3月22日に公開された『報道ステーション』(テレビ朝日系)のウェブCMが、ネット上で「女性蔑視」だと批判を浴びている。
若い女性が仕事を終えて帰宅し、誰かと会話しているような形で進行する同CM。彼女は「会社の先輩、産休あけて赤ちゃん連れてきてたんだけど、もうすっごいかわいくて!」と笑顔で話したあと、「どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかってスローガン的にかかげてる時点で、何それ時代遅れって感じ」と一言。続けて、「すっごいいい」化粧水を購入するも消費税が高いと感じた、それなのに「国の借金は減ってない」などと語り、「あ、9時54分! ちょっとニュース見ていい?」と聞いた際に「こいつ報ステみてるな」とテロップが出る、という内容だった。
ネット上で特に問題視されたのは、「ジェンダー平等」のスローガンを「時代遅れ」としていた部分。「産休後も女性が普通に働いているほど、ジェンダー平等が当たり前の時代に、政治家は今さらそんなスローガンを掲げるのか?」といった批判的なメッセージにも取れるが、「何が言いたいのかさっぱりわからない」「“ジェンダー不平等”な状況が続いているのに、平等な社会になったと勘違いさせる表現はよくない」などの意見が続出。また、「『若い女性はニュースなんて見ない』という偏見がにじみ出てるCM」との指摘も見受けられ、炎上状態に。結局、このウェブCMは同24日に削除され、『報ステ』公式Twitterは謝罪文を投稿した。
女性蔑視や性差別的な表現が物議を醸し、CMや広告を取り下げる例は、近年特に多い。サイゾーウーマンでは、こうした炎上がなぜ起こってしまうのか、「メディア文化論」「ジェンダー論」を研究する大妻女子大学教授・田中東子先生に話を聞いていた。『報ステ』のウェブCMについて議論起こっている今、あらためて同記事を掲載する。
(編集部)
男性差別CM”の炎上騒動はなぜ起こったのか? 「ALFACE」「保険のビュッフェ」の問題点
(初出:2018年1月2日)
「女性蔑視である」という理由から、テレビCMや広告が炎上するケースが増えている。2016年10月、資生堂の化粧品ブランド「インテグレート」のCMが物議を醸した。多忙により、疲れた様子で仕事をする女性社員に、男性上司が「(頑張っている様子が)顔に出ているうちは、プロじゃない」と指摘するといった内容に、ネット上を中心に「疲れていても女は綺麗でいろということ?」「セクハラ・パワハラに当たる」などと抗議の声が上がったのだ。
ほかにも、鹿児島県志布志市が16年9月に公開した、ふるさと納税PR動画「うな子」は、うなぎをスクール水着姿の美少女に擬人化し、プールで育てていくといった内容で、「なぜ性的な内容でふるさと納税PRを?」「女性を貶めている」などと批判が噴出。また17年5月、ユニ・チャーム「ムーニー」のCMに関しては、母親が初めての育児に孤軍奮闘する様子が描かれ、最後に「その時間が、いつか宝物になる」との字幕が入るのだが、「ワンオペ育児を賛美しないで」と悲痛な叫びが上がった。
女性を描いたこうしたCMの炎上事例は枚挙に暇がない状況だが、一方で17年、「男性に差別的」という理由で問題視されたCMも散見されるようになったのだ。この現象を、「メディア文化論」「ジェンダー論」を研究する、大妻女子大学准教授・田中東子先生に解説していただいた。
性差別CMにはパターンがある
――近年、“女性蔑視”CMの炎上が多発しています。急にそういったCMが増えたということなのでしょうか。
田中東子氏(以下、田中) 昔から、女性蔑視に当たるCMは放送されています。今、ビデオリサーチ社の方と過去20年くらいのCMをピックアップして分析をしています。まだ結果は出ていないのですが、これまでにも女性蔑視に当たるCMはいくつもありました。
CMにおける女性蔑視の中には、「女性を性役割分業のステレオタイプで描写する」「女性を性的なアイコンとして使う」「女性に脅しかけ(『○○を使わなければ可愛くなれない』など)をする内容」の3パターンがあると思います。
――では、なぜ今炎上が増えているのでしょうか?
田中 この20年間で、女性のライフスタイルは大きく変わりました。共稼ぎ夫婦の増加、それに伴って家事や子育てを夫婦で分業するような都市型の若い世代の夫婦も増えましたし、そして何より、結婚しない人も少なくありません。そういった人にとっては、ステレオタイプの“理想の家庭像”をグイグイ押し付けてくるようなCMに、嫌な感じを覚えると思うんです。
それともう1つが、メディア環境の変化。これまでは、リビングルームや自分の部屋などで、それぞれがテレビを見て、心の中だけで「何かこのCM嫌だなぁ」と思っていて、それを後日、人に話そうにもタイムラグが生じていました。しかし、現在では、今見ているCMについて、「嫌だ」と思ったことを、すぐにSNSで発信でき、実は同じものを嫌だと思っていた人がたくさんいることがわかるようになったんです。それが目に見える“かたまり”として、出てきやすくなったのではないでしょうか。
――17年は、男性蔑視だと物議を醸したCMも目立ちました。自由に使えるお金が少ないと嘆く主婦が、夫に向かって「安い電気に替えるか、稼ぎのいい夫に替えるか」と脅す「ENEOSでんき」、ブサイクな男性に好意を持たれた美人の女性が嫌悪感を示す「ALFACE」、花嫁が二股をかけていた男に「俺は君の何だったんだ?」と問い詰められ、冷たく「保険」と言い放つ「保険のビュッフェ」などが挙げられます。
田中 男性蔑視といわれるCMにもパターンがあり、「イケメンかブサメンかという外見差別(ルッキズム)の描写」「男性をATMやお財布扱いする内容」「男性は臭いといった偏見」が多いのではないでしょうか。
今まで、男性は社会的地位や経済力を独占できていた性別なので、“容姿”はそこまで気にならないような状態だったんです。しかし現在、社会的地位も経済力も、男性の独占物ではなくなり、ロスジェネ以降は特に、社会でのポジショニング取りがうまくいかず、経済力も持てなかったという男性が増加しています。男性も、地位や経済力ではなく、外見で選別されるようになり、「地位やお金はないが容姿はいい男性」を、「地位とお金を持った女性」が消費することも珍しくなくなりました。そういった背景から、CMにおける男性の容姿の描かれ方に、疑問を抱く男性が増えたというのはあるのではないでしょうか。かつて、男性は「社会的地位や経済力」、女性は「容姿・見た目」で生き延びていく――といった面があったものの、現在はそれが逆転しつつあるようにも思えます。
――「ALFACE」のCMは、まさに男性に対するルッキズムが問題視されました。
田中 あまりメジャーな企業ではないので、話題性を狙いすぎて炎上をしてしまった印象もありますが……男女逆だったら、こんなものでは済まないような大炎上になったと思います。
――「ALFACE」のCMにはもう1パターンあり、美人な女の子とそうではない女の子の2人が登場し、イケメンが美人に好意を寄せる……といった内容でした。
田中 その2人の女性の容姿は、あからさまに優劣がついているわけではありませんでしたよね。そうすることで、炎上を避けようとしたのでしょう。だからといって、男性が容姿で差別されるCMを作っていいかというと、それは絶対にあり得ません。ただ、このCMに関して、一部では問題になったものの、意外と男性が騒がない印象もありました。その背景には、「男はそもそも顔じゃない。社会的地位や経済力だ」といった価値観があるのでしょう。なので、それらを差別された表現の方が、男性は嫌なのかもしれません。それが「ENEOSでんき」「保険のビュッフェ」のCMでしたね。