もしも読書好きのヤンキーがいたら……いやいや、そんなことあるはずがない。本来ヤンキーと書物は相いれないものであり、本を読むヤンキーがいたらそれはヤンキーではなく、普通の学生なのだ――そんな偏見の目で見ていた時期が私にもありました。しかし、マンガの世界は時として、そんな先入観をいともたやすく崩壊させてしまう。そう、読書するヤンキーは確かに存在したのだ!!(ドギャーン)
なぜか往年の水曜スペシャル『川口浩探検隊』風の出だしになってしまいましたが、今回は読書とヤンキーをカップリングさせたらとんでもないことになってしまったマンガ『どくヤン!』をご紹介します。
本作は現在、「Dモーニング」で隔週連載中。講談社の6誌共同WEBサイト「コミックDAYS」でも読むことができます。
『どくヤン!』とは?
『どくヤン!』の舞台は、他校のヤンキーが恐れおののく筋金入りのヤンキーの巣窟「毘武輪凰(ビブリオ)高校」。ここは、あるひとつのルールさえ守れば、どんな不良生徒でも通うことができ、しかも学費は無料という魅力的な高校なのです。そのルールとは……
「読書」をすることなのです。つまり、ビブ高のヤンキーたちは皆、ヤンキーのくせに読書を愛するという、突然変異ヤンキー……これがすなわち『どくヤン!』なのです。
すべてにおいて「読書」が優先されるビブ高ですから、その教育方針は相当変わっています。ある意味『魁!!男塾』(宮下あきら/ジャンプ・コミックス)よりも狂っています 。
教育理念は「読書上等!」。なんでケンカ腰やねん。
なんと、時間割はすべて読書! ……もはや時間割が存在する意味すらわからない。ビブ高がいかに尋常じゃないか、その片鱗がわかってもらえるかと思います。
なんだかんだいっても筋金入りのヤンキー高ですので、校内には ヤンキーがやりがちな行動様式がはびこっています。
ヤンキーが自分より弱い者に対して金を要求する行為といえば……そう「カツアゲ」ですよね。ただし、ビブ高のカツアゲは少々特殊です。
金欠ならぬ「本欠」のヤンキーたちが「本」をカツアゲします。これが「ブッカツ」(ブックカツアゲ)です。自分の読んでいる本を奪われ、「てめーはフリーペーパーでも読んでな!」とケリを入れられる。いろんな意味で不条理です。
そしてヤンキー的行為の代名詞といえばこれ!「アンパン」。袋に入れたシンナーを吸ってラリっちゃうやつ。今の若者には信じられないかもしれませんが、昭和の時代には「アンパン」やりすぎて前歯が溶けてなくなるヤンキーがたくさんいたんですよ!! そんなヤンキーの伝統芸能たる「アンパン」も、ビブ高流はちょっと違います。
シンナーの代わりに、袋に入れた本の紙やインクの匂いを嗅ぐ……その名も、アンパンならぬ「本パン」。常習性があるため校則で禁止されている危険行為です……っていうか、本のインクって常習性あるんだ!! しかも、ビジュアル的にはこっちのがやべーよ。
そこら中の壁にスプレーとかで落書きしちゃうのも、ヤンキーにありがちな習性ですよね。「喧嘩上等」とか「夜露死苦」とか。ビブ高にも当然あるにはあるんですが……
自分の好きな作家名を壁にスプレーしちゃう。確かに「団鬼六」とか、すげー強そうだけども……。
ビブ高のヤンキーたちにも派閥があります。当然ながら派閥同士によるケンカが毎日のように繰り広げられているわけですが、その派閥とは……
主に好きな本のジャンルによって分けられています。SF小説ヤンキー、歴史小説ヤンキー、探偵小説ヤンキー、官能小説ヤンキー……
レシピ本ヤンキー、ジュブナイルヤンキー、恐怖小説ヤンキーなんてものまでいます! バラエティに富みすぎてるだろ! あと個人的に、官能小説ヤンキーとレシピ本ヤンキーは、なんか認めたくない気がする 。
数あるヤンキーの中でも私小説ヤンキーの獅翔雪太(ししょう・せつた)は、弱い者いじめが嫌いな正義感のある男です。私小説をこよなく愛す、人一倍傷つきやすいが、受けた苦痛は100倍にして返す男。あれ、もしかして……?
うん、一瞬マトモな生徒なのかと思いましたが、やっぱりヤバイやつでした。
ちなみに先ほどご紹介したレシピ本ヤンキーは、敵に襲われると、栗原はるみ本から潜在的凶暴性を引き出して闘います。
ビブ高の生徒はヤンキーとはいえ、授業で読書ばかりしているので、文章を体で覚えてしまっているわけです。たとえば夏目漱石の『こころ』ぐらいなら、余裕で全員暗唱できます。
いやいや、これってすごくないですか? もしかしたらビブ高の生徒たちって、実はメチャクチャ頭がいいんじゃないでしょうか……? しかし、そんなビブ高生たちが最も恐れる課題は、「ドッカン」と呼ばれる読書感想文でした。
月1回の提出ができないと即退学となってしまうという厳しい課題なのですが、読書好きな上に、漱石が暗唱できるぐらいだから、そんなに恐れる必要なんかないのでは……?
ところがどっこい! ビブ高の生徒たちは、本は読めても字が書けないという致命的な弱点があったのでした!! そこは頑張って書けるようにしておけよ……。
そんな感じで毎回、読書をテーマにバイオレンスの限りが尽くされる読書版『魁!!男塾』ともいえる作品なのですが、ちゃんとラストでテーマになったお勧め書籍が紹介される構成になっています。なんだかんだいっても、やっぱり読書マンガなんですよね!
……まあ、ちょっと書籍のチョイスが独特すぎるのが難点ですが。とにかく、読書とヤンキーの画期的すぎるマンガ『どくヤン!』。このムチャすぎるコンセプトで、果たしてどこまでいけるのか? 今後の展開が見逃せません。
(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)
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