苦笑、失笑、ニヤニヤが止まらない! 鉄道マニア垂涎の駅舎本『珍駅巡礼』の続編は“私鉄編”

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『珍駅巡礼2 (私鉄篇)』(イカロス出版)
 「本当にバカだよな~」と思う。「なんでこうなっちゃうんだろ?」と思わずにはいられない不思議なものや、「地域活性化」の名のもとに地元の名産をモチーフにした残念な建築もある。『珍駅巡礼2 (私鉄篇)』(イカロス出版)をめくると、性格の悪いニヤニヤが止まらない。  2010年に発売された『珍駅巡礼』は、遮光器土偶が不気味に張りつく「JR五能線木造駅」の写真を堂々表紙に据え、「駅舎ヲタ」という新たなジャンルを提示したムックだ。『珍駅巡礼2 (私鉄篇)』はこの続編であり、全国津々浦々の私鉄珍駅200カ所以上を収録している。2011年5月からおよそ1年間をかけて撮影された、撮りおろしの珍駅ばかりがズラリと並ぶ様はまさに圧巻。  一口に「珍駅」といっても、その内容はさまざまだ。著者の西崎さいき氏がライフワークとして追いかける駅舎シリーズとして掲載されるのは、まるで宇宙船のような「北越急行ほくほく線 くびき駅」、くじら型の「近鉄名古屋線 近鉄富田駅」など。たま駅長で知られる「和歌山電鐵貴志川線 貴志駅」は、全国の愛猫家をうならせるネコ型の駅舎だ。また、女子高生が体育祭の時にのみ使用する「えちぜん鉄道三国芦原線 仁愛グランド前」駅、米軍関係者専用出口を備えた「京急逗子線 神武寺駅」などのレア駅、「YRP野比」「京コンピュータ前」「宮本武蔵」などの珍名駅が紹介され、コアな鉄道マニアをうならせる「珍ホーム」の解説にはマニアならずとも「へぇ」という感嘆の声を漏らしてしまうだろう。  西崎氏は、本書のまえがきで「JRはどの駅も管理・整備され、そこそこのクオリティを保っているが、私鉄は都心の駅のような近代的なものが多い反面、地方のローカル線ではいまにも壊れそうなボロボロの駅舎があったりと、驚くほどバラエティ豊かだ」と記す。JRに比べて経営規模の小さい私鉄は、全国的に厳しい経営を迫られている。ましてや、車社会がいちだんと進む地方のローカル私鉄では、客足は遠のくばかり。イベントや副業、観光需要の掘り起こしなど、あらゆる工夫によって収益を確保しなければ、路線のみならず、会社全体が存亡の危機にさらされてしまうのだ。一時期、名物のぬれ煎餅販売が話題となり経営危機を脱した銚子電鉄も先頃、経営の自主再建を断念することを発表した。  一方、たま駅長が勤務するネコ型駅舎「貴志駅」には全国から観光客が訪れ、その経済効果は10億円あまりと試算されている。かつて、貴志川線は廃線が検討されていたほど赤字路線だったものの、たま駅長とネコ型駅舎、そして地域住民の協力によってその危機を脱出。まさに、駅を起点として町おこしがなされた好例だ。この仕掛け人である和歌山電鐵小嶋光信社長は「日本一、世界一の駅舎が創れれば、むしろ再生のみならず、紀の川市や和歌山市、また和歌山県の観光の大きな資源としてプラスになる」と語った。その目論見どおり、今日も貴志駅には観光客が絶えることはない。  苦笑、失笑、ニヤニヤが止まらない本書。しかし、珍駅舎には地域を支える人々の真剣な思いが込められている。 (文=萩原雄太[かもめマシーン]) ●にしざき・さいき 1965年岡山県生まれ。81年、高校入学時から駅舎撮影を始める。国鉄赤字路線の廃止予定駅を中心に撮影を進め、98年『国鉄・JR廃止駅写真集』を自費出版。2000年、ホームページ「さいきの駅舎訪問(http://ekisya.net/)」を開設。2006年、JR全駅訪問を達成し、ホームページ上にJR全駅の情報を掲載。現在、「ワンダーJAPAN」(三才ブックス)に「珍駅訪問」を連載中。ほか各媒体に駅舎画像提供多数。

内柴正人被告と同罪? 安倍内閣・徳田毅代議士“未成年女性”泥酔姦淫で訴えられていた!

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「週刊新潮」2月14日号 中吊り広告より
グランプリ 「『徳田毅代議士』が慰謝料1000万円の『未成年女性』泥酔姦淫」(「週刊新潮」2月14日号) 注目記事1 「ロックオン挑発にドタバタ安倍官邸の『勝算』」(「週刊朝日」2月22日号) 注目記事2 「AKB柏木由紀 Jリーガーとの『深夜合コン』撮った!」(「週刊文春」2月14日号) 注目記事3 「官邸VS.日銀の戦い 白川総裁『怒りの辞任』に官邸「逆ギレ」財務省は冷ややか」(「週刊朝日」2月22日号) 注目記事4 「『殺人スモッグ』PM2.5襲来!」(「週刊文春」2月14日号)  中国の大気汚染は「殺人スモッグ」といわれているそうだが、春節を迎えた中国・北京市内で鳴らされる爆竹が一層汚染を深刻にしていると、多くのテレビが報じている。  文春はそのすごさを、こう伝える。 「北京在住十二年になる、フリーランスライターの小林さゆり氏は、『北京はこの十二年間で最悪の空気』と語る。 『冬の暖房はクリーン化が進んだとはいえ、石炭や練炭を燃やすのも一因でしょう。今年の冬は特に、近隣工場からの排煙が増しているのか、部屋の中で過ごしていても、燻されたような匂いがして、常にけむい。窓を閉めてもダメで、部屋の中でもマスクを二重にしています。街中は、白い靄がかかっていて、まさに五里霧中。バス停でバスを待っていても、数十メートル先も見えず、路線バスの番号も分からない。交通事故も増えていて、先日も高速道路で何十台もの追突事故がありました。うっかりマスクを忘れて百メートル先の店に自転車で買い物に行っただけで気持ちが悪くなり、嫌な空気が肺の中に残る感じが半日、ずっと消えませんでした』  北京大学公共衛生学院などが中心となってPM2.5の健康被害に関する報告書を公表したのは、昨年12月のことだった。そのタイトルは「危険的呼吸」。報告雪にはこう書いてある。 <もし汚染水準が改善しなければ、四都市(北京、上海、広州、西安)でPM2.5が原因で早死にする人は年八千五百七十二人に達し、早死による経済損失は計六十八億元(約一千億円)に上る>  だがこれに対し、米・ハワイ大学の環境研究家・薫良傑氏は、 『これはまだ控えめな統計といえる。中国では一年間に、大気汚染により三十五万人以上が早死にしているといわれている』  と、21CN新聞のインタビュー(一月十七日)で答えている。  PM2.5は黄砂よりも微細な物質のため、気道上部や鼻だけではなく、肺や血管にまで入り込む。そのため、瑞息の悪化だけでなく、呼吸器疾患、脳卒中、心筋梗塞の死亡率も悪化させる」(文春)  大気汚染、砂漠化は北京だけの問題ではない。中国の大都市が抱える重大な健康被害問題は解決の方法があるのだろうか。  安倍晋三総理は、何もしないうちから株価が上がり円安が進行する「タナボタ」景気で浮かれているようだが、これは日銀の白川方明総裁を政治力でねじ伏せたことが発端である。  渋々2%の物価目標を飲んだ白川総裁だったが、2月5日、突然任期途中で辞任すると表明したから、官邸は「逆ギレ」していると朝日が書いている。  日銀内部では、こういう見方が広まっているという。 「『白川さんは怒っているはず。日銀も怒っていると言っていい。政治が職権を越えて他人の城に手を突っ込み、強引に横車を押したんですから。それでも公には口にしないところが、白川さんらしい』(日銀幹部)  途中辞任は怒りの表現、すなわち『無言の抵抗』だと受け取ったわけだ。中央銀行(日本では日銀)は政治から独立し、通貨や物価の安定を図る組織だ。そのトップが政権と対立し、任期をまっとうできないのは、金融界から見れば、かなりの異常事態なのだ」  朝日は、後任総裁は財務省OBの武藤敏郎・大和総研理事長か黒田東彦・アジア開発銀行総裁と見ているが、文春では岩田規久男学習院大教授(70)が最有力で、自身「日銀総裁の覚悟ある」と話している。以下は岩田教授の“覚悟”のほどである。 「今は経済戦争の最終決着の時なんです。  デフレ派に聞きたい。バブル以降のデフレで、財政は再建できたのですか? 景気は良くなったのですか? 株価は上がったのですか? 十五年間の壮大な『デフレ経済実験』の結果 はすでに明確に出ている。デフレでは、駄目なんです。  インフレ二%というと『ハイパーインフレが来る』『九百八十三兆円の財政赤字の利払いで日本は破綻する』と彼らは言う。では、どうしろと言うのか? これからの十五年も、またデフレの実験を続けるのですか?  インフレで経済を立て直せるかどうか、確かにこれはやってみないと分からない。ただ、やる前から『絶対成功する根拠を示せ』という議論は無理がある」  金融政策を実現するためには、日銀法の改正が必要だと続ける。 「先月の、日銀金融政策決定会合でも、二%のインフレ目標の責任が日銀に全てあるのか、政府も一翼を担うのか曖昧なままでした。ここを改善しなくては機動的な金融政策は不可能です。  日銀には『目的の設定権利はなく、手段選択の権利は持たせる』。そして目標に対する全ての責任を負わせることです。要するに、『言い訳を許さない』。  これまでの経済の低迷の原因はデフレにあり、デフレにした責任は日銀にある。日銀が全て悪いのかと聞かれれば、私は『その通り』と答えます」  この御仁が日銀総裁になったら、この発言との整合性はどう取るのだろうか。財務省OBか大学教授か、アベノミクス第一の試金石である。  今週、文春のターゲットになったのは、メンバー随一の清純派“ゆきりん”こと柏木由紀(21)。若きJリーガーたちとの、朝まで続いた合コンである。これが注目記事の2位。 「『彼女は「アイドルの中のアイドルを目指す」と公言する“処女キャラ”です。キャッチフレーズは「寝ても覚めてもゆきりんワールド! 夢中にさせちゃうぞ!」。握手会では目線を逸らさず、ファンの手を両手で包み込む“十秒握手”でファンの心を掴んできた』(AKB担当記者)」  総選挙では常に上位に食い込み、一昨年、昨年と3位だった。  合コンが行われたのは、皮肉にも柏木主役のドラマが放送された初日の深夜0時過ぎだった。  場所は目黒のダイニングバー「S」。文春が先週報じた峯岸らAKBメンバーが参加したパーティーが開かれたのと同じ店である。柏木を誘ったのは、やはり峯岸だという。 「柏木が仲が良いのは、峯岸や指原。峯岸は一期生。柏木にとっては年下でも先輩にあたるんです」とAKB担当記者が話している。  午前0時30分。柏木に遅れて峯岸、その後からカリスマAV女優の明日花キララ(24)も参戦した。今回のお相手はロンドン五輪にも選ばれたセレッソ大阪の扇原貴宏(21)と杉本健勇(20)ら。  峯岸が酔ってフラフラと引き上げたのが午前3時過ぎ。柏木と明日花は男性陣とカラオケルームへ入り、ご帰還は朝の7時過ぎ。  ちとハメを外しすぎではないかね。不祥事続きのAKBだが、元メンバーたちが「恋愛禁止条例」についてこう語っている。 「もともとあってないようなルールだし、バレたら終わり、バレなければOK。それだけですよ」  バレた峯岸や柏木は運が悪いということか。秋元さん、また坊主にしますか?  注目記事1位は、一つ間違えれば日中戦争勃発になりかねなかった、中国フリーゲート艦から照射された火器管制レーダー“事件”についての朝日の記事。  海上自衛隊の護衛艦「ゆうだち」がレーダー照射されたのは1月30日。安倍総理は毅然としながらも、中国側の挑発には乗らなかったことが評価されているが、舞台裏ではいろいろあったようだ。 「与党関係者によると、レーダー照射の詳細な情報が小野寺五典防衛相から安倍首相に伝えられたのは、5日の発表直前だったという。  報告が遅れた理由には、1月19日、海事のヘリ『SH60』が中国海軍の艦船からレーダー照射を受けたと疑われる事案を巡る“疑心暗鬼”があった。 『このとき防衛省の事務方が小野寺氏と外務省に報告しました。すると、小野寺氏が『これは大事なことだ。すぐ安倍首相に報告しよう。きちんと声をあげないとダメだ』などと言い出した。事務方は仰天し、 『疑いの段階で公表すれば日中関係が大変なことになる。ウラかとれるまで待ってください』と押しとどめました』(官邸関係者)(中略) 『大臣に綴告すると、また「公表する」と騒いで情報が漏れかねないと制服組が警戒した。防衛省は2010年の尖閣沖の漁船衝突事件などで民主党政権の対応に不信感があり、今でも政治家に情報を上げるのを極端に避ける傾向にありますから』(防衛省関係者)  ようやく報告が上がったのは5日の昼ごろだった。小野寺氏はすぐに官邸に乗り込んだというが、慌てていたため菅義偉官房長官や岸田文雄外相に根回しせずに、安倍首相に「中国の暴挙を国際社会に発表したい」と直談判したという。  本来は公表前に、外交ルートで中国側に正式に抗議をしなくてはいけないのに。  この件は、中国政府側は本当に知らなかったという見方があるが、習近平が総書記に就任以来、こうした軍部の“暴走”が続いているのは心配である。  現場の一指揮官の誤った判断が、戦争へとつながった歴史は枚挙にいとまがない。そんな悲劇を繰り返さないためにも、一日も早く日中首脳会談が行われることを望みたい。  今週のグランプリは、安倍内閣初のスキャンダルをものにした新潮の記事。  スキャンダルの主役・徳田毅代議士は41歳の若さで安倍内閣の国土交通大臣政務官に抜擢され、ゆくゆくは総理大臣候補かとごく一部ではウワサされていたようだ。彼は新潮に自身のスキャンダルが掲載されることを知り、自らから辞任を申し出て、アッサリ受理されてしまった。  徳田代議士がやったことは、泥酔状態の教え子に乱暴したとして準強姦の罪に問われた柔道金メダリスト・内柴正人被告と同じだと、新潮は難じている。事の経緯を新潮から引用してみよう。 「原告の女性が徳田代議士と知り合ったのは、事件が起こる前年の平成15年10月頃だった。当時、彼女と交際していた男性が徳田代議士と知り合いで、その紹介により、複数のメンバーで会食の機会を持ったのである。その後、徳田代議士から食事の誘いを受けたという。その結果、彼女に何が起きたのか。さらに訴状をひもとき、その顛末を見ていこう。 「<平成16年2月10日、原告は、〈中略)午後10時ころ、地下鉄赤坂見附駅の近くで被告と待ち合わせた。合流した後、被告は原告を和食屋に連れて行った。原告は飲食店の名前等は覚えていないが、忍者の扮装をした従業員が接客する飲食店であった。その店で、被告は原告に食事と酒を勧め、ビールの後に焼酎をボトルで注文し、いずれも原告と一緒に飲んだ。飲食中、被告は自分がいかに金をたくさん持っているかなどを得意になって語り、原告は、(中略)焼酎を多量に飲んでかなり酔った>  食事を終えた後、さらに、 <『今度は自分の知っているバーに行こう』と言ってカウンターバーのような店に原告を連れて行った。そのバーで、被告は原告に強引に酒を飲ませたため、既にかなり酔っぱらっていた原告は、完全に酩酊し、歩くのがやっとの状態になってしまった>  バーを出た後、彼女はフラフラの足で、徳田氏の後をついていく。やがて彼が入っていったのは、赤坂見附の交差点近くにある高級ホテル。しかし前後不覚に陥った女性はその建物をホテルと認識できず、もう一軒、飲食店をハシゴするものと思っていた」  そのホテルで、このようなことに及んだというのだ。 「<部屋はツインルームで、被告は、原告をベッドの1つに座らせ、原告の服を脱がせにかかった。原告は、泣きながら抵抗しようとしたが、酔いが回りすぎていてまともに抵抗することができず、泣きながら『やめてください』と何度も何度も言うだけであった。結局、被告は原告の着衣を脱がせ、自分も服を脱いで、原告の抵抗を抑圧して性行為に及んだ。原告は、そのまま意識を失ってしまった>  平成19年2月、東京地裁に提出された、一通の訴状にはこう記されているという。  登場する原告は、被害に遭った平成16年当時19歳の、事業家を目指す女性。 「被告と書かれた男性は当時32歳で、国会議員公設秘書であり、かつ医療法人グループの関連会社役員、後に国政に打って出て代議士となる徳田毅氏だ」(新潮)  昨年末に平成23年分の政治資金収支報告書が公表されたが、徳田議員は2億5285万円もの資金を集め、収人ランキング上位の常連である亀井静香や「日本維新の会」の平沼赳夫、さらに2年連続首位だった小沢一郎をも抑え、堂々のトップに輝いた。  彼は当選3回の駆け出し代議士だが、彼の実父は全国に280以上の医療施設を経営する医療法人徳洲会の徳田虎雄理事長(74)である。 「鹿児島県・徳之島出身の虎雄理事長は、今から30年ほど前、奄美群島区を含む旧鹿児島l区で自民党の保岡興治議員と、血で血を洗う壮絶な選挙戦を展開したことが語り草となっている」(新潮)  その被害女性は、当時交際していた男性に相談し、損害賠償の訴えを起こしたのである。慰謝料は当初500万円だったが、その後2000万円に増額された。  この一件を、彼はどのように決着させたのか。当時の事情を知る人物が、こう解説している。 「『毅さんが裁判所に提出した答弁書は、要するに、女性が未成年であるとは知らなかったこと、彼女にお酒を勧めた事実はなく、自分で進んで飲んでいたという内容です。男女関係を持ったことは認めましたが、あくまで合意の上だと……。つまりこの前の内柴被告と全く同様の主張ということ。しかし、最後は、事態を収拾しようとして、平成19年に和解。結局、女性とその彼氏だった男性にまで謝罪し、慰謝料として各500万円を支払ったのです』  2000万円の要求に対して計1000万の支払いならば、少なくとも多少の罪の自覚があったればこそに違いあるまい」  この件は徳田理事長にも伝わっているそうだが黙認したと、新潮は書いている。カネで解決したのに、今回政務官になったばかりに、女性と、彼女と交際していた男性の怒りに再び火を付けてしまったのだろうか。  安倍内閣はスキャンダルの宝庫かもしれない。これをきっかけに、これからも大臣、政務官たちのスキャンダルが続々出てきそうだ。 (文=元木昌彦)

いつも心に「ぺっこり45度」、再ブレイク中のずん・飯尾和樹を構成する“謙虚な毒”

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撮影=後藤秀二
 ずん・飯尾和樹とは、稀代のギャグメイカーであり大喜利テクニシャンでもある。振られたトークは必ずヒットで打ち返す。フェイスも愉快。それなのに、なぜか大ブレイクすることなく、今年で芸歴22年。しかし、昨年あたりからじわじわと世間が飯尾熱を帯びだしたことに、アナタはお気づきだろうか。中堅ベテラン芸人ブームの一角を担う存在でありながら、どこか正体不明。今一番気になる芸人、飯尾和樹の魅力をどこよりも早く、かつ濃密に解き明かす! ――2012年からの怒涛の「飯尾フィーバー」に対して、ご自身はどう思われていますか? 飯尾和樹(以下、飯尾) いやいやいやいや、そんなことはないですよ。 ――芸人界でも非常にミステリアスな存在である飯尾さんが普段どんなことを考えているのかを、今日はぜひともお伺いしたいと。 飯尾 まったくもって普通ですよ……住むんだったら、日当たりのいいところがいいとか。 ――(笑)。では、飯尾さん的に2012年はどんな年でしたか? 飯尾 そうですね。確かに、Suicaのチャージがすぐなくなりました……以前は1000円チャージしておけば、4日、ヘタしたら1週間はもっていたのに。強気に5000円チャージしてその日になくすっていう経験もしまして。人間、調子ぶっこいちゃいけませんね。 ――テレビで見る機会が増えてファンとしてはうれしい限りですが、果たしてなぜ今「飯尾」なのかと。 飯尾 だいたい相方とネタを作るにしたって、今こういうのがウケるとか、こういうのがキテるとか、まったく分からないんですよ。俺たちの場合は、40過ぎのオヤジが笑い合ったものを客に見せるというシステム。それもずっと変わっていないので、本当にどうしてですかね? ――そもそも、芸人を目指されたきっかけとは? 飯尾 うちの両親が『男はつらいよ』が大好きでして、いつも家族で見に行ってましたねぇ。あぁこんな感じで、旅芸人かなんかになれたらいいなぁと。甘い考えで。でも実際に芸人になるにはどうしたらいいのか、よく分からなかったんですよ。 ――どうやって浅井企画に? 飯尾 それはですね、地元の先輩が就職して、五反田エリアの営業担当になったんですね。その時に「飯尾、浅井企画って事務所が五反田にあるぞ」って電話番号を教えてくれて。で、電話をかけたら「一回、顔見せにこい」って言われたんです。ちょうど事務所が「若い子たちを使って喜劇をしたい」と考えていたようでして。 ――タイミング良かったですね! 飯尾 そうなんですよ。で、「お前のちょっと前に、飛び込みで来たやつがいる」って紹介されたのがウド(鈴木)でした。ウドは電話もせず突然事務所にやって来て、「あの~ぼく~」って(笑)。スタッフも驚いて「こういうのは、ちゃんとアポを取って……」と説明したら「ハイ! 分かりました!」って事務所を飛び出して、下の公衆電話から「あの、わたくし、先ほどの」ってかけてきたらしいです(笑)。その1年後くらいに、天野(ひろゆき)が来ました。 ――ウドさんとコンビを組もうとは考えなかったんですか? 飯尾 それは思わなかったなぁ。ボケ同士で、ぶつかっちゃうからじゃないですか。僕は最初、幼なじみと組んでいたんですけどダメで、それから「La.おかき」を5年やってダメで、それでやすと組んだんです。キャイ~ンはね、早かったですよ。結成してもう3年後くらいには『いいとも!』に出てましたからね。 _MG_7323.jpg ――同期のブレイクを、飯尾さんはどんな気持ちで見ていたんですか? 飯尾 とにかく「いっせーのせ!」って、同じ条件でやるわけじゃないですか。条件一緒なんだから、文句のつけようもない。あいつらスゲーな、面白いなって。本当はもっと悔しがったりするべきでしょうね(笑)。ただ、最初にブレイクしてくれたおかげで、いい人ばっかり紹介してもらえました。気の合うスタッフとのご飯に、俺たちを呼んでくれたりして。キャイ~ンがね、俺たちの前に転がっている砂利を全部取り除いてくれたようなもんです。それなのに、俺たちは自分で足ひねってた。なんでこんな真っ平な道で……(笑)。今までそうやって大チャンスを何回逃してきたことか! ――チャンスをモノにできなかった原因とは? 飯尾 昔から、どうしようもなく気が小さいんです。2回連続してスベると、もう固まっちゃう。「La.おかき」を解散して「ずん」を組むまでの2年間は、それこそ出られるのはキャイ~ンのラジオぐらい。でも、そこで気づいたんですよ。あの二人だって、会話の全部がスタッフたちにウケているわけじゃない。だけど、果敢にいくんですよね。それを見て「この世界で生きていくなら、スベったっていくしかないんだ」ということを知ったんです。スベってショックを受けるっていう神経を捨てなきゃいけないと。もちろん、ウドや天野は2回言って伝わらなくても、3回目にはすごい笑いにしますけど。ピンでいた2年間で、それを叩き込まれました。 そう、キャイ~ンがガーッといっていた当時、僕からしたら芸人として理想のコースを歩んでいるようにしか見えなかったんですが、でも、会うとちょっとため息ついてたりするんです。楽しいは楽しいけど、やっぱりやりたいことの2割くらいしかできないって。え? そうなの? この世界は、実力が認められたら、やりたいことなんでもやれるんじゃないの? と。そこには、時間帯の問題とか表現方法とかいろいろあるんですよね。でも、「その2割で思いっきり楽しむんだ」ってあの二人が言っているのを聞いて、あぁ上に行ったら行ったで、そんな悩みがあるんだと。それに比べたら、俺の悩みはなんてちっぽけな。「ぱっくりピスタチオ」が30人の前でスベっている自分を悩んでる場合じゃねぇだろと(笑)。 ――売れた後も大変ということを知ってしまうと、芸人としてのモチベーションを保つのが難しそうですが。 飯尾 僕の場合は、誰かに「やってください」って言われてやってるわけじゃないから(笑)、モチベーションとか考えたことはないですね。だって、すごい大物の方がパッと引退したって、2~3カ月したらもう代わりの人が出てくる世界ですよ。代わりなんて本当はいないんだけど、それでも普通にテレビは回っていく。そう考えると、もう「好き」以外の理由はないんじゃないですかね。 ――芸人を辞めようと思ったことは? 飯尾 ピンになった2年間ですね。でも「あぁ無理かな~」って思ってる時に限って、天野やウド、関根(勤)さんや小堺(一機)さんが笑ってくれる。あの方々に「いやぁ面白いね~」って言われると、「一線で活躍している人たちがそう言ってくれるんだから、もしかしたらまだイケるか?」つって。なんて言うんですかね、痛み止め打ちながらやってきたというか(笑)。いやぁ、勘違いって大事! ――その「痛み止め感」は、“現実逃避シリーズ”にも表現されているような。 飯尾 「なんでも10円で買えたらな~」とか、3~4年前に本気で言っていたことですから(笑)。「ビル・ゲイツの1万円って、俺たちでいう何円か」「1円くらいなんじゃねーか」とか。ちょっとアブナイくそジジイたちですよ。現実逃避しながら粘ってましたね。30過ぎて続けるのって、もうそれしかない。 _MG_7301.jpg ――飯尾さんを語る上で外せないのが「大喜利」だと思いますが、大喜利力はどうやって鍛えてきたのですか? 飯尾 僕に大喜利を教えてくれたのは『内P』でした。あの番組はスベってもなんでも、すべて笑いにしてくれて。内村(光良)さん、さまぁ~ずさん、TIMさん、ふかわ(りょう)くん……終わってから、必ず飲みに行くんですよ。その時に「あの答えは良かった」とか「あれはもっとこうすれば」とかアドバイスもらって、まるで塾に行っているようでした。ギャラもらってるのに。だいたい遅いんですよね、俺は。芸人になって2~3年で習得するべきことを、30から学んでいたとは。 ――しかし、その成果が『ダイナマイト関西』、さらに『IPPONグランプリ』へと続くと。 飯尾 両番組には、本当に助けていただきました。去年『IPPONグランプリ』に出た時は、それはもう緊張で、ガクガクで。やっぱり俺は一人じゃダメなんだなって思った瞬間でもあったんですけど、ステージに出ていく時にですね、自分はメンバーの中の最後から二番目、ラストは(千原)ジュニアくん。そこでジュニアくんがいきなり「飯尾さんって、おいくつなんですか?」って。え? 今それ!? 「あ、よ、43」って言いながら出て行きました。でも、そのおかげで緊張がほぐれた。始まったら始まったで、右のジュニアくん、左の小籔(千豊)くんが、俺のボケを両サイドでツッコんでくれるんですよ。新喜劇の座長と稀代のトークマシンがですよ? そうしたらノッていくじゃないですか。あれはねぇ、もう事務所を挙げてお礼に行かなきゃいけないお二人です。バームクーヘンの一つでも持って。 ――点数を競う番組でありながら、そんな一体感が。 飯尾 僕より5歳も6歳も年下なのに、やっぱりこう自分の城を持てる人たちというか、すべて笑いにするっていう責任感、愛情があるんです。もう、ここの家の子になりたいって思いましたもん。どっか部屋空いてませんか? 多少日当たり悪くてもいいですからと。 ――飯尾さん自身が城を持ちたいとは? 飯尾 やっぱり城を持つ人というのは、ボケがウケた時にそれにカブせてもっと大きな笑いにする時よりも、スベった時にどう笑いに変えていくかっていう、その力がすごいんです。緊急オペの時にどれだけの実力を発揮できるか、ですね。俺なんかもう、ぐっちゃぐちゃの状態で運ばれてきますから(笑)。面白い要素がイマイチお客さんに伝わっていない時に、松本(人志)さんが一言添えるだけでドーンとウケるじゃないですか。あのニンニク注射! 僕には、あんなことできません。「あ~」って言いながら一緒に溺れちゃう。だから、いつも若手に「MCさんにはどっぷり甘えろ」って言うんです。関根さんや小堺さんみたいに、ボケをひとりで処理できるような人はまれだと。最初は甘えて甘えていったほうがいい。気持ち悪いですけどね、40過ぎて「甘えよう」って決心した芸人も(笑)。でも、結局、今までいろんな芸人さんに甘えてきたなって。周りの人に助けてもらって。 ――しかし、正直レギュラーがないって不安ではないですか? 飯尾 以前、出川(哲朗)さんに「僕、関根さんのラジオ以外レギュラーがないんですけど」って相談したことがあったんです。そうしたら隊長……あ、僕らは出川さんを“隊長”って呼んでるんですけど、隊長が「あ~飯尾くん、僕が何年レギュラーなしでやってると思ってんの! だいじょぶ、だいじょぶ。そのほうが動けるからァ」って。そうか、確かにそのほうが動けるよな、と。僕は何か新しい仕事が入ったら、まず隊長に相談します。『IPPON』の時もそうです。出川さんはお酒飲まないんで、俺たちだけ散々飲ませてもらい、最後は家のそばまで愛車のポルシェで送ってくれましてね。降りる時に「隊長、行ってきます、『IPPON』」って言ったら、「あ~飯尾くん、『IPPON』グランプリは人生を変えると思うから、全力で!!」って。 _MG_7294.jpg ――隊長カッコイイ!! 飯尾 何かあると、すぐメールをくれますし。「あ~飯尾君、よかったね、ハネたらしいね。スタッフから聞いたよ~」とか。「あ~飯尾君、MCのあの方はスカしたらダメだよ。全力でぶつかってって」とか。額の横で中指立てながら話してくれるのもシュールなんですよ(笑)。 ――昨年は、やすさんの事故という大きな出来事もありました。あの事故を経て、コンビとしての気持ちに変化はありましたか? 飯尾 そうですね。作戦というか、こういう感じでいったほうがいいのかなっていうのを話すのもやすですし、お前の言う通りにやったらスベったじゃねーかって責めるのもやすですし(笑)。先輩方にも「ああいうことがあったから、気合が入ったんじゃないか?」って言われましたけど、よく考えてみたら、相方があそこまでにならないと気合入んないようじゃダメですよね。最初から、あの気持ちでやってりゃよかったのに(笑)。でも、こういうふうに笑えるようになってよかった、本当に。 ――今回のインタビューで、飯尾さんの天性の人たらし力を確信しました(笑)。しかも、そのほんわかムードの中に「毒」もあるから油断できません。 飯尾 それ、以前(さまぁ~ずの)三村(マサカズ)さんに言われたことあります。「お前のギャグには毒入っているよな」と。 ――でも、誰も傷つけない毒なんです。 飯尾 もうそれは単なる独り言ですね(笑)。浅井企画という事務所自体に、ギラギラ感というか、他人を蹴落としてでものし上がっていくぜ! というような風潮がなくて。そこには「結局は自分」っていう気持ちがあるからかもしれませんが。 ――すべては自分次第であると。 飯尾 そう、“対誰か”じゃなくて。「負けたくない」という気持ちは、起爆剤的なものであればいいんですけど、でも「あいつより上に行きたい」とかは違うような気がしてまして、お笑いの世界では。やすと俺は一番笑ってるって言われますもん、お客さんと一緒に。 ――最後に2013年パーフェクト飯尾イヤーに向け、何か野望があれば。 飯尾 そうですね。まぁ、本当に、オヤジが好きなことやってますんで、一つ温かい目でよろしくお願いします(ぺっこり)。あと野望……月二回はキャイ~ンと仕事したいなぁ。キャイ~ンや浅井企画の芸人たちと一緒に仕事したいです。みんなで飯食い行って、ネタ作ったり。 ――『内さま』みたいな感じですか? 飯尾 いいですね~。やりたいですね本当に。私たちとしては、勇気のあるディレクター様大募集ということで(笑)。とりあえず3カ月、私たちに賭けてみませんか? 衣装はもちろん自前で大丈夫です!! (取材・文=西澤千央) ●いいお・かずき 1968年、東京生まれ。91年デビュー。もともとは村山ひとし(現放送作家・演出家)と「La.おかき」というコンビ名で活動していたが、解散後、やすと2000年に「ずん」を結成し現在に至る。ボケ担当。

やっぱり黒幕は電通だった! 五輪金メダリスト・村田のプロ転向騒動の舞台裏

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日本オリンピック協会公式HPより
 ロンドン五輪ボクシング男子ミドル級金メダリスト・村田諒太(27歳)のプロ転向騒動。すでに報道にあるように、日本アマチュアボクシング連盟(日連)は秘密裏に計画を進めた末にプロ入りを表明した村田に対し、アマチュア選手としての引退勧告を言い渡すなど、厳しい態度を示している。特に同連盟の山根明会長(73歳)の怒りは収まらない。  ある関係者はこう証言する。 「山根会長以下、日連側はロンドン五輪終了後から、アマチュアの国際機関である『国際ボクシング協会(AIBA)』が今年立ち上げるプロ団体『AIBAプロフェッショナルボクシング(APB)』に参加するよう、村田に2度にわたり要請していました。山根会長としては、村田がプロになるなら絶対にAPBで、という考えがあったのです。しかし、村田は『現役を引退するので、プロになるつもりはない』と断った。日連はAIBAにその旨を伝え、山根会長としても村田はプロにならないと信じていたんです。にもかかわらず、別ルートでプロ転向の話が着々と進んでいた。山根会長からすれば騙されたという気持ちもあるでしょうし、AIBAに対しても顔が立たない。怒るのは当然でしょう」    とはいえ山根会長の怒りの矛先は、村田本人にではなく、村田の背後にいる「仕掛け人」に向いているという。 「会長は『五輪金メダリストを引き抜く行為は盗っ人、泥棒だ!』とまで言っています。一部報道では、村田のプロ転向はフジテレビ主導ってことになっていますが、本当の黒幕は電通。山根会長は、電通のボクシング担当チームの一連のやり口に、怒りを爆発させているんです」(同)  複数の関係者の話によると、一連の交渉は昨秋から続けられていたようだ。電通サイドは、プロデビュー以降はフジテレビが村田の試合を放映、さらに彼を同局へ入社させる「ウルトラC」を含め、引退後の面倒まで見るという破格の条件を提示していたという。 「巨額の契約金が動くという派手な話ではなく、またフジテレビ社員として採用するというプランも流れるかもしれませんが、それでもAPBの選手としてプロのリングに上がるより格段に条件がいい。村田の決断そのものは、至極当たり前の話だと思います」(ボクシングに詳しいフリーライター)  村田プロ転向計画は現在、アマ側との調整に難航しつつも、フジテレビと関係の深い三迫ジム入りを軸に最終段階に入っている。  だが、この話にはまだ続きがある。実は4月2日に女子アマチュアボクシングの大会が後楽園ホール(東京)で開催されるのだが、この大会を主催しているのが渦中の電通。しかし、あろうことかこの大会に、電通は日連から引退勧告を受けたばかりの村田を登場させると言い始めたのだ。  ある業界関係者はこう漏らす。 「あの大会、いまだにスポンサーが決まってないんですよ。そこで電通は、アマチュア最後の晴れ舞台として村田を出せばスポンサーもつくとアマ側に持ちかけた。ですが、山根会長は『一度去った男を、再びアマのリングに上げるわけにはいかない! もう大会も止める!』とブチ切れ。さすがに村田登場の話はすぐなくなったようですが、今まさに同大会が消滅するか否か、電通とアマ側で瀬戸際の交渉が続けられているんです」  仮に同大会が開催中止に追い込まれることになったら、泣くに泣けないのは出場予定の女子ボクシング選手たちだろう。「しずちゃん」こと芸人ボクサーの山崎静代(梅津倶楽部)もそのひとりだ。 「同大会は昨年の全日本女子選手権の各階級の優勝者を揃えており、中でもミドル級王者の山崎はメーンイベンターとして大会最大の見どころになる予定でした。これで本当に大会が中止になれば、山崎にとって、どんなパンチよりも痛い。そもそも女子ボクサー山崎の五輪挑戦は、電通が仕掛けた壮大なスポ根ストーリー。山根会長も、電通の手による『しずちゃん物語』を、女子ボクシングの普及に貢献しているとして高く評価していた。でも、今回の件で山根会長の電通ボクシングチームに対する評価は一変。このままだと、しずちゃんのプロジェクトも、どうなるかわかりませんよ」(某ボクシング関係者)  村田プロ入り騒動の思わぬ余波。一番の被害者が、しずちゃんってことにならなければいいが。

レギュラー7本! 稀代の万能ボイスアクトレス・堀江由衣の魅力を再考察

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『堀江由衣 キラキラみつばちをめぐる冒険』
学研マーケティング
 今、ほっちゃんが熱い!  「何を今さら?」と言われようがなんだろうが、ほっちゃんこと堀江由衣が今、もっとも注目すべき女性声優なのだ!  正統派ヒロイン声と言うべき可憐な声質と可憐なビジュアルを持つ堀江は、1998年のデビュー後、2000年に伝説の声優ユニット「やまとなでしこ」を田村ゆかりと結成し、多くの声優ファンを魅了。ユニット活動休止後もアイドル声優のトップランナーとして、アニメの出演のみならず音楽活動も精力的に展開。幕張メッセや日本武道館などの大舞台にも立ったことがある。  そんな彼女は2013年2月時点で、レギュラーおよびメインキャラとして現在出演しているテレビアニメ本数は7本。若手のエース・花澤香菜とタイで女性声優のレギュラー出演番組数トップをひた走っていることからも、衰えを知らない彼女の勢いがうかがい知れる。入れ替わりが激しく、なおかつ若手が台頭しがちな昨今の声優シーンの中では、芸歴10年以上の中堅女性声優が、これほど多くの作品でメインキャラを演じることはなかなか珍しい。  現在、彼女は正統派アイドルキャラである『AKB0048 next stage』の6代目柏木由紀、元気なヒロイン『バトルスピリッツ ソードアイズ』のキザクラなど、デビュー当時と変わらぬ瑞々しい少女の声で我々アニメファンを楽しませてくれているが、ここ数年の彼女は名バイプレーヤーとしての評価も高まってきている。  09年『夏のあらし!』では非美少女系キャラの山崎加奈子を演じ、11年『輪るピングドラム』の夏芽真砂子ではドスのきいた声で「怖い女」の演技を披露。デビュー10周年を迎えた2008年頃からメインヒロインを演じると同時に、さまざまな脇役を演じて役者として着実にスキルアップを図ってきた。  さらに、現在放送中のアニメでは『リトルバスターズ!』の主人公・直枝理樹、『さくら荘のペットな彼女』の赤坂龍之介など、それまでほとんど聞くことのなかった少年キャラ声に挑戦。見事に声変わり前後の少年を演じ切っている。  その他、『新世界より』ではシリーズ序盤のキーパーソン・天野麗子といった重要なキャラクターも演じており、いまや彼女は主役から脇役まで。さらには男も女も。人間も動物もなんでも来いの、万能ボイスアクトレスとして引っ張りだこだ。  誰もが「この人の演技はこれ!」と認めるような強烈なキャラクター性か。はたまた、さまざまな声を使い分けて役に寄り添う演技を行うテクニックか。役者の演技を評価する基準は一つではないが、だからこそ、さまざまなキャラクターを見事に演じ切り、なおかつ「このキャラクターはこの声じゃないと!」と思わせてくれる濃い演技を披露する堀江由衣は、今後、声優業界においてますます重要な存在となっていくことだろう。  アイドルとして、そして声優として実に15年もの長期間にわたってトップを走り続けるほっちゃんから、今後も目を離すことができない!  さあ、一緒にほっちゃんにエールを送ろう! ほっちゃーん! ほ、ほーっ、ホアアーッ!! ホアーッ!! (文=龍崎珠樹) 「週刊アニメ時評」過去記事はこちらから

“ヘルバイク”にまたがった孤高のダークヒーローが帰ってきた!『ゴーストライダー2』

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(c)2012 Columbia Pictures Industries, Inc. All Right Reserved.
 今週紹介する洋画2本は、ハリウッド映画としては中規模の予算だが、作り手とキャストの愛情がたっぷり込められファンの期待にしっかり応えてくれる快作だ(いずれも2月8日公開)。  1本目の『ムーンライズ・キングダム』は、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(01)や『ライフ・アクアティック』(05)などで壊れかけた家族や仲間たちが繰り広げる冒険や騒動を、箱庭的映像世界で描き続けるウェス・アンダーソン監督の最新作。1960年代の米東海岸ニューイングランド島で、それぞれ環境になじめず孤独を抱えていた12歳の少年サムと少女スージーが行方不明に。2人は演劇の発表会で出会ってから、1年間の文通を経て駆け落ちを決行したのだった。島で唯一の警官であるシャープ警部や、サムが所属するボーイスカウトのウォード隊長、スージーの両親らは2人を追い、引き離そうとするが……。  タイトルの意味は「月が昇る王国」。全編を通じて映像を黄色っぽく処理し、日中も月に照らし出されているかのような、ノスタルジックでおとぎ話のような雰囲気を演出。ウェス作品では初顔のブルース・ウィリス、エドワード・ノートン、フランシス・マクドーマンド、ティルダ・スウィントンら名優陣も、「スター然」とした輝きを抑えて月明かりの箱庭世界の住人になりきり、本作が映画デビューとなるサム役ジャレッド・ギルマンとスージー役カーラ・ヘイワードのキュートな2人を引き立てる。蟻の巣の水槽を観察するような監督定番のシークエンスの冒頭から、タイトルの秘密が明かされるラストまで、秘境の楽園のように美しく愛らしい本作。『小さな恋のメロディ』(71)に心ときめかせた世代からの支持も集めそうだ。  もう1本の『ゴーストライダー2』は、炎に包まれたガイコツという異色のアメコミヒーローを、ニコラス・ケイジ主演で実写映画化した『ゴーストライダー』(07)の続編。父親を死から救うため冥界の魔王と契約し、自らの中に復讐の精霊“ゴーストライダー”を宿したジョニー(ケイジ)は、怒りや憎しみに呼応して突然出てくる闇の力に苦しんでいた。人里離れて暮らしていたジョニーは、ある日訪れた僧侶に依頼され、最強の悪魔が新たに取りつく体として狙っている少年を助けることになる。  アメコミオタクを自認し、車やバイクなど乗り物が大好きなニコラス・ケイジが出演を切望したという本シリーズ。典型的なヒーローとは趣を異にするダークなキャラクターを嬉々として演じるケイジが、本作ではわれらが日本のヤマハ「VMAX」をカッ飛ばしている点もポイントだ。監督を務めたのは、『アドレナリン』シリーズのマーク・ネベルダインとブライアン・テイラーのコンビ。おどろおどろしい設定と激しいアクションの合間にシニカルな笑いも忍ばせる本作、ひねりの利いた勧善懲悪でスカッとしたいアクション映画ファンにオススメだ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ムーンライズ・キングダム』作品情報 <http://eiga.com/movie/58019/> 『ゴーストライダー2』作品情報 <http://eiga.com/movie/57826/>

「1億円あげるのでもらってください」巧妙な誘導で現金を巻き上げる、ネットの罠に注意!

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 昔から詐欺メールはあるものの、最近のニュースを見ると、なんで引っかかったのか不思議な事件が目に付く。自分だけは詐欺に遭わないと思っている人でも意外と引っかかってしまう、巧妙な手口を紹介しよう。  2010年に「1億円あげます」とYouTubeに動画をアップした人が現れた。余命が短く、身内もいないのでもらってくれという内容だ。連絡を取るべく書き込まれたURLを開くと、有料のSNSに誘導される。1億円の受け渡しなどについてメッセージをやりとりすることで、課金が発生するという仕組みだ。この罠のポイントは、「1億円あげます」と言っている人がお金を要求していないという点。もし、「手付け金をください」とか「抵当を外すので一度入金お願いします」とか言われれば、多くの人が手を引いたはず。しかし、第三者に見えるSNSが仕掛けたためカラクリに気がつかず、課金してしまったのだ。その被害者は、2年間で約2000人。被害総額は1億9000万円で、最大1000万円支払った人もいた。ある程度課金した人が、ココまで来たら1億円をゲットしないと損をしてしまうという状況にハメ込まれたというのも、被害総額が膨らんだ理由だ。ちなみにこのパターン、「遺産をもらってほしい」とか「若い男性に投資したい」など、さまざまなバリエーションが存在する。  「ロト6の攻略法を教えます」という手口も目にすることが増えた。まずは、第1段階で入会金をせしめる。これは1万円前後と小さい金額なので、もしやと思い支払ってしまう人もいる。その後、メールや電話でコンタクトを取り、ロト6の攻略情報を伝えるのだ。そのキモは、ロト6の当せん番号は作為的に選ばれており、確実に当てられる仕組みがあるというもの。その言い分を信じさせるためのテクニックが2つある。1つは、1等は当てられないが、2等は当てられるというもの。あえてできないことを言い、もっともらしく見せている。さらに、当たった金額の半額を戻してもらうように約束させること。すると、当たることは当たるのかな? と思ってしまう人が出てくるのだ。もう1つが、過去の八百長抽選の証拠を見せる手法。もちろん、八百長などは行われていないのだが、ロト6は数百回も行われているので、こじつけられる数字を見つけられることもある。例えば、「第○回の数字を全部2倍してください。それで10回後の第○回の数字を見てください。全部同じですね?」といった具合だ。ロト6の過去の当せん番号を公開しているページを見て、すわ! と思ってしまうのだ。  心理的な誘導方法は日々進化して、多様化している。そもそも、そんなオイシイ話が転がっているわけがない、と自分を強く持っていないと、誰もがネットの罠にはまってしまう可能性がある。自分だけは平気とタカをくくらず、詐欺かも? と疑うようにしたほうが被害に遭う可能性を減らせるので、日頃から注意を怠らないようにしていただきたい。 (文=柳谷智宣)

「スポーツ紙にタダで“ネタ”を提供するのはおかしい」部数減に悩む各週刊誌が下した決断

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「フライデー」HPより
 これまで特にスポーツ紙の芸能面を中心に、時には大々的に扱われてきたのが、各週刊誌の発売当日、紙面で各紙のスクープネタを紹介する記事だった。 「たとえば、よく掲載されている記事の体裁としては『●日発売の●●(スクープした媒体)によると──』という記事で、実際にスクープした週刊誌を買わなくても、どんな記事の内容か把握できてしまう。しかも、スポーツ紙が朝刊で報じたネタをテレビ各局のワイドショーがデカデカと紹介するものだから、スポーツ紙を読んでいない視聴者にも内容が伝わってしまう。どうしてそういう記事が出るかといえば、各スポーツ紙には各誌の発売前日の午後に印刷所から“早刷り”と呼ばれる、実際に書店に並ぶのと同じものが届けられ、それを元に各誌の編集部に掲載許可の承諾を取って記事を掲載するという、“紳士協定”があった」(週刊誌記者)  ところが、これまで当たり前のように行われてきた各誌とスポーツ紙の同時掲載が、今後なくなりそうだというのだ。 「先ごろ、雑誌各社を会員とする『日本雑誌協会』から『各誌の早刷りをもとにして記事を掲載するのを自粛してほしい』という旨の要望書が各スポーツ紙に届いたようで、各スポーツ紙は渋々それに従っている。なぜそうなったかといえば、昨年11月、度重なるスポーツ紙の“無断引用”に業を煮やした『フライデー』(講談社)の編集部が、各スポーツ紙に早刷りの引用禁止を通達。同誌のみならず、各誌とも部数減の傾向で、それに少しでも歯止めをかけるためにスポーツ紙やテレビでスクープの内容が報じられることをストップされようと、同誌に足並みをそろえて同協会が要望書を送るに至った。ある雑誌の編集長は『こっちは金も時間もかけているのに、スポーツ紙にタダで“ネタ”を提供するのはおかしい』と憤慨していた」(出版関係者)  とはいえ、「フライデー」以外にはまだまだ早刷りをもとにした記事を容認している媒体もあり、完全に足並みがそろったとは言えないようだが、こんな意見も聞こえてきた。 「結局、昔からスポーツ紙と各週刊誌は、持ちつ持たれつの関係。特に芸能やプロ野球を含めた各スポーツは、スポーツ紙の担当記者以外には閉鎖的。週刊誌が記事を作るため、関係者談でより深い情報を得ようと思ったら、スポーツ紙記者からもたらされた内部情報が必須となってしまう。そのため、多くの週刊誌の編集長クラスから記者までそれぞれに、しっかり“お抱え”のスポーツ紙記者がいる」(スポーツ紙デスク)  今回の一件はスポーツ紙サイドの“紳士協定破り”がそもそもの発端のようだが、果たして、各誌の部数増につながるのだろうか?

「染五郎の復帰公演でも空席が……」勘三郎、團十郎の相次ぐ逝去で暗雲漂う新・歌舞伎座のこけら落とし

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旧・歌舞伎座
 歌舞伎俳優・市川團十郎さんが3日夜、肺炎のため66歳で亡くなった。昨年12月には中村勘三郎さんも亡くなっており、歌舞伎界の中心的存在であった2人が相次いで亡くなっただけに、歌舞伎界やファンのショックは計り知れない。しかし、最もダメージを受けそうなのが、4月にこけら落とし公演を控えた新・歌舞伎座を運営する松竹だという。 「團十郎さんの死を受け、松竹の株価は下落傾向。松竹は新・歌舞伎座への建て替えで、年間25億円ほどの増益を見込んでいた。というのも、旧・歌舞伎座の最後の3カ月は連日満員だったので、一等席を割増料金にし、以来、一等席の相場が1万5,000円となり、そのうち2万円が相場になった。増益が見込めていたのは、ただ単に旧・歌舞伎座よりもチケット代を値上げし、公演回数を増やすため。4月のこけら落とし公演も1日3回公演で、一等席は2万円。ただし、目玉だった勘三郎さんも團十郎さんも出演しないので、スムーズに集客できるとは思えない」(演劇関係者)  今月4日からは、東京・日生劇場で、昨年夏の公演中に大けがを負った市川染五郎の復帰公演である「二月大歌舞伎」が行われているが、チケットの売れ行きが不調で空席が目立つという、関係者も予期せぬ事態になってしまったようだ。 「染五郎ぐらいのランクの復帰公演となれば、歌舞伎ファンの“ご祝儀”的な意味合いもあり、公演前にはチケットが完売していてもおかしくないはず。ところが、日生劇場は歌舞伎には適していない劇場にもかかわらず、一等席が1万5,000円と高額なためか、土日の公演ですら安い二等席(6,500円)と三等席(3,000円)は完売しているのに一等席が売れ残っている。26日の千秋楽公演もいまだにチケットが売れ残っており、どうやら歌舞伎ファンが染五郎の公演に魅力を感じず、財布のヒモを固くしているようだ。染五郎と共に次世代の歌舞伎界の中心を担う存在で、團十郎さんの息子の市川海老蔵も、暴行事件以来人気が下降気味。ここ数年の歌舞伎界で際立った明るい話題といえば、俳優・香川照之が市川中車を襲名して歌舞伎デビューしたことだが、歌舞伎役者としてはまだまだ経験不足でファンの心をつかめていない」(演劇記者)  どうやら、松竹がはじいたソロバンは歌舞伎ファンの心理をまったくつかめていなかったようで、今後はチケット値下げなど、集客の起爆剤となりうるファンサービスが求められている。

美観地区だけじゃない──ビミョーなお楽しみスポット満載だった町・倉敷

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後楽園も、いまやリア充のデートスポットに堕ちたのか……。
 昨年末、取材のため長らく岡山県に滞在した。近年、「大都会岡山」はネットでよく目にするスラング。しかし、大都会であるはずの岡山市の人口はわずか70万人程度。倉敷市など周辺自治体を合わせて、ようやく100万人に達する程度である。そうした岡山県の実態は、先日発売された『これでいいのか岡山県』(マイクロマガジン社)で、じっくりと記した。  今回は、そんな岡山の隠れた観光スポットを紹介することにする。  岡山県で最も多くの人を寄せる観光地といえば、倉敷市の美観地区だ。岡山市には日本三名園のひとつ後楽園があるが、観光客の数ではかなわない。2011年の統計では、倉敷美観地区が323万人なのに対して、後楽園は66万4000人、圧倒的である。  何しろ、後楽園は単なる庭園。隣には岡山城もあるが、「見たらおしまい」である。茶店や土産物屋も数える程度で、よほど庭園や城が好きな人でなければ楽しめないだろう。対して、倉敷美観地区は街並みそのものが観光地になっているわけで、白壁の街並みを周遊しながら、ゆっくりと楽しむことができる。
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冬でもそれなりに店は混んでいる美観地区。ただ、散策している人は少なめ。
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それなりに賑わっている倉敷駅北口の大型店舗。
岡山県では、これくらいでも賑わっているんだよ!
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単に歩いている人だけなら、たくさんいる美観地区に通じる商店街。観光客は用がなさそうだよなあ
 ただ、人が集まっているのは美観地区だけ。起点となるJR倉敷駅と美観地区とは徒歩10分あまりの距離だが、その間にある商店街は閑散としている。一昨年には、駅の反対側に大型ショッピングモールもオープンしたが、商店街にはなんの恩恵もない。  JR倉敷駅も、併設していたホテルが廃業したこともあり、うらぶれた雰囲気に満ちている。 ■何も観光するモノがない鉄道・水島臨海鉄道  その倉敷駅の隣にあるのが、水島臨海鉄道の倉敷市駅だ。倉敷市の産業の柱となっているのが、水島コンビナート。その水島コンビナートへ物資を輸送する鉄道が、水島臨海鉄道である。倉敷市駅から出発する、この鉄道の旅客営業の終点は、三菱自工前駅。まさに工場地帯にふさわしい駅名だ(本線の終着駅は倉敷貨物ターミナル駅なのだが、一般客は乗せてくれない)。  倉敷市駅へとJR倉敷駅から、案内を見ながら飲食店が集まるビルの脇を歩いていくと、大きく「水島臨海鉄道のりば」という表示が。まさか、三階建てとは随分と儲かっているのだなあ……と近づいたら、看板が掛かっているのは自転車置き場。駅は、その裏であった。
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水島臨海鉄道はちょっと懐かしい感じのする車両。
 気を取り直して改札をくぐると、やってきたのはディーゼルカー。平日の日中だが、乗客はそれなりにいる。この先、ワクワクするような大工場が連なる車窓の風景現れるのかと期待していたが、まったく違う。  ずーっと続くのは住宅地ばっかり。終点一つ前の水島駅を過ぎると、ようやく工場群が見えてくる……ほんのちょっとだけ。なんとも期待はずれなまま、汽車は無情にも終点・三菱自工前駅に到着したのである。
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単に道路沿いにある駅。観光すべきスポットはまったく存在しない。
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工場群の中にあるだけに、過去に危険物を持ち込んだ人がいるんだろうか?
 降りたのは筆者のほかは、工場に用がありそうなサラリーマンが数人だけ。駅名の通り、駅の前には三菱自動車の工場が。あとは何もない。店も民家もなく、ただただ工場があるばかり。しばらく、折り返しの汽車もやってこないので、一つ手前の水島駅まで歩くことにしたのだが、途中、人に出会ったのはわずかに3人だけ。工場は絶賛稼働しているようだが、中を見ることもできず、ただ閑散とした道路が続いているだけなのだ。
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駅名にもなっている三菱自動車だが、特に見るべきものは何もない。
 筆者は、こうした旅行の時には、極力同じ路線を折り返すのを避けることにしている。なので、帰りは鉄道以外で別の場所に向かう手段を探してみた。きっと、バス路線はあるだろう。そう思って大きな道沿いを歩いていたら、バス停はあった。確かにそこはバス停なのだが、バスはやってこなかった。なぜなら、バス停には「バス路線廃止」のお知らせが貼り付けてあったのだ。いまやこのバス停は、児島ボート(競艇)開催日の臨時バスのためだけに使われているのだ。途方に暮れながら水島駅までたどり着いたが、やっぱり水島駅からのバスも廃止されていたのだった……。おまけに、この水島駅も駅前にコンビニすら見当たらない。遠くには工場群、周囲には住宅。こんな何もない風景を味わえる場所も、国内ではそうそうないのではなかろうか。 ■レトロというか、リアリズムすぎる町・玉島  そんな、うらぶれた風景を見せる場所が、倉敷市にはもう一カ所。水島と高梁川を挟んだ対岸にある、玉島地区がそれだ。玉島は、もとは倉敷市とは別に玉島市を形成していた江戸時代からの港町で、鉄道唱歌にも「金刀比羅宮に参るには 玉島港より汽船あり」と歌われている。しかし、対岸にもかかわらず、公共交通機関を使って玉島へたどり着くのは、一苦労だ。  まず、水島臨海鉄道で倉敷まで折り返し、JRで福山方面へ二駅目。新幹線停車駅の新倉敷駅が、玉島地区の中心となる鉄道駅だ。
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無機質な新倉敷駅で唯一、ほっこりするのは、このダルマのみ。
 だが新倉敷駅は、地名は「倉敷市玉島爪崎」となっているものの、港町として栄えた旧市街とは随分離れている。この新倉敷駅は、新幹線が開業する1975年までは玉島駅と呼ばれていたそうだが、もう、そのことを記憶している人も少ない。  旧市街地まではバスで10分ほど。しかし、バス停の前で筆者は愕然とした。次のバスは1時間10分後! 玉島の市街地へ向かうバスは、両備バスと井笠バスカンパニーの二つ。井笠バスカンパニーは、昨年、破産による事業停止で話題となった井笠鉄道バスの受け皿だ。もはや、バスを利用するのは高校生と老人くらいになってしまい、運行すればするほど赤字がかさんでいった結果の破産……日中とはいえ、この本数の少なさに「よほど乗る人が少ないのだ」と実感した。  でも、チェーン店と住宅地しかない住宅地を散策した後、ようやくやってきたバスには、もっと驚いた。先にやって来たのは井笠バスカンパニーのバス。一歩バスに足を踏み入れて、なにかのはずみでタイムスリップしてしまったのかと、思った。
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よくもまあ、こんなバスが現役で走っているモノだ。途中まで同じ路線を走る両備バスとは大違い
 バスの床が木でできていたのだ。しかも、ものすごく掃除が行き届いておらず、ホコリや砂が溜まって、リアリズムたっぷりのレトロ加減。座席の背面には「おっぱいぼいんぼい~ん」とか、落書きもそのまま。「田舎のバスはおんぼろ車~」という昔の流行歌が似合うほど、田舎じゃないと思うのだが……(と、そのバスに海外旅行帰りとおぼしき、大きなスーツケースを持って乗り込んできた若い女性がいたのも驚き)。  さて、そんなバスに揺られて10分ほどでたどり着いたのは玉島中央町。玉島は良寛ゆかりの名刹・円通寺で知られる町だが、近年はレトロな街並みで売り出し中だ(そう考えると、あのレトロなバスも合点がいく)。
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歴史を感じさせる? 落書きもちゃんとある。
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というわけで、本文に記した通り取り壊し中。
今頃、跡形もなくなっているんだろうなあ。
 その町の中心部にあるのが映画『ALWAYS三丁目の夕日』のロケ地にもなった、1948年建造の港水門である。さっそく、水門の方へ行ってみると、事前リサーチと違う姿がそこにはあった。水門の半分あまりが消滅しているのだ。聞けば、県道の改良工事で取り壊すことになったのだとか。レトロな街並みで売り出しているというのに、目玉になりそうなスポットを取り壊すとは、玉島の人々は、どこへ行こうとしているのか?
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人の数は少ないものの、意外に営業している店は多い。
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少なくとも、よいセンスであることは間違いない。
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ここなら、どんな機械音痴でもパソコンお知識が増えそう。
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なお、この地域のお土産は大手まんぢゅうではなく、藤戸まんぢゅうである。
 ……気を取り直して、ブラブラと町を散策してみるが、やっぱりウリにしているだけあって、街並みは昭和レトロな雰囲気に溢れている。人通りは少ないものの、営業中の店もけっこうあるし、どれも「昭和からやってますよ」感が半端ない。オシャレなカフェのようなものはもちろん、存在しない。  近年、都内でも商店街に無理矢理「江戸とか明治の街並みを再現しました」みたいな形で、町おこしを行っている地域もある。ところが、この商店街にはそうした無理矢理な感じがまったくない。ただ、今まで通りにやっているだけなのだ。レトロさをウリにした土産物屋があるわけでもなく、生活感があって心地よい。でも、たまたま見つけた饅頭屋で観光客も増えているのかと聞いてみると 「ぼちぼちですねえ」 と、まったく気のない返事が。  レトロ感をウリにしながら、ちとやる気がないようにも見えるこの町。でも、考えてみれば、レトロな雰囲気を「再現」して観光客を呼び込もうとしている町は、イヤらしい感じがプンプンする(都内にも、東海道の雰囲気を再現と銘打って店の看板や屋根を江戸時代風にした、ちょっと無理のある商店街が)。生活のために古いモノが取り壊されるのも、暮らしている人々がいるからこそ。こっちのほうがリアルでいいのかも。 (文=昼間たかし)