事件や自殺、孤独死が発生した物件……通称「事故物件」。心霊やオカルト界隈でもてはやされるテーマだが、現実では「不動産会社」と「買主・借主」の間でトラブルに発展しかねない物件だという。
というのも、不動産会社は、事故物件を取引する際、宅地建物取引業法に基づいて「買主・借主に心理的な抵抗が生じる恐れがある(心理的瑕疵)」ことを告知しなければならない。心理的瑕疵物件には、墓地や火葬場、葬儀場が近くにある物件や、事故物件などが当てはまるが、人によって何が心理的瑕疵となるかがバラバラなだけに、特に事故物件については告知基準も曖昧になっているという。こうした背景により、トラブル事例が増えているといい、今年ついに、国土交通省が事故物件の基準を明確にするためのガイドライン(指針)作成に乗り出すことになった。
しかし、ガイドラインといっても、「孤独死も自殺も他殺も気になる」という人もいれば、「まったく気にならない」という人もいるはず。人それぞれの“感覚”をどう指針に落とし込んでいくのかと疑問を抱いてしまうが、実はすでに独自のガイドラインを作り、事故物件を専門に取り扱う不動産会社が存在している。今回、「事故物件を見つけやすくし、販売の機会を増やすことで不動産価値の向上と、孤独死という社会問題の対策につなげていきたい」という「成仏不動産」に取材を行い、事故物件をめぐるトラブルの現状や、今後の事故物件の扱い方はどうあるべきか、見解をお聞きした。
花原浩二氏:「成仏不動産」を展開する株式会社NIKKEI MARKS代表取締役
佐藤祐貴氏:「成仏不動産」事業部部長、遺品整理アドバイザー
ーー事故物件取引の際、告知をめぐって、「不動産会社」側と「買主・借主」側の間でトラブルが増えていると聞くのですが、具体的にどのようなものなのでしょうか。
花原浩二氏(以下、花原) 不動産会社が心理的瑕疵事項を告知せず、後から借主や買主の方が事故物件であることなどを知って、トラブルになるんです。「成仏不動産」は事故物件専門の不動産会社なので、心理的瑕疵事項を全てお伝えしているため、特にトラブルが起こっているわけではないのですが、世間的にはよく聞く話です。
佐藤祐貴氏(以下、佐藤) 昔から事故物件であることを告知していない不動産会社はあったと思うのですが、最近は大島てるさんのサイト(事故物件の情報提供を行っているサイト)などで、買主や借主の方が、自分で事故物件かどうかを調べられるようになったので、トラブルに発展することが増えたのではないかと思います。
花原 国交省がガイドライン作成に乗り出したのもそうですが、だからこそ不動産会社は告知に関してちゃんとしましょうという流れにはなってきていますね。
ーー告知基準の前に、そもそも事故物件の定義自体はどうなっているのでしょうか。
花原 定義自体にグレーゾーンがあります。殺人、傷害致死、火災による死、自殺、孤独死(発見が遅い場合)が起こった物件は、一般的に事故物件と定義されますが、発見までの時間が早い孤独死、また室外ではあるが部屋に近い場所で亡くなった場合(例えばマンションで飛び降り自殺が起こった際、亡くなったのは共有部分ではあるものの、部屋の目の前だったなど)、加えて、何年前の事故までを事故物件とするかというのが曖昧なんです。
佐藤 あと、前に住んでいた人が室内で亡くなったとしても、「事件性がない」場合、買主・借主にその事実をお伝えする一方、「事故物件に当てはまらない」とする業者も多い。事故物件と言われることで、買主・借主がつかなくなるのを恐れるからです。
ーーとなると、「告知をちゃんとする」というのも難しいものがありますよね。
花原 知り合いの不動産会社の方から、「こういう場合は告知したほうがいいんですか?」と問い合わせがくることもありますよ。現状では、「買主・借主が『その情報を知っていたら選ばなかったのに』という事項は、事前にお伝えしましょう」という告知のルールしかない。しかし、買主・借主が何を基準にして物件を選ぶか、選ばないかはそれぞれであるため、告知基準にもグレーゾーンが生まれてしまうのです。
ーー具体的に、不動産会社によって告知基準が異なるという例を教えてください。
花原 まず、自殺、他殺の場合は、どこの業者も確実に告知します。しかし、「何年前のことまで告知するのか」がグレーゾーンであるため、20〜30年前でも丁寧に告知する業者もあれば、それくらい昔のことだと、もう近隣の人たちも覚えていないとして、告知しない業者もあります。ただ、たとえ20〜30年前でも、気にする人は気にすると思うので、難しいところですよね。
佐藤 10年前までだと確実に告知するのですが……私が知っている限りではあるものの、最長で30年くらい前の事故を告知した事例はありました。
ーー自殺、他殺以外はどうでしょうか。
花原 お部屋の中で、ご家族の方などに看取られて亡くなられたケースは、ほとんど告知しませんが、中には丁寧に告知を行う業者も。また同居するご家族が目を離した隙に病死されていたという場合は、告知する・しないが半々というところでしょう。
佐藤 その程度のものであれば、事故物件には当たらないでしょうし、最近では「告知事項」ではなく「容認事項」として、「そういうことがありましたよ」とお伝えする業者も増えていています。業者が買主や借主にお伝えするという点で、同じことではあるのですが、「告知事項」だとちょっと重いので、その場合は「容認事項」と言っているんです。
ーー孤独死の場合はどうでしょうか。
花原 孤独死になると、「発見までの日数」が一つの基準となっています。1〜2日だとすれば、告知するところが半分、もう半分は「よくあること」として告知しないところといった印象。一方、発見まで何週間も経過していると、やはり近隣の方に伝わっている可能性が高いので、ほとんどの場合告知すると思います。
佐藤 業者によって告知基準が変わるというのもありますが、状況によっても変わってきます。例えば亡くなってだいたい1週間発見されないと、やはりにおいが発生して、近隣の方に知られる場合が多い。逆に、同じ1週間でもにおいが発生せず、近隣にも知られていないと、告知しないケースがあるようです。亡くなられた時期が夏か冬かによっても、その後の告知のあり方が全然変わってくるんです。
ーーちなみに、事故が起こった隣の部屋というのは、告知されるのでしょうか。人によっては、「隣の部屋でも嫌」と感じる人はいると思います。
花原 場合にもよりますが、隣接の部屋を買う・借りる方にも、ほとんどは言うと思います。あとは階段やエントランスなどの共用部で事故が起こった場合ですが、部屋から近いかどうかでも告知する・しないが変わります。また、共用部の事故は、マンションの管理組合が記録するパターン、しないパターンがあり、前者だと後からわかることなので、先に告知するというところも多いですね。
佐藤 分譲マンションとアパートでも違いますよね。アパートだと、丸々一棟にオーナーさんがいるので、ほかの部屋にも事故があったことを告知するケースがある一方、分譲だと部屋ごとにオーナーさんがつくので、ほかの部屋には何も言わないというケースもあります。
(後編につづく)
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