元衆議院議員で、現在はコメンテーターとして活動する金子恵美が、著書『許すチカラ』(集英社)を上梓した。彼女の夫で元衆議院議員の宮崎謙介は、2015年に「育休宣言」で脚光を浴びるも、翌16年、金子の妊娠中に不倫していたことを「週刊文春」(文藝春秋)に報じられ、議員を辞職。しかし、金子はそんな宮崎と離婚せず、夫婦でテレビ出演をするなど、“有名人の不倫”に厳しいこのご時世において、異例の動きを見せていた。
しかし、今月27日にニュースサイト「文春オンライン」にて、宮崎の“二度目の不倫”が報じられることに。ネット上では「金子はこの不倫も許すのか?」「1回目で大丈夫だったから、またやったんだろう」といった声も聞こえてくる。
『許すチカラ』で金子は、「私は夫を許して幸せになれた」と高らかに宣言している。夫婦が、そして女性が幸せに生きるために、「許すチカラ」は本当に必要なのだろうか? 疑問を抱いた女性3名(A:バツイチ&子あり、B:未婚&子あり、C:既婚&子なし)が語り合った。
金子恵美は「夫の不倫」に怒っていなかった?
――『許すチカラ』を読んで、どんな感想を持ちましたか?
C まず思ったのは、そもそも金子は、「夫の不倫」に怒っていないのでは? ということです。出産直後に宮崎から週刊誌に載ると聞かされた時、彼女は真っ先に「金銭問題」を恐れ、「女性問題」だと知ると安堵しているんです。宮崎から洗いざらい話を聞いてからも、「女性として裏切られたという腹立たしさ」より、「政治家としての彼の立場」に思いが向いていた、育休宣言をしておいて真逆の行動を取ったことが「同じ政治家として許せない」という思いだったと書いてある。彼女は最初から、不倫に対して特に怒っていないんですよね。
B この夫婦の場合、不倫よりパートナーにされたら困ることが山ほどあるんでしょうね。だから「不倫ぐらいなら」という気持ちになる、と。
C そうそう。彼女たちは当時、議員という立場があったので、汚職的なことをやったら逮捕されるかもしれないし、致命的。となると、もともとこの夫婦にとって、不倫はそこまで深刻な問題ではなかったのではないでしょうか。それを「私は許せました」って言われても……ねえ?
A 不倫が「どうしても許せないこと」だったのかというと、どうやらそういうわけではなさそう。「夫の不倫が許せなくて苦しんだけれど、こうしたら許せました!」という話とは、全然違いますよね。
B 私が気になったのは、金子が育った家庭環境の話です。彼女の父親は新潟県で村長をやっていた人で、宮崎の不倫を聞いて、「政治家の女性問題なんて、昔だったらいくらでもあったよ」と言ったとか。そういう考え方の親の元で育っているから、夫の不倫にも寛容だったんじゃないのかと思ったんですよね。親から「別れろ」と言われることもないだろうし。なんか、この1行を読んで、残りのページがどうでもよくなりました(笑)。
A 一方で、後半のページでは、「男性が不倫相手の女性に『妻とは別れる』と言って口説いたことが許せない」みたいに書いてありましたよね。「妻の尊厳はしっかり守ったうえでなければルール違反だ」とか……。いや、不倫している時点でルール違反なんですけど? 奥さんの尊厳を守りながら不倫するって、どういうこと!?
C 「妻とは別れないけど、不倫相手の君とも関係を持つ!」って口説けばOKなんですかね。よくわからん(笑)。
――みなさんは、パートナーに不倫されたことってありますか?
A 私は妊娠中、元夫がキャバ嬢とLINEで親密に連絡を取り合っていることを知りました。当時はもう気が狂いそうに……いや、本当に狂ってしまって、そのキャバ嬢に電話で詰め寄ったんです。「もうすぐ子どもが生まれるのに、どういう関係なんですか!?」って。実際は営業半分、友だち感覚で連絡してたみたいだったんですが、元夫はそれから、携帯電話を会社に置いてくるようになり……ほかにもいろいろ許せないことがあって、子どもが1歳の頃に別れました。
C 携帯を会社に置いてくるって、明らかに何か隠そうとしてるじゃないですか?
A わかりやすいですよね(笑)。で、『許すチカラ』を読むと、宮崎って不倫がバレたあとのフォローがすごくうまいんですよ。記者会見を開いたり、日記に妻への愛情をつづったり、精神誠意反省しているかのように見える。これくらいしてくれたら、私も元夫を許せたのかもしれない。一方で、世間からのバッシングを受けて精神的には不安定で、金子はそんな夫を「守らなければいけない」と思ったという。
B 夫が懴悔と贖罪の日々を送っていることや、社会的制裁を受けていることがはっきりわかるのは、「許す」うえで大きいと思います。ちなみに私は妊娠前後の時期に、相手と価値観の違いなどから別れ話が出るようになり、結局別れて未婚で出産しました。安定期に入り、「無事に生まれるだろうな」とわかってきたところで、彼へのわだかまりが薄れていったので、浮気されていたとしても、多分どうでもよかったと思います。でも、それはあくまでも、自分の子どもが無事に生まれたから言えることであって、出産リスクの大きい状況だったらまた違ったかもしれません。
C 「不倫をしていた」という事実は変わらないし、やったことはしょうがない。問題は、相手が「その後どうするのか」と、自分自身の状況によって、許す・許さないが決まるんですかね。『許すチカラ』では、宮崎が不倫を反省しながら苦しんでいる様子が書かれていましたが、読む前と読んだ後で彼のイメージって変わりました?
B うーん、私はあまり変わらないかも。育休宣言当時、宮崎はいかにも“イケイケの議員”って感じでチャラそうだったけど、男性議員の育休自体はいいことだと感じていました。それが不倫騒動を起こし、「こいつ、何やってんだよ?」とは思ったけど、彼自身にはあまり興味がなかったかも(笑)。当時からずっと、「こういう人たちもいるんだな」ぐらいの印象です。
A 私も育休宣言の時は「いい人だ」と思いました。でも、読んだ後は、「うわー、やっぱりぶっ飛んだ夫婦なんだ!」と(笑)。普通の夫婦、普通の家庭の話じゃないな、と思っちゃいましたね。
――もし自分が金子の立場だったら、宮崎を許しますか?
C 私は、さっさと離婚します(笑)。読んでいて気になったのが、「許す・許さない」という判断だと、夫婦間で上下関係が発生しそうだと思ったんですよね。金子は「夫を許して幸せになれた」と言っていますけど、どうしたって“許してあげた側”の立場が上になるじゃないですか。もし自分が何かしらのミスをして、夫から「許してあげた=立場が上」だと思われていたら、すごく嫌だと感じたんですよね。夫婦なのに対等な関係じゃなくなるのは、ちょっと変だなというか。まあ一番の理由は、不倫するやつはバレてもどうせまたやると思うので、早めにサヨナラしておきたいからですが。
A 私も、基本的に不倫は許せないですね。ただ、金子たちの置かれた状況だと……「許さないとダメ」なのかもしれない、とも思うんです。宮崎が自分の妊娠中に不倫していたことは世間に知れ渡っているので、これで別れると、子どもも「お前のパパ不倫しただろ!?」とか言われちゃいそう。不倫したことを知られてしまっているからこそ、もっと深刻な状況にならないように、丸く収めたいかな。
B 子どもの存在は引っ掛かりますよね。離婚はしないで、騒動を丸く収めるための方法を考えるとか、夫に何かしら手を差し伸べるという選択肢はあり得ると思います。ただ、それが気持ちの上でも「許している」のかと聞かれると、別問題かも。「許す=離婚しない」「許さない=離婚」とは、限らないじゃないですか。
ただ、あれだけの騒動を起こしたんだから、「この先は私の好きにさせろよ」とは思うかもしれません。離婚する・しないを決めるのは私だし、子どものことにしろ、家庭内のあらゆることもすべからく自分が主導権を握る、みたいな。そこは不安感や悔しさから、夫婦間で上下関係を作り上げてしまいそう。
C 私は子なしかつ、欲しいとも思っていないので「さっさと離婚」を選択しますけど、やっぱり子どもの存在は、かなりネックになるようですね。
B 子どもがいなかったとしても、子どもを望んでいる場合は、いろいろな計算をするじゃないですか。妊活中に夫の不倫がわかったとして、離婚して別の相手を見つけて結婚して子どもを産む……と考えると、結構な時間をロスしそう。だったらとりあえず、表面上は許したことにして、妊娠・出産をして、子どもがある程度育ってきたらまた考えよう、となる人がいてもおかしくはないと思います。
C 確かに、妊娠や出産のタイミングが関わると、自分の“気持ち”だけで動けない部分が出てきそう。結局、不倫を許す・許さない、離婚する・しないは、個人の価値観や子どもの存在など、状況によっても大きく変わるものですよね。許した人が素晴らしいわけでもなければ、許さない人の心が狭いわけでもない。「夫を許せた」は、単なる自己満足って思ったほうがよさそうですね。
――実際、金子もこの本に関連するインタビューで、「許さないことを否定するものではない。 許す人は心が広くて強い女性だと捉えられたくないし、 それを押し付けるものでもないということだけは、 ちゃんと伝えておきたい」と語っていました(10月23日配信マイナビニュース「金子恵美、夫の不倫から4年…許す決断は『間違ってなかった』 真のパートナーに」より)。
A これは金子の言う通り(笑)。彼女が許したからといって、この世の不倫された妻が全員夫を許すわけじゃないので、勘違いしてほしくないですね。
――この本を読んで、「許すチカラ」は必要だと感じましたか?
A ちょっとしたことを「許すチカラ」は、必要だと思います。でも、私は誰かにすごくムカついたり、嫌なことをされたりした時に、「絶対こいつには負けない!」と思って、「許さないチカラ」で頑張るんですよね。だから、なんでもかんでも許さなくていいと思う。
B 「許さないチカラ」が活力になることは、私もあります。個人的には、「許したい」と思っているなら、許せるように頑張ればいい。許せないし、許したいとも思っていないなら、ずっと許さずにいてもいいよね、って感覚です。そこは自分が思うようにするべきところ、というか……。
C むしろ「許したほうがいいよ」「許さないとあなたが損するよ」とか言われるほうが、私は苦痛。相手が死ぬほど後悔して、日常生活に支障が出るくらい苦しんでいるなら許してもいいかもしれないけど、他人の心の中なんて実際にはわからないし。まあ金子は、宮崎が苦しんでいることや償おうとしていることがはっきり見えたから、許す気になったんでしょうが、そういうケースばかりじゃないですし。
B 「許す・許さない」って、実は個人差がめちゃくちゃ大きいのかもしれないですね。そういう繊細な判断に対して、「許す」ことを押し付けるようなタイトルの本が出ることが、今一番許せないかも(笑)。
(後編に続く)