日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。12月13日は「悪ガキとひとつ屋根の下で ~夢の力を信じた10年の物語~」というテーマで放送された。
あらすじ
東京・足立区で格闘技ジムを運営する古川誠一は、学校や家庭で問題を起こした少年を自宅に引き取り一緒に暮らしている。自らも荒れた過去を持つ古川は、子育てに困った親たちから荒れる子どもたちを引き受ける「駆け込み寺の和尚」として機能しているのだ。
今、古川のもとで暮らす少年、青年は4人。まず曾祖母に手を上げてしまった小学4年生のユウセイ。小学5年生のコジロウは、家族に暴力を振るい警察を呼ばれる騒動も起こしている。
一方、青年の2人はかつて「悪ガキ」だったが、今は落ち着き、格闘技において成果を残している。10歳の頃に古川に引き取られた武居由樹はK-1世界王者となった今も、古川の元で暮らしている。
同様に中野滉太も成長を遂げ、初のタイトルマッチが決定。チャンピオンになって会長に恩返ししたいと話していた中野だったが、試合前日、減量に失敗し病院に担ぎ込まれてしまう。事前計量をパスできず、たとえチャンピオンを倒したとしてもタイトルを奪えない中、当日後楽園ホームで中野は戦い、試合には負けたが観客から温かい拍手で迎えられていた。
「警察沙汰」とあどけない表情のギャップ
家族に暴力を振るう小学生男子という番組ホームページの説明を見て、ふてぶてしく粗暴な小学生を想像してしまったが、ユウセイ、コジロウの、声変わりも迎えていない声と、あどけない顔立ちを見て拍子抜けしてしまった。緊張からか、2人とも番組スタッフに対しても敬語で話し、うつむきがちでしおらしい。古川にも従順に見えた。
しかしコジロウは家族に対しかんしゃくを起こし、車をキックボードで殴っただけでは収まらず、妹が乗った状態のチャイルドシートを車の外に落とすなど荒れに荒れてしまう。親により警察に通報されて、パトカーで警察署に連れていかれたすさまじい経歴がある。
番組内では、中野の小学生時代の姿も映されていた。あどけない表情の過去の中野は、ガキ大将として近所の子どもを引き連れ公園で遊ぶのだが、その際、砂に足で円を描き「ここの円から出たやつぶっ殺すから」 と叫ぶ。ここまでだと「小学生男子あるある」ともいえるが、その円から出てしまったのであろう子の髪をつかんで執拗に引っ張り回す姿を見て、「このままだとマズそうだ」と感じた。
番組ナレーションでは古川の発言として、「幼い頃の愛情不足で10歳くらいから悪の芽が出てくる。その時期に徹底的に厳しさと愛情を注ぎこむことで、その子のその後の生き方が変わってくる」と紹介していた。
小学校高学年くらいが、粗暴な少年にとって最後のチャンスなのかもしれない。これが中学生くらいになれば母親より体が大きくなってしまう。幸い、現在21歳の中野は、世の中のふらふらした21歳よりもずっとしっかりして落ち着いており、古川への感謝の思いを丁寧に話す真面目な武道青年に成長していた。
少年たちは古川のもとではしおらしい。また、中野の幼少期の映像を見ると、公園ではガキ大将だったが、2歳年上の兄貴分の武居にはまったく頭が上がらないようだった。問題行動を起こす子どもを「強さ、力、厳しさ」で律することを嫌がる人もいるだろうし、私もその一人だが、一方でそういったもので指導されることを求める人、そこに安心感を覚える人も一定数いるのではないかと感じた。
「強さ」と「優しさ」のどちらがいい悪いではなく、子どもそれぞれの性格や、子どもの置かれた状況に応じたバランスを見極めていくことが大切なのだろう。「強さ、力、厳しさ」を求めるタイプの子どもにとって、昨今の「優しさ」重視とも思える子育てでは、行き場のないパワーが溜まってしまうのかもしれない。それが問題行動という形で噴出しているのだろうか。
「ほっとけない」保護者
番組内で育ての親である曾祖母に暴力を振るうと紹介されていたユウセイ。「年老いた曾祖母に暴力」という言葉だけ見たときは、「なんて子どもだ」と思ったが、番組を見ていて少々印象が変わった。
8月15日の「終戦の日」は、古川のジムのメンバーが総出で足立区のジムから靖国神社まで歩くイベントを毎年行っているという。出発前にユウセイを訪ねた曾祖母は、タオルを事前に濡らせとユウセイにしつこく言っていた。
曾祖母の発言は心配と善意からのものなのはよくわかるが、こう何度もくどくど言われては、たとえそれが正論であっても、本当にイライラするだろうとユウセイに同情してしまった。曾祖母に悪気がないのは本当にわかるのだが、タオルを濡らしたくなったら途中のコンビニで洗面台を借りればいいのだ。田舎ならともかく、足立区から靖国神社までならいくらでもコンビニはあるだろう。
放っといていいときは好きにやらせる、というのは子どもへのギフトだと思う。「あなたのためを思って」を大義名分にして、ただでさえカッとなりやすい子どもの導火線にあえて火をつけに行く保護者もいるのだろう、と思ってしまった。
次週は「母さん ごめん ダメ息子の涙 ~六本木キャバクラボーイ物語~」。六本木でキャバクラボーイをしている26歳のゆうせい。大学卒業後に就職した大手企業をわずか3日で辞めてからは、定職に就く気もなく、女のもとに転がり込む生活を続けている。そんなゆうせいはかつてはプロ野球選手を目指していた将来有望な野球少年だった。ゆうせいと、ゆうせいの自立を願う母親の3年間の記録。