羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の有名人>
「今まで怒ってきた人を種類別に分析してみた」フワちゃん
『あざとくて何が悪いの?』(12月11日、テレビ朝日系)
若い人を怒ってはいけない、ということは、現代の中年の間でコンセンサスを得ていると言えるだろう。私も中年だが、同世代の美容師さんが新人を注意したところ、その子は「お昼を買ってきます」と言ったきり、二度と戻って来なかった(そのまま辞めて、ご両親が会社に私物を取りに来た)そうだし、私の夫(会社員)も若い子をへたに注意すると、怒られるのが怖くてミスを隠すから、絶対に怒らないと決めていると言っていた。
そういう時代なのだと思うが、その一方で、若い人はそれで生きにくくないのか疑問に思う。仕事をしていてミスをしないということはあり得ないし、また自分のミスでなくても、頭を下げなくてはいけない場面もあるだろう。そういう時はどうするのかと思っていたところ、12月11日放送の『あざとくて何が悪いの?』(テレビ朝日系)で「怒られたときの対処法」が取り上げられていた。
この日のゲストは、2020年のテレビ界を席巻したニュースター・YouTube芸人、フワちゃん。明石家さんまや和田アキ子ら大物芸能人を呼び捨てにしても、怒られないフワちゃん。しかし、バイトでは怒られまくりで、15回クビになった経験があるそうだ。そんなフワちゃんが、人にガチで怒られたとき、そのショックを和らげるために「今まで怒ってきた人を種類別に分析してみた」そうだ。
番組MCの弘中綾香アナは「怒る人は絶対に怒りますからね」、南海キャンディーズ・山里亮太は「聞き流し術って大事ですよ」と、怒ってくる側が理不尽かのようなニュアンスを含ませていたが、実際のフワちゃんのエピソードから考えると、私には怒られて当然のように感じられた。
◎怒ってくる先輩を「気分屋」扱いのフワちゃん
具体例を挙げると、フワちゃんは大学時代に居酒屋でバイトしていたそうだが、男性の先輩に「NEWヘアスタイル超可愛いね」「私のオススメのヘアピン、絶対つけたら超かわいいと思うよ」とため口で外見をイジっていたとのこと。しかし先輩は髪を切っておらず、後輩にタメ口をきかれていい気分がしなかったようで、「いい加減にしろよ」「俺はいいけど、ほかの人だったら、マジギレされるよ」と怒ってきたという。フワちゃんは、この「俺はいいけど」と断る人を「タイプ1」に分類し、「『俺はいいけど』と言われても『うのみにするな、フツウにキレてるぞ』『謝ってすぐ行為をやめよう』」と、対処法を説いていた。まるで「先輩には騙されないぞ」とばかりの言い分だが、最初から先輩を怒らせるような行為を取らなければいいのではないだろうか。
また、バイトの最中、客に出す料理を運ぶ間に、フワちゃんは何度もつまみ食いをしてしまい、その度に先輩から怒られていたそうだ。「そういえばお前さ、先月もお客さんが飲みものこぼした時さ……」と過去のことを蒸し返してグチグチ怒られることもあったといい、フワちゃんはそういった先輩を「タイプ2」に分類。対処法としては「先輩が穏やかなときに、あらかじめやらかしたことを、謝りに行くしかない」とし、先輩の機嫌が悪くないときに「あまりにもおいしそうなので、さっき1個つまんじゃいました。本当にごめんなさい」と自ら謝罪すると話していた。つまみ食いをやめようという発想にならないのが不思議である。
このほかにもフワちゃんは、バイトの後、飲みに行く約束をするほど仲のいい先輩に、「所定の場所にハンディ(注文を受けるための携帯型端末)を置かなかったこと」を怒られたという事例を紹介。この先輩を「タイプ3」とし、「気分屋激ギレタイプ」「マジでその日にキレるポイントが違うから、怒られるか怒られないかは運」と指摘、その対処法を「先輩が見ていないときに、アッカンベーをする」としていたが、これこそ逆ギレではないだろうか。所定の場所に所定のものを置くのは決まりだし、仕事に必要なものがなければ、自分以外の誰かが困る。私には先輩は「気分屋」でなく、正当な注意をしているように思えた。
◎フワちゃんはスタッフのミスを「自分が悪い」と思えるのか?
しかし、番組放送後、SNSで反響を調べてみると「勉強になる」という意見もちらほら見られた。怒られたときに傷つかない方法を求めている人がそれだけ多いということかもしれないが、それでは誰かに怒られたとき、それが正当な怒りなのか、もしくは相手の性格的な問題で八つ当たりされているかを見極めるため、こんな方法を試してみたらどうだろうか。
それは「同じことを自分がやられたら、どう思うか」を想像することだ。
フワちゃんは、『マツコ会議』(日本テレビ系)にリモート出演していたが、番組中に宅配ピザを食べていた。テレビに出ているのに、自宅のリビング気分でピザを食べるあたりが、視聴者のおかしさを誘うと計算したのだろう。番組中、ずっと食べ続けるため、念のためピザを2枚も取ったとフワちゃんは明かしていたが、もしこのピザがフワちゃんのもとに届く前に、デリバリーのスタッフにあらかた食べられていたらどう思うのか。注文した品が完璧な状態で届かないこと自体信じがたいミスだし、加えてフワちゃんが綿密に準備していたパフォーマンスができなくなってしまうが、それでイラッとしないのか。もし、デリバリーのスタッフにイラッとするのなら、居酒屋の先輩がフワちゃんを怒ったことも「当然のこと」として受け止めなくてはならないはずだ。
また、フワちゃんといえば、テレビに出ている途中に、自撮り棒を使って自撮りをすることがよくあり、それが一種のフワちゃんらしさでもあるが、この自撮り棒をスタッフがどこかに持って行ってしまって見当たらなかったら、困らないだろうか。日頃、飲みに行くなど良好な関係を築いているスタッフに、「決まりを守ってほしい」という意味でそれを指摘したときに「気分屋」とか「毎日キレるポイントが違う」と言われて、「その通りだ、自分が悪い」と思えるのか。
自分の機嫌が悪い時に、自分より立場の弱い人に当たり散らすタイプも実在するので、そういう人の言うことを全部真に受ける必要はない。しかし、正しい指摘をスルーするのもよろしくない。同じことを何度も注意されると、「話を聞いていない」と受け取られ、目上の人との関係性も悪くなるし、何度も怒られたら傷つくことになるからだ。
フワちゃんを見ていると、自分が他人にするのはOKだけど、他人に同じことをされたら許さないという被害者のフリをした加害者になっていないかということを思わされる。自分は理不尽に怒られがちだと思う人は、一度考えてみてもいいかもしれない。