『ザ・ノンフィクション』過酷な修行の終わり――頼りない丁稚が遂げた驚きの変貌とは?

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。4月16日の放送は「ボクらの丁稚物語 2023 後編 ~ふたりぼっち 夢の行方~」。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 横浜市の家具製作会社「秋山木工」では、住み込みで5年間修行する丁稚奉公制度が採用されている。この間、丁稚たちは酒もタバコも恋愛も禁止、携帯電話は私用で使えず、家族への連絡は手紙だけ。朝は近所の清掃、さらに修行期間中は男性も女性も丸刈りという非常に過酷なものだ。

 しかし秋山木工では、高級ブランドショップやホテルなどに納品される一点ものの高級家具を作る技術を丁稚生活で身につけることができる。ただ、その過酷さから丁稚のほとんどが途中で脱落してしまい、2022年春に至っては新人の丁稚すら来ない状況だ。

 現在の丁稚は、17年に秋山木工に入社した2名のみ。名門・京都大学に入ったものの学校に通えなくなり中退した、実家が家具製造会社の内藤と、京都で8代続く造園会社の跡取りの加藤だ。加藤の場合、木工は異業種なのだが、跡取りとして造園会社で職人たちをまとめるリーダーシップとマネジメント力を学びたく秋山木工入りしたという。

 2人は丁稚6年目。本来1年の見習い期間を含め5年で丁稚を修了し、そこからは2年間の秋山木工への「お礼奉公」期間になるはずなのだが、技術力がまだ足りず、それでいて積極的な姿勢がどうにも見えない2人の態度に、修了は早いと秋山社長から「待った」がかかった形だ。

 一方で、秋山社長はあまりに離脱者が多い丁稚制度の改革も進める。内藤と加藤の兄弟子にあたり、技能五輪でメダルも獲得した職人・佐藤を教育係に据え、いきなり出先で仕事をさせるのではなく、半年間の教育期間を設けることにした。

 そのような中で、内藤と加藤の「丁稚卒業」がほぼ1年遅れの23年2月に決まる。修了式当日、スーツ姿の内藤と加藤は堂々たるスピーチを行い、丁稚から職人となった証の法被に袖を通す。なお番組の最後、23年春には4名の新人丁稚があいさつする様子が伝えられており、その中には前編で中学校を卒業したら秋山木工に入る、と話していた松下の姿もあった。

前編はこちらから
https://www.cyzowoman.com/2023/04/post_428829_1.html

『ザ・ノンフィクション』どうにも頼りない6年目の2人

 丁稚修行中の内藤、加藤はともに硬い表情、低めのテンション、少ない口数で、それは「寡黙な職人気質」というよりは、コミュニケーションがとにかく苦手という雰囲気だった。

 加藤の調子の悪いカンナの刀を、年下の先輩職人が調整してくれているとき、加藤は先輩の周りをただうろうろしており、 謝罪やお礼を伝えている様子は放送されていなかった。手持ち無沙汰なら先輩がカンナを調整する手元を観察すればいいのにと、見ているこっちがやきもきしてしまう。

 過去の秋山木工シリーズから見ても2人はどうもこんな感じで、秋山社長や先輩職人たちから指導を受けても、暖簾に腕押しな様子。2人に悪意があり、ふてくされてわざと消極的な態度を取っているのではないことも見ていてわかるだけに、これは指導する側は大変だろう。

『ザ・ノンフィクション』そんな2人も、丁稚修了式では……

 そんな頼りない丁稚の2人だったが、丁稚生活最後となる22年12月に開かれた秋山木工の木工展で、内藤は訪ねてきた加藤の父に「いつもお世話になっています。加藤くんなくしては僕は生活できないんで……」と話し、「大人」な応対をしていて驚いた。そして、木工展を訪れた客にも、マスクをしていても笑顔なのがわかるくらい、にこやかに接していた。

 その後の秋山木工の修了式で、蝶ネクタイをつけた内藤は、背筋をピンと伸ばして、はつらつと晴れやかな顔でスピーチ。大学不登校と丁稚生活で暗くなっただけで、もともとは明るい性格だったのか、それとも何かブレイクスルーにつながるような大きな出来事があったのか、人が入れ替わったのではと思うほどの変貌を遂げていた。

 一方、加藤の雰囲気はそのままだったが、それまで、阪神タイガースを語るとき以外は感情を出すことがほぼなかった加藤が、修了式でこれまで支えてくれた周囲や家族への思いをまっすぐ伝えるスピーチは感動的で、寡黙な人が絞り出す言葉ならではの重みがあった。

 2人は頼りないまま修了するのだろうと思っていたので、修了式で見せた力強さにいい意味で裏切られた。おそらく今後も『ザ・ノンフィクション』で秋山木工シリーズは続いていき、その際は松下など新人丁稚がフォーカスされるのだろうが、その時にちらっとさりげなく出てくるであろう、お礼奉公をしている内藤、加藤を見るのが今からとても楽しみだ。

『ザ・ノンフィクション』丸刈りでスマホ禁止の過酷さ……丁稚志願の14歳に思うこと

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。4月9日の放送は「ボクらの丁稚物語 2023 前編 ~泣き虫同期の6年~」。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 横浜市の家具製作会社「秋山木工」では、住み込みで5年間修行する丁稚奉公制度が採用されている。この間、丁稚たちは恋愛禁止、携帯電話は私用で使えず、家族への連絡は手紙だけ。朝は近所の清掃、さらに修行期間中は男性も女性も丸刈りという非常に過酷なものだ。

 ただ、秋山木工での厳しい修行を通じ、高級ブランドショップやホテルなどに納品される一点ものの超高級家具を作る技術を身につけることができ、若手職人がその技能を競う「技能五輪」においても、秋山木工は多くの入賞者を輩出している。

 2011年の作業場風景では、10人以上の丁稚が修行に勤しむ様子が映されていた。しかし丁稚のあまりに過酷な生活は脱落者も多く、22年春に至っては、丁稚はゼロ。その後、入社直前まで進んだ丁稚もいたようだが、入社当日、その新人丁稚は現れなかった。昨年秋の時点で、秋山木工にいる丁稚は内藤、加藤、山田の3人しかいない。

 秋山利輝社長(79歳)もこの状況に危機感を覚え、ものづくり大学名誉学長の赤松明氏にコンサルティングしてもらう。赤松氏からは、秋山社長の人間性や親孝行を重視した指導など、一本筋なところは好きだと前置きした上で、丁稚制度のやり方には問題があることを指摘。

 さらに赤松氏は「『秋山木工』っていう会社に対して日本の木工会社はあまりよく思っていない。要するに奇異な感じ」とも話す。これを受け、秋山社長は従来の住み込みの丁稚スタイルに、通いのスタイルも追加することを決めるも、かつて成功していた方法を変えることへの不安ものぞかせていた。

 一方、うれしい出来事もあった。千葉で暮らす14歳の中学3年生・松下が、前回秋山木工を特集した『ザ・ノンフィクション』を見て、母親経由で秋山木工に連絡を取り、10日間の丁稚体験を行い、中学卒業後は入社したいとの意志を見せているのだ。秋山社長は千葉の松下の実家を訪ね、松下の母、伯父、叔母とも話す。松下は秋山社長の著書も読んでいるという。

 残った丁稚3人の様子はというと、加藤は丁稚生活6年目ながら「辞めたい」と実家に帰ってしまっていたが、父親に諭され秋山木工に戻る。また、入社4年目の山田は技能五輪の県予選を通過する。昨年も県予選を突破したものの、生活態度に問題があると社内で待ったがかかり、全国大会出場はかなわず、2年越しの念願の出場であったはずなのだが、日誌では技術が至らないことを気にする文面が増え、結局、大会には出ないと決断。その数日後、山田は会社を辞めてしまった。

前回の秋山木工の様子はこちらから

『ザ・ノンフィクション』秋山木工は中高年を採用してみては?

 過酷な丁稚制度を敷く秋山社長は、てっきり「俺のやりたいようにやる。嫌ならついてこなくていい。俺の代で会社が終わっても構わない」という人かと思っていたが、新人が来ないことや、定着しないことに思い悩んでいるのにはびっくりした。

 先週同番組で特集した「レストラン大宮」の大宮勝雄シェフ(72歳)もそうだが、「昭和的スパルタスタイル」を曲げたくないのであれば、若者でなく、昭和的なシゴキの洗礼を大なり小なり受けている昭和の人、中高年を雇えばいいのでは。

 中高年を一から指導するのは気を遣うし、面倒だと思う人や組織が大半だろう。しかし、高齢社会日本で「若い子」は取り合いなのだ。冗談抜きで中高年の丁稚はダメなのだろうか。

『ザ・ノンフィクション』この世界に飛び込む14歳も

 一方、この過酷な秋山木工に飛び込まんとする14歳もいる。自らこの世界に飛び込もうとする中学3年の松下は、14歳とは思えぬ行動力だ。秋山社長もバイタリティある若き丁稚候補を前にとてもうれしそうだった。過去の秋山木工シリーズを見て、「つらそう」ではなく「ここに入社したい」と思う人がいるのだから、人の感じ方はさまざまである。

 とはいえ、松下はまだ14歳。社会に数多くある“ほかの選択肢”を知らないのではないか。入りたくて入ったはずの業界を、疲れ果てて去る若者も少なくないだけに、周囲の大人が松下の決断を手放しで肯定していいのだろうかと複雑な思いもある。

 秋山社長は松下の家を訪ねた際、将来は技能五輪で金メダルを獲ることを松下と誓い合っていた。私の不安が杞憂に終わることを願う。

 次週は続編。いよいよ2人になってしまった丁稚。そして14歳の新人は、果たして本当に秋山木工へ丁稚として入ってくるのだろうか。

『ザ・ノンフィクション』老舗レストランで働く若者たちに見る、仕事のより良い辞め方とは?

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。4月2日の放送は「新・上京物語 2023新 ~二十歳の決断~」。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 若者の初就職を見つめる毎年春の人気シリーズ「新・上京物語」の後編。2021年4月、浅草に本店を構える洋食店「レストラン大宮」に3人の新人が入る。栃木県にある高校の調理科を卒業した18歳の「ちはる」と「らいち」、茨城県出身で、調理師専門学校を卒業した19歳の「あかり」だ。

 らいちとあかりは厨房配属に、ちはるも調理志望だったが、当初はホール配属に。その後、念願の厨房配属になるものの先輩に叱責されることが多く、より適性を感じたホールの仕事に活路を見いだす。

 3人が入社してから約1年半たった昨年9月末、厨房の仕事をしていたらいちは会社を辞めたいと大宮勝雄シェフに切り出す。週1休みで、プライベートの時間が欲しいと話すらいちを引き留める大宮シェフだったが、次の職場の面接を受けていると聞き観念した模様。

 らいちと同じ高校を卒業したちはるは、らいちの退職に思うところがあったようで、「しんどいよ、休みもないし」「今辞めたら『もったいないし』っていう気持ちもあるし」と複雑な胸中を話す。なお、らいちは宣言通り退職。厨房からホールスタッフへと職種を変え、ほぼ週休2日になり、プライベートの時間も増えたようだ。

 一方、明るかったちはるはどんどん元気をなくしていく。遅刻も増えていき、大宮シェフはちはるに「辞めたいんでしょ」と話しかけ、ちはる自身も辞めたいと話したようだが、最近のちはるの勤務態度を問題視していた大宮シェフは、辞めるにしろもっと仕事を頑張ってから辞めたほうがいい、と諭す。

 ちはるを心配する人もおり、レストラン大宮の元ホール担当で、現在は別の有名レストランのホールで働く先輩・きららは、ちはるを食事に誘い、悩む彼女を否定せず優しく励ましていた。

 また、23年2月にらいちが久々にレストラン大宮を訪ねた際も、ちはるを心配し声をかけていたが、彼女はひたすら疲れた様子で、きららやらいちの励ましは心に届いていないように見えた。

 そして、ちはるは勤務中に過呼吸を起こし倒れ、栃木の実家に帰ると、結局そのまま退職することに。番組の最後では、23年春から働く新人が「レストラン大宮」の寮に入る様子が伝えられていた。

『ザ・ノンフィクション』会社はいきなり辞めたほうがいい?

 退職を選んだらいちは“青天の霹靂”的な辞め方だった。一方、ちはるは22年秋頃から明らかに元気がなくなっていき、大宮シェフとも辞めることを話していたようだが、説得もあってかそこで辞めきれず。結局翌年、職場で倒れ実家に帰ることになりと、退職の予兆から実際に辞めるまで期間があった。

 どんな職場でも、いきなり辞める人もいれば、辞めそうな気配を見せつつも、退職までの期間が長い人もいる。しかし、らいちとちはるの対照的な退職の仕方を見ると、やはりらいちの「いきなり型」のほうがいいのだろう。これは周りのためというより、本人のためだ。明るかったちはるは、先延ばしにしているうちに、すっかり元気をなくしてしまっていた。

 ちはるは仕事において、何がつらかったのだろう。厨房の仕事で着実に成果を上げ、周囲の信頼を得ていく同期のあかりを見つめるちはるの姿が印象的だったが、厨房の仕事への思いが本当はまだあったのか。それとも自分が認められない切なさや悔しさがあったのだろうか。だが、最後の頃のちはるは、疲れ切っていて、彼女自身も何がつらく、悲しいのかすらわからなかったようにも見えた。

 一方、らいちは「休みが少ない」というレストラン大宮への不満が明確かつシンプルで、そこに焦点を絞り、休日の多い次の職場を見つけている。会社を辞めるなら、らいちのように、ゆとりと元気があるうちに実行したほうがいいと思った回だった。

 次週も新人の成長を見つめる恒例シリーズ「ボクらの丁稚物語 2023 前編 ~泣き虫同期の6年~」。令和においても、男女問わず丸刈りの厳しい「丁稚奉公」制度を敷く秋山木工。5年の丁稚生活を終える内藤と加藤だが、職人昇格に思わぬ「待った」がかかり……。

『ザ・ノンフィクション』令和VS昭和の労働観――老舗レストランに就職した若者の“甘さ”とは?

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。3月26日の放送は「新・上京物語 2023 前編 ~二十歳 夢の迷い道~」。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 若者の初就職を見つめる毎年春の人気シリーズ「新・上京物語」。2021年4月、浅草に本店を構える洋食店「レストラン大宮」に3人の新人が入る。栃木県にある高校の調理科を卒業した18歳の「ちはる」と「らいち」、茨城県出身で、調理師専門学校を卒業した19歳の「あかり」だ。

 昨年の『新・上京物語』。3人の入社したての日々はこちらから

 前回放送から1年。入社2年目となったちはるは浅草店でホールの仕事を、らいちは新丸ビル店、あかりは浅草店で調理の仕事を続けている。

 らいちの先輩で、新丸ビル店の厨房を任されている入社5年目、24歳の古川はレストラン大宮で提供している洋食から、より本格的なフレンチを勉強したいと新たな目標を抱くようになる。大宮勝雄シェフも古川の思いを汲み、フレンチの巨匠が集うイベントに古川を連れていく。さまざまな著名フレンチシェフと大宮シェフの親交の深さを目の当たりにし、古川は圧倒されつつも刺激を受けた模様。

 なお、自身も26歳で世界に飛び出した大宮シェフは、キャリアアップによるレストラン大宮からの従業員の「卒業」は歓迎する方針。レストラン大宮から「公邸料理人」に転身を遂げ、世界各国の日本大使館で、外交官が開くパーティーを豪華な会食でサポートしている料理人も多い。

 ステップアップの期待が膨らむ古川だが、晴れて卒業するには右腕のらいちの戦力化が求められる。しかし、らいちは大宮シェフに22年9月で会社を辞めたいと連絡する。らいちは週1の休みしかなく、プライベートの時間が少ないため転職を決意した旨を話すも、これまでこの世界で働きに働いてきたであろう大宮シェフにしてみれば、らいちの転職理由はピンとこなかったよう。2人の話し合いはしばらく平行線をたどっていたが、らいちからほかの会社の面接も受けている、と聞かされた大宮シェフは観念する。

 古川はらいちの心境の変化は察していたようで、持ち場などを変えてみるといった配慮はしていたが、(手を打つのが)遅かったようだと話す。らいちと同じ高校出身のちはるも、らいちの決断に驚きつつも、自分も辞めたいと思うことがあると明かす。番組の最後はらいちの送別会で終わった。

『ザ・ノンフィクション』令和VS昭和の価値観

 20歳のらいちの「週一休みはきつい、プライベートの時間も大切にしたい」と、71歳の大宮シェフの「目標や夢のために四の五の言わずにまず働け、働けばいろいろ見えてくる」は、令和と昭和の労働観のぶつかり合いといった趣だった。どちらの言い分もわかるし、どちらが間違っていて、どちらが正しいということでもないだろう。

 ただ、これはあくまで広い視野で見ればという話。「レストラン大宮」は有名老舗レストランなのだから、料理修行の過酷さは予想できたはず。らいちが抱いた「レストラン大宮で頑張る」という入社前の志は、結果として見積りが甘かったのだろう。

『ザ・ノンフィクション』そもそも飲食は多忙な業界

 飲食業界は多忙な印象があるが、実際、厚生労働省の「平成 30 年就労条件総合調査の概況」を見ても年間の休日数は、他業種と比べ一番少ない(※この資料上では宿泊業・飲食業で定義されている)。

 そもそもレストラン大宮に限らず、飲食業界は休みが少なくなりがち。調理科を卒業したらいち自身も、これを知らなかったはずはないと思うが、それをリアルな生活としてはとらえきれていなかったのだろう。

 これはらいちに限ったことではない。ある職業を目指しているときは、夢や希望ばかり目に入り、過酷さであったりしんどい側面は「自分ならそんな困難だって乗り越えられる」とつい甘く見てしまいがちだし、若くて就業経験がなければなおさらだ。

 なお、らいちの部屋には調理科の学生時代のコックコートが飾られており、色紙代わりに同級生からの寄せ書きが全面に書かれていた。高校卒業から1年半ほどたった番組取材時、本格的な料理の世界を離れた調理科の同級生は多いと、らいちは話していた。

 プライベートの時間が欲しいと話していたらいちだが、同業への転職を志望しているよう。「転職で大幅にプライベート時間増」となるのは難しそうにも思えるのだが、このあたりは後編で明らかになるのだろう。

 次週は今週の続編。らいちと同じ高校を卒業したちはるも、らいちの退職に思うところがあったようで……。

平成 30 年就労条件総合調査の概況(休日数はp5)

『ザ・ノンフィクション』新宿二丁目の深夜食堂、かかあ天下に見える夫婦の内情とは?

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。3月19日は「新宿二丁目の深夜食堂 後編 ~名物夫婦 53年の物語~」というテーマで放送された。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 新宿二丁目の雑居ビル2階にある、深夜0時から朝9時まで営業の深夜食堂「クイン」。調理担当の夫・孝道とホール担当の妻・りっちゃんという、ともに77歳の夫婦で切り盛りしており、1970年の開業から50年間以上も、新宿の街を見つめてきた。すでに飲んできた客も多いはずだが、「クイン」で定食や総菜を食べながら飲み直す人も多く、閉店前の朝には空になったビール瓶が並ぶ。

 「クイン」の店内は昔ながらの純喫茶とスナックを足して2で割ったような雰囲気で、日替わり定食は400円と格安だ。昨今の食材の高騰で、飲食店の価格上昇も話題になっているが、番組スタッフが「クインも値上げをしないのか」と尋ねたところ、孝道は「定食だけで(酒を飲まずに)来るお客さんを見るとさ、金がないんだなと思ってさ」と話し、経営は家賃を賄えれば良い、という方針のよう。「今はね、運動のために(店を)やっている」と笑う。

 りっちゃんはいざ店内に入れば威勢よく場を取り仕切るが、2階にある店に向かうための階段の上り下りもつらそうで、夫婦は引退も考えている。しかし、客からは続けてほしいと懇願されている。

 店を訪れる客もさまざまだ。二丁目でバーを経営する65歳のあきは40年近く店に通う常連で、「クイン」は5品おまかせ1万円のあき専用裏メニューも用意。裏メニューには大きな金目鯛一匹丸ごとの煮つけやステーキも含まれおり、豪勢だ。

 43歳のみなみも20年来の常連で、本業は六本木の老舗ショーパブ「金魚」のダンサー。新型コロナウイルスの感染拡大でショーの仕事が激減したことや、その時期に母親を自宅に呼び寄せたことなどもあり、介護の仕事に興味を持ち、今はダンサーと介護士の二足の草鞋を履く生活を送っている。

 40歳の勇輝は、母親の死後、父親との関係が悪化したことを悩んだ際、りっちゃんに相談し、ずいぶん気が楽になったようだ。社交ダンスを始めた勇輝の踊りを見たいとりっちゃんは話すが、足が悪いりっちゃんにスタジオまで来てもらうのも悪いと、勇輝は社交ダンスをスタジオで撮影。りっちゃんは「クイン」で目を細めながらその動画を眺めていた。

 孝道が78歳の誕生日を迎え、あきはイチゴのホールケーキをプレゼントする。りっちゃんはスニーカーを贈り、その後、2人は新宿の街でデートを楽しんでいた。「クイン」は来年、店舗の賃貸契約の更新があるが、店の進退はそのときの孝道、りっちゃんの体調次第とのことだ。

『ザ・ノンフィクション』一見かかあ天下に見える夫婦の絶妙なバランス

 孝道はりっちゃんのことを「りっちゃん見ててあれでしょう? 素晴らしい人間だと思うでしょ?」「なかなかいないよ、ああいう女は。いい女だなと思うよ」とベタ褒めしていた。日本の78歳でこんなに妻のことを褒める夫は稀有といっていい。あまりに褒めるので、逆に何かやましいところがあるのではと邪推してしまうほどだ。

 最初はパワフルなりっちゃんのかかあ天下っぽく見えたが、孝道は「尻に敷かれた」感じはしない。「かかあ天下な妻」は「尻に敷かれた夫」とワンセットにとらえられがちだが、孝道はマイペースで飄々としており、気弱な雰囲気はまったくない。

 そしてよくよく見ていると、りっちゃんも孝道を尻に敷いている感は不思議とない。番組の最後の新宿デートでキャベツを食べていたときには、「クイン」で孝道が出すキャベツのほうがおいしいと、可愛いことも言っていた。

 なお、「クイン」が値上げをしないのも孝明の意思のようで、りっちゃんは値上げ賛成派だったよう。りっちゃんと孝道は、絶妙なパワーバランスを保ったいい夫婦に見えた。

 次回は『新・上京物語 2023 前編 ~二十歳 夢の迷い道~』。若者の社会人デビューを見つめる春の恒例人気シリーズ。昨年春の放送で、新米時代の様子が伝えられていた浅草の洋食の老舗「レストラン大宮」で働く、らいち、あかり、ちはるの3人のその後について。

『ザ・ノンフィクション』新宿二丁目の深夜食堂、77歳名物ママの特殊な“地雷”とは?

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。3月12日は「新宿二丁目の深夜食堂 前編 ~人生を奏でるビール瓶~」というテーマで放送された。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 新宿二丁目の雑居ビル2階にある、深夜0時から朝9時まで営業の深夜食堂「クイン」。調理担当の夫・孝道とホール担当の妻・りっちゃんという、ともに77歳の夫婦で切り盛りしており、1970年の開業から50年間以上も、新宿の街を見つめてきた。

 「クイン」の店内は黒を基調とし、観葉植物や額縁に入った絵画が飾られ、昔ながらの純喫茶とスナックを足して2で割ったような雰囲気だ。メニューの定食は400円台のものからあり、焼き魚、煮魚など魚系のメニューも豊富。飲んだあと、仲間と連れだって「クイン」を訪ねた客は、ご飯とおかずと味噌汁を前に「飲んだ後に食べるご飯うまいね」と微笑む。

 孝道とりっちゃんの出勤は毎日午後11時半。孝道は自転車通勤だが、りっちゃんは自転車で転んでから、タクシー通勤だ。りっちゃんはいざ店内に入れば威勢よく場を取り仕切るが、2階にある店に向かうための階段を上るのもつらそうで、夫婦は引退も考えている。しかし、客からは続けてほしいと懇願されているという。

 「クイン」を訪れる客も個性的だ。週末に現れるケイコは普段は会社員をしているが、女装をしてクラブで踊ることにハマり、新宿に部屋まで借りる熱の入れよう。飲んで踊ったあとに「クイン」のドライカレーを食べ、一息つく。

 25歳で塾講師をしている葵は家族との間にわだかまりがあり、高校生の頃から一人暮らしをしている。父親と血がつながっていないことを小学校高学年で知り、また、母親も忙しかったようで、ご飯はお金を渡され、オリジン弁当で買うことが多かったと話す。

 名物ママであるりっちゃんの人柄や、孝道の作る魚系のおかずに惹かれ「クイン」を訪れる葵だったが、ある日、葵はお金を下ろすのを忘れ「クイン」で飲食をしてしまい、撮影していた番組スタッフにお金を借りて支払おうとしたことが、りっちゃんの逆鱗に触れる。金を貸そうとしたスタッフや、店にいた周りの客が葵の分は自分が払う、と言ったのも良くなかったようで、葵が近所のコンビニにお金を下ろしに行くまで、また行った後も、りっちゃんの怒りは冷めやらぬようだった。

『ザ・ノンフィクション』りっちゃんの“地雷”に違和感

 葵のお会計の件で、りっちゃんはずいぶん葵を叱っていたように見えた。飲食店でご飯を食べ、うっかり財布にお金がなかったときに「その場にいて、また会えそうな人から金を借りて支払う」と「近所のコンビニで下ろしに行く」のどちらも問題ないように思うのだが、りっちゃん的には前者の行いは地雷だったようだ。

 番組ナレーションはこのくだりに「今時こんなふうに若いお客を叱れる店主がいるでしょうか」とコメントを付けていたが、これにも違和感があった。店主が叱る正当性は「お客が明らかな悪事をした」という前提あってのことで、今世間で騒がれている「回転寿司店で客がふざけて醤油さしを舐める」みたいな明白な迷惑行為ならともかく、葵がしたことは悪事とされることなのだろうか。

 なお、りっちゃんはその後、この件についてスタッフに「あなたが私を理解しなくてもそれはあなたの自由です」と話しており、本人としても、これは特殊な“地雷”である、という意識はあったのかもしれない。

 叱られること自体、とても気が滅入ることだが、「相手が怒っているポイントがどうにもよくわからないまま叱られ、立場的に相手のほうが強いので反論もできない」というのはつらい。何より、食事のときは叱られたくない。

 次週は今週の後編。引き際も考え始めた夫婦だが、いったい「クイン」はどうなるのか。

『ザ・ノンフィクション』子どもの適応力と、ウクライナの故郷に帰りたい大人

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。3月5日は「たどりついた家族 2 後編 ~帰りたい 戦火の故郷へ~」というテーマで放送された。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 2022年2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻。ウクライナ首都キーウ(キエフ)から400キロ離れた同国東部の街、ドニプロで暮らしていた45歳の母マーヤと、7歳の娘レギナ、5歳の息子マトヴェイは、開戦から10日ほどたった3月5日、日本へ避難するためにドニプロを発つ。日本にはマーヤの長子であり、レギナとマトヴェイにとって年の離れた姉・アナスタシアが、日本人の夫・和真と結婚し新宿で暮らしているからだ。当初、一家3人は和真の家に身を寄せていたが、その後は都営住宅で生活するようになる。

 一方、マーヤには障害のある兄ジェニャがおり、ジェニャの世話を亡き夫の高齢の母サーシャに頼み日本に来ていたため、マーヤは10月11日、日本を発ちウクライナ・ドニプロへ戻る。ドバイ経由でウクライナ隣国ポーランドのワルシャワまで行き、そこからバス、電車を乗り継ぐ長旅だ。途中リビウ(ウクライナ西部の都市)では外出禁止令が出され、駅でそのまま寝泊まりする事態に。さらに、帰路でマーヤは肺に穴があく肺気胸を患い、入院生活を余儀なくされる。

 日本では和真とアナスタシアが、レギナとマトヴェイを世話することになる。アナスタシアは、日本の大学で学ぶために必要な「日本留学試験」の受験勉強中だ。「日本留学試験」は日本語能力だけではなく、文系でも数学が科目に含まれ、かなり広範な知識、学習が求められる試験。試験当日、帰宅したアナスタシアは浮かない顔で、和真と話す中で泣いてしまった。

 また、ホームシック気味にも見えたマトヴェイだが、日本語で世話をする和真との日々のコミュニケーションを通じ、急速に日本語を覚えていき、幼稚園でできた友達と日本語で遊んでいる姿も見られるようになる。

 そして12月12日、予定より遅くなるもマーヤが日本に戻ってくる。ジェニャの世話は引き続きサーシャが見てくれることになったという。なお、7カ月ぶりに戻ったウクライナの自宅には、大きな蜘蛛の巣ができており、帰宅中は自分の真上をロシア軍の自爆型のドローンが飛んでいたこともあったという。マーヤも当初は一時的な避難で日本に来ている認識だったようだが、日本語学習を始めるなど心境の変化がうかがえた。

 日本時間の2023年1月1日朝7時前、ウクライナが日本から7時間遅れで新年を迎える際、マーヤ、アナスタシア、レギナ、マトヴェイはゼレンスキー大統領の新年のメッセージをテレビで見つめていた。

『ザ・ノンフィクション』日本の生活に適応していく子どもたち

 和真、アナスタシア夫妻にとってはマーヤが帰国していた2カ月間は、7歳、5歳の子どもの世話に追われる大変な日々だったと思う。しかし、レギナに比べ日本語も苦手でホームシック気味な弟マトヴェイの日本語能力、しいては日本への適応力はマーヤ不在の2カ月で飛躍的に向上したように見えた。「日本語を使う必要に迫られた“母マーヤの不在”」が大きかったとえ思うが、それ以外にもやはり「子どもの適応能力の高さ」もあるだろう。

 『ザ・ノンフィクション』では過去にも日本語を習得する外国人をテーマにした回が何度かあった。が「小学校中学年」あたりに明らかに境界線があると感じるくらい、それ以下とそれ以上の年齢で、日本語習得における苦労はケタ違いに見える。

 小学生でも高学年くらいになると、日本語の習得は大人同様に大変そうで、小学校低学年以下のレギナやマトヴェイのような、「気が付いたら日本人の友達と日本語で遊んでいた」感じとは様子が違う。日本語を例に出したが、日本人が外国語を学ぶ時も同様に思う。

『ザ・ノンフィクション』故郷に帰りたい大人

 マーヤが帰国していた間、ウクライナは停電もよくあったよう。何より自分の真上をロシア軍の自爆型ドローンが飛んでいるなど、生命の危険すらある環境下においても、マーヤは2023年を「(ウクライナへの)帰還の年」と話しており、彼女にとって住まうべきふるさとは、当然ウクライナなのだろう。障害のある兄を高齢の義母に任せている状況が変わっていないことに対する思いもあるだろうが。

 次回は『新宿二丁目の深夜食堂 前編 ~人生を奏でるビール瓶~』。新宿二丁目で深夜0時に開店し、午前9時まで営業する深夜食堂「クイン」の77歳名物ママと同い年の夫、ママを訪ねる客を見つめる。

『ザ・ノンフィクション』親子でウクライナから日本に避難――適応する娘とホームシックになる息子

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。2月26日は「たどりついた家族 2 前編 ~戦火の故郷と母の涙~」というテーマで放送された。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 2022年2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻。プーチン大統領は同年秋口から、核兵器の使用もほのめかしている。

 ウクライナ首都キーウ(キエフ)から400キロ離れた同国東部の街、ドニプロで暮らしていた45歳の母マーヤと、7歳の娘レギナ、5歳の息子マトヴェイは、開戦から10日ほどたった3月5日、日本へ避難するためにドニプロを発つ。日本にはマーヤの長子であり、レギナとマトヴェイにとって年の離れた姉・アナスタシアが、日本人の夫・和真と結婚し、新宿で暮らしているからだ。

 ドニプロを発った一家3人は、ウクライナの西に隣接するポーランドの首都・ワルシャワまで2日間かけ電車で移動。ワルシャワの駅はウクライナから難を逃れてきた人でごった返していた。その後、一家は生まれて初めての飛行機を3本乗り継ぎ、出発した日から12日かけて、ようやく日本にたどり着く。

 当初、一家3人はアナスタシアの夫・和真の家に身を寄せていたが、その後は都営住宅で暮らすことに。小学生のレギナは友達を家に呼び、運動会ではお気に入りの『鬼滅の刃』(TOKYO MXほか)の歌で踊り、ひらがなの表を読むなど、日本の暮らしに適応しているように見える。一方、幼稚園に通うマトヴェイはホームシックになっているようで「夏にはウクライナに帰ると思ってたよ」とマーヤにこぼし、ウクライナ国旗の元に3人(マーヤ、レギナ、マトヴェイ)がいると思われる絵を描く。

 和真、アナスタシアも、マーヤに日本に留まるよう話すも、彼女にはウクライナに戻らないといけない事情があった。マーヤには障害のある兄・ジェニャがおり、ジェニャの世話を高齢の義理の母、サーシャに頼み日本に来ていたからだ。なお、マーヤの夫は心臓発作で侵攻前に亡くなっている。

 そんな中、新型コロナウイルスの流行で延期になっていた和真とアナスタシアの結婚披露宴が行われることに。マーヤはアナスタシアのため、2日がかりで伝統的なパンを焼く。ウクライナの結婚式では、そのパンを新郎新婦が食べさせ合う風習があるという。娘の晴れ姿を見つめるマーヤだったが決意は変わらず、レギナとマトヴェイを和真とアナスタシアに託し、ウクライナに一時帰国することを決めた。

 マーヤは、ウクライナに戻ることに対し、番組スタッフへ「もちろん恐怖心はあります」「兄のことがなければ日本に残ったわ」と心中を明かす。

 この時点でマーヤ一家がウクライナを発った侵攻当初から半年ほどが経過しており、その間もロシア軍はウクライナ国内の鉄道はじめ、交通インフラの爆撃を繰り返したため、国内の鉄道の運行状況もはっきりしない状況だ。日本からウクライナの鉄道の切符を予約しようとしても、そもそも鉄道会社のサイトさえ見ることができない。

 さらにマーヤが日本を発つ前日に、彼女が帰るドニプロにロシアのミサイルが着弾したと報じられる。マンションやビル数棟が飲み込まれてしまうような巨大な爆発雲の映像が伝えられていた。マーヤは「カメラの前で全ての感情を見せるわけにはいかないけど、心の奥底には不安と恐怖しか……」と話す。

 そして10月11日、マーヤは日本を発つ。レギナもマトヴェイもマーヤにしがみついて泣いていた。成田空港の出発ゲートを通った後、マーヤは振り向いて笑顔で手を振っていた。

『ザ・ノンフィクション』長引く戦争と失われる関心

 ウクライナ侵攻は当初、早期終戦になるという専門家の意見も多く報道されていたが、1年がたっても終わりの兆しが見えない。開戦直後は日本のテレビでも、ウクライナとロシアを特集した多くの番組が組まれ、個人でも終戦への願いを込めてか、SNSのアイコンにウクライナの水色と黄色の国旗の絵文字を付ける人がたくさんいた。

 しかし1年たつと、ウクライナのことをメディアが取り上げる機会は激減しているし、開戦直後ほどウクライナ国旗をSNSアカウントにつけている人は見かけない気がする。遠い国の戦争から日常へと興味が移り変わったといえばそれまでだが、その点で『ザ・ノンフィクション』が今、ウクライナの人々について放送することには大きな意義がある。私も今回の原稿料の一部を然るべき支援団体に寄付したい。

 来週は今回の後編。ウクライナに戻ったマーヤの身に起ったこととは。また一方で、日本で弟、妹たちの面倒をみることになった長女・アナスタシアも生活の変化を余儀なくされる。

『ザ・ノンフィクション』起業したい若者の選択――なぜ「会社勤め」は毛嫌いされる?

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。2月19日は「CEOになりたくて ~ポンタの上京物語~」というテーマで放送された。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 水井飛空(ひゅう)は広島から上京してきた21歳。「ポンタ」と自分のことを呼んでほしいと話し、起業家を目指す若者が集まる「U-25起業家シェアハウス」で暮らす。シェアハウスは4人部屋で家賃は一人4.5万円だが、オーナー主催の勉強会を無料で受けられる。

 中学生の頃から起業に憧れていたというポンタ。当時、高校生起業家をメディアがもてはやしていたことも影響しているようだ。人間モバイルバッテリーとして充電装置を持って街頭に立つなど、事業のようなことをした経験もあるそう。

 現在は、TikTokを用いてホテルの紹介動画から宿泊予約ができる事業プランを思いつき、ライバルに楽天トラベルやブッキングドットコムを挙げるものの、ポンタの事業プランの場合、TikTokに通じた技術者が必要。技術者を探しつつ、動画撮影をするためホテルへの飛び込み営業を続ける。ほぼ空振りに終わるが、撮影協力に応じてくれるホテルもあった。

 ただ、地元の父親は「(ポンタは)来年くらい福山に帰ってきて就職するかなと思っている」と冷静だ。番組スタッフの前では愛想のいいポンタも、父親の前ではぶっきらぼうな態度になり、「(父親は)『お前(ポンタ)ならできるよ』って言えばいい話」と不満げ。

 「U-25起業家シェアハウス」には、野望を熱く語る者もいれば、夢を追うことを中断し、出ていく人もいる。20歳の前田あかりは高校生で会社を設立し、かつてはメディアに華々しく取り上げていた起業家だった。前田の事業は、虐待サバイバーの子どもたちを低価格のシェアハウスを提供し就職活動につなげていくもの。前田自身も精神疾患やいじめで学校に行けない時期があり、当時の彼女にとっては、高校生での起業や、それにともなうワークショップに通うことが生きる支えになっていたようだ。

 しかし、前田には高校の学費などを含め500万円ほどの借金があり、事業どころではなく、キャバクラ勤めで借金返済に追われる日々。まずは自分の生活を立て直すため、シェアハウスを去る決意をした。

 一方、ポンタは協力者を得る。TikTokで52万人以上のフォロワーを持つ動画配信者の編集を担う19歳のゆうせいだ。ゆうせいはポンタの撮影したホテルの動画に、撮影者の足が映ると「一気に現実に戻されてしまう」から避けたほうがいいなど、的確な指摘をする。ただ、ゆうせいはかなり多忙のよう。

 そして、TikTokの技術者が見つからなかったのか、ポンタはホテル動画を紹介するためのインスタグラムアカウントを開設。興味を持ったホテルから撮影依頼を受けていた。番組の最後、ポンタの上京生活は半年を過ぎ、まだ事業の収益は得られていないが「U-25起業家シェアハウス」を出て、次はイノベーターの育成学校「MAKERS UNIVERSITY」に通うと話していたのだった。

『ザ・ノンフィクション』CEO適性を最も感じたのは……

 番組内では起業家を目指す若者が多数出てきたが、個人的に最もCEO適性を感じたのは、CEOを目指していない、動画編集者・ゆうせいだった。

 まず人柄だ。ゆうせいは19歳とは思えぬ落ち着きぶりで、ポンタの起業ビジョンにもウンウンと頷いて聞いており、案の定ポンタを骨抜きにしていた。19歳、まだまだ浮かれていてもいい時期なのに、ゆうせいには“人生2回目”なのかと思うほどの風格を感じた。

 そして何より、ゆうせいには動画編集という自分で培った確かな「技術」がある。一方、TikTokを用いた旅行予約事業を考えるポンタも、エンジニアとチームを組んで事業プランを練っている「U-25起業家シェアハウス」の住人・柴田、石井もそうだが、「技術ありき」な事業を興す場合、「それって、技術者だけいればいいんじゃないの?」という問題が出てくる。そうした事業の場合、そもそも技術者がCEOをやればいいのではないか。

 ポンタ自身にもこの疑問はあったようで、柴田と組んでいるエンジニアがどういったモチベーションで柴田と仕事をしているのか問うシーンがあった。柴田本人は「人」「ビジョン」と回答していたが、実際のところ「有力者とのコネがあり、橋渡しができる」「業務内容を熟知している」「金を引っ張ってこられる」などのほうが、「技術事業だけれど、技術能力を持たないCEO」に求められる能力だと思う。ただ、こういった能力を社会に出たことのない若者に求めるのは酷だ。

 起業する前に数年、起業したい業界で働けば、その実態・実情もわかり人脈もでき、その後の起業も一気にスムーズになるはずだ。番組に出てくる起業家志望の若者たちは、近道をしたいようで、かえって遠回りをしているように見えた。

 そして、起業家志望の若者たちは「会社勤め」へのネガティブな発言が多かったが、なぜしたこともないのに毛嫌いするのだろうか。「自分には適性がなさそうだからやりたくない」という気持ちはわかるものの、実際やってみればそこまで嫌じゃなかった、と気がつくことだってある。起業がテーマの回だったが、「とりあえず会社で働いてみればいいのに」と思った回だった。

 次回は「たどりついた家族2 前編 ~戦火の故郷と母の涙~」都営住宅で暮らすウクライナ人の親子、母マーヤと娘のレギナと息子のマトヴェイ。子どもたちは日本の暮らしになじんでいく一方で、マーヤには戦火のウクライナに帰る理由があり……。

『ザ・ノンフィクション』兄の死後に発覚した“ストリップ”という意外な趣味、妹は困惑も……

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。2月12日の放送は「私が踊り続けるわけ2 ~56歳のストリッパー物語~後編」。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 星愛美、56歳。ストリッパーの中では国内最高齢と言われている。愛美の「神々しい」ステージでの姿や、自身のファン、番組スタッフ、後輩ストリッパーに対する穏やかな物腰からは想像できないが、かつての愛美は相当な非行少女で、暴走族に入り15歳までに2度の人工妊娠中絶を経験。19歳で結婚するも死産の末、21歳で離婚。AV女優、ストリッパー、水商売と職を転々とし、45歳でストリッパーとして再出発した。

 また、愛美は37歳でがんを患い子宮を摘出。ステージではエネルギッシュな姿を見せているが、腰や背中にも痛みを抱え、舞台裏では膝を曲げるのもままならない。自身の引き際について考えてもいるようだ。

 愛美のファンネームは「星組」だが、星組の一人である長崎在住のスーさんも、大腸がんのステージ4と診断された。スーさんは警察官を定年退職後、旅先のストリップ劇場で愛美の踊りを見て、それ以来全国の公演を訪ねるなど、熱心に愛美の「推し活」をしてきた。しかし、スーさんの体調は年々悪化。愛美のステージ以外はロビーの椅子に座り、つらそうにうなだれていた。

 2022年5月、スーさんは愛美のホームである大阪、晃生ショー劇場で行われた彼女の誕生日イベントにも足を運ぶが、これがスーさんにとって愛美の最後のステージとなった。その後もスーさんと愛美は電話でやりとりをしていたものの、スーさんと連絡の取れない日が続くように。そして、スーさんの弟から愛美に、8月21日にスーさんが永眠したこと、「生前は、いろいろお世話になりありがとうございました。」とのメッセージが届いた。

 また、スーさんの妹からも愛美に手紙が届く。妹は最初、兄がストリップにはまっていたことを知りショックだったそう。ただ、恐る恐る遺品の中にあった、以前、愛美を特集した同番組のDVDを見たことで、イメージが変わったのだろう。手紙の最後は愛美の体調を気遣う言葉で締めくくられていたという。

 なお、おそらくDVDはこちらの放送回だと思われる。

 そして、星組を取り仕切るひこにゃんも、厚生労働省が定める指定難病の一つである潰瘍性大腸炎を患いながらも同10月の愛美の33周年イベントに足を運ぶ。スーさんの死に思うところがあったようだ。ひこにゃんは観客席でなじみの「同担」たちと抱擁を交わし、愛美も後輩ストリッパー、浜崎るりと共にひこにゃんを出迎える。

 最後に、愛美は番組スタッフに対し「引退できません」と宣言。「『いつまでも踊り続けてください』って言葉を正直に受け止めるなら、そうしたいです、いつまでも」と前を向いた。

『ザ・ノンフィクション』亡き家族の意外な趣味

 スーさんの妹は、兄がストリップにはまっていたことがショックだったという。スーさんは元警察官であり、番組内でも「体がしんどい」以外の感情をあまり出していなかった。そんな静かな兄と、ストリップという趣味がつながらなかったのだろう。

 筆者もストリップは見たことがあるが、事前に想像していた“淫靡”な感じはなく、“人間賛歌”的なものであり、生身の人間が放つ熱を感じた。ストリップ以上に「事前の印象」と「実際に見た感想」が違うものを私は知らない。そのくらい違う。

 『ザ・ノンフィクション』の愛美のドキュメンタリーも、「人間賛歌としてのストリップ」を知れる回だったと思う。番組DVDがなかったら、スーさんの妹は兄の死後、兄を誤解したままだったのかもしれないと思うと怖い。

 「自分が死んだあとのことは関係ない」という考え方もあると思うが、遺品を整理するのは遺族だ。「説明が必要そうな遺品」が私もないわけではないので、思いがけず終活についても考えさせられる放送だった。

 次回は『CEOになりたくて ~ポンタの上京物語~』。広島から上京し、「U-25起業家シェアハウス」で起業家を目指す21歳のポンタ。動画を利用した旅行アプリというアイデアはあるものの、アプリ開発スキルもなく……。