日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。9月27日は「あの日 妹を殺されて 前編 ~罪を憎む男が選んだ道~」」というテーマで放送された。
あらすじ
新大阪駅のほど近くにあるカンサイ建装工業。社長の草刈健太郎は犯罪加害者支援として企業7社と日本財団が2013年に開始した「職親プロジェクト」に関わっており、草刈自ら、面接のため全国の刑務所や少年院を月に一度訪ねる日々を送る。「雇ってみなわからへん」と基本、断らずに全員採用。ただし、身元を引き受けたあとすぐ姿を消されてしまうことも多いという。早く出所するために利用されたのだ。
裏切られることも多い加害者支援を草刈が続けるのには理由がある。2005年、草刈は7歳下の妹の福子さんをアメリカで殺害され喪った。犯人は福子さんが現地で結婚した夫だった。犯罪被害者を減らすには、まず加害者を減らすことが大事であり、「妹に『やれ』って言われてる気がする」と草刈は加害者支援を続ける。
同社では7年間で18人の犯罪加害者を雇い、今3人が働いているという。そのうちのスグルは元窃盗犯だったため、マンションの大規模修繕工事において、競合会社がマンション住民に窃盗の元受刑者がいることを言いふらし、6億の受注を逃すこともあったという。スグルは草刈のことを「神様みたいな感じ」と話し、仕事の幅を広げようと国家資格、一級塗装技能士の勉強に励んでいる。
同社の社員寮の寮長であるコウスケは米国の名門、コーネル大学を卒業し、その後は大手商社で年収2000万を稼いでいた超エリートだったが、覚醒剤の使用と所持で懲役2年、執行猶予4年の判決を受ける。草刈のことを知りメールを送り、今は同社の営業として働くだけでなく、恩返しをしたいと、寮長として寮に閉じこもる後輩がいたら声をかけていきたいと話す。
一方で一時期同社で働き、その後自立するからと会社を辞めた22歳のタケオは、特殊詐欺グループの活動に加担してしまったことを、草刈に告白する。草刈はタケオが出頭するのに付き添い、その後番組スタッフに「草刈アホちゃうか、甘やかしすぎちゃうかと(言われるかもしれないが)、誰かやらんとね。キツく言うて逃げてしまったらまたアカンわけやし」と話した。なお、番組内で紹介された法務省「犯罪白書」によると、犯罪自体は減少傾向だが、再犯率は増加傾向にあり、2019年度は過去最悪の48.8%だという。
再犯率48.8%。ほぼ2人に1人が再犯していることになるが、捕まっていない人も考えると、実質は「2人に1人以上」なのかもしれない。
普通はとらないであろう「犯罪」という手段に手を染めてしまう人というのは、そうでない人より「投げやりで短絡的」な部分があるように思う。そんな人が「キツい状況」に置かれれば、ますますその行動は短絡的で投げやりになってしまうだろう。草刈が言うように、「キツく言うて」しまったら、犯罪に再び手を染めかねない。
「犯罪を犯したのだから、キツイ状況にあって当たり前だ、それが償いだ」とする考えや、被害者や被害者家族の心情もあるだろう。一方で、キツイ状況にあれば、再犯率を減らすことは難しくなる。犯罪加害者の“その後”のあり方には、明確な一つの答えなど存在しない。非常に難しいバランスだ。その結果、再犯率が上がり続け48.8%にまでなった数値を、国はどう考えているのだろう。
手を差し伸べてくれる人を「試して」しまう22歳のタケオ
スグルやコウスケのように、草刈の恩に報いたいと懸命に頑張る人もいる一方で、行方をくらましたり、再犯に手を染めてしまう人もいる。
そういった「裏切ってしまう」側の心境というのは、どういったものなのだろうと思っていたが、カンサイ建装工業に入り、一度は更生を目指すも特殊詐欺グループに加担してしまった22歳のタケオが、胸中を話していた。
「自分の中で(他人を)信用できない、でもこの人ちょっとだけでも信用したい。その二つの感情がしんどかった。だから結局、人を裏切るのも、その人を試しているじゃないけど……」
タケオは母親から壮絶な虐待を受け育っていると話していた。なので人を信じられない。信じられないから、手を差し伸べてくれる人に対し、裏切りなどの形でそれでも自分を見捨てないかと試してしまう。タケオの発言からは、「試す」ことで人から失望されてしまうこともわかっているのだが、それでも試すことをやめられない、という、どうしようもないほどの業を感じた。
草刈や加害者支援をしている人たちは、それでも支援の手を差し伸べてくれるだろうが、大抵の人はうんざりして、関わりたくないと遠ざかってしまうだろう。それでは、犯罪加害者はますます孤立してキツイ状況に立ってしまう。
タケオに限らず、人を試すような言動をとる人はいる。追い詰められている人ほど信じることが怖く、不安から人を試してしまうのだろう。それが、ますますその人を孤立させ追い詰めていく。他者には、そうした姿は人とつながり、健やかに生きることを拒絶するように見え、破滅願望と似たものすら感じさせる。そんな中、彼らが「悪い仲間」と出会ったら、あっという間に染まっていってしまうかもしれない。
来週の『ザ・ノンフィクション』は今回の続編。15年前、福子さんが殺害された事件の詳細を知る人が草刈を訪ねる。