日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。4月5日の放送は「余命3年の社長と刑務所を出た男 前編~塀の外の夢と現実~」。
あらすじ
元受刑者を日本で最も受け入れている札幌市の北洋建設。約50年前から元受刑者を積極的に採用しており、その数は延べ500人を超える。全国の刑務所に同社の採用募集ポスターが貼られ、毎日のように雇ってほしいと手紙が寄せられる。同社社長・小澤輝真(45歳)は、37歳で進行性の難病「脊髄小脳変性症」を発症。現在、医師から余命3年を告げられている。元受刑者を支援し続けた小澤の父親も同じ病で50歳で亡くなった。
小澤は病気のため、話し言葉は鮮明でなく、人の手を借りなければ歩くこともままならない。入院を余儀なくされ、退院時にはビニール袋いっぱいの薬を渡される現状だ。しかし周囲のサポートのもと、自社の採用だけでなく、企業や専門家が一丸となって元受刑者を支援する「職親プロジェクト」の活動も続ける。
しかし北洋建設で雇った元受刑者のうち、9割が長続きしないという厳しい現実がある。北洋建設に入社した51歳の木村は、ギャンブル依存で金欲しさからコンビニ強盗を起こし、服役期間中に両親が亡くなった過去がある。更生を誓い中古のパソコンを買い、刑務期間中に取得した日商簿記2級を生かして、税理士の受験資格を得るために簿記1級の勉強に励むが……。
再犯率48.8%、再犯者の7割は犯行時に無職――彼らを支援する人たち
『ザ・ノンフィクション』では、出所後の元受刑者や、彼らを支援する人をテーマにした回をよく放送している。昨年4月には、カタギを志した元ヤクザ・タカシが覚せい剤で挫折するまでを追った「その後の母の涙と罪と罰」、同9月は“最凶”の半グレ集団「怒羅権(ドラゴン)」の創設メンバーで、現在は元受刑者の支援を続ける男を追った「半グレをつくった男 ~償いの日々…そして結婚~」がある。
こういった番組を見て思うのは、支援する側の人並み外れた使命感や辛抱強さだ。北洋建設でも受け入れた社員のうち9割は長続きしない。支援する側にしてみれば手間が失望で終わることも多い、気が遠くなることばかりで、気が滅入ることも多い仕事だろう。
小澤は余命3年を告げられている中、マンションなど私財を売ってまで支援活動を続けている。小澤は「世の中で一番大事なのは自分なんですよ。自分を助けるためには奥さんがいてくれた。同じように困っている人がいるのだから(助けたい)」と話す。
小澤は立派な人だ。そして、小澤の生活を支える妻や、活動に励む息子を応援する母親、そして小澤の秘書で自身も元受刑者であった谷など、周囲で小澤の活動をサポートする人たちも偉大だと思う。また、小澤自身この活動に人生を捧げているのも、先代の社長である小澤の父親が受刑者を支援する姿を見てきたからだ。偉大な人が一人いるとき、その人を支える人など、周囲には何人もの「ほかの偉大な人たち」がいる。
北洋建設に新たに入った木村は、税理士を目指すべく励んでいたが、仕事で椎間板ヘルニアになり、生活保護をもらうため北洋建設をいったん退社する。しかし生活保護を申請したわずか1週間後に万引きで捕まってしまう。
木村は「悪人」という感じはまったくしない。両親の死に目に会えず、父親が焼かれた棺の中に入っていた100円玉を大事に取っていて、当初は更生の意志を見せていた。
昨年4月の『ザ・ノンフィクション』で登場した、覚せい剤で捕まったタカシも悪人という印象はなかった。木村もタカシも口調などからは、むしろ「感じがいい人」とすら思えた。
では、再犯してしまった木村やタカシと、そうではない人は、どこが違うのだろう。私は番組を見ていて、木村もタカシも「面倒くさがり」かつ「諦めがよすぎる」ように見えた。せっかくつかんだ更生のチャンス、貴重な手を差し伸べてくれる人とのつながり、日々仕事をして生活していくこと――これらを維持していこうというモチベーションが弱く、面倒くささが先に立ってしまっているように見えた。
さらに、諦めがよすぎる。困難が訪れた際に、それを抱え続けていくことができず、結局、今まで通り「面倒くささから逃げる」道を選んでしまっているようにも見えた。
“反社会性”の原点は、半グレやヤクザといった「ワルへの憧れ」や悪事そのものではなく、「面倒くささ」から来ている人も、一定数いるのではないだろうか。特に、ある程度年齢を重ねた人間の場合は、「ワルへの憧れ」なんていうことよりも「面倒くささ」のほうが強いように思える。
木村は同じ店で連日万引きをして捕まった。捕まえてくれ、と言わんばかりの行動に谷は「正直に言ってくれたら協力できることはあるのにね」と諦め気味に話す。ただ、木村にしてみたら「正直に自分のつらさを周囲に訴える」ことは面倒くさく、それよりも、万引きするほうが「ラク」なのだろう。カタギになるというのは、それまでの生活からの「変化」を伴う。面倒くさがりな人間にとって「変化」はすさまじい難敵だろう。
私自身、面倒臭がりで、すぐ嫌になりがちなので木村やタカシには似たものを覚えている。しかし「面倒臭がり」「諦めがよすぎる」性格は本人の想像以上に自分の心を蝕んでいき、さまざまなものを失っていきやすいのだと、恐ろしさで背筋が伸びた。面倒臭さから逃げない小澤の生き方と、彼を支援する人たちを見て、ますます背筋が伸びる思いだ。
次週の『ザ・ノンフィクション』は今回の後編。『余命3年の社長と刑務所を出た男 後編 ~塀の外の挫折と旅立ち~』。北洋建設に入社した更生を誓う50代と二十歳の新入りにフォーカスを当てる。