前回紹介した『マンガに、編集って必要ですか?』(参照記事)は、出版業界を揺るがす過激なタイトルでした。とはいえ、基本的に編集者の仕事ってカッコいいと思うんですよね。最前線で活躍するギョーカイ人って感じで。まあ、職場によってはかなりブラックな仕事みたいですけど、それでも世間一般では編集者っていったら憧れの職業ですよね。名作『編集王』でも「集めて編むのが俺たちの仕事だ」なんて名ゼリフが出てきますけど、カッコよすぎてマジで濡れる。いや尿モレの話じゃなくって。
今回は打って変わって、文芸小説の編集者がテーマのマンガ『ようこそ!アマゾネス☆ポケット編集部へ』を紹介したいと思います。こちらはどっちかっていうと編集者全肯定、出版業界サイコー! 的なアツい……いや、とても暑苦しいテイストで、マッチョな女傑の編集長が、かつてないほどものすごい采配を振るう編集マンガです。
作者はジェントルメン中村先生。もともとは講談社の文庫情報誌「IN☆POCKET」内に掲載されていた作品ですが、現在は講談社文庫のwebサイト上でバックナンバーを読むことができます。
豪談社の文芸誌「アウト・ポケット」の女だらけの編集部を舞台に、新人編集者・白柳紀乃子(きのこ)が気難しい小説家先生やクセのある出版業界人たちを相手に毎回奮闘する話なのですが、大ピンチに陥ると助けてくれるのが、我らが女傑“アマゾネス”才堂厚子編集長。
このチョモランマ山脈のような上腕二頭筋を持つ女史が才堂編集長です。『北斗の拳』に出てきてもおかしくないラスボス感がスゴい! 本作は、そんな彼女のスゴ腕加減を堪能するマンガと言っても過言ではありません。
舞台は文学賞の受賞パーティー。華やかな場での豪華な料理……しかし、ここでの編集者たちの重要なミッションはズバリ、受賞者の作家に自分の雑誌で書いてもらう約束を取り付けること――いわば商談の場でもあるわけです。
「言ってみりゃァ文学賞のパーティーってのは…“感性の野獣”(ショウセツカ)” を捕まえるための狩り場よォ‼」
受賞パーティーって、狩り場だったんですね! 全然知らなかった‼ それにしても「感性の野獣」と書いて「ショウセツカ」と読ませる当て字のセンスが尋常じゃないし、自分自身が野獣みたいに肉喰ってるこのシーンもスゴい。ただただインパクトしかない。
今回のパーティーの獲物は、女流作家の江田良子先生。連載を取り付けるために取り囲むライバル誌の編集者たち。「大ファンです、先生の同人誌時代の作品まで読んでます!」「少・中・高の卒業文集まで読んでます‼」なんて口説きに入るのですが、江田先生には全然響きません。それどころか……
「卒業文集など、私には教師に強要されて書いた文章(ブン)‼ 何の思い入れもないし、読まれて嬉しくとも何とも無いわ‼」
なんて逆ギレされて、取り付く島もない感じです。いやあ、『美味しんぼ』の海原雄山並みに面倒くさそうな先生ですね。そこに、我らがアマゾネスはどう動くのか?
「少しお時間いただけないですかね、江田良子先生…否、『AYASHI好き好きはんぺん娘』さん‼」
なんと、先生が15年前にアイドルグループ「AYASHI」のファン掲示板にカキコしていた時のハンドルネームで呼びかけたのです。それだけだったら黒歴史の暴露みたいで恥ずかしいだけですが、実は同時期に編集長も「AYASHIに夢中なうさぎっ子」のハンドルネームで活動しており、その頃からずっと先生の文体に注目していたというのです! なんという先見の明‼
「素敵(うまそう)な文体(エモノ)は決して忘れぬ、それが編集者(ハンター)って生き物(モン)ですから‼」
豪快な当て字だらけのセリフがガツンと決まり、意気投合。見事に江田良子先生を口説き落としたのです。
ピリピリムードから一気にホッコリムードへ、そう毎回マッチョな展開から必ずホッコリしたオチを迎えるのがジェントルメン中村先生の匠の技(ワザ)です。え? 画的には全然ホッコリしてないって⁉ コマの中に「ホッコリ」って描いてあるんだからホッコリしてんだよ‼(強引)
あと、すでにいくつか紹介済みですが、このマンガは豪快すぎる業界用語の当て字が多数出てくるところも魅力です。「茶坊主」と書いて「イエスマン」、「編集」と書いて「タントウ」、「武器」と書いて「コトバ」、「戦友」と書いて「アイボウ」などなど、いちいち言い換えるのが無駄にカッコいいです。さすがに「編集」って書いてタントウって読ませるなら、初めっから「担当」って書いとけよって気もしますけど、ここでツッコんだら負けです。
というわけで、次世代型編集者マンガ『ようこそ!アマゾネス☆ポケット編集部へ』をご紹介しました。「働く女子を応援(ハート)」というテーマになってますけど、男子が読んでもモンスターエナジーを3本一気飲みするのと同等レベルで元気になれる要注目マンガです。(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)
●ジェントルメン中村@gentlemennkmr

