坂上忍がMCを務める昼の情報番組『バイキング』(フジテレビ系)が10月より、現在の2時間枠から3時間枠に拡大されることなったという。しかし、ネット上には歓迎ムードはほとんどなく、「フジテレビの判断はあり得ない」「本当は打ち切ってほしいくらいなのに」などと反対の声が噴出している。
なぜ『バイキング』はこれほどまで、忌み嫌われてしまったのだろう。ネット上の声を見ていくと、MC・坂上の不人気ぶりがその原因と考えられる。「高圧的な態度で、共演者を萎縮させている」「すぐ感情的になる」「言葉がキツすぎて不快。もはや暴言」「他人の意見に聞く耳を貸さず、自分の意見を押し付けようとする」などなど、坂上の言動には苦言がわんさか出てくるような状態なのだ。
しかし、坂上のような「オジサン」は、決して稀な存在ではないのではないか。職場や親戚、近隣住人など、身の回りにも「怒りっぽいオジサン」がいるという人は少なくないはず。実はサイゾーウーマンでは以前、そんな「オジサン」の謎を、ホルモンという観点から考えるべき、『男性機能の「真実」』(ブックマン社)の著者である泌尿器科・永井敦医師にインタビューを行っていた。永井医師が指摘する「男性更年期」とは何か……坂上はじめ、周りの「怒りっぽいオジサン」に、「なぜ冷静になれないの?」と疑問を抱いている人に、ぜひ一読してもらいたい。
(編集部)
(初出:2017年8月29日)
梅沢富美男や坂上忍が怒る理由ーー泌尿器科医が語る「オジサン」とホルモンの関係
女性が男性を罵倒する――自身の秘書(現在は退職)を罵りまくるパワハラ音声で一躍“時の人”となった衆議院議員の豊田真由子氏だが、このニュースがこれだけ注目されたのは、豊田氏が女性だからではないだろうか? これが男性、特に年配の男性であれば、ひどいと思いこそすれ、「意外」と感じる人は少ないだろう。
メディアでは、「怒れるオジサン」が目立っている。ここでいうオジサンとは単に年齢を重ねた男性ではなく、なぜかいつも不機嫌で、狭量かつ尊大、人の意見に耳を貸さず、総じて怒りっぽい男性を指す。
かつては中尾彬がその代表格だったが、いまなら梅沢富美男といったところか。今年7月に『あさイチ』(NHK)に出演した際は、「怒る役割を求められているから、そう演じている」といった内容の発言があったが、演技だったとしても、いつも何かしら怒っているオジサン像に、私たちは特に違和感を抱かない。そこにセクハラ、パワハラ、ヘイト、セカンドレイプ的な発言があっても、どこかで「まあ、オジサンだから」と思ってしまうこともある。司会を務める『バイキング』(フジテレビ系)での暴言がたびたび取り上げられる坂上忍も現在50歳、十分オジサンだろう。
芸能界だけでなく、政治家、SNS、ニュースサイトのコメント欄、そして職場や家族など身近なところ……オジサンは至るところに出没するが、年を取ったら人間が円くなるというのは、ウソなのだろうか……?
■“オジサン”化の原因は、男性ホルモンの減少!?
「もちろん年を取るごとに度量が大きく、穏やかになる男性も多いのですが、確かにだんだん気難しくなる男性も少なくないですね。これは泌尿器科的観点から男性ホルモンであるテストステロンに注目してみると、ある程度の答えが出ます」
そう話してくれたのは、泌尿器科の永井敦医師。6月に『男性機能の「真実」』(ブックマン社)を上梓した、男性機能と男性ホルモンのエキスパートだ。
「『男性更年期』という言葉を聞いたことがありますか? 私たちは“加齢男性性腺機能低下(LOH)症候群”といいますが、早い人で40代、平均50歳前後から徐々に男性ホルモンの一種、テストステロンが減少するために起きるものです。筋力低下、骨粗しょう症、認知機能低下、メタボリック症候群、そして性機能障害など健康状態を悪化させるだけでなく、元気がなくなる、仕事への意欲が低下する、涙もろくなる、どん底にいる感じがする……などといった影響が出ます。人によっては、イライラして当たり散らしたり、些細なことにすぐ腹を立てたり、逆に神経質になって、いつもソワソワしてしまったり、といった症状が出ることもあります。日本人男性の600万人が、このLOH症候群に悩んでいるともいわれています」
永井医師は、前近代の中国で後宮に仕えていた宦官(かんがん)を例に挙げる。彼らは宮廷の女性らと常に接するため、間違いが起きないよう、あらかじめ精巣を摘出されていた。
「そうするとテストステロンが分泌されないので性欲は感じないし、見た目も多少女性っぽくなるのですが、出世欲や権力欲がどんどん加速して、最後にはその影響で王朝が滅ぶに至ったこともあるそうです。テストステロン値は一般的に闘争心や野心との関連が深いといわれますが、これがないことで、かえって逆に権力にしがみつくようになり、相手を蹴落とし、傲慢になる者もいたのかもしれません」
女性の更年期では、女性ホルモンの分泌量が急激に減少するのと比べて、男性のテストステロン減少のスピードは緩やか。本人も更年期のせいだとは気づかないままいつも怒っているとなると、しんどいのではないか。もちろん、それによってとばっちりを受ける周囲にとっても困りものだが……。
「実は私自身は、LOH症候群で気難しくなるタイプの男性に、あんまりお目にかかったことがないんですよ。このタイプは家庭で妻から無視されがちなので、その症状に自分も周囲も気づかずじまいで、なかなか泌尿器科医で診てもらうことにならないようです」
生きづらくなっている男性ほど治療につながらないとは皮肉な話だが、実際に泌尿器科では、LOH症候群の男性にどんな治療を行うのだろう?
「主に、男性ホルモン補充療法ですね。活力を補給する手段として、私たちは非常に重視しています。それから、勃起障害の治療薬を使うことも……」
勃起障害の薬と、オジサンの怒りっぽさに関係が!?
「ええ、ありますよ。LOH症候群の症状として性機能障害が出ることがありますが、治療や生活習慣の改善によって、勃起・射精が復活すれば、それだけで男性としての自信が回復します。その自信が脳を活性化させ、テストステロンを増やすホルモンを放出させ、結果的にテストステロン値が高まるという、いい循環を生みます」
■挿入だけに頼らず、触れ合い、語り合うことも大事
では、そうしたオジサンと女性との関係はどうだろう? 永井医師は、著書の中で「カップルで長生きしよう」と提唱し、そのためには熟年になってもセックスを楽しむことが大事として、「セックスを楽しむ10カ条」を挙げている。
・言葉を大切にする
・ゼリーを使う
・アダルトグッズを使う
・五感を駆使する
・時にはホテルを使う
・ED治療薬を使う
・下半身にいいサプリを飲む
・週2を維持する
・挿入にこだわらない
・手や口すべてを使って愛撫する
男女ともに、若いころと違って体が思うようにいかない部分は、薬やサプリ、アダルトグッズやゼリーをうまく取り入れれば補える。男性機能の回復も大事だがそれでも勃たなくなる日はいつかくる、女性も次第に「物理的に受け入れにくく」なる。そのためにも「挿入にこだわらない」「手や口すべてを使って愛撫する」セックスを楽しめるようになっておきたい。
「性機能に卒業はありませんし、これを高めることはアンチエイジングにもつながります。でも一方で、挿入だけに頼らず、触れ合い、語り合うことも大事にしていかなければならないのが熟年期です。寝室を別にするのは危険。セックスしなくてもいいから、お互いの肌に触れてほしいですね。朝起きたときお尻をなでたり、台所ですれ違うとき胸にタッチしたり……と日常の中でこまめに触れ合うカップルは、すてきなシニアライフを過ごせるでしょう」
触れ合いも語り合いも、男性のテストステロンが下がるに任せ、怒りっぽく狭量になってはかなわないだろう。それ以前に、ひとつ屋根の下で暮らすのも苦痛になるかもしれない。日本人の健康寿命は伸びている。長いシニアライフをパートナーと、ときにセックスもしながら過ごすためには、パートナーにLOH症候群の兆候が見られたら、女性の側からも治療を勧めてほしい。
「まずは病院に来ていただき、焦らず、怒らず、落ち込まずに治療を続ければ、穏やかで朗らかなシニアライフを夫婦ふたりで送れますよ」
そう語る永井医師自身が、理想的なシニアライフを体現しているような男性だ。もちろん気難しいオジサンが多い裏には、ジェンダーギャップなど社会的要因もあるだろう。しかし医学的に解決できる問題も多いのであれば、まずはLOH症候群であることを認識し、治療につなげていくほうがオジサンにとっても、その周囲にとっても幸せなのである。
(三浦ゆえ)