山口組のハロウィンがなくなる——そんな驚きのニュースが飛び込んできたのは、今月5日のこと。兵庫県議会本会議で、暴力団員が子どもに金品を渡す行為を禁じる改正暴力団排除条例が全会一致で可決され、これにより、「六代目山口組」が毎年10月、神戸市灘区の総本部で開催するハロウィンイベントが“禁止”となったのだ。
山口組のハロウィンは、全国的に知られているイベントで、近寄りがたい存在の暴力団組員が、地域の子どもたちにお菓子を配るという“ギャップ”が、多くの人に驚きを与えてきた。山口組のハロウィン禁止条例について、ネット上は賛否両論で、「やはり子どもが暴力団にいいイメージを抱くことは阻止しなければ」「地域住民を懐柔するためのイベントは禁止にして当然」など賛成意見もあれば、「山口組は善意でやっているのだろうし寛容に見てあげてもいいと思う」「近隣住民は残念がっているのでは」といった否定的な意見もある。
そんな中、山口組ハロウィン禁止を嘆いているのが、ヤクザファンの40代男性X氏だ。「“親分の言うことは絶対”という究極の縦社会で生きるヤクザに、男として憧れを感じる」と語るX氏のファン歴は20年。“迷惑をかけることは絶対にしない”という信条の下、さまざまなヤクザ事務所を“参拝”したり、最近では、山口組総本部の近辺をウォーキングがてらウォッチしにいくことを日課としているそうだ。
「私は、実話誌に掲載された組長の顔写真などを頭にインプットしているのですが、結構古い写真が使われていることも多い。現在はどうなのかと気になるものの、山口組総本部で実際に本人たちを見かけることはほぼありません。特に今は、『六代目山口組』と『神戸山口組』の抗争が激化していることから、暴力団対策法によって総本部の使用自体が制限されているんです。我々ヤクザファンが、実際に彼らに“会える”機会は年に3回しかない。それが10月31日のハロウィンと、12月29日の餅つき、そして新年の神戸護国神社への初詣なのですが、その1回が今回の禁止令により完全に失われたというわけです」
ある意味、貴重な“現場”を失ったヤクザファンは、山口組ハロウィン禁止令をどう見ているのか——その心中を詳しく聞いた。
実際に山口組のハロウィンに足を運んだことがあるというX氏。そのイベント内容はどのようなものなのか。
「私が訪れた年は、午後4〜7時くらいの間に行われていました。やはりお子さんがメインのイベントなので、学校が終わってから、かつ遅くなりすぎない時間帯に設定しているのかなと思います。会場は、六代目山口組総本部の西側にある駐車場。ハロウィン当日はそこのシャッターが開かれ、入り口付近で、お菓子の詰め合わせが配られています。子どもが『トリックオアトリート!』と声をかけると、組員が『ハッピーハロウィン!』と言ってお菓子を渡す流れです。ハロウィンのバルーンなども飾られているので、そこで写真撮影をしている人も見かけましたね」
イベントには、お母さんと子ども、また子どもだけで連れ立って訪れるケースも多いという。近隣住民は警戒している様子もなく、「普通に会場に入っていく」とX氏。なお、お父さんの姿を見かけることはほぼないといい、「10月31日が平日の場合もあり、仕事の都合で足を運びづらいのでしょう。もしくは男性のほうが組員を警戒するものなのかもしれません」と考察する。
「近くにある護国神社の手前の公園に、お菓子をもらった子どもたちが集まっているんですよ。品評会ではないですけれど、『今年はこんなのが入ってた!』と中身をチェックし合っている。子どもたちは『山口組のお菓子は豪華』と思っているみたいですね。実際にこの目で見て思うのは、近隣住民の方は、山口組のハロウィンを特別視していないということ。ネットでは『子どもを暴力団のイベントに参加させるなんて、親はどうかしている』といった指摘もありますが、皆さんおそらく、古くからある地域行事の一つとして捉えているのではないでしょうか」
一方、ヤクザファンのX氏自身にとっては、憧れのヤクザと実際に交流できるとあって、さぞ興奮してしまうはず。しかし、X氏は「……実は私、イベント自体に参加したことはないんです」と述べ、そのファン心理を明かす。
「自分で言うのもなんですが、私はお行儀のいいヤクザファン(笑)。子どもがメインのイベントに、40代のおっさんが一人でズカズカ入っていくことはできません。あくまでその辺を散歩しているおっさんのていで、外からイベントを見ているだけなんです。ちなみに、会場となる駐車場の前には、兵庫県警の捜査員が立っていて、ピリピリした空気を放っています。私があまり変な動きをすると職務質問されてしまい、そうすると山口組にも、イベントに来たお母さんや子どもにも迷惑をかけますし、また取材に来たマスコミの邪魔にもなるはず。だから絶対に捜査員とは目を合わせません! ただ、実話誌でしか知らない、直参の組長を直に見られるので、顔や挙動には一切出さないものの、心の中で『あぁ! ◯◯組長や!!』と大興奮しています(笑)」
加えてX氏は、実話誌等で見るヤクザは、基本的に険しい顔をしているものの、ハロウィンでは、柔和な表情で子どもたちにお菓子を渡しているといい、「そんな普段見られない一面に、ヤクザの人間らしさを感じてグッとくる」そうだ。
そんなX氏は、今回の山口組ハロウィン禁止令を受け、「昔からある地域のお祭りや盆踊りがなくなったような感じ」という。
「正直、法律で禁止しなければいけないというのは、私は“滑稽ではないか”と感じます。単純に、行きたい人は行ったらいいし、行きたくない人は行かなければいいという話のように思います」
ただ、「子どもが自発的に『行きたい』といって参加するのはいいけれど、親が行きたいがために、子どもをダシに使うのはよろしくない。ちなみに私は、自分の息子と一緒に山口組の餅つきに参加したことがあるのですが、これは息子の希望があったからです」と、X氏のヤクザファンとしての矜持が垣間見える発言も飛び出した。
山口組ハロウィン禁止の理由は、各報道で「子どもたちが暴力団に取り込まれる危険があるから」などと説明されているが……。
「ハロウィンに参加したからといって『山口組のおっちゃんはいい人。僕も将来、山口組に入るねん!』なんて、誰が思うの? と疑問を抱きますね。もし子どもがそんなことを言い出したとしたら、それは山口組ではなく、親や環境のせいではないでしょうか」
もし自身の息子に「ヤクザになりたい!」と言われたら、X氏は「『あかん!』ときっぱり言う」そうだ。
「山口組も、ハロウィンをやったからといって、世間からいい人だと思ってもらえるという考えなんて、サラサラないのではないでしょうか。法に触れる“悪いこと”をして処罰されるのは当然ですが、地域に貢献するような“良いこと”をなぜ法律で禁じるのか……と思ってしまいますね」
一方で、違法行為に基づいた資金で購入したお菓子を子どもに配るのは問題ではないかという指摘もあるが、X氏は「その点は正直、なんとも言えないですね……」と漏らす。
「これまでも抗争が懸念された時には、ハロウィンを行わないことがありました。正直、総本部が狙われることはないんじゃないか? とは思いつつ、それは致し方ないと受け止めています。今のご時世、と考えると、ハロウィン自体の禁止もしょうがないかもしれませんが、昨日今日始まったわけではないイベントがなくなるのは、やっぱり寂しいものですよ」
そんな熱心なヤクザファンの嘆きを、山口組はどう思うのか。ぜひ一度聞いてみたいところだ。