既婚/独身、専業主婦/仕事女の分断と希望を描く『グッドナイトムーン』

――母と娘、姉と妹の関係は、物語で繰返し描かれてきました。それと同じように、他人同士の年上女と年下女の間にも、さまざまな出来事、ドラマがあります。教師・生徒、先輩・後輩、上司・部下という関係が前提としてあったとしても、そこには同性同士ゆえの共感もあれば、反発も生まれてくる。むしろそれは、血縁家族の間に生じる葛藤より、多様で複雑なものかもしれません。そんな「親子でもなく姉妹でもない」やや年齢の離れた女性同士の関係性に生まれる愛や嫉妬や尊敬や友情を、12本の映画を通して見つめていきます。(文・絵/大野左紀子

■『グッドナイトムーン』(クリス・コロンバス、1998) ルーク×ジャッキー

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 既婚女性と独身女性、子どものいる女といない女、ワーキングマザーと専業主婦。女と女の間に生じるディスコミュニケーションの原因として多いのは、こうした社会的立場の違いだ。

 ネットの掲示板や週刊誌などを見ると、そこから生まれる感覚のズレやトラブルの話題に事欠かない。生き方の多様性が賞賛され、以前より自由な選択肢が開けたと言われる一方で、私たちの間には細かくデリケートな「壁」がたくさん築かれているかのようだ。

 無神経にそこを踏み越えると、「いいよね、専業は」「育児の苦労も知らないくせに」「結婚できるだけマシなのに」という視線や言葉が飛んでくる。初対面の人が既婚か独身か、兼業か専業か、子どもがいるかいないかに、今ほど女性たちが敏感な時代はないのではないだろうか。

 他人と友好的な関係を保っていこうと思えば、相手の立場を思いやり尊重するのが賢明ということは、誰でも知っている。しかし互いに、最初から相容れない関係として出会ってしまった場合はどうだろう。しかもそこに、一回りくらいの歳の差と文化の差が加わったら、「壁」はとんでもなく高いものになりそうだ。それはどうやったら乗り越えられるのだろうか。

 『グッドナイト・ムーン』(クリス・コロンバス、1998)に登場する2人は、専業主婦で二児の母である年上女性と、仕事をもつ独身年下女性。前者と離婚した男が後者の恋人となっており、2人は前妻vs(近い将来の)妻、実母vs(近い将来の)継母という、この上なく難しい関係として出会う。

 この作品が優れたダブルヒロインものとなっているのは、普通ならどちらかにフォーカスを絞り感情移入させるところを、極力平等な距離感で描いている点にある。2人の女性は、理解不能な相手に時に反発しぶつかり合いながらも、一つの「ミッション」の遂行において次第に深く結びついていく。

 ここではまず、仕事をもつ独身年下女性の物語から見ていこう。

■「母親失格」で見つけた子どもとの関係
 イザベル(ジュリア・ロバーツ)は、広告業界で活躍するニューヨークの売れっ子カメラマン。かなり年上の弁護士で恋人のルーク(エド・ハリス)と一緒に暮らし始めたばかりだ。ルークは3年前に妻ジャッキー(スーザン・サランドン)と別居後、離婚しており、2人の子どもは週の半分を父のアパートメント、残りの半分を郊外にある母の本宅で過ごしている。

 イザベルの悩みは、その子どもたちだ。頑張って世話をしようとしても、12歳の姉アンナは反抗的だし、就学前の弟ベンは悪戯盛り。見かねたルークに「君に子どもの世話は頼めない」と言われて反発するが、努力は空回りするばかり。

 特に、アンナとはまったく反りが合わず苦労する。思春期の彼女の目に、恋人に夢中な父ルークと自分がどのように映っているか、その複雑な内心を慮るところまでは、イザベルの想像力は働かないのだ。

 ロケの現場に子ども2人を連れていった時、目を離したすきにベンがいなくなり、大騒動となる。警察に保護された息子のところに飛んできたジャッキーに謝るものの、キツい言葉で保護者失格との烙印を押され、自信喪失。

 あるいは、子どもの迎えに行くはずだったジャッキーに替わって、急遽仕事を切り上げ学校に直行し、母の来られない理由を必死でデッチ上げているところに、遅れてきたジャッキーがサッサと子どもたちを連れ帰る。

 自分は努力しているのだ。仕事より子どものことを優先している。ジャッキーを悪者にせず、子どもたちを傷つけないように気を使っている。それでも、やっぱり「母には敵わない」という事実を何度も突きつけられる時、イザベルの心は折れそうになる。仕事なら努力すれば何とかなるが、ママにはどう頑張ってもなれない。

 それからイザベルがしたことは、母というより先輩女性として振る舞うことだった。絵がうまくいかなくて悩んでいたアンナに的確なアドバイスをして信頼を取りつけ、ドライブ中、口紅を貸してやり、CDに合わせてコーラスするほどには打ち解ける。アンナの恋の始末のつけ方にも、あまり教育的ではないが、イザベルにしかできないような独特の助力をする。

 母にはなれなくても、自分にできることをやればいいとわかってからのイザベルと、徐々に警戒を解き、「父の恋人」ではなく話せるお姉さんとして彼女を受け入れていくアンナの関係は、ちょっと危なっかしいだけに見ていて応援したくなる。

■母としての誇りと立場を失う畏れ
 一方、かつては仕事を持っていたが、子どもを産んで以降家事と育児に専念してきたジャッキーの物語は、イザベルより混み入っている。

 夫の多忙でスレ違いが生まれ離婚はしても、親という立場は変わらない。今では夫への憎しみも薄れ、子どもの父親としての信頼だけが残っているが、彼の再婚には複雑な心境。こういうバツイチの女性は少なくないのではないだろうか。

 ルークのアパルトメントに子どもたちを迎えに行き、イザベルが持たせたランチの弁当を途中で捨てたり、アンナの生活管理についてのイザベルのミスを「そんな身勝手じゃ母親になる資格はない」と断じたりするのも、長年母親業をやってきたプライドからだ。自分の代わりをこの若い女が果たせるとは、とても思えないのだ。

 「彼女は仕事がある」と、幼いなりにイザベルを弁護するベンに、専業主婦の労働の大変さや報われなさを教え、「彼女のような自己中心型は高給取りよ」と皮肉を忘れないところは、立場の違いがここまで女を分断するのかという感慨も抱く。

 だが、父とイザベルの結婚を突然知らされて取り乱すアンナに「イザベルのいいところを探してみて」とアドバイスする言葉は、そのままジャッキーの内心を物語っている。自分にはないもので子どもの心を掴みつつある相手の魅力に、ちゃんと気づいているのだ。

 その証拠に、クラシック好きのジャッキーは、イザベルがアンナをロックコンサートに連れて行くのを「まだ子どもよ」と反対したくせ、自分はちゃっかり同じコンサートに娘と行こうとする。私にだってそういう文化はわかるわよ。まるで若いイザベルと競い合っているかのようだ。

 どこまで行っても実の母である私に代わる者はないという誇りと、自分はいつか必要なくなるのではないかと畏れ。安心と不安が代わる代わるジャッキーを襲う。その複雑な心境は、ベンの枕元で歌うイザベルを目撃して、そっと立ち去る寂しげな背中にも現れている。

 自身が完治不能なガンに冒され、残された時間がそんなに長くないことを知ってからのジャッキーの努力は痛ましい。

 周囲に知られて心配されないよう気をつけながら、今この一瞬を親子の濃密な時間にするべく、努めて明るく振る舞おうとする。イザベルに不審がられやっとカミングアウトした後では一層、どうやったら子どもたちに良い思い出を残せるかと心を砕く。

 アンナの恋の一件も、イザベルのいささか奇をてらったアイデアに、良識ある母親の立場から意見する。ここでの「あなたの雛型は作らないで」という言葉は、ドラマ中、ジャッキーがイザベルに放ったもっとも厳しい台詞だ。

 「あなたの雛型」とは、自己中心的で目的のためには手段を選ばず、実質ではなく見かけを優先し、面白いことがすべてという生き方だ。独身で自由な恋愛を謳歌し、虚飾に満ちた広告業界で生きてきたイザベルの半生そのものに、正面切って疑義をつきつけているのだ。

 他でもない子どもたちのために、カメラマンの仕事を度々犠牲にしていることを知らないでまくしたてるジャッキーに、イザベルは抗議する。

◎「男が悪い」が通用しない、女たちの問題
 こんなふうに2人の女が対立する場合、その間にいる男は何も気づかないか、姑息に逃げ回って保身に走るというパターンがよくある。

 しかしルークは、仕事に忙殺されているとは言え、そういうだらしない男としては描かれていない。ジャッキーやイザベルと口論になる場面はあっても、基本的にはごく真面目な人物だ。そもそも演じるのは、誠実と安心を絵に描いたようなエド・ハリス。母への愛がなくなったのか? という子どもたちの質問に言葉を探して一生懸命答え、元妻のガン告白に対しても精一杯寄り添おうとする。

 ここで、ルークがもっと鈍感で無責任な男だったら、「こういう男のせいで、どんな立場の女も苦労するんだよね」という逃げ口上が用意される。だが男を悪者にできない構造なだけに、そして男が女同士のトラブルには無力だけに、問題はそれぞれの女の足元に直接返ってくる。

 2人が問題を相手のせいにせず、真摯に受け止めようとしていくところがいい。対面している時は辛辣な言葉でやりあっても、後で内省し、何とか前に進もうとする。互いに「あんたは気に入らない!」と言って決裂できればいいが、子どもがそこに関わる限り、それでは済ませられないからだ。

 「実母の代わりはできないのが不安」というイザベルの思いと、それを受け止め励ますジャッキーの思いが交錯するシーンは美しい。それぞれ違う生き方をしてきた世代も文化も異なる女性が、「壁」を超えて初めて互いを認め合い、「チーム」であることを確かめ合う瞬間だ。

 それはもちろん、「子どものため」という大前提があってのことである。この前後の、イザベルがカメラの腕を生かして母と子どもたちの日常を撮影する一連の場面も、いずれ来る母との別れをどうにかして受容しようとする健気な子どもたちも、家族とイザベルがジャッキーを囲むクリスマスのシーンも、ちょっとイイ話に引っ張って行きすぎでしょと突っ込み入れたくなるくらいの、しみじみ感動シーンの連続になっている。

 「子どものため」で先の短い実母と若い継母が和解するのは当たり前、もう「ガン」と「子ども」を持ってこられたらどうしようもない、それって禁じ手だよねと鼻白む人もいるかもしれない。では、この「実母と子と継母の感動物語」を私たちはどんなふうに読み替えたらいいだろうか。

■分断する女たちがつながれるとき

 2人の子どものうちで、焦点が当たっているのは12歳のアンナである。これは、多感な思春期に足を踏み入れたばかりの少女が、大人のややこしい世界をかいま見、大人の女性たちに振り回されたり振り回したりしながら成長していく物語でもある。

 ジャッキーとイザベルは、アンナの成長を促す立場にいる。たまたま実母と継母というポジションに立っているが、これは年上の女と年下の女が、もっと若い次世代の女をそれぞれのやり方で導き育てることで、出会い直すという話なのだ。

 私たちはある程度の年齢になれば、自分より年下の者に指南する立場に立たされる。自分たちの後から来る者のために道を作り、その若い人がいつか1人で歩いていけるように後押ししてやること。それは親であろうがなかろうが、年長者の重要な「ミッション」だ。やがてもっと若い後輩の上に立つようになった年下世代に、年長者は教え方を授け、バトンタッチする。

 もちろん属する世代によって、若い人に伝えたい中身ややり方は少々違うかもしれない。でも自分たちの歩んできた道を振り返り、その中から次世代にいいものを受け渡したい、そして幸せになってもらいたいという願いは同じだろう。その一点においては、立場や文化の異なる年上の女と年下の女も、手を結べるのではないだろうか。

 「私はアンナの過去を、あなたは未来を担う」というジャッキーからイザベルに贈られた言葉には、そんな希望が込められているのだ。

大野左紀子(おおの・さきこ)
1959年生まれ。東京藝術大学美術学部彫刻科卒業。2002年までアーティスト活動を行う。現在は名古屋芸術大学、京都造形芸術大学非常勤講師。著書に『アーティスト症候群』(明治書院)『「女」が邪魔をする』(光文社)など。近著は『あなたたちはあちら、わたしはこちら』(大洋図書)。
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既婚/独身、専業主婦/仕事女の分断と希望を描く『グッドナイトムーン』

――母と娘、姉と妹の関係は、物語で繰返し描かれてきました。それと同じように、他人同士の年上女と年下女の間にも、さまざまな出来事、ドラマがあります。教師・生徒、先輩・後輩、上司・部下という関係が前提としてあったとしても、そこには同性同士ゆえの共感もあれば、反発も生まれてくる。むしろそれは、血縁家族の間に生じる葛藤より、多様で複雑なものかもしれません。そんな「親子でもなく姉妹でもない」やや年齢の離れた女性同士の関係性に生まれる愛や嫉妬や尊敬や友情を、12本の映画を通して見つめていきます。(文・絵/大野左紀子

■『グッドナイトムーン』(クリス・コロンバス、1998) ルーク×ジャッキー

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 既婚女性と独身女性、子どものいる女といない女、ワーキングマザーと専業主婦。女と女の間に生じるディスコミュニケーションの原因として多いのは、こうした社会的立場の違いだ。

 ネットの掲示板や週刊誌などを見ると、そこから生まれる感覚のズレやトラブルの話題に事欠かない。生き方の多様性が賞賛され、以前より自由な選択肢が開けたと言われる一方で、私たちの間には細かくデリケートな「壁」がたくさん築かれているかのようだ。

 無神経にそこを踏み越えると、「いいよね、専業は」「育児の苦労も知らないくせに」「結婚できるだけマシなのに」という視線や言葉が飛んでくる。初対面の人が既婚か独身か、兼業か専業か、子どもがいるかいないかに、今ほど女性たちが敏感な時代はないのではないだろうか。

 他人と友好的な関係を保っていこうと思えば、相手の立場を思いやり尊重するのが賢明ということは、誰でも知っている。しかし互いに、最初から相容れない関係として出会ってしまった場合はどうだろう。しかもそこに、一回りくらいの歳の差と文化の差が加わったら、「壁」はとんでもなく高いものになりそうだ。それはどうやったら乗り越えられるのだろうか。

 『グッドナイト・ムーン』(クリス・コロンバス、1998)に登場する2人は、専業主婦で二児の母である年上女性と、仕事をもつ独身年下女性。前者と離婚した男が後者の恋人となっており、2人は前妻vs(近い将来の)妻、実母vs(近い将来の)継母という、この上なく難しい関係として出会う。

 この作品が優れたダブルヒロインものとなっているのは、普通ならどちらかにフォーカスを絞り感情移入させるところを、極力平等な距離感で描いている点にある。2人の女性は、理解不能な相手に時に反発しぶつかり合いながらも、一つの「ミッション」の遂行において次第に深く結びついていく。

 ここではまず、仕事をもつ独身年下女性の物語から見ていこう。

■「母親失格」で見つけた子どもとの関係
 イザベル(ジュリア・ロバーツ)は、広告業界で活躍するニューヨークの売れっ子カメラマン。かなり年上の弁護士で恋人のルーク(エド・ハリス)と一緒に暮らし始めたばかりだ。ルークは3年前に妻ジャッキー(スーザン・サランドン)と別居後、離婚しており、2人の子どもは週の半分を父のアパートメント、残りの半分を郊外にある母の本宅で過ごしている。

 イザベルの悩みは、その子どもたちだ。頑張って世話をしようとしても、12歳の姉アンナは反抗的だし、就学前の弟ベンは悪戯盛り。見かねたルークに「君に子どもの世話は頼めない」と言われて反発するが、努力は空回りするばかり。

 特に、アンナとはまったく反りが合わず苦労する。思春期の彼女の目に、恋人に夢中な父ルークと自分がどのように映っているか、その複雑な内心を慮るところまでは、イザベルの想像力は働かないのだ。

 ロケの現場に子ども2人を連れていった時、目を離したすきにベンがいなくなり、大騒動となる。警察に保護された息子のところに飛んできたジャッキーに謝るものの、キツい言葉で保護者失格との烙印を押され、自信喪失。

 あるいは、子どもの迎えに行くはずだったジャッキーに替わって、急遽仕事を切り上げ学校に直行し、母の来られない理由を必死でデッチ上げているところに、遅れてきたジャッキーがサッサと子どもたちを連れ帰る。

 自分は努力しているのだ。仕事より子どものことを優先している。ジャッキーを悪者にせず、子どもたちを傷つけないように気を使っている。それでも、やっぱり「母には敵わない」という事実を何度も突きつけられる時、イザベルの心は折れそうになる。仕事なら努力すれば何とかなるが、ママにはどう頑張ってもなれない。

 それからイザベルがしたことは、母というより先輩女性として振る舞うことだった。絵がうまくいかなくて悩んでいたアンナに的確なアドバイスをして信頼を取りつけ、ドライブ中、口紅を貸してやり、CDに合わせてコーラスするほどには打ち解ける。アンナの恋の始末のつけ方にも、あまり教育的ではないが、イザベルにしかできないような独特の助力をする。

 母にはなれなくても、自分にできることをやればいいとわかってからのイザベルと、徐々に警戒を解き、「父の恋人」ではなく話せるお姉さんとして彼女を受け入れていくアンナの関係は、ちょっと危なっかしいだけに見ていて応援したくなる。

■母としての誇りと立場を失う畏れ
 一方、かつては仕事を持っていたが、子どもを産んで以降家事と育児に専念してきたジャッキーの物語は、イザベルより混み入っている。

 夫の多忙でスレ違いが生まれ離婚はしても、親という立場は変わらない。今では夫への憎しみも薄れ、子どもの父親としての信頼だけが残っているが、彼の再婚には複雑な心境。こういうバツイチの女性は少なくないのではないだろうか。

 ルークのアパルトメントに子どもたちを迎えに行き、イザベルが持たせたランチの弁当を途中で捨てたり、アンナの生活管理についてのイザベルのミスを「そんな身勝手じゃ母親になる資格はない」と断じたりするのも、長年母親業をやってきたプライドからだ。自分の代わりをこの若い女が果たせるとは、とても思えないのだ。

 「彼女は仕事がある」と、幼いなりにイザベルを弁護するベンに、専業主婦の労働の大変さや報われなさを教え、「彼女のような自己中心型は高給取りよ」と皮肉を忘れないところは、立場の違いがここまで女を分断するのかという感慨も抱く。

 だが、父とイザベルの結婚を突然知らされて取り乱すアンナに「イザベルのいいところを探してみて」とアドバイスする言葉は、そのままジャッキーの内心を物語っている。自分にはないもので子どもの心を掴みつつある相手の魅力に、ちゃんと気づいているのだ。

 その証拠に、クラシック好きのジャッキーは、イザベルがアンナをロックコンサートに連れて行くのを「まだ子どもよ」と反対したくせ、自分はちゃっかり同じコンサートに娘と行こうとする。私にだってそういう文化はわかるわよ。まるで若いイザベルと競い合っているかのようだ。

 どこまで行っても実の母である私に代わる者はないという誇りと、自分はいつか必要なくなるのではないかと畏れ。安心と不安が代わる代わるジャッキーを襲う。その複雑な心境は、ベンの枕元で歌うイザベルを目撃して、そっと立ち去る寂しげな背中にも現れている。

 自身が完治不能なガンに冒され、残された時間がそんなに長くないことを知ってからのジャッキーの努力は痛ましい。

 周囲に知られて心配されないよう気をつけながら、今この一瞬を親子の濃密な時間にするべく、努めて明るく振る舞おうとする。イザベルに不審がられやっとカミングアウトした後では一層、どうやったら子どもたちに良い思い出を残せるかと心を砕く。

 アンナの恋の一件も、イザベルのいささか奇をてらったアイデアに、良識ある母親の立場から意見する。ここでの「あなたの雛型は作らないで」という言葉は、ドラマ中、ジャッキーがイザベルに放ったもっとも厳しい台詞だ。

 「あなたの雛型」とは、自己中心的で目的のためには手段を選ばず、実質ではなく見かけを優先し、面白いことがすべてという生き方だ。独身で自由な恋愛を謳歌し、虚飾に満ちた広告業界で生きてきたイザベルの半生そのものに、正面切って疑義をつきつけているのだ。

 他でもない子どもたちのために、カメラマンの仕事を度々犠牲にしていることを知らないでまくしたてるジャッキーに、イザベルは抗議する。

◎「男が悪い」が通用しない、女たちの問題
 こんなふうに2人の女が対立する場合、その間にいる男は何も気づかないか、姑息に逃げ回って保身に走るというパターンがよくある。

 しかしルークは、仕事に忙殺されているとは言え、そういうだらしない男としては描かれていない。ジャッキーやイザベルと口論になる場面はあっても、基本的にはごく真面目な人物だ。そもそも演じるのは、誠実と安心を絵に描いたようなエド・ハリス。母への愛がなくなったのか? という子どもたちの質問に言葉を探して一生懸命答え、元妻のガン告白に対しても精一杯寄り添おうとする。

 ここで、ルークがもっと鈍感で無責任な男だったら、「こういう男のせいで、どんな立場の女も苦労するんだよね」という逃げ口上が用意される。だが男を悪者にできない構造なだけに、そして男が女同士のトラブルには無力だけに、問題はそれぞれの女の足元に直接返ってくる。

 2人が問題を相手のせいにせず、真摯に受け止めようとしていくところがいい。対面している時は辛辣な言葉でやりあっても、後で内省し、何とか前に進もうとする。互いに「あんたは気に入らない!」と言って決裂できればいいが、子どもがそこに関わる限り、それでは済ませられないからだ。

 「実母の代わりはできないのが不安」というイザベルの思いと、それを受け止め励ますジャッキーの思いが交錯するシーンは美しい。それぞれ違う生き方をしてきた世代も文化も異なる女性が、「壁」を超えて初めて互いを認め合い、「チーム」であることを確かめ合う瞬間だ。

 それはもちろん、「子どものため」という大前提があってのことである。この前後の、イザベルがカメラの腕を生かして母と子どもたちの日常を撮影する一連の場面も、いずれ来る母との別れをどうにかして受容しようとする健気な子どもたちも、家族とイザベルがジャッキーを囲むクリスマスのシーンも、ちょっとイイ話に引っ張って行きすぎでしょと突っ込み入れたくなるくらいの、しみじみ感動シーンの連続になっている。

 「子どものため」で先の短い実母と若い継母が和解するのは当たり前、もう「ガン」と「子ども」を持ってこられたらどうしようもない、それって禁じ手だよねと鼻白む人もいるかもしれない。では、この「実母と子と継母の感動物語」を私たちはどんなふうに読み替えたらいいだろうか。

■分断する女たちがつながれるとき

 2人の子どものうちで、焦点が当たっているのは12歳のアンナである。これは、多感な思春期に足を踏み入れたばかりの少女が、大人のややこしい世界をかいま見、大人の女性たちに振り回されたり振り回したりしながら成長していく物語でもある。

 ジャッキーとイザベルは、アンナの成長を促す立場にいる。たまたま実母と継母というポジションに立っているが、これは年上の女と年下の女が、もっと若い次世代の女をそれぞれのやり方で導き育てることで、出会い直すという話なのだ。

 私たちはある程度の年齢になれば、自分より年下の者に指南する立場に立たされる。自分たちの後から来る者のために道を作り、その若い人がいつか1人で歩いていけるように後押ししてやること。それは親であろうがなかろうが、年長者の重要な「ミッション」だ。やがてもっと若い後輩の上に立つようになった年下世代に、年長者は教え方を授け、バトンタッチする。

 もちろん属する世代によって、若い人に伝えたい中身ややり方は少々違うかもしれない。でも自分たちの歩んできた道を振り返り、その中から次世代にいいものを受け渡したい、そして幸せになってもらいたいという願いは同じだろう。その一点においては、立場や文化の異なる年上の女と年下の女も、手を結べるのではないだろうか。

 「私はアンナの過去を、あなたは未来を担う」というジャッキーからイザベルに贈られた言葉には、そんな希望が込められているのだ。

大野左紀子(おおの・さきこ)
1959年生まれ。東京藝術大学美術学部彫刻科卒業。2002年までアーティスト活動を行う。現在は名古屋芸術大学、京都造形芸術大学非常勤講師。著書に『アーティスト症候群』(明治書院)『「女」が邪魔をする』(光文社)など。近著は『あなたたちはあちら、わたしはこちら』(大洋図書)。
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汚部屋のアラフォー女が教える、「十数年の油汚れ」をやっつける必勝法【汚画像アリ】

――夫婦二人暮らしで汚部屋住まい。荒廃した住環境から脱し、「人として生きる」ことを誓った女による、お片付け実践レポート。「いつか掃除する日のために」と溜め込んだ、掃除知識をフル稼働し汚れに立ち向かう!

 小さい頃から掃除が苦手で夫に怒られても掃除ができず、けれど夫に掃除を手伝わせることを拒み続けて数年。マンション全体での上水工事をきっかけに、ひどいありさまになった台所や小部屋などをきれいにしようと決意したアラフォー主婦、がいらんです。工事が終わった後も、朝から晩まで掃除を続けて台所の見た目をきれいにすることはだいたいできましたが、最後に換気扇掃除という大物を残していました。これ以上寒くなる前に、そして「今年の汚れ、今年の内に」を自分に言い聞かせ、自業自得ながら重い気持ちで十数年の油汚れと戦います。

 このコラムには汚い画像が出てくる頻度が高いことをご承知おきください。

◎換気扇を掃除してみよう
 シンクに入る大きさの部品は、二重にしたゴミ袋に60度のお湯とセスキ炭酸ソーダを入れて浸け置きして、翌朝こすってみました。大体落ちましたが、約十年の油分塩分水分埃の結合物は少しのセスキくらいではすっきりと落とせません。

 油汚れは、アルカリ性の強いものとお湯でゆるめる(分離融解させ)と、苦も少なく落とすことができます。以前録画していたテレビ番組で知った、粉石鹸から作るプリン状石鹸が良いかもしれないと思い、ためしにガスコンロ周りを掃除したら、とても楽にきれいにできました。いける。しかしあまりに頑固な汚れなので、プリン状では汚れに留められないと判断したので、お湯と粉石鹸をクレンザーより少し固めな粘度にしたものを手で換気扇に塗りたくっていきました。

【換気扇に粉石鹸ペーストをひたすら塗りたくる】
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◎塗り終わった後の全体像
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 なお、換気扇フードはゴミ袋に入れて風呂場へ持って行き、シャワーで熱湯を十分にかけた後、石鹸ペースト塗りたくりスポンジでよく洗いました。落ちるもんだ……。

 同時に、捨てようかと思っていた大きな鍋にお湯を沸かし、ガスコンロ周りの掃除で余ったプリン状石鹸や粉石鹸と一緒に、シロッコファンや換気扇を留めていたネジ類(排水溝フィルターに入れて口を結んでおくと、小さなネジたちが行方不明になりません)を入れて煮洗い。

 そんな鍋ないわよ! という方は、ゴミ袋を三重くらいにしてシロッコファンやネジ類→粉石鹸→お湯(給湯器で60度にしたものや、水を先に入れてからお手持ちの中で大きな鍋で沸かした熱湯を入れるなど)の順に入れると良いと思います。お湯を沸かすことで換気扇が少し温まってくれという願いも込めております。油汚れは冷えると硬くなり、厄介です。

【8時間後の鍋の中と、その中より出でたる輝くシロッコファン】
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 科学の力よ……! 先人にひれ伏す思いを抱えつつ、酢水(クエン酸を買っていなかったので)に浸けてアルカリ性を中和させてから拭き上げました。完全に銀色というのは無理でしたが、十分です。

【じゃあ換気扇は?】
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 掃除前を見ると輝きに満ちています。が、細部や中を見ると、まだまだ結合物の塊があちこちに。当たり前ですが、換気扇は外部の空気の影響を受けやすく、また金属製なので、いくら温めたり、強力な洗剤を使っても冷えてしまいます。掃除をしていても指先から体が冷えていくのがわかったほどですので、ここは無理をせず春夏と挑戦して少しずつ落としていこうと決めました。春も含めたのは、夏まで待つと、そのままさサボりそうだからです……。

 ちなみに、シンクなどで洗えない換気扇本体などは以下のようにして汚れを拭き取りました。

◎換気扇本体への対策は?
 まず、ボロボロになったスポンジに水を含ませ、石鹸の泡を立てつつ汚れを拭き取り続け(スポンジは途中でどんどん取り替えました)、粉石鹸が換気扇に付いている限り泡はどんどん立ってキリがないので、泡が少なくなってきたなと思ったところで、マイクロファイバータオルで水分ごと泡を拭き取ります。汚れと水分を含んだマイクロファイバータオルが重たくなってきたら、それをよく洗って絞ると吸水力が戻る(汚れも落ちる)ので、同じ作業を繰り返していきます。

 最初にスポンジに水を含ませると書きましたが、熱めのお湯を使うと良いでしょう(くどいようですが、温かい方がより汚れがゆるむからです)。軍手や綿手袋の上に大きめのゴム手袋をすると、お湯の熱さに耐えることなく作業ができます。ついでにハンドクリームを塗っておくと、掃除終わりに手がしっとりしてうれしかったので、お勧めしたいです。

【綺麗になった部品たち】
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◎粉石鹸と電動ドライバーは万能!
 仕事帰りと朝を含め、部分的に汚れが残っているものの、2日で換気扇掃除を終えることができました。約十年分蓄積した汚れ(フィルターカバーなど一切使っていませんでしたしね……)をここまできれいにできたのは、手を付ける前に道具と手段を確認して揃えておいたからだと思います。

 汚れは本当にひどいものですが、作業自体は覚悟していた割にあっさりと終わったので驚きました。特に粉石鹸と電動ドライバーがあることで、気軽にネジを外したり汚れに取りかかることができました。仕事をしながらでも、大物をきれいにすることは可能なんですね。うれしかったです。台所全体にも言えるのですが、重い気持ちで掃除を始めたのが嘘みたい。やればできる!

【今の換気扇】
kanki-ima

 実はスイッチのことを完全に忘れていたため、精密機械掃除用必須アイテム、無水エタノールを買うのを忘れていました。換気扇のスイッチも全体的に油汚れが地味にひどく、スイッチによっては押しても戻るありさまなのです。という訳で、これを書き終わったらドラッグストアに行こうと思います。こういうところも、掃除をしながら直していけたらいいのですが。

【スイッチの汚れ】
swith

 折角なので、私が換気扇掃除に使った道具をご紹介いたします。括弧内に書いたのは、種類や買った場所などです。

<<洗剤と掃除道具>>
・百均じゃないスポンジ(ソフト・ハード両方。ドラッグストアかスーパー)
・百均じゃないゴム手袋(中厚手、指先強化タイプ。ドラッグストアかスーパー)
・セスキ炭酸ソーダ、粉石鹸(百均とドラッグストア)
・亀の子たわし(ホームセンター)
・歯ブラシ(お客様用。ドラッグストア)
・サッシ掃除用ブラシ(百均)
・マイクロファイバー洗車用タオル(ダイソー)
・洗車用ふきあげクロス(セリア)
・不燃布の排水溝フィルター(百均)
・酢(粉石鹸の成分を中和させるため。スーパー)

<<掃除をする時あると助かった/うれしかったもの>>
・電動ドライバー(西友)
・ゴムの付いた軍手や綿の手袋(百均)
・手ぬぐいタオル(お年賀などもらいもの)
・セパレート式のゴアテックス上下(スポーツ用品店)
・マスク(ドラッグストア)
・ニット帽(百均)
・靴下用使い捨てカイロ(ドラッグストア)
・もこもこあったか靴下(しまむら)
・安いボアブーツ(楽天のお買いものマラソン)
・大きな鍋
・ゴミ袋4~5枚
・ハンドクリーム/リップクリーム
・おやつ
・温かい飲み物

 無駄にものがあり、減らすことが優先の私の家です。けれど本当に必要なものは見誤らず、惜しまず買ったり使ったりしたいと思います。年末、ちょっとがんばろうかなと思っている方は、まずショッピングサイトやホームセンター、大きいスーパーなどを覗いてみるといいかもしれません。

 特にお勧めしたいのは、電動ドライバーです。十数年前に大きい西友で安く買ったのですが、1つあるといざという時に本当に便利なので、買って良かったとしみじみしています。また、たまたまうちにはゴアテックスの上下がありましたが、レインコート上下もいいと思います。服に付く汚れを気にしなくていいですし、暖かな格好の上にレインコートで更に防寒になりますし、これを着たら掃除をするんだというスイッチの1つになると思います。

 そして、人は寒いと悲しい気持ちになりやすいそうです。暖かくして気分が上がるような音楽をかけて、ちょっといいおやつや温かいお茶などを用意して、少しでも楽しく掃除ができるといいな。小さい頃から、両親に叱られ続けても自分の部屋を綺麗にすることが難しかった私です。でも、死ぬまでが人生ですし、その間にできることがあれば努力してみたくなりました。ちゃんと自分を大事にして、人らしく気持ちよく生活する暮らしを身に着けていけたらと思っています。

 これからしばらくの間、どうぞよろしくお願いいたします。

がいらん
東京23区在住、汚部屋から脱出して人並みの暮らしを手に入れたいアラフォー。夫と2人暮らし。
ブログ「人になりたい

汚部屋のアラフォー女が教える、「十数年の油汚れ」をやっつける必勝法【汚画像アリ】

――夫婦二人暮らしで汚部屋住まい。荒廃した住環境から脱し、「人として生きる」ことを誓った女による、お片付け実践レポート。「いつか掃除する日のために」と溜め込んだ、掃除知識をフル稼働し汚れに立ち向かう!

 小さい頃から掃除が苦手で夫に怒られても掃除ができず、けれど夫に掃除を手伝わせることを拒み続けて数年。マンション全体での上水工事をきっかけに、ひどいありさまになった台所や小部屋などをきれいにしようと決意したアラフォー主婦、がいらんです。工事が終わった後も、朝から晩まで掃除を続けて台所の見た目をきれいにすることはだいたいできましたが、最後に換気扇掃除という大物を残していました。これ以上寒くなる前に、そして「今年の汚れ、今年の内に」を自分に言い聞かせ、自業自得ながら重い気持ちで十数年の油汚れと戦います。

 このコラムには汚い画像が出てくる頻度が高いことをご承知おきください。

◎換気扇を掃除してみよう
 シンクに入る大きさの部品は、二重にしたゴミ袋に60度のお湯とセスキ炭酸ソーダを入れて浸け置きして、翌朝こすってみました。大体落ちましたが、約十年の油分塩分水分埃の結合物は少しのセスキくらいではすっきりと落とせません。

 油汚れは、アルカリ性の強いものとお湯でゆるめる(分離融解させ)と、苦も少なく落とすことができます。以前録画していたテレビ番組で知った、粉石鹸から作るプリン状石鹸が良いかもしれないと思い、ためしにガスコンロ周りを掃除したら、とても楽にきれいにできました。いける。しかしあまりに頑固な汚れなので、プリン状では汚れに留められないと判断したので、お湯と粉石鹸をクレンザーより少し固めな粘度にしたものを手で換気扇に塗りたくっていきました。

【換気扇に粉石鹸ペーストをひたすら塗りたくる】
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◎塗り終わった後の全体像
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 なお、換気扇フードはゴミ袋に入れて風呂場へ持って行き、シャワーで熱湯を十分にかけた後、石鹸ペースト塗りたくりスポンジでよく洗いました。落ちるもんだ……。

 同時に、捨てようかと思っていた大きな鍋にお湯を沸かし、ガスコンロ周りの掃除で余ったプリン状石鹸や粉石鹸と一緒に、シロッコファンや換気扇を留めていたネジ類(排水溝フィルターに入れて口を結んでおくと、小さなネジたちが行方不明になりません)を入れて煮洗い。

 そんな鍋ないわよ! という方は、ゴミ袋を三重くらいにしてシロッコファンやネジ類→粉石鹸→お湯(給湯器で60度にしたものや、水を先に入れてからお手持ちの中で大きな鍋で沸かした熱湯を入れるなど)の順に入れると良いと思います。お湯を沸かすことで換気扇が少し温まってくれという願いも込めております。油汚れは冷えると硬くなり、厄介です。

【8時間後の鍋の中と、その中より出でたる輝くシロッコファン】
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 科学の力よ……! 先人にひれ伏す思いを抱えつつ、酢水(クエン酸を買っていなかったので)に浸けてアルカリ性を中和させてから拭き上げました。完全に銀色というのは無理でしたが、十分です。

【じゃあ換気扇は?】
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 掃除前を見ると輝きに満ちています。が、細部や中を見ると、まだまだ結合物の塊があちこちに。当たり前ですが、換気扇は外部の空気の影響を受けやすく、また金属製なので、いくら温めたり、強力な洗剤を使っても冷えてしまいます。掃除をしていても指先から体が冷えていくのがわかったほどですので、ここは無理をせず春夏と挑戦して少しずつ落としていこうと決めました。春も含めたのは、夏まで待つと、そのままさサボりそうだからです……。

 ちなみに、シンクなどで洗えない換気扇本体などは以下のようにして汚れを拭き取りました。

◎換気扇本体への対策は?
 まず、ボロボロになったスポンジに水を含ませ、石鹸の泡を立てつつ汚れを拭き取り続け(スポンジは途中でどんどん取り替えました)、粉石鹸が換気扇に付いている限り泡はどんどん立ってキリがないので、泡が少なくなってきたなと思ったところで、マイクロファイバータオルで水分ごと泡を拭き取ります。汚れと水分を含んだマイクロファイバータオルが重たくなってきたら、それをよく洗って絞ると吸水力が戻る(汚れも落ちる)ので、同じ作業を繰り返していきます。

 最初にスポンジに水を含ませると書きましたが、熱めのお湯を使うと良いでしょう(くどいようですが、温かい方がより汚れがゆるむからです)。軍手や綿手袋の上に大きめのゴム手袋をすると、お湯の熱さに耐えることなく作業ができます。ついでにハンドクリームを塗っておくと、掃除終わりに手がしっとりしてうれしかったので、お勧めしたいです。

【綺麗になった部品たち】
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◎粉石鹸と電動ドライバーは万能!
 仕事帰りと朝を含め、部分的に汚れが残っているものの、2日で換気扇掃除を終えることができました。約十年分蓄積した汚れ(フィルターカバーなど一切使っていませんでしたしね……)をここまできれいにできたのは、手を付ける前に道具と手段を確認して揃えておいたからだと思います。

 汚れは本当にひどいものですが、作業自体は覚悟していた割にあっさりと終わったので驚きました。特に粉石鹸と電動ドライバーがあることで、気軽にネジを外したり汚れに取りかかることができました。仕事をしながらでも、大物をきれいにすることは可能なんですね。うれしかったです。台所全体にも言えるのですが、重い気持ちで掃除を始めたのが嘘みたい。やればできる!

【今の換気扇】
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 実はスイッチのことを完全に忘れていたため、精密機械掃除用必須アイテム、無水エタノールを買うのを忘れていました。換気扇のスイッチも全体的に油汚れが地味にひどく、スイッチによっては押しても戻るありさまなのです。という訳で、これを書き終わったらドラッグストアに行こうと思います。こういうところも、掃除をしながら直していけたらいいのですが。

【スイッチの汚れ】
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 折角なので、私が換気扇掃除に使った道具をご紹介いたします。括弧内に書いたのは、種類や買った場所などです。

<<洗剤と掃除道具>>
・百均じゃないスポンジ(ソフト・ハード両方。ドラッグストアかスーパー)
・百均じゃないゴム手袋(中厚手、指先強化タイプ。ドラッグストアかスーパー)
・セスキ炭酸ソーダ、粉石鹸(百均とドラッグストア)
・亀の子たわし(ホームセンター)
・歯ブラシ(お客様用。ドラッグストア)
・サッシ掃除用ブラシ(百均)
・マイクロファイバー洗車用タオル(ダイソー)
・洗車用ふきあげクロス(セリア)
・不燃布の排水溝フィルター(百均)
・酢(粉石鹸の成分を中和させるため。スーパー)

<<掃除をする時あると助かった/うれしかったもの>>
・電動ドライバー(西友)
・ゴムの付いた軍手や綿の手袋(百均)
・手ぬぐいタオル(お年賀などもらいもの)
・セパレート式のゴアテックス上下(スポーツ用品店)
・マスク(ドラッグストア)
・ニット帽(百均)
・靴下用使い捨てカイロ(ドラッグストア)
・もこもこあったか靴下(しまむら)
・安いボアブーツ(楽天のお買いものマラソン)
・大きな鍋
・ゴミ袋4~5枚
・ハンドクリーム/リップクリーム
・おやつ
・温かい飲み物

 無駄にものがあり、減らすことが優先の私の家です。けれど本当に必要なものは見誤らず、惜しまず買ったり使ったりしたいと思います。年末、ちょっとがんばろうかなと思っている方は、まずショッピングサイトやホームセンター、大きいスーパーなどを覗いてみるといいかもしれません。

 特にお勧めしたいのは、電動ドライバーです。十数年前に大きい西友で安く買ったのですが、1つあるといざという時に本当に便利なので、買って良かったとしみじみしています。また、たまたまうちにはゴアテックスの上下がありましたが、レインコート上下もいいと思います。服に付く汚れを気にしなくていいですし、暖かな格好の上にレインコートで更に防寒になりますし、これを着たら掃除をするんだというスイッチの1つになると思います。

 そして、人は寒いと悲しい気持ちになりやすいそうです。暖かくして気分が上がるような音楽をかけて、ちょっといいおやつや温かいお茶などを用意して、少しでも楽しく掃除ができるといいな。小さい頃から、両親に叱られ続けても自分の部屋を綺麗にすることが難しかった私です。でも、死ぬまでが人生ですし、その間にできることがあれば努力してみたくなりました。ちゃんと自分を大事にして、人らしく気持ちよく生活する暮らしを身に着けていけたらと思っています。

 これからしばらくの間、どうぞよろしくお願いいたします。

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東京23区在住、汚部屋から脱出して人並みの暮らしを手に入れたいアラフォー。夫と2人暮らし。
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セックスまみれの下品メールで総スカン!? 世界最年少ビリオネア、「Snapchat」CEOの「女と金」

大富豪、億万長者、大資産家――「フォーブス」世界富豪ランキングの上位には、若く麗しい男性の名も少なくない。彼らが手にした誰もが嫉妬する成功と、スキャンダルを紹介する。

Evan Spiegel at TechCrunch 2.jpgBy TechCrunch, , Link

[File.12]
エヴァン・トーマス・スピーゲル
 Evan Thomas Spiegel

経済力★★★☆☆
ゴシップ力★★★★☆
女性人気★★☆☆☆
オシャレ度★★★☆☆
カリスマ性★★★☆☆

国籍:アメリカ
年齢:26歳(1990年6月4日生まれ)
役職:「Snapchat」CEO
学歴:スタンフォード大学中退
総資産:21億ドル(約2470億円)
婚約者:ミランダ・カー
「フォーブス」世界富豪ランキング:世界最年少ビリオネア(2015年)

◎金と頭脳を持ち合わせて誕生した勝ち組
 世の金持ちの大半がそうであるように、エヴァン・スピーゲルもまた、とっても裕福な家庭に生まれた。

 父も母も、ともに優秀なやり手弁護士という、アメリカの“クサい”ドラマだってなかなかない設定の一家は、訴訟社会アメリカを勝ち抜き大豪邸を構える成功者。生まれながらの勝ち組だったエヴァンは、ずいぶんワガママ放題に育てられたようだ。日々の浪費だけでは飽き足らず、高校の時には、パパに平然と高級車をおねだりするまでになっていった。

 それでも優秀なDNAを両親から受け継いでいたエヴァン。学業は極めて優秀、高校を素晴らしい成績で卒業すると、超名門スタンフォード大学の門をくぐった。

子どもの頃からパソコンやネットに親しんでいたこともあり、情報工学を専門に学び続けていたが、別の学校ではアートの勉強に励み、ついでにインターン生として社会で働きはじめるなど、精力的な学生生活を送る。そして、大学の授業の一環として行われたプロジェクトで、画像共有アプリ「Snapchat(スナップチャット)」の開発を始める。その特徴は、

「こちらが選んだ相手に、画像や動画を送ることができる。ただし、その相手が閲覧できる時間は最大10秒だけ」

というもの。短い閲覧時間がネックになって、「普及は難しいのでは」という意見が学内では多かったというが、そこがむしろポイントだった。写真はすぐに消えてしまうから、逆にどんなものでも気軽に送ることができる。くだらない内容でもハズかしいものでも、きわどいものだって、すぐに消えてしまうのだ。それがウケた。

 2012年11月に完成したアプリを公開すると、スナップチャットは爆発的に流行した。互いの刹那を見せ合うというスタイルは、特に女子の心をつかんだのか、アメリカでは10代女子が熱中。やがて2億ダウンロードを稼ぐに至るお化けアプリのうち、利用者の7割が女子だという。「スナチャ」で、「いま」を切り取った写真を送りあうことが世界的ブームにもなった。

◎中退してセレブ界で名を馳せる
 栄光を確信したエヴァン君は、スタンフォードをクールに颯爽と中退。Appleのスティーブ・ジョブズ、facebookのマーク・ザッカーバーグ、Microsoftのビル・ゲイツらと同じく、超名門大学中退→IT長者というコースを意識していたことは想像に難くない。

 スナップチャット共同開発者ボビー・マーフィーと起業したエヴァン君は、一気に若き億万長者として、一足飛びにセレブの世界に駆け上がる。スナップチャットの価値を認めたザッカーバーグが買収に乗り出し、30億ドル(約3540億円)という膨大な額でオファーしたものの、それを蹴ったという伝説も残る。

 当然、学生時代からヤリチンだった彼には浮名も多数。有名歌手テイラー・スウィフトと付き合っていたこともあるそうな。遊んだ女は数知れずだ。

 しかしそんな彼に、運命的な日が訪れる。14年、ニューヨークのルイ・ヴィトンで開かれていたセレブ限定の勝ち組パーティーで、オーストラリア出身のスーパーモデル、ミランダ・カーと出会うのだ。

 こちらも「フォーブス」誌の「世界の富豪モデルランキング」でギャラの高さ第6位に選出されたキャリアを持つ。コスメ、香水、下着メーカー、バッグ、航空会社……数々の超有名ブランドの広告塔をこなす、やはり億万長者である。俳優のオーランド・ブルームと結婚し、息子を出産したものの、結婚から3年後の13年に離婚してしまう。そんな折りにエヴァン君が現れた。ミランダの方が7歳年上であったものの、2人は意気投合。

 そしてロサンゼルスの超高級住宅街ブレントウッドに1200万ドル(約14億円)、7,100平米というリッチな豪邸を購入し、庶民の想像の及ばぬ同棲生活を開始した。ミランダは自らのインスタグラムに、結婚指輪をはめた画像を投稿。そこにはひざまづいて彼女に求婚するエヴァン君のイラストが添えられていた。エヴァン君は、ミランダの息子フリン君もわが子として育てる器の大きさをアピールし、16年には婚約。17年に正式に結婚するとみられている。

◎女性蔑視、“ファック”まみれのメールが流出
 ここまで、完璧超人のように見える若きイケメン富豪だが、意外な事実が発覚。アメリカのとあるニュースサイトが、彼がスタンフォード時代に仲間に送ったメールを入手、公開したのだ。

“昨日の夜は6人以上の女子がお前らのチンポをしゃぶったんだろうな。俺のとこには1人も来なかったぜ”

 それはファックとビッチにまみれた、知的さのカケラもない、スタンフォードの名誉をおとしめるメールであった。そのほか日常的なメールも文章の至るところファックだらけであり、酒を浴びてやるセックスがいかにすばらしいか、学友の女性をいじめるくだり、麻薬の使用を匂わせる描写まであり、エヴァン君の評判は地に落ちた。あこがれのまなざしでエヴァン君を見つめていた女性たちは一気に離れたといわれる。

 女性蔑視だと激しいバッシングを浴び、本人は謝罪のコメントを出したが、生粋のお坊ちゃまだけに、あまり反省はしていない様子だ。

 いったいミランダはどう思っているのだろう……と世間が想像をめぐらしていた16年の10月、ミランダ邸に賊が侵入した。2人が同居している御殿とは別の、ミランダの私邸である。

 侵入者と警備員の間で銃撃戦になるという激しいものだったが、幸いミランダと息子は外出しており無事だった。

 メール事件でヘイトを集めたエヴァン君、今後は新しい一家を守っていけるのだろうか。
(室橋裕和)

汚部屋の住人女が、人並みの「台所」を手に入れるまで――【汚画像アリ】決死レポート

――夫婦二人暮らしで汚部屋住まい。荒廃した住環境から脱し、「人として生きる」ことを誓った女による、お片付け実践レポート。「いつか掃除する日のために」と溜め込んだ、掃除知識をフル稼働し汚れに立ち向かう!

 はじめまして、がいらんと申します。

 私はとても汚い部屋、いわゆる汚部屋住人です。といっても、まあまあ整理整頓が好きな夫とのふたり暮らしですので、特にひどいのは2カ所でした。それが台所と、四畳半の小部屋です。以下、このコラムには汚い画像が出て来る頻度が高いことをご承知おき下さい。

 夫に何十回何百回何千回と怒られながらも掃除ができず、けれど夫に掃除を手伝わせることを拒み続けて数年。マンション全体で上水工事をしなくてはならなくなり、汚い台所の掃除に手を付けたのが11月始めのことでした。そこから2日で、なんとか他人様を中に入れても殺さないところまで持って行き、あとはこんな状態に戻らないようにするために掃除をしながら、「自分はどうしてここまで汚くすることができたのか」と「自分はどのような状況だと散らかすのか、どんなふうに散らかしてそれを蓄積させていくのか」を記録しています。

 そんな私の、掃除前最初の画像です。先ほどもお断りしましたが、普通の生活をしている方には想像もできない世界だと思いますので、ご覧になる方は気を強くお持ちになって下さい。

【台所入口から】
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【シンクなどカウンター上の惨状】
obeya02

 ……よくぞここまで汚くできたものです。その上、床・壁・キャビネットの表面・ガスコンロに換気扇に至るまで何かがこびり付いていました。今も変わらず、我ながら豪快に散らかしてはいますが、現状回復に苦労することはなくなりましたので、ご安心下さい。また、シンクがこんなありさまになった後の食事の支度はここではなく、ダイニングテーブルやコーヒーテーブルの上でしておりましたので、併せてご安心いただけたら……恐いですよね。私もです。

 さて、こんな状態からほぼ丸2日不休不眠で片付けまして、何とか工事の人を台所に入れることができました。今思えば、緊急措置な片付けと丸わかりのところに、よく人を入れたなと思うのですけども、水道屋さんは汚部屋を見慣れているだろう……と、いまだに自分に言い聞かせております。余談です。

◎台所を人並みに清潔したい
 掃除をしていて気付いたのは、ゴミは捨てた分だけ減るので手をつけてさえしまえば意外と気楽なのに、汚れは落とさなければそのままで地味に心が荒むということです。不幸中の幸い……とは言わないかもしれませんが、私には掃除をしないくせに知識を溜め込むのが好きだという習性があります。その知識とグーグル様をフルに使い、まずは台所を人並みの清潔さに戻すと決めました。頭でっかちからの脱却です。いつかは部屋をきれいにして過ごしたいと思っていたので、それだけ溜め込んでいたんですね……行動するまでにだいぶ時間がかかってしまいましたが。いつか痩せるぞと思いながら、筋トレを覚えておく……みたいなものでしょうか。

 休んだ日もありますが、台所の掃除に手を付け始めて1カ月あまり。いまだに全部の掃除が終わっていないのは、それだけ汚してきていたからです。どうせ掃除をするのなら苦労してでも一気にきれいにして、これからも続く生活=掃除、をこれほど大変な思いをしてやらずに済むようにしたいと考え、今も掃除を続けています。先ほど「豪快に散らかしても、現状回復に苦労することはなくなりました」と書けるようになったのも、この楽にしたいという目標に少し近付けているのだと思います。「とりあえず」や「今は」という言葉は汚部屋住人の敵だ……!

 そして残る大物は1つ、換気扇だけとなりました。

【最近の台所】
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◎換気扇との恐ろしい対面
 掃除を始めた頃は仕事をしていなかったため、朝から晩まで毎日9時5時で掃除をすることができましたが、途中から仕事を再開したせいもあり、スローペースになりました。そんなある日の夕食後、「そろそろ(換気扇に)手を付けよう、数回に分けて少しずつ掃除をしよう」と見上げた換気扇フード、そこに下げていたS字フックをふと取り上げてみたら、その先に蜂蜜のような粘度の油がべっとりと付いていました。その近くにあった、取り外せるらしい換気扇の部品を、越してきて初めて引き抜いてみたら、ここが養蜂場なら大喜びするだろう蜂蜜のような粘度の油がドボドボと大量にガスコンロの上へ落ちていきました。心の中は大絶叫です。

【掃除前の換気扇】
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【フィルター以外も外しましたが、なにこれつらい】
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 発作的にグリスフィルターやシロッコファンの蝶ナットやベルマウスを外して、ある程度分解してしまいました。折角きれいにしているのに、こんな状態は嫌だ……! 電動ドライバーがあると、こんな時はかどります。

 分解してしまったなら、もう換気扇掃除を始めるしかありません。手元に少し残っていた、「セスキ炭酸ソーダ」で煮洗いするところから、今回の本題「換気扇を掃除しよう」はスタートしました。

がいらん
東京23区在住、汚部屋から脱出して人並みの暮らしを手に入れたいアラフォー。夫と2人暮らし。
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汚部屋の住人女が、人並みの「台所」を手に入れるまで――【汚画像アリ】決死レポート

――夫婦二人暮らしで汚部屋住まい。荒廃した住環境から脱し、「人として生きる」ことを誓った女による、お片付け実践レポート。「いつか掃除する日のために」と溜め込んだ、掃除知識をフル稼働し汚れに立ち向かう!

 はじめまして、がいらんと申します。

 私はとても汚い部屋、いわゆる汚部屋住人です。といっても、まあまあ整理整頓が好きな夫とのふたり暮らしですので、特にひどいのは2カ所でした。それが台所と、四畳半の小部屋です。以下、このコラムには汚い画像が出て来る頻度が高いことをご承知おき下さい。

 夫に何十回何百回何千回と怒られながらも掃除ができず、けれど夫に掃除を手伝わせることを拒み続けて数年。マンション全体で上水工事をしなくてはならなくなり、汚い台所の掃除に手を付けたのが11月始めのことでした。そこから2日で、なんとか他人様を中に入れても殺さないところまで持って行き、あとはこんな状態に戻らないようにするために掃除をしながら、「自分はどうしてここまで汚くすることができたのか」と「自分はどのような状況だと散らかすのか、どんなふうに散らかしてそれを蓄積させていくのか」を記録しています。

 そんな私の、掃除前最初の画像です。先ほどもお断りしましたが、普通の生活をしている方には想像もできない世界だと思いますので、ご覧になる方は気を強くお持ちになって下さい。

【台所入口から】
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【シンクなどカウンター上の惨状】
obeya02

 ……よくぞここまで汚くできたものです。その上、床・壁・キャビネットの表面・ガスコンロに換気扇に至るまで何かがこびり付いていました。今も変わらず、我ながら豪快に散らかしてはいますが、現状回復に苦労することはなくなりましたので、ご安心下さい。また、シンクがこんなありさまになった後の食事の支度はここではなく、ダイニングテーブルやコーヒーテーブルの上でしておりましたので、併せてご安心いただけたら……恐いですよね。私もです。

 さて、こんな状態からほぼ丸2日不休不眠で片付けまして、何とか工事の人を台所に入れることができました。今思えば、緊急措置な片付けと丸わかりのところに、よく人を入れたなと思うのですけども、水道屋さんは汚部屋を見慣れているだろう……と、いまだに自分に言い聞かせております。余談です。

◎台所を人並みに清潔したい
 掃除をしていて気付いたのは、ゴミは捨てた分だけ減るので手をつけてさえしまえば意外と気楽なのに、汚れは落とさなければそのままで地味に心が荒むということです。不幸中の幸い……とは言わないかもしれませんが、私には掃除をしないくせに知識を溜め込むのが好きだという習性があります。その知識とグーグル様をフルに使い、まずは台所を人並みの清潔さに戻すと決めました。頭でっかちからの脱却です。いつかは部屋をきれいにして過ごしたいと思っていたので、それだけ溜め込んでいたんですね……行動するまでにだいぶ時間がかかってしまいましたが。いつか痩せるぞと思いながら、筋トレを覚えておく……みたいなものでしょうか。

 休んだ日もありますが、台所の掃除に手を付け始めて1カ月あまり。いまだに全部の掃除が終わっていないのは、それだけ汚してきていたからです。どうせ掃除をするのなら苦労してでも一気にきれいにして、これからも続く生活=掃除、をこれほど大変な思いをしてやらずに済むようにしたいと考え、今も掃除を続けています。先ほど「豪快に散らかしても、現状回復に苦労することはなくなりました」と書けるようになったのも、この楽にしたいという目標に少し近付けているのだと思います。「とりあえず」や「今は」という言葉は汚部屋住人の敵だ……!

 そして残る大物は1つ、換気扇だけとなりました。

【最近の台所】
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◎換気扇との恐ろしい対面
 掃除を始めた頃は仕事をしていなかったため、朝から晩まで毎日9時5時で掃除をすることができましたが、途中から仕事を再開したせいもあり、スローペースになりました。そんなある日の夕食後、「そろそろ(換気扇に)手を付けよう、数回に分けて少しずつ掃除をしよう」と見上げた換気扇フード、そこに下げていたS字フックをふと取り上げてみたら、その先に蜂蜜のような粘度の油がべっとりと付いていました。その近くにあった、取り外せるらしい換気扇の部品を、越してきて初めて引き抜いてみたら、ここが養蜂場なら大喜びするだろう蜂蜜のような粘度の油がドボドボと大量にガスコンロの上へ落ちていきました。心の中は大絶叫です。

【掃除前の換気扇】
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【フィルター以外も外しましたが、なにこれつらい】
kankisen02

 発作的にグリスフィルターやシロッコファンの蝶ナットやベルマウスを外して、ある程度分解してしまいました。折角きれいにしているのに、こんな状態は嫌だ……! 電動ドライバーがあると、こんな時はかどります。

 分解してしまったなら、もう換気扇掃除を始めるしかありません。手元に少し残っていた、「セスキ炭酸ソーダ」で煮洗いするところから、今回の本題「換気扇を掃除しよう」はスタートしました。

がいらん
東京23区在住、汚部屋から脱出して人並みの暮らしを手に入れたいアラフォー。夫と2人暮らし。
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「キャバ嬢としての全盛期が忘れられない」夜の世界から足抜けできなかった女たちの今

 夜の商売で働く女性たち。彼女たちはそれぞれに事情を抱え、本当はやめたいのにやめられずにいる……などというのは昔の話。ヘルスなどの射精産業には暗い裏事情を持つ女性たちもいるというが、キャバクラ嬢たちの中には、至ってカジュアルに夜の世界で働いている女性たちも多い。

■キャバクラを辞めた後は株を始めたり、会社を立ち上げる子

「こないだ昔なじみの黒服がぼやいていましたよ。指名もついて、さあこれから稼いでくれるぞ! って期待していた子が、『彼氏ができたから辞める』ってLINEで送ってきたってね(笑)。それからひと月もたたないうちに別の店で働いているってうわさを聞いて、その店に行ったという客に聞いたら『彼氏と別れたから復帰した』って笑って話していたそうです。店は売れっ子のキャストがひとり抜けたら、けっこうダメージを受けるんですけどね」

 そう話すのは、かつてキャバクラを経営し、今でも店にドレスやスーツを販売する外商として夜の世界に関わるM氏。長年この世界で生きているM氏を慕うキャバクラ関係者は多く、そんな愚痴を聞くのも仕事のうちだ。

「キャバ嬢が店を辞める理由としてよく聞くのは、彼氏がらみですね。彼女が客とはいえ他の男とLINEやメールのやり取りをし、仲良く話をしているのに焼きもちを焼いてしまうんだとか。目端の利く子の中には、キャバ嬢として働いている間に人脈をつくったり、いろんな知識を身につけたりして、店を辞めた後は株を始めたり、会社を立ち上げる子もいます。どんな会社かって? よく聞くのはペット関連です。ペットを飼っているキャバ嬢は多いから、その延長でビジネスを始めるみたいです」

■夜の商売の門戸は広くなっているから、働き口に困らない

 M氏によれば、キャバで働くのは20代。できれば20代半ばまでで足を洗いたいと思っているキャバ嬢が多いという。キャバを抜けた後の身の振り方は結婚、企業の一般職への就職などさまざまだが、中には夜の世界にどっぷりつかり、抜け出せなくなる子も多い。

「見た目が若ければ年齢をごまかして働くこともできるし、ただ若いだけの子より、アラサーくらいの落ち着きのある子の方がいいっていう客もいますからね。30代、40代になっても熟女キャバクラがあるから、働く場所には困らない。太っている子を雇うポチャ専の店もありますしね。夜の商売の門戸は広くなっているから、働き口に困らないという『いい面』がある反面、抜け出せなくなるという『悪い面』もあるんです。選ぶのは本人の自由だから、私がとやかく言うことじゃありませんが、歩けなくなるくらい酒を飲んで、泣きながら愚痴を言っている子を見ると、『ああ、辞めた方が体にもいいのにな』と思います。気楽に働いているように見えても、指名や売り上げなど、彼女たちもいろんなプレッシャーと戦い続けていますから」

 そういうキャバ嬢たちを見ていると、M氏は若かりし頃の顧客だった、キャバレー嬢たちを思い出すという。バブル真っ只中で羽振りの良かった頃、景気よく金を使ってくれた彼女たちも、バブル崩壊による景気の低迷、それに伴い夜の世界も大箱のキャバレー全盛からキャバクラがメインとなっていく中で、ひとり、またひとりと夜の世界から足を洗っていったというが……。

「たまに商売で顔を出す店にね、バブルの頃からの顔なじみがいるんです。キャバレー、キャバクラ、スナックと流れて、今はまたキャバレーに戻ったそうです。あのドラマ、『キャバすか学園』(日本テレビ系)でしたっけ? 全国のキャバクラを渡り歩いているっていう子(小嶋陽菜演じる「こじはる」)が出てきましたが、あの子みたいに、いろんな土地の店を渡り歩いているベテラン嬢は意外といるんですよ」

■自分にとっての“一番いいとき”を忘れられない

 しかし、かつてのキャバレー全盛時代のような収入は望むべくもなく、時給は1,000円ちょっとと、アルバイトや一般職のパートの時給とそれほど変わらない。なぜ、収入の高さというメリットがないのに、夜の世界にこだわるのだろうか?

「ちょっと前に、あるAV女優のドキュメントを見たんですが、売れっ子のときはトップアイドル並みの待遇を受けていたけど、人気が落ちてからは、複数の女優が出演する、ひと山いくらみたいな扱いの作品しかオファーが来ないんだそうです。それなのに辞めない理由を聞かれると、『また昔みたいになりたい』と答えていました。上ったはしごの先から降りられなくなったというのかな? ちやほやされて、はしごを上ったけど、人気がなくなったからとはしごを外されたら、落ちるしかないですよね? そうなったらほとんどの人はあきらめるけど、自分にとっての“一番いいとき”を忘れられず、支える足場がないのに、そこにしがみついてしまう人間もいます。夜の世界から抜けられなくなった女性たちは、『自分にはこの仕事しかできない』と口を揃えて言うのですが、良き時代をいまだに忘れられずにいるのかもしれません」

 自分が一番輝いていた瞬間。「本人にとっての武勇伝」をいい年になっても自慢げに話す男が多いように、それを忘れられないのは女も同じなのかもしれない。夜の世界にこだわるのは本人の自由だ。しかし、M氏はベテラン嬢たちのどこか疲れた背中を見ると、なんともやるせない気持ちになるという。

女だけどニューハーフバーで働いてみたレポート なぜお客さんにバレなかったか?

第5回 ニューハーフバー「朝までカマ騒ぎ」

 女のコ大好き! そして新宿二丁目大好きなタレント、一ノ瀬文香です。

 夜の街には、行ってみるのにちょっと勇気のいる個性的な店もありますよね。そういう店で私が実際に働いて、従業員目線とお客さん目線の両方からレポートします。

 今回レポートする店はニューハーフバー。ニューハーフとは、男性の体で生まれ、女性の格好やメイク、言動をして夜のお店で働く人たちのことを指した職業用語です。私は女性の体で生まれたのでニューハーフではないですが、今回、特別に小田急線・向ヶ丘遊園駅そばのニューハーフバー「朝までカマ騒ぎ」で働けることになりました。

■容姿端麗で親しみやすいトークのキャストたち

 まずアポを取り、面接を兼ねてお店に飲みに行きました。店内は、高級クラブのような雰囲気。黒服の男性に誘導されて席に座ると、すぐに2人のキャストが登場。決してお世辞ではなく、2人ともめちゃくちゃ可愛い! 男性の体で生まれてきたとは思えないほど女性的な見た目である上に、銀座や六本木のクラブで働けそうな洗練されっぷり。あとから一緒に座ってくれた2人も、店内を歩くキャストたちも皆きれいで、ギャル系、アイドル系、モデル系と、さまざまなジャンルのコたちが揃っていました。

 「キャストのレベルが高い」といううわさは聞いていたのですが、正直、そういうコたちは六本木や歌舞伎町のような繁華街に集まると思っていたので、予想以上の容姿にびっくり。隣に座ったキャストに聞いたところ、性転換手術はしていないコも多いけど、ほとんどは女性ホルモンの注射や服薬はしているとのことでした。年齢は23~56歳と幅広い!

 キャストたちは私が面接も兼ねて店に来たことは知らない様子で、普通にお客さんとして接客してくれました。以前、純女(女性の体で生まれた女性)が働くキャバクラに行ったことがあるのですが、基本的に男性のお客さん優先で、女性客に対しては適当な接客をしているキャストに会うこともありました。しかし、このお店で出会ったキャストたちはみな愛想が良く、私が興味を持ちそうなジャンルのトークを探ってくれて、会話で楽しませてくれます。私が「女のコが大好きなんだ!」と言っても動じず、顔を近づけてきて「私たちの誰がタイプ?」と聞いてくれたり、「ホントきれいよねぇ」と私の容姿を褒めてくれたりして、すっかり上機嫌にさせてくれるので、一緒に飲みに行った方から「エロいおっさんみたいな表情になってるー!」と茶化されました(笑)。ちなみにこちらのお店、お客さんの3割が女性で、特に30歳前後の女性が多いそうですよ。

■ほんわかアットホームな雰囲気

 しばらくして、店のオーナーが到着。そう、楽しんでいて忘れるところでしたが、私は面接を兼ねて来たのです! オーナーにご挨拶し、お店で1日働かせてほしいとお願いすると、すぐに快諾していただけました。

 オーナーによると、ここはオープンしてから5年になる店だそう。

「キャストはオープン当時から在籍しているコたちもいて、現在の在籍人数は11人。平日は6人くらい、週末はほぼ全員が出勤しています。お客さんは比較的近くに住んでいる方が多いのですが、繁華街の店にも飲みに行く方たちから、都内に比べて安いのにキャストのクオリティが高いし、何よりあったかい雰囲気がイイと、よく言っていただきます」

 オーナーと相談して働く日を決めると、私のそばにいたキャストが「今度は一緒に働けるのね!」と喜んでくれました。帰り際、見送ってくれた彼女に聞いた、この店に来た理由が印象的でした。

「繁華街のニューハーフ系のお店で働いていたことがあるんだけど……お店同士の付き合いが多くて、働いている私たちも他店のコのバースデーに顔出ししないと、うまくやっていけないの。お店の中でも派閥があったりして、力があるおねえさんに気に入られなきゃとか……そういうギスギスした感じに疲れちゃってここに来てみたの。ここは近くにニューハーフ系のお店がないから、付き合いで他店に顔出さなきゃってこともないし、派閥もないから居心地イイ」

 なるほど。オーナーが話してくれた「あったかい雰囲気」は、キャスト同士がギスギスしていないからなのだろうなと思いました。ギスギスしていると、お客さんも感じるものですよね。

■千葉から働きに来ているキャストも

 いよいよ私が働く日。いつもより濃いめにメイクして、ヘアセット専門の店でセットしてもらってから、お店に向かいました。お店の更衣室で自前のドレスに着替えて、すでに出勤しているキャストのコたちに「いちかです。よろしくお願いします」とご挨拶。座っていると、キャストの1人が私にお茶を持ってきてくれ、「あそこにあるソフトドリンクは、どれでも自由に飲んでイイんだよ」と教えてくれました。

 その優しさに和んだ私は、出勤してきたキャストのコたちに「どうしてここのお店で働くことにしたんですか?」とか「どこから通ってるんですか?」とか、質問してみました。みんな、気さくに答えてくれました。「居心地がいいから」という回答が多くて、住んでいるところはバラバラ。中には「千葉のほうから、週末だけ働きに来ている」というコもいましたね。

 また逆に、美容に関心が高いからだと思いますが「どこのメーカーの化粧品を使っているの?」とか、私が付けているまつ毛エクステについて「何mmの長さの、どういう種類のを付けているの?」とか、質問攻めされました。

 それから、私が「自分は女性の体で生まれたけど、働かせてもらいに来ました」と言ったら、「お客さんにいちかちゃんのこと、女のコだよね? って言われたらどうしよう?」と聞かれたので、私は「みなさんがやりやすいように答えてもらって大丈夫ですよ。私自身はとりあえず何も言わないで働いて、聞かれたら無理に嘘つくつもりはなくて……その場のノリでいきます」と答えました。

■お客さんからは、女と思われなかった

 営業開始時間になると、すぐに1組目のお客さんたちが来て、さっそく席につかせてもらうことに。席につくと「女のコだよね?」とは聞かれず、「クオリティ高いね」と言われ、私がニューハーフである前提で話し始めました。2組目のお客さんも同様でした。

 2組目を見送ったあと、キャストの1人から「いちかちゃん、初出勤と思えないほど堂々としていて肝が据わっているよね」と褒めてもらいました。堂々としていたために、キャストたちから浮かず、お客さんから女のコだって思われなかったのではないでしょうか。

 そして3組目、常連らしい3人組のお客さんだったのですが、そのうちの1人の男性客が私に「女のコだよね!?」と聞いてきたので、私は握った両手を顎の下に置いたぶりっ子ポーズで「はい、女のコですぅ~」と答えました。すると一緒にいた女性客が「女のコなわけないでしょ! (女のコなら)こんなポーズしないでしょ」と言い、男性客も「いや~女のコだと思ったよ。すごいねぇ」と言っていて、やはりここからは私がニューハーフという前提で話が進んでいきました。

 4組目のお客さんは新規の男性2名でした。そのうちの1人から「聞いていいのかわからないけど……手術はしているの?」と聞かれました。「手術は……したことありません」と正直に答えると「そ、そっかホルモン注射だけか。ごめんね、聞いちゃって……」とかなり申し訳なさそうに言われたので、ちょっと胸が痛くなりましたが……そのまま会話が続いてしまいました。

 結局この日、オーナーに紹介してもらった1人だけにしか、私が女という話をお客さんにしませんでした。

■ベテランキャストの真心がこもった接客

 ベテランキャストのふうさんを目当てに来ている、常連客の席についたときのことです。彼らは男性2名、女性1名で来ていました。ふうさんはちょっといじわるなことを言って女性客をいじり、彼女のほうも負けじと、ふうさんをいじり返していました。「ブス」なんて言い合ったりして。

 でも、ふうさんは女性客が好きなお菓子を知っていたようで「これでも食べてなさい」と言って、たくさん席に持ってきて渡したり、飲みゲーム(ゲームに負けた人が飲む)をしたときは彼女がなるべく負けないようにしたりと、さりげなく気遣っているのです。彼女も男性客たちに対して「しょうがないから、ふうさんの◯日のバースデーパーティーに来てあげましょ」と誘ったりして、ふうさんに対する気遣い、そして信頼を感じました。

 お客さんに対してわざといじわるなことを言う「下げの接客トーク」は、よほど接客がうまい人でなければ通用しません。接客がなっていない人が同じことをしたら、ただの失礼なキャストと見なされ、場の雰囲気を壊してしまいます。「下げの接客トーク」は、お客さんの様子をしっかり感じ取れて、言うタイミングを考えられて、より真心を込めた「上げの接客」ができてこそ、言葉遊びとして生かせるのだと思います。だからこそ、ふうさんのすごさを感じました。

 朝5時近く、そろそろ閉店ということで、ふうさんが素晴らしい歌声を1曲披露して、お客さんたちがみんなお帰りになりました。

 キャストたちには、営業中の合間や帰り際に「これから何曜日に出勤するの?」と聞かれ、私は「とりあえず今日だけの約束で……でも、働けなくても、また遊びに来ます! みんなに会いに!」と約束。働いたあとで疲れているだろうにみんな笑顔で「お疲れさま!」と言ってくれて、中には出口まで私を見送ってハグしてくれたキャストのコもいました。男性客で「このお店に来ると癒やされる」とおっしゃっていた方がいましたが、遊びにではなく、働きに来てみた私も癒やされてしまいました。また1人でも遊びに行きます。みなさんもいかがでしょうか?

朝までカマ騒ぎ
神奈川県川崎市多摩区登戸2663東洋ビル4階
044-933-0678
営業時間 平日22~4時、金・土・祝前日22~5時
定休日 日曜
システム 30分1680円(指定リストにあるビール、焼酎、ウイスキー、ブランデー、カクテルが飲み放題。税・サービス料別)

一ノ瀬文香(いちのせあやか)
よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属タレント。コメンテーター、アクション女優。お酒は弱いのに飲み屋が大好き。特に新宿二丁目や三丁目、ゴールデン街あたりに、16年以上前からよく出没している。六本木の高級クラブFの元ホステス(5年間)や、二丁目のミックスバーで雇われママをしていたことも。現在も二丁目のミックスバー“プチ!NATURAL”のプロデュースをしていたりと、水商売のプロでもある。2009年に週刊誌でレズビアンをカミングアウトし、15年にはミュージカル女優と挙式。プロフィール

女だけどニューハーフバーで働いてみたレポート なぜお客さんにバレなかったか?

第5回 ニューハーフバー「朝までカマ騒ぎ」

 女のコ大好き! そして新宿二丁目大好きなタレント、一ノ瀬文香です。

 夜の街には、行ってみるのにちょっと勇気のいる個性的な店もありますよね。そういう店で私が実際に働いて、従業員目線とお客さん目線の両方からレポートします。

 今回レポートする店はニューハーフバー。ニューハーフとは、男性の体で生まれ、女性の格好やメイク、言動をして夜のお店で働く人たちのことを指した職業用語です。私は女性の体で生まれたのでニューハーフではないですが、今回、特別に小田急線・向ヶ丘遊園駅そばのニューハーフバー「朝までカマ騒ぎ」で働けることになりました。

■容姿端麗で親しみやすいトークのキャストたち

 まずアポを取り、面接を兼ねてお店に飲みに行きました。店内は、高級クラブのような雰囲気。黒服の男性に誘導されて席に座ると、すぐに2人のキャストが登場。決してお世辞ではなく、2人ともめちゃくちゃ可愛い! 男性の体で生まれてきたとは思えないほど女性的な見た目である上に、銀座や六本木のクラブで働けそうな洗練されっぷり。あとから一緒に座ってくれた2人も、店内を歩くキャストたちも皆きれいで、ギャル系、アイドル系、モデル系と、さまざまなジャンルのコたちが揃っていました。

 「キャストのレベルが高い」といううわさは聞いていたのですが、正直、そういうコたちは六本木や歌舞伎町のような繁華街に集まると思っていたので、予想以上の容姿にびっくり。隣に座ったキャストに聞いたところ、性転換手術はしていないコも多いけど、ほとんどは女性ホルモンの注射や服薬はしているとのことでした。年齢は23~56歳と幅広い!

 キャストたちは私が面接も兼ねて店に来たことは知らない様子で、普通にお客さんとして接客してくれました。以前、純女(女性の体で生まれた女性)が働くキャバクラに行ったことがあるのですが、基本的に男性のお客さん優先で、女性客に対しては適当な接客をしているキャストに会うこともありました。しかし、このお店で出会ったキャストたちはみな愛想が良く、私が興味を持ちそうなジャンルのトークを探ってくれて、会話で楽しませてくれます。私が「女のコが大好きなんだ!」と言っても動じず、顔を近づけてきて「私たちの誰がタイプ?」と聞いてくれたり、「ホントきれいよねぇ」と私の容姿を褒めてくれたりして、すっかり上機嫌にさせてくれるので、一緒に飲みに行った方から「エロいおっさんみたいな表情になってるー!」と茶化されました(笑)。ちなみにこちらのお店、お客さんの3割が女性で、特に30歳前後の女性が多いそうですよ。

■ほんわかアットホームな雰囲気

 しばらくして、店のオーナーが到着。そう、楽しんでいて忘れるところでしたが、私は面接を兼ねて来たのです! オーナーにご挨拶し、お店で1日働かせてほしいとお願いすると、すぐに快諾していただけました。

 オーナーによると、ここはオープンしてから5年になる店だそう。

「キャストはオープン当時から在籍しているコたちもいて、現在の在籍人数は11人。平日は6人くらい、週末はほぼ全員が出勤しています。お客さんは比較的近くに住んでいる方が多いのですが、繁華街の店にも飲みに行く方たちから、都内に比べて安いのにキャストのクオリティが高いし、何よりあったかい雰囲気がイイと、よく言っていただきます」

 オーナーと相談して働く日を決めると、私のそばにいたキャストが「今度は一緒に働けるのね!」と喜んでくれました。帰り際、見送ってくれた彼女に聞いた、この店に来た理由が印象的でした。

「繁華街のニューハーフ系のお店で働いていたことがあるんだけど……お店同士の付き合いが多くて、働いている私たちも他店のコのバースデーに顔出ししないと、うまくやっていけないの。お店の中でも派閥があったりして、力があるおねえさんに気に入られなきゃとか……そういうギスギスした感じに疲れちゃってここに来てみたの。ここは近くにニューハーフ系のお店がないから、付き合いで他店に顔出さなきゃってこともないし、派閥もないから居心地イイ」

 なるほど。オーナーが話してくれた「あったかい雰囲気」は、キャスト同士がギスギスしていないからなのだろうなと思いました。ギスギスしていると、お客さんも感じるものですよね。

■千葉から働きに来ているキャストも

 いよいよ私が働く日。いつもより濃いめにメイクして、ヘアセット専門の店でセットしてもらってから、お店に向かいました。お店の更衣室で自前のドレスに着替えて、すでに出勤しているキャストのコたちに「いちかです。よろしくお願いします」とご挨拶。座っていると、キャストの1人が私にお茶を持ってきてくれ、「あそこにあるソフトドリンクは、どれでも自由に飲んでイイんだよ」と教えてくれました。

 その優しさに和んだ私は、出勤してきたキャストのコたちに「どうしてここのお店で働くことにしたんですか?」とか「どこから通ってるんですか?」とか、質問してみました。みんな、気さくに答えてくれました。「居心地がいいから」という回答が多くて、住んでいるところはバラバラ。中には「千葉のほうから、週末だけ働きに来ている」というコもいましたね。

 また逆に、美容に関心が高いからだと思いますが「どこのメーカーの化粧品を使っているの?」とか、私が付けているまつ毛エクステについて「何mmの長さの、どういう種類のを付けているの?」とか、質問攻めされました。

 それから、私が「自分は女性の体で生まれたけど、働かせてもらいに来ました」と言ったら、「お客さんにいちかちゃんのこと、女のコだよね? って言われたらどうしよう?」と聞かれたので、私は「みなさんがやりやすいように答えてもらって大丈夫ですよ。私自身はとりあえず何も言わないで働いて、聞かれたら無理に嘘つくつもりはなくて……その場のノリでいきます」と答えました。

■お客さんからは、女と思われなかった

 営業開始時間になると、すぐに1組目のお客さんたちが来て、さっそく席につかせてもらうことに。席につくと「女のコだよね?」とは聞かれず、「クオリティ高いね」と言われ、私がニューハーフである前提で話し始めました。2組目のお客さんも同様でした。

 2組目を見送ったあと、キャストの1人から「いちかちゃん、初出勤と思えないほど堂々としていて肝が据わっているよね」と褒めてもらいました。堂々としていたために、キャストたちから浮かず、お客さんから女のコだって思われなかったのではないでしょうか。

 そして3組目、常連らしい3人組のお客さんだったのですが、そのうちの1人の男性客が私に「女のコだよね!?」と聞いてきたので、私は握った両手を顎の下に置いたぶりっ子ポーズで「はい、女のコですぅ~」と答えました。すると一緒にいた女性客が「女のコなわけないでしょ! (女のコなら)こんなポーズしないでしょ」と言い、男性客も「いや~女のコだと思ったよ。すごいねぇ」と言っていて、やはりここからは私がニューハーフという前提で話が進んでいきました。

 4組目のお客さんは新規の男性2名でした。そのうちの1人から「聞いていいのかわからないけど……手術はしているの?」と聞かれました。「手術は……したことありません」と正直に答えると「そ、そっかホルモン注射だけか。ごめんね、聞いちゃって……」とかなり申し訳なさそうに言われたので、ちょっと胸が痛くなりましたが……そのまま会話が続いてしまいました。

 結局この日、オーナーに紹介してもらった1人だけにしか、私が女という話をお客さんにしませんでした。

■ベテランキャストの真心がこもった接客

 ベテランキャストのふうさんを目当てに来ている、常連客の席についたときのことです。彼らは男性2名、女性1名で来ていました。ふうさんはちょっといじわるなことを言って女性客をいじり、彼女のほうも負けじと、ふうさんをいじり返していました。「ブス」なんて言い合ったりして。

 でも、ふうさんは女性客が好きなお菓子を知っていたようで「これでも食べてなさい」と言って、たくさん席に持ってきて渡したり、飲みゲーム(ゲームに負けた人が飲む)をしたときは彼女がなるべく負けないようにしたりと、さりげなく気遣っているのです。彼女も男性客たちに対して「しょうがないから、ふうさんの◯日のバースデーパーティーに来てあげましょ」と誘ったりして、ふうさんに対する気遣い、そして信頼を感じました。

 お客さんに対してわざといじわるなことを言う「下げの接客トーク」は、よほど接客がうまい人でなければ通用しません。接客がなっていない人が同じことをしたら、ただの失礼なキャストと見なされ、場の雰囲気を壊してしまいます。「下げの接客トーク」は、お客さんの様子をしっかり感じ取れて、言うタイミングを考えられて、より真心を込めた「上げの接客」ができてこそ、言葉遊びとして生かせるのだと思います。だからこそ、ふうさんのすごさを感じました。

 朝5時近く、そろそろ閉店ということで、ふうさんが素晴らしい歌声を1曲披露して、お客さんたちがみんなお帰りになりました。

 キャストたちには、営業中の合間や帰り際に「これから何曜日に出勤するの?」と聞かれ、私は「とりあえず今日だけの約束で……でも、働けなくても、また遊びに来ます! みんなに会いに!」と約束。働いたあとで疲れているだろうにみんな笑顔で「お疲れさま!」と言ってくれて、中には出口まで私を見送ってハグしてくれたキャストのコもいました。男性客で「このお店に来ると癒やされる」とおっしゃっていた方がいましたが、遊びにではなく、働きに来てみた私も癒やされてしまいました。また1人でも遊びに行きます。みなさんもいかがでしょうか?

朝までカマ騒ぎ
神奈川県川崎市多摩区登戸2663東洋ビル4階
044-933-0678
営業時間 平日22~4時、金・土・祝前日22~5時
定休日 日曜
システム 30分1680円(指定リストにあるビール、焼酎、ウイスキー、ブランデー、カクテルが飲み放題。税・サービス料別)

一ノ瀬文香(いちのせあやか)
よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属タレント。コメンテーター、アクション女優。お酒は弱いのに飲み屋が大好き。特に新宿二丁目や三丁目、ゴールデン街あたりに、16年以上前からよく出没している。六本木の高級クラブFの元ホステス(5年間)や、二丁目のミックスバーで雇われママをしていたことも。現在も二丁目のミックスバー“プチ!NATURAL”のプロデュースをしていたりと、水商売のプロでもある。2009年に週刊誌でレズビアンをカミングアウトし、15年にはミュージカル女優と挙式。プロフィール