赤線地帯の女を描く『ある脱出』、娼婦の“性”への葛藤が心を掴んでしまう理由

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『娼婦小説集成』(中央公論新社)

■今回の官能小説
『ある脱出』(『娼婦小説集成』より/吉行淳之介、中央公論新社)

 皆さんは「赤線地帯」というものをご存じだろうか? 赤線は、1958年以前に公認で売春が行われていた地域の俗称である。有名なところでは、東京の吉原などがかつて赤線地帯であり、飲食店として風俗営業の許可を取得し、女たちは女給となり男性客を取っていた。

 飲食店の看板を掲げた店が立ち並ぶ遊郭に勤務し、男たちに刹那的な快楽を売る女たちの姿を小説として多く残したのが、吉行淳之介だ。赤線遊び好きとして有名だった吉行は、赤線に生きる女たちを生々しく描いた『驟雨』で第31 回芥川賞を受賞している。今回ご紹介する『娼婦小説集成』(中央公論新社)の『ある脱出』も、赤線地帯の女性の物語である。