キャバクラ経営者がキャバ嬢にハマらなかった理由 夜の世界の本音と建前

 キャバクラには指名なしで入店し、接客が気に入った子をその場で指名する「場内指名」と、最初から特定のキャバ嬢目当てで来店する「本指名」がある。キャバ嬢たちの時給は「本指名」の数で決まることが多く、だからキャバ嬢たちは「本指名」をとるために懸命に接客し、また、多くの「本指名」を持つキャバ嬢たちは、顧客を逃がさないために必死だ。

 元キャバクラ経営者で、現在はキャバ嬢たちにドレスやスーツを販売する外商のM氏は、「本指名」をとる子たちには共通する特徴があるという。

■かわいい子より熱心な子が人気になる

「ボディタッチが多い、聞き上手、営業メールがうまい、かわいいとか、人気が出る子のタイプはいろいろありますが、正直ね、かわいいかどうかはあんまり関係ないんです。人気が出る子に共通しているのは、熱心さ。本指名がない子は指名なしのフリーの客につき、場内指名を増やしていく場合が多いんですが、その前段階としてマネジャーの話をメモをとりながら熱心に聞く、接客がうまくいかなかったときには、客にどの子をつけるかを決めるつけ回しやボーイに相談して次に生かす、とかね。

 何人か本指名の客を持っていても、フリーやヘルプに回ると途端に不満を持つ子はダメ。そういう気分や態度はスタッフにも客にも伝わるから、本指名が増えません。逆に、熱心な子は金を持っていそうな客につけてもらえるし、トップの子のヘルプに入ったときなんかに、一緒に遊びに来ていた客に気に入られて次は指名してもらえることもありますからね」

 そうして「場内指名」の客をつかんでおけば、他の店に移ったとき、今度は「本指名」の客として来てくれる。そうなると、給料もぐっと上がる。

「私が店をやっているとき、まあ、ほとんど人に任せていたわけですが……。入店したときは『なんだかあか抜けない子だな』と思っていた子が、しばらくしたらトップ3に入っている。理由を聞いてみたら、『聞き上手で会社の役職付にウケがいい』とかね。言い方は悪いですが、そういう“人たらし”がうまい子はどんどん上にいくようです」

 そうした“人たらし”に魅力を感じるのは客だけではなく、店のスタッフも勘違いしてしまうこともあるのだとか。実際のところ、M氏も心が揺れたことがあるそうだ。

「私の目をじっと見つめて話を聞いている姿を見ているとね。まあ、私も店をやっている頃は若かったし、『もしかして俺のこと……』なんて勘違いをしたこともありました。バカですよね(笑)。でもね、わざと思わせぶりな態度をして店の上層部に気に入られて優遇されようというあざとい子もいるから油断ならない。まあ、そういう疑似恋愛をさせるのが彼女たちの仕事ですからね。しかし、店の総責任者である以上、『彼女たちは店の大切な商品だ』と自分に言い聞かせて、絶対に手を出すようなことはしませんでした」

■熱心な接客に勘違いした客がトラブルを起こす

 キャバクラの世界を舞台にしているドラマ『キャバすか学園』(日本テレビ系)の第5話では、カタブツ(岡田奈々)に惚れた客が、ほかの客に接客する彼女に嫉妬するというエピソードが描かれた。これはまったくのフィクションというわけではなく、キャバ嬢たちの熱心な接客に客が勘違いして起こすトラブルを、M氏は何度も見てきたという。

 やがて店をたたんだ後、M氏はもとからやっていた外商一本に絞った。そして、“自分が関わる店のキャバ嬢には絶対にハマらない”ことを自分のルールにしてきたという。

「今では『おじちゃん』と呼ばれる年齢になりましたが、若い頃はモテたこともあったんですよ(笑)。女の子たちも店のスタッフでもない、客でもない私に対しては素の自分を出せるから、接客しながら話を聞いているうちに、告白めいた言葉を言われたこともありました。でもね、それは結局、普段の寂しさを埋める代償行為のようなもので、そこにつけ込んだら、キャバ嬢に手を出すろくでもない黒服や店長と変わりません。

 あと、『店に来て指名してよ』なんてことを言われたときもありました。そこの経営者にも『うちで稼いでいるんだから、少しは金を落としていけ』とかね(笑)。経営者の方が言っていることは冗談でも、キャバ嬢の方は意外と本気だったかもしれません。でもね、それをすると仕事とプライベートの線引きが曖昧になってしまうし、彼女たちがどれだけ本指名をとるために必死になっているかを知っているから、ひとりの子を指名したら他の子との関係が悪くなりかねないですからね。だから、自分の取引先とはぜんぜん関係ない店に遊びに行き、そこでうっぷんを晴らしていました(笑)」

 キャバ嬢たちの言葉や態度には、常に本音と嘘が入り交じっている。それは、客に疑似恋愛をさせ、ひとときの癒やしを提供するキャバクラという店の性質上、仕方のないことだ。

「私みたいに長く夜の世界に関わっていると、そうした本音と建前が透けて見えてしまうんですよ。同業では店の子にハマって口説き落としたなんて奴もいましたが、この世界で働いていると、女の子の態度の裏にあるドロドロとしたものや、もの悲しさが気になってしまう。ある意味、そんなことを気にせず楽しめていた頃が懐かしくはありますね」

キャバクラ経営者がキャバ嬢にハマらなかった理由 夜の世界の本音と建前

 キャバクラには指名なしで入店し、接客が気に入った子をその場で指名する「場内指名」と、最初から特定のキャバ嬢目当てで来店する「本指名」がある。キャバ嬢たちの時給は「本指名」の数で決まることが多く、だからキャバ嬢たちは「本指名」をとるために懸命に接客し、また、多くの「本指名」を持つキャバ嬢たちは、顧客を逃がさないために必死だ。

 元キャバクラ経営者で、現在はキャバ嬢たちにドレスやスーツを販売する外商のM氏は、「本指名」をとる子たちには共通する特徴があるという。

■かわいい子より熱心な子が人気になる

「ボディタッチが多い、聞き上手、営業メールがうまい、かわいいとか、人気が出る子のタイプはいろいろありますが、正直ね、かわいいかどうかはあんまり関係ないんです。人気が出る子に共通しているのは、熱心さ。本指名がない子は指名なしのフリーの客につき、場内指名を増やしていく場合が多いんですが、その前段階としてマネジャーの話をメモをとりながら熱心に聞く、接客がうまくいかなかったときには、客にどの子をつけるかを決めるつけ回しやボーイに相談して次に生かす、とかね。

 何人か本指名の客を持っていても、フリーやヘルプに回ると途端に不満を持つ子はダメ。そういう気分や態度はスタッフにも客にも伝わるから、本指名が増えません。逆に、熱心な子は金を持っていそうな客につけてもらえるし、トップの子のヘルプに入ったときなんかに、一緒に遊びに来ていた客に気に入られて次は指名してもらえることもありますからね」

 そうして「場内指名」の客をつかんでおけば、他の店に移ったとき、今度は「本指名」の客として来てくれる。そうなると、給料もぐっと上がる。

「私が店をやっているとき、まあ、ほとんど人に任せていたわけですが……。入店したときは『なんだかあか抜けない子だな』と思っていた子が、しばらくしたらトップ3に入っている。理由を聞いてみたら、『聞き上手で会社の役職付にウケがいい』とかね。言い方は悪いですが、そういう“人たらし”がうまい子はどんどん上にいくようです」

 そうした“人たらし”に魅力を感じるのは客だけではなく、店のスタッフも勘違いしてしまうこともあるのだとか。実際のところ、M氏も心が揺れたことがあるそうだ。

「私の目をじっと見つめて話を聞いている姿を見ているとね。まあ、私も店をやっている頃は若かったし、『もしかして俺のこと……』なんて勘違いをしたこともありました。バカですよね(笑)。でもね、わざと思わせぶりな態度をして店の上層部に気に入られて優遇されようというあざとい子もいるから油断ならない。まあ、そういう疑似恋愛をさせるのが彼女たちの仕事ですからね。しかし、店の総責任者である以上、『彼女たちは店の大切な商品だ』と自分に言い聞かせて、絶対に手を出すようなことはしませんでした」

■熱心な接客に勘違いした客がトラブルを起こす

 キャバクラの世界を舞台にしているドラマ『キャバすか学園』(日本テレビ系)の第5話では、カタブツ(岡田奈々)に惚れた客が、ほかの客に接客する彼女に嫉妬するというエピソードが描かれた。これはまったくのフィクションというわけではなく、キャバ嬢たちの熱心な接客に客が勘違いして起こすトラブルを、M氏は何度も見てきたという。

 やがて店をたたんだ後、M氏はもとからやっていた外商一本に絞った。そして、“自分が関わる店のキャバ嬢には絶対にハマらない”ことを自分のルールにしてきたという。

「今では『おじちゃん』と呼ばれる年齢になりましたが、若い頃はモテたこともあったんですよ(笑)。女の子たちも店のスタッフでもない、客でもない私に対しては素の自分を出せるから、接客しながら話を聞いているうちに、告白めいた言葉を言われたこともありました。でもね、それは結局、普段の寂しさを埋める代償行為のようなもので、そこにつけ込んだら、キャバ嬢に手を出すろくでもない黒服や店長と変わりません。

 あと、『店に来て指名してよ』なんてことを言われたときもありました。そこの経営者にも『うちで稼いでいるんだから、少しは金を落としていけ』とかね(笑)。経営者の方が言っていることは冗談でも、キャバ嬢の方は意外と本気だったかもしれません。でもね、それをすると仕事とプライベートの線引きが曖昧になってしまうし、彼女たちがどれだけ本指名をとるために必死になっているかを知っているから、ひとりの子を指名したら他の子との関係が悪くなりかねないですからね。だから、自分の取引先とはぜんぜん関係ない店に遊びに行き、そこでうっぷんを晴らしていました(笑)」

 キャバ嬢たちの言葉や態度には、常に本音と嘘が入り交じっている。それは、客に疑似恋愛をさせ、ひとときの癒やしを提供するキャバクラという店の性質上、仕方のないことだ。

「私みたいに長く夜の世界に関わっていると、そうした本音と建前が透けて見えてしまうんですよ。同業では店の子にハマって口説き落としたなんて奴もいましたが、この世界で働いていると、女の子の態度の裏にあるドロドロとしたものや、もの悲しさが気になってしまう。ある意味、そんなことを気にせず楽しめていた頃が懐かしくはありますね」

女が本当に好きなのは男ではない? 女同士の淡い同性愛感情を描く『小さいおうち』の幸福

――母と娘、姉と妹の関係は、物語で繰返し描かれてきました。それと同じように、他人同士の年上女と年下女の間にも、さまざまな出来事、ドラマがあります。教師・生徒、先輩・後輩、上司・部下という関係が前提としてあったとしても、そこには同性同士ゆえの共感もあれば、反発も生まれてくる。むしろそれは、血縁家族の間に生じる葛藤より、多様で複雑なものかもしれません。そんな「親子でもなく姉妹でもない」やや年齢の離れた女性同士の関係性に生まれる愛や嫉妬や尊敬や友情を、12本の映画を通して見つめていきます。(文・絵/大野左紀子)

■『小さいおうち』(山田洋次監督、2014) 時子×タキ

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 同性愛者であるかないかを問わず、女が本当に好きなのは、男ではなく、女ではないだろうか。

 思えば小学校の頃から、男子に比べて女子同士の方がよくハグをするし、親友と腕を組んで歩いたりして、身体的な密着具合が高い。歳を取り中年になって、旅行は夫とより同性の友人と行く方が楽しいという人は結構いる。「老後、一緒に暮らさない?」などという話が出るのも、大抵女性の間だ。気の置けない女同士の関係ほど、心地良く安心できるものはない。

 それからすると、男はやはりどこか「別の生きもの」だ。愛したり尊敬したりすることはあっても、心から共感したり理解し合えたと思えることは、同性ほどはないのではないか。歳を重ねるにつれ、そう実感することが多くなった。

 孤独を真に癒やしてくれるのは、同性。安心してその懐に飛び込めるのも、同性。そう感じている女性は少なくないと思う。むしろ、全ての女の中に根強くあるのは、異性愛より同性愛的な要素ではないだろうか。

◎美しく魅力的な若奥様と奉公する女中
 中島京子の小説が原作の『小さいおうち』(山田洋次、2014)は、女が女に抱く密やかな愛を描いたドラマである。布宮タキ(倍賞千恵子)が大甥の健史(妻夫木聡)に薦められるまま、「自叙伝」で綴る戦前の回想と現在のシーンで構成されている。

 「小さいおうち」とは、昭和6年、18歳で山形から東京に女中奉公に出た彼女が二番目に入った、山の手のモダンな、赤い屋根を持つ洋館のこと。そこで出会うのが、美しい若奥様の時子(松たか子)。彼女の夫、平井(片岡孝太郎)はおもちゃ会社の重役であり、幼い息子と3人の絵に描いたような幸せな家族だ。

 しかし、平井の部下で芸大出の板倉(吉岡秀隆)が家に出入りするようになり、時子とだんだん惹かれ合っていき、タキは2人をハラハラしながら見守るはめになる。そして老いたタキが心の中に封印し続けた自身の「罪と罰」が、彼女の死後やっと明らかになる。

 戦前の東京の街の風物が仔細に描かれている原作と比べ、映画は大半のシーンがセットで、人物背景も時子が子連れ再婚であることなどは省略されている。そのため、全体に物語がスケールダウンしている感は否めない。また、もの静かで懐の深そうな平井の元の人物像も矮小化されていて、片岡の演技はワンパターンだし、板倉を演じた吉岡はなんだかモッサリしており、人妻が心をときめかす若者としてはミスキャストに思える。

 しかしそれらを補って余りあるほど、時子を演じる松と若年期のタキを演じる黒木華がすばらしい。出身も階級も違う、少し歳の離れた2人の女性の間に生まれ育っていく、穏やかな愛と信頼。それが、子育てや家事を通した家の中のさまざまなシーンで、みずみずしく描かれている。

 時子は感受性が鋭く、気性がまっすぐで明るくて、天然なところもあるが案外頑固で、内に情熱を秘めた女性。松の表面張力の高い顔、若々しい声、二の腕や腰の色っぽく女らしい肉付きも、時子が女学生時代の輝きを保持したまま歳を重ね、そこにいるだけで人を魅了してしまう女性であることを示している。しかも読んでいるのは『風とともに去りぬ』だ。そういう女が、仕事と戦争の話ばかりし、金儲けで頭が一杯の凡庸な夫に心から満足できるわけがない。

 一方、時子にあこがれながら、朝から夕までまめまめしく働く女中のタキ役は、素朴な風貌の黒木にぴったり。彼女の体からは、台所に白い食器戸棚と挽肉機が据えられ、応接間にはマリー・ローランサンの絵が掛かる可愛らしい家で、美しい女主人に仕える喜びが溢れている。小児マヒに罹った幼い坊ちゃんをおぶっての医院通いという、大変な労働も積極的に引き受けるタキ。常に時子の気持ちを慮っている控えめな様子は、まるで忠実な柴犬のようだ。

 そんなタキに時子は、時には親友にように茶目っ気を見せ、時には姉のように優しく親身に接するが、板倉との関係は夫に秘密裏のまま、とうとう抜き差しならないところまで行ってしまう。

◎奥様に抱く淡い恋愛感情
 戦局が押し迫って板倉にも赤紙が届き、彼が発つ直前に1人で逢いに行こうとする時子を、タキが必死で止める場面がクライマックスだ。

 タキの「自叙伝」ノートでは、その時咄嗟の折衷案として、時子が彼の下宿に1人で行くのではなく、タキが時子の手紙を板倉に届け、彼を家に招くことにしたものの、板倉は留守で、手紙を読んだか読まないかは不明のまま、結局来なかったという話になっている。

 ところが、タキの死後、開封されていない時子の手紙がタキの遺品の中から発見される。タキはなぜ、時子の手紙を板倉に届けなかったのか? 彼女の「自叙伝」ノートによれば、その時、奥様を行かせてはならない(バレたら大変なことになるから)という思いと、行かせてさしあげたい(これが最後になるかもしれないから)という思いに引き裂かれていた、とある。

 時子にとって、最後に板倉と会うのと会わずに済ますのと、本当はどちらがいいのか、幸せなのか。そのことをタキは必死で考え、結局会わせないことにしたのだ。その心の奥底には、時子への恋愛感情があったのではないだろうか。

 それまでに、タキが時子を気にしている場面はいくつかある。

 時子に脚のマッサージを請われて、ためらいながらしている時。時子は「ああ気持ちいい」とタキの手を取って握り、親指で手の甲をさする。遠慮して外そうとするタキ。彼女のドキドキが伝わってくる。

 タキが作った雑煮に、「うまいなあ」と板倉が言った時。「よかったね」と時子が言うとタキは照れ笑いし、時子をチラッと見てからニコニコ顔のまま部屋を出ていく。褒められてうれしくてたまらない様子。

 平井が板倉に見合い話を持ってきた日、台所で苛々したように「板倉さん、結婚なんて早い。断然早いわ」と何度も言う時子に、「そうですね」と合わせながら心配そうに様子を窺う。

 これらはあくまで女中として女主人の顔色や振る舞いを気にかけているとも取れるが、決定的なのが、時子の親友、睦子(中嶋朋子)が登場した場面だ。

 時子はまだ帰宅しておらず、睦子にタキがお茶を出す。そこで最近の時子の様子をモゴモゴと案ずるタキに、睦子は「ああ、そうか。その板倉さんは時子さんを好きなのね」とズバリと言い、タキは堰を切ったように啜り泣く。それを見て「こういうことだわ。好きになっちゃいけない人を好きになっているのよ」と睦子。タキは「そうなんです」とさらに泣く。「好きになっちゃいけない人を好きになっている」のは自分だ。これは自分のことだ。2人の会話は二重の意味を帯びてくる。

 誘導するかのように睦子は更に、女学校時代の時子は本当に綺麗で誰もが好きにならずにいられなかったとか、彼女の結婚が決まった時には自殺しかけた人もいた(たぶん睦子自身のこと)などという話をし、「厭だったの、あの人が結婚するのが。独占したかったの。わかるでしょ、タキちゃん」と畳み掛け、タキは涙目で深く頷く。

 自分は奥様を独占したいのだ、だから苦しいのだ。それを見透かすように睦子は、「苦しいわね、あなたも。あたし、よーくわかる」とダメ押し。

 美しいお姉さまへの慕情を流麗な筆致で描いた吉屋信子の小説が大人気で、女学校では先輩と後輩の特殊な関係が“エス”などと呼ばれてはやっていた時代。もちろん十代でそうした淡い同性愛感情にはまってもそれは一時のことで、早ければ女学生の間に婚約を決め、決まらなくても早晩誰かとお見合い結婚というルートは引かれていた。だから一層、女学校の間の同性同士の密やかな関係は、ファンタジックで濃密なものになった。

 タキは東北の質素な家の生まれで尋常小学校しか出ていないから、そういう世界を知らずに上京し、奉公先で突然そんな感情の芽生えを体験した。自分としては、敬愛する奥様と板倉さんの前途を心から案じているつもり。だが、そこに字余りのように残ってしまうぼんやりした苦しみ。睦子の言葉が、タキの中のそのモヤモヤに輪郭を与えたのだ。

◎女の理想郷を支えるもの
 時子にしても、男を排し女のタキと寄り添うような場面がある。「男って厭ねえ。戦争と仕事の話ばかり」と同意を求めたり、うんと年上のバツ2男と見合いさせられて泣くタキを庇い、縁談を断ってやったり。家事や育児や細々とした用事に追われる日常生活を共にする中で、彼女が夫よりタキと心を通い合わせるのは当然だろう。

 タキは板倉のことが好きだったので、時子と板倉を逢わせたくなかったのだという解釈をネットで見たが、それは違うと思う。

 2人の絡みで印象に残るのは、板倉を紹介された時、タキが同じ東北出身とわかって親しみを覚えるシーンと、招集されたことを報告に来た板倉が平井邸を出た時に、「もし僕が死ぬとしたら、タキちゃんと奥さんを守るためだからね」と言って、「死んじゃいけません!」と叫んだタキを抱きしめるシーンの2つ。どちらにも“男女の色気”は感じられない。

 現代パートでも、時子と板倉の接近を回想する老いたタキに、大甥の健史が、おばあちゃんも板倉さんを好きだったんだ、三角関係だと指摘するが、タキは微塵も表情を変えず「想像力が貧困だね」と退ける。

 女2人に男1人といったら、女たちが男を取り合うという図しか思いつかず、女1人に男ともう1人の女が恋をするという想像ができないのを、「想像力が貧困」と言っているのだ。

 家父長制の当時、戦争も含めて近代化を急いだ日本社会は男だけの社会。そこで、家という限定的な領域でのみ、女と女の関係が築かれた。

 現代パートの最後の方でチラリと出てくる有名な絵本『ちいさいおうち』は、のどかな郊外がどんどん都市化、近代化していく経過を描き、その中にぽつんと取り残されたちいさいおうちが、最後にあるべき場所に戻ってきて息を吹き返すという物語である。男/女のメタファーで考えれば、なぜこの絵本が登場し、タイトルにも使われているのかよくわかる。男性的な力に支配される政治・経済圏とは別の幸福に満ちた女性的な親密圏が、時子とタキの「小さいおうち」なのだ。

 だが実際には、その女性的な親密圏(時子とタキの暮らし)は、男性的な経済圏(時子の夫の経済力とそれを支える男性社会)の恩恵を受けて成立していた。後者が戦争や経済危機で崩壊すれば、前者もなくなってしまう。女の理想郷である「小さいおうち」は、それ自体で自立しては存在できないものだった。

 その後、空襲で洋館は焼け、時子は夫とともに亡くなったが、田舎に帰されていたタキは生き延びて戦後を迎える。彼女が終生独身で通した理由は、明らかにはされていない。おそらく、「出征前の板倉に一目会いたい」という時子のたっての願いを、黙って勝手に潰してしまったという罪悪感は、長い間彼女の中に沈潜していたのだろう。ある美しい女性を愛し、彼女との蜜月を大切にしたいあまり小さな過ちを犯し、それを自分の中に「罪」として抱えて、タキは生涯を閉じた。

 夢のように過ぎていった美しい人との大切な思い出に、ポツリとついた小さなシミ。なぜあの時私は、最愛の女性の最後の望みを叶えてあげなかったのか? という老女の深い後悔と苦しみを思うと、せつなさに胸が締めつけられる。

大野左紀子(おおの・さきこ)
1959年生まれ。東京藝術大学美術学部彫刻科卒業。2002年までアーティスト活動を行う。現在は名古屋芸術大学、京都造形芸術大学非常勤講師。著書に『アーティスト症候群』(明治書院)『「女」が邪魔をする』(光文社)など。近著は『あなたたちはあちら、わたしはこちら』(大洋図書)。
ブログ「Ohnoblog 2

H&M創業一族、イケメン次男は道楽息子!? 金持ちニートから映画界のパトロンに転身か

大富豪、億万長者、大資産家――「フォーブス」世界富豪ランキングの上位には、若く麗しい男性の名も少なくない。彼らが手にした誰もが嫉妬する成功と、スキャンダルを紹介する。

[File.12]
トム・パーソン Tom Persson

経済力★★☆☆☆
ゴシップ力★☆☆☆☆
女性人気★★★☆☆
オシャレ度★★★☆☆
カリスマ性★★☆☆☆

国籍:スウェーデン
年齢:31歳 1985年生まれ
役職:アスペンフィルムCEO
学歴:メット・フィルムスクール卒
総資産:2.2億ドル(約244億円)
配偶者:なし
2016年「フォーブス」世界富豪ランキング:722位(全スウェーデン14位)

■スウェーデン王室と仲良し、H&M創業一族

 トム・パーソンは生まれた瞬間から億万長者だった。祖父はスウェーデンの有名企業ヘンネス・オック・マウリッツの創業者。父のステファンはその跡継ぎにして会長で、経済誌「フォーブス」によれば全世界12位、スウェーデンではトップの大富豪である。兄カール・ヨハンは同社の社長。

 一族はスウェーデンの王室とも距離が近い。父は国王カール16世グスタフ&王妃シルヴィアとマブダチであり、兄は自らの結婚式に皇太子ヴィクトリアを招いている。

 まさに華麗なる一族。ヘンネス・オック・マウリッツ社、英語でいえばヘネス・アンド・モーリッツ、すなわち日本でもよく知られたH&Mの御曹司こそが、トム・パーソンなのである。

 ファスト・ファッション界の風雲児ともいわれるH&Mは、店舗を毎年10〜15%目標で増やしていくという攻撃的な増殖スタイルによって全世界に拡大していった。1947年に創業した当初は女性モノしか扱っていなかったが、いまでは巨大衣料メーカーとして成長。64カ国に4,200以上の店舗を持っている。

 その売り上げは驚異の3兆円。日本での売り上げだけでも525億円に上り、年々拡大を続けている。

 ファスト・ファッションとスノッブっぽく呼んでみたところで、言ってみればスウェーデンのユニクロ、スウェーデンのしまむらであるのだが、安くておしゃれな衣料品を求めるのは世界のどこでも同様だ。ユニクロやZARA、GAPなど世界的ファスト・ファッション・チェーンは、圧倒的な需要に支えられて業績を伸ばしていく。

■映画制作会社を突然に設立
 で、そのH&M一族のイケメン、トム君はなにをやっているのかといえば、これがハタチすぎまで、しばらくなにひとつ経歴のない真っ白な青年であったのだ。ニートというか、資産家だから高等遊民とでもいうのか。

 そんな彼が興味を持ったのが映画であった。20代も後半に差しかかったある日、彼は唐突にイギリスの誇る名門、メット・フィルムスクールに留学をする。映画製作においてはイギリス最大の専門学校で、教師たちは現役の映画人たちがズラリ。ちなみに日本からの留学も受け入れており、お値段は14カ月で2万8,500ポンド(約400万円)なり。

 こちらを無事ご卒業されたのが2014年のこと。この頃にはトム君、H&Mの株主となっており「若き大富豪たち」「独身億万長者ザ・ベスト」「この男なら結婚してやってもいいわランキング」みたいなサイトにて、一躍に有名人となってしまう。

 その知名度と膨大な財力を活用したのか、彼はスウェーデンに帰ってから別の会社を設立する。「アスペンフィルム」という小さな映画製作会社だ。社長兼プロデューサーとして活動し、短編をはじめとしていくつもの映画祭を主催している。

 まだまだ財力に評価が追いつかない様子ではあるが、ルネサンスや古代ローマの例に漏れず、芸術家を育てるのはいつの世もパトロン、日本風にいえばタニマチである。ヒマなボンボンが、これはと見初めた人に投資をし、食わせてやり、やがて花開く……開くかどうかはわからないが、ボンにはぜひ映画界のため尽力していただきたいものだ。

 だが、しかし……これら全ての資金源となっているH&Mの商品は、どこで誰が、生産しているのだろうか。

■生産国では事故による死者も続出

 製造拠点の1つとなっているのが、世界最貧国バングラデシュだ。安い労働力や、ジュートなど繊維素材の栽培が盛んなバングラデシュは「世界の縫製工場」と呼ばれるようになってきた。先進国の衣料メーカーが、こぞって進出したのだ。

 ファスト・ファッションはなぜ安いのか。それは末端の労働者たちの人件費が安いからだ。バングラデシュの縫製業界で働くのは、多くが若い女性や子どもたちである。安い給料と劣悪な環境で酷使された上に、工場はメンテもなにもさっぱりで、稼働時間ばかりが増えて火災が頻発。何度も多数の死者を出した。そして13年には巨大縫製ビルが崩壊し、1,100人もの犠牲者を出した。

 H&Mは、同じような事故を防止する安全基準づくりのために資金提供を労働者権利組合から求められたが、これを拒否している。また、労働環境の改善も約束しておきながら、遅れていると国際NGOに指摘されている。

 貧民層からの搾取の上に成り立つイケメンのリッチな生活。世の中は決して平等ではないという教訓を、彼らは教えてくれるのである。
(室橋裕和)

独身アラフォーの“おビンボー”女は、子育てにかかる「お金」に恐怖していました

tikako-05

こんにちは、ちかこです。一軒家で、同世代の女性と妹から引き取った姪との3人暮らしています。おビンボーオビンボーです。

◎育児費用の見当がつきません
 子育てすると決意をした時、最初に頭をよぎったのはお金のことでした。自慢じゃありませんが私にはお金がない。

 普段、私の贅沢といえばスーパーの半額刺身であったり、半額惣菜であったり、半額お弁当であったり、ようするにそれらのものを女豹のごとくゲットし、家でほくそ笑むのがパターンです。お金がないときは小麦粉とこんにゃくとキャベツだけの、タコなしタコ焼きを焼いて凌いでいます。「銀だこ」だと自分に思いこませて、600円のランチなのよ、贅沢だわーと独り言を言いながら、んなわけないわよね、と即座に否定して、こんにゃくよりタコの方がおいしいわ~と罵倒します。ようするに、お金はないわけですが、シマウマの親子のように、そこらに生えている草を食べて生きていくわけにはいきません。

 ミルク代、おむつ代、被服費、医療費、その他諸々いったいどの程度かかるのか? 育児をしたことがない私には、皆目見当がつきませんでした。恥ずかしながら、女1匹と猫どもが暮らしていくので精いっぱいな私の収入で、それらの費用を賄えるのかと不安に思ったものです。いくら綺麗事を言っても、環境を整備できなければ、私に育児をする資格はないと言わざるをえません。そしてそのためにはお金がいります。

 ネットなどでだいたいの費用を精査して、具体的な金額を算出しました。私はwebライターの仕事をしています。案件を増やし収入増を模索すると同時に、たまに飲むビールの本数を減らせばなんとかなるだろうというシミュレーションが出ました。

 医療費は聞いてびっくりしたのですが、中学生までは無料だということで、これはうれしいサプライズ! これならいける、いけるって! と松岡修造さんばりにテンションが上がったのを覚えています。私は猫を飼っているのですが、動物は保険が利かないので目の玉が飛び出るほどの料金を請求されて、金策に四苦八苦したこともあります。その点では、姪が体調を崩したとしても、お金が払えず路頭に迷うことはないなと安心しました。

 その後、実際に病院にかかった結果、医療費が無料で感動したものですが、物事には例外があるもので、薬の容器代金として50円かかりました。ママ友の間で、あそこはお金がかかるから違う病院にしようと、話題になったこともあります。50円といえど無料との違いは心理的に大きいものです。ほかにも予防接種は医療費無料の対象にはなりません。姪はB型肝炎の予防接種が残っていたので打ちました。冬に向けてインフルエンザの予防接種も受けようかと思い、検索してみると、必ずしも接種する必要がないというお医者さんの意見を見て、現在検討中です。

◎育児費用は月に1万円強かかる
 姪を引き取る少し前に、「保育園落ちた日本死ね!!」というブログが世間で騒がれていました。昨今の子育て環境はそこまで厳しいのかと、「フーン大変よね」とポテチを食べながら他人事のように思っていた私でしたが、当事者となり医療費無料という事実を前にして、「そうでもないかな? 結構優しいじゃないの、晋三ちゃん」と、何事も自分で経験しないと実感というものは湧かないのだと、勉強になりました。

 この先、私がフルタイムで働くなりにして、保育園に姪が入れなかった場合、手のひら返して「安倍さんなんとかして!」と文句ばかり言うかもしれませんが、臨機応変に生きていくのが私の長所ですのでいいとします。年金や税金の無駄遣いの記事を見るたびにイラっとくる私ですが、今のところ、育児に関するストレスが増えて髪の毛が白髪になるということはありません。

 現在、おむつ代金約3,000円、ミルク代金1,700円、おやつ代金は約1,000円被服費約2,000円、おもちゃ代金約2,000円、基本になる費用はこのくらいですが、そのほかにもちょっとした子ども用の食事や雑費などを加えると、月に1万円強かかっています。家計はカツカツですが、当面は飢えて路頭に迷うようなことはなさそうです。気を引き締めて、財布も締めて生活していきます。

ちかこ
東京都練馬区生まれのアラフォー。趣味は猫と節約とミステリー小説を読むこと。現在は妹に代わり姪(1歳)を子育て中。
ブログ「四十路パート暮らし時給820円

独身アラフォーの“おビンボー”女は、子育てにかかる「お金」に恐怖していました

tikako-05

こんにちは、ちかこです。一軒家で、同世代の女性と妹から引き取った姪との3人暮らしています。おビンボーオビンボーです。

◎育児費用の見当がつきません
 子育てすると決意をした時、最初に頭をよぎったのはお金のことでした。自慢じゃありませんが私にはお金がない。

 普段、私の贅沢といえばスーパーの半額刺身であったり、半額惣菜であったり、半額お弁当であったり、ようするにそれらのものを女豹のごとくゲットし、家でほくそ笑むのがパターンです。お金がないときは小麦粉とこんにゃくとキャベツだけの、タコなしタコ焼きを焼いて凌いでいます。「銀だこ」だと自分に思いこませて、600円のランチなのよ、贅沢だわーと独り言を言いながら、んなわけないわよね、と即座に否定して、こんにゃくよりタコの方がおいしいわ~と罵倒します。ようするに、お金はないわけですが、シマウマの親子のように、そこらに生えている草を食べて生きていくわけにはいきません。

 ミルク代、おむつ代、被服費、医療費、その他諸々いったいどの程度かかるのか? 育児をしたことがない私には、皆目見当がつきませんでした。恥ずかしながら、女1匹と猫どもが暮らしていくので精いっぱいな私の収入で、それらの費用を賄えるのかと不安に思ったものです。いくら綺麗事を言っても、環境を整備できなければ、私に育児をする資格はないと言わざるをえません。そしてそのためにはお金がいります。

 ネットなどでだいたいの費用を精査して、具体的な金額を算出しました。私はwebライターの仕事をしています。案件を増やし収入増を模索すると同時に、たまに飲むビールの本数を減らせばなんとかなるだろうというシミュレーションが出ました。

 医療費は聞いてびっくりしたのですが、中学生までは無料だということで、これはうれしいサプライズ! これならいける、いけるって! と松岡修造さんばりにテンションが上がったのを覚えています。私は猫を飼っているのですが、動物は保険が利かないので目の玉が飛び出るほどの料金を請求されて、金策に四苦八苦したこともあります。その点では、姪が体調を崩したとしても、お金が払えず路頭に迷うことはないなと安心しました。

 その後、実際に病院にかかった結果、医療費が無料で感動したものですが、物事には例外があるもので、薬の容器代金として50円かかりました。ママ友の間で、あそこはお金がかかるから違う病院にしようと、話題になったこともあります。50円といえど無料との違いは心理的に大きいものです。ほかにも予防接種は医療費無料の対象にはなりません。姪はB型肝炎の予防接種が残っていたので打ちました。冬に向けてインフルエンザの予防接種も受けようかと思い、検索してみると、必ずしも接種する必要がないというお医者さんの意見を見て、現在検討中です。

◎育児費用は月に1万円強かかる
 姪を引き取る少し前に、「保育園落ちた日本死ね!!」というブログが世間で騒がれていました。昨今の子育て環境はそこまで厳しいのかと、「フーン大変よね」とポテチを食べながら他人事のように思っていた私でしたが、当事者となり医療費無料という事実を前にして、「そうでもないかな? 結構優しいじゃないの、晋三ちゃん」と、何事も自分で経験しないと実感というものは湧かないのだと、勉強になりました。

 この先、私がフルタイムで働くなりにして、保育園に姪が入れなかった場合、手のひら返して「安倍さんなんとかして!」と文句ばかり言うかもしれませんが、臨機応変に生きていくのが私の長所ですのでいいとします。年金や税金の無駄遣いの記事を見るたびにイラっとくる私ですが、今のところ、育児に関するストレスが増えて髪の毛が白髪になるということはありません。

 現在、おむつ代金約3,000円、ミルク代金1,700円、おやつ代金は約1,000円被服費約2,000円、おもちゃ代金約2,000円、基本になる費用はこのくらいですが、そのほかにもちょっとした子ども用の食事や雑費などを加えると、月に1万円強かかっています。家計はカツカツですが、当面は飢えて路頭に迷うようなことはなさそうです。気を引き締めて、財布も締めて生活していきます。

ちかこ
東京都練馬区生まれのアラフォー。趣味は猫と節約とミステリー小説を読むこと。現在は妹に代わり姪(1歳)を子育て中。
ブログ「四十路パート暮らし時給820円

「世界で最も若い大富豪」3位、高卒タトゥー入りの超イケメン! ある日突然“億万長者”に

大富豪、億万長者、大資産家――「フォーブス」世界富豪ランキングの上位には、若く麗しい男性の名も少なくない。彼らが手にした誰もが嫉妬する成功と、スキャンダルを紹介する。

[File.11]
グスタフ・マグナー・ウィッツアー Gustav Magnar Witzoe

経済力★★☆☆☆
ゴシップ力★☆☆☆☆
女性人気★★★★★
オシャレ度★★☆☆☆
カリスマ性★☆☆☆☆

国籍:ノルウェー
年齢:23歳
役職:サルマー社株主
学歴:高校卒業
総資産:1.89億ドル(約195億円)
配偶者:なし
2016年「フォーブス」世界富豪ランキング:1577位(ノルウェー11位、世界で最も若い大富豪ランキング3位)

◎いきなり億万長者になった“世界最大のシャケ屋”の息子

 「世界で3番目に若いビリオネア」

 ノルウェーのゴシップ誌が報じた若者は、さわやかな笑顔と金髪、青い目をした、絵に描いたようなイケメンであった。

 高校を卒業したばかりのグスタフ君はある日、突如として億万長者になってしまう。父親から、経営する会社の株式のうち47%を譲渡されたのである(残りは妹などに譲渡)。

 その会社とは、1991年に創業したサルマーASA社。アトランティックサーモンの養殖でノシ上がってきた一代企業である。その品質の良さから世界中に輸出され、日本にも支社を持つ。寿司用のネタとしても使われているとかで、あなたの食卓に並んでいるシャケも、もしかしたらこの会社で養殖されたものかもしれない。

 寿司や刺身などのネタとして、日本よりもむしろ中国やアジア、欧米でサーモン需要が高まっている。そんな背景もあり、シャケの養殖はノルウェーでは重要産業の1つにまで成長してきた。中でもトップ企業のサルマーASA社は、いまや世界最大のシャケ屋である。その絶頂時に、なぜ父は会社をわが子に譲ったのか。理由はズバリ、莫大な額にのぼるはずだった相続税を回避すためである。年々増えていく資産と税金を天秤にかけた勝ち組たちがよく使う手であるが、ノルウェー人も同じらしい。

◎経済界が太鼓判「世界でいま結婚に値すべきオトコ」

 お坊ちゃまは、それでは父のくれた会社で労働に勤しんでいるかといえば、ちっともそんなことはなく、もっぱら投資に夢中なのだとか。しかし、父のくれた掛け金は膨大である。懐に余裕のある人間ほど強いのはギャンブルの鉄則だ。不動産投資にハマッたジュニアは、見事に資産を増やし続けている。シャケの仕事は引き続き父がこなしており、グスタフ君はまあニートのようなものではあるが、この調子なら彼にも高額の課税がありそうだ。

 そんなわけでグスタフ君は、一応社主の1人ではあるのに出社もしていないので、その実態はナゾに包まれている。

 だが、時折インスタグラムに投稿される写真(現在は非公開)は、さすがの大富豪。グランドピアノが鎮座するホテルのロビーのごとき巨大リビングでポーズを決める坊ちゃま。さりげなく一緒に映っている車のエンブレムはフェラーリ。ドバイの誇る7つ星ホテル、最高ランクの部屋はなんと1泊250万円という「ブルジュ・アル・アラブ」をバックにくつろぐ若き大富豪。

 左腕全体をびっしりと覆っているタトゥーはエスタブリッシュメントとはかけ離れており、そのあたり若社長としての資質が問われそうではあるが、なんといってもイケメン億万長者。ゲス……いや大衆視線の経済誌「フォーブス」をはじめ、数多くの経済関連雑誌やウェブサイトで「世界のリッチな独身男性ベスト10」だとか「世界でいま結婚に値すべきオトコたち」みたいな特集では必ず登場する、もはや常連。

 彼女の有無は不明だがシングルではあるようで、世界中の女たちがグスタフ君を狙っている。彼が住んでいるのは北海に浮かぶ美しき島フロヤ。小さな島なので観光がてら行ってみたら、もしかしたらイケメン大富豪と出会えるかもしれない。

キャバクラのルールを破った黒服の末路は? “深くて暗い”悲惨な行方

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Photo by Joshua Rappeneker from Flickr

これまでにも数々のドラマや漫画などの題材になってきたキャバクラだが、10月から放送中のドラマ『キャバすか学園』(日本テレビ系)では、国民的アイドルAKB48とその姉妹グループがキャバ嬢を演じている。“夜の蝶”をモチーフとする作品では、さまざまな人間模様が描かれ魅力的だが、そんな世界の裏側を、業界歴40年の元経営者が明かす。

■黒服は、キャスト以上にルールに縛られている

 一般企業と違い、働き手の自由度が高いように見えるキャバクラの仕事だが、実は店やグループごとにさまざまなルールを設けている。そうしないと、経営が立ち行かなくなるからだ。

「キャスト(キャバ嬢)が連絡もなしに遅刻したら罰金、欠勤したらその日の稼ぎ以上のペナルティを取られる。そのくらいは、どこでもやっています。キャストがしっかり働くよう、店もいろいろ考えます」(風俗ライター)

 しかし、キャバ嬢がいなければ、店は成り立たない。そのため、致命的なルール違反をしない限り、締め付けはそれほど厳しくない。どちらかといえば、キャバ嬢よりも厳しいルールが課せられているのは黒服たちだと、水商売の女性たちにドレスやスーツを売る外商として約40年働くM氏は語る。

「私たちの仕事は、キャバ嬢たちの空き時間に商品を売るわけですが、商品に夢中になって、なかなか店に戻らない子もいるんです。そんなとき、黒服の子たちが呼びにくるんですが、いろんなタイプがいますよ。『〇〇さん、指名なんで、店に戻ってください』などと言う穏やかなタイプもいれば、『早く戻れよ』と怒鳴りつける乱暴な奴もいる。私に対しても『外商風情が、店の邪魔すんなよ』と、あからさまに邪魔者扱いしてくる奴もいます(笑)。でもこっちもそんな態度は慣れっこだし、店の経営者と話をつけて商売しているし、大概後で怒られるのは向こうですからね」

 自分の子供より年下の黒服に無礼な態度を取られたら頭にきそうなものだが、M氏は腹も立たないという。そんな連中も働き続けるうちに態度を改めるし、外部の人間にそんな態度を取っている連中は、自然と店から消えていくからだという。

「キャストの子たちもいろんなルールに縛られていますが、それ以上に、黒服の子たちはルールに縛られています。接客、女の子への態度、フロア内での振る舞い方とかね。上の人間がまともなら、外部の人間への礼儀がしっかりしていない奴は排除されます。そういう奴って、だいたい女の子への態度も悪いから嫌われるし、女の子との信頼関係がないと、言うことを聞かせられませんから。かといって、恋愛感情を持ってはいけないし、持たれてもいけない。なかなかつらい立場だと思いますよ」

■店内での色恋沙汰は、キャバクラ最大のタブー

 黒服とキャストの恋愛は、ご法度。よく聞く言葉だが、本当にあることなのだろうか? 男たちを手玉に取るキャバ嬢たちが、そう簡単にひとりの男になびくとは考えにくいのだが……。

「キャバ嬢たちは、何かとストレスを感じることが多いんです。嫌な客とか、プライベートの恋愛がうまくいっていないとかね。キャバ嬢だって女の子ですから、そんな弱っているときに親身になって話を聞いてくれた相手には、つい心を開いてしまう。そこにつけ込んで色恋沙汰に発展したら、ルール違反になりますが……でもね、女の子の客のテーブル間の移動を指示するつけ回し(フロアマネジャー)とかになるなら、女の子に惚れられるくらいじゃないとダメなんです。その加減が難しいんですよ」(M氏)

 もし、その加減を間違えたら、キャバクラで最大のタブーである色恋沙汰に発展することもある。そうした場合、厳しいペナルティが科せられる。

「キャストに手を出したら罰金です。この話は有名ですよね。額は店によって違うと思いますが、だいたい100万円くらいかな? 法外な値段ですが、これは絶対にやらせないために、高額にしているんです。店内に彼氏、彼女がいたら、仕事に支障が出ますから。それでも、デキちゃう連中はいるんですが、うまくいっているときはいいけど、ケンカなんかしたら最悪です。前に、ケンカしたままお互い出勤して、客の前で言い争いをしたなんてバカップルもいました(笑)」(同)

 当然、その黒服とキャストにはペナルティが科せられ、黒服は店を異動することに。しかし、それはまだいい方だとM氏は言う。

「昔、オーナーがそっち系の店で、バカな黒服がオーナーの愛人だったキャストに手を出した。数日後、その黒服は、店から姿を消していました。マネジャーに聞いてみたら『罰金を払うために、別の場所で働いている』と、そして『しばらく女を抱く気にならないだろう』と苦笑いしていました。具体的に何をしたのかは、さすがに聞けませんでしたよ。今でこそ、そういう連中がオーナーの店は減りましたが、なくなったわけではありません。それに、逃げたとしても追い込みが厳しいから、それをわかっていてルールを破るバカは少ないです」(同)

■大きなトラブルを起こした者の素性は、業界中に知れ渡る

 ただ、少ないとはいえ、ルール違反を犯す者はいまだにいるらしい。ルールを破り続けた黒服には、どんな末路が待っているのだろうか?

「あちこちで色恋が絡むトラブルを起こす奴や、金絡みのトラブルを起こした奴は、グループ店なら全店舗で、従業員としても客としても出入り禁止になります。それにね、この業界は、横のネットワークが意外に強いんですよ。店同士の交流がなくても、何か大きなトラブルを起こした奴の素性は、たちまち知れ渡ります。悪質な奴の場合、別のキャバクラはもちろん、キャバレーや風俗、夜の商売の店では働けなくなるし、全国にお達しが回ることも少なくありません。そうなったら、この業界から足を洗うしかなくなります。それでも、ヒモになってしぶとく生きている奴もいますが、この商売しかやったことがない奴にとっては致命傷でしょう。なんでもありに見えるかもしれませんが、夜の商売のルールは、一般の人が思っている以上に厳しいんです」(M氏)

 ルールを破り、夜の街から消えていった男たちを、M氏は大勢見てきたという。どんな仕事でも、ルールという枠を超えたら、悲惨な末路が待っている。しかし、夜の商売のルールを破った者の末路は、一般の仕事のルールを破った者より、深くて暗いようだ。