あのガイナックスがオペラを演出!?  アニメ界の巨匠・山賀博之が挑むワーグナー

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 ガイナックス設立メンバーにして現・代表取締役。そして『王立宇宙軍~オネアミスの翼』監督・脚本、『新世紀エヴァンゲリオン』プロデューサー、『まほろまてぃっく~もっと美しいもの~』監督など、日本のアニメ史に偉大な足跡を残す山賀博之が、今度はオペラの演出に挑戦する。  11月23日~25日、東京・サンパール荒川大ホールにて上演される「舞台祝祭劇『ニーベルングの指環』序夜 ラインの黄金」は、総合芸術家であり、革命家でもあったワーグナーが北欧神話を源流に、26年という歳月をかけて書き上げた壮大なオペラ作品の序章にあたる。トールキンの『指輪物語』をはじめ、松本零士や里中満智子、池田理代子といった日本を代表する漫画家が題材とするなど、後の世に多大な影響を与えている本作を、山賀は直径7メートルに及ぶ巨大なリング状のスクリーンとコンテンポラリーダンス・カンパニー「コンドルズ」とのコラボレーションで演出する。  アニメ界の巨匠が挑むワーグナー。インタビューで、その本質に迫ってみよう。 ■「アニメとワーグナー」というキーワードが出発点 山賀博之(以下、山賀) 『あらかわバイロイト』というワーグナー作品を上演する舞台を毎年やってらっしゃるオペラ歌手の田辺とおるさんから、突然電話がかかってきて「『ニーベルングの指環』を演出しませんか? アニメでワーグナーって、いいと思うんですよ」という話が来たんです。ただ、一つの事業として考えた結果、どう考えてもアニメとオペラを一緒にするのは無理だなというところに行き着いてしまって、アニメというものは一旦置いておこうって話をしたら、田辺さんは『じゃあアニメじゃなくていいです。だから山賀さん、何かやってください』って言うんですよ(笑)。 ──形はどうあれ、山賀さんという新しい風を、オペラに取り込みたかったんでしょうね。 山賀 そう思います。何かあると踏んだんでしょうね。で、アニメじゃないものを考えよう、というところからまた始まったんです。 ──そこからリング状のスクリーンに、どうたどり着いたのでしょうか? 山賀 あれは早い段階で思いつきました。オペラにアニメを混ぜてくれと言われた時に、オペラって舞台に演者が出て歌うわけですから、そこに映像が入ってキャラクターが映っちゃったら、声優が出てきて何かやるようなイベントみたいな、ただの公開アフレコになっちゃって、オペラじゃなくなっちゃう。だから、映像を何か使うにしても、四角いスクリーンはないなというのは真っ先に思いました。そこでどうするか考えた時に、やぐら状の舞台を取り囲んだスクリーンを思いついたんです。あえて遠近感を狂わせる仕掛けというかレイアウトになっているので、客席から見るとどうなっているのかよく分からない。 ──確かに、どういうビジュアルになるのか全然想像がつきません。 山賀 客席からは、上下のスクリーンの間に、やぐらの中央に立った役者が見えるというわけです。上側はスクリーンの前とも上とも言える。下側はスクリーンの奥とも下とも言える。平面で考えれば丸の中に役者がいるし、奥行きで考えると円筒形の下に役者が立っているとも言える。 ──聞いているだけで、なんだか頭がくらくらしますね……。この構想を周りに説明するのは大変でしたか? 山賀 当の田辺さんに「そんなところで役者は歌えません」と、いきなり反対されました(笑)。田辺さん自身は、直感力は鋭いんですけど歌手でもありますから、やっぱり前で歌いたいんですよ。「舞台の奥で歌うのはいいけど、手前にも歌える場所を必ず作ってください」と、最後まで粘っていました。それくらい歌手にとって立ち位置っていうのは、重要な問題なんでしょうね。ただ、今回は歌うためのイベントじゃなくて、演劇なんですから、そこはグッと呑んでもらわなきゃというところで強硬に押し切ったら、だんだんと「いいですね」と言ってもらえるようになりました。 ──リング状のスクリーンというのは、『ニーベルングの指環』というモチーフからとったアイデアなんでしょうか? 山賀 そうですね。まずお客さんが入ってきて、何を見て帰ったら満足かなって考えた時に、でっかい指環が舞台にあったら、まあ満足かなって(笑)。だって『ニーベルングの指環』を見にいって、「どうだった?」と見てない人に聞かれたら、「ステージの上にでっかい指環があって……」と、絶対に見た人は言うと思うんですよ。その一言を狙うために作った部分もあります。そういうところがアニメ的な発想なのかも(笑)。 ──ビジュアルショックを与える。
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稽古風景(撮影=岩崎祐)
山賀 というよりも、もっとアニメ屋的な下卑た商売根性というか(笑)。どうもっていったらどういう一言が引き出せるのかというのをまず作って、そこからマーケティングを考えていく。僕の仕事は、いつもこうですよ。 ■舞台の演出とアニメの演出は同じ ──今回は、コンテンポラリーダンス・カンパニー「コンドルズ」ともコラボレーションされますが、オペラというクラシカルな演劇と、コンテンポラリーダンスという現代の舞踊のすり合わせ具合はいかがですか? 山賀 コンテンポラリーダンス自体、即興性が強いものなので、もちろん設計図は作るけど、何回も稽古をして、動線を確認して……というやり方ではないんですよ。“恐らく彼らはこう絡み合うんだろうな”と、予測して作っています。ここはアニメ演出的なものがあります。アニメ演出って、ほかの舞台や実写映画と根本的に違って、予知能力に近いものが必要なんですよ。音を作る時は絵を知らないで作っているし、絵は音を知らないで作っている。背景を描いている人はその前でキャラがどう動くか知らないし、キャラを描いている人は自分が担当するカット以外は知らないで描いているわけですから。  だから今回、舞台の演出をやってみていいなと思うのは、全部目の前で展開することですね。「ヴォータン(編註:劇中に登場する神々の長)が前に出ない!」とか、リアルタイムで修正を言えるわけですから。アニメで前に出ないという修正を実現しようとすると、「ヴォータンが出ているカットはいくつ?」と制作に聞いて、「そのカットは今どこ? 韓国? 今からカット送れるかな?」とか、そんな感じですから。だから根本的な部分では、アニメ演出と舞台演出の間に何も変わりはないですね」 ──ちなみに演者さんは、山賀さんのプランを聞いて、どんな反応でしたか? 山賀 確かに最初は皆さん、戦々恐々とされている空気はありましたね。ただ、通し稽古に入るあたりで、『これでいいのかな』っていう感じで打ち解けてきた雰囲気はあります。ただ正直言って、不安ももちろんありますよ。新しいことをやる以上、リスクもかなりあるのですが、その一方でワクワクもありつつというのは、アニメを作っていても同じ。いつものことです。 ■ガイナックスの原点はワーグナー ──『ニーベルングの指環』は今回上演される序夜『ラインの黄金』の後に第3夜まで続きますが、今後も演出を続けていく予定はありますか? 山賀 分からないです。というのも、今回はあくまで『あらかわバイロイト』にガイナックスが参加するとちょっと毛色が変わりますよ、ということでやっていますので。でもこのスクリーンは、いろんなイベントに使えそうですよね。それと今回演出をやってみて、オペラというよりもワーグナーそのものに愛着がわきました。 ──山賀さんは、もともとワーグナーは聴いていたんですか? 山賀 いや。でも不思議と縁があって、ガイナックスの最初の作品『王立宇宙軍~オネアミスの翼』のパイロット映像に使った音楽は、ワーグナーの『マイスタージンガー』の序曲でした。ガイナックスの最初の映像作品の音楽は、ワーグナーだったんです。だから原点に返ってきたという感じはあります。 ──ガイナックス作品というと、アニメにオペラやクラシック音楽を取り入れることが多いのですが、ガイナックスの作風として、そういったものを志向している部分はあるのでしょうか? 山賀 そういうものを志向している部分はあると思います。だから田辺さんも、直感的にそこを見抜いたんでしょうね。親和性はすごくあると思うし、僕自身もなんの抵抗感もなく仕事ができている。きっと周りは驚くと思うんだけど、自分の中では驚きはないんですよね。アニメを作る時も、いつもと同じアニメを作りたいという感覚はあまりなくて、毎回何か違うものを作ろうという意識があるんですが、その“ちょっと違うもの”の領域の中にオペラもあるのかも。
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山賀氏。
■高尚になった古いものを、本来のオタク的なものに戻していきたい ──今回、脚本も山賀さんご自身が書かれたそうですね。 山賀 これだけはやっておかないと、と思って。今までのワーグナーがとっつきにくかった理由として、まずドイツ語の翻訳が悪かったと思うんですよ。正確にドイツ語を一単語ごとに訳していくことに徹していて、結果的に妙に難しいことを言ってるような翻訳になっていたんです。それを全部取っ払って、アニメの脚本調に書き直しました(笑)。会話もアニメのキャラクターっぽくなっています。 ──(脚本を見て)すごいですね。まるでアニメの台本みたいなノリのセリフが飛び交っていますね(笑)。 山賀 でも、これはめちゃくちゃに書いているわけじゃなくて、ほぼドイツ語の直訳なんです。ちょっと付け足した部分もあるけど、ほぼそのまま。逆に今までの翻訳のほうが直訳であるがゆえに、ドイツ語の持っているリアルなイメージが出せていないと思うんです。そのイメージを出すために、まずドイツ語の勉強を始めてから翻訳作業に入りました。だから、こんなに時間がかかったんです。 ──今までちょっととっつきにくいと思っていた人にも分かりやすい、入門編のようなノリも今回の舞台にはありそうですね。 山賀 入門ではありません。これは行き着く先です(笑)。でもこっちのほうが、ドイツ語のニュアンスに近いと思うんですよね。あんまり一個一個の単語の正確さを拾っていくばかりだと、どうしても言葉を発した人物が本来感じた気分というのを、きちんと表現できないんじゃないかな。そう思ったので、一種超訳的な日本語で、『この人はこう言いたいんだよね』という感じで訳しました。ハリウッド映画の日本語字幕みたいなもんです。まあ、戸田奈津子さんよりは原語に近いとは思いますけど(笑)。そういう意味でいうと、オペラに格式があって分かりづらいというイメージを持っている方にはオススメです。 ──今回のオペラだけでなく、もともと格式のあったメインカルチャーがアニメなどのサブカルチャーとコラボすることで、若い世代にアピールする機会が増えている昨今ですが、山賀さんはそういうトレンドについてはどう思われますか? 山賀 うちは今、茶道の漫画をやっているので(週刊ヤングマガジン11月26日号より連載予定『さどんです』)、お茶の世界もちょっと勉強させていただいているんですけど、安土桃山時代には、今のオタク文化とたいして変わらないスタイルで茶道というものがあったのに、江戸時代に形式が決まっていく。その後、明治時代の富国強兵政策で文化をとにかくレベルの高いもの、崇高なものに変えていくという流れに取り込まれていきましたけど、そろそろその呪縛から解き放たれる時なのかなと思います。もともと絵画とか音楽って楽しむためのものなのに、周りがどんどん偉いものとして持ち上げいくうちに身動き取れなくなったっていうのが、音楽に限らず、芸術の今の姿だと思います。  でも、古典芸術って、もともとは現代のオタクが求めるものとそう変わらない世界なんです。だから、自分は古いものをぶっ壊しているという意識はないです。本来あるべき姿に戻していく。固まっていたものをフワフワっと柔らかくして、本来こうやって楽しむものでしょってところに落とし込んでいる意識はあります。お茶席だって、もともとは新しい器を手に入れたから見てくれって、自慢したくてやっているだけですから。 ──自慢のフィギュアの鑑賞会みたいなもんですね(笑)。 山賀 そう、鑑賞会です。それがいつの間にか鑑賞の時間とかタイミングとかも決まっていく。それも変な話なんですけど。 ──なるほど、では今回はあくまでも楽しいものを見せると。 山賀 そうです。逆に言うと、僕自身があまり芸術志向じゃないので、楽しくないんだったらやる気は起きないんです。何か格式があるとか崇高なものっていうんだったら、あまり近づかないですね。だからアニメをやっているんです。 (取材・文=有田シュン) ●ガイナックス オペラ with コンドルズ『ラインの黄金』 ワーグナー作曲「ニーベルングの指輪」序夜 【日程】2012年11月 23日(金)14時~/24日(土)13時~、18時~/25日(日)14時~ 【チケット】全席指定 S席 12,000円/ A席 10,000円/ B席 6,000円/ C席 4,000円 【ご予約・お問い合わせ】東京国際芸術協会 03-3809-9712(平日9:30~18:30) <http://tiaa-jp.com> 【会場】オペラ劇場あらかわバイロイト「サンパール荒川大ホール」(荒川区荒川1-1-1) 【ガイナックス・オペラ公式サイト】<http://www.gainax.co.jp/opera> 【Twitter】@GAINAX_OPERA 【主催】一般社団法人 東京国際芸術協会  【共催】荒川区  公益財団法人 荒川区芸術文化振興財団 【協賛】株式会社マエストロ 【協力】東京音楽学院

インディペンデント・ドリームをかなえた入江悠監督、“ネクスト・ステージ”からの眺めはどうですか?

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夢を追い掛けることのしんどさと諦めるやるせなさの両面を描いた
『SR』シリーズの入江悠監督。北関東三部作を完結させた今の心境を語った。
 日本のインディペンデント映画シーンに新しい伝説を刻み付けた入江悠監督の『SRサイタマノラッパー』シリーズ。映画監督になったもののブレイクできずにいる自分自身のもどかしさをラッパーの姿を借りてブチまけた同シリーズは、地方都市を舞台にしたリアルな青春映画として全国の映画館を熱狂の渦に巻き込んでいった。そして、ついに“SR北関東シリーズ”3部作の完結編となる『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』がDVDとしてリリースされる。DVDのリリース、それは入江監督の手から最終的に『SR』シリーズが離れていくことでもある。『SRサイタマノラッパー』(09)の公開以降、ゼロ年代を代表する最注目監督となった入江監督に、シリーズ最終作に込めた想い、さらに自主映画から商業路線へと活躍の場を広げつつある今の心境について語ってもらった。 ──2009年に池袋シネマ・ロサで封切られた『SRサイタマノラッパー』、続く『SRサイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』(10)、そして今年『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』が劇場公開され、北関東3部作が完結。3年間にわたる長い長い祭りが終わったような高揚感と寂しさを感じます。 入江悠監督(以下、入江) そうですねぇ、そう考えると切ないですね。確か3年前、『SRサイタマノラッパー』の公開前に日刊サイゾーで千夏役のみひろさんを取材してもらったんですよね(http://www.cyzo.com/2009/02/post_1488.html)。あの日は、『サイタマノラッパー』が初めてマスコミ取材された日だったんです。あれから、もう3年ですか。
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シリーズ第1作で夢を求めて東京へ出ていった
ブロッコリー農家出身のマイティ(奥野
瑛太)。東京で暴力事件を起こして、栃木
へと流れ着く。
──みひろさんがインタビューに答えているのを、すぐ横で入江監督は不安げに見守っていましたね。3年間は長かった? それともあっという間でした? 入江 やっぱり、この3年間は長かったです。『SR』シリーズと共に走り続けた3年間でした。北海道の夕張から始まって、舞台あいさつで全国をぐるっと回って、バンドのツアーみたいな感じでしたね。ボクの埼玉の実家にみんな泊まり込んで映画の撮影して、それから全国の劇場を回って。次第にメンバーの中から売れてくるヤツが現れて、でもまだ売れないヤツもいて……という。 ──個性の集合体であるバンドって、活動を続けて売れていくうちに方向性やスタンスの違いが生じてきて、解散を余儀なくされますもんね。 入江 そうなんです。ボクたちの場合、そのタイミングが、この『SR3』だったんだと思うんです。シリーズ3作を撮っているうちに、みんな事務所に所属するようになって、仕事がいろいろと回ってくるようになった。作曲家の岩崎太整は大根仁監督のテレビ版&劇場版『モテキ』に参加するようになり、活動の場所を広げていった。これ以上続けると、それまで自由にやってきた『SR』シリーズのスタッフやキャストの足かせになってしまうなと。もちろん、まだまだ『SR』シリーズとしてやりたいことはあるんですけど、インディペンデントの仲間内でやってきたという意味では、『SR3』がちょうどいい区切りになるなと思ったんです。じゃあ、『SR』シリーズでこれまでやり残したことを思い切って全部やってやろうという感じでしたね。 ──『SR1』『SR2』がコメディタッチだったのに対し、『SR3』は思いっきりシリアスな方向にハンドルを切っています。 入江 ボクが飽きっぽい性格だというのが大きいですね(笑)。前2作を同じようなパターンで作っていたので、次は変えたいなと思ったんです。それと『SR1』を作り始めたのは2007年頃だったんですが、その頃に比べて、社会状況がますます悪化していったことも影響を受けているでしょうね。リーマンショックがあり、東日本大震災があり……。 ──社会背景に加え、『SR』シリーズで注目を集めるようになった入江監督自身の立ち位置の変化もあると思います。『SR3』では2つのドラマが交差します。地元に残ってマイペースに自分たちの音楽を追い求めるイック(駒木根隆介)とトム(水澤紳吾)、東京に出て一発勝負してやろうという野心家のマイティ(奥野瑛太)。この相対する2つの立場は、インディペンデント映画シーンとよりメジャーな商業映画路線とのはざまで揺れ動いている、入江監督自身の葛藤なわけですね? 入江 そうなんです。地元に残ってダラダラしているイックとトム、東京に出たものの右往左往してしまうマイティ。どちらもボク自身の分身なんです。イックたちはマイペースで自分たちの好きな音楽を追い求めるけど、でもそこにはある種の限界があるわけです。かといって東京に乗り込んでみても、そこには別のしんどさが待っている。一体、どちらが正解なのか? 自分自身が分からなくなり、それで『SR3』を作ってみたんです。 ──自分では分からないことを、脚本に書き、キャラクターを実際に動かしてみることで解答を探し出そうとしたということですか?
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マイティの同棲相手は、福島出身のぽっちゃり
娘のカズミ(斉藤めぐみ)。入江監督は女優の
知名度よりも、リアリティーにこだわってオー
ディションを重ねた。
入江 その通りです。答えが決まっているものを撮っても、つまらないんです。ロケハンして、脚本を書いて、撮影をすることで、何が自分にとって正解なのかを探っていく。それがボクにとっての映画製作のいちばんのモチベーションなんです。はっきりした答えは出ないかもしれない。でも、ほんの少し、一条の光ぐらいは見えるんじゃないかと。結局、『SR3』を撮り終わっても、何が正解かは分からなかったんです。答えは、そう簡単には見つからないですね(苦笑)。 ■フェスシーンに2,000人を動員、15分間に及ぶ奇蹟の長回し! ──マイティは夢を抱いて上京したものの、昼は解体作業現場での肉体労働、夜は人気ヒップホップグループ“極悪鳥”のパシリというつらい生活。楽屋で暴力事件を起こしたことからマイティは栃木へと流れ、盗難車の転売や違法投棄などの裏ビジネスに従事するように。さらには裏ビジネスの胴元から、参加費をぼったくる詐欺まがいの音楽フェスの企画を命じられる。地方都市のシビアな状況が克明に描かれています。 入江 栃木をはじめ、地方都市は取材でずいぶん回りました。もちろん産廃シーンなどはデフォルメして描いていますが、奴隷同然に労働させられているなど、映画の世界に近いものを感じました。それに地方都市では、ああいう音楽フェスがよく開かれているんです。ヤンキー系の中古車の即売会を、だいたい兼ねているんです。 ──地方で仕事にありつくのは非常に困難。バイトすら、なかなか就くことができない。 入江 就職状況は、すごく厳しいですよね。正社員か正社員じゃないかの違いが、大きな格差を生んでいる。セーフティネットからこぼれ落ちると、もう戻れなくなってしまう。地元で公務員になったボクの同級生は悠々自適な生活を送っているけれど、就職の時点でフリーターの道を選んでしまった知り合いは30歳過ぎてキツい状況に追い込まれていますね。『SR1』を作り始めた頃より、ますます社会状況は厳しくなっている。正社員として就職できずに、一度フリーターになってしまうと、ずっと不安定な生活を送るしかない。敗者復活戦が一度もできない。多分、日本だけじゃなくて、海外でも同じようなことになっていると思うんですけど。 ──そんなマイティの苦悩を知らずに、相変わらず能天気なデブニートのイックが相棒トムと共に栃木へ。イックたちが栃木のヒップホップグループ・征夷大将軍と合流する餃子屋の店長は、名作『いつか読書する日』(05)の緒方明監督。
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『SR』シリーズの顔といえば、デブニート
のイック(駒木根隆介)と相棒トム(水澤
紳吾)。ライブデビューを夢見る2人は皮肉
な形で旧友マイティと再会する。
入江 『SR1』でボクは映画監督協会新人賞を頂いたんですが、緒方さんも『独立少年合唱団』(00)で同じ賞をもらっていて、そういう縁で緒方さんは何かとボクのことを気に掛けてくれていたんです。餃子屋の大将らしいドッシリした存在感のある役者を探したんですが、最近の役者さんはスラッとしたタイプの人が多くて見つからなくて。それで緒方さんにお願いしたところ、衣装とかも自前で準備して参加してくれたんです。 ──緒方監督は、インディペンデント映画史上最高の伝説となっている石井聰亙(現・石井岳龍)監督の『爆裂都市』(82)に助監督として参加したんですよね。あの映画、飲まず食わずの殺伐とした撮影現場だったと聞いています。 入江 えぇ、『爆裂都市』のあのモブシーンを「どうやって撮ったんですか?」と緒方さんに尋ねたんですが、「大変だぞ」「二度とやりたくねぇ」と言ったきり。フェスシーンについての具体的なアドバイスはもらえませんでした(苦笑)。でも、緒方さんはインディペンデント映画出身者だし、すごく日本映画を観ている人。若いスタッフやキャストにとって、刺激的で面白い存在だったと思います。いとうせいこうさんも『SR』シリーズのファンだということで出演してもらいましたけど、フェスシーンじゃなくて序盤の解体作業シーンでマイティを怒る作業員役。顔はほぼ切れてて、上から音楽がかぶって声も聞こえないので、背中だけの出演になっているんです(笑)。 ──贅沢なカメオ出演ですね。あの餃子屋のシーンで、「腐れマンコ野郎!」をはじめ放送禁止用語が飛び交いますね。あれは、「テレビ放映は考えていない。これは劇場用映画だ」という入江監督としての主張でしょうか? 入江 あぁ、確かに言ってますね(笑)。序盤のラップバトルのシーンでも言語障害うんぬんと触れていて、マスコミ関係の仕事をしているキャストの方が「大丈夫?」と心配してくれました。う~ん、なんだったんでしょうね。確か、『SR3』を撮る前にテレビドラマをちょっと撮ったんですけど、そのとき規制があって、使えない台詞があったんです。無意識のうちに、欲求不満が自分の中にたまっていたのかもしれないですね。まぁ、詳しいことは忘れましたけど、『SR』シリーズはせっかくインディペンデント映画として撮るんだから、テレビの制約に縛られずに自由にやろうということだったと思います。テレビ放映されるかどうかより、まず劇場でお客さんに楽しんでもらうことがいちばんですからね。 ──そしてクライマックスのフェス場面は、インディペンデント映画とは思えない、エキストラ2,000人を動員した大迫力シーンに。
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『SR』シリーズは完結したが、「イックと同様、マイティもボクの分身。
ボクがその気になる時がくれば、またマイティが活動を再開することがあるかも」と話す。
入江 『SR1』『SR2』とシリーズとしてやってきたことで、応援してくれる人たちが多かったんです。今までシリーズを観てくれたファンたちがTwitterなどでの呼び掛けに応じて、北海道や九州からも集まってくれた。自分たちでホテルを予約までして。ボランティアでスタッフを務めてくれた人も多かったんですが、2カ月前から準備していたフェスの会場が撮影前日になって豪雨が直撃して、せっかく用意したセットが吹き飛ばされたりして、大変でした。フェスシーンの長回しは、2日間にわたって13テイクぐらい撮ったんです。事前にリハーサルはしっかりしていたんですが、エキストラの動きが入ったことで、カメラワークが本当に難しかった。マイティ役の奥野くんも1カットの中でやることが多すぎて、テンパってました。でも、その緊張感が追い詰められたマイティの心境と重なって良かったんじゃないかな(笑)。あの長回しシーンは、もう一度やれと言われても絶対無理でしょうね。 ──SHO-GUNGとしてライブデビューすることが夢だったイックとトムは、初めてちゃんとした観客がいるステージに。『SR』シリーズのファンにとっては号泣ものの名場面ですが、ステージを正面から撮ったライブ映像は存在しないんですか? 入江 あぁ、それはないですね。DVDの特典によく入っている別アングル、ボクは嫌いなんです。でもメイキング映像を観てもらえば、フェスシーンがどのように撮影されたのか、会場の雰囲気も伝わってくると思いますので、DVDに収録してある特典映像は観てほしいですね。 ──『SR3』の撮影最終日のラストカットは、どのシーンになるんでしょうか? 入江 映画での最後のシーンが、そのままラストカットになってます。撮り終わった瞬間は「やり切ったな」という感慨よりは、本当にファンへの感謝の気持ちでいっぱいでした。彼らの声援があったから『SR』シリーズを続けることができ、特に『SR3』はファンのみなさんの後押しがなければ絶対に完成しませんでしたから。撮影が終わり、打ち上げも済んで、各地から集まったボランティアスタッフたちが帰っていくのを見送ったんですけど、ひとりの方が「いい夏を過ごさせてもらいました。これで自分にも運が回ってくるといいなぁ」と言い残して去っていったのが印象に残っていますね。『SR』シリーズのファンだからSHO-GUNGのライブシーンは誰よりも生で観たかったはずなのに、スタッフの一員としてステージに背を向けてロケ車の誘導などやってくれていたんです。メイキング映像を編集していて、ボクも泣けてきました。 ■人生を味わった上で、まだ肉を叩き続ける『ロッキー・ザ・ファイナル』がいい ──『SR』シリーズを撮り終え、今春はテレビ東京系の深夜ドラマ『クローバー』全12話の演出を担当。1クール全話をひとりの監督が撮るのはまれなケースです。 入江 連続ドラマは普通、3~4人で撮るそうですね。知らなかった(苦笑)。大根監督はひとりで『モテキ』など撮っているから、自分もできるだろうと思ってやったら、すっごく大変でした。後から聞いたんですが、大根監督は『モテキ』のときは予算も自分の会社で持ち出しているそうですね。限られた予算とスケジュールの中で撮るのは、キツかった。もちろん若いキャストを中心にしたアクションものだったので、自由があり楽しくもありました。どの作品でもそうですけど、いろいろと学ぶことはありましたね。 ──入江監督に聞いてみたいことがあるんです。『SR』シリーズって、日本におけるインディペンデント映画版『ロッキー』(77)だと思うんです。シルベスター・スタローンは脚本&主演作『ロッキー』で成功を収め、ハリウッドのスターダムへと駆け上がっていった。日本でインディペンデント・ドリームをかなえた入江監督は、“ネクスト・ステージ”からどんな風景を眺めているのかなぁと。 入江 『SR』は『ロッキー』シリーズですか……。いいですね、『ロッキー・ザ・ファイナル』(07)みたいにジジイになっても、まだ肉を叩いてるぞと。いろいろやったけど、結局そこに戻るのかと(笑)。ボクも『エクスペンダブルズ』(10)みたいな、思いっきりバカな映画を撮ってみたいですね。『SR』シリーズとは別にテレビドラマは何本か撮りましたけど、テレビドラマの現場は予算も時間の余裕もなく、インディペンデント映画の現場とほとんど変わらないんです。それに第一、ボクはまだメジャー映画を1本も撮ってません(苦笑)。「ネクスト・ステージからの眺めは?」と聞かれても、まだ全然見えてない状況なんです。映画館でもファンの方に「これからどうするんですか?」と尋ねられるけど、逆にボクが「どうすればいいと思います?」と聞きたいですね。実は『クローバー』などを撮っていた頃、あまりに忙しくて、他のオファーを断ってしまったんです。ひとつ断ってしまったら、他のオファーも断らないといけなくなってしまって。先方は驚いてました。「なんでこっちの仕事を断って、深夜ドラマをひとりでやってるの」と不思議に思われたみたいです。あまり断っていたら、仕事がなくなってしまい、また生活が厳しいんですよ(苦笑)。 ──急に忙しくなったため、どの仕事を受けるか断るかという仕事選びの基準が定まってないんですね? 入江 そうなんです。他の監督のみなさんはどうやってるんでしょうね? 瀬々敬久監督は『感染列島』(09)などのメジャー作品を撮ったかと思えば、その直後に『ヘヴンズ ストーリー』(10)みたいなインディペンデント映画を撮ってますよね。廣木隆一監督もインディペンデント映画出身で、『余命1ヶ月の花嫁』(09)みたいなメジャー作品も撮っている。できれば、そういう先輩方に一度じっくりお話を聞きたいなと思ってるところなんです。脚本は、いくつか書いているところです。『SR3』を撮り終えてから1年たってしまったので、早く次の映画を撮りたいですね。 ──メジャー映画では、『SR』シリーズのような1シーン1カットの長回しは難しいですよね。どういうスタイルでメジャーシーンに挑んでいくのか、気になります。 入江 商業映画では、長回しは基本無理ですね。撮影スケジュールが決まっているから、じっくり時間をかけて、撮り直しながら1シーン1カットずつ撮ることはできないでしょう。自分のスタイルについては迷走中です(苦笑)。でもボクとしては、“入江スタイル”とかは、なくて構わないと思っているんです。極論としては「すっげぇ面白い映画があるぞ」と思ってもらえれば、それでいいんです。別に入江スタイルでなくてもいい。内容に手法が合っていれば、トニー・スコット監督みたいな短いカット割りでもいいと思ってます。長回しに対するこだわりはないんです。あるとすれば、面白い映画が撮りたいということですね。 ──では、最後に、『SR』シリーズのファンにひと言お願いします! 入江 ほんと『SR』シリーズは、ファンのみなさんのおかげで続けることのできた作品です。ファンの熱意で作られた『SR』シリーズの熱気が、また別の方に伝わるといいなと思ってます。『SR3』は、DVDのメイキング映像もぜひ観てください。 (取材・文=長野辰次) ●『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』 脚本・編集・監督/入江悠 出演/奥野瑛太、駒木根隆介、水澤紳吾、斉藤めぐみ、北村昭博、永澤俊矢、ガンビーノ小林、美保純 11月21日(水)DVDリリース。発売元/アミューズソフト、メモリーテック 販売元/アミューズソフト DVD特典映像には入江監督編集による激闘メイキング、怒涛の舞台挨拶、極悪鳥PV、ムジコロジー体操(入江悠監督)、特報・予告編を収録。価格/3990円(税込) <http://sr-movie.com> ※ 11月22日(木)には、タワーレコード新宿7Fイベントスペースにて、DVD発売記念イベントを19時30分より開催。入江監督、奥野瑛太(マイティ)、駒木根隆介(イック)、水澤紳吾(トム)、上鈴木伯周(TKD先輩)らが出演予定。 ●いりえ・ゆう 1979年神奈川県生まれ、埼玉県育ち。日本大学芸術学部映画学科卒業。『ジャポニカ・ウイルス』(06)で監督デビューを果たすが、地方の映画祭で上映した際に質疑応答の場で観客から吊るし上げ状態となり、このときの体験が『SRサイタマノラッパー』(09)での公民館ライブとして生かされている。『SRサイタマノラッパー』は「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2009」オフシアター部門グランプリ、「富川国際ファンタスティック映画祭」最優秀アジア映画賞を受賞。池袋シネマ・ロサで封切られ、インディペンデント映画として異例の大ロングラン快進撃を果たした。続いて『SRサイタマノラッパー2女子ラッパー☆傷だらけのライム』(10)、二階堂ふみらをキャスティングした『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』(11)と立て続けに劇場公開。11年にオンエアされたWOWOWドラマ『同期』も好評を博した。12年4~6月に放映された青春ドラマ『クローバー』(テレビ東京系)が現在DVDリリース中。WOWOWで13年放映予定の『ネオ・ウルトラQ』を監督することが発表されている。また、10月から始まったTOKYO FMのトーク番組『入江悠の追い越し車線で失礼します』(毎週日曜20時30分~)のパーソナリティーを務めている。

『ベストヒット歌謡祭』をうらやむ、“利権まみれ”の『レコ大』に溺れたTBSの苦悩

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読売テレビ開局55年記念番組『ベストヒット
歌謡祭2012』
 読売テレビ開局55年記念番組『ベストヒット歌謡祭2012』が、今月22日に日本テレビ系列で生放送される。  出演アーティストはAKB48やEXILE、きゃりーぱみゅぱみゅ、コブクロ、森高千里ら20組。会場には約6,000人が招待され、司会は宮根誠司、ウエンツ瑛士、西山茉希の3人が4年連続で務める。同時に今年から賞レースを取りやめ、音楽そのものにスポットを当てることが発表された。  業界関係者は「経費削減とともに、旬なアーティストを選びたいということ。賞レースとなると、どうしてもレコード会社やプロダクションの意向が働いてしまいますからね」と話す。  この読売テレビの“転換”をうらめしそうな目で眺めているのが、『輝く!日本レコード大賞』を放送するTBSだ。同局は12月30日に恒例の『レコ大』授賞式を生中継するが、局員いわく、 「10年以上前は『レコ大』も音楽業界に燦然と輝く名誉ある賞でしたが、近年はその威光も薄れてきている。予算も年々削られ、放送を重ねるたびに赤字額が増えている。局内には“不良債権”呼ばわりする者もいますよ」  出演アーティストのギャラや会場使用料だけでなく「大勢いるレコ大審査員にも1人当たり20万円以上が支払われている。受賞アーティストに贈るトロフィーだけでも、毎年200万円以上のコストがかかる」(同)という。  それでもレコ大は“聖域”であり、打ち切り論は皆無。それならば……と、局内からは読売テレビのように「賞レースをやめればいい」という声が上がっているという。とはいえ、なかなか簡単にはいかない。 「レコ大を仕切っている芸能界のドンが、“レコ大利権”を手放すわけがない。毎年、賞レースに絡み、どれだけのお金がレコード会社やアーティストの事務所からドンのところに流れているか。審査員の人数を減らしたり、会場のグレードを下げることはあっても、賞レースがなくなることはありえませんよ」(音楽関係者)  いっそのことリアルタイムで視聴者が選ぶ形にすれば、公平かつ大幅なコスト削減になると思うのだが……。

「CMは絶望的、紅白も微妙に……」堂々不倫宣言した浜崎あゆみの大誤算

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『LOVE』(avex trax)
「マロちゃんとは真剣にお付き合いをしています」  有料会員制サイト「TeamAyu」でそうつぶやいた浜崎あゆみ。お相手は2007年からバックダンサーを務めている“マロ”こと内山麿我(まろか)。2人の熱愛は女性誌で報じられ「隠し事をしているのはもう嫌」と堂々の交際宣言となったわけだが、問題はこの“マロ”が既婚者で、現在妻と離婚裁判の真っ最中ということだ。  妻はRYONRYON(りょんりょん)という有名なダンサー兼振付師で、倖田來未や安室奈美恵、後藤真希、モー娘らを担当し、07年3月には自ら若手ダンサーの育成やマネジメントを行う会社を設立している。 「その彼女とマロは、昨年2月から離婚訴訟中です。婿養子のマロが離婚を求め、一審は勝訴。しかし、10月31日に妻が控訴し、ドロ沼化している。法廷では、浜崎さんの名前も飛び交っています」とはワイドショー関係者。  あゆにしてみれば熱狂的なファンに「どんな困難があっても“愛”の力で乗り越えられる」という新たなスタイルを発信したつもりなのかもしれないが、一般的に見れば、あゆの発言はただの「不倫・略奪宣言」にほかならない。  芸能界では石田純一が過去「不倫は文化」と語り、大バッシングを受けた。 「頭が痛いのはエイベックスですよ。当初、マスコミの問い合わせに『恋人ではありません』と否定していたのに、あゆ本人が夜になって認めちゃったんですから。彼女のために否定した同社社員は『もう勝手にしろよ!』と言いたいところでしょう」(音楽関係者)  現在のあゆは“悦状態”に入っていて、周囲が見えていないのかもしれないが、今後仕事面で影響が出ることは必至。スポーツ紙記者は「CMスポンサーは軒並みそっぽを向くでしょうね。“当確”といわれている年末の『紅白歌合戦』も、もしかしたらわかりませんよ」と指摘する。よかれと思ってしたことが、結果的に自分の首を絞めることになってしまったようだ。

“肉食女子”仲里依紗、Twitter閉鎖騒動の真相は「堂々とデートできないから!?」

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『anno1989』(ワニブックス)
 俳優・浅野忠信と別れたばかりの女優・仲里依紗に、早くも新恋人が発覚した。16日発売の写真週刊誌「FRIDAY」(講談社)が報じたもので、お相手は俳優の中尾明慶。同誌によると、今月上旬の深夜、都内の和食料理店で仲間と食事をした後、仲の車に中尾が乗り込み、仲の自宅マンションに入っていったという。  2人は8月下旬から放送されたNHKドラマ『つるかめ助産院』で共演。約3カ月の沖縄ロケ中に交際に発展したとされる。中尾は7月、映画イベントで、当時付き合っていた女性との破局を告白。一方の仲も、10月下旬に浅野との破局が明らかになっていた。 「仲さんは肉食系女子で有名ですよ。気に入った男性には積極的にアプローチ。役者仲間の間では、過去に『あいつは結構軽い』とささやかれたこともあったほど(笑)」(芸能プロ関係者)  人気女優だけに所属事務所から行動を制限されることもあるが、仲はお構いなしで、むしろ「堂々としていたい」と考えるタイプ。先月28日に、仲が自身のTwitterを閉鎖すると騒ぎだしたのもそのためだ。  仲は同日午前に「Twitterで目撃情報とかあげていろいろ言われるのがすごくストレスだからTwitterやめよーかな。」とつぶやき。その2日前にも「芸能人ってとーーーっても大変だーーーーぴーーーーーん!!!」と意味深にツイートしていた。  舞台裏を知る人物は「当時、マスコミの間では浅野さんとの破局が報じられていましたが、仲さんにしてみれば、とっくに終わった恋。彼女がイライラしていたのは、中尾さんとのデートが邪魔されたこと。実際、複数の週刊誌が仲さんに張り付いていましたし、そのことは彼女も察知していた。一般人の目撃ツイートにブチ切れたのは、それを頼りにマスコミに追い掛け回されるのが嫌だったからですよ」と明かす。  交際が公になったことで、仲は逆に堂々とデートできるが、一部では「彼女は熱しやすく冷めやすい」との情報も。今後も“肉食系”の仲から目が離せなさそうだ。

「市民球団」なんて真っ赤なウソ!? “最弱キャラ”に甘んじる、広島カープ球団フロントを徹底糾弾

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『「マツダ商店(広島東洋カープ)」
はなぜ赤字にならないのか?』
(文工舎)
 ペナントレースが終了し、今年も4位、Bクラスに甘んじた。21世紀に入って、12球団の中で唯一、Aクラス入りを果たしていない広島東洋カープが、最後に優勝の美酒を浴びたのは山本浩二監督時代の1991年にまでさかのぼる。それ以来、毎年成績は下がり続け、今では不甲斐ない成績が当然のものとなってしまった。  もはや、“最弱キャラ”が板につき、それが魅力となってしまった感もある。人気バラエティ番組『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「広島カープ芸人」回では、チュートリアル徳井、アンガールズ、ロザン宇治原、有吉弘行などが「マスコットが気持ち悪い」「野次を飛ばしやすい」などと、カープをネタに盛り上がっていた。  もちろん、勝つことだけがスポーツを応援する楽しみではない。だが、ファンならば、やはり応援するチームが勝利する姿を見たいものだろう。広島市在住の作家・堀治喜氏の著作『「マツダ商店(広島東洋カープ)」はなぜ赤字にならないのか?』(文工舎)は、広島不調の原因として、オーナーである松田元氏を痛烈に批判する一冊だ。  タイトル通り、万年Bクラスであるにもかかわらず、カープの経営は赤字になることはない。それどころか、40年にわたって、黒字を出し続ける優良経営だ。有力な親会社があるわけではないカープでは、他球団と比較すると選手の年俸は安く、1億円プレイヤーは数えるほど。かつては名物の“たる募金”を募りながら、球団の運営をやりくりするほどだった。そんな姿勢が許されてきたのが、広島に貼られた「市民球団」という免罪符だ。しかし、本書はそのイメージを打ち破る。  創設時こそ本来の意味での「市民球団」であったものの、時を経るにつれて、その実態は形骸化。現在では、球団株式のほとんどは松田元を中心とする松田家によって保有されている。3代目オーナーである松田恒次は、経営危機に陥っていたカープを救うために、東洋工業に援助を依頼。当初の約束では「球団を私物化することはない、一時預かるだけだ」といって株を引き取ったものの、恒次の後を継いだ4代目オーナー・松田耕平は球団株を松田家に集約、その約束は果たされないまま今に続いている。  そして、現在のオーナーを務める5代目・松田元氏が2002年に球団を譲り受けると、広島の転落劇は決定的なものとなり、Bクラスが指定席となっていった。  だが、それでもカープの人気は衰えることはなく、2011年には158万人もの来場客を維持している。その理由を、堀氏は、一部メディアの報道姿勢に問う。球団批判は行われることはなく、ほとんどがカープに対して好意的なものばかり。時折、批判が行われたとしても、本質的な球団トップの経営姿勢にまで踏み込まれることはない。メディアとのなれ合いのもとに、カープはぬくぬくと“市民球団”の甘い汁を吸い続けた。その結果、オーナー自らが「勝率5割を目指す」と、最弱チームらしい低い目標を語り、万年Bクラスに甘んじても大規模な戦力補強がなされることはない。観客が入り、興行が成立するのであれば、年俸の高いスター選手を抱える必要はないのだ。経営術としては一流なのかもしれないが、チームは弱体化の一途をたどる。堀氏の言うとおり、「勝つ気がない」と勘繰られてもおかしくない。  帝京大経済学部教授・大坪正則氏も「奇想天外な提案」と前置きしながらも、松田家がオーナーを務める弊害を説き、「市民の、市民による、市民のための」球団としてNPO法人による運営を提唱。誰もが、このままではいけないと気づきはじめているのだ(http://www.sankeibiz.jp/business/news/121114/bsg1211140502003-n1.htm)。  シーズン終了後に行われたドラフト会議でカープは、龍谷大平安高の高橋大樹や二松学舎大付高の鈴木誠也など野手を指名。また、助っ人外国人としてメッツに所属していたフレッド・ルイス外野手の獲得に乗り出している。来年こそは、ネックとなっている貧打を克服したい考えだ。  どんなに負け続けても愛され、入場客を獲得し続ける広島東洋カープは、スポーツ経営にとって、稀にみる理想の球団だろう。しかし、その負けが経営陣の怠慢と保身、そして金儲け主義によって続いていると知れば、ファンたちはいったいどんな顔をするだろうか? 「まな板の鯉」ではなく「鯉の滝登り」を見るために必要なのは、選手のトレードや補強ではなく、球団トップの退場なのかもしれない。 ●ほり・はるよし 1953年生まれ、作家。主な著書に『衣笠祥雄はなぜ監督になれないのか?』(洋泉社)、『ダメージ―復活に賭けたプロ野球トレーナーの戦い』(現代書館)、『カープ猛者列伝』(文工舎)など。

酢飯にお肉をオン! ボリューム満点の「ダブルオニオンスライス」

IMGP7323.jpg 料理の数だけダジャレがある――。ダジャレをこよなく愛する男が考案する、笑えるおいしいレシピ。  「ただいまー。友達からいいものもらってきたよ」  「あら、何かしら。リンゴ? ナシ?」  「ブブー。タマネギでした」  「なーんだ、タマネギか」 IMGP7278.jpg  「ということで、今日の夕ご飯は、オニオンスライスです!」  「またずいぶん簡単なメニューね」  「タマネギを薄くスライスして、はい、できあがり! あー、目が痛い」 IMGP7291.jpg  「ちょっと、まさか夕飯これだけじゃないでしょうね」  「大丈夫! 俺の作るオニオンスライスは、ダブルなオニオンスライスだから。ここで酢飯を用意します」  「え、酢飯?」 IMGP7304.jpg  「続きまして、豚の薄切り肉をシャブシャブにして、ポン酢と絡めて酢飯に乗せます」  「へー、酢飯と豚シャブか。わかった、これにさっきのオニオンスライスを乗せて食べるのね!」 IMGP7320.jpg  「正解! 酢飯にお肉をオン。そこにオニオンスライスを乗せる。ほら、ダブルオニオンスライスだ。」  「え、ダブルってどういうこと?」   「酢飯を中途半端に英語で言うと、酢ライス。そこにお肉をオン。ということは……」 男&女 「お肉をオンした酢ライス、略してオニオンスライス!」  「そこにオニオンスライスを乗せるから、ダブルオニオンスライスなのね! 素敵!」  「そういうこと。好みでポン酢、マヨネーズ、鰹節なんかを掛けて召し上がれ」 IMGP7335.jpg ■材料  ・タマネギ ・酢飯 ・豚薄切り肉 ・ポン酢 ・お好みでマヨネーズ、鰹節など ■作り方 1、タマネギをなるべく薄切りにして、オニオンスライスを作る。 2、ご飯にすしのこか寿司酢を加えて、酢飯を用意する。 3、豚薄切り肉をサッと茹でて、豚シャブをつくり、ポン酢と和えておく。 4、酢飯に豚シャブ、オニオンスライスを乗せる。 5、お好みでポン酢、マヨネーズ、鰹節などをトッピング。 ■玉置メモ ・お肉を使ったチラシ寿司というところでしょうか。辛いタマネギが苦手な人は、薄切りにしたタマネギを酢水にさらして、よく絞ってから乗せてください。 ・酢飯と豚シャブとタマネギという、めったに出会わない組み合わせをポン酢がうまく包み込んでくれます。そこにマヨネーズと鰹節がいいアシストをしてくれるのです。辛党の人は七味唐辛子を振ってもいいですね。あ、刻みノリを散らしてもいいかも。ああ、またお腹が空いてきました。 ・これに合うお酒は、もちろん沖縄のオニオンビール、じゃなくてオリオンビールですかね。 (文=玉置豊) 「男のダジャレレシピ」過去記事を読む

「パンツの中にも手を入れて……」報道各社が自主規制したNHK森本アナの卑劣な犯行手口

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 NHK『おはよう日本』を担当する同局アナウンサー・森本健成容疑者が15日、電車内で女性の胸を触るなどして強制わいせつ容疑で現行犯逮捕されていたこよがわかった。警視庁などによると、同容疑者は14日午後7時45分ごろ、東急田園都市線の渋谷駅から二子玉川駅に着くまでの約11分間、23歳の女子大生の胸を触っていたという。  当時、車内は大混雑しており、身動きも取れない状態で、女子大生は「大声を出せず、逃げることもできなかった」などと話している。  逮捕当初、森本容疑者は「酒に酔って記憶がない。そのようなことはしていない」と否認していたが、16日に容疑を認め、その後、処分保留で釈放された。同容疑者は「大変なことをした。これからどうなるのか」と話しているという。  局内では“人格者”で有名だった同容疑者の逮捕に、一時は「誤認逮捕」や「冤罪」を指摘する声も上がっていたが、取材を進めると、およそ「酒に酔っていた」では済まされない卑劣な犯行手口が浮かび上がってきた。  社会部記者は「痴漢行為ですが、迷惑防止条例ではなく強制わいせつ罪が適用されたのは、当局が相当悪質と判断したため。被害女性の真正面にいた同容疑者が満員電車をいいことに、女性に接近し、右手で胸を11分間揉みしだいたことは報じられていますが、実は下半身にも手を伸ばしているんです。それもパンツの中にまで。このことは各テレビ局もつかんでいますが、放送を自粛しました」と話す。  被害女性の怒りは今もなお凄まじく「最初否認していた森本容疑者が“オチた”のも、被害女性が警察に事件の詳細を事細かに話していたから」(同)という。森本容疑者には、局内では決して見せない“裏の顔”があったようだ。

「ロンブー亮は“できる奴”」『リストラ芸人』Hi-Hiが放り込んだ18年の道程

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左から上田浩二郎、岩崎 一則
 昨年末、『THE MANZAI 2011』(フジテレビ系)の決勝で強烈なインパクトを残し、その後は順調に活躍しているHi-Hiの2人。そんなHi-Hiでボケを担当している上田浩二郎の初めての著書『リストラ芸人』(講談社)が9月13日に出版された。彼らの18年にわたる芸人人生のすべてが赤裸々につづられているこの本の発売を記念して、Hi-Hiの2人にインタビューを行った。彼らはいかにして今の地位に上り詰めたのか? ――この本を読んだ周りの人からの評判はいかがですか? 上田 芸人さんはみんな「面白かった」って言ってくれるので、うれしいですね。僕らがデビューした当時のことを知ってる人も、若い人も、どっちもそうやって言ってくれるから……これは最高の本ですね。 岩崎 自分で言うなよ! ――『THE MANZAI 2011』の決勝で、上田さんが言った「オマエの18年間、放り込んでこい!」という有名なセリフに関しても、その裏話が語られていましたね。
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上田 あのときは、決勝で最終4組まで残っていて。その中でトップでネタをやったので、いい意味で開き直りましたね。こいつがネタをとばしたんですけど、いつもだったら「何とばしてるんだよ!」って言うところを、「なに真剣にやってんだよ」っていう気持ちで楽しめたというか。何をちょっとちゃんとやろうとしてんだ、って。それであのフレーズが出てきたんです。 ――『THE MANZAI』以降はテレビの仕事も増えて、昔一緒に劇場に出ていた芸人さんたちと共演することも多かったそうですね。 上田 そうですね。僕たちが吉本にいた頃の後輩だった庄司(品川庄司)がゲストに来てくれたりとか、そういうのは楽しいですよね。あと、オードリーとか。オードリーと一緒にテレビに出ると、昔のライブに出ていたときの感覚に戻って、ただの悪ふざけになっちゃうんですけどね。 ――同期のロンドンブーツ1号2号に関しては、先日行われたトークライブのゲストとして田村亮さんが出演されたそうですね。 上田 そうなんですよ。トークライブに、(田村)淳に来てくれとは言えませんでしたけど、なんか亮には言えましたね(笑)。 ――亮さんも、実は結構お笑いに対して熱い人だったそうですが、亮さんのそういう一面って、世間ではあんまり知られてないですよね。 岩崎 なんか、「できない人」みたいに思われてますよね。 上田 でも、俺らは昔から「できる亮」しか、知らないからね。だから、いまだに作戦じゃないかと思ってるんですよ。「お前、作戦で黙ってるんだろ?」って、ずっと聞きたかったんです。あいつ、昔よくそういうことばかり言ってましたから。 ――例えば、どういうことですか? 上田 「いま素人をイジって売れてる人たちがいない」とか。僕らが若手の頃って、ウッチャンナンチャンさんとかとんねるずさんとかが、ドラマのパロディコントをテレビでやっていたんですよ。そういう時代だったので、素人を番組に出してイジる人が出てきていないと。そこから2~3カ月後に、あいつらの出てる番組で素人イジりの「BINTA」っていう企画が始まったんで、こいつ、すげえなって思いましたね。 ――オーディションで初めて見たときからロンブーの2人の印象は強烈だったそうですね。 上田 はい、芸人が大勢並んで、順番にネタをやっていくみたいなオーディションで、僕らの前の前ぐらいがロンブーだったんですけど、鮮明に覚えてますね。いい意味で威圧感というか、オーラがありました。 岩崎 前のめりな感じが、すごく伝わってきたんですよ。それに圧倒されたというか。
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上田 その前にあいつら、路上とかでもお笑いをやってたから、自信があったんでしょうね。路上で150人とか集めていて、劇場に出始めの頃から、もうキャーキャー言われてましたから。路上でやってたときのファン150人を劇場に連れてくるんですよ。そうすると、新人がたくさん出ている中で、あいつらが出て行くときだけ「キャー!」ってなるじゃないですか。それを見た吉本の上の人が「あいつら、なんで初舞台なのにキャーキャー言われてるんだ?」って思うはずだと。それも、亮が作戦でやってたらしいんですよ。そうじゃなかったら路上でやってた意味がないじゃん、って。常にそういう作戦を考えるやつだったんです。 ――その頃、Hi-Hiは自分たちの笑いに自信が持てなくて、低迷していたそうですね。 上田 低迷どころか、楽屋にも入れませんでしたから。面白いやつはいっぱいいるし、みんなに萎縮しちゃって。ちょうど松本人志さんの『遺書』(朝日新聞社)が出たときで、それを見てみんなが影響を受けて、とんがってる時代だったんですよ。先輩とかも本当に怖かったんです。ネタ合わせなんて誰もしてなかったもんね。なんか、ブラッと舞台に出て立ち話して笑い取って帰るのが格好いい、みたいな時代で。みんなすげえな、と思ってましたね。そんな時代で、俺らはみんなにバレないようにそっと屋上でネタ合わせやってた。なあ? 岩崎 あの当時、僕にいたっては、何をしていいのかさえわかんなくて……。 上田 お前は今もわかってないだろ? そこはブレずに。 岩崎 いや、「ブレずに」じゃないよ! 今もそうですけど、よりわかんなかったというか、ずっと棒立ちみたいな感じでしたね。 ――その後、紆余曲折を経て、1~2年前に漫才のスタイルをガラッと変えて、すべてをアドリブに近い形で構成するようになったそうですが、きっかけはなんだったんですか? 上田 僕が飲み会とかで思いついたことを適当にワーッと言ってると、ものすごいウケるんですよ。芸人仲間もみんな面白いって言ってくれて。流れ星の瀧上とかにも「これを舞台でやったらいいじゃないですか」って言われたり。それでちょっとやってみようかって思って、ある日舞台でやってみたら、自分でもやりやすいんですよね。僕の人間性がそういう感じなので、のびのびできるというか。 岩崎 それで明らかにウケるようになったんですよ。 ――最後に、この本はどういう人に読んでほしいですか? 上田 何していいかわかんなくてボーッと大学生やってる人とか、悩んでる人とかに読んでほしいですよね。いろんな人に読んでいただいて、僕らの人間性を知ってもらえたら、Hi-Hiっていうコンビの見方も変わると思うんで。読んでほしくないのは、超面白いやつですね。これ読んで芸人になろうと思われると敵が増えるんで。つまんないやつには、どんどん読んでほしいです(笑)。 (取材・文=ラリー遠田)

生まれ変わったAKB48が目指す新たな地平──再組閣・3代目チームA・K・B公演を徹底検証

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■“再組閣”に見る「戦略的人的資源管理」と「スーパーローテート」  “再組閣”として、3代目チーム体制が12年11月から始動したAKB48。新旧世代が切磋琢磨しあい、痛みを伴う革命を断行したAKB48の現状を評論家・本城零次が分析する。  2005年12月の活動開始から、およそ2年ごとにチームを入れ替え、新たな仲間と刺激しあうことで、メンバー各自の成長を促してきたAKB48。初代チームA・Kをシャッフルした07年7月~08年4月のひまわり組、09年に発表した“組閣”による10年からの2代目チーム体制での活動。さらに今回、チームを入れ替え、“再組閣”を行い、3代目となるチーム体制が12年11月から始動した。しかも今回は、4チーム制から3チームに移行することで、各チームが既定の16人から22~23人となり、事実上“ベンチ入り”するメンバーが出現。  チームの中でいつの間にか生まれていた役割分担をリセットし、新たな環境に身を投じることで進化の方向性を探るチームシャッフル。企業でも人事異動や人事交流を通して、戦略的人的資源管理を行うように、今回AKB48は、姉妹グループを越えて、さらに活発に血を入れ替えていこうという痛みを伴う改革路線に舵を切った。  多くの企業でも人事異動、配置転換は行われるが、それを行う理由のひとつには、別の部署でも周囲に溶け込み、成果を出す人材を発掘することで、その人材が珠であるか、石であるかを見定める作業でもあるといえるだろう。AKB48には、チームAが王道アイドル、チームKが体育会系、チームBがおもちゃ箱のようになんでもありの妹系アイドルのようなチームカラーがある。今回の再組閣を通して、3チームすべてを経験したメンバーも9人と多い。あたかもそれは、「それぞれのチームの色に染まりながら、自分だけの色を見つけろ!」というメッセージかのようだ。例えるなら、医療の世界で、研修医が「スーパーローテート」として各科で研修を行い、総合的な知識や技術を養う方式にも似た人事異動とも表現できるだろう。  3代目チームのウェイティング公演では、SKE48、NMB48、SDN48の楽曲も織り込むという新たな試みにも挑戦。楽曲は各キャプテンを中心にメンバー自らがセレクトして決定した。姉妹グループの曲を歌うということは、オリジナルと比較されるのは必然だ。 ■“篠田チームA”原点回帰!! 王道アイドル路線で見せる切磋琢磨 伊豆田莉奈、入山杏奈、岩田華怜、大島涼花、河西智美、川栄李奈、菊地あやか、小谷里歩(NMB48兼任)、小林茉里奈、佐藤すみれ、佐藤夏希、篠田麻里子(キャプテン)、高橋朱里、高橋みなみ(AKB48グループ総監督)、田野優花、中塚智実、仲俣汐里、仁藤萌乃、松井咲子、森川彩香、横山由依(NMB48兼任)、渡辺麻友
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 王道アイドル路線のチームAだが、「目撃者」公演は“アイドルの向こう側”を追求したアバンギャルドな楽曲に挑戦。高橋みなみを中心に仲間たちは一枚岩となり、中でも、AKB48の歴史を抱いた「Pioneer」を歌う前の高橋のMCは回を追うごとに凄みを増していった。指原莉乃の移籍、前田敦子の卒業も乗り越え、ついに大団円を迎えたのだった。  そうして新たに生まれ変わったチームAは、3チームでは最も平均年齢が若いチームとなり、原点回帰ともいえる王道アイドル路線の新体制となった。チームAならではなのが、ほぼ全員がキャッチフレーズを名乗ることにした点。高橋みなみ、横山由依が中心となって考案し、大島涼花は、かつて高橋が用いた「ちっちゃくたって、だいじょうヴイ!」を“継承”。その高橋は「燃える闘魂、燃える髪の毛、高橋みなみです」と自ら“チリみな事件(ショッピング中、キャンドルが紙袋に引火し、髪の毛がこげた騒動)”をキャッチフレーズに昇華させた。また、松井咲子は加入4年目にしてついに、「あなたのドレミを奏でたい」を名乗り、佐藤すみれは「チームAでは、“すーめろでぃ”じゃなくて、“すーエロでぃ”で行こうかな?」と、チームB時代の後半から目覚めつつあるオトナ路線を示唆するなど、彼女たちにも新たな変化が訪れているようだ。  一方、高橋から、横山由依と共に“2代目たかみな候補”に挙げられたこともある岩田華怜は「チームA、史上最高のチームなんじゃないの? と言われるぐらい、先輩に後れを取らないように、追い越す気持ちで頑張っていきたい」と怪気炎。「雨のピアニスト」で高橋のアンダー(代役)を担う田野優花と共に、先輩を追い越す気迫が感じられる2人だ。  一方、初日公演には出られず、2回目となる11月6日に出演したのが、伊豆田莉奈、小林茉里奈、森川彩香。10期生でAKB48合格から2年8カ月を経て、ついにチームの一員となった伊豆田は「みんなのステージを見ていた時に、自分が立ったらどうなるんだろう、なじめるのかな? と考えちゃったり、リハが緊張しちゃって振りをいっぱい間違えちゃいました。そのせいで本番前も緊張しちゃって、自己紹介まで声が震えたり……。でも先輩たちが優しくしてくれて、みんなが、大丈夫だよって言ってくれて。ファンのみなさんの笑顔があって、自分もいつもらしく笑顔でできました」と、ステージに立つことに緊張を覚えたことを告白。小林、森川もそれぞれ不安、悩みを抱えながら初日を迎えたことを吐露した。  彼女たちが感じた悔しさ、苦悩、それこそが今回の再組閣の趣旨であり、その気持ちをストレートに劇場の舞台の上で語り、向上を誓ったことは、彼女たちを進化させてくれるはずだ。  若いメンバーが多い分、まだまだ進化の余地がある印象のチームA。「立ち止まることの怖さ」に気づき、一度完成したルービックキューブに新たな色を付け、組み替えようとしている総監督・高橋みなみが、キャプテン・篠田麻里子とともに、若手をブラッシュアップし、切磋琢磨を見せてくれるはずだ。体調不良で公演に出られていない佐藤夏希の歌とMCの仕切りの能力はAKB48劇場には必要不可欠で、早期回復をひらに祈る。
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 セットリストは「重力シンパシー」「言い訳Maybe」というイントロの早弾きギターがナビゲートする疾走感あふれた王道キャッチーナンバーの2曲から始まり、全体的にシングルやコンサートの定番曲が並んだ。「制服が邪魔をする」では表情を一変させ、10代の心の揺れ、愛への飢餓感を表現。続く。「上からマリコ」は篠田麻里子不在時には「大声ダイヤモンド」になるという変則的な構成だ。ユニット曲は、ひまわり組以降5曲が定番だったがチームAのみ6曲を配したのもポイント。柏木由紀という“母”から親離れし、チームAのエースとなった渡辺麻友、「はじける笑顔でスマイルセンター」を狙う“ギャグエクササイズ”川栄李奈の年下組による「スカート、ひらり」「天使のしっぽ」「ガラスのI LOVE YOU」と、年上組による「純愛のクレッシェンド」「雨のピアニスト」「黒い天使」の黒系人気曲が並ぶ。  「雨のピアニスト」は高橋みなみ、ピアニスト・松井咲子、佐藤すみれで披露。高橋不在時には、かつて「愛しさのアクセル」を劇場で披露したこともある田野優花が参加。また、「黒い天使」は篠田麻里子、仁藤萌乃、菊地あやかが披露。ユニット内では仁藤萌乃がリーダーで、篠田不在時には入山杏奈がスライドでアンダーを担当。そのほかのアンダーも今後誰が担っていくのかも注目だ。後半の全体曲では、SDN48の「孤独なランナー」をチームAはフルアレンジで披露。SDN48の魂を受け継ぐためには、もう一段階ストイックさが足りないのが正直な印象だ。17曲目にはチームサプライズの12曲目となる「AKBフェスティバル」を披露。全国握手会イベント「AKB48祭り」について歌った歌詞で、「MIXを打てよ」「名前呼んだり握手して」という歌詞も登場する極上ポップチューン。「男も女もゲイも」という歌詞にA1st公演の「Dear my teacher」の「オトコ・オンナ・ゲイしかいないの」を思い出した人は立派なAKB48通だろう。シングルが多い分、ともすると、ファンも飽きるのが早い可能性もはらんでいる公演。どれだけ自分たちで、「今日はこの点に気をつけてやってみよう」など、それぞれの目的意識を持って公演に取り組めるかが、大きな課題となりそうだ。 ■“大島チームK”「未来は与えられるより自分で切り開こう」 秋元才加、阿部マリア、板野友美、内田眞由美、大島優子(キャプテン)、北原里英(SKE48兼任)、倉持明日香、小林香菜、佐藤亜美菜、島田晴香、鈴木紫帆里、近野莉菜、中田ちさと、仲谷明香、永尾まりや、藤田奈那、前田亜美、増田有華、松井珠理奈(SKE48兼任)、松原夏海、宮崎美穂、武藤十夢
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 2代目チームの先陣を切って「RESET」公演を開始したチームK。今回の3代目体制もチームKから幕を開けた。キャプテン・大島優子、秋元才加を中心に、仲谷明香、佐藤亜美菜、中田ちさと、内田眞由美ら公演に人一倍汗を流してきた骨太なメンバーと、阿部マリア、鈴木紫帆里、前田亜美ら高身長メンバーも多いのが特徴。また、小林香菜、松原夏海、倉持明日香、近野莉菜、増田有華と初代チームKのメンバーの復帰が多く、安定感は抜群だ。  MCでも、2代目チームKにもあった、メンバー一人が当日の公演を総括するコーナーも健在。初日は、秋元が大島に「エースがキャプテンをやるっていうのは、やはりよほどのプレッシャーなんだろうなと思った」「私がキャプテンの時に言われた『あなたは何もしなくていいよ。私たちが支えるから』という言葉を、また優子に返してあげられたらうれしい」とエールを贈った。その言葉に大島はさめざめと泣き出し、「AKB48の第2章、新しいチーム体制で、今日は出ていないメンバーもいますけれども、そのメンバーとも一緒に新しいチームKとして(ファンの)みなさんが絶対に楽しいと思える公演そして応援したくなるチームをお互いに切磋琢磨して作り上げていって、AKB48がもっとより良いグループになるように一人一人が頑張っていきたい」と初日に出られなかったメンバーの思いも背負いつつ、ファンに感謝と決意を語った。「ファンはパートナー」と語る大島がキャプテンとして、そして人間としてもさらに大きな経験を積んだ瞬間だった。
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 セットリストは、「青春ガールズ」「脳内パラダイス」(定番の「夏海がかわいい」のコールも復活)「最終ベルが鳴る」とK2nd、K3rd、K4thの歴代公演タイトル曲を3曲続け、4曲目で3代目チームKに書かれた「スクラップ&ビルド」に移行するという4曲だけでチームKの歴史を追う前半曲。「未来は与えられるより自分で切り開こう」と現状維持よりも、革新を是と説く最新ナンバーでチームKの気概の高さを表現する。  ユニットからはチームK以外の曲も登場。「嵐の夜には」では、阿部マリアが研究生時代に任されていたのと同じポジションで参加。阿部の長い手足を生かしたダンスと目ヂカラは、あらためてこの曲の世界観を増幅させてくれる。「あなたとクリスマスイブ」は、まさかの秋元才加、板野友美のデュエット。チームKの温かい絆に触れ、よく笑うようになった板野と、“ブキヨウマッスグ”な秋元が美しいハーモニーで聞かせるA1st公演の名バラード。両者の不在時には、佐藤亜美菜、永尾まりやというペアで披露。サプライズで、増田有華、宮崎美穂、内田眞由美らのボーカルでも聴いてみたい曲だ。  また、松井珠理奈の代表曲のひとつであるレゲエ調のダンスナンバー「Glory days」には大島優子、藤田奈那、中田ちさとが挑戦。オリジナルの珠理奈、桑原みずき、中西優香が圧倒的なだけに、比較される憂き目になるのだが、どれだけパフォーマンスを磨いていけるか注目だ。研究生時代にはサポーターでひざや背中をガッチリ固めながら公演に出ていた藤田、ファンへの恩返しを常に考えながら活動してきた中田、そして、大島の真摯さで、難関に挑む。  後半曲には、チームA、K、B、4の歴代曲に加え、メドレーでSDN48、SKE48、NMB48の曲にも挑戦。「孤独なランナー」はイントロのみだが、「絶滅黒髪少女」のアウトロでは三つ指を突いてお辞儀し、そこからまさに岩のように転がって、チームKのチームアンセムであるド本命ヘビーメタルナンバー「転がる石になれ」を熱唱。かつてチームKは、チームAと比較され、メンバーが泣き出す中、秋元才加が「やるしかない!」と立ち上がり、次第に結束していった。そんな彼女たちに贈られた曲のスピリットが3代目チームKにも受け継がれたのだった。アンコールオーラスでは、仲間、ファンとのかけがえのない出会いを歌った「草原の奇跡」を秋元才加の伸びやかな歌声で披露。全国ツアーでも緑のサイリウムで、各地の会場を“緑の草原”に変えてきたチームKならではの温かいバラードで締める全19曲となった。 ■“梅田チームB”個性豊かな仲間たちが挑む“超絶ポップ公演”始動 石田安奈(SKE48兼任)、石田晴香、市川美織、岩佐美咲、梅田彩佳(キャプテン)、大場美奈、大家志津香、柏木由紀、片山陽加、加藤玲奈、小嶋菜月、小嶋陽菜、小森美果、島崎遥香、竹内美宥、田名部生来、中村麻里子、名取稚菜、野中美郷、藤江れいな、峯岸みなみ、山内鈴蘭、渡辺美優紀(NMB48兼任)
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 2代目チーム体制を大会場で初めて披露した横浜アリーナで柏木由紀が「初めてやります!」の宣言で始めた「初日」を、千秋楽では「最後にやります!」の掛け声で始めるというアイドルの物語性の重要さを熟知した柏木ならではの絶妙な演出で大団円を迎えたチームB。  「おもちゃ箱をひっくり返したようなにぎやかさ」がテーマのチームBらしい個性豊かな面々がそろった三代目チームB。AKB48グループ3大握手会女王、“胸厚”メンバー、有線大賞新人賞演歌歌手、ニコニコ動画フリーク、旦那と嫁、BBA(ババア)、ド天然、次世代エース候補など個性的な芸達者がそろったチームだ。  秋元康氏から「劇場が埋まらなかった頃のがむしゃらさを後輩メンバーに伝えてほしい」と“劇場魂”継承を任された梅田彩佳は、5年間伸ばしてきた前髪を切る決意表明でキャプテンに意欲十分。同じく前髪を切り、ガーリーに変貌したのが、高速足さばきダンスが売りの石田安奈。SKE48チームK IIとの兼任となるが、チームBでも小悪魔さはそのままで、小嶋陽菜とのクリスマスパーティー開催の約束も取り付けた。同じ石田姓である石田晴香は、レッスン前にポジションをまめにノートに書くようになるなど、成長の片りんを見せた。  「呼び捨てファンタジー」後には、16人が並んで話すという異例のMCを披露。そこでは、メンバーの一人の魅力を発掘するトークを行い、石田晴香について、梅田彩佳は「超冷静で超いい子」、田名部生来は「ありのままを出せるところがロック!」と評した。  また、MCで新たなキャラを見せたのは岩佐美咲で、「“釣り”はじめました」「1万5,000人のお客さんに囲まれて私は幸せ」など、演歌のプロモーションで各地を回って培ったトーク力も披露。また、再組閣後初の生誕祭を行った渡辺美優紀は、「兼任が始まってから、一人でホテルに泊まることが多くて、すぐにママに会いたくなったり、寂しくなって、ホームシックになるんですけど、そのたびに皆さんからのコメントで、泣きやみます」と癒やし系の笑顔の裏に苦悩があったことを告白した。
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 セットリストは、梅田彩佳キャプテンの「チームB、『初日』行きます」の円陣から始まる「初日」。以下、新旧アイドルソングとNMB48「ナギイチ」や、歴代各チーム公演曲がバランス良く入った構成。ユニットでは「抱きしめられたら」に小嶋陽菜、藤江れいな、加藤玲奈が参加。AKB48有数のオトナセクシーR&Bチューンに挑むことで、姫キャラ・加藤にどんな変化が訪れるのか注目だ。「思い出以上」は、ダンスに定評のある峯岸みなみ、梅田彩佳、片山陽加が挑戦。「UZA」を担当したBeat Buddy Boi・akihic☆彡が新たに振り付けを行い、よりストリート感を増強したパフォーマンスを見せた。本編ラストは「夕陽を見ているか?」の前口上を島崎遥香が担当。エースオーラを次第にまといつつある彼女の成長こそが、今後のAKB48を左右するのだろう。アンコールにはB4th公演の「タンポポの決心」を披露。ダンスがあまりない分、表情の表現力が問われる曲だ。B4th公演は島崎、大場美奈ら9期生が最初に覚えたセットリストであり、今では劇場を去った仲間も多い。当時の心境を思い出しながら、大切に歌ってほしい曲だ。 ■総括~AKB48はまだまだ上にいける 視野を広げ、より汗を流せ! SKE48、NMB48、HKT48と共に「馴れ合いより刺激を」
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 ミリオンヒットを連発しながらも、ファンと握手会で対話を行い、毎日チームに分かれ劇場公演を行うAKB48。公演は、わずか250人というファン一人一人の顔がわかる会場で、何をすればファンが盛り上がるかを、研究生の頃から自らの肌で実地訓練するオン・ザ・ジョブ・トレーニングの場でもある。劇場もかつて、09年頃までは、毎回見に来る固定ファンに、同じ曲でも表情や表現の違いを見せ、飽きさせないということが課題だった。一方、ブレイク以降は、100倍近い当選倍率を潜り抜けて公演を見に来たファンに、AKB48の奥深さをさらに知ってもらうためのパフォーマンスが求められるようになった。  劇場公演は一種、舞台演劇に近く、「RESET」「目撃者」などの公演タイトルを軸に、16曲でひとつの世界観を構築しているものだった。だが今回は、新たなセットリストが完成するまでの初のウェイティング公演を開催。セットリストもメンバー自ら考案し、シングルが多いため、キャッチーで華やかな公演だ。ファンが盛り上がりやすい曲が多い公演だけに、今後メンバー側がそれに慣れてしまわずに、毎公演、目的意識を持ち、モチベーションを維持していくのも課題となるだろう。また、新たに22~23人体制となり、公演初日に舞台に立てないメンバーも生まれた。自分の居場所を奪われるような心痛の制度であり、今後も大規模コンサートやツアーでチームで曲を歌う際にも大きな影響を及ぼすだろう。だが、その痛みを向上のきっかけに変えてほしい。  姉妹グループの楽曲も歌うという異例の編成で、中でも、チームK、チームAのセットリストにSDN48「孤独なランナー」を入れた意味は大きい。熱心なファンに支えられ、2012年の「リクエストアワー」で3位に輝き、シリアスなメッセージが胸に突き刺さる楽曲だ。全員卒業となりながら最後まで一丸となり、劇場公演に励んだSDN48。さまざまな意見があるだろうが、彼女たちが劇場で汗と涙を流し、このAKB48劇場という“学び舎”を去っていったことは、より多くの人に知ってほしい事実だ。また、AKB48も研究生も含めれば70人以上のメンバーが、この場で汗を流し、夢を見ながら、それぞれの事情で、無念さ、悔しさ、つらさを覚えながら、劇場を去っていった。それがAKB48であり、ひいては芸能界という生存競争の場なのだ。彼女たちの気持ちを考えながら、「孤独なランナー」を歌い継げば、AKB48はまだまだ向上できるだろう。  SKE48、NMB48、HKT48という姉妹グループも着実に力をつけ、それぞれの魅力を放っている。今年は、“兼任”という制度も始まり、それぞれの良さを互いにインスパイアさせあう気風が生じた。HKT48の公演にSKE48のメンバーがゲスト参加し、NMB48研究生とSKE48研究生が対談するなど、互いに、刺激しあい、切磋琢磨している。芸能界に夢を持ち、生誕祭でその夢をファンの前で語り、その夢の実現のために、自分に今、何が必要かを考えて行動する。それこそが、AKB48がファンと続けてきたコミュニケーションの意味であり、それがファンへの恩返しなのだろう。 (文=本城零次)