日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。6月20日の放送は「ママにしてくれてありがとう~血のつながらない母娘の12年~」。
あらすじ
都内の一軒家。ここには、「ママ」の美香と、夫であるアイルランド人の 「ダディ」ことトニーと、6人の子どもたちが暮らしている。美香夫婦が育てているのは、育児放棄や虐待や経済的理由などの事情から、実の親と一緒に暮らすことができなくなった子どもたちであり、夫妻はこれまでそのような17人もの子どもを里親となって育ててきた。
きょうだい最年長で23歳のあき子は、物心がついた頃には児童養護施設に預けられており、実母の記憶はほとんどない。実母は激しいDV被害を受けていたようで、あき子にとって実母最後の記憶は、病院のベッドに横たわる母親の姿で、言葉を交わすこともできなかったようだ。
養護施設で過ごしたあと、12年前から美香の家で暮らし、美香を「ママ」と呼ぶなど家族仲も良好だ。しかし実母に会いたい思いもあり、高校の卒業式と成人式には実母に手紙を出したが、返事はなかったという。高校卒業後に就職するも、人間関係のトラブルで退職し、今は美香の家に戻って共に暮らしている。
そんな中、児童支援を行う女子大生3人が、あき子の境遇について教えてほしいと家にやってきた。あき子は事前に用意した原稿を学生たちの前で読み進めていく。しかし、児童養護施設から通っているという理由で、学校でいじめられ、給食のおばさんに孤独な気持ちを聞いてもらっていた過去を話しているうちに、涙がこみ上げてくる。子どもながらにして人を信じ、頼ることもできなくなり「こんな世界に生まれてよかったのか」と思い至った……と語ると、ついには言葉に詰まり、部屋に戻る。横で話を聞いていた美香は、自分と年が変わらない女子大生たちが恵まれているように見え、つらかったのかもしれない、と話した。
その後も、塞ぎ込みがちなあき子を前に、美香は実母を探そうとあき子に提案する。あまりに音信不通が続くのでもう亡くなっているのかもしれないと思われたあき子の実母だったが、あき子が成人式の際に送った手紙に返信をしていたことがわかる。あき子の退職と、それに伴う転居により宛先不明で実母のもとに戻ってしまっていたとのことで、あき子は実母からの手紙を3年越しで手に入れる。
緊張からか不安からか、しばらくは手紙の封を切ることもできなかったあき子だったが、手紙にはこれまで連絡できなかった理由についても触れられており、あき子を愛し心配しているということ、繰り返し「ごめんね」とつづられていたという。涙ながらに読んだあき子は番組スタッフに「(実母が)生きててよかった」と笑顔を見せる。あき子は実母に対し「今とても幸に暮らしてます」と返信する。
たいていの子どもなら何も考えず、当たり前のように親を頼り、信じ、甘えるものだが、あき子の子ども時代にはそれがなかった。「こんな世界に生まれてよかったのか」とまで、あき子を苦しめた実母に対し言いたいことはゴマンとあれど、当のあき子が実母と連絡が取れ「(実母が)生きててよかった」と穏やかにうれしそうに話していたので、もう部外者が言うことは何もないだろう。
ママと暮らす未成年の子どもたちの情報は、番組でほぼ伝えられていなかったが、中には部屋に引きこもりがちな子もいるようで、あき子が洗濯物を、その子の部屋の前の廊下に慣れた様子で置いていた。番組内では美香が里親の会に参加していたが、そこではほかの里親も、引きこもりがちな子どもについて話していた。
実の親に棄てられる、という絶望は子どもにとってどれだけ深いのだろうと思う。その後の養父母の家庭が温かいものであっても、じゃあ、これからは元気に、と簡単に切り替えられるようなものではないだろう。しかし一方で、そのような過酷な状況下にある子どもに手を差し伸べる、美香をはじめとした里親たちの姿には救いを感じた。
厚生労働省の里親制度のホームページを見ると、平成30年時点で5,556名の児童(18歳未満)が里親の元で生活しているとある。また、里子を受け入れる「登録里親数」の推移を見てみると、昭和40年は1万8,230世帯あったが、その後は減少をたどり、昭和60年には半分以下の8,659世帯まで減ってしまう。
しかし、そこから増加傾向に転じ、平成30年では1万2,315世帯まで増加している。平成30年度の直近5年を見ても、グラフ上では登録里親数は「右肩上がり」の増加ぶりだ。少子化が進んでいることを思えば上々の数値に思える。
一方で、2018年前後における世界の先進国における要保護児童に占める「里親委託児童の割合(つまり、児童養護施設などの施設で育つのではなく、里親のもとで育っている子どもの比率)」を国別に比較すると、日本は21.5%で、グラフ内で比較対象だった欧米各国や、また香港や韓国と比べてもひときわ低く、「児童養護施設での養育」が中心になっていることがわかる。
ただし、この調査は8年前の10年ごろに行われたものもあり、それを見ると当時の日本の里親委任児童の比率は12.0%とさらに低い。諸外国にはまだ及ばないが、ここ近年でも改善しつつあることはわかる。しかし、里親だからいいというわけでもなく、里親をたらいまわしにされてしまうケースは当然望ましくない。
施設での養護から里親の養護に単純に切り替えていけばよいという話でもなく、その質も重要だし、美香が参加していたような里親会のような、その後の里親側の支援、サポートも欠かせないものだろう。一筋縄でいかない課題もたくさんある中で、それでも今も、美香夫婦のように目の前の子どもが子どもらしく子ども時代を過ごすために動いている里親、児童福祉関係者の人たちが日本の各地にいるのであり、このような立派な人たちのことを心から尊敬する。
次週は「はぐれ者とはぐれ猫 ~小さな命を救う男の闘い~」。猫の保護に人生をささげる活動家・阪田泰志。身勝手な飼い主、多頭飼育の崩壊……。猫を救いたい男の前に広がる過酷な現実とは。
・厚労省ホームページ
・2010年度版「諸外国における里親等委託率の状況」(P11)
・2018年度版(P29)「諸外国における里親等委託率の状況」