実写版サンダーバードだった『下町ロケット』SP 映画、ラグビーW杯へと続く池井戸ユニバース!

 お正月もやっぱり熱かった、阿部寛主演の熱血理系ドラマ『下町ロケット』(TBS系)。昨年12月23日に最終回を迎えた『下町ロケット』第2シリーズは「ダーウィン・プロジェクト」と雌雄を決することなく終わったために消化不良状態でしたが、1月2日にオンエアされた実質的な最終回『下町ロケット 新春ドラマ特別編』は爽快感溢れる大団円となりました。感動のフィナーレを振り返りましょう。

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 まずは最終話で描かれなかった、「帝国重工」のダーティ重役・的場(神田正輝)vs.重田(古舘伊知郎)&伊丹(尾上菊之助)ら下町連合による「ダーウィン・プロジェクト」との決着戦です。重田たちの農業ロボット「ダーウィン」は“下町トラクター”として農家に大好評、一方「帝国重工」が売り出した農業ロボット「ランドクロウ」は営業的な苦戦を強いられます。社内での立場が危うい的場は、なりふり構わず「ダーウィン」を潰しに掛かります。

 的場のやり口とは、「ダーウィン・プロジェクト」に関係している下請け企業に、「今後は帝国重工で仕事ができなくなるよ」と脅すという卑劣なものでした。長いものには巻かれろと、多くの中小企業は「ダーウィン・プロジェクト」を抜けることに。一時的に重田たちは窮地に追い込まれますが、人を呪わば穴二つです。的場は自分で自分の墓穴を掘ってしまいました。

 

■的場も巨人軍も設計思想が古い

 重田たちのピンチを救ったのは、あの悪徳弁護士・中川(池畑慎之介)でした。弁護士資格は剥奪されたはずですが、重田の会社「ダイダロス」の法律顧問として復活したのです。毒は毒をもって制す。中川元弁護士は、的場の下請け企業いじめを公正取引委員会に訴え、さらに「週刊ポスト」にネタをリークするのでした。「佃製作所」を苦しめてきた中川ですが、的場を社会的に葬り去るという大きな仕事をやり遂げます。ヘビ野郎、グッドジョブです!

 佃社長(阿部寛)は複雑な心境で、的場と重田たちの抗争をマスコミを通して見守っていました。技術力やサービスで競い合うのならともかく、これではお互いの足を引っ張り合うだけで、ユーザーである農家のためにはなりません。佃社長の不安は的中しました。的場への長年の復讐を果たした重田と伊丹ですが、終わってみれば復讐を遂げたことを一緒に喜んでくれる家族も仲間もいません。残るのは空虚な気持ちだけです。そうしている間にも、「ダーウィン」が農作業中に停止してしまうという事故が多発するのでした。

 謝罪会見を開いた的場は「帝国重工」を辞職しますが、すれ違った財前部長(吉川晃司)に向かって「帝国重工は勝つしかないんだ」と捨て台詞を吐いて去っていきます。でも、これはどうなんでしょうか。プロ野球の巨人軍は強豪チームの主力選手を抜き取ることで目先の勝利を得ることを常套手段としていますが、それではいつまでもチーム力の底上げにはなりません。的場が指揮した農業ロボット「アルファ1」は審査機関から「設計思想が古い」と酷評されました。的場も巨人軍も、目先の勝利しか考えない発想事体がもう古くさいのではないでしょうか。そういった思考回路では、業界の盟主になることは到底不可能です。

 

■災害救助隊、出動せり!!

 場面は新潟県燕市へと移り、物語はいっきに佳境へと向かいます。「帝国重工」と「佃製作所」が提携して完成させた「コンバイン・ランドクロウ」の零号機が、殿村(立川談春)の実家の田んぼに導入されます。当初は農業ロボットを毛嫌いしていた殿村パパ(山本學)も大喜びです。そんな折、大型台風が接近。天気予報では関東地方に進むはずだったのに、台風は進路を変えて信越地方を直撃します。「ランドクロウ」のお陰で、殿村家は稲刈りを台風前に済ませる算段が立ちましたが、殿村にひとりの男が泣いてすがってきました。

 殿村に泣きついてきたのは、これ見よがしに「ダーウィン」を購入した稲本(岡田浩暉)でした。農林協の吉井(古川雄大)と一緒になって殿村家にせこい嫌がらせをしてきた稲本ですが、稲本家の稲が全滅することは放っておけない殿村は、絵に描いたようなお人よしです。殿村家のサポートに駆け付けてきた佃社長と天才エンジニアの島津(イモトアヤコ)は、「ランドクロウ」に入力されている地図データを「ダーウィン」のものと書き換え、「ランドクロウ」を稲本家の田んぼへと向かわせます。その陰には、北海道農業大学の野木教授(森崎博之)と「帝国重工」側の責任者・財前部長の理解と協力がありました。

 大型台風が間近に迫り、猛烈な暴風雨が襲い掛かります。果たして1台の「ランドクロウ」だけで収穫は終わるのでしょうか。絶望マックス状態のとき、地平線の向こうからヘッドライトが輝き始めました。自然災害対策にと「帝国重工」がスタンバイしていた「ランドクロウ・キャラバン」が、財前部長の出動命令でついにその全貌を明らかにしたのです。コンテナに搭載されていた初号機から六号機、そして零号機を含めた計7台の「ランドクロウ」が稲本家の田んぼへと降り立ち、黙々と作業を開始します。まるで往年の特撮人形劇『サンダーバード』(1966年~67年)の実写版を観ているかのような大スペクタクルシーンです。真っ赤なレインコートを来た吉川晃司は、戦隊ヒーローの司令官のようなかっこよさでした。地味な展開が続いた『下町ロケット』第2シリーズでしたが、SFパニック映画を思わせる迫力満点なクライマックスが用意されていたことにびっくりです。

■企業が抱える問題点は映画で描かれることに

 台風に立ち向かう「ランドクロウ」たちの一昼夜にわたる奮戦を、軽部(徳重聡)たちは「佃製作所」のテレビで見守っています。ひねくれ者だった軽部ですが、自分たちが開発した「ランドクロウ」に向かって「がんばれよ~」と父親らしい表情でエールを送ります。すっかり残業大好き人間になった軽部。心臓が弱い実の娘の病院への送り迎えは奥さんに任せているのかが、ちょっと気になりますが……。

 台風の夜が、そして「ランドクロウ」たちの無言の働きぶりが、みんなの心を変えました。立花(竹内涼真)は自分たちが苦労して開発した特許を、トランスミッションの不具合が発覚した「ダーウィン」に使わせることに大反対していましたが、考えを改めました。藤間社長(杉良太郎)の「我が社が作っているのは心だ。下請け企業が力を発揮できる環境をつくってこそ帝国重工だ」という決め台詞によって、「帝国重工」も他社への特許使用を認めることに。かくして、ライバルだった「ダーウィン」は製造中止の事態を免れたのです。すべては目先の利益や勝ち負けではなく、日本の農業を、そして日本の未来を明るいものにしたいという佃社長の英断から生まれたものでした。「帝国重工」への復讐のためにダースベイダー化していた伊丹社長は、人間らしい素顔に戻り、感謝の涙を流すのでした。
 
「ダーウィン」の不具合を開発主任の氷室(高橋努)が黙殺しようとしたり、「帝国重工」の製造部長・奥沢(福澤朗)が「アルファ1」の不備を野木教授や「佃製作所」の責任に押しつけようとした商品の安全性に関する問題点は、2月1日(金)から全国公開される池井戸潤原作の映画『七つの会議』でより深く掘り下げられることになります。監督は『下町ロケット』の福澤克雄チーフディレクターです。さらに9月20日(金)から日本で開催される国際的ビッグイベント「ラグビーワールドカップ2019」に先駆けて、7月期には池井戸原作&福澤ディレクターによる連続ドラマが予定されているそうです。福澤ディレクターは慶應大学時代にラグビー部の主力選手として日本一に輝いています。熱さ200%のスポーツドラマになることでしょう。

 異例となる年またぎで完結した『下町ロケット』第2シリーズ。『新春ドラマ特別編』の視聴率は14.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)でした。お正月3日間のゴールデン帯とプライムタイム帯で全局トップに立ったテレビ朝日の看板ドラマ『相棒season17元旦スペシャル』が15.5%、1月3日放送の『科捜研の女 正月スペシャル』が11.4%だったので、かなりの健闘だったと思います。内容的にも満足度の高い2時間15分でした。

 大企業から転職してTBSに途中入社した福澤ディレクターが1964年生まれ、理系大学出身の伊輿田英徳プロデューサーが1967年生まれ。『新春ドラマ特別編』は国際救助隊が活躍する『サンダーバード』の実写版であり、また年末に放映された最終話には『ウルトラセブン』(TBS系)に主演した森次晃嗣が首相役を演じました。福澤ディレクターや伊輿田プロデューサーたちが子どもの頃に夢中になっていたスーパーヒーローたちを現代に蘇らせたのが、『下町ロケット』だったのではないでしょうか。佃社長や財前部長に憧れるエンジニアの卵が、『下町ロケット』から生まれるといいなと思います。
(文=長野辰次)

食べることは生きること『忘却のサチコ』最終回 “サイコな俊吾さん”で「シーズン2」はあり得るのか?

 前回、幸子(高畑充希)の元に突如戻ってきた元・新郎の俊吾さん(早乙女太一)。結婚式の最中に突如失踪し、その後偶然旅先(宮崎)で再会するも再度失踪、そんな「どのツラ下げて」な俊吾さんがついに……。

 グルメドラマなのにグルメどころじゃなくなってる『忘却のサチコ』(テレビ東京系)最終回を振り返ります。

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■何事もなかったような俊吾が怖い

 俊吾が現れるや否や、幸子に恋心を抱いている後輩の小林(葉山奨之)は「今さらどういうつもりで!」とブチ切れる。もともとモンスター後輩だったのに今や実に常識人、かつ幸子の一番の理解者。

 もうこの子とくっつけばいいのに! と何度も思ってきたが、そうは原作が許さない(想像ですが)。すかさず「ご紹介遅れました、こちら俊吾さんです」と、いつものように馬鹿丁寧にことを進めようとする幸子だが、内心かなり慌てている様子。

 そして渦中の俊吾さんは、「いつも幸子さんがお世話になってます」と笑顔で挨拶、こちらは未だ、まったくもって真意が読めない。

 少なくとも今まで幸子へしてきた仕打ちを気にもとめず、平然と笑顔で挨拶してくる様子は、とんでもないサイコパス野郎。手土産に生鮭を一匹渡すところも、もはや不気味。

 そんな俊吾に「行こう」と言われ、迷いつつも着いて行く幸子。残された小林の気持ちを思うとなかなか辛い。

 幸子の家に着いてからも、いなくなった理由を聞きたい幸子の気持ちをよそに、生鮭の保冷を気にしたり、幸子の身長が伸びたことに触れたりと、まったく心が読めない俊吾。

 もうここまでくると外見はそのままで中身が宇宙人に乗っ取られてるとかじゃないと説明がつかない気がする。映画『ゼイリブ』みたいに。

■さよなら、俊吾さん

 次の日、仕事も手につかず帰宅した幸子は、真意を問おうと家事をする俊吾に背後から近づくも、結局背中を抱きしめてしまう。絵に描いたような「好きになったら負け」っぷり。

 小林にやんや言われても、つい俊吾をフォローしてしまい、「それで佐々木さんが幸せならどうぞご自由に」と呆れられてしまう。

 今まで合理的な正解しか選んでこなかった幸子が初めて見せる間違った選択の数々。

 そんな中、担当作家・姫村(長谷川朝晴)との打ち合わせで(幸子は文芸雑誌の編集員)、その姫村が言った「見たいものを見に行くのが放浪、見たくないものから逃げのが逃亡」という何気ない一言が、幸子に突き刺さる。

 俊吾は果たして、ただの気まぐれな放浪だったのか、それとも幸子との結婚が嫌で逃亡していたのか……?

 それを幸子が確認しようとする前に、俊吾がついに失踪について幸子に詫びる。

「どんなに謝っても許してもらえないことをしたと思ってる。本当にごめんなさい」と土下座。

 気持ちを落ち着かせるかのように、第1話の鯖味噌からの今までの忘却遍歴を語る幸子。そして、核心を突く。

「なぜ結婚式のあの日、私を置いて逃げたのですか?」

「嫌なものから目を背けたかっただけなんですよね? 本当は私と結婚したくなかったんですよね? あの日、私から逃げたんですよね?」

 謝りながらも今でも幸子を愛していると言いかけた俊吾を遮って幸子は言う。

「ダメです、もう逃げてはダメです。私ももう逃げません。私、きちんと俊吾さんを忘れます」

 当の幸子も現実から「逃亡」していたのだ。心からの「忘却」なんてできちゃいなかった。

 俊吾のことを好きだったと告げつつ、握ろうとしてきたの俊吾の手を振り払って幸子は言った。

「さよなら俊吾さん」

 ラブイズオーバー。

■別れた直後の一人石狩鍋

 一人になった部屋で、残された食べ頃の2人前の石狩鍋をキチンと味わう幸子。おじやまでちゃんも作って食べた。俊吾オススメのバターも入れた。

 普通なら一番食欲がなくなるタイミングなのかもしれないが、幸子は食べた。忘れようとしていたからなのか、忘れないようにしたからなのかはわからない。

 バターと味噌の相性を確かめながら言う。

「んー、間違いない。うん……間違ってない……」

 少なくとも幸子が前を向いていたことだけは間違いないだろう。

 不条理な死を扱うドラマ『アンナチュラル』(TBS系)では、主人公がやたらとものを食べるシーンが生々しく挿入されており、食事が「生」の象徴として描かれていた。

 違うドラマの褌を借りるような言い方になってしまうが、幸子のこの食事にも同じようなメッセージを感じた。

「生」とまで言わないが、幸子のこの食事は前を向いて歩いてゆくこと=それでも生きていくことの決意なのだろう。

 毎日ルーティーンになってしまっている食事というものの本来の意味を考えさせられる。

 こんなに重い「飯テロ」も珍しい。飯テロというか「飯哲」。飯の哲学。お腹も空くし頭も使う。そして結局余計お腹が空く。

『アンナチュラル』を見てお腹が空くことはあまりなかったから、やはり『忘却のサチコ』はこれまでにないドラマだ。

■シーズン2はあるのか?

 翌日、腫れ物に触るように接してくる職場仲間を昼飯に誘う幸子。

 幸子が連れてきたのは第1話の三宝食堂(東府中)。幸子が『忘却』に目覚めた鯖味噌定食を全員で食べる。ドラマ最後の晩餐。大人数で食べるのことのよさがなんとなく伝わってくる。

 その時、食堂のテレビの街角中継に、南の国へ放浪してるはずの俊吾さんの姿が映る。

「サチコさん、メリークリスマス! 待っててね、必ず帰るから!」

 笑うところなのかも知れないがここは完全にホラーだと思った。

「ご心配なく、綺麗さっぱり忘却しましたから」と幸子は言っているが、この俊吾さんの放浪はシーズン2がいつ来てもいいための布石だろう。

 しかし、ここまで俊吾さんが不気味に描かれてしまうと、次から幸子が悩みにくいのではないだろうか?

 もしくは次からは単にストーカーと化した俊吾さんのあの手この手の嫌がらせから『忘却」するために食べる話になるのだろうか。

 まあ未確定な先の話はさて置き、少なくとも幸子が前を向けたのだから、これはこれでハッピーエンドなのだろう。

 最終回は雑に扱ってしまいがちな自分をちゃんと労ってやりたくなるような回で、前向きに胃袋に何かを入れてあげたくなるような回でした。

■俊吾さんは困難の象徴?

 ふざけた回から考えさせられる回まで、実に振り幅の広いドラマで、正直どういう流れで見ていいのかレビュー的に難しいところもあったのだが、見終わった瞬間感じたのは、そんな細かいことなどどうでもいいという爽快感。

 結局、俊吾さんの整合性などどうでもよいのだ。象徴としての「困難そのもの」だと思うと見やすくなる。最後はそんなずるい見方になってしまいました。

 原作の幸子はもっと機械的でコミカルだし、ドラマほど生々しい弱さや人としての悩みを露わにしなかったので、ドラマは結末も含めて別物として見るのが正解だろう。

 別物と言ってもしっかり手を抜かず、原作が続行してる中で、作る側の試行錯誤や遊びがふんだんに盛り込まれていたので、毎回新鮮に楽しめたのがよかったです。

 なんなら最後、俊吾さんがやはり宇宙人に乗っ取られていて突如エイリアンとの死闘に変わるとか、ロバート・ロドリゲス的な展開も期待してしまったので、シーズン2ではさらなる遊びを期待してます!
(文=柿田太郎)

『忘却のサチコ』今度は本格ラップ! なんでもこなす高畑充希の器用っぷり

 年末を迎え、今夜最終回を迎える『忘却のサチコ』(テレビ東京系 )。第11歩(第11話)となる「YO! 夜明けのソルロンタン」を振り返ります。

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■「作家」は曲者だらけ

 担当している姫村先生(長谷川朝晴)の執筆の相談に乗る編集者・佐々木幸子(高畑充希)。

 だが幸子は、小説の登場人物が「なぜ結婚破談になったか?」という話題において、「ケッコン」や「ハダン」の言葉が言えない。

 あげく、結婚式の当日に新郎に逃げたられた記憶が蘇り、フリーズしてしまう。

 その新郎こと俊吾さん(早乙女太一)がどこにいるのか? なぜいなくなったのか? の部分が、もはやグルメパート以上にキモになってきている。今回も出てきた食事は1回のみ。多い時は立ち食い的なのを含め3回くらい食べたりするので、やや少ない印象。

 それはさておき、公園で佇む幸子の背後から、芝の斜面を段ボールに寝そべり、身体を揺すりながら滑って登場した笑顔の姫村先生の不審者感は際立っていた。

 一見ちゃんとして見える人物だけに、そのポテンシャルは未知数。

 このドラマを見ていると、文芸作家というのは異常な人しかいないのだな……と錯覚してしまうほど、ジーニアス黒田(池田鉄洋)といい有村先生(大和田伸也)といい、クセの強い作家ばかり登場する。

 特に幸子ら編集者側からは“機嫌を損ねてはならない相手”だけに、余計にそう描かれているのかもしれないが、このドラマの魅力の1つが曲者だらけの作家先生たちなのは間違いない。

 ちなみに姫村を演じる長谷川朝晴は元ジョビジョバだし、コメディ芝居が上手いのはもちろんなのだが、タレントの千秋のリアル同級生で仲も良かったと知り、不審者感の細かい演技が上手いのも、なぜか納得してしまった。

 

■俊吾は「クソ野郎」

 幸子は編集部の後輩・小林(葉山奨之)の協力のもと、姫村の執筆に生かすべく、結婚が破談になった相手に取材をすることになるのだが、取材の席で聞く破談経験者の意見が、つらい記憶を刺激し、ギアが一段上がってしまう。

「何か止むに止まれぬ理由があったんですよね? 例えば元恋人が、実は血のつながった兄弟だったと判明したとか? そして、許されざる愛から身を引かれた……」

「違います」(破談経験者)

「もしくは、なんらかの組織に命を狙われていて彼女の身を危険から守るために」

「違います」

「もしくは実家が倒産して、莫大な借金を……」

「抱えてません」

「披露宴の最中に突然記憶喪失に……」

「なってません」

 幸子の「何か止むに止まれぬ事情があってほしい」感が溢れ出し、取材される破談経験者も段々とぶった切るように否定しだす。普通に考えたら重い内容なのだが、台詞がいいのか見ていて気持ちのいい掛け合い。

 結局、統計すると「なんとなく好きではなくなった」という漠然とした理由が多く、それに納得できない幸子は、もっと徹底的に調べた方が……とムキになる。

 そんな幸子を、「これ以上、傷口に塩を塗るようなことはしなくても」と小林がなだめる。幸子の「傷口」に、初めてしっかりと触れる小林。

 腫れ物に触るような人たちばかりの中、この小林の踏み込みは新鮮だ。

 さらに、一度再会してるのに再度逃げられ(第7話)、それでも俊吾を信じようとする幸子に、振り向いてもらえない小林の想いが爆発する。

「馬鹿なんですか? 現実見てくださいよ? 2年も付き合った結婚式当日に紙切れ一枚で逃げて、再会しても紙切れ一枚で逃げて、そういう奴をなんて言うかわかりますか? クソ野郎って言うんですよ」と痛烈。

 好きだからこその苛立ち。

「本当に優しい人間が逃げるわけないでしょ? まだそんな人間を引きずってるなんて、佐々木さんも佐々木さんですよ」

 言うだけ言ってしまった後、我に返り後悔するような小林が切ない。

■ラップも上手い高畑充希

 所変わって、幸子の勤め先・文芸誌さららの忘年会。居酒屋とかではなく、温泉の大宴会場のような場所を借り切って全員浴衣での本格的な宴会だ。

 ここで披露される部下たちの一芸を、編集長(吹越満)は「つまらなかったら次の年、あらゆる企画が通らなくなる」ほど楽しみにしてるらしい。

 幸子も例によって生真面目に宴会芸を考えているようで、その候補リストにチラッと見えた文字は、二人羽織や似顔絵描き、作家先生のモノマネ(ジーニアス黒田)と比較的オーソドックスなものから、「一発ギャグ20連発」というリスクの高いものまで並ぶ。

 中には「Tシャツ何枚重ね着できるか」、という「演目」もあり、幸子がいかにこの宴会芸に真剣に取り組んでいるかがわかる。

 その宴会芸で、小林はなんとオペラをアカペラで披露。『夢遊病の女』(ヴィンチェンツォ・ベッリーニ)の中から「どうか許しておくれ、愛しい人よ」を熱唱。

 どうやら強く当たってしまった幸子に謝ってるつもりらしいが、当の幸子は仲居さんにデザートを出すタイミングを指示しており、まったくその歌を聞いてない。聞いててもイタリア語なのでわかるかは不明だが。

 そして、幸子の出番。

 B-BOYの格好で登場した幸子が、シンプルなトラックに乗せてライムを繰り出す。

 それもとりあえずできないなりにラップしてみましたというより、日々、逆おしくらまんじゅうみたいに、井戸端会議みたいに向かい合ってラップでけなし合うやつ(サイファーと言うらしい)やって腕磨いてますといった感じで本格的。

 自己紹介からの「編集のお仕事紹介、必要なスキルは長文読解、読んだ原稿奥深い、校了終えたら即公開、センテンス組み合わせ作る世界、力合わせて交わすは誓い、私たちで作ろう出版業界ーー!」。

 盛り上がる浴衣姿のオーディエンスたち。

 なんか韻を踏んでると「凄い感」が増し、盛り上がりそうなので、若手が宴会芸を披露する際、ラップは意外とありかも。鼻に付く危険性も多分にあるが。

「なんか不思議と上がるな」とご機嫌な編集長だが、後半から盛り上がりのための人柱に選ばれ、ディスられまくる。

「say! 編集長(編集長)長! 長! 長! ゲラチェックをお願いに、そこで見たのはスマホゲーム、こっそりこそこそスマホゲーム(スマホゲーム)、そこで見たのはPC動画(PC動画)!」

 上司をいじって盛り上がるのは、内輪の集まりの鉄則。しかし異様に盛り上がってしまっていただけに、幸子がこの先どこか理不尽な部署に移動させられないかが心配だ。

 

■新大久保で牛骨スープ

 明け方お開きになった後、小林は幸子をソルロンタンの朝食に誘う。

 ソルロンタンは韓国料理で牛骨で出汁を取ったスープ。乳白色でこってりしていそうだが、実はあっさり味で朝飯にもぴったりだという。

 ある程度食べた後、キムチやカクテを混ぜて味変えしてもいいし、ご飯を投入して、おじやにしてもいい。

 石焼の器だからご飯投入後も熱が保たれるのがうれしい。

 調べてみるとこの店は新大久保の「とまと」というサムギョプサル専門店。しかしランチでソルロンタンの定食があるらしいので、サチコ体験したい人は是非。

 

■またまたまた、俊吾さん登場

 帰り道、先日の件を謝り仲直りしつつ、幸子への恋の告白をしかける小林。

 しかし告白する寸前、橋の向こうから現れたのは、なぜか生鮭の発泡スチロールを抱えた俊吾さん。

 漁師っぽいかっこをしてるのが気になるが、しっかり「ただいま」と微笑むその姿は、紛れもなく俊吾さん本人だ。

 三崎漁港に行った際、まるで似ていない地元漁師(東京03・角田晃広)を俊吾だと空目していたことがあった(第4話)ので油断はできないが、いよい大団円だし、さすがに本人であってほしい。

 俊吾さんが消えた理由は気になるものの、それが解決すると幸子が『忘却』する必要もなくなってしまうので、なんとも複雑だ。

 いよいよ今夜最終回。

 来期のドラマ『メゾン・ド・ポリス』(TBS系)で、西島秀俊、小日向文世、野口五郎、さらに近藤正臣ら豪華キャストと共演する幸子、いや充希。

 このドラマを見てると不器用な幸子に親心を抱いてしまうので、次期ドラマへ無事旅立てるのかとお節介にも気になってしまう。まずはこちらの最終回、楽しみに待ってます。

(文=柿田太郎)

 

壮大な会社コントとして終わった第2シリーズ!! ブラック企業と紙一重な『下町ロケット』最終話

 直木賞作家・池井戸潤のベストセラー小説を原作にした、阿部寛主演の熱血理系ドラマ『下町ロケット』(TBS系)。ロケット開発を夢見てきた中小企業の社長の決断が、日本の農業を、そして技術立国・日本の未来を明るいものへと変えていきます。さまざまな悪役が登場した第2シリーズは、どのような結末を迎えたのでしょうか。『下町ロケット ヤタガラス』最終話を振り返りたいと思います。

(前回までのレビューはこちらから)

 佃社長(阿部寛)率いる「佃製作所」が開発した小型エンジンとトランスミッションを搭載した改良型農業ロボット「アルファ1」。敵対する重田社長(古舘伊知郎)が主導して完成させた「ダーウィン」とリターンマッチする機会が訪れました。農業ロボットの評判を耳にした首相の前で、再びデモンストレーション対決することになったのです。

 メインキャストに落語家の立川談春、バラエティータレントのイモトアヤコといった意外性のあるキャストを起用したことで話題となった『下町ロケット』ですが、最終話も「そう来たか!」と思わせるキャスティングでした。首相役は誰かと思いきや、SFドラマの金字塔である『ウルトラセブン』(TBS系)の主人公モロボシ・ダンを演じた森次晃嗣ではありませんか。地球を侵略宇宙人や凶暴な怪獣たちから守ってくれたスーパーヒーローが、日本国総理大臣に就任していたとは驚きです。恋仲だったアンヌ隊員(ひし美ゆり子)と無事に結ばれ、日本国籍を手に入れたのでしょう。

 多忙な首相は、「ダーウィン」のデモだけ見たら、さっさと帰るそうです。このことを知った「帝国重工」の重役・的場(神田正輝)は首相の前へ走り寄り「ぜひ、我が社のデモもご覧ください」と直訴します。的場をチラ見した首相は「的場さん? あんまり中小企業をいじめないでくださいよ」とチクリ。首相の皮肉の効いた返しに観客はドッと沸きます。かつてのスーパーヒーローも、長い政界暮らしの中で変身せずとも相手の弱点を突く巧みな攻撃方法を身に付けたようです。

 先行した「ダーウィン」のデモを見届けた首相が退席するのに合わせて、会場に集まっていた観客のほとんども帰ってしまいました。がらんとした会場で改良型「アルファ1」は粛々とデモを行います。前回よりも格段に性能アップしてデモを無事に終えた「アルファ1」ですが、「佃製作所」に再就職した天才エンジニア・島津(イモトアヤコ)だけは浮かない顔をしたままです。親知らずが痛いわけではなさそうです。

 

■最終回を締めたのは、やっぱりアイツだった!

 新潟県燕市にある殿村(立川談春)の実家の田んぼを借りて、実地テストを重ねた「アルファ1」の発売日がようやく決まります。ところが、ここでまた難問発生。3カ月発売日を早めた「ダーウィン」に合わせて、「アルファ1」も発売を早めたい、さらに的場が極秘に自社開発を進めていたものと性能テストを競ってほしいと「帝国重工」側から突き付けられたのです。そんなとき、島津が感じていた不安が現実のものとなりました。荒れた土地を耕す農業ロボットは予想以上に消耗が激しく、トランスミッションの耐久性をアップしなければ市販できないことが分かったのです。

 次々と襲い掛かるトラブルに対し、佃社長は動じることなくドンと構えてみせるのでした。それらのトラブルをクリアできないようでは、農業ロボットが農家の人たちの信頼を勝ち取ることはできないからです。「佃製作所」社員全員で、この難局を乗り切ることになりました。これまでずっとコミュ障っぽかった変人・軽部(徳重聡)ですが、島津がチームリーダーになってからは表情がずいぶん明るくなりました。島津のお陰で、立花(竹内涼真)とアキ(朝倉あき)の面倒を看なくて済み、気が楽になったのです。

 ギアの耐久性をアップすべし、という問題点がはっきりしました。それまでは定時で退社していた軽部に向かって年下の立花が喰ってかかり、そのたびに険悪な空気に包まれていた技術開発部ですが、この日は違いました。いつもは「定時なので帰りま~す」と去っていた軽部が、この日ばかりは「よ~し、残業だぁ!」と自分からキャラ崩壊を宣言したのです。軽部の意外なひと言に、技術開発部のみんなは大盛り上がり、そして視聴者はドテッ。いつもはクールだった軽部の放ったテンション高めな残業ギャグが、結局は第2シリーズ最終話のハイライトとなったのでした。

 的場への復讐に燃える「ギアゴースト」の伊丹社長(尾上菊之助)&重田社長の決着エピソードが年明けの「新春ドラマ特別編」に持ち越されたことで、『下町ロケット』第2シリーズは、ずっと残業を断り続けてきた軽部の心境の変化を描いた3カ月越しの壮大な会社コントとして幕を閉じたことになりました。ひとりの社員が残業を断れない状況に追い込まれるのは、現実ではアウトですが、コントだと思えば笑って済ませられます。

 軽部には生まれつき心臓の弱い娘がおり、病院への送り迎えのために軽部は残業ができないという理由が第10話で明かされました。きっと、娘の体調が最近は安定しているのでしょう。「残業だぁ!」と言った軽部の表情が明るかったことからも、それがうかがえます。もし、そうでなければ、軽部家の犠牲の上で改良型「アルファ1」、あらため「ランドクロウ」は完成したことになってしまいます。それでは、あまりにも悲惨すぎます。

■過去の人気番組を貪欲に取り入れた下町ブランド

 最終話がオンエアされた12月23日は、折しも毎年恒例となっている「ブラック企業大賞」の発表が行われました。平成最後の年となる2018年の「ブラック企業大賞」に選ばれた不名誉な企業は、三菱電機でした。システム開発者や研究職の男性社員5人が、長時間労働が原因で精神障害や脳疾患を発症し、そのうち2人が過労自死を遂げています。「佃製作所」も一歩間違えればブラック企業に認定されかねません。社員が一致団結するのは悪いことではありませんが、残業を断れず、有休も申請できない雰囲気の職場はダメだと思います。

 要は職場のトップ次第でしょう。軽部の上司である山崎部長(安田顕)は軽部の家庭事情を理解していましたし、佃社長も社員それぞれとコミュニケーションを図って、職場の風通しはよさそうです。社会に役立つモノづくりを理想に掲げる佃社長がいることで、給料はなかなか上がりそうにない「佃製作所」の社員たちも不満を漏らさずに済んでいるようです。他人がどれだけ給料をもらっているかを気にするだけの人生では、寂しすぎます。企業名が有名かどうかではなく、働きがいのある職場かどうか。そんなシンプルな問いを『下町ロケット』は投げ掛けているようです。

 イモトアヤコ、古舘伊知郎ら俳優を本業にしていないタレントやフリーアナウンサーたちの起用が目立った『下町ロケット』第2シリーズ。ストーリー展開がやたら速く、バラエティー番組を見ているかのような騒々しさがありました。最終話がまるでコントのようだったこともあり、TBSの往年の看板番組『8時だヨ! 全員集合』の世界を彷彿させました。いかりや長介率いるザ・ドリフターズが笑いに貪欲だったように、『下町ロケット』も面白いドラマをなることに貪欲でした。

 勧善懲悪の分かりやすい世界観は『水戸黄門』(TBS系)、農林協の職員・吉井(古川雄大)のような嫌味なキャラが続々と登場する展開は『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)、中島みゆきの名曲が感動シーンに流れる演出は、『プロジェクトX』(NHK総合)からのいただきです。最終話には『ウルトラセブン』(TBS系)の森次晃司がゲスト出演しました。ベタと思われようが、かつてお茶の間に集まった家族がみんなでテレビを楽しんでいた、そんな古き善き時代のエンターテイメント番組への回帰を目指していたように思われます。「古きを学び、新しきを知る」、それが『下町ロケット』だったのではないでしょうか。

 佃社長たちが情熱を注いだ改良型ロボットが、的場のロボットに性能テストで圧倒的勝利を収めたことで幕を閉じた最終話。的場は「設計思想が古い」と第三機関からダメ出しされるおまけつきでした。そして、最終話の気になる視聴率は16.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)。第1シリーズの最終回22.3%には及ばなかったものの、第2シリーズでは最高視聴率となり、1月2日(水)にオンエアされる本当の最終回「新春ドラマ特別編」への期待をつないだかっこうです。

 また、『下町ロケット』の福澤克雄チーフディレクターが監督した池井戸潤原作の映画『七つの会議』が2月1日(金)から全国公開されることも決まっています。『下町ロケット』では大企業「帝国重工」の融通の効かない保守的な体質が下請けである佃社長たちを苦しめましたが、『七つの会議』はそんな大企業の問題体質にメスを入れる社会派サスペンスとなっています。『下町ロケット』でアキを好演した朝倉あきがヒロイン役で出ているのもチェックポイントです。アキが握ってくれたおにぎりを頬張る夢を見て、平成最後の新年を迎えたいと思います。それでは、みなさんよいお年を。
(文=長野辰次)

『忘却のサチコ』漆黒の三代目登場! 新春の『孤独のグルメ』に登場してほしい

 我が道を行く新感覚グルメドラマ『忘却のサチコ』(テレビ東京系)。第10話では、あの有名店のオムライスに幸子がほだされます。

(前回までのレビューはこちらから)

■「いつも通り=精一杯努める」の幸子

 編集者によるネット討論番組に出演することになった我らが佐々木幸子(高畑充希)。その名も「今必要な恋愛小説」。

 編集長(吹越満)から「いつも通りでいいからな」と言われるも「はい、精一杯努めてまいります!」と高らかに返事する幸子。確かに、いつでも愚直に手抜きなしが幸子の「いつも通り」。編集長はおそらくリラックスさせる意図で言ったのだろうが、そう受け取れない不器用な幸子がかっこいい。

 

■まずは「おやき」で忘却

 しかし本番前、ネット番組→全世界の人が見ている→結婚式当日に失踪した元・新郎の俊吾さん(早乙女太一)が生放送中に現れるかも! と妄想し、パニックになりかけた幸子は、いつものように美味しいものを食べてつらい気持ちを「忘却」することに。

 幸子の目に留まったのは、主催者が長野出身とのことでケータリングに置かれていた「おやき」。

 言わずと知れた、きんぴらやかぼちゃなどの具を小麦の皮で包んで焼いたお惣菜饅頭。

 幸子が選んだのは、定番中の定番の具材、野沢菜。

 奇をてらってない飽きの来ない味は、いつ食べても落ち着く。

 蒸した肉まんよりやや皮が硬めなのも、武骨でいい。素朴を絵に描いたような郷土の味ながら、現代でも通じる惣菜パン的おやつ。

 

■幸子のライバル

 実はこの討論番組のキャスティングは、「月刊スピカ」の尾野真由美(佐藤めぐみ)が裏で手を回し仕組んだもの。

 8話で初登場し、接待の場で幸子に大敗を喫した尾野は、幸子を陥れるために復讐の炎を燃やす、わかりやすい女狐タイプのライバルだ。

 今回も本番前に主催者で司会の社会学者(六角慎司)の手をハプニングを装って握り、色仕掛けに走るなど余念がないが、幸子にストッキングが伝線してることを教えられパニクるなどやはり天敵・幸子にペースを乱される。

 本番中も、社会問題に恋愛を絡めたような作品、読者の知識レベルや倫理観を高められるような小説が必要、毒にも薬にもならない小説は必要ないと強弁し、存在感を示そうと躍起になる尾野。

 それに対し、社会的弱者であろうとなかろうと悩みはさまざまなので、自分の物語だと思える作品を見つけることができるのが「小説」であるから、よって「今必要な恋愛小説」の答えは「全ての恋愛小説」だとある種の正解を出してしまう幸子。

 さらにネット住民が喜びそうな作家と編集者との色恋話をあえて繰り出す尾野に対し、幸子は、小説家とは身体一つで真っ暗な宇宙(未知の世界)へ飛び込んで人類(読者)を新しい世界へと誘うパイオニア「はやぶさ2号」(小惑星探査機)であると、壮大な例えを繰り出す。

 当初そんな存在と恋愛はできないとしていた幸子だが、悩んだ挙句、作家の先生を尊敬しているから、「もし愛する人が作家になったら愛と尊敬を両立させ新しい感情の扉を開くことができるかもしれません」と気持ちを吐き出す。

 尾野が常に視聴者や世論など他者のウケを優先し、ある種、媚びて発言するのに対し、幸子の発言は無茶苦茶ながらも自分の想いが貫かれており、そこに嘘がない。

■幸子は嘘をつかない

 そう、この討論に限らず幸子は嘘をつかないのだ。

 いや、つけないと言ってもいいのかもしれない。

 式の最中に新郎がいなくなった時も、逃げられた悲劇の新婦である以上に、責任を伴う立場の当事者として、自ら状況を正直に淡々と説明、最悪の状況を「以上です」で締めくくり参列者を驚かせた。

 常に嘘がない故に、空気を読むことに長けまくっている現代の世では奇特に見えてしまうことも多いが、そのひたむきさにどこか胸を打たれることも多い。

 他人どころか自らを騙すなど自分に嘘がつけないから、毎度逃げた俊吾さんを思い出しては苦しんでしまうのだろう。

 当初は幸子、というか高畑のコスプレが必ずあったのだが、最近は俊吾さんこと早乙女太一のコスプレに移行してきている。

 今回も、宇宙から来た正義のヒーローや和装の文豪に早乙女が扮しているが、借り物的なコスプレではなくかなりの熱演で、早乙女の新たな魅力を見せてくれている。

 

■三代目登場!

 番組終了後、幸子が立ち寄った店はあの「たいめいけん」。

 オムライスと真っ黒な3代目店長でお馴染みのあの老舗洋食店。

 絶品のカニクリームコロッケやコンソメスープを味わったあと、いよいよ名物タンポポオムライスが到着。

 伊丹十三の映画『たんぽぽ』(1985)でもお馴染みの、切り開くととろとろの卵が溢れるあのオムライス。

 デミグラスソースを纏った卵とチキンライスを口にいれ、思わず目を細める幸子。

 ケチャップもいいが洋食店ならではのデミグラスもいい。

 店長と見分けがつかないくらいの漆黒が卵に映える。

 食べてる最中、第2話のように3代目と踊り出すのでは? とソワソワしたが、無事そういうハプニングもなく終了。3代目の不自然な固い笑顔がよかった。

 ちなみに映画『たんぽぽ』で、このオムライスが登場した時は、デミグラスではなく真っ赤なケチャップをかけている。

 トマトが好物な高畑にはそちらも食べさせてみたかった。

 

■脇役の宝庫

 結局この日も幸子にいいところを持っていかれ、またしてもグギギとなった尾野真由美だが、だんだんその純粋な負けん気が可愛く見えてくるから不思議だ。

 そして、ニコニコ動画らしきサイトで「佐々木さん頑張れ」と必死にコメントを連打する後輩・小林(葉山奨之)も、どんどん存在感を増している。

 そして、堂々としてるがゆえに見落としがちだが、小林より先に「佐々木頑張れ」とコメントを打とうと言い出し、実践していた編集長。

 原作でもそうだが、時折佐々木を想う場面が見られる(恋愛感情かどうかは定かでないが)ので、もっと編集長を活躍させてあげてほしい。

 残りあとわずか。

『孤独のグルメ』新春スペシャルで一部生放送をやるらしいので、そこにサチコがカメオ出演とかしないかなーと期待してますが、叶ったら嬉しいです。
(文=柿田太郎)

『ドロ刑』主演・中島健人はキャスティングミス? “遠藤憲一VS中村倫也”がメインならよかったのに

 ジャニーズの人気グループ・Sexy Zoneの中島健人が主演するドラマ『ドロ刑 -警視庁捜査三課‐』(日本テレビ系)の最終話が15日に放送され、平均視聴率9.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。前回から0.6ポイントアップとなりました。

(前回までのレビューはこちらから)

 前回、斑目勉(中島)ら13係のメンバーは、煙鴉(遠藤憲一)が、20年前に『虹の見える丘公園』という分譲地の販売に関わった人物たちへ復讐を企てていることを察知しました。

 そして今回さらに、その土壌が汚染されていたため息子が小児がんになり病死してしまったことや、他の住人らとともに訴訟を起こすも、市や病院がグルになり隠蔽工作をしたために敗訴したこと、息子を失った悲しみから妻が飛び降り自殺したことなどが判明するのでした。

 13係が煙鴉を追跡すればするほど、20年前の事件が明るみになる。その狙いに気づいた班目は、13係の室内に盗聴器が仕掛けられていることを察知し、これを逆に利用する計画を思いつきます。

 実は20年前の事件には、現・警視総監の真鍋茂樹(本田博太郎)も深く関わりがあり、目障りな存在である煙鴉を逮捕するべく、鯨岡千里(稲森いずみ)に命じて対策チームを発足。それが13係だったのです。そして鯨岡は、警視総監の座を譲り受けるべく真鍋の言いなりになっているのです。

 班目はその情報を利用。20年前の事件が明るみに出そうになり危機感を抱いた鯨岡が、13係を解散させたという嘘情報を室内で喋り、怒りの感情に任せて鯨岡に抗議しに行く、という芝居を打ちます。

 13係に自分の思い通りに動いてもらわなければ困る煙鴉は、これに焦って必ず姿を見せるハズ。その予想通り、煙鴉は姿を現すのですが、逮捕時のやりとりで班目が誤って銃撃してしまい、救急車で搬送することになってしまうのです。

 そしてその車内で班目は、妹・真里を煙鴉に殺されたと憎む皇子山隆俊(中村倫也)に対し、ある話をします。

 実は真里が勤務していた病院は、土壌汚染の証拠を示すカルテを改竄していました。この事実を偶然知った真里は苦悩の末に自殺。煙鴉がそれを阻止しようとして失敗したため、遺体から煙鴉のDNAが検出されたのでした。

 近親者が自殺した場合、遺族が自責の念に苦しむことを身をもって知る煙鴉は、皇子山にその苦悩を味わわせないため、自身への殺人の濡れ衣を否定せずにいたのです。この事実を知った皇子山は、救急車内でひと目も憚らず号泣するのでした。

 結局、煙鴉は一命を取り留めたものの、盗み出したデータはすべて鯨岡が持ち去り、真鍋に渡してしまいます。班目は、真鍋が煙鴉の逮捕を大々的に報じるために設けた記者会見場へ足を運び、その様子を見守ることになります。

 ところが会見が始まる直前、ひとりの記者が、20年前の隠蔽工作の証拠資料をばら撒く事態が発生。実はこの資料は鯨岡が渡したもの。鯨岡は煙鴉の亡き妻の親友で、復讐をするために真鍋に接近していたのです。

 後日、班目と鯨岡が見舞いに訪れるも病室はもぬけの空。しかし班目は、どこか晴れ晴れとした表情を浮かべ、ここでドラマは終了となったのでした。

 さて感想。今回、煙鴉が妻子の復讐を果たすため、20年以上も闇の世界で生き続けてきたことが発覚しましたが、演じる遠藤の演技力も相まって、とても魅力的なキャラクターとして描かれていたと思います。皇子山の妹が自殺した事実を隠していたというくだりも不器用な優しさが感じられましたし、その事実を知った皇子山が号泣するシーンは感動的でした。

 だからこそ、最初から『皇子山VS煙鴉』の構図をメインにしたドラマが観たかったなぁ、というのが率直な感想です。あるいは、原作コミックでは熱血漢である主人公を中村が演じていれば、もっと良質なドラマになっていたのではないかと思います。中島の王子様キャラを際立たせるためのコミカルな設定変更が、というよりも中島の演技のレベルが作品の質を下げてしまった印象でした。主役に関しては完全にキャスティングミスでしたね。

 鯨岡役の稲森に関しても、真鍋との密談時のシリアスな演技では、少し無理をして背伸びしている感が否めませんでした。煙鴉の捜査を一任されるということは本来、相当なやり手のハズなのですが、その雰囲気がちっとも伝わらず、班目たちの前で見せる能天気なキャラだけが相応しいといった印象でした。

 また、“煙鴉を守るために13係にはポンコツばかりを集めた”とのことですが、それならばなぜ煙鴉は班目に近づいたのか。警視庁の内部情報を引き出すためならばまだしも、20年前の陰謀を明らかにするために利用するのであれば、もう少しマシな刑事に目をつけるのではないかと違和感を抱きました。

 これは恐らく、原作の設定を変えた結果、辻褄合わせが上手くいかずバランスが崩れてしまったことによるものだと思うのですが、他にも全体を通して随所に強引さやチグハグ感が感じられ、回収されていない伏線も多々ありました。たとえば、第8話で煙鴉が自身の偽者を用意し、5日間勾留されているように依頼したことについては、何も説明されないまま終わってしまいました。

 結局、班目は煙鴉を逮捕できませんでしたが、これはシリーズ化への布石だったのでしょうかね。それならばいっそのこと、皇子山と煙鴉の関係性を銭形警部&ルパンのような腐れ縁のようにして、そちらの対決をメインに制作して欲しいところ。主演の中島のメンツが丸つぶれになってしまうため実現は難しいでしょうが、ぜひとも期待したいです。
(文=大羽鴨乃)

『中学聖日記』有村架純&岡田健史の純愛が実るも、不満が殺到!「毒親肯定ドラマ」と激怒の声も

(これまでのレビューはこちらから)

 有村架純主演ドラマ『中学聖日記』(TBS系)の最終話が12月18日に放送され、平均視聴率9.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録しました。

 二ケタとはなりませんでしたが、自己最高視聴率で有終の美を飾った同ドラマ。主人公2人の恋の行く末が気になると前回の放送直後から話題になっていましたが、一体どんな結末を迎えたのでしょうか。

 ではでは、今週もあらすじから振り返っていきましょう!

■取り調べに誓約書……2人の恋の行く末は!?

 未成年誘拐容疑で警察へ連行されてしまった聖(有村)。厳しい取り調べの中で無実だと言い張るも信じてもらえず。さらに、取り調べが終わると今度は愛子(夏川結衣)から“今後一切、晶(岡田健史)の目の前に現れない”と書かれた誓約書にサインしろと迫られてしまう。

 悩んだ末に聖は誓約書にサインし、同時に日本を離れ海外で教師として働くことを決意する。そんな聖を知った原口(吉田羊)と勝太郎(町田啓太)は、遊園地に聖を呼び出し、晶と再会させる。

 母親からサイン済みの誓約書を見せられ「自分がするべきことを考えなさい」と言われていた晶は、聖に「聖ちゃんに幸せになってほしい。だからもう会わない」と伝えた。すると、聖は「海外で教師になる。会えてよかった。さよなら黒岩くん」と明かし、2人は笑顔で別れる。

 それから5年後、タイで教師として働く聖の目の前に、大人になった晶が突然会いに。晶は「平成2018年」と書かれた誓約書を聖に手渡す。それを見た聖はにっこりと笑い、2人の恋はついに叶うのだった、というのが最終話のストーリーでした。

■2人の恋は叶うも「なんで?」「スッキリしない」と不満殺到!

 高校時代でも別れた2人ですが、さらに5年経ち結局2人の恋は実るというハッピーエンドだったんです、が! これにネットでは不満の声が殺到し、「なんで」「スッキリしない」との感想が飛び交う事態に。

 とくに多かったのが、遊園地で再会し「もう会わない」と晶は宣言。聖も「さよなら」と言って別れるんですが、その5年後、晶はタイにいる聖に会いに行くんです……。「もう会わない」といったはずなのに!? えっ!? 意味がわかりません。さすがにここには視聴者からものすごいツッコミが(笑)。「もう会わない」と言ってすぐ5年経ち、すぐにタイで再会ですからね。「矛盾している!」と驚いたようです。

 で、タイで再会した晶は誓約書を渡すんです。が、これにもツッコミが。なんと「平成2018年」と聖の直筆で書かれているんです。この文字を2度クローズアップして放送しているため、多分スタッフ側としては「記入ミス=不成立=会いに行ってよし!」という意図があるのかもしれません。ですが、そんな細かいところ、何の説明もなく視聴者にわかると思いますか?(大体、先週は原口の書いた履歴書類の「卸売業」が思いっきり間違っていたので、この「平成2018年」もスタッフ側の凡ミスなのかと思っちゃいましたよ!)「読み取れ!」と言われても高度すぎてあ然です。案の定、放送直後に「平成2018年のくだりは何?」といった声が殺到し、結末よりもそっちに注目がいってましたよ。

 尺が足りなかったのか、大事な部分が雑すぎ。正直に言うと、まるで打ち切りのような終わり方でした(別れ方・再会の仕方などが唐突すぎてびっくりです)。「スッキリしない」といわれる理由はそこにあるかと思います。

■純愛ドラマのはずが……「毒親肯定ドラマ」とブーイングの嵐

 聖の件で仲が悪くなった黒岩家ですが、最後の最後で仲直り。この簡単な説明だと、「めでたし」といった感じがしますが、実際、これにもブーイングの嵐。

 母親の愛子はひとり息子の晶に対し、過保護すぎる印象があり、度々毒母みたいな行動(晶が家出し、聖の周囲を探るなど)を起こしていました。そのために晶は母親を毛嫌いしていた。しかし、最終話では、そんなことはなかったかのように仲直り。

 ちなみに、最終話では

・母親が反対したから母親の希望通りいい大学いっていい企業入る

・母親が許してくれたから先生に会う

・ぜんぶ母親の言う通りの人生

 といった内容に。

 ネットでは、「あれだけ、ケンカしていた親子が、結局母親の言うことを聞いて“いい話”でまとめるって」「なんだか都合が良すぎる」「これじゃ、晶はマザコンに見えるよ!」とすこし怒った感があるコメントが多く寄せられていました。

 ん~。こういう、親子のハッピーエンドは納得できないというのもわかります。もうすこし、親子関係部分も深く描いて欲しかったです。

■登場人物は聖・晶・愛子・勝太郎で十分だったのでは?

 たくさん登場人物が出てきましたが、結局必要だったのは聖・晶・愛子・勝太郎の4人だったなといった印象。

 最終話では突然、夏木マリ演じる晶の中学時代の校長先生が晶と聖のことを知って愛子に会いにくるんです、「許せない」という愛子に優しく諭すんですが、これがよくわからない……(笑)。突然出てきた意味って一体!?

 で、あれだけ、聖と晶の仲を壊そうとしていたるな(小野莉奈)、聖の彼氏だった野上(渡辺大)やネグレクト母親の橘美和(村川絵梨)も出てこず。さらに、晶の父親の島崎康介(岸谷五朗)にいたっては、あれだけ晶に「男だったらちゃんと筋を通せ」みたいなことをいったのに、最終話の晶の行動によって、まったく意味なし。登場が無意味に(笑)。

 結局、本当に4人でよかったと思わせてくれる最後でした(笑)。

 以上、最終話のレビューでした。

 最終回に感動した人からは、続編を望む声が上がっていましたが……、まあ、正直この終わり方だと、それはないかと。それより、次回作の深田恭子主演ドラマに期待して欲しいところ。来年の放送を楽しみ待ちましょう!

(どらまっ子KOROちゃん)

『大恋愛』アルツハイマー患者は、消費されて捨てられた……残酷な最終回に「後味悪すぎ」

 14日に放送されたドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS系)最終回の視聴率は13.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。過去最高です。おめでとうございます。

 さて、第1話から好意的なレビューをしてきたし、実際とっても面白い作品だと思っていましたが、まあ最終回は、どうなのこれ。どうなのよ。振り返りましょう。

(前回までのレビューはこちらから)

 

■あっけなく死んだ

 若年性アルツハイマーが日々進行していた尚ちゃん(戸田恵梨香)が書き置きを残して失踪してから半年。夫の真司(ムロツヨシ)たちはテレビの「見つかりました」的な番組に依頼して、尚ちゃんの居所を突き止めました。

 片田舎の小さな診療所に、尚ちゃんは身を寄せていました。発病前に貯め込んでいた5,000万円の預金通帳を手に「これで面倒を見てくれ」と頼み込んだそうです。診療所の手伝いをしたり、看護師さんに世話をしてもらったりしながら、ゆっくりと時を過ごしていた尚ちゃん。真司の顔を見ても、それが誰だかわかりません。

 診療所の医師から手渡されたビデオカメラには、尚ちゃんの自撮りムービーがたくさん残っていました。小さなモニター画面の中で、真司、真司と語りかける尚ちゃん。

「あたし、あたしね、真司に会いたいな」

 号泣してしまう真司は、医師に促され、“はじめましての人”として尚ちゃんと話してみることにしました。

 真司は、自分と尚ちゃんのことを書いた小説を読み聞かせます。最初はただ、心地よく聞いていただけの尚ちゃんでしたが、自分が病気になったことを真司に告げるシーンで、変化が訪れました。

「『ごめんね、面倒な病気になっちゃって』妻は続けて語った。『ぜんぜん平気。迷惑かけると思うけど』」

 真司がそこまで読み上げると、尚ちゃんが不意に続きを暗唱しました。

「一生懸命生きるから、よろしくお願いします」

「真司……」尚ちゃんが、真司の目を見つめています。

「やっぱり真司は才能あるね、すごい」

 記憶が、そのときだけ戻ったのでした。その日以来、尚ちゃんは真司のことを思い出すこともなく、「それから1年後、尚は、肺炎であっけなくこの世を去った」んだそうです。そのほかいろいろありましたが、大筋そんな感じです。

 

■まず町医者がヤバい

 いや、あのさ、家の前に前後不覚の女が立ってて、そいつが「私アルツハイマーです」と言いながら5,000万円の預金通帳を出して「面倒みてくれ」ってなったときにですよ。言いなりになって面倒みますか? という話です。まず警察でしょ。

 どういうつもりで町医者は身元を引き受けたのか。本人は「家を出てきた」と言っているが、アルツハイマーを自称する通り、意思は不明瞭です。尚ちゃんは財布を置いて出て行ったから健康保険証など身分を明かすものは持っていなかったかもしれないけど、通帳はあったわけです。通帳からは口座名義と銀行支店名がわかるし、警察に届ければ口座から住所氏名はわかります。しかも尚ちゃんには捜索願が出ている。そうじゃなくても「間宮尚」の通帳と間宮真司の著書を持っているわけですから、町医者さえその気になれば、翌日か翌々日には尚ちゃんは真司の家に帰れたのです。彼ら夫婦を引き剥がして、恵一くんから母親との日々を奪ったのは、この町医者です。

「診療所の手伝いをさせた」とか「看護師を雇って世話をさせた」とか、何を勝手なことをやっているのか。この町医者にとって尚ちゃんは患者でもないし、患者扱いで診療行為を行っていたつもりだとしても、家族の意思を確認しようとしないのは、どういう了見か。もうね、犯罪の匂いさえ漂いますよ。何しろこの自称若アル患者には5,000万円の預金残高があるわけです。アルツハイマー患者の財産って、それこそ医療関係者にとって、もっとも慎重に取り扱うべきものでしょう。成年後見制度とかさ、ちゃんと制度があるわけでしょう。ちゃんとしようよ。

 しかも町医者を訪れた時点で尚ちゃんの病気は進行中ではあっても、まだ「何もかも忘れました」という状態ではなかった。適切な治療を受ければ、進行を遅らせることだってできたかもしれないし、何しろ真司と尚ちゃんの義理の父親となった井原侑市(松岡昌宏)という人は、尚ちゃんの主治医であり、アルツハイマーの世界的権威で、最先端医療に携わってる。どう考えても、その時点で井原に診せるのが医者として最善の判断なはずです。専門家でもない町医者が独自の判断で適切な医療を受けさせず、病気の進行を早めてる。まるで「早く全部忘れてしまえ」とでも言いたいかのような。アルツハイマーの診断が下れば、口座を凍結される可能性もありますからね。町医者にとっては、尚ちゃんを専門医に診せないほうが都合がいいわけだ。5,000万円下ろし放題だからね。

 とにかく、アルツハイマーを自称していて、その症状が明らかに見られる患者の意思だけを尊重し、家族の意向を確認しない医者というのはヤバすぎだし、真司はもっと怒ったほうがいい。「お前さえすぐに警察に届けていれば……!」って、怒ったほうがいいよ。井原先生も専門家なら怒れよ。ママも怒れよ。何してんだよ。

■結局、消費された

 性懲りもなく、真司は尚ちゃんの記憶が戻った瞬間を「神様が僕らにくれた奇跡だったのかもしれない」とかポエミーな解釈をしています。そして、それをそのまま小説に書いて『大恋愛~僕を忘れる君と』という新刊を出版しました。どうせバカ売れでしょう。おめでとうございます。

 女神だとか奇跡だとか、結局「また小説を書けた」ことだけが真司にとって大切だったわけだし、尚ちゃんが死んだ後には「尚ちゃんのことはこれで終わり、もう書かないよ」とか言ってる。

 このドラマでは、再三にわたって「作家が身近な病人をネタにすること」の是非について疑問を投げかけてきました。尚ちゃんと同じMCI患者の松尾(小池徹平)は「尚は小説の道具だろ」と真司を糾弾したし、担当編集の水野さん(木南晴夏)も尚ちゃんに「小説家の嫁としての覚悟」を問うたりしていました。

 そういう疑問を、結局疑問のまま放り投げて、ドラマは尚ちゃんを殺して終わりました。病気はネタとして消費されただけで、作品そのものが「難病をネタにすること」とどう向き合ってきたかは示されなかった。真剣に向き合っているというポーズだけだった。

 このドラマで描かれたのは、小説家の嫁が「病気になるまで」であって、尚ちゃんが「病気になった後(完全に記憶を失った後)」のことは何も語られません。

「あれ以降、一度も思い出さなかった」
「あれは奇跡だった」

 真司は、記憶を失った尚ちゃんの面倒を見ることもなく、たまに会いに行くだけで、発症後には生活を共にすることすらしなかった。「あれは奇跡だった」と「死んだ」の間に、本来なら長大で退屈で代わり映えしない、苦難と絶望に満ちた日々があるはずです。人によっちゃ数十年、そういう日々が続くわけです。それがアルツハイマー患者を家族に持つということなんです。

 そういう日々は、小説家である真司には必要なかったと、ドラマは言っている。なぜなら、小説に書けることがないからだ。毎日同じ苦難の繰り返しだからだ。

 だから、ドラマは尚ちゃんを棄てたのです。記憶を失い、「尚ちゃんでなくなった尚ちゃん」は「もう尚ちゃんではない」と、断言したのです。

 病気が進行し、だらしなく口からこぼれ落ちるヨダレを拭ったり、尚ちゃんの激臭ウンコにまみれた大人用オムツを交換したり、ときに癇癪を起こしてモノを投げつけられたり、そうなった尚ちゃんの面倒を見たのは、真司じゃなくて、尚ちゃんの5,000万円で雇われた田舎の看護師だった。

 このドラマが多くの視聴者の涙を搾り取った“大恋愛”の正体は、そういうものです。ボケ切る前の尚ちゃんなら愛せるけど、ボケ切ったら愛せないんです。『僕を忘れる君』は好きだけど、『僕を忘れた君』には興味がないんだ。「尚ちゃんが尚ちゃんでなくなっても、尚ちゃんじゃなきゃ嫌なんだ」と真司が言っていたのも、ハイ、全部ウソでした。

 病気になっても「一生懸命生きるから、よろしくお願いします」と言った尚ちゃんでしたが、どっかで勝手に死にました。早々に死んでくれてよかったね。めでたしめでたし。

 なかなか最低な結論だったと思います。

 

■戸田ムロはすごかった。

 そんなわけで、脚本的には“メッセージ性”だけあって“メッセージ”がないという、そのわりに、すごく悲しい場面や神々しい場面が訪れて泣けちゃうという、いかにもベテランにいいようにやられたなという感想なんですが、戸田さんとムロさんのお芝居はすごかったね。がっつり感情移入しちゃったものだから、余計に最終回の尚ちゃんが不憫で、ひたすらムカついていたのだけど。

 あと、今になって思うと、サンドウィッチマン・富澤たけしが演じた引っ越し屋の木村が、ぼちぼち脚本自体を自己弁護するようなセリフを言わされていたなあと感じます。病気になった尚ちゃんのことを「書くべきだ」とか、いなくなった尚ちゃんを「探すべきでない」とか。真司にとってではなく、物語の進行にとって都合のいいことを、説得力のある雰囲気で述べていました。そういう意味で、富澤さんはすごく信頼されていたのでしょうね。

 そういうわけで、後味悪いけどここで終わります。よいお年を!
(文=どらまっ子AKIちゃん)

『大恋愛』アルツハイマー患者は、消費されて捨てられた……残酷な最終回に「後味悪すぎ」

 14日に放送されたドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS系)最終回の視聴率は13.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。過去最高です。おめでとうございます。

 さて、第1話から好意的なレビューをしてきたし、実際とっても面白い作品だと思っていましたが、まあ最終回は、どうなのこれ。どうなのよ。振り返りましょう。

(前回までのレビューはこちらから)

 

■あっけなく死んだ

 若年性アルツハイマーが日々進行していた尚ちゃん(戸田恵梨香)が書き置きを残して失踪してから半年。夫の真司(ムロツヨシ)たちはテレビの「見つかりました」的な番組に依頼して、尚ちゃんの居所を突き止めました。

 片田舎の小さな診療所に、尚ちゃんは身を寄せていました。発病前に貯め込んでいた5,000万円の預金通帳を手に「これで面倒を見てくれ」と頼み込んだそうです。診療所の手伝いをしたり、看護師さんに世話をしてもらったりしながら、ゆっくりと時を過ごしていた尚ちゃん。真司の顔を見ても、それが誰だかわかりません。

 診療所の医師から手渡されたビデオカメラには、尚ちゃんの自撮りムービーがたくさん残っていました。小さなモニター画面の中で、真司、真司と語りかける尚ちゃん。

「あたし、あたしね、真司に会いたいな」

 号泣してしまう真司は、医師に促され、“はじめましての人”として尚ちゃんと話してみることにしました。

 真司は、自分と尚ちゃんのことを書いた小説を読み聞かせます。最初はただ、心地よく聞いていただけの尚ちゃんでしたが、自分が病気になったことを真司に告げるシーンで、変化が訪れました。

「『ごめんね、面倒な病気になっちゃって』妻は続けて語った。『ぜんぜん平気。迷惑かけると思うけど』」

 真司がそこまで読み上げると、尚ちゃんが不意に続きを暗唱しました。

「一生懸命生きるから、よろしくお願いします」

「真司……」尚ちゃんが、真司の目を見つめています。

「やっぱり真司は才能あるね、すごい」

 記憶が、そのときだけ戻ったのでした。その日以来、尚ちゃんは真司のことを思い出すこともなく、「それから1年後、尚は、肺炎であっけなくこの世を去った」んだそうです。そのほかいろいろありましたが、大筋そんな感じです。

 

■まず町医者がヤバい

 いや、あのさ、家の前に前後不覚の女が立ってて、そいつが「私アルツハイマーです」と言いながら5,000万円の預金通帳を出して「面倒みてくれ」ってなったときにですよ。言いなりになって面倒みますか? という話です。まず警察でしょ。

 どういうつもりで町医者は身元を引き受けたのか。本人は「家を出てきた」と言っているが、アルツハイマーを自称する通り、意思は不明瞭です。尚ちゃんは財布を置いて出て行ったから健康保険証など身分を明かすものは持っていなかったかもしれないけど、通帳はあったわけです。通帳からは口座名義と銀行支店名がわかるし、警察に届ければ口座から住所氏名はわかります。しかも尚ちゃんには捜索願が出ている。そうじゃなくても「間宮尚」の通帳と間宮真司の著書を持っているわけですから、町医者さえその気になれば、翌日か翌々日には尚ちゃんは真司の家に帰れたのです。彼ら夫婦を引き剥がして、恵一くんから母親との日々を奪ったのは、この町医者です。

「診療所の手伝いをさせた」とか「看護師を雇って世話をさせた」とか、何を勝手なことをやっているのか。この町医者にとって尚ちゃんは患者でもないし、患者扱いで診療行為を行っていたつもりだとしても、家族の意思を確認しようとしないのは、どういう了見か。もうね、犯罪の匂いさえ漂いますよ。何しろこの自称若アル患者には5,000万円の預金残高があるわけです。アルツハイマー患者の財産って、それこそ医療関係者にとって、もっとも慎重に取り扱うべきものでしょう。成年後見制度とかさ、ちゃんと制度があるわけでしょう。ちゃんとしようよ。

 しかも町医者を訪れた時点で尚ちゃんの病気は進行中ではあっても、まだ「何もかも忘れました」という状態ではなかった。適切な治療を受ければ、進行を遅らせることだってできたかもしれないし、何しろ真司と尚ちゃんの義理の父親となった井原侑市(松岡昌宏)という人は、尚ちゃんの主治医であり、アルツハイマーの世界的権威で、最先端医療に携わってる。どう考えても、その時点で井原に診せるのが医者として最善の判断なはずです。専門家でもない町医者が独自の判断で適切な医療を受けさせず、病気の進行を早めてる。まるで「早く全部忘れてしまえ」とでも言いたいかのような。アルツハイマーの診断が下れば、口座を凍結される可能性もありますからね。町医者にとっては、尚ちゃんを専門医に診せないほうが都合がいいわけだ。5,000万円下ろし放題だからね。

 とにかく、アルツハイマーを自称していて、その症状が明らかに見られる患者の意思だけを尊重し、家族の意向を確認しない医者というのはヤバすぎだし、真司はもっと怒ったほうがいい。「お前さえすぐに警察に届けていれば……!」って、怒ったほうがいいよ。井原先生も専門家なら怒れよ。ママも怒れよ。何してんだよ。

■結局、消費された

 性懲りもなく、真司は尚ちゃんの記憶が戻った瞬間を「神様が僕らにくれた奇跡だったのかもしれない」とかポエミーな解釈をしています。そして、それをそのまま小説に書いて『大恋愛~僕を忘れる君と』という新刊を出版しました。どうせバカ売れでしょう。おめでとうございます。

 女神だとか奇跡だとか、結局「また小説を書けた」ことだけが真司にとって大切だったわけだし、尚ちゃんが死んだ後には「尚ちゃんのことはこれで終わり、もう書かないよ」とか言ってる。

 このドラマでは、再三にわたって「作家が身近な病人をネタにすること」の是非について疑問を投げかけてきました。尚ちゃんと同じMCI患者の松尾(小池徹平)は「尚は小説の道具だろ」と真司を糾弾したし、担当編集の水野さん(木南晴夏)も尚ちゃんに「小説家の嫁としての覚悟」を問うたりしていました。

 そういう疑問を、結局疑問のまま放り投げて、ドラマは尚ちゃんを殺して終わりました。病気はネタとして消費されただけで、作品そのものが「難病をネタにすること」とどう向き合ってきたかは示されなかった。真剣に向き合っているというポーズだけだった。

 このドラマで描かれたのは、小説家の嫁が「病気になるまで」であって、尚ちゃんが「病気になった後(完全に記憶を失った後)」のことは何も語られません。

「あれ以降、一度も思い出さなかった」
「あれは奇跡だった」

 真司は、記憶を失った尚ちゃんの面倒を見ることもなく、たまに会いに行くだけで、発症後には生活を共にすることすらしなかった。「あれは奇跡だった」と「死んだ」の間に、本来なら長大で退屈で代わり映えしない、苦難と絶望に満ちた日々があるはずです。人によっちゃ数十年、そういう日々が続くわけです。それがアルツハイマー患者を家族に持つということなんです。

 そういう日々は、小説家である真司には必要なかったと、ドラマは言っている。なぜなら、小説に書けることがないからだ。毎日同じ苦難の繰り返しだからだ。

 だから、ドラマは尚ちゃんを棄てたのです。記憶を失い、「尚ちゃんでなくなった尚ちゃん」は「もう尚ちゃんではない」と、断言したのです。

 病気が進行し、だらしなく口からこぼれ落ちるヨダレを拭ったり、尚ちゃんの激臭ウンコにまみれた大人用オムツを交換したり、ときに癇癪を起こしてモノを投げつけられたり、そうなった尚ちゃんの面倒を見たのは、真司じゃなくて、尚ちゃんの5,000万円で雇われた田舎の看護師だった。

 このドラマが多くの視聴者の涙を搾り取った“大恋愛”の正体は、そういうものです。ボケ切る前の尚ちゃんなら愛せるけど、ボケ切ったら愛せないんです。『僕を忘れる君』は好きだけど、『僕を忘れた君』には興味がないんだ。「尚ちゃんが尚ちゃんでなくなっても、尚ちゃんじゃなきゃ嫌なんだ」と真司が言っていたのも、ハイ、全部ウソでした。

 病気になっても「一生懸命生きるから、よろしくお願いします」と言った尚ちゃんでしたが、どっかで勝手に死にました。早々に死んでくれてよかったね。めでたしめでたし。

 なかなか最低な結論だったと思います。

 

■戸田ムロはすごかった。

 そんなわけで、脚本的には“メッセージ性”だけあって“メッセージ”がないという、そのわりに、すごく悲しい場面や神々しい場面が訪れて泣けちゃうという、いかにもベテランにいいようにやられたなという感想なんですが、戸田さんとムロさんのお芝居はすごかったね。がっつり感情移入しちゃったものだから、余計に最終回の尚ちゃんが不憫で、ひたすらムカついていたのだけど。

 あと、今になって思うと、サンドウィッチマン・富澤たけしが演じた引っ越し屋の木村が、ぼちぼち脚本自体を自己弁護するようなセリフを言わされていたなあと感じます。病気になった尚ちゃんのことを「書くべきだ」とか、いなくなった尚ちゃんを「探すべきでない」とか。真司にとってではなく、物語の進行にとって都合のいいことを、説得力のある雰囲気で述べていました。そういう意味で、富澤さんはすごく信頼されていたのでしょうね。

 そういうわけで、後味悪いけどここで終わります。よいお年を!
(文=どらまっ子AKIちゃん)

暴力&脅しで最後の案件を解決。こんな強引な終わり方でいいのか!?『SUITS/スーツ』最終話

『SUITS/スーツ』(フジテレビ系)最終話。「サヨナラホームラン」 

(前回までのレビューはこちらから)

■最終話の敵は……姿を見せず

 検事時代の甲斐正午(織田裕二)が担当した世田谷女子高生殺害事件の再審請求。

 当時は、前科がある無職の男・栗林紡(淵上泰史)を犯人として刑務所に送ったが、柳慎次(國村隼)が隠していた証拠を調べたところ、別の真犯人が浮かび上がってきたのだ。

 真犯人と目されるのは、被害者が殺害される直前まで一緒に遊んでいたという同じ高校の男子高校生・曽我部一也と蜂矢勇気。

 起訴後の有罪率99.9%と言われる検察の名誉のため、各方面から再審請求を阻止しようと妨害が入る。

 ここで最高検の柳、もしくは澤田仁志(市川海老蔵)との直接対決となるのかと思いきや、表に出てくるのはやる気のなさそうな新人検事(上白石萌音)のみ。

 彼女に「検察の名誉を守ろうとする誰か」が圧力をかけてくるものの、その「誰か」は姿も形も見えないのだ。

 ある意味、検察全体が敵ということ。デカイ敵といえばデカイが、見えない敵とのバトルでは勝ったとしてもイマイチ爽快感がない。

 

■最後の手段が「脅し」かよ!?

 あの手この手で再審請求を突っぱねる検察を納得させるには、被害者のキャミソールに付着したDNAと曽我部たちのDNAが一致することを証明するのが一番。

 しかし当然、曽我部たちにDNA検査を拒否されてしまう。

 甲斐と鈴木大輔(中島裕翔)、そして「幸村・上杉法律事務所」の面々が協力してこの案件に立ち向かっていく最終回らしい展開ではあったものの、ここからの証拠収集方法がいろいろとヒドイ。

 まずは曽我部のDNAを手に入れるため、バーで口をつけていた酒瓶をゲット。違法に収集した証拠には証拠能力がないのでは……!?

 その結果、キャミソールに付着したDNA型と一致することが判明するが、検察はそもそもキャミソールが本当に被害者のものなのか疑わしいなんて言い出した。

 ここまでゴーインに再審を拒否されちゃうと、さすがに打つ手なし……。

 と思いきや、臆病そうな蜂矢の家に忍び込み、脅し上げることで「曽我部が殺した」という供述をゲット。

 これだけ証拠がどうのこうのやってきておいて、最後は脅し!?

「勝つためなら手段を選ばない」というわりには、普通に案件を解決することが多かった甲斐が、ここに来て「手段を選ばない」設定をフルに活かしたとも言えるが、コレがアリならもう捜査も何も必要ないだろ!

 このムリヤリな解決方法を正当化するためなのか、やたらと「自分なりの正義」だの「正義を貫くには時に小さな悪に目をつぶる必要がある」といったセリフが登場していた。

 これが「手段を選ばない」甲斐の決めゼリフとして、これまでにも登場していたのならまだ分かるが、最終回になって急に言い出したのでは「詭弁!」としか思えない。

■キャラメルの謎も「シーズン2」に持ち越しか

 事件も解決し、残された問題は経歴詐称が事務所のボス・幸村チカ(鈴木保奈美)にバレた大輔の処遇。

 大輔自身は今回の案件を最後の仕事と考え、弁護士を辞める決心をしていたが、甲斐は事務所が過去に起こした不正に目をつぶる代わりに「代表にも目をつぶっていただきたいことが」とチカに迫る。

 大輔に、弁護士バッジとともにボストン行きのチケットを渡す甲斐。

 ハーバード大学に行って、弁護士資格を取ってこいということなのだろう。

 この辺りの展開は日本版「シーズン2」以降にも含みを持たせた結末か。

 アメリカ版のスタイリッシュな雰囲気を意識しすぎて、織田裕二の演技はヘンだし、小粋な会話も滑りがち。どうも地に足が着いていない感じがしていた日本版『SUITS』。

「勝つために手段を選ばない弁護士と、超絶記憶力を持つアソシエイトのバディ」という設定自体は面白いのだから、もしも「シーズン2」があるならアメリカ版の呪縛から解き放たれた、日本独自展開多めのドラマを期待したい。

 ところで、初回から意味ありげに登場していた「江森ソフトキャラメル」。最終回にも登場していた。

 甲斐が「あたり」か何かをゲットするために食べ続けているような描写があったんだけど……結局、何だったのかは分からずじまい。

 この伏線、「シーズン2」まで持ち越すのかよ!?

(文とイラスト=北村ヂン)