昨年12月、レイプによって妊娠したと説明し、つわりがあることも明かしていた坂口杏里が、1月24日、インスタグラムで「お腹の子、中絶したよ」と告白した。ネット上では、坂口の心身を気遣う声が聞かれた一方、あらためて、波瀾万丈すぎる彼女の人生が注目を浴びた。
有名女優・坂口良子さんの娘として、2008年に芸能界デビューした坂口。一時期は売れっ子二世タレントとして活躍していたが、13年に良子さんが亡くなると徐々に問題行動が目につくように。ホストクラブ通いで多額の借金をつくり、16年にはAVデビュー。その後、風俗店に勤務するようになった一方、ホストクラブ勤務の知人とトラブルを起こし、2度も逮捕された(いずれも不起訴)。その後、YouTuberに転身し、最近は新宿・歌舞伎町のバーで働いていたが、そこで監禁され、レイプ被害に遭って妊娠・中絶したとのこと。薬物使用疑惑まで浮上する中、現在は、バーとセクキャバでの仕事を並行して行っているようだ。
そんな坂口にネット上では、「歌舞伎町から足を洗ったほうがいい」という声が散見される。坂口はインスタグラムで、夜の街で出会った人への感謝や、いかに信頼しているかという思いをつづっているのだが、人生が好転しているように見えないだけに、ネットユーザーからは「そんなすぐ人に心を開かないほうがいい」「信じていい人なのかちゃんと見極めるべき」と再三指摘されているのだ。
一方で、以前から「行政に相談に乗ってもらえないの?」「家族に連絡してほしい」「ちゃんとした支援を受けてほしい」との意見も聞かれていたものの、坂口が行政や家族を頼っている様子も、何らかの支援を受けている様子も見受けられない。しかし、その「ちゃんと支援」とは、果たして何なのだろうか……。
サイゾーウーマンでは過去に、新宿・歌舞伎町で、家庭内暴力、DV、虐待、ひきこもり、ストーカー、金銭トラブルなど……さまざまな悩みを抱える人たちの問題解決に奔走してきた「公益社団法人日本駆け込み寺」の設立者で、「よろず相談研究所」所長・玄秀盛さんに取材を行っていた。
「だいたいな、支援をしたこともない人間が、『支援』『支援』という言葉だけを口にしてるような気もする」と語る玄さんの真意とは? 坂口が再び注目されている今、同記事を再掲する。
(初出2019年9月15日)
坂口杏里に必要な「支援」とは? ホストで借金、逮捕、自殺未遂……歌舞伎町の駆け込み寺に聞く
8月27日、元タレント・坂口杏里さんが、ホストクラブ勤務の知人男性とトラブルを起こし、住居侵入の疑いで逮捕(不起訴)された。なお彼女は2017年にも、同じ男性への恐喝未遂容疑で逮捕(不起訴)されている。
坂口さんといえば、有名女優・坂口良子さんの娘として広く知られる存在だ。6月に放送されたドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション ワケあって…坂口杏里』(フジテレビ系)によると、坂口さんは08年に芸能界デビューし、一時期は2世タレントとしてバラエティー番組に引っ張りだこだったが、13年に良子さんが亡くなってから、その寂しさを紛らわすように、ホストクラブにハマッていったという。気づけば多額の借金を抱えることになり、16年にはAVデビュー、そして、風俗嬢に転身。同番組では、自殺未遂をしていたことも明かされていた。
しかし坂口さんは、そんな崖っぷちの状況から抜け出すため、昨年末、芸能界復帰を目指すと宣言していたわけだが、ここに来て2度目の逮捕――。芸能界復帰の夢は泡と消えそうな中、今度はYouTubeに「坂口杏里チャンネル」を開設し、良子さんの遺産や義理の父であるプロゴルファーの尾崎健夫氏について話す動画をアップしている状況だ。
そんな坂口さんを、ネットの住民たちはどう見ているのか。絵に描いたような“転落人生”だと好奇の視線を向ける者、「もっと反省すべき」と厳しい言葉を投げかける者、はたまた、天国の良子さんを哀れむ者などさまざまだが、中には「支援を受けた方がいい」「誰か周りに頼れる人はいないの?」と声をかける者もいる。はたから見ていても、どこか心もとない彼女を心配しているのだろうが、その「支援」とは何か、誰もがわからない状況なのではないか。そこで今回、新宿・歌舞伎町で、家庭内暴力、DV、虐待、ひきこもり、ストーカー、金銭トラブルなど……さまざまな悩みを抱える人たちの問題解決に奔走してきた「公益社団法人日本駆け込み寺」の設立者で、「よろず相談研究所」所長・玄秀盛さんに取材を行い、坂口さんに多額の借金を背負わせたホストクラブの構造、彼女が抱える問題の正体、そして彼女が立ち直るために必要なことについて、見解を聞いた。
――坂口さんは、ホストクラブにハマッて、1300万円(18年6月時点)もの借金を抱えているそうです。
玄秀盛さん(以下、玄) そういう女の子は、杏里さん以外にもたくさんいるよ。そもそもホストクラブの構造自体が問題。ホストの最低保証給って、日給2,000円くらい。これは今から約40年前に「愛‐本店‐」の愛田武元社長が決めたもので、あとは歩合制で給料が決まるんやけど、歌舞伎町のホストって「カネと女が手に入る」と思って上京してきた地方出身者ばっかりやから、「日給2,000円」という現実は厳しいものがある。しかも「マンションの六畳一間に5人暮らし」「食事はカップラーメン」みたいな生活を目の当たりにする。そうすると、ホストは客に――しかもまだ20歳そこそこの子に、一晩30~50万円なんて大金を使わせようとしだすというわけや。
――女性客は危機感を持たないものなのでしょうか。
玄 女の子はマインドコントロールされてんねん。ホストは、アルコール慣れしてない20歳そこそこの子に酒を飲ませて、会話を盛り上げ、甘い言葉をささやく……俺から言わしたら、そんなん「悪魔のささやき」やけど、愛情と優しさに飢えてる子やったら、ハマっちゃうよ。しかもホストってイケメンやろ。でも、ホストは「値踏み」もしてる、「この子はどれくらい稼げるか」っていう。
――つまり、キャバクラや風俗で働かせて、いかに自分にお金を貢がせるか……ということですか?
玄 そうそう。歌舞伎町にはホストクラブが約200店舗あって、仮に1店舗10人在籍してるとして、約2,000人のホストがいる計算やけど、「何も持っていない女の子から、いかにカネをむしり取るか」を考えてる“ハイエナ”みたいな奴が多いのは確か。もちろん真面目に働いてるホストもいるけど、そういう奴は目立たんねん。キャバや風俗で稼がせるにしても、最初は性的サービスのないものから始めさせて、徐々に慣れさせていく。エグいけど、ホストが女の子に5年間の「AVを含む」モデル契約をさせるという話もあった。「AVを含む」ことに気づいた女の子が「聞いてなかった」と言っても、「キャンセル料30万円だよ」と迫り、断れなくする。逆にホストが保証人になって、「いいよ、ここは俺が払うよ」と言って、女の子側に借金を作ることもある。「彼が払ってくれたんだ」とほだされた女の子は、さらにホストにカネを使うようになり、そうしてできた借金を返すため、「彼のためならいいか」といって、風俗で働きだす。そしてまたホストにカネを使う。ホストクラブは、こういう負のスパイラルで成り立っているのが多い。
――テレビで放送されるホストのドキュメンタリー番組などでは、見えない一面ですね。
玄 最近は、ホストの数が増えて、客の奪い合いになり、どんどんあくどくなってる印象もある。あと、地方の若い女の子が「HOST‐TV.COM」(ホストクラブ動画・ホスト求人・密着・PV・バラエティ番組を毎日更新するサイト)を見て、歌舞伎町にやって来て、ホストクラブの負のスパイラルにハマッてしまうことも増えてるよ。客引き禁止条例ができてから、ネットで集客するようになってるんやな。俺はそういう風潮をよくないと思っていて、ホストやホストクラブのオーナー、「HOST‐TV」社長に「勉強会をしませんか?」と声をかけてます。勉強会を開こうと思ってる話は、新宿区や新宿警察署の関係者に話をしているよ。
――坂口さんも、ホストクラブの負のスパイラルにハマッているのかもしれません。
玄 完璧にハマッてる。杏里さんは愛情が欲しいんやと思う。だから昔の男を追いかける。一度付き合った男とは、たとえ別れても距離が縮みやすいから。でも、そのホストの男に「こいつからはもうカネ取られへん」と思われてたら、厄介者扱いや。警察を呼ばれたのも、そういう事情があったのかなと思う。
――坂口さんは、昨年末に風俗を辞めて芸能界復帰を目指すと宣言しましたが、現状、辞められていません。
玄 辞められない理由は簡単やんか、孤独だからや。寂しいと、つい元カレのホストに電話して、飲みに行ったりして借金を作る、で、カラダで払う。その繰り返し。「女友達と遊べばいいのに」という人がいるかもしれんけど、女友達からは「『カネ貸して』と言ってくる厄介な子」だと思われて敬遠されるねん。男は別や。言い方は悪いけど、たとえカネはなくても「セックスはできる」と思って、ある程度は付き合ってくれるからな。
こうやって、孤独によってどんどん落ちていく。その姿をマスコミが報じると、「悪名は無名に勝る」で、また杏里さんに人が群がる、もてはやす。本人もその気になって、ネオン街での脚光を求めてホストに出かけ、借金を作り、カラダで払う……という連鎖もあると思う。シャブ中と一緒や。なんでシャブ打つか知ってるか? スーパーマンになりたいんや。自分じゃない自分になるためにシャブを打つ。
――坂口さんも同様に、脚光を浴びることで、「自分じゃない自分になりたい」のかもしれませんね。彼女がこうした負の連鎖を断ち切るためには、まず借金を完済するのが重要なのでしょうか。
玄 うち(日本駆け込み寺)経由で、ホストへの350万円の借金を踏み倒して飛んだ子もおるよ。弁護士を入れて、借金の処理をしたことだって何度でもある。俺も債務保証で2回自己破産してるしな。お金の問題を処理するのは実は意外と簡単で、それより「男への依存」をどうするかが問題やねん。男に「褒められたい」「優しくされたい」「チヤホヤされたい」――シャブに依存するのと同じように、「男」に依存しているのを、どう断ち切るか。たとえ借金がなくなっても、心の問題が解決してなかったら、また借金するだけや。
じゃあ断ち切るためにどうするのかというと、「私はここまで落ちた」ということを受け止め、過去を見つめて、生き直しをせなあかん。そうしたら立ち直れると思うけど、何よりも本人が「立ち直りたい」という意志を持つことが大切。シャブ中やったら実刑食らって、刑務所にいる間に目を覚ますこともできるけど、杏里さんの場合は実刑の対象ではないからな。
――例えば坂口さんが自らの意志で、日本駆け込み寺にやって来たら、玄さんは具体的に何をしますか?
玄 普通の生活を教えます。例えば「月収20万円」で暮らすとしたら、どんな生活になるのかを考えさせる。お金の価値をわからせる。月収20万円だと手取りはもう少し下がるけど、そこからいくら食費に割くか、1回の昼食代は何円に抑えなあかんか、と。まぁ昼食はなか卯で食べなあかんな。そういう生活を、まずは1年続けてみる。そういう姿を隠さずに、世間に見せることも大事や。まぁでも、月収20万円も得られるスキルが杏里さんにあるかどうか。昼間働いて、20万稼ぐというのは大変なことだと思うよ。それと並行して、依存から脱するため、メンタルクリニックに通うことを勧めるね。
――お金の話で言うと、『ザ・ノンフィクション ワケあって…坂口杏里』で、坂口さんがブランド品を身に着けていたことから、ネット上では「それを売って少しでも借金返済に充てるべき」といった声が出ていました。
玄 売れへん売れへん。売っても二束三文や。みんな単純に「売れば?」と言うけど、売ったらまた新しいものを買うことになるんやから、あるもんは使ったらええねん。それよりも、自分で生き直すと決意して、「平凡な生活」というものを積み重ねていくこと、それから同性でも異性でも友達を作ることの方が大事。その友達ってのは、「悪さをしない」奴やで。シャブかて、本人が「やめよう」と思っても、周りの奴らが誘いにくんねん。そういう奴らと縁を切って、「無償」の友達を作らんとあかん。
――ホストは、お金を介する「有償」の関係ですもんね。
玄 そうやで。杏里さんが本人の意志で直接ここに来て、「今後こうしたい」という話を聞かせてくれれば、もっと具体的なメニューを提案できると思う。ただ、杏里さんはいま、貴重な経験をしてるんやから、それを生かさなあかんと思うわ。まず自分を救って立ち直る、そしたら、同じように苦しんでる女の子を救うこともできる。俺、シャブ中だった奴に、シャブ中の奴の相談に乗るように言うことがあるんやけど、そうすることで「二度とシャブをやらない」と、自分に言い聞かせることにもつながるからな。
ちなみにやけど、日本のダンス&ボーカルグループのAの親父も、悪い仲間と縁を切るために、うちの社員として3年半働いて、ボランティアの勉強をしてたんや。彼は杏里さんと逆バージョンの「息子の七光り」。周りからちやほやされて、勘違いしてるところもあったよ。でも、そんな彼も今では自立しました。
――坂口さんの現状を見て、「実の兄や義理の父親が支援すべき」という世間の声も根強いのですがいかがでしょう。
玄 傍観者はみんなそう言うよ。でも俺は違うと思う。そもそも家族は、「更生」を経験したことないやろ? 自転車に乗ったことのない奴に、むりやり乗れ乗れって言ったって、うまくいくはずがないやん。杏里さんも家族に対しては甘えが出るだろうし、「あの時こうしてくれなかったから、私の人生はめちゃくちゃになった」なんて、過去のことを言い出すと思うよ。杏里さんの更生には、絶対に第三者の「他人」が必要や。
だいたいな、支援をしたこともない人間が、「支援」「支援」という言葉だけを口にしてるような気もする。何を根拠に「支援」なんですか? というのを聞きたいね。「弁護士に相談を」という人もおるやろうけど、お金の問題が片付いたとして、心の問題は? 「行政に相談を」って、じゃあ具体的にどこに? 俺は歌舞伎町で17年間、老若男女5万人の相談に乗ってきた。加害者でも被害者でも、救いを求めてるなら、話を聞くよ。加害者が二度と過ちを繰り返さないように、被害者が立ち直れるように。目の前のたった一人の人を助けるという思いでやってきた。杏里さんと似たような状況の女の子もたくさんいた。もし杏里さんがここに来てくれたら、1000通りでも1万通りでも更生のメニューを提案するよ。
玄秀盛(げん・ひでもり)
1956年、在日韓国人として大阪市西成区に生まれる。両親の離婚などによって、複雑な家庭環境で育ち、「4人の母」「4人の父」のもとを転々とする。2000年、自身が白血病をおこす可能性のあるウイルスの感染者であることを知り、ボランティアに目覚め、02年「NPO法人日本ソーシャル・マイノリティ協会」(通称・新宿歌舞伎町駆け込み寺)を立ち上げる。11年、NPOとしての活動を停止し、「一般社団法人日本駆け込み寺」を設立、その代表に就任。12年、内閣府より公益社団法人の認可を受け駆け込み寺を公益化し「公益社団法人日本駆け込み寺」に。今年5月、NHKで放送されたドキュメンタリー『信じる男 信じられた男~新宿歌舞伎町駆け込み寺~』は大きな反響を呼んだ。
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