羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の有名人>
「ギャラとか契約とかをもっとイイ感じにしていこう、と」藤田ニコル
「週刊新潮」2020年8月13・20日号(新潮社)
番組名は失念したが、昔、松田聖子など名だたるアイドルを輩出してきた芸能事務所・サンミュージックの創始者、相澤秀禎氏の出ている番組を見たことがある。印象的だったのが、相澤氏が「女性アイドルを一人にしない」と言っていたことだった。アイドルは見た目の華やかさと違ってストレスフルな商売のため、一人にすると精神的に追い込まれてしまうこともある。なので、デビュー直後は社長の家で下宿、「一人暮らしをしたい」とアイドルが言いだしたときは、最初はお母さんやお姉さんなど身内を招いて一緒に暮らしてもらい(その分、広い家が必要だが、その経費は事務所が負担すると言っていた)、一人暮らしはその後というふうに、段階を踏むと話していた。
女性アイドルのメンタル面に重きを置いているあたりがさすがだが、この考え方には盲点がある。そばに置いて良い影響があるのは、「まともな身内」という条件つきではないだろうか。
例えば、同事務所には清純派アイドルとして名高い桜田淳子が所属していた。桜田は実姉と暮らしていたが、姉は統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の信者で、影響を受けた桜田も入信し、1992年には同教会の合同結婚式に参加することを発表した。日本国憲法は信教の自由を保障しているので、どんな宗教を信仰しようと自由である。しかし、統一教会の霊感商法(先祖のたたりや因縁を理由に、高額な商品を買わせること)は社会問題化していた。イメージ商売の芸能人が、そんな宗教を信仰し、そこの広告塔を務めることはよろしくないだろう。実際、桜田は信仰を明らかにした後、事実上引退に追い込まれている。
桜田はアイドルとして一世を風靡したが、喜劇もこなせる女優として評価は高かった。「たられば」を言っても仕方がないものの、芸能活動を続けたいのであれば、お姉さんと住まないほうがよかったのではないか。こう考えると、誰をそばに置くかというのは、芸能人生命にかかわることなのかもしれない。
今、最も危険な芸能人の“身内”と言えば、どうしてもギャルタレントの母親たちが頭に浮かんでしまう。
2020年8月13・20日号「週刊新潮」(新潮社)によると、タレント・藤田ニコルの母親が弁護士を立てて、ニコルの所属事務所「オスカープロモーション」に“ギャラの取り分”をめぐる交渉を行っており、認められなければ独立も辞さない態度だと報じた。今年2月の「新潮」でも、ギャラをめぐり、母と事務所が対立、マネジャー的な役割を果たしていた母親が現場から姿を消したという内容の記事が掲載されたが、両者の対立は溝が深そうだ。
ニコルは「新潮」の取材に対し、「そんなに大げさな話じゃないんですよ。確かに、お母さんと会社が何度か話し合いをしているのは本当ですけど。でも、揉めてるってわけじゃなくて、ギャラとか契約とかをもっとイイ感じにしていこう、と……」と答えている。
芸能人の賃金体系は一般人である私には想像もつかないが、ギャラの交渉をするのは当然の権利だろう。しかし、ニコル母のが、私には銭ゲバに感じられて仕方ないのは、過去に『情熱大陸』(TBS系)で見た彼女の振る舞いが記憶に残っているからだ。
同番組の中で、ニコルが母親を含めた家族の家賃を払ってあげているというエピソードが明かされたが、当の母親は「ありがとう」を言っていなかった。周囲に「どうしたら、そんな(に親孝行な)子が育つの?」と言われても、「知らないよ、そんなこと」と返すそうだ。母親の照れ隠しかもしれないが、年端もいかない娘が一生懸命働いたカネを自分が使うのに、「ありがとう」を言わないというのは、心のどこかで「娘の稼いだカネは自分にも権利がある」と思っているからではないだろうか。
同じくギャルタレントのみちょぱの母も、結構危険なのではないかと私は見ている。売れっ子であるみちょぱは、『うちのガヤがすみません!』(日本テレビ系)で、母親に車をプレゼントしたことを明かしていた。「誕生日とかイベントは大切にしています。ママも自分が稼いでいることを知っているので、年を取っていくごとにどんどんねだるものが高くなってきた」と告白。このほかにも、『人生イロイロ超会議』(TBS系)で、みちょぱが一人暮らしを始めたら、母親が隣の部屋に住みだしたと話していた。母は娘がかわいくて仕方がないという意味で「いい話」なのかもしれないが、「娘を見張っている」とも言えるのではないだろうか。『しゃべくり007』(日本テレビ系)では、お母さんはみちょぱの付き人のような仕事をして、金銭管理も行っていると明かしていた。いやらしい言い方をすると、娘に食わせてもらった上に、娘の稼いだカネを自由にできるのである。「お母さんだから、任せて安心」と思うかもしれないが、身内だからこそ遠慮がなくて、こじれることもあるので注意する必要はあるだろう。
「身内に任せること」が間違っている、と言いたいわけではない。聖子は所属事務所の社長など、経営を実父、実母、実兄と身内で固めていることで知られているが、金銭トラブルは聞いたことがない。単にラッキーだったのかもしれないが、聖子の父親が元公務員であるように「もともと違う仕事をきちんとしていて、特にカネに困っていない」ということも、プラスに働いていたのではないか。経済的に困窮していて、一発当てたい願望があると、どうしても芸能人の娘をあてにしまうと思うのだ。
ニコルらギャルタレントは、おバカキャラをウリにする一方で、古い価値観……例えば年功序列とか男尊女卑にも適応力が高い印象がある。親孝行を重んじるのもその一つかもしれないが、どうかホドホドに。お金やタレント生命を大事にしてほしいと願ってやまない。
