「喪女」「年齢=彼氏いない歴」といった言葉がネット上に現れてから、どれほどの歳月がたっただろうか。もともとはネットのスラングだったが、2018年には、NHK『ねほりんぱほりん』で「喪女」が取り上げられ、「年齢=彼氏いない歴の女性」、つまり「処女」だと説明されるまでになった。それから現在までも、いまだ喪女関連の話題は注目を集めて続けているが、そんな中、36歳=彼氏いない歴の処女・一子をめぐる小説『21世紀の処女』(双葉社、『知られざるわたしの日記 ベテラン処女の最後の一年』から改題)が8月7日に発売された。
同作は「ベテラン処女」の編集者・勅使河原一子の日記形式でつづられる小説。36歳の誕生日を迎えたその日から日記は始まり、1年以内の処女喪失を目指して奮闘する日々が赤裸々に書かれている。しかし一子の頭の中は、自慰とAV、電マといった下ネタや、東方神起などK-POPアイドルのことばかりで、行動も暴走しがちだ。そんな一子と『21世紀の処女』について語り合うべく、今回は座談会を開催。くしくも、一子と同業で同世代の女性3人が集まった。
【出席者】
◎A子:31歳 男性向け月刊誌と男性向けウェブメディアの編集者。
◎B美:36歳 女性向けウェブメディア編集者。男性雑誌の編集部から転職。
◎C代:41歳 フリーランスのライター&編集者。男性向けから女性向けまでいろいろ。
乳首や陰毛や処女で悩んでいるけど……
――36歳の「ベテラン処女」がテーマの本でしたが、どうでした?
A子 一子にすごく共感したところがありましたね。私、実は陥没乳首で悩んでて(笑)。歳をとったら自然と治ったんだけど、10代の頃は一子みたいに手術を本気で考えてたから、過去を思い出して悶絶した。
B美 いきなりすごいカミングアウト! 一子の手術はすごくつらそうだったから、自然に治って済んでよかったね(笑)。
C代 一子が陰毛に白いのを見つけてショック受けてたシーンは、自分のことかと思った。私も一子と同じ36歳のときに見つけて、「はぁっ!?!?」って、二度見。出先のトイレで声出ちゃった(笑)。
B美 一子って、乳首や陰毛や処女で悩んでいるけど自己肯定力が強くないですか? 意中の相手にアピールするために、急にギャルファッションで出社したり、ちょっと落ち込んだだけで仕事休んだり、他人の目を気にしてるのに実はまったく気にしてない。それに、自己嫌悪してる人は、あんなに明るくないと思った。
A子 日記ですごく自虐してるよね。自虐できる時点で、自分のことを俯瞰して見てる。他人の目を気にしすぎているというネガティブな感じではなくて、本当はすごく周囲が「見えてる」し、なおかつ自分を持っている子と思った。
――一子は編集者でみなさんと同業ですよね。一子の仕事ぶりはどうですか?
C代 一子の日記はボキャブラリーが豊かだし、妄想力、思い込んだことは猪突猛進なところも編集やライター向きだなって思った。だから、経理から編集部に異動になってよかった! 編集部の男性社員・カニ山は、よくぞ声をかけてくれた!
A子 カニ山はいい上司だなー。一子を適材適所に配置したよね。仕事以外は女にだらしないダメな男かもしれないけど、一子の才能を見抜く目を持ってた。
B美 でもカニ山、アラフィフの男性編集者にいがちなタイプな気もする。一子がチンコとか包茎、AVの話をするから「面白い!」「お前はセンスある」と買ってるワケでしょ? そういう過激な下ネタを話す女子を「面白い」と評価するオジサン、よくいる感じだなあって。結局、一子に任せたのも「AV現場取材」だし。
C代 そう言われてみれば、典型的な男性編集者かも。カニ山みたいに、見た目がキレイでかわいい女性スタッフ・緑川を愛玩道具としてそばにおきつつ、一子みたいな子には「お前は面白い!」と発破をかけて、どんどん仕事させるって構図。いろんな編集部で見るな……。リアルだなあ。
A子 あとは企画会議のシーン。一子がライターの持ってきた「合コンの成功率を上げるLINE術」企画に「死ぬほどつまんねー」「無性にムカムカしてきた」って心で毒づいてるところが面白かった。私もあんなの提案されたらつまらなさに白目剥く! でも、その手の記事ってよく読まれるんだよね……。
B子 「彼にかわいいと思われるLINE術」とかでしょ? あんな記事、得体のしれない人たちが適当に書いてるのにね。そういうつまんない記事多い。
C代 その手の記事を書いてるライターが、一子の大好きな東方神起のインタビューをやったと判明したときも印象的だった。「なぜこんなダサい女が東方神起に会えて、私が会えないのか」って愕然とするところ。一子にとったら、つまらない=ダサいんだよね。でも一子よ、残念ながら、面白さよりダサいコピペ文が求められる世界もあるのだよ……。
ーー東方神起といえば、K-POPアイドルのオタ友・ハマチ子も出てきます。デザイナーで恵比寿の立派なマンションに住みつつ、年下の男とばかりセックスしているという。一子に男を紹介したり、仕事を手伝ったり、良い関係に見えます。
一同 ハマチ子はいい子だよね〜。
A子 趣味で知り合った友達って、プライベートの事情まで話す関係になかなかならない。だけど、ハマチ子は一子に自分の家族の問題や、男関係も話してるでしょ? オタク友達の垣根を越えたきっかけはなんだろう。2人の家が恵比寿と駒込で近いから、しょっちゅう会えてるのもうらやましい。私のオタ友は高槻在住だから全然会えない。
B美 この年になると、自分に怒ってくれる人なんていなくなるから、ハマチ子みたいな子は貴重。それに2人が推してるのが東方神起、EXO、NCTというSMエンターテインメントの系譜なのもいい。そっち系のオタクなのね、ってリアルに想像できる(笑)。
C代 ハマチ子、チャンミンがファンに送った「一日でもはやく彼氏でも作って花見にいきなさい」ってメッセージに暗くなってよね。私も読みながらズーンときた(笑)。一子とハマチ子が明け方までEXOの動画みたり、新大久保で焼き肉食ってるのは自分のことかと思ったし。ハマチ子が東方神起のダンスを全力で踊って、ピンチに陥った一子を助けるシーンには、グッときたな。
A子 それで結局、ハマチ子が男をゲットするのも「ちゃっかりしてんな〜」って笑えた(笑)。
「ソフトクリーム食べないなんて女の子じゃない」!?
ーー一子の周りにも、3人の男性が登場しました。ハマチ子の紹介で知り合ったひどいワキガのサラリーマン“ワキガマン”、大学時代の片思い相手・伊知郎、そして仕事つながりで出会ったAV男優・太。
A子 一子と交際することになったワキガマンのインパクトが強すぎたな。デート先のマザー牧場で、一子がソフトクリームを食べないでいたら「牧場デートでソフトクリーム食べないなんて女の子じゃないよ」って言ったじゃん。腰抜かしたわ。
B美 お前の「女の子」観はどこでなに見て育ったんだよ! メールで「チューしたいナリ」「ハグハグしたいナリ」と、「〜ナリ」で終わるくだりも、とにかく気持ち悪い。でも、こういう人ってリアルにいそうだから、すごくイメージしやすかったけど(笑)。
C代 ワキガマンの言動がどんどん狂っていくのは、ちょっとしたホラー。次はどんな気持ち悪いこと言うんだろ? って読む手が止まらなかった(笑)。
ーー大学時代の先輩・伊知郎との出来事は、一子の「黒歴史ランキング1位」でした。物語の序盤と終盤に登場してきた伊知郎、どうでしたか?
A子 この伊知郎、大学時代に何年もかけて一子をハメる悪策を練ってたんですよね。登場したときは「こいつ……」って、ねっとりした目で伊知郎を見てたけど、十数年ぶりの再会で印象が変わった。
B美 大学時代はイケメンのやり手で鳴らしてたのに、いまやってることが「YouTuber」「イベントのオーガナイザー」「俳優」で、さらに「芥川賞を目指して執筆中」。もう「頑張れよ!」としか言えない(笑)。
C代 伊知郎の胡散臭さ、新宿の珈琲西武にいそうだなあ。いま伊知郎が大学生だったら、バイナリオプションとかに手を出してそう。
A子 飲み会の一番最後に登場して「さっきまで編集者と打ち合わせしててさ」「昨日も2時間しか寝てないわ」とか聞いてもないのにアピールしてきそう。伊知郎と再会をした一子が、「私の才能に嫉妬してるんでしょ」って言ったでしょ? 私も、伊知郎は結局、一子に嫉妬してたんだと思う。
ーーお笑い芸人を目指すAV男優の太には、一子が面と向かって「わたしとセックスしてほしい」と告げましたね。
C代 太……。仕事内容や将来のことで悩んでるのは伝わるんだけど、面白みがない男だった。一子はなんで太が好きなんだろう? AV現場取材でチンコ見たから?
A子 結局、顔がイケメンだから? 自分やハマチ子の顔のことは自虐するのに、男のことは顔で選ぶんだよなあ、一子……。
C代 性格は気にしてないのかな。もしかして、自分でもどんな人と付き合いたいのか、わかってないのかも。性格とか、男の内面に求める基準がないから、外見だけでジャッジしてる可能性もある。それに、太にはっきりと「無理」と振られたのに、一子は友達として続けてくんだよね。今後、交際してセックスすることを期待してるのかな?
B美 一子は、太とセックスできないままでいいと思う。そもそも、処女であることも、言うほど悩んでない気がする。セックスじゃなくて、心のつながり、コミュニケーションみたいなものを一子は欲しいんじゃないかな……。だって、ワキガマンと念願のセックスをできる場面が目の前に訪れたのに、自分から手放してたし。マジで一番の悩みだったら、相手がワキガマンでもヤルはず。
A子 一子、自分がほしいものを探してる最中なのかな? 自分探し中……(笑)? 処女というポイントばかり本人は問題視してたけど、仕事も趣味も友達関係も、いまが一番楽しそうに見える。そのうち好きな子ができて、セックスできると思う。処女だろうとなんだろうと、むしろ一子は恵まれてるよ!
C代 人間関係もいい感じだし、体力も性欲も食欲も20代レベルに満ちてるのが一番うらやましいな。会社で徹夜したり、日常的に豚の背脂の塊食をべたりできる36歳、素晴らしい。
B美 一子、いいなあ。処女喪失=人生の再スタートなんて日記に掲げてたけど、とっくに良い人生送ってるじゃん!
A子 タイトルは『21世紀の処女』で、処女脱出を目的にしてるとはいえ、人生にジタバタしてる女なら誰でも面白く読めるんじゃないかな。……っていうか、他人のことなら「十分恵まれてるじゃん!」とか「こんないい部分があるのに!」とかわかるけど、いざ自分のことになると全然わからなくてジタバタしちゃうよね(笑)。
一同 確かに! あがいてるのは一子だけじゃなかった……(笑)!
・『21世紀の処女』