文春、現代はどうした!? 怒れる週刊誌「週刊ポスト」がスクープ独占!

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「週刊ポスト」11月16日号 中吊り広告より
グランプリ 「『発電量ゼロ』原子力マフィアの総本山に1440億円!」(「週刊ポスト」11月16日号) 第2位 「日本の領土・馬毛島地主が『島を中国に売る!』と言い出した」(同)  第3位 「拝啓 池上彰様 『都知事選に出馬いただけないでしょうか』」(同) 次点 「あなたの知らない東京23区の謎」(同) 次点 「激撮スクープ! オリラジ藤森・TBS田中みな実アナ『真剣交際お泊まり愛』撮った!」(「フライデー」11月16日号)  不思議なことがある。週刊現代が尼崎の連続殺人事件を取り上げていないのだ。  11月1日の朝日新聞に、こういう記事が載った。 「兵庫県尼崎市の連続変死事件をめぐり、事件とは関係のない女性の写真が角田美代子被告(64)のものとして複数のメディアで報道された」  角田被告の写真を、関係ない女性の写真と間違えてしまったというのである。当然ながら、多くの新聞、テレビ、週刊誌はお詫びをしているが、現代は「今回の事件については報じていない」(朝日)から、間違えるはずもないと答えているのである。 これほど週刊誌にピッタリの事件はないと思うのだが、どうしてなのか。  「日本の編集長」(東京アドエージ)の11月号で現代の藤田康雄編集長は、週刊誌の編集現場時代は、「私は現場に行きたくてしょうがなかったクチです。ともかく事件ばかり取材していました」と語っているのに。  週刊大衆のように、事件取材はカネばかりかかって読者に受けないからやらない、という「主義」ではあるまい。  藤田編集長はこうも語っている。 「オレ、ダメ人間が好きなんですよ。(中略)断然、ダメ人間のほうが面白いんです。ダメ人間だとワクワクする」  角田被告はダメ人間ではないのだろうか。不可思議である。  今週は見ていただけばわかるように、週刊ポストの圧勝である。これほど1誌がほぼ独占したのは、この連載が始まって以来であろう。  このところ週刊朝日は「橋下徹大阪市長への全面謝罪」問題で低迷しているが、あれほど一時期スクープを連発した週刊文春の元気のなさが目立つ。奮起を促したい。  次点が2本。まずはフライデーの張り込みネタ。  「オリラジ」というのは「オリエンタルラジオ」の略で、お笑いコンビの一人、藤森慎吾(29)だそうだ。女性のほうは、TBS『サンデージャポン』の田中みな実アナ(25)。ぶりっ子で有名だそうである。  二人の仲が最初に報じられたのは5月。最初は交際を否定していたが、互いのマンションを行き来して愛を育んでいたようだ。  二人がフライデーされるのを用心している様は、なかなか微笑ましい。  芸能プロ関係者が二人の仲をこう明かす。 「藤森はこれまでどんな女性と付き合っても、本気になれないのか短期間で関係が終わっていました。でも今回は違います。すでに自分の親に田中アナを紹介し、親しい友人には関係を明かしているようです。本人も『とても大切な人』と話しています。田中アナも、親に藤森のことは伝えているそうですよ。彼女は埼玉県内の実家で両親と暮らしていましたが、藤森と付き合い始めてから都内で一人暮らしをするようになった。もちろん彼と会う時間を増やすためですが、藤森のマンションで手料理を振る舞うことも多いとか。結婚に向け、具体的に話が進んでいることは間違いないと思います」  藤森もフライデーの直撃に、交際を認めているし、11月5日のスポーツ報知がこう報じている。  「写真週刊誌『フライデー』でTBS・田中みな実アナウンサー(25)との“お泊まり愛”が報じられたお笑いコンビ『オリエンタルラジオ』の藤森慎吾(29)が4日、都内で行われたトークライブ出演後に報道陣の取材に応じ、田中アナとの交際を認めた」  それにしても、お笑い芸人って、どうしてこうモテるのかね。  次点の2番目は、地域ネタだが、なかなか読ませる。  大田区と江東区が壮絶な「領有権争い」を繰り広げているというのが、中央防波堤埋立地だという。  ここは廃棄物処分場として埋め立てられたが、近年コンテナ輸送の要衝として利用価値が高まっている。それまでも両区が所有権を主張し合っていたが、今年2月に江東区と結ぶ「東京ゲートブリッジ」ができたため、さらに激化したという。  大田区とは臨界トンネルでつながっている。江東区の市民から「中央防波堤は江東区固有の領土である」という声が大きくなり、お互いの「愛区心」が高まって収まる気配が見えないそうである。  その他「どの区にも属さない銀座『番外地』」とは、銀座9丁目(銀座は8丁目まで)を意味する銀座ナインなどの商業施設のあたりだが、高速道路の下だったため何区なのか議論されずにきた。しかし、そこに多くの商店ができたために、商店は店ごとに、中央区、千代田区、港区のどれかの自治体を選んで行政サービスを受けているそうだ。  「埼玉県の中にある『6軒』の練馬区住居」は、埼玉県の新座市に、住居表示は練馬区西大泉町という飛び地があり、面積は約560坪、6軒の「都民」の住居がある。どうしてなのかはよくわからないようだが、新座市側が編入しようとしたが、住民の合意が得られずそのままだという。  「墨田区と隅田川、『すみ』の表記がなぜ違う」は、本所と深川を統合した当時は、隅の字が当用漢字になかったから墨になった。  「目黒駅は品川区にあり、品川駅は港区にある」では、目黒駅は区内に建てるはずだったのに、地元住民がSLによる煙害を懸念して激しい反対運動が起こり、品川区の権之助坂に追いやられたからだそうである。  品川駅はかつて一帯が品川県という行政区だった名残だそうだ。ほかにも男の人口が多いのは台東区で、女の比率が高いのは目黒区だとか、23区のトリビアは面白い。  さて、石原慎太郎が抜けた後の東京の盟主が誰になるのかが関心を集めている。  石原が後継に指名した猪瀬直樹副知事は、彼の人間性もあるのだろう、一般的な人気がない。そこで我こそはと名乗りを上げると思われているのは、民主党の蓮舫議員、自民党では小池百合子議員、舛添要一議員、変わったところでは文筆家で白洲次郎の孫の白洲信哉の名前や、菅直人元総理の名まで挙がっている。  だが、そうした中で大本命と目されているのが、あの東国原英夫前宮崎県知事だそうだ。  確かに、前回の都知事選に出て政党の支持もなく169万票を集めたのだから、可能性はあると思うが、そうなったらどうしよう。  新潮が「ついに『東国原』当確で我らの生き恥」と、私のような東京都民の胸の内を代弁してくれている。 「よく考えて欲しい。いくら東国原氏が茶の間の人気者で、宮崎県の『セールスマン』として活躍したとはいえ、彼が1300万の民を抱える首都の顔になるなんて、想像するだけで戦慄を覚えるではないか。なにしろ彼はこれまで、後輩芸人に暴行を加えて書類送検され、16歳の少女との猥褻行為で警視庁の事情聴取を受けるなど、数々の不祥事を起こし、女性関係も“奔放”の極み。本誌(08年5月1・8日号)でも、宮崎県知事時代に20代の女性を弄び、挙句、150万円の手切れ金を支払った彼の行状を報じている。世間ではこういう男を『不届き者』と呼ぶ」  さらに、こう結ぶ。 「西の宮崎県から東の東京都への“国替え”を企図している東国原氏。名前に反して“東の国”とは縁が浅いままであってくれることを祈るばかりである」  まさにその通り。新潮はん、ええこと言いなはる。  ポストも東国原や猪瀬に東京を渡してはいけないと危機感をもったのか、意見広告とも思える特集をトップにもってきた。 「唐突で申し訳ありませんが」と断っているが、いまやテレビの寵児となった池上彰に出てくれと、誌面で呼びかけたのだ。  こういう誌面づくりに賛否はあるだろうが、私は好きである。  池上は「政治報道のタブーを破った」そうである。それは10年7月の参院選開票時に司会をし、「民主党支持の日教組の組織票はどれぐらいか」「公明党と創価学会の結びつき」などに踏み込んだからだそうだが、私は、その程度でタブーを破ったなどというなよ、と思ってしまうのだが。  池上は悪くないタマだとは思うが、本人がその気は「毛頭ない」と言い切っているのでは、ポストの片思いで終わるようだ。  前々回の都知事選の時、鳥越俊太郎元毎日新聞記者が出馬を打診されたことがあった。私は彼から直接聞いているが、体調の問題さえなければ出馬してもいいと思っていたという。  今回、彼は出ないだろうが、少しマシな知名度のある文化人が出馬すれば、大量得票は間違いない。取り沙汰されているニュースキャスターの安藤優子が出れば楽勝ではないか。どうかね安藤さん、出てみたら。  第2位は、鹿児島県種子島の西方12kmの東シナ海に浮かぶ馬毛島が、中国企業に売られるかもしれないという記事。  島の由来は、ポルトガル宣教師たちが鉄砲とともに渡来させた馬を養っていたことから。  無人島としては国内で2番目に大きい。島を所有するのは「立石建設工業」立石勲会長。彼のこんな発言が政府に伝わってきたからである。 「中国の企業が何社か接触してきている。日本の対応次第では売ってもいい」  防衛関係者がこう語る。 「それまでは、本意ではないだろうと高をくくっていたんですが、8月の尖閣諸島騒動で事態は一変した。馬毛島の周辺には佐世保や沖縄などの米軍基地があって地政学上、非常に重要な場所です。ここを本当に中国にとられたら国防上、危機的な状況に陥ると省内で危ぶむ声が高まってきた」  馬毛島は過去に幾度となく米軍によって軍用化が検討されてきたという。ポストによれば立石がここを購入した経緯はこうである。 「立石氏は鹿児島県で遠洋漁業の船長をした後に上京。64年に不動産会社『立石建設』を設立する。4年後には砂利や砂などの建設販売部門を独立させた『立石建設工業』を設立し、高度成長の波にも乗り、一大グループを築くまでになる。  東京で一旗揚げた立石氏に馬毛島購入を勧めたのは、たまたま知り合った防衛省幹部OBだったという。 『国防は30年、40年先を読まなくてはいけない。馬毛島はいつか、日本防衛の有力な基地になる』  立石氏は自ら率先して住民票を馬毛島に移し、防衛省幹部OBから耳打ちされた言葉を実行に移した。奇しくもその言葉が現実のものとなりつつある」  当初6割の所有だったが、次々に買い足され、この島に投じた金は150億円にも上るという。  島には3万人収容できるし、軍隊向きの港も兼ね備えていて、今すぐ米軍に提供できると彼は話しているという。  当時の防衛大臣・北澤俊美が立石と交渉したが、その額は50億円にも満たないものだったようである。  ある防衛省幹部が嘆いている。 「外国企業が離島を買うとなっても法的に禁止することができません。さらに問題なのが日本の法体系の中には買った土地に対する禁止条項がないこと。個々の自治体による行政上の制約はあるが、安全保障上の規制ではない。例えば通信施設が作られたとしても、国として強制的に立ち入り調査することはできないんです。外国企業に島を買い取られた場合、島を日本の監視下におくことは現実的に難しい」  中国による日本列島買い占めは、米軍にとっても頭の痛い問題のようである。  さて、今週のグランプリは「まったく発電していない原発」のために、値上げされた電力料金が使われていると告発する記事にあげたい。  国民の支払う電気料金が、発電量ゼロの「日本原子力発電」という会社へ支払われているというのである。 「ここは東海第二原発(110万kw)、敦賀原発1号機(33.7万kw)、同2号機(116万kw)の3基の原発を保有し、東電をはじめ、東北電力、中部電力、北陸電力、関西電力の本州5電力会社に電気を売る、卸電気事業者である。 3基のうち、東海第二は昨年3月の東日本大震災で自動停止した。敦賀1号機は昨年1月から、同2号機は昨年5月7日から、それぞれ定期検査のため停止されている。当然、その後、現在に至るまで発電量はゼロである。 ところが、同社の有価証券報告書によると、昨年度(12年度)は東電の約465億円をはじめ、関電・約641億円、中部電力・約307億円など、5社から電力を売った代金として合計約1443億円を受け取り、93億円の経常利益を上げている(震災の被害による特別損失計上で最終損益は赤字)。本社社員の平均年間給与は637万円。経産省が電気代値上げにあたって、電力各社に求めている賃下げ基準(大企業平均596万円)より高い。 敦賀2号機だけは昨年4月1日から5月7日に停止するまで37日間稼働したとはいえ、その間の発電量は10億kwhと前年度の発電量(162億kwh)の16分の1に過ぎない。 なぜ、事実上「発電ゼロ」の会社が利益を出せるのか。 「次の数字を比較してほしい。過去2年間の日本原子力発電の発電量と、電力5社が支払った金額は、 ◆11年度162億kwh 1736億円 ◆12年度 10億kwh 1443億円 と、発電量が16分の1に減ったにもかかわらず、電力会社の購入代金は2割しか減っていない」(ポスト)  一体、どんな会社なのか。 「日本原子力発電は原子力発電推進のために電力9社と政府系特殊法人の電源開発(現在は民営化)の共同出資で1957年に設立された国策会社だ。筆頭株主は東京電力(28.23%出資)。66年には日本初の商用原発『東海発電所』の運転を開始し、前述のように現在3基の原発を保有している。  社員数は関連会社を含めて2254人。原発推進派の政治家、与謝野馨・元財務相は議員になる前に社員だったことでも知られる」(同)  東電は今回の値上げで年間ざっと6150億円の増収を見込んでいるが、そのうちの1003億円はここのために使われたのだという。  東電にはこの会社を潰せない理由があった。原発事故で引責辞任した勝俣恒久前東電会長が天下っているからである。  ポストはこう結んでいる。 「この企業の清算を早く決断しない限り、東電だけではなく、値上げ方針を打ち出した関電はじめ全国の電力会社が新たな料金算定に原発企業への救済資金を盛り込むのは確実で、今後も国民負担は膨らむばかりだ。 これでも電気代値上げは仕方ないと思えるだろうか」 今、国民に成り代わり一番怒ってくれている週刊誌はポストである。   (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか 

町山智浩氏に聞く“日本人の知らないアメリカ”

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町山氏
 サイゾー本誌に連載中の「映画でわかる アメリカがわかる」でもおなじみの、米カリフォルニア州バークレー在住のコラムニスト兼映画評論家・町山智浩氏。今秋同氏は、『99%対1% アメリカ格差ウォーズ』(講談社)、『教科書に載ってないUSA語録』(文藝春秋)、『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』(文春文庫、08年発刊の単行本の文庫化)という、すべて“日本人の知らないアメリカ”がテーマの単著を3冊連続で発刊した。新聞やテレビ、ウェブではわからない超大国の素顔を現地在住者の目線でレポートする町山氏に、アメリカの現在、そして11月6日に控えたアメリカ大統領選挙の展望を聞いた。 ──『教科書に載ってないUSA語録』は、2009年~12年にかけて、町山さんが日常生活やテレビで耳にしたはやり言葉やキャッチフレーズでアメリカの社会や政治を読み解くコラム集ですが、文字通り日本人の知らない「アメリカ語」だらけですね。 町山智浩(以下、町山) アメリカ人も知らない言葉もありますよ。毎年たくさんの新語が生まれて、意味もどんどん変わっていくから、誰もついていけないんです。普通に子どもと会話しててもわからない言葉があるくらい。英語って、日本語より造語をつくりやすい言語なんですよね。 ──「Eastwooding」(クリント・イーストウッドする)とか、うまいこと言いますよね。 町山 そうそう。「ing」をつければなんでも動詞化しちゃうし、「フレネミー」(friend+enemy=frenemy:友達ぶった敵)とか「チナメリカ」(China+America=Chinamerica:中国とアメリカの運命共同体)とか、2つの言葉をくっつけたり。インターネット時代になると、文字を打つのが面倒だから略語も使うじゃないですか。 ──「lol」(lough out loud:大爆笑)とかですね。 町山 「lol」は日本語の「ワロタ」や「w」とまったく同じ。だからすごく似てる部分もあって、一番おかしかったのは「トロール」(troll:インターネット上の「釣り」)。アメリカ人も「I'm trolling(それ釣りだから)」って書き込みしてるから、なんでここまで一緒なんだろうって(笑)。 ──そういったはやり言葉だけでなく、政治家の言葉もたくさん掲載されてますね。日本でも政治家の失言は叩かれますが、アメリカもそういうところは敏感ですか? 町山 ええ。というかむしろ、アメリカの「インターネットミーム」(ネット上で広がるネタ)は日本の比ではないです。失言からわずか数分以内にツイッターを埋め尽くさんばかりに拡散するし、失言をもとにしたコラ画像やMAD動画も大量に作られます。最近は特に、世間が失言で大騒ぎしすぎなんですよね。でも逆に、政治家の言葉は、キャッチフレーズになった場合は大きな力を持つんです。 ──オバマ大統領の「Hope」や「Change」みたいに。 町山 そのワンフレーズで国が動いちゃう。日本でもかつて「小泉劇場」なんてのがありましたけど、アメリカはもっと極端。ワンフレーズ・ポリティクスの国だから、この本でも政治ネタが非常に多くなってるんです。 ──お話を伺う限り、ネタには困らない感じだったんですね。 町山 ネタよりもオチで苦労しましたね。僕は、コラムってオチがなきゃいけないと思ってて、最後で笑えない原稿になったときはすごい罪悪感が……。どうしてもいいオチが浮かばないときは、娘に原稿を見せて考えてもらったり、ツイッターで「オチがなくて苦しんでまーす」ってつぶやいてみたり。 ──そうやって誰かのオチが採用されたケースもあるんですか? 町山 ええとね、かみさんが考えたオチは使わせてもらいました。ペッパー・スプレー(Pepper spray)っていうトウガラシの辛味成分を噴射するスプレーが問題になってるっていう話で。 ──あのオチは奥様の案だったんですか!(気になる方は、お手に取ってご確認を) 町山 あと、オチとは関係ないんですけど、文章だけだとどうしても発言者の雰囲気やおかしさが伝わらないところもあって、そこは澤井健さんのイラストにずいぶん助けられました。 ■「貧乏人に税金を使うな!」vs「金持ちに課税しろ!」 ──『USA語録』は時に下世話な笑えるコラム集ですが、ほぼ同時期に書かれた『99%対1% アメリカ格差ウォーズ』は、よりジャーナリスティックにアメリカ社会に切り込んでらっしゃいますね。 町山 『格差ウォーズ』の取材ではスマホを持ち歩いて、Ustで同時中継ルポみたいなことをしてたんですよ。証拠を残しておこうと思って。でも、いかんせん時差の問題で日本では見てくれる人が少なくて、「これは意味がねえ!」って途中でやめちゃいましたけど。 ──そういった現場感は本からも伝わってきます。書名の『99%対1%』は、上位1%の大金持ちがアメリカ全体の富の4割近くを独占している事態(原因はブッシュ政権時代の富裕層への減税)を表しているわけですが、象徴的なのは「ティーパーティー」と「ウォール街を占拠せよ」という2つの運動ですね。 町山 ティーパーティーの参加者は主にオバマの医療保険改革(「オバマケア」と揶揄される)に反対する人たち。大半は50代以上の白人で、だいたい襟のある服を着てるんですよ。一方で、アメリカの金融界に抗議してウォール街を占拠した人たちは、ほとんどが若者で人種もばらばら。格好はボロボロのジーンズにTシャツとかで、ピアス率が異常に高い。 ──そして、金持ちの白人は「貧乏人の医療保険に税金を使うな!」とアジり、貧乏な若者たちは「Tax the Rich(金持ちに課税を)」というプラカードを掲げていると。 町山 金持ちが気にしてるのは年金と高齢者用の医療保険なんですけど、どちらも破綻しかかってるんです。なのに、政府は貧乏な人たちの医療保険などの福祉にお金を回そうとしてる。だから「そんなことしたらオレたちの取り分が減るだろ!」「がんばって働いた見返りを待ってたのに、話が違うぞ!」と怒ってるんです。でも、若い子たちからすれば、最初から働き口もないひどい状態だから「せめてスタート地点に立たせてくれ!」と。彼らの多くは失業者ですからね。ウォール街を占拠している人たちに「なんで来たの?」ってインタビューしたら「職がないから」ってすごいストレートに答えてくれて。 ──そんな困った国のリーダーを決める大統領選挙が、来る11月6日に行われるわけですが、日本ではあんまり話題になってないんですよね。 町山 一番問題なのは、大統領選でいろんな政策論争が交わされてますけど、そこで対日政策が一切争点になっていないこと。アメリカにおける日本の経済的な存在感はゼロに近くなってるんです。 ──そういう理由なんですね。てっきり、日本がアメリカに興味をなくしてしまっているだけなのかと。 町山 もちろんそれもあると思います。どっちもどっちなんですよね。日本の雑誌も中国の記事ばっかりでしょ? アメリカでも「タイム」や「ニューズウィーク」は毎回中国とインドですよ。この両国はいま中流層が拡大しつつある過程で、彼らはいずれ巨大な消費層になります。日本とアメリカがなぜ大国になったかというと、消費力があったから。国力というのは生産力だけじゃなくて消費力=中流層の人口も重要。その点で中国とインドのポテンシャルは計り知れないから、これはヤバい。 ──逆にいえば、いま日本とアメリカが弱っているのは、格差が広がって中流層が崩壊しているからだと。 町山 中流がいない、一握りの金持ちとたくさんの貧乏人で構成される国のことは「第三世界」といいますからね。だから、いまやらなきゃいけないのは格差の是正なんです。 ■フロリダ州とオハイオ州を制した者が勝つ ──今回の大統領選は、「新自由主義」路線の共和党ロムニー候補 vs.「富の再分配」を標榜する民主党オバマ大統領ということになりますね。 町山 ロムニーのは、金持ちがもっと金持ちになればトリクルダウン(滴り落ちる)する、つまり貧乏人もおこぼれに与れるという理論だけど、それって科学的な根拠がないし、すでにブッシュ政権で失敗してます。一方のオバマは、大金持ちに課税して財源を得ようとしてるけど、議会で共和党に反対されて、まだ一度も課税法案を通せていない。 ──町山さんは、どちらが勝つと予想されます? 町山 オバマでしょうね。実はアメリカ大統領選って、フロリダ州とオハイオ州を制すれば勝つんです。アメリカでは共和党が強い州と、民主党が強い州がはっきりしているんですけど、どちらが勝つかわからない激戦州というのがいくつかあるんです。 ──共和党が強い州では、民主党の候補は何をしても勝てないわけですね。その逆もしかりで、結果として、その激戦州での選挙戦がカギを握る。つまり一握りの州の結果が勝敗を左右してしまうと。 町山 中でもフロリダとオハイオは、歴史的に見ても非常に影響力が大きい。まず、フロリダで票を動かすのは引退したユダヤ系の老人たち。フロリダって、州の政策として高齢者の税金を優遇したりして老人を呼び込んでるんです。彼らがニューヨークなど他の州で稼いできたお金をフロリダで使わせるためにね。で、この老人たちの関心事は何かというと、自分たちの年金と医療保険だけ。だから、そこだけ気をつけて戦えばいいんです。 ──有権者がユダヤ人=ユダヤ教徒ということは、共和党のロムニーは「福音派」(プロテスタント系のキリスト教右派。共和党の支持基盤でもある)というカードを切れませんね。 町山 フロリダはキューバ系の移民も多いんですけど、彼らはとにかく「共産主義が嫌い!」っていう思想だけ。あとね、ロムニーは大失言やっちゃったんですよ。アメリカ国民の47%は所得税を払ってないんですけど、彼は「所得税払わないやつらのことなんかどうでもいい」って言っちゃった。この47%にフロリダの老人は全員含まれるんですよ、所得がないから。 ──それは痛いですね。一方のオハイオは、どういう州なんですか? 町山 オハイオはもともと工業地帯で、東欧とかロシア系、あとイタリア系やアイルランド系の移民労働者が多い。彼らはプロテスタントではなくロシア正教やカトリックだから、やっぱり共和党にとっては戦いにくい。そもそもロムニーはモルモン教徒だから、キリスト教徒の支持を得にくいんです。その点、オバマはクリスチャンだからまだ有利なんですね。 ──それにしても、たった2州が世界のリーダーを決定するって、とんでもない話ですね。 町山 そこに関しては、最近はアメリカ人も「国の運命を決めるのが、ド田舎の労働者と年寄りでいいのか!」って怒ってるんですど、どうしようもない。 ──選挙のシステム上、重要な州である以上、そこに媚びるしかないんですね。 町山 ところがロムニーは、オハイオに対してもやらかしてるんです。オバマが09年に、経営破綻したGM(ゼネラルモーターズ)に公的資金を投入したとき、ロムニーは「自己責任で倒産させろ」って反対しちゃったの。結果的にGMは再生して自動車業界は救われました。で、オハイオには自動車工場もたくさんあるんですよ。大統領選に出るつもりだったら、絶対に言っちゃいけないことだった。 ──『USA語録』『格差ウォーズ』共に、失言製造機のサラ・ペイリン女史など共和党の議員が出てきますが、ロクな人がいない……。 町山 日本よりはマシですけどね(笑)。 ■アメリカ、中国、インドが三位一体で世界を支配!? ──では、今後アメリカはどこへ向かうのでしょう? 町山 いま中西部と南部では産業が崩壊しちゃったからスキルもないし、キリスト教原理主義だから高等教育を拒否して低教養な人たちが急増してるんですけど、彼らのような、「市民」として機能しない人たちをどうするのか。放っておくわけにもいかないから、アメリカはこれから大変な重荷を背負うことになります。 ──日本も、ここ20年くらいで就職し損なった人たちがたくさんいますから、同質の問題を抱えていますね。 町山 加えて、いまアメリカの一流大学の学生の半分くらいは、中国やインド系のアメリカ人もしくは留学生に占められつつあります。だからシティバンクとかアドビとかぺプシとか大企業のCEOにもインド系が増えて来ました。逆に白人のエリートは減っています。 ──学費が高すぎて大学に行けないアメリカ白人が増えている一方で、お金持ちの中国人やインド人がどんどん入ってくると。 町山 アメリカの中高生のレベルは先進国でも最低レベルですが、大学は世界一なんです。世界中のエリートがアメリカで学ぶから、、今後もアメリカは世界の「知的覇権」みたいなものを維持していくでしょう。ただ、中国とインド系のアメリカ人がアメリカの経済だけでなく、政治に加わるとどうなるのか。あるいは留学生たちが祖国に帰ってからどうするのか。おそらくアメリカで教育を受けた人たちはエリートになるでしょうから、中国もインドも変わらざるを得ないでしょう。当然、アメリカと両国との関係性も変わっていって、米中印の三位一体で世界を支配していくんじゃないですか。 ──そこで日本は……。 町山 仲間に入れてもらえないでしょうね。日本からの留学生は激減していますし、政治家が英語できない国だし。 ──ならば、この『USA語録』で英語の勉強を……。 町山 「まえがき」にも書きましたけど、まったく役に立たないどころか、うっかり日常で使うと銃で撃たれちゃうようなヒドい言葉も載ってますから(笑)。 (取材・文=須藤輝) ●まちやま・ともひろ 1962年、東京都生まれ。早稲田大学法学部卒。編集者として雑誌「映画秘宝」(洋泉社)創刊後に渡米。コラムニスト、映画評論家として「週刊文春」「ニューズウィーク日本版WEB」「クーリエ・ジャポン」「映画秘宝」などに連載を持つ。TOKYO MXTV『松嶋×町山 未公開映画を観るTV』、TBSラジオ『たまむすび』出演中。著書に『〈映画の見方〉がわかる本』(洋泉社)、『99%対1% アメリカ格差ウォーズ』(講談社)、『教科書に載ってないUSA語録』(文藝春秋)、『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』(文春文庫)など。

残っているのはカスばかり? 終焉間近の「街コン」ブームの惨状

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 昨年から、全国的に爆発的なブームになった「街コン」。一つの街の複数の飲食店を会場に使い、街全体を合コン会場にするこのイベントは注目を集め、特に地方では地域活性化の起爆剤、町おこしの有力な方法として開催される事例が相次いでいる。  しかし、2012年も終わりに近づき、一時の勢いは失われ、主催者の中には「もう街コンは終わった」と公言してはばからない者も出てくるようになってきた。  街コンが急速に勢いを失っている最大の理由は、イベントの乱立だ。ちょっとした小遣い稼ぎと考える素人から、町おこし関連の団体、果てはお見合いパーティーを業務にしてきたような企業までが参入し、週末になれば全国各地で街コンが開催されているような状況だ。中には、同じ街で二つの街コンが競合してしまうこともある。  そもそも、街コンが開催されてメリットが大きいのは、会場となる飲食店だ。日中、あるいは開店早々の客が少ない時間に店を街コンの会場として提供すれば、幾分か儲けを増やすことができるからだ。しかし、地域の中でも会場として使える飲食店はほんの一部。それ以外の飲食店のメリットは、まったくといってよいほどない。また、街コン参加者は、客筋としてもよいものではない。 「男性の側が、思ったより女のコと話ができないといった理由で、主催者にケンカ腰でクレームを入れてくるのは日常茶飯事です」(ある主催者)  そうした理由から、都内の一部地域では、商店街が「街コン禁止」を打ち出しているところもあるという。さらに、こんな指摘も。 「いくらブームになっても、街コンに参加する人数には限りがあります。早い話が、女はかわいい子から、男はイケメンから売れていくわけじゃないですか。すると、結果的にイベントは次第に残り物だけ……という状態になりますよね。今じゃ、いつまで立っても出会えない常連ばっかりになっている地域もありますよ」(同) ■減る一方の収益をめぐって醜い争いも  さらに、どんどんと減っていくパイをめぐり、街コンを運営する人々の中でも血で血を洗う争いが起きている。  現在、街コンの情報はいくつかのポータルサイトで掲載されている。多くのサイトは掲載自体は無料だが、それとは別に、主催者に有料の参加者申し込みフォームなどのシステムを貸し出して収益を上げている。この、いくつかのポータルサイトが生き残りをめぐって争っているのだ。  互いに「ウチが最も多くの開催情報を掲載している」というアピールを可能にするために「ウチで掲載するならば、アッチには掲載しないでくれ」という要求が今では当たり前だ。街コンポータルサイトの大手とされるある企業では、ブームに乗って大幅に社員数を増加させたそうだが、やがて退潮期が来ることを予測できなかったのだろうか。  また、主催者も減少する参加者を確保するのに必死だ。良心的な主催者は、男女比を同数にするために、どちらかの性別(大抵は男性)の数が上回った場合には、参加を断るところもある。だが、多くの主催者は男女比がアンバランスでも、まったくケアしない。結果、男性の数が圧倒的に多くなってしまい、まったく女性と話せないままにイベントが終わってしまうことも。結果、話せない男性はイライラが募るし、雰囲気も悪くなり、リピーターも失われることになる。  末期的状況を迎えつつある街コン。その打開策は何もない。結局は、早期に参入した主催者、あるいは参加者のみがトクをしたということだ。もはや、残っているのはカスばかり。ブームだからと参加してみても、おいしい思いをできる可能性はほとんどない。合掌。 (取材・文=三途川昇天)

中国「清掃員募集」に集まった就職希望者がハイレベルすぎる理由とは?

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『蟻族―高学歴ワーキングプアたちの群れ』
(勉誠出版)
 黒竜江省ハルビン市が、街の清掃員やゴミ回収のトラックの運転手など、美化作業員を募集したところ、457人の募集枠に1万1,539人もの応募が殺到したという。実際に履歴書を提出した7,186人のうち、4割以上が大卒者で、さらに大学院卒も29人含まれていた。  同市によると、今回の募集で市の美化作業員は平均年齢が大幅に下がり、さらに高学歴化する見込みだ。    このように高学歴な若者が、清掃員のような単純労働への就職を希望する背景について、広東省ブロック紙の社会部記者はこう話す。 「毎年600万人以上が大学を卒業している中国では、その1割以上が職にあぶれており、100万人近くの大卒者が『卒業即失業』という事態となっている。卒業できたとしても、初任給の平均は2万5,000円ほどで、職歴4年の出稼ぎ労働者の給与よりも低い。そんな中、給与こそ低いものの『準公務員』としての待遇を受けられる清掃員のような職が、大卒者など比較的高学歴な人材に注目され始めている。低賃金に甘んじながらも、都市部で最低限の生活を続ける『蟻族』と呼ばれる若者たちは数年前からいた。しかし、『いつか花を咲かせよう』という夢があった彼らは、仕事を選ぶ際に福利厚生はそれほど重視しなかった。それが、重視されるようになったということは、そんな夢さえも見られなくなったという証拠では」  社会不安が増大する中国では、若者とはいえ、日銭暮らしのような生き方ではリスクが高すぎるということか……。 (文=牧野源)

ビジネスデーの来場者1,000人は多いか少ないか? “西日本最大級”「京都国際マンガ・アニメフェア」の課題

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京都国際マンガ・アニメフェア公式サイト
 去る9月21日から23日まで開催された「京都国際マンガ・アニメフェア2012」。京都市が「西日本最大級の総合見本市」と銘打って開催したこのイベントは、3日間で合計2万3,800人の来場者を数えた。うち、商談を目的としたビジネスデーの来場者は1,000人。開催から1カ月あまりを経て、イベントの成果を京都市に聞いた。  声優・水樹奈々の平安神宮奉納公演などファンに向けた訴求力の高い企画が盛り込まれた今回のフェア。一方で、主催する京都市が目指したのは、ビジネス面での成果だ。京都の企業が製造・販売している製品と、マンガ・アニメをコラボした商品を生み出すことにも、期待がかかっていた。  そうした背景の下、ビジネスデーには主に東京からマンガ・アニメのコンテンツを保有する企業が多数出展した。ところが、実際に取材した雰囲気では、具体的な商談に至っている様子は少なかった。ほかのビジネス主体のイベント、例えば、世界規模の恒例行事となった「東京国際アニメフェア」のビジネスデーは、出展する側に売り込もうとする意志が強く感じられる。来場者も同様で、何か新たなビジネスはないかと、それこそ目を皿のようにして探しているものだ。それに比べると、どうもビジネスの場としての雰囲気が薄かったことは否めず、少し拍子抜けである。こうしたビジネスデーの状況を、京都市はどのように考えているのか。 「正直、物足りなさはあります。ビジネスデーの来場目標が1,000~2,000人でしたので、想定していたギリギリの数でした。何よりも、来場した京都の企業は、キャラクターとコラボした商品を具体化するためにどうしたらよいか、わかっていない印象を受けました。そうした点は、改善をしていかなければならないと考えています」 と、京都市産業観光局産業振興室の草木大さんは話す。フェア開催前には、コラボ商品の開発を考えている企業向けに事前商談会も開催されたが、まだまだどのような形で具体的に話を進めていくか戸惑いが見られたようだ。それでも、フェアでは15種類のコラボ商品が展示、販売された。京都市では初回にもかかわらず多数の商品が開発できたことを肯定的に捉えており、これを継続的に販売していくための準備を進めているという。  初年度ゆえに戸惑いもあったが、先行きが明るいのは、京都市の担当者が「大成功!」と諸手を挙げるのではなく、改善すべき点を正確に把握していることだ。フェア会場で展示、販売されたコラボ商品を先行事例として使い、キャラクターを用いた商品開発の方法、商談のポイントなどが共有されれば、ビジネスデーはさらに密度の濃いものになっていくだろう。京都市の門川大作市長は、3年は継続して開催する意向を示しているが、幸いにも水樹奈々効果もあり2万を超える参加者があったことで、来年はナシとはならなそうだ。「西日本最大級」を謳うこのフェアが、京都の秋の風物詩として定着していくことを期待したい。 (取材・文=昼間たかし)

桑名正博亡き後、「夜の帝王」の名を継ぐミュージシャンは?

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『セクシャルヴァイオレットNO.1~
桑名正博RCA BEST COLLECTION』
(BMGメディアジャパン)
 今年7月に脳幹出血で倒れ、闘病中だった歌手の桑名正博が10月26日に死去した。晩年は経営する会社が倒産するなど波瀾万丈の生涯であったが、10月31日発売の「週刊新潮」(新潮社)ではかつて愛人だった女性が名乗り出て、亡くなった後も世間を賑わせている。 「桑名さんは若い頃からプレイボーイで有名で、前妻のアン・ルイスとの離婚も、桑名さんの度重なる浮気が一因でした。内田裕也さんを中心とするグループでは年少世代でしたが、女性関係は一番派手で、意外とシャイな裕也さんが『ほどほどにしとけ』と説教した逸話もあるほど。手を出したファンを含めると、数百人と関係を持ったはず」(レコード会社関係者)  酒グセも悪く、盛り場の武勇伝にも事欠かなかった桑名だが、交際女性を含めて悪評があまり聞こえてこないのは、「普段は面倒見がよく、気を使うタイプ」(同)という人柄ゆえだろうか。  では、現在の音楽界で“ポスト桑名”と呼べるプレイボーイとは誰か。多くの関係者に聞いても、めぼしい名前が挙がってこない。 「今はロックバンドもすっかりおとなしくなり、桑名さんの若い頃のように遊んでいるミュージシャンはほとんどいませんね。名前が出るのはGACKTや河村隆一、清春といったアラフォー世代ばかりで、20代だとビジュアル系バンドのNやSなどの評判を聞くくらい。遊んでいるといっても、バンギャをつまみ食いする程度で、桑名さんのように女優やタレントを次々と落とすような大物は見当たりません」(音楽事務所関係者)  桑名がデビューした1970年前後は、バンドマンといえば女性の“ヒモ”暮らしが当たり前だった時代。システム化が進んだ今の音楽業界では、トラブル化を怖れる事務所の目が厳しく、ミュージシャンも奔放に遊んでもいられないということか。  もっとも、女優の吉高由里子と結婚目前といわれるflumpoolのベーシスト尼川元気など、同じ事務所内で交際を続けているケースは少なくない。 「アミューズやエイベックスなどの大手事務所やレコード会社内では、頻繁に飲み会やパーティが行われていて、男女がくっついたり別れたりしています。倖田來未と夫のKENJI03 (BACK-ON)などが典型ですが、売れているほうの女性が主導して、カップルとなることが多いですね。会社は違いますが、人気歌手のYも売れないバンドマンと交際していますよ」(同)  桑名のような“夜の大物”は、いまや女性ミュージシャンの側に多いのかもしれない。 (文=越谷由紀)

原作に惚れ込んだ井筒和幸監督が満を持して映画化!『黄金を抱いて翔べ』

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(c)2012『黄金を抱いて翔べ』製作委員会
 今週紹介する新作映画3本は、ジャンルこそ違えど、スケールの大きな世界観とスリリングな展開でずっしりと見応えある力作ぞろいだ。  11月2日公開の『のぼうの城』は、第29回城戸賞を受賞した和田竜の脚本『忍ぶの城』を、野村萬斎主演で描くスペクタクルな時代劇。豊臣秀吉(市村正親)が天下統一を目前に控えていた頃、最後の敵対勢力となった北条勢の支城、武蔵国の忍(おし)城には、「のぼう様(でくのぼうの意味)」と領民から慕われる城代・成田長親(野村)がいた。石田三成(上地雄輔)が率い、忍城を包囲した豊臣勢2万人の大軍に、長親はわずか500人の軍勢で戦いを挑む。   『ジョゼと虎と魚たち』(2003)など人間ドラマを得意とする犬童一心監督と、特撮監督出身で『ローレライ』(05(などを手がけた樋口真嗣監督が、それぞれの持ち味を出し合った共同監督作。狂言師・野村萬斎のユーモラスな所作とひょうひょうとした存在感が見事にハマった。佐藤浩市、成宮寛貴、榮倉奈々、山口智充、山田孝之、尾野真千子ら豪華共演陣の熱演も見どころだ。  11月3日に封切られる『黄金を抱いて翔べ』は、銀行地下金庫からの金塊強奪という大勝負に賭ける男たちを骨太に描くクライムエンタテインメント。過激派らを相手に調達屋をしてきた幸田(妻夫木聡)は、大学時代からの友人・北川(浅野忠信)から大阪のメガバンクの地下にある巨額の金塊を強奪する計画を持ちかけられる。2人は、銀行担当システムエンジニアの野田(桐谷健太)、元北朝鮮スパイのモモ(チャンミン)、北川の弟・春樹(溝端淳平)、元エレベーター技師のジイちゃん(西田敏行)を仲間に加え、緻密かつ大胆な作戦を決行する。  高村薫が日本推理サスペンス大賞を受賞した1990年のデビュー小説を、発表時から惚れ込み企画を温めてきた『パッチギ!』(05)の井筒和幸監督が満を持して映画化。ヒゲ面の妻夫木と角刈りの浅野、男臭さあふれるルックスの2人を中心に繰り広げられる、友情と裏切り、駆け引きと陰謀の行方から目が離せない。北川の妻を演じた中村ゆりの優しく儚い美しさも印象に残る。  現在公開中の『リンカーン 秘密の書』(2D/3D上映)は、奴隷解放で知られる19世紀の米大統領エイブラハム・リンカーンが実はバンパイアハンターだった、という奇想天外なストーリーが展開するアクション超大作。リンカーンは少年時代に母親をバンパイアに殺され、復讐のため戦闘術を学ぶ。やがて成長したリンカーン(ベンジャミン・ウォーカー)は、バンパイアが奴隷制度を隠れ蓑(みの)に『食事』を得ていることを知り、昼は政治家として奴隷解放を訴え、夜は斧を手にしたハンターとしてバンパイアと戦うようになる。  監督は、『ウォンテッド』(08)のスタイリッシュなアクション表現が記憶に新しいティムール・ベクマンベトフ。製作は、自身の監督作『ダーク・シャドウ』(12)でもバンパイア物を手がけたばかりのティム・バートン。ハイライトの戦闘アクションは、屋敷の舞踏会場での接近戦、大群で暴走する馬の上でのダイナミックな戦い、炎上する列車と崩れ落ちる橋を舞台にした最終決戦と、どれも斬新で迫力満点。ヒロインのメアリー・エリザベス・ウィンステッドも、シックな衣装をまとい大人の魅力を漂わせている。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『のぼうの城』作品情報 <http://eiga.com/movie/55578/> 『黄金を抱いて翔べ』作品情報 <http://eiga.com/movie/57792/> 『リンカーン 秘密の書』作品情報 <http://eiga.com/movie/57475/>

吹き替え声優界のおさ・羽佐間道夫が激白!「『ロッキー』はミスキャストだった」

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御年79歳!
 1987年にテレビ東京で放送され、お茶の間を爆笑の渦に巻き込んだ伝説のコメディシリーズ『俺がハマーだ!』が帰ってくる! 日本での放送から25周年を記念して、11月2日、ポニーキャニオンよりDVD-BOXが発売される。サンフランシスコ市警察の刑事スレッジ・ハマーが、相棒の女性刑事ドリー・ドローと、数々の難事件・凶悪事件を強引に解決するこのドラマ。日本語吹き替え版は、声優たちによる爆笑アドリブが話題となった。今回、DVD-BOX発売を記念して、ハマー役の羽佐間道夫氏に当時の思い出話を伺った。 ――今回、DVD-BOXのプロモーション用に新しくナレーション録りされていますが、久々の 吹き替えで、すぐにハマーの声は出せましたか?  羽佐間道夫(以下、羽佐間) 実は、ハマーの場合は僕の地の声に近いので、あんまり作り込んだものではないんです。だから、久々とはいえ、そこまで難しくなかったですね。『俺がハマーだ!』はときどき見ていますが、今見ると“ここは変えたほうがいいんじゃないかな”という部分はたくさんありますね。古いギャグがあったりして、今の時代ではあまり通じないんじゃないかなって。こういう素材って、本当はどんどん新しい人が録り直していったほうが面白いんじゃないかと思いますよ。 ――このドラマが日本でヒットした大きな要因は、なんといっても日本語吹き替えの面白さだと思いますが、このアドリブは企画段階から決まっていたことなんですか? 羽佐間 いやいや、まさか。ただ、翻訳家と放送作家はすごく頭を悩ませていましたし、実際出来上がった台本を見て「これはニュアンスがちょっと違うんじゃないかな」と思っていました。当時は、“役者は黙っておけ”というような風潮がありましたが、役者も入れて一緒に考えていこうという空気が生まれ始めた作品でもありますね。台本の骨組みはちゃんとできていたので、あとはのりしろをくっつけるような作業でしたよ。 ――ほかの声優さんたちとの掛け合いの中で、突然のアドリブにすぐさま反応できないこともあったりしたんですか? 羽佐間 そりゃそうですよ。何回も録り直しましたね。今は録音技術が発達していますから、簡単に「じゃあ2秒前に戻りましょう」とかできますが、昔は一回まわっちゃうと、ノンストップ。NGが出ると、また頭からやり直しですからね。でも、アドリブって一度止めちゃうと二度と同じのができないんですよ。だから映像をよーく見ると、“これは絶対間違ってるな”というところも発見できる。それも、今回のDVD-BOXのお楽しみですね。 ――おなじみの決め台詞「動くなよ。弾丸が外れるから」もアドリブから生まれたものだったんですか? 羽佐間 これは最初からありましたね。いろんなパターンがあったんですが、最終的にはリップシンクにも一番合うなってことでこれに決まったんです。「動かないでちょうだい。今ピストルに弾丸込めるからさ」とかもあったんですが、これだとさすがに長すぎて入らなかったんです。
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当時の台本。
――とくに記憶に残っている回はありますか? 羽佐間 やっぱり初回の「USA爆発刑事 バズーカ小脇に救出作戦!!」ですよね。出勤中にいきなりバズーカでビルをぶっ放す刑事なんて、いくら喜劇とはいえ、とんでもないコミック作品だなと脚本を読んで驚いたことを覚えています。 ――『ハマー』以外にも海外の刑事ドラマはいろいろありますが、羽佐間さんから見たこのドラマの魅力とは、どんなところですか? 羽佐間 警察をギャグでいじるっていうのは、日本には当時も今もないんですよね。『こち亀』みたいなのはありますけどね。こんなに常識外れの警官がギャグとして許されるって、日本ではできなかったと思います。漫才とかコメディを見ている感じで見られるというのがいいですよね。ハマーに関していえば、どこか温かさを持っているところが魅力ですかね。刑事というとギスギスしているイメージがありますけれど、ハマーは人間味とユーモアのある刑事。犯人を痛めつけたりするシーンはほとんどないんですよね。どんな嫌な奴でも凶悪な奴でも、説得するだけ。このドラマを放映していた25年前というのは、日本はバブルがはじけてだんだんとすさむような時代に突入し始める時だったんですが、そんな中で、お茶の間で何も考えずに笑える作品というのがよかったんじゃないですかね。 ――吹き替え声優界の大御所として知られる羽佐間さんですが、『ハマー』以外にも、実にたくさんの役をこなされています。これまでに吹き替えた作品は7000本以上もあるそうですが、その中でもやっぱり『ロッキー』のイメージが強いですね。 羽佐間 シルヴェスター・スタローンは、僕が一番苦労した俳優なんです。僕の声はハイバリトンだから、スタローンとはトーンが合わないんですよ。だからその分、エロキューションで稼がなきゃいけない。年を取ってローバリトンになってしまったから、本当はファイナルなんてやりたくなかったんですが、「5までやっているから、ぜひ6もやってください」って頼まれちゃいまして。それに、実はスタローンって、あんまり好きな俳優じゃないんですよ。マッチョマンが嫌いなんです。ヒョロっとしているけど繊細さがあって、どこか温かみがあるとか、そういう役柄が好きなんですよ。『評決』のポール・ニューマンとか、『クロコダイルダンディ』のポール・ホーガンとかですかね。 ――それは衝撃の事実ですね。 羽佐間 僕は最大のミスキャストだと思いますね。それなのに、羽佐間を代表するものは『ロッキー』になっちゃう。この長い吹き替え人生の中で、みんなの印象に残っているのは「エイドリアーン」と「動くなよ。弾丸が外れるから」だけっていうのは寂しいですね。それ以外にも傑作をいっぱい放っているのに……。もっとほかの作品も褒めてほしいですよ! ――……なんだかすいません! それでは最後に、日刊サイゾー読者に『俺がハマーだ!』のPRをお願いします。 羽佐間 いまバイオレンス映画が多いけれど、『ハマー』は一見バイオレンスに見えて、実は人間の温かさみたいなのを貫いている作品だと思うんです。こんな時代ですから、そんなところも見直して、ホッと和んでもらえればと思います。 (取材・文=編集部) ●『俺がハマーだ!』『新・俺がハマーだ!』DVD-BOX 価格:各12,600円(税込) 発売:11月2日(金) 発売元:『俺がハマーだ!』DVD製作委員会 企画協力:フィールドワークス 販売元:ポニーキャニオン

ハロウィンでも閑古鳥……米軍外出禁止令が「基地の街」に与える影響

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 10月31日、ハロウィンを迎えた横須賀市の通称“どぶ板通り”。米海軍の基地にほど近いこの歓楽街は、例年であれば仮装した米兵たちと、連れの女性たちで大きなにぎわいを見せていた。  しかし、今年のハロウィンはいつもと様相が違っていた。 「うちは毎年ハロウィンには、仮装イベントをやっていて、朝まで盛り上がっていた。店にとっても一年でも一番の書き入れ時だったのに……。今日の客はたったの5人。0時を回ったらもう閉店します」  そう話すのは、横須賀市内でショットバーを経営する男性(44歳)だ。  そんな異常事態の原因は、10月に沖縄県内で発生した米兵2人による集団強姦致傷事件を受け、日本に駐留するすべての米兵に対し、午後11時から午前5時までの外出が禁止されたことである。 「うちは客の8割が米軍基地の人間だったので、正直苦しい。同業者にも店を畳むことを検討し始めたところもある。米軍による犯罪は許せないが、十把ひとからげの外出禁止措置は早く解いてもらわなくては、うちが潰れるのも時間の問題」(同)  米軍の外出禁止令の影響は、東京の中心地にも見られた。多国籍な歓楽街として知られる六本木にあるダンスクラブの関係者(29歳)は、こう明かす。 「去年までは、ハロウィン直前の週末には朝まで多くの米兵が飲み明かしていたが、今年は皆無だった。当然、米兵目当てに来ていた女の子たちも来なくなり、全体としての客の入りも2割減くらいに落ち込んでいますよ」  同様の現象は、沖縄や東京都福生市、長崎県佐世保など、100近くといわれる米軍施設の周辺地域にも起きているとみられる。  そもそも米軍は、周辺住民による反対運動を抑え込むために、基地がもたらす経済効果を地元に対して強調してきたといういきさつもある。駐留兵士のガラも悪い、経済効果ももたらさないでは、地元にとってまるでいいことなしだ。 (文=牧野源)

「トーク力なく、スケジュール管理も甘く……」メンタリストDaiGoの正念場

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DaiGo公式サイトより
 突如としてテレビに現れ、甘いマスクに柔らかな物腰で一気にお茶の間の人気者になったメンタリスト・DaiGo。しかし、一部では「早々にメディアから消えてしまうのではないか」と、今後の進退を危ぶむ声が出始めている。 「DaiGoの露出が増えたのは、テレビ局側がセロに続く見栄えがいいエンタテイナーを欲しがったという事情があります。セロの場合は本人の見た目もマジックも派手でしたが、その裏で、たくさんの仕掛け人やCGを用いてマジックの種をあからさまに消したりしていた事実が発覚しました。もちろん、仕掛け人を使うのはマジックではよくあることですが、セロの場合は極端すぎたので、テレビ業界からフェードアウトしていきました」(制作会社スタッフ)  そこで白羽の矢が立ったのが、当時慶應大大学院に在籍していたDaiGoだったという。  セロとは真逆の柔和なタイプで、また“メンタリスト”として「相手の心理を読む」、そして「ある程度、手の内をばらして解説してみせる」というギミックを使用することで、今までになかったタイプのマジシャンとして売り出すことに成功した。 「やっていることは単純な心理テクニックと古典的な手品をからめただけですが、見た目に新しいエンタテインメントとして成立させたことは評価されています。キャラ設定とルックス、目新しさで取り上げられてきましたが、何しろ最近までまったくの素人だったため、トーク力がまったくないんです。また、スケジュール管理がうまくいかず、現場を中座することもあったため、先輩や大御所のタレントの機嫌を損ね、嫌われてしまったとの話も聞こえています」(同)  “メンタリスト”の商標にまつわる騒動などもあり、注目を集めてきたDaiGo。セロやMr.マリックのような一流のエンターテイナーになれるかどうか、今が正念場なのかもしれない。