係を説明すればするほどほど意味不明になっていくんです。インヴルサに戻りたかったのか、いつか戻る気だったのか、そもそもなんでバリストンに就職して、若くして副支配人にまで出世することができたのか。花火大会での嫌がらせがなかったら、インヴルサに戻ることはなかったのか。だったら“運命”っぽいアレはなんなんだ。

 宇海くん、あんたいったい、誰なんだ。

■最重要だったタキシードも、ぬるっと。

 さらに、タキシードについてもそうです。今回、なんだかんだで悪天候のために一度、宇海くんは花火の打ち上げをあきらめます。その際、客に謝るためにタキシードを着用します。バリストンでは、客に謝るためにタキシードを着ようとしたら、失神したそうです。でも、インヴルサでは着られた。

 これでは、宇海くんの根っこの部分に、差別があることになってしまう。バリストンの客に謝ることより、インヴルサの客に謝ることのほうが大切・重要・価値があることになってしまう。あのときのバリストンの客が大切じゃない・重要じゃない・価値がないことになってしまう。

 宇海くんにとって「タキシードが着られない」というのは、ホテルマンとして唯一の欠点だったはずです。この欠点の克服こそがドラマのクライマックスであり、主人公である宇海という人物がいったい誰で、どう生きてきて、今後どう生きていくかのすべてを象徴するはずだったんです。ドラマが全部「そう」あるべき、という話ではなく、『崖っぷちホテル!』が9話かけて「そうですよ」と言い続けてきたことなんです。

 だから宇海がタキシードを着るくだりは、全話中テンション最高潮でなければならなかった。アイドルである岩ちゃんが主人公なんだから、タキシード姿の岩ちゃんが超最高に光輝く段取りを踏まなければならなかった。

 それが、なんかもう、ぬるっと処理されてしまいました。いつの間にか着てるし、なんかよくわかんない“着られた理由”らしきことも、セリフでちょっと言うだけだし。

 まあ白状してしまえば、わたしはこのドラマ、好きだったんですよねえ。品があって楽しくて、なんだったら各話のエピソードが平易で“ガツンとこない”ところも好きだったんですよ。平和で、丁寧で、フツーに面白い。マジメに作っていると感じていたし、何より岩ちゃんが演じる宇海という人物が好きだったんです。

 わたしの好きだった宇海くんはね、例えば宇海くん以外の誰かが「俺の夢だから暴風雨でも花火やるから!」とか言い出しても、「もっと客の喜ぶことを考えろ」と言う人ですよ。「本当に今、この客は花火を望んでいるか?」と、考える人です。あの宇海は、どこへ行ったのか。

■悪い予感はしていたみたい

 そういうわけで、今夜が最終回です。7話以降、絶望的につまらなくなった『崖っぷちホテル!』ですが、思い起こせば第1話のレビューでは、基本的に「面白い面白い」と絶賛しつつ、こんなことを書いてました。

「このドラマは面白くなりそうというか、たぶんなると思う、なればいいかな、まあコケる覚悟はしておきますけど」

 まあ実際、脚本は見事にコケたなーという感じですし、もはや宇海という人物に明確な過去や未来が設定されているかどうかも疑わしいところですが、最終回も見るのは見ますよ。そんで、感想を書くのは書きますよ。はい、残念でした。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

『Missデビル』緊迫感あふれる「菜々緒VS船越英一郎」……次回、お仕置きハイキック炸裂なるか!?

 菜々緒が悪女を超えた“悪魔”を演じるドラマ『Missデビル 人事の悪魔・椿眞子』(日本テレビ系)の第9話が9日に放送され、平均視聴率7.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。前回から0.1ポイントダウンとなってしまいました。

(前回までのレビューはこちらから)

 16年前、父親が経営していたホテル・アックスが全焼したものの、共亜火災保険の偽装工作により保険金が下りず、その復讐のため同社へ入社したという椿眞子(菜々緒)。その偽装工作に関わった縣雄二(大高洋夫)が社内に押しかけ襲われたのですが、ハイキック一発でKOしたところで前回は終了しました。

 その続きからスタートとなった今回、その場に居合わせた部下の斉藤博史(Sexy Zone・佐藤勝利)は、眞子の指示で先に帰らされることに。そして翌朝、出社した博史は、眞子の左手に包帯が巻かれていることに気づき、昨夜、自分が帰った後に何があったのだろうかと疑問を抱きます。

 そんな折、共亜火災に刑事が来訪。縣が遺体で発見されたため、彼のことを知る社員に事情聴取をしたいとのことですが、これを知った博史は、「もしや、犯人は眞子では?」と、気が気ではありません。

 案の定、刑事たちは眞子を疑い、身辺を捜査。社内の監視カメラに縣と一緒に映っていたことが決め手となり、眞子は連行されてしまいます。

 しかし、事態は急転。共亜火災社長・大沢友晴(船越英一郎)の秘書を務める本橋瑞希(瀬戸さおり)が、縣の殺害を自首したため、眞子は釈放されます。そこへ、「お疲れ様です」と、ヤクザの親分の出所を出迎える子分よろしく警察署へ訪れた博史の口から、大沢がニューヨークへ行く予定だと聞かされ、血相を変えて会社へ急ぎます。

 そして、今まさに社長室を出ようとするところだった大沢と対峙。大沢は、ホテル・アックスが火災した当時、偽装に関わった張本人なのです。そのことについて問い詰めた眞子に対し、大沢が偽装を認める発言をしたところで終了となりました。

 さて感想ですが、今回は放送時間の約3分の2が縣殺人事件の捜査に割かれ、しかもその謎がドラマを引っ張るには弱すぎたため、捨て回となった印象です。普通、最終回の直前は一番盛り上がると思うのですが、これまでで1番中身のない回だったかもしれません。

 もちろん、おもしろくしようとする努力は感じられたのですが、そのどれもが的外れ。前回から数打ちゃ当たる方式が悪い方へと動き、いろいろとっ散らかった状態になってしまっているため、次回で収拾がつくのか不安でもあります。

 たとえば前回のラスト、共亜火災の会長・喜多村完治(西田敏行)が、実は人事部長・伊東千紘(木村佳乃)の父親であることが、衝撃の展開風に明かされていましたが、見てるこちらとしては、「だから、何なんだ」となってしまう。それまでのストーリーの大筋に関わっていたならサプライズとなるのですが、全然関係ないんですもん。

 で、当然、この設定は今回のエピソード上でも効果を発揮していない。千紘が会長室を訪れ、実の父親であることを今まで黙っていたことに対し、「恨んでいた」と本音を吐露した結果、少しわだかまりが解けかけてお互いに涙ぐむ、というシーンがあったのですが、ちっとも心を動かされませんでした。

 視聴者の興味を繋ぎとめるため、放送終了間際にインパクトのあるシーンを置くのは常套テクニックですが、なんでもいいってわけではありません。テキトーな設定を強引にねじ込むことによってストーリーのバランスがおかしくなり、後々、窮することになる。それで結局、伏線を回収せぬまま終わる、というのがダメドラマの典型ですが、その可能性が見えてきました。

 今回のラストに関しても、これまで目立たない存在だった社長秘書の瑞希が突如として殺人を自首。また、今までの放送では、眞子が縣への脅迫文を送っていると思わせるような演出がなされていたものの、実はこの犯人が、博史の母・聡子(山下容莉枝)であることが発覚しましたが、聡子も今までほとんどセリフがなかった役どころです。瑞希にしても聡子にしても、視聴者が納得するような犯行動機があるとは思えません。

 ただ、菜々緒VS船越英一郎の構図に関しては緊迫感があり、見応え十分。いつもだったら眞子は、相手が悪事を白状した時点でお仕置きハイキックを食らわせるのですが、社長相手ということでさすがに自粛したようです。

 しかし次回、偽装工作の裏が完全にとれたところで、復讐のハイキックが見舞われることになるのか。船越が華麗にKOされるシーンが見られるのか。という点を楽しみに放送を待ちたいと思います。
(文=大羽鴨乃)

韓国初上陸!『孤独のグルメ』雷波少年に出てた“あの人”がゲスト同行するも、やはり五郎は独り飯……

「来ちゃいました、初韓国」

 旅ロケっぽい独り言で始まった今回の『孤独のグルメ』(テレビ東京系)は、韓国編。ドラマでは過去に一度、台湾を訪れているが、それ以来の海外。原作では、かつていたパリを再訪し、元カノ(小雪)を思い出しながらアルジェリア料理を食す回があるが、それともまた違うドラマならではのコミカルな雰囲気。地元ゲスト登場も、どこにいようと井之頭五郎(松重豊)はマイペースに一人で飯を食う。第9話「韓国チョンジュ市の納豆チゲとセルフビビンパ」。

(前回までのレビューはこちらから)

■ゲストは『ハングル講座』に出演中の彼と『雷波少年』にも出てた彼女

 

 空港から登場かと思いきや、いきなりタクシーでソウルの住宅街に乗り付ける五郎。

「アイウォントゥーゴーヒヤー」

 片言の英語で道行くおばさまに道を尋ねるも、韓国語で答えられて、いきなり撃沈。貿易商という仕事柄、もう少し海外慣れしててもよさそうだが、この頼りない柔らかさがいい。

 なんとか商談先にたどり着くも、その社長(ソン・シギョン)に、すぐ全州に行き、ヨーロッパ向けのアンティーク商品をチョイスしてほしいと頼まれる。

 公式Twitterによると、ソン・シギョンは番組冒頭のナレーションを暗記していたり、過去に登場した店を訪れたりしている番組の大ファン。そのためか五郎と対面するシーンから喜びが溢れてるように見える。ちなみに現在、Eテレでハングル講座にも出演中。

 結局、彼の部下のパク・スヨン(パク・チョンア)に通訳などアシストしてもらいながら、全州市で伝統工芸品(傘や古家具など)を選ぶ五郎。しかし、飯屋の看板を見るなり仕事中なのに腹減りタイム。パクが事務所で資料をまとめている隙に、すぐさま一人で店探し。普通こういう時は同行してる人と飯を食いそうなものだが、ミスター孤食・五郎はおかまいなし。

 座敷タイプの「俺好み」の店を見つけると「言葉わからなくて追い出されたらそれまでだ」と、前向きに覚悟を決め入店。

 ちなみに、パク・チョンアは元ジュエリーという女性グループで、14年ほど前に日本デビューもしており、それ以前にも『雷波少年』(日本テレビ系)でのシンガポールからソウルまで歌を歌いながら旅する企画に参加していたので、そっちの記憶で覚えている方も多いかもしれない。

■とめどなく運ばれる膨大な皿数

 しかし、かつての台湾編では中国語が読めないなりに「海鮮」だとか「排骨」だとか漢字で手がかりをつかめたが、ここでは値段の数字表記以外、メニューのハングルが一切読めない。

 仕方ないので、一番安いのを頼み、出てきたものを見て、その後を考えるという作戦を決行。

 なんとか6,000ウォンの「チョングッチャン」を注文したはいいが「一体俺は何を頼んだんだ」と自問する五郎がおかしい。

 すぐさま、肉や野菜の皿が並べられ、「へーこんな感じかあ」と、ひとまず安心しかけるも、店のおばさんはとめどなく皿を運び続ける。

 すでに7皿。薬味や白米の茶碗入れたら10皿だ。そこに、ぐつぐつ煮えたぎる石鍋まで到着。約600円でフルコースのような品揃え。まさに「おかずのテーマパーク」。品数におののきながらも、ひとまず白米があることに安堵する五郎。

「もう大丈夫。鬼に金棒、俺に白飯だ」

 まずはチェユックポックム(豚肉の唐辛子炒め)で白米を食べ、「美味い!」と喜ぶやいなや、すかさず「違う違う」とおばさんがカットイン。いきなり出鼻をくじかれる。ステンレス製のボウルにおかずを少しずつ入れて、ハサミで切り刻んで白飯と混ぜて食えという。ここでようやく、これがセルフビピンパだと気づいた五郎。

 ナムルを各種(モヤシ、大根、白山菊)に、キムチ、目玉焼き、豚肉唐辛子炒めを入れて、さらに小粒なさつま揚げを甘辛く似たようなものも入れかけると、それは入れずに食べろと、またカットイン。ちょっとしたトラップだ。

 とりあえず、さつま揚げ以外全てハサミで切り刻み、白米と、コチュジャンを入れて、さらにぐつぐつの石鍋のスープの底に沈んでいる納豆も入れろと言われ、驚きながらも従う五郎。

 この石鍋の料理が「チャングッチョン」(納豆チゲ)で、実はメインはこれだ。

 豆腐や野菜も入って煮立つ汁をひとすすり、日本の納豆汁とはまた違う旨さらしい。

 ようやく完成したビピンパに、海苔をたっぷりかけ、かぶりつく。

「これだけいろんなものを適当に混ぜてこんなにおいしくまとまるって、どうなってるんだ?」と驚きながら、スプーンで次々と胃へ投入。

「まさにビビンパマジック」

 五郎の食べっぷりを見て、今度ビピンパを食べる機会があったら是非納豆も加えてみようと強く思った。

 そして、ビピンパには混ぜるなと言われたさつま揚げ。これはオデンという料理で、甘辛味。別にこれも混ぜてもよさそうに思ってしまうが、五郎も「美味いけど、これはビピンパに入れるもんじゃない、危ないとこだった」と言っているので、馴染まない味なのかも知れない。

 さらにサンチュに味噌を塗り、ビピンパを乗せて、巻き巻きしてかぶり付く。さらに大きな白菜キムチの葉でも巻き巻きアレンジ。絶妙な酸っぱさがうまいらしい。こういう作業をしている時の五郎の顔は、いつ見ても楽しそう。

■ようやく食べ終わったと思ったら、さらにもう一品……

 ペロリと1セット目を平らげると、おもむろに上着を脱ぎ、落語家が噺に入るかのごとく、新ビピンパ製造に取り掛かる井之頭亭。

 先ほどは入れなかった「新たな武器」ごま油も投入。

「全てを放り込んで、切るべし切るべし切るべし」

 さらに青唐辛子も入れて、

「肩の力を抜き、腕全体の力がしなやかに器に伝わるように混ぜるべし、混ぜるべし」

 前回の『あしたのジョー』パロディがよほど気に入っているのか、今週も引きずりまくる。

 気になるお味は「誰がなんと言おうと絶対に美味い」というくらい一杯目を凌駕する出来。

「初めて来た全州の街で最高の飯に出会えたことに、心からカムサハムニダ」

「もしも、またこの店を訪れることがあれば、この納豆汁ビビンパに再挑戦しよう。そしてさらなる高みを目指そう。そして見るんだ、誰も見たことのない納豆汁ビビンパの頂点を……! ごちそうさ……」

 いかにも締めっぽい五郎渾身の独り言の終わり間際、当たり前のように運ばれてくる一品。

「え? まだなんかあるの??」

 食いしん坊な五郎が驚くほど、終わらない宴。

 運ばれてきたのは「ヌルンジ」という、おこげを煮たシンプルなおかゆスープ。韓国では定番の締めの一品。

「それにしても600円でこの品数ってどうなってるんだ? いいのか? こっちが心配になるほどのサービスだ」と、改めて驚きを噛みしめる五郎。

 基本、アジアの国は、残すくらい食べさせるのが美徳のような考え方があるので食事の量は多めなのだが、韓国もご多分にもれず、多い。

 教えてもらったばかりの韓国語で「マシーソッソヨー」(美味しかったです)と店の外から声をかけるほど充実した韓国初日。次回は本場で焼肉!「骨付き豚カルビとおかずの群れ」。
(文=柿田太郎)

よくがんばった自分に満足なんかしてらんねぇ!! 情熱が連鎖反応を呼ぶ『宮本から君へ』第9話

 才能もなく、お金もなく、コネもない人間は、立場の強い人間の言いなりになるしかないのでしょうか。才能も、お金も、コネもない人間が立ち向かう武器は、ひとつしかありません。それは情熱です。効率至上主義で回る現代社会において、はたして情熱だけで物事は動くのか、常識ぶった大人たちに一矢を報いることができるのか。社会人になって1年足らず、勤務先は無名の中小企業、大手企業に勤める彼女にも棄てられ、自慢できるものが何ひとつない営業マンの宮本が、世間の常識に呑み込まれることを拒み続ける熱血サラリーマンドラマ『宮本から君へ』(テレビ東京系)。新井英樹の原作コミックの中でも、共感度の高いエピソードをほぼ忠実に再現した第9話を振り返りましょう。

(前回までのレビューはこちらから)

 坊主頭になった宮本浩(池松壮亮)は走り続けます。宮本は都内の弱小文具メーカーに勤める新米営業マンで、大手製薬会社に納品するクリアファイルの入札をめぐってライバル社の益戸(浅香航大)としのぎを削り合っているところです。不当な手段で入札価格を事前に知った益戸が直前になって価格を下げたことで、益戸側の勝利はもう確定していました。ですが、不正がまかり通る現実社会に我慢できない宮本は、益戸が用意したクリアファイルよりもいい物を見つけようとデザイン会社を次々と訪ねて回っているのでした。大手製薬会社が正式決定を下すのは1週間後。先輩営業マンの神保(松山ケンイチ)が作成したリストを片手に、宮本はひたすら走り回ります。

 宮本がいくら焦っていても、どのデザイン会社ものんびりとした対応で、宮本がイメージしているようなオシャレなクリアファイルはそうそう見つかりません。「地軸はいつだって、僕から遠く離れた所にあって、世の中は回っていた」と諦め掛けていた宮本ですが、夕方に駆け込んだデザイン会社でようやく宮本の熱さに反応してくれる人物に出逢います。デザイン会社のお局っぽい女性社員の徳間さん(片岡礼子)に「ショールームの見学は原則的に夕方の5時まで……」と追い返されそうになった宮本ですが、何度も頭を下げ、「お願いします」と連呼する坊主頭の宮本のしつこさにほだされます。「原則的に好きですよ、そういうの」と徳間さんはショールームへ案内します。ショールームといっても、オフィスの片隅にあるちっぽけな展示スペースでしたが。

 小さなショールームでも、そこには徳間さんがこの会社に勤めてからの歴史でいっぱいです。徳間さんが手にしたクリアファイルを、宮本はひとめで気に入ります。飛び込みで現われた初対面の宮本に対し、徳間さんは丁寧に対応し、版下を管理している広告会社にまで連絡を入れてくれました。「どうやって、お礼したらいいですか……」と素直に感謝の気持ちを伝える宮本に対し、徳間さんは照れながら答えます。「選んでくれたのは、あたしの初仕事。だから、褒められた分でチャラ!」。職場では男性社員をアゴで使っている徳間さんが、ひどく可愛い女性に思えます。朝からずっと走り回ってオーバーヒート気味だった宮本の心に、さぁ~と涼しげな風が流れた瞬間でした。

 情熱は連鎖します。宮本が版下を受け取るために訪ねた広告会社では、見るからに小物そうな平社員の小菅(岩瀬亮)が応対しますが、退社時刻に現われた来客に迷惑顔しか見せません。「世の中ね、あなたを中心に回っちゃいませんよ」とブツブツ愚痴をこぼす小菅ですが、上司の梶井(鶴見辰吾)の命令で宮本と一緒に資料室のどこかに眠っているはずの20年前の版下を探し出すことになるのでした。宮本が他人の迷惑を顧みずに仕事に没頭していることが、自分の枠の中だけで生きている小菅にはまるで理解できません。梶井の前で土下座までした宮本のことを「あんた、けっこう計算高いよね」と見下していた小菅ですが、「社会人になって、ほとんどいいことありません」「彼女はいません。僕が女でも、今の僕には惚れませんから」と版下を探しながら心情を吐露する宮本に、斜に構えていた小菅の心もついに動かされます。

 小菅も思いどおりに進まない恋愛や面白くない仕事内容で悶々とした日々を過ごしているようです。最初はまるでやる気のなかった小菅ですが、資料棚の後ろに落ちていた版下をひょっこりと見つけます。小菅がいなければ、この版下はその日のうちには見つからなかったはずです。徳間さんも、小菅も原作コミックでは一回きりの登場です。『宮本から君へ』では脇役にしかすぎません。でも、そんな一期一会の出逢いに支えられて、宮本は夜になっても走り続けるのでした。

■情熱はやがてひとつの形になる

 池井戸潤の企業小説を原作にしたTBSの大ヒットドラマ『半沢直樹』はエリート銀行マンが倒産寸前のホテルを見事に立て直し、『下町ロケット』では町工場の二代目社長が国産ロケットの打ち上げに成功します。池井戸作品の主人公たちは頭脳明晰なエリートであり、また会社や家族を守るヒーローとして大活躍します。それに比べ、宮本は出来合いの版下を手に入れるために、走り回り、汗を流し、土下座までします。しかも、それは宮本自身が満足するためのエゴであって、全然かっこよくありません。美沙子(華村あすか)や靖子(蒼井優)といったヒロインたちも登場しない非常に地味な第9話ですが、でも観る者の心にじんわりと染み込むものがあります。

 負け犬の烙印を押されたままじゃ、終われねぇ。宮本のそんなガムシャラさは、自分自身が傷つかないよう諦めがよく、TPOに合わせて感情をセーブできる大人になった我々に、大切なことを思い出させてくれるのでした。そして、おのれのエゴむきだしで突っ走ってきた宮本も、たまたま出逢ったいろんな人たちのさまざまな価値観を受け止めていくうちに、溢れ出る情熱はやがてひとつの形になっていくのです。頭でっかちだった宮本がようやく手に入れた信念、お金では手に入らない本当の意味での誠意と言っていいかもしれません。宮本はわずか1日でぐんと大人になったのです。

 夜10時をすぎ、神保たちが待つ会社に宮本はようやく帰社します。朝からずっと全力で走ってきた宮本の心は、まだ止まることができません。「製薬会社の件は、もう終わったんや」と宮本を諦めさせようとする小田課長(星田英利)に懸命に喰らいつきます。サウナに移動した小田課長と神保を前にして、素っ裸の宮本は主張します。「このままで終わったら俺、きっとがんばったことで満足しちゃいます。俺は結果を噛み締めたいんです、勝ちでも負けでも」。サウナの熱気よりも熱い宮本に、ついに小田課長も根負け。課長決裁で新サンプル作成にGOサインを出すのでした。

 ビジネスの世界では、結果のみが求められますが、その結果の元になるものを生み出すのは一人の人間が持っている情熱ではないでしょうか。誰だって、情熱はないがしろにはできません。後はもう、結果を残すだけです。退職が決まっている先輩の神保も、課長決裁したことで上から叱られることを覚悟している小田課長も、デザイン会社で人知れず新しい文具を考えている徳間さんも、広告会社で燻っている小菅も、そして視聴者全員が、池松壮亮演じる宮本が最後に奇跡を起こしてくれることを願っています。いよいよ物語が佳境に入る次回・第10話も見逃せません。
(文=長野辰次)

新しいドラマの扉開けた翻訳ドラマ『モンテ・クリスト伯』次回はシェークスピアかドストエフスキーで?

 いよいよ最終回を迎えた『モンテ・クリスト伯 ─華麗なる復讐─』(フジテレビ系)。2時間スペシャルで描かれたその結末は、原作を踏まえながらもオリジナルな展開も多かった。

 視聴率は6.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と、激増した先週の7.4%より落ちてしまったものの、あまりないタイプのドラマだっただけに最後まで強い印象を残した。

(前回までのレビューはこちらから)

■汚れなき信一朗

 前回、薬を飲ませた直後に未蘭(岸井ゆきの)が倒れたため、その薬を渡した真海を責め立てにやって来た信一朗(高杉真宙)。キレる信一朗に真海(ディーン・フジオカ)は言う。

「あなたの気持ちは良くわかります。私にも殺したいほど憎い男たちがいます。彼らに苦痛を与えることを夢見て生きながらえてきた」

「どうかあなただけは、このむごい世界に足を踏み入れないでください」

 真海にとって、この罪人だらけの世界で、信一朗だけは唯一、紫門暖であった頃から変わらぬ最後の希望なのだろう。

 結局ラスト間際、真海が渡したのは本当に解毒剤で、そのおかげで未蘭が助かっていたことがわかる(前回、未蘭が倒れたのは瑛理奈の飲ませた薬のせいで、そのまま未蘭が死んだことにしたのは公平を苦しめるため)。

 彼をとことん守ることで真海は、自分のしているひどい復讐とのバランスを取っているのかもしれない。

 

■殺人鬼・瑛理奈の壮絶な最後

 夫の公平(高橋克典)が警察官僚であるのをいいことに、やりたい放題の殺人を繰り返す本物の「モンスターペアレンツ」瑛理奈(山口紗弥加)。

 今回も未蘭が死んだ(助かったことはまだ知らない)罪を義父の貞吉(伊武雅人)に被せるため、さらなる殺害を試みる。途中で公平が来たため、それは未遂に終わったが、体が麻痺して動けない貞吉に普通に話しかけながら、口を濡れ布巾で押さえつけるその形相は鬼畜そのもの。

 甲高い声で良妻を演じつつ、その裏で……というより、自分の血のつながった息子・瑛人に遺産を残すという大義をもった「良妻」そのものとして、なんの疑問もなく殺人を繰り返しているのが恐ろしい。

 結局、公平はとっくに瑛里奈の行いに気づいていたのだが、その毒牙が愛娘・未蘭に向かったことで我慢できなくなり、ついに瑛理奈を問い詰める。

 

■原作以上にボコボコにされる神楽

 監禁された神楽(新井浩文)は、袋を被せられ、顔に水をかけられる拷問地獄。真海がラデル共和国の監獄で受けた一番きつい拷問だ。空腹にさせられ、わずかな食事を死ぬほど高い値段で買わされるのは原作と同じだが、水責めなどの前のめりな拷問はドラマオリジナル。『スターウォーズ』の新作でもそうだが、近年の映像作品は人質の顔に袋を被せるのが流行りで、やはりこれは、現実世界でのテロ組織の動画の影響があるのでしょう。

 ちなみに、この日の神楽のお食事代は、わずかなパンとスープで1,000万円。原作では1億円くらいだったので、ややリーズナブル。

 真海は、自分の手を汚さない分、神楽は余計に罪が重いと言っており、南條や入間公平が自ら死を選んだり(助かったが)、勝手に狂ってしまったのに比べ、神楽には手下を介してるとはいえ、かなり直接的な暴力を振るっている。

 自分の罪に自覚がないことを罪だとされた神楽だが、やはりというか真海(暖)へのかつての仕打ちも忘れてしまっていたほど自覚がない。どこか憎めないくらい新井の演技が飄々としており、他の2人の悪党とはまた違う味があった。

 ずっとリアルタイムでTwitter実況をしていたサービス精神あふれる新井だが、最終回は地方で実況叶わず。しかし、このシリアスな最終回にあのひょうきん実況はそぐわない気もするので、それはそれでよかったのかもしれない。

■留美が母親だと知り嘔吐する安藤

 不倫の末に産んですぐ一度は捨てた息子・安藤(葉山奨之)との日々を刹那的に楽しむ神楽の妻・留美(稲森いずみ)。真海は公平を苦しめるために留美を安藤に出会わせたのだが、もはや彼女の生きる糧となっている。

 だが、留美が母親だと知り、いきなり嘔吐。しかも父親である警察官僚の公平は自分の保身のことしか考えてないから、どんなことしても助けてくれるはずだと留美に言われ「お前ら(留美と公平)、最高やべーわ!」と吐き捨てて笑う。確かに笑うしかないくらいクソな状況。

 公平は過去を詫びて、外国へ逃がし助けるフリをして2人きりの時に安藤を撲殺、またしても赤子の時のように生き埋めにする。高橋の腐りきった極悪な演技が光る。

 しかし、こちらも赤子の時以来、またしても埋めた直後に真海の執事・土屋(三浦誠己)が助け出し、一命をとり留める。もはや、ある種の父性が土屋の中に生まれていたように感じる。今回は描かれていないが、きっと土屋は安藤の面倒を見る気がしてならない。

 公平を許せない留美は、安藤が殺人犯だと公表する記者会見の場に乗り込み、公平の悪事を全て暴露。公平は取り乱し帰宅、逃げようと妻・瑛理奈に弱音を吐く。

「どこで間違えた……俺はただ立派な人間になりたかっただけだ」

「家族っていうのはなんだ、そう思ってきた、だが、それすらも自分のためだったのかもしれん」

 だが必死に慰めてくれる瑛理奈に感謝し抱きしめた瞬間、瑛理奈は口から血を吐いて壮絶に死ぬ。公平に過去の殺人を咎められたことで毒を飲んでいたのだ。息子の瑛人も死んだと真海に言われた公平は、全てを失い気が狂ってしまう。

 だが瑛人は生きており(原作では母子ともに死亡)、死んだ母が倒れている現場で真海を睨みつける。復讐の芽を感じさせる終わり方だ。

■焼身自殺を図る真海

 真海は最後に神楽、南條、すみれというかつての仲間を集めて晩餐会を開く。

 家中に灯油をまき、神楽と南條を椅子に縛り付けた狂った部屋に招かれたすみれ。

「もうやめて、こんなの馬鹿げてる」

 おかまいなしに「余興」として、第1話で流されたすみれにプロポーズした時のサプライズ動画を流す真海。画面内、「愛は勝つ」に合わせ踊る神楽に、はしゃぐ南條。

 真海は若い自分を指差し「誰です、この頭の悪そうな男は?」「人に騙されるのが目に見えている」と皮肉を言いつつ「でも本当に幸せそうだ」とこぼす。

 真海に誘導され、当時の気持ちを正直に語る2人。

神楽「お前が街にきた時からずっと目障りだったし、お前が船長に決まった時すげーむかついたよ」

南條「(暖が警察に連行されて)焦ったけど、正直ほっとしたよ。これですみれを取られないで済むって」

 初めて当人が認めた本音。真海はこれを聞きたかっただけなのかもしれない。

 そして少し前に、「全てを捨てて自分と結婚するなら、もう復讐はやめる」とすみれに「踏み絵」を迫っていた真海は、15年前と同じように改めてすみれにプロポーズする。

「はい、私は『真海さんと』結婚します」涙を流しながら答えたすみれの言葉を聞き、「やっぱり最後に『愛は勝つ』んだ」とつぶやき全員を解放、退去させる真海。

 すみれは暖とは呼ばなかった。抜け殻のように「楽しかった」とつぶやき、火に包まれる真海。

 信一朗が未蘭の件で激怒して訪ねて来た時「いずれ私は罰を受けるでしょう」と真海は言っていた。「絶対に許さない」と言った信一朗に対し「許しなど求めていない」とも。この時から真海は死ぬことを決意していたのでしょう。

■強い原作リスペクト

 すべてが明るみに出たため、公平、南條、神楽はそれぞれ逮捕されたが、真海の遺体は見つからなかった。南條は飛び込んで助けに入り、大やけどを負ったが、実際は土屋やエデルヴァが助けたのかもしれない。

 真海が残した「希望」である信一朗へあてた手紙には「待て、しかして希望せよ」とあった。このへんは原作と同じだが、これは最初に日本語訳した岩波版(山内義雄)の言葉で、脚本家の黒岩勉の原作へのリスペクトを感じた。

 最後、海辺を歩く紫門暖とエデルヴァっぽい人影。原作ではエデ(エデルヴァ)の愛によりエドモン(紫門)は救われ、結ばれるのだが、それを示唆するエンディング。しかしあえて多くを語らず、原作を読ませ補完させようとする意図を感じた。

 ドラマとして完結しているかは別として、やはり原作へのリスペクトなのだろう。

 2時間、詰め込みに詰め込んだ濃い内容をうまくまとめ上げた最終回。しかし気になる点もあった。

 殺人を犯すなど、その罪の重さはもちろんあるものの、真海的に恨みがあるわけでもない瑛理奈があそこまで壮絶に死に絶えながら、結局メインの復讐相手のうち2人が「救われたような」形となったエンディングには、やや疑問が残る。「小物」の寺角(渋川清彦)を目の前で生き埋めにしたほどの真海なのに、やはりすみれに正体がばれていたのが効いているのか。

 原作では、瑛理香が瑛人とともに心中したことを公平(ヴィルフォール)から聞かされ、その意図しなかった「巻き込み」具合にショックを受け、真海(モンテ・クリスト伯)が罪の意識に苛まれるシーンがある。

 しかし、このドラマでは瑛理香の死は真海も想定済みといった感じで、その死に対して罪悪感を感じている様子もなかった。それだけに、なぜ原作に背き南條を殺さなかったのかが気になる。

 最後、真海を助けようと火の海に飛び込んで全身大やけどを負ったのも、少し「改心」したことによる中途半端な「罰」に見えてしまった(幼い瑛人を殺さなかったのはテレビ的にわかるが)。

 今作は母親が特に「強く」描かれていた。

 第6話で、留美が実の子(安藤)と近親相姦をしていることを知っても、ショックを受けるよりも安藤が生きていた喜びが上回る様子を見て「母親というのは偉大だな」と真海は言っている。

 息子のために殺人を繰り返す瑛理奈。息子の嫁を守るため餓死を選んだ恵(風吹ジュン)。そして、安藤が殺した死体(寺角)を埋めてやった留美。もっと丁寧に掘り下げてほしかった部分だ。

 まじめに原作を追ったため1クールでは内容を詰め込みすぎで、もったいなくも駆け足で描ききれていない部分が多かった。だが珍しい手法の意欲作で、この手の翻訳ものとして、ある種の扉を開いた気がする。

 ぜひ黒岩勉はシェークスピアやドストエフスキーなどで再挑戦していただきたい。
(文=どらまっ子HARUちゃん)

『あなたには帰る家がある』玉木宏が木村多江に終止符をつけるも、中谷美紀&ユースケ関係強化で意外な展開に!? 

 中谷美紀主演のドラマ『あなたには帰る家がある』(TBS系)の第9話が6月8日に放送され、平均視聴率は8.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。前回から0.5ポイントアップしました。

 視聴率が苦戦しているわりに、ネットでは評判の同ドラマ。今回は4者会談という波乱の内容に、放送前から話題となっていたようです。それでは、まずはあらすじから振り返っていきましょう。

(これまでのレビューはこちらから)

■今度は真弓と太郎がいい雰囲気に!?

 マンションに残された秀明(玉木宏)の荷物を届けに秀明が住むアパートに届けに行った真弓(中谷美紀)は玄関前で秀明とばったり会うも、部屋から綾子(木村多江)が現れ、驚く。2人が一緒に住んでいると誤解して怒りを覚えるものの、平静を装いつつその場を後にする。真弓の誤解を解こうと必死になる秀明だが、なかなか誤解は解けず……。

 秀明と綾子との関係を誤解したまま激怒し続ける真弓。そんな真弓に同僚の由紀は「新しい彼氏を見つければいい」とアドバイスする。最初は嫌がっていた真弓だが、職場の男性たちから食事に誘われるなどの“モテキ”が到来し、満更でもなくなる。

 一方、秀明は会社帰りの真弓を待ち伏せ。綾子との関係を説明しようとするも、「今、気になる人がいるから」と言い残し、真弓は去っていってしまう。その言葉にショックを受ける秀明は、急ぐ真弓のあとをこっそりとつけたところ、綾子の夫・太郎(ユースケ・サンタマリア)と会っているところを目撃。2人が親密な仲なのかと思い込み、動揺してしまう。

 そんな中、真弓は42歳の誕生日を迎える。その日は真弓の後輩・圭介(駿河太郎)が経営するカレーショップ「こまち」の10周年パーティーもあり、真弓と秀明も参加する。すると、そこへ綾子と太郎も来てしまい、パーディが修羅場と化してしまう。

 そして、なぜか4人そろっての話し合いがもたれることに。綾子は「秀明さんとお付き合いしてもいいわよね?」と真弓に問うが、あまりにも唐突な質問に、真弓は激怒。「お好きにどうぞ」と答え、その場から立ち去る。秀明もすぐに真弓のあとを追い、怒る真弓に「綾子とは何もない」と説明。やっと誤解が解け2人は和解する。しかし、そこへ再び茄子田夫婦が現れ、綾子は「実母が危篤で栃木の病院まで送っていってほしい」と秀明に懇願。最初は拒否する秀明だったが、真弓に「行ってあげたら」と諭され、仕方なく車で送っていくことになる。

 病院に着いたものの、母親の死に目に会えず、悲しみに暮れる綾子。秀明になぐさめてほしいと懇願するが、秀明は「今あなたを見ても何の情もわかない」と拒否する。

 一方、真弓は太郎を誘い自分の誕生日のために事前予約していたレストランに行くことに。食事の最中、太郎から「どうしたら綾子は戻ってくるのか」と相談され、「綾子のことは忘れて前を向いて生きた方がよい」と答える真弓。少しずつ距離が縮まっていく2人を秀明はそっと影から覗き動揺するのだった、というのが今回の内容でした。

■自己中を通り越して非常識レベルの「綾子事変」

 今回の見せ場といえば、なんと言ってもカレーショップこまちの10周年パーティーをぶち壊す、真弓、秀明、綾子、太郎による会談シーンです。

 ここでも恒例の「綾子事変」が起こるのですが、それが非常識過ぎる。呼んでもいないのにカレーショップの10周年パーティーに参加し、大量の手作りサラダとデザートを差し入れ。普通に考えて、飲食店に手作りの料理を差し入れするのは非常識です。もう承認欲求が強過ぎて涙が出てくるし、「お前の取り柄は料理しかないのかよ!」と突っ込みたくなるレベル。

 それに、4人での会談もほぼ綾子の独壇場。真弓に「秀明さんとお付き合いしてもいいわよね?」としつこく問いただし、その姿はまるで『朝まで生テレビ』(テレビ朝日系)で政治家を問い詰める田原総一朗のよう。さすがにこれには視聴者から失笑の声が漏れていました。

 また、このシーンの演出がとても面白いのも良かったポイント。普通であれば修羅場シーンとなるところを、飲み物をもらえなかった秀明のエアー乾杯や、店に集まった脇役たちの顔どアップと心の声を取り入れるなどし、他のシーンに比べてコミカルにしていることで、他の不倫ドラマとはひと味違ったスリル感を味わえて良かったです。

■“追われる側”から“追う側”になった秀明

 これまで、同ドラマでは妻たちに焦点が当たっていましたが、今回は“夫たちの変化”する部分が目立っていたような印象が。そのため、ここでそれについて書いていこうと思います。

 8話で娘の麗奈のおかげで真弓と少しだけ和解できた秀明ですが、綾子の企みのせいで、再びつらい目に……。その上、4者会談のときにはっきりと「綾子はストーカーだ!」と言えばいいのに、ただたた怯えるだけで、一言も発しないとオロオロするばかり。

 ただ今回、秀明もさすがにもう振り回されたくないと、綾子にはっきりと「今思っている人はあなたじゃない」と言い、ついに「流される態度」を改めることに成功します。ただ、時すでに遅し。真弓は太郎と仲良くなってしまったため、秀明は真弓に気持ちを伝えられないまま今回は終了。

 残り2話でこの改心が真弓との関係修復にうまく働けばいいのですが、原作とは違っているためどうなるのか先が読めない! どんな最後を迎えるのか、期待したいところです。

■いい人になりつつある太郎にファン急増!?

 一方で、とことん綾子に嫌われているモラハラ夫の太郎も、7話ぐらいから少しずつよい部分を見せており、「そこまで嫌わなくても……」という同情の声が上がっています。

 7話では、綾子の作ったご飯にケチをつける太郎の母親に、「そんなことを言うな! 普通にうまいぞ!」と言ってかばったり、今回は真弓に対しても心を開き、綾子がどうしたら戻ってくるのか相談したり、真弓が誕生日だったことを知り、軽やかにバースデーソングを歌ってあげるなど(このとき、素のユースケ・サンタマリアに戻り、『「ぷっ」すま』感が出ていて、笑ってしまいましたが)、そんなに悪い人とは思えない。

 ネットでも「太郎はそこまで悪い人間ではないかも!?」といった声が上がっており、「いい男に見えてきた」と、人気も出てきているようです。

 残り2話で発覚する綾子の秘密がわかれば、もっと太郎の人の良さがわかってもらえると思うのですが……。ちなみに原作では最後まで嫌な夫として描かれており「少しかわいそうだった」と原作ファンからも言われている太郎。ドラマ版では、最後どんな感じに描かれるのか、こちらもすごく楽しみです。

 以上、9話のレビューでした。

 次回は“太郎と真弓が急接近!?”と、またまたひと波乱がありそう。そして、綾子は現実をきちんと受け入れるのか? 期待して放送を待ちましょう!

(どらまっ子KOROちゃん)

『正義のセ』安田顕の演技だけが見どころ!“『HERO』パクり”“ご都合主義満載”のNO.1クソ回が誕生!

 吉高由里子主演のドラマ『正義のセ』(日本テレビ系)の最終話が6月13日に放送され、平均視聴率は10.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。前回から1.1ポイントアップし、4週間ぶりに2ケタ視聴率で終了しました。

 ネットでは放送中から、「最終回なのにクソ回」という声が続々と上がっていたのに、2ケタ視聴率だとは……。正直、「この数字は本当なのか?」と疑問です。その理由は後半で説明するとして、早速あらすじから振り返っていきましょう。

(これまでのレビューはこちらから)

■圧力にも果敢に挑む新米検事!

 衆議院議員・中条良成(宅麻伸)の長男・秀成(落合モトキ)が犯した殺人事件を担当することになった凜々子(吉高由里子)。秀成は取り調べで、被害者の入江(佐藤祐基)と肩がぶつかったことでからまれ、抵抗したところ、入江は仕事道具である包丁を取り出し襲ってきたために身を守ろうとしたら、誤って入江を刺してしまったと主張。秀成の主張を裏付ける目撃者も現れる。また他にも、過去に入江が傷害事件を起こしていたことも発覚。事件は正当防衛で解決するように思えた。

 しかし、入江の勤務先である飲食店の先輩板前に入江の人柄を聞くと、好青年であることがわかり、凜々子は疑いを持ち始める。そんな時、事件発生時刻直前に秀成からしつこくナンパをされ、困っていたところ入江が止めに入ってくれた、という通りすがりの女性からの新証言が見つかる。この新証言から凜々子と相原(安田顕)は秀成周辺の捜査も進めることにする。

 そんな中、秀成の父・良成が弁護士とともに港南支部を訪れ、秀成の釈放を要求。拒絶する梅宮支部長(寺脇康文)だったが、良成は検察上層部とのつながりをほのめかし、圧力を掛け、マスコミまでも動かし、世論を検察批判の流れにしようと企んでいた。

 秀成の地元に向かった凜々子と相原は、秀成が通っていた高校へ向かい、向かいにある飲食店に聞き込みをする。すると、昔から秀成は横暴で問題を起こすたびに良成が金で解決していたことが判明。秀成への疑惑が濃厚になる。

 秀成を再び取り調べを行うことに。過去の悪行と新証言を突きつけると、秀成の態度が急変するも、殺意を否定する。そんな中、今度は最初の証言者と良成は裏で繋がっており、利害関係があるという証拠が見つかり、凜々子は3度目の秀成への取り調べを行う。

 何も有力な証拠がないままの凜々子は、入江の最後について秀成を問う。すると、秀成は観念したように、入江を刺したことを認め、良成が「入江から手を出してきたため、身を守るために刺したと証言し、正当防衛を主張しろ」と言ったと告白。今度は良成のもとを訪れ、秀成が自白したことと、殺人罪で起訴することを伝えたところ、良成は観念。「息子のことをよろしくお願いします」と言い残し、事件は無事解決した、という内容でした。

■名作検事ドラマ『HERO』と類似!

 今回の内容ですが、「議員の息子が殺人事件を起こし、父親が圧力をかけてくる」といった刑事・検事ものドラマにはよくある内容です。ただ、放送中、「あれ、どこかで見たことあるな~これ」といった声がチラホラ上がり、よくよく考えてみたら、今回の話、2001年に放送された『HERO』(フジテレビ系)の第2話「帰れないふたり」にそっくりなんです。こちらの方の内容も「代議士の息子が殺人事件を起こし、弁護士が圧力をかけてくる」といったもの。父親と弁護士の違いと、事件の内容が違うだけで、後は全部一緒。被疑者の顔に殴られたアザがあるのも一緒。証言者が被疑者を庇って被疑者に都合のよい証言をするのも一緒。

 最終回でついに“パクり”に走るなんて、衝撃過ぎます(笑)。放送開始直後から『HERO』と比較され、「出来が悪い」と言われてきました。だからと言って、最後の最後でパクりをするとは……。これは、批判している人たちへのあてつけなんでしょうか? それも、『HERO』では第2話と始まったばかりにやっていたライトな内容の作品を最終回という見せ場に持ってくるとは、何を考えているのか。作品の選択ミスなのか脚本家のネタ切れが原因なのかわかりませんが、本当、最終回ぐらい本気でやってほしい。「視聴者をバカにするな」と言ってやりたいですね。

■最終回にしてベストオブ“クソ回”が誕生!

 今回、Twitterで一番多かったコメントが「今までの回で一番ご都合主義だった」という批判。「最終回だからいう。ご都合主義がすご過ぎて最高にクソ!」「この展開は現実社会ではありえないでしょ!」といった声が続々と上がり、最終回だけ見たという人からは「見てなくてよかった」「時間の無駄」と厳しい声も上がっていました。

 視聴者が気に食わなかったというシーンは大きく言って2カ所。

 秀成から自白を取るシーンがあるのですが、秀成は昔からわがままで横暴な人柄だと捜査でわかっているのですが、そんな人間を凜々子は「入江の最後の言葉や様子を教えてくれ。入江の彼女に伝えたいから」と“泣き落とし”で自白させようとするのです。これ、普通に考えて無理でしょ。20年以上性格悪いまま生きてきた人間が、泣き落としで自白するとは思えません。でも、なぜか凜々子の5分程度の演説で完落ちするんですよ(笑)。「はい、出た~ご都合主義~」と言うしかありません。

 また、父親の良成に秀成を殺人罪で起訴すると伝えに行ったシーンも酷すぎる。凜々子はこれまた泣き落としで理解してもらおうとするのです……。息子の釈放のためにメディアを操作し、検察に圧力をかけるという悪徳議員だった父親が20代半ばの新米検事の言葉で理解すると思いますか? これだけ悪事を働いている人間が変わるなんて普通ありえませんよね。それが、なんと、ものの3分で「息子をよろしくお願いします」と凜々子に向かって頭を下げたんです(笑)。

 今までも凜々子の説教で自白するというシーンばかりで正直うんざり。宗教団体の集会を見てるような気分がしてドン引き。凜々子は教祖さまですか?

 そして、一番びっくりしたのが、息子の殺人を隠し、正当防衛にしようと企んでいた父親には議員辞職だけで、法律のお咎めなし。「おい、権力に負けてるぞ! 『正義のセ』と真逆だぞ!」と思いっきり突っ込んでしまいました(笑)。

 一応、検察監修の方がいるようですが、本当にアドバイスをもらっているのでしょうか? 家族に対し、事件内容をペラペラしゃべり、証人保護はガン無視していましたが、監修の方は何も注意を入れてないのかと疑問です。もしかしら、名前だけ貸してるのかもしれませんね!

■1番の功労者は安田顕!

 同ドラマで、唯一のよかった点をあげるとしたら、凜々子の担当事務官役だった安田顕の演技です。保育園事件の回での、泣きの演技や、凜々子とすこしずづ打ちとけ合っていく姿など、実にうまいです。

 そして今回、最もよかったと視聴者から絶賛されていたのは、最後に凜々子を検事としてほめるシーン。「セリフにジーンときた!」という声がたくさん上がっており、凜々子の演説シーンよりも視聴者には響いた模様。中には安田を見るためだけに同ドラマを見ていたという声も。Twitterでは毎回、吉高へのコメントよりも安田への評価の声の方が多く、もしかしたら、影の主役は安田顕だったのかもしれませんね。

 以上、最終回のレビューでした。

 同僚検事・大塚(三浦翔平)との関係がきちんとしないまま終わってしまったため、もしかしたら、続編やスペシャルドラマがありそうな予感。ただ、最終回で酷すぎるクソ回を見せられただけに、今回のように2ケタは難しいかもれません。もし、やるとしたら吉高よりも人気のある安田顕のスピンオフをやってくれることを願っています。

(どらまっ子KOROちゃん)  

『シグナル』最終話は、ご都合主義のオンパレードで混線の末、衝撃のぶん投げラスト!

 坂口健太郎の初主演連続ドラマ『シグナル 長期未解決事件捜査班』(フジテレビ系)の最終回が12日に放送され、平均視聴率9.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。前回から1.9ポイントアップとなりました。

(前回までのレビューはこちらから)

 2000年に起きた女子高生集団暴行事件で、兄・亮太(神尾楓珠)が濡れ衣を着せられ、その結果、自殺で失ってしまったという暗い過去をもつ三枝健人(坂口)刑事。しかし前回、亮太は実は他殺だったということを知り、“過去とつながる無線機”を使って、当時の世界を生きる大山剛志(北村一輝)に助けを求めました。

 そして今回、その続きからとなったのですが、大山は一歩及ばず、すでに亮太は殺されてしまったあとでした。しかし、現場に残されたコップには、亮太のものではない微量の血液が見つかり、警視庁捜査一課の刑事部長・中本慎之助(渡部篤郎)が怪しいと睨んだ大山は、中本のタバコの吸い殻をこっそり盗み出し、DNA鑑定に回します。

 一方、18年現在に生きる健人も、上司の桜井美咲(吉瀬美智子)とともに、中本の悪事を暴くべく捜査を開始。中本と裏でつながっていたものの、今は逆に命を狙われ逃走中の身である元暴力団員・岡本紀夫(高橋努)と接触を試みます。

 ところが、この動きを察知していた中本が殺し屋を手配し、岡本は射殺。健人も腹部を撃たれ、救急車で搬送されてしまいます。意識が薄れていく中、健人が心配するのは大山の身。本来のタイムラインでは、大山は谷原記念病院で、中本の右腕である岩田一夫(甲本雅裕)に射殺されてしまうことになっているのです。

 実は前回、例の無線機を使い、美咲が大山に「谷原記念病院へは行くな」と忠告。しかし、正義感の強い大山は見過ごすことができず、谷原記念病院へと向かいます。そして案の定、岩田につかまり、命の危険にさらされてしまうのです。

 ただ、大山は病院へ向かう前、部下にメモを残していたため、駆け付けた彼らに救助され、一命を取り留めます。

 一方、救急車で搬送中だった健人は絶命。目を覚ますとそこは見知らぬ部屋で、自分の名刺を見ると、未解決事件捜査班の刑事から地域課の警察官に肩書が変わっていることに気づきます。つまり、無線機によって過去が変わったことで、健人の人生にも変化が生じたのです。

 しかし大山は、中本殺害事件の重要参考人とみなされ失踪。事情は異なるものの、行方不明という事実は以前と変わらないのでした。

 そんな中、健人は、大山から郵送されてきたという封筒を母・美紀(高野志穂)から受け取ります。そしてその中には、中本と衆議院議員・野沢義男(西岡徳馬)の癒着関係の証拠となるフロッピーディスクと、彼らの悪事を暴いて欲しいという旨が書かれた手紙が入っているのです。

 封筒の消印を頼りに龍宮岬を訪れる健人。車を運転するシーンに、「諦めない限り未来は変わる」という健人のナレーションが挿入されます。そしてそこへ、真っ白な光に包まれた部屋で大山がベッドから起き上がり、窓辺に立ってカメラを振り返る、という清純派女性アイドルグループのMVの一場面のような、フェアリー感あふれる映像がかぶります。

 なんじゃこりゃ、と思いつつ見ていたら、ここでまさかの終了。え、終わり!? 一瞬、我が目を疑い、そして次に、今回が最終回という我が認識を疑ったのですが、まぎれもなく今回がラスト。あまりのぶん投げっぷりに、しばらく絶句してしまいました。

 いや、狙いはわかるんです。名作ドラマや映画などには、余韻の残る素晴らしいラストがつきもの。「主人公たちの人生はこの後、どうなってしまうのだろう」と、視聴者に想像を喚起させるようなシーンですね。

 ただ、このドラマに関しては、“過去とつながる無線機”というミステリー要素があるんですよ。この超常現象を説明するのは無理でしょうけど、「いやぁ、あれは何だったんだろうね」と、健人と大山が語り合うなり何なり、何かしらのフォローは必要だったのではないでしょうか。

 それと、その無線機でのやりとりが、今回はこれまでにも増して混線模様でした。谷原記念病院を訪れた大山が、第1話で無線機を発見したばかりの健人と通信していたりと、時間軸がごっちゃごちゃでワケがわかりません。

 で、過去が変わったことで現在に変化が生じても、健人だけはなぜか以前のタイムラインの記憶が残っているんですよね。今回に限ったことではなく、このドラマは総じてご都合主義のオンパレードでした。

 まあ、でも、時空を超えて通信できる無線機をストーリーの主軸に置いてる時点で、突拍子もなく都合がいいドラマであって、それを指摘したら元も子もなくなってしまうんですけどね。ただ、無線機以外の部分ではリアリティーを追求して欲しかったな、というのが全話を振り返っての感想です。

 しかし、主演の坂口が回を追うごとに成長を見せたことは、演劇業界にとって大きな収穫だったのではないでしょうか。大山役の北村も熱演を披露していただけに、今度は無線機抜きで、単純にバディものが見てみたいな、という気もします。ラストシーンをぶん投げてしまったため続編は難しいでしょうが、フジテレビ版“相棒”に期待します。
(文=大羽鴨乃)